アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

うちは事件後の里抜け計画



”うちは一族一家惨殺事件”の翌日。
精神病棟にまず隔離され…個室病棟にいた。
メンタルヘルスが必要だからだ。
俺は6歳だ

あの瞬間を境に…無口になっていた。
反応を示す気分にはならなかった。

[うちは一族であの子だけが生き残ったんですって。
どういうことなのかしら?]

病院に勤務する大人たちの声が俺がいる個室病棟まで聞こえる。
しかし、俺に面会人は来ない。
大人たちは見て見ぬふりだ。
気味悪がってる形相なのが幼心にも伝わってきた。

今まで味わったことのないような孤独を味わい、愛に飢え…。
毎晩は痙攣を壁を叩いてみた。
そんなことを繰り返してみた。
しかし…誰も寄り付こうともしない。
声を押し殺し涙でシーツが濡れるだけだった。

優しかった兄…イタチが…。
自分の両親の死体の前で…自分を殺そうとしたのが未だに信じられない…。

自宅の周辺が死体の海になっていたことをフラッシュバックのように思い返し…。
人に忍んで暴れてた。
毎晩シーツなら涙で濡れてた。

それなのにココのスタッフは…知らないふりだ。
気味悪そうに接さない。
六歳の身に孤独は辛い…。
もう、誰とも関わる気もなかった。
すぐに分かった変人だらけだ、この白い巨塔は。
仕事を終えたらサササと逃げていく…ここの人達は…。

(人をふかく…信じるからこそ…オレは…イタい。
人とは…カベ…つくる…)

深い人間不信に陥っていた。
自分が崇拝し激愛してた兄が…自分を裏切ったからだ。
どれほど慕ってたか…分からないくらいだった。
それから…あり得ないレベルで、ここの住人は察さず、冷たすぎるからだ。

小さな呻き声でも、夜中魘されて動いても、誰も来ない。
一族惨殺事件も俺がしたのでは?という疑いの目で、スタッフ達が見て来るからだ。
教育がなってない、アイツらの親の顔が見たい。
俺の親は殺された。

生存者が俺しかいないから…それもあり得るが…。
俺は『兄がした』…と答えた。
サスケの元へ誰も怖がって近付こうともしない…。

☆☆☆

数日が…経過した。

学校では手裏剣披露ばっかりだ。
以前は兄と先生に構ってもらうため…出来ないフリばかりしてたが…。
それだけでもない。
当初の予定は狂い…手裏剣などどうでも良くなったから…。
披露しようと思ってた友達は、俺を裏切り…新たな親友を作り…それから…なにやら俺が望んでないことをする気らしい。
俺より親友の仲をとったらしい…呆れてる。
この件に関して、兄や先生共に盛大に構ってもらう気でいたが…。
もうそれどころでもない…それごときの小さなことで悩む時代など終わった。

最近は…的の木を…兄や里の住人だと思いながら…当ててる。
トップなので、一番最初に打つ。
俺は声は出てない…連日泣きすぎで喉が枯れてる…ストレスもある。
お蔭で女子集団歓声音は以前より…増したが…。
俺は連日、空虚だ…。
手裏剣、終わった後、俺が背後を振り返れば、サクラの目が輝いてる。
クラスで凄い技を繰り出せば目を光らせて喜びだす女子だ。
誰にでもコイツはそうだ。
それから女子どもが接近する。
そこは交わす、違うとこへ行く。

(おい…サクラ。
おまえは…まだ、オレを遠目にみてるだけで声もかけんのか。
おまえは…つよいオトコがすきらしいな…。
オレが命中してから振り返れば…目がキラキラだ。
だがしかし…オレはくらい。
ここは暗闇だ。
オレはそろそろ里を去る気だ。
おまえと別れを言いたかったのだが…)

連日それが続いてる。
本気でサヨナラの気分だ。
もう見限った。

☆☆☆

この数日は…とても長く感じだ。
奇しくもあの恐ろしい事件はちょうどアカデミーに進級してから半年後の出来事だ。


;アカデミーに通ってるんだってね。
期待してるよ;

と…少し前まで朗らかに笑ってた向かいの叔母さんの顔を思い出した。
”うちは饅頭”が売られていた。
その会話をして…手裏剣の授業で残されたあと…惨劇は起きた…。

実は手裏剣が下手なわけではない。
あの当時、兄のイタチに構ってもらいたくて。
下手なふりをして…修行に付き合ってもらうつもりだったのだ。
敬愛してた憎き兄が最近、様子がおかしいし、父との関係に溝が出来ているのも、感じていた。
仲直りがしたくて…下手な演技をしたのだ…。
それ以外にも学級でなじめず…日々退屈に悩んでいる…と言うこともあった。
手裏剣のことは、どうでも良い気分になってた。
それが幸いして…俺だけ…帰宅するのが遅れ…憎き兄イタチに殺されずにすんだのだ…。

思い出すたびに俺の瞼から熱い滴が溢れた。
里抜けの道へ、あの事件以来…何度も行くが…まだ勇気が湧かないのだ。
もう行っても良いはずなのに。
味方なんて俺には誰もこの里にいないからだ。

それから…近寄ってくる女子どもがウザく感じられて仕方ないのだ…。
皆は家族がいるのに自分だけいなくて。
誰も信じたくなくて…暴れてた…。
どんどん精神が限界へと進んでいた。

(手裏剣の練習のあとに近づく人間はウザい。
この里ももう楽しくない、学級もだ。
さよならだ、サクラ…。
おまえは泣き虫だ…オレがいなくても強くなれ、長生きしろ。
遠くから祈ってる…、おまえはオレを捨てた…。
イノとオレの恋を斡旋しようとしてたのが証拠だ。
そんなどうでもいいことより俺の友達になって俺を精神に支えて欲しかった。
最近、どれだけ俺が悩んでたか…おまえは理解も出来ねえ筈だ。

もうオレはおまえを守る気はあらん…ほかのヤロウを当たれ…サヨナラだ。
おまえは…つよいオトコなら…だれでもいいのか?
この、最低野郎…オレはおまえに、とことん幻滅してる…)

☆☆☆

その頃、昼間は公園には寄り付かず…。
夕暮れ時には川岸で夕日を眺めてた…。
病院に行きたくないからだ。
人間に会いたくないからだ。
一人の方が余程マシだ。

失った優しい一族を回顧してた。
このまま、川に投身出来たら楽なのに…決心がつかなかった。
どうして自分だけ醜く生に縋り付かねばならないのか…。
謎だった。

”醜く生に縋り付いて…いつの日か俺に復讐に来い…”

醜き兄の声が聞こえた。

”なぜ弱いのか?憎しみが足りないからだ”

死のうにも…目的がある限りは…自殺すら許されねえらしい…。
絶望だ。

その時、川の水面に…遠くでナルトが映ってるのが…見えた。
俺と同じ孤児だ。
ナルトは生まれつきだ。

だから自分の悲しみが理解できないだろう。
深く愛するからこそ失うとき気が狂いそうになるのだ。
死にたいほどの痛みが全身から湧いてくるのだ。
毎日、刃物で刺されたかのように痛む。
涙が気を抜くと溢れてくるのだ…。

会話したそうにナルトがコチラを見つめてる姿が…水面の鏡写しを通して判った。
今は…誰も信じる気もない。
近づいても欲しくなかった。
一人の方がマシだ…。

それから…遠方にサクラがいるのも…見えた。
以前は、積極的に、苛められて集団の輪に入れないサクラへ会話してやった経験もある。
そんな頃もあった。

友達が出来てなくて寂しそうに見えたからだ。
それが今では女友達も出来た。
別に今では必要ともされてない。
干渉もされたくない。

(なきムシなヤツだった。
でも…今はほっといてほしい。
オレは…もう…人をしんじない…)

☆☆☆

その日、以来…よく里抜けの一本道にウロウロしてた。
里には居場所がない。
一人の方がマシなぐらいだ。
外の世界に逃亡したかったからだ。
そこで刺されても…それでも良い。
生きることに望みなどありもしない。
全てを失った。
あの日、一日で…。

”醜く生に縋り付いて。
俺に復讐に来い”

イタチが一族を殺した夢ばかり頻繁に見る。
恐怖しか与えてくれない。
それなのに誰も優しくしない。
病室は監獄だ。

(ダレもしんじない)

里にいても、常時…孤独だった。
先生も…医者も…スタッフも…。
誰も関わろうともしない。
知らんぷりだ…。

里抜けの一本道で…意を決して…どこか遠いところへ逃亡しようと、したとき…。
遠くから俺を呼ぶ声がした。

「サスケくん…」

別に親しいわけでもない。

しかし…。
あの一族惨殺事件が起きる前は…故意に声掛けをした。

アカデミー入学前……里抜けの道付近で…。
[デコ]とくのいち連中にどう見ても美人なサクラが苛められてるのを…頻繁に目撃してた。

俺が5歳で…公園デビューを果たした…その日、初めてサクラと会うことになった。
それからの一年間…。
俺目線でも…サクラだけ女子たちに除け者にされているのが明らかで…。
サクラは友達も出来ず…酷く、不憫にも感じられた…そんな時代もあった。

が。
最近では、サクラはデコだしの髪型に変えて…女子達に逆に文句を言われなったらしい。
今では…サクラには…女友達がいる…。



似合ってる…。
非常に愛くるしい姿なのだが…。

しかし、最高に機嫌が悪かった。

里の住人達に殺意が芽生えるレベルでだ。
この里を殺戮しまくって…兄を殺しに行く。
頭が狂ったように変だ。
怒りと涙の頂点を越えて…恐ろしい次元に逝きかけている。
誰が俺をここまで追い詰めた?
兄だ。
里の住人だ。

サクラへ無視をしようと決めた。
今では面識も少ないからだ。
ただの見た目が良いだけの女の子だ。
それ以外、何も感じない。

俺は背を向けた。
サクラが立ち去ったら、もう…この里から抜ける気だった。
未練も何もない。
里で殺戮兵器になるよりマシだ。
ずっと…内部から黒いものが出ている。


「サスケくんがダイスキなの。
しょうらい、サスケくんのおヨメさんになりたい!」

「サスケくんと…かぞくになりたいから…。
今日から…ガンバるね?
それだけ…」

(今更…か)

後ろでサクラの声がした。
照れたような声だった。

背後でバタバタ音がした。

(立ちさったらしい…)

人は信じない。
どうせ、気変わりする。

サクラは立ち去ったようだし…里を抜ける気でいた。
胸がキリキリした…。
あれからずっとだ。
里抜けの道を越えようとしたとき…。

後ろからサクラが走ってきた。

「サスケくん。
こっからさきは…センセイが、いっちゃダメだって、いってた。
キケンなんだって」

『ウザい』

この言葉…人生で初めて、サクラには…ココでつかったかもしれねえ。
もうアカデミーで、昔の優等生の俺は止めた。
あんなことしても何の意味もねえ。
疲れるだけだ。

内部に憎しみが湧いた。

(じぶんだけ…どうして?
みんな、わらってる…。
オレのふこうを…よろこんでる…)

精神が狂い落ちたのだ。

「サスケくん、どうしたの?
さいきん…くらいの?」

サクラが首を傾げた。

『ウザい』

「サスケくん…さいきん、しゃべってくれないよね…。
えと…」

『ウザい』

「わたしね…。
サスケくんが、やさしいってこと…しってる。
どうしたの…?」

『ウザい』

「サスケくん…」

その時、無理やり後ろからサクラに抱擁された。
あの事件以来、初めてのひと肌だった。

「わたしのこと、おヨメさんにしてくれたら…うれしいな」

『ウザすぎる』

これからは…誰も認めない。

(この優柔不断ヤロウめ。
おまえはオレを一度、うらぎった。
トモダチと…いってたくせに。
つよいオトコがスキなだけだ…しってる。
もうトモダチでもない…)

サクラを引きはがして…くるぶしを翻して元来た道へ走った。
耳に入らなかった。

「サスケくん…。
わたし…あきらめないから…」

森の中でボタボタ泣いた…。

人に隠れて何度泣いたか分からない。

木を叩いた。

里抜けが…今日、失敗したからだ。

サクラは…。
…くのいち連中では一番顔はかわいい部類の女の子だった。
だから…。
以前は優しくしてやった経験も、ある。
贔屓目なく…女子どもに…あまりの顔面偏差値の高さに嫉妬され、嫌われてるのが明らかだったからだ。
少し特別扱いをした…確かにその時は自覚もあった。

アカデミー入学前に…『たぶん俺は強い』と嘘を吐いたこともあった。
練習はした…結果、手裏剣は上達した。
そんな頃もあった…。

しかしだ。
サクラには親友が出来た。
俺を捨てたのだ。

サクラは俺に「友達になってくれる?」と言ってたにも、拘らずだ。
女の親友が出来てからは…一度も話しかけても来なくなったのだ。

しかもだ…。
サクラはイノと俺の恋を…応援してたのだ…はっきり聞いた。
もうここで、サクラの思い出は…永遠に捨て去ろうと決めたのだ。
イノのことを好いてないし、無理やり引っ付けられると迷惑だからだ。
サクラは恩をアダで返した…。

現在、誰も信じる気もない。
親愛なる兄は狂乱し、一族を…ある日突如…殺戮兵器になったのだ。
信じるからこそ…裏切られると苦しいのだ。
誰も愛さないと決めた。
無心無情でいる。

明日こそ。
…里を抜ける気でいる…。

その晩も、寝室で声を出さず…泣きまくった。

(ダレも…しんじない。
ころしてくれ…。
ココから…にげたい…。
しんでもいい…)

相変わらず。
病室の外は大人たちが”うちは一族”に対して悪い噂をしていて…外に出にくい。



[あの子のお兄さんはあの子の歳では既に…中忍試験程度の実力があったんでしょ?
本当に全てあの子のお兄さんがやったことなのかしら?]

[あの子は実力を偽って生きてるだけじゃないかしら?]

[忍者世界、偽って生きる輩が多いから、安心できないわね]

[弱い振りしてるだけじゃないかしら?]

[お兄さんの死体だけがないけど…どこかに埋めただけじゃないかしら?]

[お兄さんがいないから分からないけど…どうしてあの子だけが生き残ったのかしら?]

[もしお兄さんが全部したなら…あの子も殺してた筈よね?
そこがよく分からないわ]

[サスケくんの実力はどんなものなの?]

[アカデミーでは主席らしいわね]

[お兄さんのイタチくんとは大した違いね]

[でも実力を偽ってるスパイの可能性も]

[この世界そんな奴らばかりだし…]

[信用しても良いのかしら?
里にあの子を置いてもいいのかしら?]

[しばらく様子見ましょ…]

[だって、あの…うちは一族…でしょ?
強くて当たり前じゃないの。
私たちとは違うわよ…]

[それが一晩で…ほぼ全滅で…生存者はあの子だけ。
お兄さんの死体はないみたいだし…。
お兄さんからも聞いてみたいわね…]

[あまり大きい声で話すと…殺されるかもしれないわよ…]

[そうね…]


全部丸聞こえだ。
そうとう悪質だ。
自分の保身しか、頭にないようだ…。
極力、関わろうとしてこない。
地雷ばかり踏んでくる…。
俺に憎しみしか与えない言葉の羅列だ。

(兄は…ふくしゅうの…ため、オレをコロさなかった…しってる…。
オレは…いま、しにたい…。
たのしくない)

拷問は受けたが…説明する気にもなれない…。

精神的に参ってるのに…担任はあからさまに距離を置いてる。
ここの住人は本当に変だ。
道徳に乏しい。

☆☆☆

翌日、精神病棟からアカデミーへ通う。
ココにいるよりかはアカデミーの方が随分とマシだ。
登校すれば…前と変わらない態度で、くっ付いてくるのは…女子どもの集団だけだ。
そこも無性に悲しかった。
男子も相変わらず白い目線。

(それに今日からサクラも…はいった…)

俺目掛けて来るイノと並んで…華麗なサクラは物凄く喧嘩をしている…口喧嘩のバトルだ。

(見ていて…あさましい)

以前まで泣き虫だったのが…闘争心マックスになったらしい。
とんだ茶番劇だ。
少し前まで親友だった、女友達と闘ってるのだ。
俺を捨てて女の友情を取った癖にと反面怒りが湧いた。

脳裏に…昨日、サクラが話した”家族”の単語が思い浮かんだ。
また錯乱を起こした。
失った一族を思い出したからだ。
倒れそうになったから…その場所を離れ…トイレで泣いたのだ。
あの一件以来、ずっとそうだった。

☆☆☆

その日、午後…アカデミーで手裏剣の授業があった。
この里から出たいのに…。
未練などないのに。
手裏剣を猛烈なスピードで木に食いいれていた。

ストレスもあった。

木を兄だと思った。
それから自分に冷たい里の住人だとも思った。

「サスケくん。
スゴい!!
カッコウいい!!

キャーーーー!!!
すてきぃ!!!」

サクラの歓声が上がった。
一番最初に来た…。
イノより先だ…。

サクラからの初めて貰えた歓声だ。

そのあとにイノが続き…。

≪サクラ…ドベの癖に私より先に声掛けしてんじゃないわよ…あとでどうなるか?
わかってるわね…?

サスケくん!!
ファイト、わたしのガンバリがあったから、つよくなれたのよね?
わたし、しってるわよ!
わたし、サスケくんがくれた、このアシのかすりキズわすれない!
だんだん、きえちゃったけど。
きっと、私のことが好きだからサスケくんは…!!!≫


それ以外にも何名かの黄色い歓声が上がった…これはいつものことだ。
今日から新入りが加わった。

(アホらしい…)

虚無感から無視した。
何も入ってこない…。
感情がない。


☆☆☆

このあと…手洗いのあと…サクラの顔に痣があるのを…。
発見した。
どうも女子軍団にやられたらしい…。
と推測した…。

頬に泣いたのか涙のあともあった。
サクラの目がウサギのように赤かった。
俺も手洗い場では泣いてた…家族全員を失ったことでだ。
ここで共感が沸いた。
もう俺は人間ではないらしい…昔のように…サクラの身を案ずるより…。
共感するなんて…。
自分と同じで泣いてる人間がいる…そのことに嬉しさを覚えた。

☆☆☆

…今日こそ、放課後は里抜けする気だった。
アカデミーが終わると…里抜けの道へ進んだ。
そこに昨日と同じようにサクラがいた。

「きのう、ココで…あえたから」

内心、舌打ちした。

「ココね。
イノとよく…あそぶの。
ココから…そと…でたら…ダメらしいけど。
ほら。
キレイなお花ばかりでしょ?」

麗しいサクラが朗らかに笑ってた。
殴られた痣は…消されたのか…なくなってるが…うっすら見えてる。
保健室で処置されたらしい…と推測した。

「えと…サスケくん。
なんだか…さいきん、へん…だよ?
サスケくんじゃないみたい…」

『ウザい』

「サスケくん…どーしたの?」

『おまえに…関係…ない』

(おまえには幻滅した。
もう見捨てた…。
これからはイジメまくる、泣かせまくる、俺は変わった)

「まえは…やさしかったよね?
きのうの…こと…おこってる?」

『ウザい』

「わたしね…サスケくんのおヨメさんになりたいな…。
だいすき」

『黙れ』

「…。
わたし、あきらめないから…」

『チっ…』

「サスケくん…。
わたしを…おヨメさんにしてくれる?」

『それ以上、言うな』

「だいすき」

『ウザすぎる』

(すべてを憎んでる。
近付くな…。
全員、殺してしまいたい)

最後まで拒んで。

今日も里抜けの道から全力で逆走した。

それから…森で木の幹を思いっきりボコ殴りした。
幹に亀裂が入った。
ボタボタ涙が流れてた。

…昼間は止めにしようと計画した…。
サクラの会話によれば…アソコは…女子の溜まり場になっているらしいからだ。

里を出る前に・・・サクラをボコッたヤツは…制裁してやりたいが…。
自分と同じように泣かせてみたいが…。
少し里に未練が出た。

☆☆☆

深夜…ホスピスから抜け出した。
誰もサスケのところに監視に来る人間もいないからだ。
慣れてきた…。

そっと…抜け出した。

外は月が出ていた。

それから一人では…里抜けの道を抜けようとした。

今回は誰もいなかった。
六歳で来る人間は誰もいないだろう。
それから……外へ行こうと足を動かした。

その時、脳裏に今日起きた光景が浮かんだ。

”わたしね…サスケくんのおヨメさんになりたいな…。
だいすき”

”サスケくん…。
わたしを…おヨメさんにしてくれる?”

サクラは頬を染めていた。
以前は…サクラを可愛いと感じていたのに。
今はウザく感じるのだ。
もう…人の愛情なんて信じられないからだ。

(あんな軽い女、知らん…)

それなのに足が動かない。
目から涙が自然と流れてた。

”サスケくんがダイスキなの。
しょうらい、サスケくんのおヨメさんになりたい!”

”サスケくんと…かぞくになりたいから…。
今日から…ガンバるね?
それだけ…”

”わたしのこと、おヨメさんにしてくれたら…うれしいな”

…昨日の言葉も思い返した。

「アアアアア…」

(オレの家族…。
オレの父さん、母さん、おばさん、おじさん、シスイ兄さん…。
オレの…)

絶叫した。
それでも誰も来ない。
涙が溢れて来た。

『俺の…家族を…
返してくれ…』

ムンクの叫びのポーズをとり、痛む胸を抑えた。

それから失った”家族”のことを思い返して…痙攣を起こし…座り込んだ。

☆☆☆

そのまま一時間が経過した。

(負けた)

地面に寝そべって…ボーと天井の月を眺めた。

(アイツに…オレの何が分かる?)

世界中で一人だけいる気分を味わえた。

(甘え過ぎた野郎だ…)

サクラの言葉が蘇ってきた。

(サクラのことはもういい…。
どうせアイツは、つよいオトコがすきなだけだ…。
ここ数か月で…よくわかった…)

一瞬、里を抜けて復讐に燃えるのと…
この里一番の美女、サクラを嫁として迎える未来と天秤にかけた。

瞳から涙があふれ出た。

(そのとおりになるなら…。
オレにとって…しあわせは…サクラをヨメにすることだ。
…兄さんをコロすのは…コワい…)

ボタボタ泣いた。

(兄さんはオレをうらギった…。
サクラもうらギる…。
オレは…ダレも…しんじたくない…)

(サクラがオレをうらギったら…ココを出る…。
そうする……きっと…うらギる…知ってる…。
兄さんも…そうだから…)

(アイツはそんな女だ…。
信じてやらん…)

…その時まで復讐はお預けにすることに決めて…。
元いた病院へ一人トボトボ戻っていった。

夜道は…怖かった。
震えそうだ。

病室へ帰っても誰も部屋にいない。
気が狂いそうな寂しさが襲ってくる。

そこに…サクラの言葉と姿が蘇った。
ボタボタ泣き始めた。
呻いても誰も来ない。
ココは異常だ。

…サクラが自分を捨てるのは確定された未来に感じた。
あれだけ信じ切っていた兄まで…ある日、突然、発狂を起こしたのだから。
サクラには一度裏切られた、自分より女の友情を取った前歴もある。
サクラは俺の意志を汲まず女友達の恋路を応援してた。

(いつサクラが気変わりしたかは…しらん。
サクラは内気で、なきムシだ。
勝気な…おんなトモダチに、負けたのかもしれん。
それでも信用は…できん)

誰も信じる気もなかった。
絶対的な味方など自分には存在もしない。

(オヤ、カゾクに…まさるものはねえ)

誰も心に入れる気もなかった。

(サクラなんて俺は…大嫌いだ…。
あんなヤツ知らん…。
俺は…)

牢獄の中にいる気分だった。


☆☆☆

翌日…。

いつもどおりにアカデミーに通った。
俺を見るなり…様々な女連中がにじり寄ってきた。
その中にサクラの姿も見えた。
相変わらず、掃き溜めに鶴だ。

痣は…お母さんか保険の先生かがファンデーションか何かで消してもらったらしい。
そのことに気が付いた。

相変わらずと言うか。
…容姿はこの中では主席なのは明らかだった。
いつの日か裏切ることも、予想できた…しかも男好きらしい…。
誰も信じる気もなかった。
幼げで後光眩く…クラスの希望の華…サクラが…俺へモーション掛けるせいで…。
余計に男共から…嫌われてるのが…ヒシヒシ伝わって来るのだ。
サクラはモテそうな顔をしてたからだ。
どこまで…自分に忠誠をつかわすか…試してみたい気もあった。
…人を信じる気など、毛頭なかった。
諦めたのだ。
愛することを。

大好きな兄貴まで…ある日、狂乱したからだ。
いつも通り、手裏剣を披露すれば。

「サスケくん。
スゴい!
カッコウいい!!!

キャーーー!!
ホレちゃう!!!」

とサクラの歓声が上がる。
何故か他の女の声が…耳には…入らなかった。
今日はサクラの声が…一番、最後だった。
順番は守ることにしたらしい。
規則を破るのは忍者世界では屑野郎も良いところだ。
強いイノの掟に逆らうのは、賢い方法とは言えないだろう。

(どうやら…サクラは、つよいオトコが…すきらしい…。
本当に…わかりやすいヤツだ)

一目でわかった。
確かにこの里で一番はオレだ。

(ということは…)

この里で二番になった時…この里で…一番の男に可愛いサクラはすぐに心変わりする…と推理した。
馬鹿でもわかる未来だ。
その証拠に…いたいけなサクラは俺だけではなく…この里、二番の男にも基本、優しいからだ…。
どうも…華美なサクラは強い男に弱いらしいのが…以前から…見て取れた。
それも信じられないレベルでだ。
強い者にはあり得ないほどゾッコンになる女…それがサクラだ。
凄い性癖だ…。
あれは天性なのか?
偶然とは思えないレベルで態度を豹変してた…俺の見ている隣で…。

(べつに…サクラがスきと言うわけじゃない。
ダレも…しんじん…)

しかし…。
四六時中ウザいレベルで…どこまでも端正なサクラは俺を追いかけてくる。

その後、術式の授業を習ってからは…雨の日にイタズラもかねて女子どもは川に落とした。
日頃のうっぷんもあった…。
術式の本はいろいろ役に立ちそうな術ばかり載ってる。
愛読書だ。

内心は戦うサクラに勇気づけられては、いる。















【うちは事件後】イルカ学級日誌手裏剣授業。「俺はおまえを待ってる」心の声。

目次


学級戦争アカデミー1年サスケ6歳「おまえは猫…ここはメンタルサロン」空白の心に入るサクラの人情。
















 

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