学級戦争
【三人称】
「仲間に入れてくれってばよ。
みんなで”サスケ大嫌いクラブ”結成しようってばよ。
サクラちゃん、取り返そうってばよ。
サスケからよ」
【めんどくせー。
おまえはあっち行ってろ】
--シカマルは機嫌が悪いらしい。
「え?
なんだってばよ?」
◎オメエは邪魔だって、オカシ食うからあっち行ってろ◎
--チョウジだ。
「どうしたんだってば?
俺ら友達になれねえのかってば?」
●俺とお前は人種が違うんだ、
ドベは去ってろ●
●バウバウ!!●
--赤丸とキバは怒ってる。
「冷たてえ。
サクラちゃんだけじゃなく、
おまえらまで、ドベだからって仲間に入れてくれねえのかよ」
{ドベの癖に…。
口答えするな!
俺たちは感傷に浸ってるんだ}
--シノは蜂を飛ばして…ナルトに威嚇した。
「俺も感傷に浸りたいってばよ。
今日もさ、サスケの前で…サスケの悪口言って…サクラちゃんに殴られてよ」
●女に殴られるだけでもマシだ。
俺なんて、触ってすらもらえてねえ●
●バウバウ●
--赤丸とキバだ。
「えええ!
あれってばそういう意味じゃねえってば」
◎おまえはうるさい、ドベのくせに。
俺たちは腹が立ってる。
イルカ先生のところへ行っとけ!
菓子、食べる◎
--チョウジだ。
【めんどうくせ…。
みんな、どっかずらかろうぜ】
「待ってくれってば〜。
オレも仲間に入れてくれってば…」
{おまえはドベで優遇されてる!}
--虫使いのシノだ。
「え?
イルカ先生のことだってばか?
確かに先生、優しいってばな」
●ドベ、あっちいけ。
俺たち4人は仲間だが…。
おまえはドベだ。
これ以上語らん●
●バウウウウウウウ!!●
--キバと赤丸もとても機嫌が悪い・…。
「どうしたんだってばよ…
みんな…」
--ナルトだけが残された…。
☆☆☆
4人は素早く、ナルトから離れて会議を始めた。
{とうとう恐れてたことが…起きたか}
シノはいつもどおり、虫と会話してる。
●俺はもう楽しくねえ…。
な。
赤丸●
●バウバウ●
【この里の女子、つまらねえ。
めんどくせ…】
◎ほんとう、日向しかいねえし。
もう菓子食べまくるわ◎
{おまえたち…知ってるか?
ヒナタが誰が好きか…}
--シノが眼鏡をオドオドしながら…残りの3人に尋ねた。
●チッ。
ドベのナルトだろ?●
●バウウウウ●
--赤丸とキバだ。
【めんどくせー。
全員知ってるぜ】
--シカマルだ。
◎ナルトのどこが良いんだよ。
ドベの癖に。
デブはいやってか?◎
--チョウジだ。
{この里の女子で残されたのは…。
とうとう日向しかいなくなった。
おまえたち、サスケから女を取り戻すのと…。
ドベのナルトから…ヒナタを取るのと…。
どっちが簡単だと思う?}
--虫使いシノの眼鏡がキラーンと光った。
【めんどうくせ―けど…ナルトから日向だ】
--シカマルは即答だ。
◎誰でもわかるって。
デブはいやってか?
腹立つ、くうぜ◎
--チョウジだ。
●むかつくぜ、ドベの癖に女に好かれて…。
女に触ってもらってることがよ●
●バウウウウーー!●
--キバと赤丸だ。
{俺たち四人で…どこまでも日向とナルトの仲を裂こう。
題して、『ナルト撲滅クラブ』だ}
--シノは宣言した。
【そうだな、めんどくせ―けど…サスケから女取るより簡単だ】
--シカマルもダルそうだが賛成らしい。
◎本当、最後の一人くらい、俺にのこせってな。
デブはいやか?女は?◎
--チョウジはカンカンで食べまくってる。
●まあ、ナルトになら楽勝だな…赤丸●
●バウ!●
--赤丸とキバも同盟に参加するらしい。
{ドベのナルトから日向を奪った後…。
サスケは潰しに行けばいい}
--シノの眼鏡が光った。
【あああ。
めんどくせー。
ほかのサトいきてえ】
--シカマルだ。
◎本当、掟…変えろって。
どうしてほかのサトの女子と恋愛しちゃ、いけねえんだよ。
もうオカシだべるぜ◎
--チョウジだ。
●まあ…。里の情報が横漏れになるからだろうけど…。
もう、つまらねえな。赤丸●
●くーーーん●
--キバと赤丸は項垂れていた…。
こうして、その日、男子どもから。
『ナルト撲滅クラブ』が結成された。
何色にも染まらぬクラスの花…サクラはサスケの力に屈服し、奪われた。
残ったのは…最初からドベのナルトしか見てない日向…。
ドベのナルトから…ヒナタを男子一人が奪った後…。
その日向を…次の順位の男が取り合うのか…。
それともサスケから女を奪い返すのか…。
血みどろの戦いになりそうなのだけが…メンバーたちの目に見えていたのだ。
結婚できないということは血筋が途絶えることだ…里は閉鎖的で…殆どの女子を一人にとられ…大変な状況だ…。
幼児心にそれぞれ己の未来を案じていたのだ…。
忍者社会とは大変だ…。
この日以来…ナルトは男子たちに完全跳ね子にされてしまうようになった…。
しかし、ナルトは…日向が最初からナルトを好きであることは知らない…。
【ナルト視点】
なんだってば?
男子どもつめてえってば…。
ドベの癖に触ってもらえてってな。
俺さ、サクラちゃんにボコられるの嫌だけどよ。
よろこばなきゃ、なんねえってばか?
確かにアイツら、一度も触ってもらったこと見たことねえけどよ。
ああああ。
このクラス、壊滅的だってば。
たった一人、残された日向はさ。
俺が喋るとすぐ逃げたり、顔近づくと倒れたりするんだってば。
しかも他の男子が話すと普通なのにさ。
俺だけ、変な態度で逃げられるんだってば。
顔も見てくんねえし。
変な奴で…。
他の男子には普通に仲良しなのにさ。
オレ、サクラちゃんに…しなきゃいけねえのかってばよ?
ボコられるの、羨ましがられたってばよ。
もう、分かんねえってばよ。
俺はよ、絶対、火影になって…。
この里のオンナ…取り戻す。
そして、この里で家族つくる。
イルカ先生、オレ…大変だと思うけどよ。
応援してくれってば。
【イルカ先生視点】
授業が終わり、俺は聞きたくないものを耳にした。
男子どものナルトの悪口だ。
これは予想出来てた展開だった。
俺は先生として、出来ることと言えばこれぐらいだ…。
俺は放課後、サスケを個人的に呼び出した。
尋ねたいことが山ほどあったからだ。
「サスケ、そこに座れ?」
『…』
サスケは無言で俺の前の椅子に座った。
今日はこの教室、俺とサスケの二人っきりだ。
大切な話だからだ。
サスケはあの一件以来…口数が減った。
前から多弁でもなかったが余計に増してる。
[そこがまた良い]
[クールなのが最高]
と女子どもは原因も知らず絶賛しているが…。
俺から本題に切り出すことに決めた。
「サスケ、野暮な話になるが…」
『…』
返答はない・…。
俺は恐る恐る核心に迫った。
全てはナルトのためだ…。
「おまえはイノが好きなのか?
好きな子ほど苛めたくなるのか?」
『…』
サスケの表情は硬い。
なにも読み取れねえな…。
「俺のライバル、ミズキがそうだった。
好きな子ほど標的にして苛めてた。
おまえはミズキと似ている。
俺の勘だ。
どうなんだ」
髪を引っ張ったり、カエルを肩に乗せてたり…ミズキはしてた。
俺はそういう人種の気持ちが全く分からねえ。
コイツを見てると何故かミズキを思い出す…。
『どうでも良い…』
声が低い。
この質問に関して…サスケから強い拒絶を感じた。
どっちなんだ?
俺はこのクラスの教官として、ナルトや…。
サスケのためにできることは…。
それからシノ、チョウジ、シカマル、キバなどのためにできることは…。
日向、サクラ、イノなどのために出来ることは…何なのかと…。
真剣に考えている…。
「イノがおまえに…猛烈にモーション掛けてるのは…知ってる筈だ。
しかし、前までおまえが…一番冷たかったのは、イノだった。
他の奴らはどうでも良さそうなのに、明らかに特別扱いだった。
俺は、おまえの性格がよく分からんから…聞いてみた」
『…』
サスケからの反応はない。
「おまえはイノをいつも強く見ていた。
まるで睨んでいるかのように…。
それから髪の長い女が…好きらしいな…」
『…』
サスケは無言だ。
「どうなんだ?」
『…』
サスケはあの事件以来、失語症に近い…。
「そうか…。
今は話す気にもなれんか…。
あの一件があれば…、当たり前だよな…」
「…」
俺も空気が読めなかったらしい。
教官として…失態だな…。
「おまえは…前まで被害が出るレベルで手裏剣が下手だった。
そのとき…イノの近くの地面ばかり…手裏剣が当たってた。
あれはどういう意味だ?」
『俺の近くに…いつもいるのは…イノだった…』
「だから当たった、巻き込まれたと…サスケ、そういうことなのか?」
『…』
サスケは小さく頷いた。
表情はない。
「そうか。
おまえはある日を境に…突然、手裏剣がうまくなったが…。
以前のは…演技か?」
『…違う…』
「どういうことだ?」
『兄は戦後、写輪眼を開眼した。
兄はシスイの死後…万華鏡を開眼した。
シスイも…同じ…だ。
オレの一族は…なにかの…節目に…、力を得る、ことが…多い。
父が…話してた』
俺は久しぶりにサスケが…流暢に話したのを聞いた気がする。
まだ、たどたどしいが…。
「そうなのか…」
『俺も…ビックリだ…』
「手裏剣があの事件以来、うまくなったことがか?」
『…ああ』
サスケの声は小さくかすれるレベルだ。
「確かに酷い事件だったが…。
”うちは一族”のことは…よく知らんが…そうなのか?」
そう言えば…。
中忍試験で同じ試験会場だった。
サスケの兄…イタチも…
”己は戦争を境に能力を持ち…写輪眼を開眼した”と説明していたが…。
『父が話してた。
突然、不思議な能力に…目覚めるらしい。
しかし…オレは…写輪眼は、まだだ……』
この話の信ぴょう性がどこまでなのかは知らん。
しかし…”うちは一族”は俺にとって謎の多い一族だ。
サスケがそういうのなら…そうなのかもしれん。
「そうか。
それなら分かった。
サスケ…」
俺はサスケを信じることに決めた。
『…』
「おまえ、進級を考えないか?」
『…』
「おまえの実力なら十分、一年上でもやっていける。
俺はおまえを見捨てるわけでもないが…おまえなら太鼓判を押す。
おまえは…どうしたい?」
サスケの兄も…進級をしたのだ。
サスケは…進級でも大丈夫なレベルに…値すると、俺の教官目線で見立てたからだ。
『ここで良い』
「そうか…」
俺は…言いにくかったのだ、この話は。
まるで俺が…サスケを見捨てるようだ。
しかし、実力は確かすぎる…。
サスケはその証拠に…一年は上の術式を、寄宿寮では覚えてるのか。
そんな本ばかり…並んでいるからだ。
「退屈ではないのか」
『いや…』
「そうか…」
そこでハタと、俺は気が付いた。
サスケがこの学年にこだわる理由を。
もしかして…サスケは…やはり…イノが好きなのだろうかと…。
「上の学年には、偵察に行ったことはあるのか?」
『まあ』
サスケは椅子に座ったまま、床を向いてた…。
表情は見えん。
俺とは対面形式だ。
まるで個人面談だな…。
「どうだった」
『ネジは好かん…』
「そうか…」
それは俺も同感だった。
アイツも、しけたヤロウで…サスケとは最強に相性が悪そうだ。
「そうだな…。
サスケがここで良いと言うなら。
それでいい。
オレもホッとした」
『…』
サスケが…安堵したような表情に変わった。
どうも余程上の学年に行きたいと願ってなかったのが察することが出来た。
「まあ、頑張れ。
生ぬるいかもしれんが、俺はおまえのことを応援してる」
『…』
サスケの表情は冷たい…。
今日はかなり喋った方だ…。
「おまえ…いつか復讐にいくんだってな。
そのために力をつけてるらしいな…」
『…』
サスケは目を細めた。
「止めとけ、復讐したとこで良いこともねえ…」
『復讐のために…生きる。
強くなる…』
あの事件以来、サスケは復讐しか頭にねえらしい。
復讐のため、サスケの部屋には…一年上の術式ばかり、並んでいるのだと。
俺は判明した。
「でも上の学年には…上がらねえんだろ?」
『それは…』
「なんだ?」
『復讐のため、強くなる…。だが、オレは…ジユウでいる。
飛び級すれば、サトに…扱き使われる。
一族がそうだった、全員…はやじに…してた…』
俺はそこでサスケの心情を察した。
理解した…。
サスケは一族の死を目の当たりにして…死が更に恐ろしくなったのだ。
だから、敢えてこのクラスに留まっているのか…。
「そおか…」
確かにそうだ。
サスケの一族は…うちはシスイ辺りも…年齢に合わねえ仕事で…早死にしたんだった。
イタチも狂乱はしたが…多忙は極めてた。
「俺で…いいのか?
教え方、ヘタだろ?」
『いい』
「そうか…。
復讐は反対する。
しかし、頑張れよ。
この学級から俺は里の勇者を出すのが夢だ。
全員に言ってる」
『…』
「おまえとナルトに俺は懸けてる」
『俺は復讐のため…頑張る。
俺は帰る…』
最近はサスケの口から二言目には『復讐』と出てくる。
よほど…あの事件が…こたえてるらしい。
「そうか…。
復讐は止めろ。
しかし…術の暗記は頑張れよ」
サスケが去って行った。
ま、サスケがああ言うんだ。
退屈ではねえんだろう。
あの”うちは一族惨殺”事件以来…サスケの手裏剣、飛術…全般の能力が飛躍的に上がった。
サスケの説明が本当なら…あながちウソでもないのだろう。
サスケの一族が”何かの節目に力を得ることが多い”という話なら…聞いたことがある。
昔、中忍試験の時、鉢合わせになった…イタチから”己は戦争を境にこの写輪眼を開眼した”とは説明を受けた…。
あり得るのかもしれん…。
サスケの場合は…体術全般が上がったらしい。
まあ…あれは相当な事件だった…うなづけた…。
確かに一学年上のネジとは…サスケは合いそうにもねえ。
このクラスで女侍らしてる方が、サスケにとっては…天国なのかもしれねえ。
一学年上のリーとも、サスケは合いそうにねえ。
というより、サスケと合う野郎が…俺には想像もつかんのだが…。
一学年上のテンテンを気に入らなかったのだろうか?
やっぱり…本当の理由は女なのかと…俺は疑ってる。
これは俺の疑い過ぎなのか。
サスケは…全く女には興味もなく、本当に…復讐のためだけに力を蓄えているのか。
実力もあるのに、どうして飛び級をしねえのか?
俺には不思議でたまらん。
俺の勘では…髪の長い女に…以前、サスケが執拗までに苛めてた女と言えば…くの一bP実力者イノしかいねえ。
俺は…最近、実はサクラにもサスケのことを頼まれてるが…離れるように…もって行った方が良いのか…。
俺はサクラを元の何色にも染まらぬ花に戻したい。
その方が男子どもの成長威力になるからだ。
どこまでもサクラにはサスケと離れるように斡旋する気だ。
最近、男子どもがへこんでやがる。
ナルトを苛めることしか頭にねえ。
悪い傾向だ。
サクラがサスケに行ってから…と言うものの、可哀そうに…俺のナルトは男子どもに陰口ばかりだ。
ナルトから日向を奪うことしか頭にねえ。
ドベのナルトから奪うのは…日向は力に屈服しねえ。
ナルトを日向の前で貶して…ナルトは精神的に弱者だと…日向に知らしめ…。
日向にナルトを幻滅させることで…。
野郎どもは…日向の心を…自分のモノにする気で…要るらしい。
これは良くない…。
俺の意志に反する。
これは俺が予想した通りだ。
と言うのも…クラスに唯一残った女子、日向は…最初からナルトしか見てねえ。
ドベなのに…女がいるということで…サスケ以上に恨まれてるのだ。
サクラがいたころは、まだ男子どもにも希望があったが…。
もう、希望がなくなったから…ナルトから日向を奪う気でいるらしい…。
まあ、サスケから女を奪うより、ナルトから奪う方が…。
ナルトには力がねえ。
簡単だろうと…男子ども結託してるらしい。
もうこれは…サクラがサスケに行った日…。
俺には予想出来てた。
かわいそうに…ナルトはあれ以来、いつも一人だ…。
裏で
”ドベの癖にどうしてクラスに唯一残された女子奪ってんだよ”
と手洗い場から聞こえてきた。
しかしだ…。
男子どもは結託して、日向がナルトに気があることを…伝える気は全くないらしいな…。
連日、泣いてるナルトと俺は…ラーメンを食べてる。
俺の役目は…サスケとイノをくっつかせ、他の女子どもを…サスケから離れさせ…クラスの戦争を止めることだ。
サクラを元の何色にも属さぬ天使に返すことだ。
サクラは元の純朴な花で良い。
凶悪になることなど俺は望まぬ。
しかし…イノと闘い始めてからは…サクラの成績は飛躍的に伸びてる。
俺は…どう対処すべきなのか…。
俺は日々、平和を祈ってる。
教師とは本当に大変な職業だ…。
【サスケ視点】
まだあの悲しみは…癒えたわけでもない。
それから…別にあの事件を境目に…俺の体術が上がったわけではない、
そこは適当に交わした。
”うちは一族”のことを…よく知らん教官だから、バレナイだろう。
俺は今でも…夢でうなされてる。
忘れたいのに、暗示のように…。
兄からの”復讐へ来い”の伝言だ。
上の学年に行って、癒される訳などない。
教官は、俺がイノを好きと…勘違いしてるらしいが。
それでいい。
その魂胆もあって、『髪が長い女が好き』と噂を流した。
イノの前で。
サクラには…
まだ…情報は伝わってないらしい。
俺は、サクラが俺のせいで女共に苛められるのを…もう見るに堪えん。
イノは強い、苛めも交わせる。
サクラは弱い、強い女に…ボコボコのリンチされそうだ。
クラスの女子は…凶悪すぎる。
俺の痛みは癒えたわけでもない。
しかし、サクラの抱擁によって慰められつつある。
イノは毎回、俺の正面を陣取るが…。
力のないサクラは俺の背後の少ない面積しか…接近できないらしい。
それも黙ってる。
俺には今、気力もない。
俺はイノの名前なら公園で聞いたが…頭に入ってなかった。
サクラとイノが仲良くなってから…サクラが呼んでるから、覚えた程度だ。
女子どもの接近が…少し前までウザかったが…。
最近は…ひと肌が恋しい。
俺には慰める教官もいなければ…。
病室でも一人だった。
女子どもの人格は好きにはなれんが。
温もりは嫌でもない、失った家族の抱擁を思い出す。
この学年を望む。
☆☆☆
更にいえば…俺は復讐のために術式を覚えてるのではない。
ネジを倒すためにやってる、
サクラの趣味がそうとう劣悪で…あんなしけた野郎でも歓声を上げてやがったからだ。
俺にはもう家族もいない。
サクラか復讐しかない。
サクラが目移りしたら、ここを去る気でいる。
ネジは俺が潰すべき壁だ。
学年上がる気にはなれん。
ネジのクラスに行きたいとも願わん。
ここが良い。
このクラスは俺にとってのメンタルサロンだ。
女共は肌で温めてくれるし…サクラは精神的に俺を癒してくれる。
俺は今、空虚だ…。
このクラスには俺の猫がいる…俺を魅了してくる可愛い飼い猫だ…俺にはそう感じる。
少し前まで躾がなっておらんと…感じてたが…。
今は俺に絶対服従らしい。
今、俺は絶望だ…どこまでも俺に愛を与えりゃ良い。
忠誠を遣わせれば良い。
それとだ。
ネジのクラスに…俺目当てで、サクラが遊びに来るのも願わん。
ヤツは俺にとって強敵だ。
潰す。
復讐は後で良い。
兄に会いたいとも願わん。
出来れば忘れたい。
なのに…悪夢は続く。
平和を望んでる。
☆☆☆
俺はどうも嘘つきらしい、何故かクラスで俺が誰を好いてるかバレルのを嫌ってる節がある…。
嘘の噂を流した、変なバトルに巻き込まれたいとも願わん…。
サクラは軽々しいが、時々…茶化されてるだけかと思うことがある…。
サクラは毎日、女友達と楽しそうに競い合ってるようにも見える…。
気のせいならいい…。
俺が黙ってても慕ってくれてるらしい、もっとサクラが強くなり…俺に近づけばいい。
待ってる。
ずっと続くことを祈る。
それにしても…イルカ教官は…。
「おまえとナルトに俺は懸けてる」
こう言った。
ドベのナルトに期待をかける意味が俺には分からん。
よほど、ナルトを寵愛してるとみえる。
俺はナルトを嫉妬してる。
ナルトには日向と言う陰から求愛されてる女がいる…ヤツの好みかは知らん。
俺には女子軍団がいるが…悪いが、俺の失った一族の方が顔面偏差値がよかった…俺の瞳には凶悪なモンスターのようにしか映らん。
その中でアイツだけは別格だ。
猫耳もよく似合う俺の癒しのペットだ。
俺にはアイツだけが癒しだ…俺だけを見てもらうことを祈る、永久に。
【サクラ視点】
わたしはサスケくんに初めて…応援した後…。
イノより先に応援したことで…。
女子トイレで集団リンチにあった。
それ以来、きちんと順番は守ってる…。
わたしはサスケくんのために変わることを決めたけど。
毎回、イノに負けて泣きそうになる。
一生懸命、サスケくんと密着しようとするのに、イノにすぐ引きはがされ、…っサスケくんの背後しか毎回取れない。
わたしだって、サスケくんの正面にいきたいのに…甘えてみたいのに。
サスケくんのファンの女の子は…いっぱいみたいで…その背後すら、全面が取れたわけでもない。
わたしは…強くなりたい。
そして、サスケくんのお嫁さんに、いつかなりたい。
サスケくんってどうして、こんなにモテるんだろ…悲しくなってくる。
サスケくんが手裏剣、上手くなってから…更に酷くなった気がする。
わたしはサスケくんへ…近づくことすら大変で。
陣取れないから…サスケくんに、少しでもアピールしたくて。
サスケくんの悪口言う男子、ナルトはサスケくんの前で殴ってる。
その間、女子とサスケくんは…引っ付いてるけど…。
わたしは…わたしなりの、やり方で…サスケくんの心に、響けばいいなと願う。
強くなろうと願うけど…夜になると泣きそうになる。
今日、イノから言われたことや…女子からの明らかな嫌味や…。
中傷。
でも、一生懸命、内部に強い自分を飼って、戦ってる。
もう、負けるわけにもいかない。
本当は泣きそうになることも多いけど、
私は強いんだって…。
強くなるために必死。
最近のサスケくんは…変。
ほとんど…言葉を発してない。
わたしに…いま、なにができるんだろ…。
今年から強くなるんだって決めたのに…。
私はまだ強くなりきれてない。
心の中で「しゃーなろ!イノは倒す!負けない!」って叫んでるけど…。
イノは強すぎる。
私は…もっともっと…ガンバりたい。
いつも家では鏡に向かって…「強くなる」って自分に言ってる。
それから…強くなった自分を想像してる。
このままじゃ、二重人格になるレベルで…。
わたしは…それでもいい。
つよくなりたい…。
明日もガンバる。
☆☆☆
わたしはいったい、いつからサスケくんが好きなんだろ。
サスケくんの隣にいる時が一番幸せ。
昔、友達がいなくて泣いてた。
サスケくんにはお世話になった。
それからやっと女友達が出来た。
これでサスケくんに迷惑掛からないって…イノから説得された。
辛かった。
一緒にいたかったのに…断れなくて。
家に帰って泣いてた。
毎日、孤独だった。
わたしは…こんなに好きなのに。
一度は諦めようとしてた…。
闘っても、勝ち目がないと思って。
けど…イノのいないときは…ずっとサスケくんのことばかりで。
ずっと見てた。
男子たちが…サスケくんファンクラブに入ってないのが私ぐらいで…。
日向がナルトを好きなことぐらい。
すぐにわかる。
毎日、ウザいくらい声を掛けてもらえた。
でも…わたしは…サスケくんじゃなきゃ、ダメだってわかった。
無謀な戦いで…怖かった。
わたしは…弱いし、あそこにいけば…リンチされそうだし、イジメまくられるのすぐに分かるし。
泣くのが怖くて逃げてた。
サスケくんが大好きなのに。
遠目に見てただけ。
でも…。
イノには耐えられなくて。
離別を言い渡した。
アソコにいても…わたしには居場所がなかったから。
それからもずっと、サスケくんを見てた。
サスケくんが、ある日を境に表情を失い…それから…急変してから。
わたしは…何故か…里抜けの道で…サスケくんが去るような気がして…。
サスケくん、いつも里抜けの道でウロウロしてるし…。
不安で勇気を出して、告白した。
もう以前のサスケくんじゃ…なかった。
けど、それから根性で戦うことに決めた。
わたしは…確かに…強い男の人が好きみたいで。
サスケくんの手裏剣には惚れ惚れしちゃうみたい。
確かにそう…。
自分が泣いてばかりで弱かったから…小さいころから憧れだった。
強い人が…。
すごいな…って感動するみたい…。
わたしも、なりたいなって…。
わたしはまだ…泣いてばかり…。
でもサスケくんはそれだけじゃない。
とっても温かい心を持ってるの、わたし…知ってる。
それから凄く好みの顔。
ライバルだらけで…本当に大変だけど。
夢見てる、サスケくんと一緒になることを。
わたしは…強くなりたい…。
なれたら、いいな…。
わたしは、サスケくんが…だいすき。
【イノ視点】
私はサクラのことを…とっても、ムカついてるの。
だからとことん苛めてるのよ?
理由は確かにサスケくんは
≪髪が長いこと短いのどっちが好き?≫
と尋ねて…
『長いの…』
と生まれて初めて、私と会話してくれたのよ?
≪キャーーー。
私、サスケくんの好みなのね。
嬉しいわよ?
サスケくん?≫
とサスケくんの前で…歓声を上げたわ…。
あれは…。
サクラが…ナルトをボコりに行って…。
ファンクラブのメンバーが密着してる時のことね?
それから…あとから…他のメンバーもうるさいのよ!!
[私も髪が長いわよ]
[私かしら?]
[サクラには黙っておこうと…この情報]
[私かしら?]
[ふふふふ]
二人っきりの会話じゃない!
それから…サスケくんの視線を見れば…
私じゃなく…サクラとナルトを見てるの。
サスケくんは…サクラがナルトをボコってるのを…遠目に眺めて…微笑してるのよ??
そこが一番腹立つわ・…。
私を…見てないの!
あれはどういう意味なのかしら?
サスケくんって…やっぱり思考回路、変わってるのかしら?
それ以外にもあるわ?
サクラは…サスケくんのことを「強くて、格好良くて、優しくて…だから好き」
って言ってたけどね…。
私はサスケくんが≪格好良くて、強い≫から好きなの!
サスケくんは…私の前で一度も優しかった経験なんてないわ!
私は…サスケくんが…好きな子を苛める性格であることを祈ってるのよ?
そういう人間もいるって聞いたことがあるわ、両親からね?
サスケくんって変わってるから、ありえそうよ…?
毎日、私のことを強く見て…まるで睨むかのように観察してた頃もあるし。
それだけじゃなく、以前、手裏剣は毎回、私の前の地面に落ちてたの。
あれ、『すごいだろ?』って私にアピールしてたのか…って…浮かれてたのに。
最近、サスケくんったら突然、上手になったのよ?
きっと私の応援のおかげで…うまくなったのね?サスケくん…。
私の祈りが効いたわ???
サクラには最初から勝ってるわ。
だって、私にだけ毎回よ。
他の女子にはないのよ。
明らかな特別扱い。
私には分かるのよ?
サスケくん、きっと私の前では照れて会話が出来ないだけよ…私の美貌に屈して自分から接近できないだけ。
サスケくんはシャイな性格なのよ??
サクラなんかに勝ち目なんてある訳ないわ、ふんっ!
だって…この私の美貌に魅了されないんだもの、きっと変わってるのよ?
私は自分のことなら…とっても自信があるの。
これは生まれつきね、常に勝気よ?
その精神で敵も倒してきたわ。
それから成績だって優秀…。
私ほど素晴らしい女性もいないはずなの。
私はこの世界の主役だと信じているわ…?
サスケくんは…私のものよ。
昔、サクラだけ跳ね子だったころ、面倒少しだけ見てもらえたからって。
付け上がってるんじゃないわよ、サクラ?
あれは…サスケくんの御厚意なのよ。
サスケくん、恐らく泣き虫だったサクラなんて見下していたわ。
私が救ってあげたのよ、感謝しなさい???
成績だって、サクラに勝ってるし。
今日はサスケくん…メンバーたちの前で初めて…「長いのだ」って答えたし…。
きっと、わたしのモノなのよ、サスケくんは。
それなのに、この私に無謀な戦いを挑むなんてサクラってバカね?
サクラはとことん、潰す。
どこまでも倒す。
今日から、ファンクラブのメンバーもサクラのことなんて見向きもしないわ。
まあ、この私の美貌なら…瞬殺で落ちてるでしょうけどね。
しかも私って面倒見も良いし、それから成績優秀だし。
最高の女性だもの。
女友達だって100名はいるのよ?
仕切るのもうまいし、貶すことなんて何一つない女だもの?
だけど…きっと、サスケくんファンクラブのメンバー。
今日から…私に対抗してくるわね。
だって、サスケくんは髪の長い女が好きなんですもの。
きっと、私のことなのよ?
周りから視線を感じるわ…。
戦いのリングね…。
いいわよ?
受けて立ってあげるわ、その喧嘩。
だって、サスケくんは私のものだからね?
私の実力を…なめんじゃないわよ?
アンタたちなんて、すぐ倒せるんだからね?
おとなしくするのね?
勝ち目は…私にあるわ。
私は、常に勝気だしね???
うちは事件の里抜け計画
☆目次
☆サクラの罪(サスケ+イルカ先生)「俺はまだサクラを許したわけではない…」
「仲間に入れてくれってばよ。
みんなで”サスケ大嫌いクラブ”結成しようってばよ。
サクラちゃん、取り返そうってばよ。
サスケからよ」
【めんどくせー。
おまえはあっち行ってろ】
--シカマルは機嫌が悪いらしい。
「え?
なんだってばよ?」
◎オメエは邪魔だって、オカシ食うからあっち行ってろ◎
--チョウジだ。
「どうしたんだってば?
俺ら友達になれねえのかってば?」
●俺とお前は人種が違うんだ、
ドベは去ってろ●
●バウバウ!!●
--赤丸とキバは怒ってる。
「冷たてえ。
サクラちゃんだけじゃなく、
おまえらまで、ドベだからって仲間に入れてくれねえのかよ」
{ドベの癖に…。
口答えするな!
俺たちは感傷に浸ってるんだ}
--シノは蜂を飛ばして…ナルトに威嚇した。
「俺も感傷に浸りたいってばよ。
今日もさ、サスケの前で…サスケの悪口言って…サクラちゃんに殴られてよ」
●女に殴られるだけでもマシだ。
俺なんて、触ってすらもらえてねえ●
●バウバウ●
--赤丸とキバだ。
「えええ!
あれってばそういう意味じゃねえってば」
◎おまえはうるさい、ドベのくせに。
俺たちは腹が立ってる。
イルカ先生のところへ行っとけ!
菓子、食べる◎
--チョウジだ。
【めんどうくせ…。
みんな、どっかずらかろうぜ】
「待ってくれってば〜。
オレも仲間に入れてくれってば…」
{おまえはドベで優遇されてる!}
--虫使いのシノだ。
「え?
イルカ先生のことだってばか?
確かに先生、優しいってばな」
●ドベ、あっちいけ。
俺たち4人は仲間だが…。
おまえはドベだ。
これ以上語らん●
●バウウウウウウウ!!●
--キバと赤丸もとても機嫌が悪い・…。
「どうしたんだってばよ…
みんな…」
--ナルトだけが残された…。
☆☆☆
4人は素早く、ナルトから離れて会議を始めた。
{とうとう恐れてたことが…起きたか}
シノはいつもどおり、虫と会話してる。
●俺はもう楽しくねえ…。
な。
赤丸●
●バウバウ●
【この里の女子、つまらねえ。
めんどくせ…】
◎ほんとう、日向しかいねえし。
もう菓子食べまくるわ◎
{おまえたち…知ってるか?
ヒナタが誰が好きか…}
--シノが眼鏡をオドオドしながら…残りの3人に尋ねた。
●チッ。
ドベのナルトだろ?●
●バウウウウ●
--赤丸とキバだ。
【めんどくせー。
全員知ってるぜ】
--シカマルだ。
◎ナルトのどこが良いんだよ。
ドベの癖に。
デブはいやってか?◎
--チョウジだ。
{この里の女子で残されたのは…。
とうとう日向しかいなくなった。
おまえたち、サスケから女を取り戻すのと…。
ドベのナルトから…ヒナタを取るのと…。
どっちが簡単だと思う?}
--虫使いシノの眼鏡がキラーンと光った。
【めんどうくせ―けど…ナルトから日向だ】
--シカマルは即答だ。
◎誰でもわかるって。
デブはいやってか?
腹立つ、くうぜ◎
--チョウジだ。
●むかつくぜ、ドベの癖に女に好かれて…。
女に触ってもらってることがよ●
●バウウウウーー!●
--キバと赤丸だ。
{俺たち四人で…どこまでも日向とナルトの仲を裂こう。
題して、『ナルト撲滅クラブ』だ}
--シノは宣言した。
【そうだな、めんどくせ―けど…サスケから女取るより簡単だ】
--シカマルもダルそうだが賛成らしい。
◎本当、最後の一人くらい、俺にのこせってな。
デブはいやか?女は?◎
--チョウジはカンカンで食べまくってる。
●まあ、ナルトになら楽勝だな…赤丸●
●バウ!●
--赤丸とキバも同盟に参加するらしい。
{ドベのナルトから日向を奪った後…。
サスケは潰しに行けばいい}
--シノの眼鏡が光った。
【あああ。
めんどくせー。
ほかのサトいきてえ】
--シカマルだ。
◎本当、掟…変えろって。
どうしてほかのサトの女子と恋愛しちゃ、いけねえんだよ。
もうオカシだべるぜ◎
--チョウジだ。
●まあ…。里の情報が横漏れになるからだろうけど…。
もう、つまらねえな。赤丸●
●くーーーん●
--キバと赤丸は項垂れていた…。
こうして、その日、男子どもから。
『ナルト撲滅クラブ』が結成された。
何色にも染まらぬクラスの花…サクラはサスケの力に屈服し、奪われた。
残ったのは…最初からドベのナルトしか見てない日向…。
ドベのナルトから…ヒナタを男子一人が奪った後…。
その日向を…次の順位の男が取り合うのか…。
それともサスケから女を奪い返すのか…。
血みどろの戦いになりそうなのだけが…メンバーたちの目に見えていたのだ。
結婚できないということは血筋が途絶えることだ…里は閉鎖的で…殆どの女子を一人にとられ…大変な状況だ…。
幼児心にそれぞれ己の未来を案じていたのだ…。
忍者社会とは大変だ…。
この日以来…ナルトは男子たちに完全跳ね子にされてしまうようになった…。
しかし、ナルトは…日向が最初からナルトを好きであることは知らない…。
【ナルト視点】
なんだってば?
男子どもつめてえってば…。
ドベの癖に触ってもらえてってな。
俺さ、サクラちゃんにボコられるの嫌だけどよ。
よろこばなきゃ、なんねえってばか?
確かにアイツら、一度も触ってもらったこと見たことねえけどよ。
ああああ。
このクラス、壊滅的だってば。
たった一人、残された日向はさ。
俺が喋るとすぐ逃げたり、顔近づくと倒れたりするんだってば。
しかも他の男子が話すと普通なのにさ。
俺だけ、変な態度で逃げられるんだってば。
顔も見てくんねえし。
変な奴で…。
他の男子には普通に仲良しなのにさ。
オレ、サクラちゃんに…しなきゃいけねえのかってばよ?
ボコられるの、羨ましがられたってばよ。
もう、分かんねえってばよ。
俺はよ、絶対、火影になって…。
この里のオンナ…取り戻す。
そして、この里で家族つくる。
イルカ先生、オレ…大変だと思うけどよ。
応援してくれってば。
【イルカ先生視点】
授業が終わり、俺は聞きたくないものを耳にした。
男子どものナルトの悪口だ。
これは予想出来てた展開だった。
俺は先生として、出来ることと言えばこれぐらいだ…。
俺は放課後、サスケを個人的に呼び出した。
尋ねたいことが山ほどあったからだ。
「サスケ、そこに座れ?」
『…』
サスケは無言で俺の前の椅子に座った。
今日はこの教室、俺とサスケの二人っきりだ。
大切な話だからだ。
サスケはあの一件以来…口数が減った。
前から多弁でもなかったが余計に増してる。
[そこがまた良い]
[クールなのが最高]
と女子どもは原因も知らず絶賛しているが…。
俺から本題に切り出すことに決めた。
「サスケ、野暮な話になるが…」
『…』
返答はない・…。
俺は恐る恐る核心に迫った。
全てはナルトのためだ…。
「おまえはイノが好きなのか?
好きな子ほど苛めたくなるのか?」
『…』
サスケの表情は硬い。
なにも読み取れねえな…。
「俺のライバル、ミズキがそうだった。
好きな子ほど標的にして苛めてた。
おまえはミズキと似ている。
俺の勘だ。
どうなんだ」
髪を引っ張ったり、カエルを肩に乗せてたり…ミズキはしてた。
俺はそういう人種の気持ちが全く分からねえ。
コイツを見てると何故かミズキを思い出す…。
『どうでも良い…』
声が低い。
この質問に関して…サスケから強い拒絶を感じた。
どっちなんだ?
俺はこのクラスの教官として、ナルトや…。
サスケのためにできることは…。
それからシノ、チョウジ、シカマル、キバなどのためにできることは…。
日向、サクラ、イノなどのために出来ることは…何なのかと…。
真剣に考えている…。
「イノがおまえに…猛烈にモーション掛けてるのは…知ってる筈だ。
しかし、前までおまえが…一番冷たかったのは、イノだった。
他の奴らはどうでも良さそうなのに、明らかに特別扱いだった。
俺は、おまえの性格がよく分からんから…聞いてみた」
『…』
サスケからの反応はない。
「おまえはイノをいつも強く見ていた。
まるで睨んでいるかのように…。
それから髪の長い女が…好きらしいな…」
『…』
サスケは無言だ。
「どうなんだ?」
『…』
サスケはあの事件以来、失語症に近い…。
「そうか…。
今は話す気にもなれんか…。
あの一件があれば…、当たり前だよな…」
「…」
俺も空気が読めなかったらしい。
教官として…失態だな…。
「おまえは…前まで被害が出るレベルで手裏剣が下手だった。
そのとき…イノの近くの地面ばかり…手裏剣が当たってた。
あれはどういう意味だ?」
『俺の近くに…いつもいるのは…イノだった…』
「だから当たった、巻き込まれたと…サスケ、そういうことなのか?」
『…』
サスケは小さく頷いた。
表情はない。
「そうか。
おまえはある日を境に…突然、手裏剣がうまくなったが…。
以前のは…演技か?」
『…違う…』
「どういうことだ?」
『兄は戦後、写輪眼を開眼した。
兄はシスイの死後…万華鏡を開眼した。
シスイも…同じ…だ。
オレの一族は…なにかの…節目に…、力を得る、ことが…多い。
父が…話してた』
俺は久しぶりにサスケが…流暢に話したのを聞いた気がする。
まだ、たどたどしいが…。
「そうなのか…」
『俺も…ビックリだ…』
「手裏剣があの事件以来、うまくなったことがか?」
『…ああ』
サスケの声は小さくかすれるレベルだ。
「確かに酷い事件だったが…。
”うちは一族”のことは…よく知らんが…そうなのか?」
そう言えば…。
中忍試験で同じ試験会場だった。
サスケの兄…イタチも…
”己は戦争を境に能力を持ち…写輪眼を開眼した”と説明していたが…。
『父が話してた。
突然、不思議な能力に…目覚めるらしい。
しかし…オレは…写輪眼は、まだだ……』
この話の信ぴょう性がどこまでなのかは知らん。
しかし…”うちは一族”は俺にとって謎の多い一族だ。
サスケがそういうのなら…そうなのかもしれん。
「そうか。
それなら分かった。
サスケ…」
俺はサスケを信じることに決めた。
『…』
「おまえ、進級を考えないか?」
『…』
「おまえの実力なら十分、一年上でもやっていける。
俺はおまえを見捨てるわけでもないが…おまえなら太鼓判を押す。
おまえは…どうしたい?」
サスケの兄も…進級をしたのだ。
サスケは…進級でも大丈夫なレベルに…値すると、俺の教官目線で見立てたからだ。
『ここで良い』
「そうか…」
俺は…言いにくかったのだ、この話は。
まるで俺が…サスケを見捨てるようだ。
しかし、実力は確かすぎる…。
サスケはその証拠に…一年は上の術式を、寄宿寮では覚えてるのか。
そんな本ばかり…並んでいるからだ。
「退屈ではないのか」
『いや…』
「そうか…」
そこでハタと、俺は気が付いた。
サスケがこの学年にこだわる理由を。
もしかして…サスケは…やはり…イノが好きなのだろうかと…。
「上の学年には、偵察に行ったことはあるのか?」
『まあ』
サスケは椅子に座ったまま、床を向いてた…。
表情は見えん。
俺とは対面形式だ。
まるで個人面談だな…。
「どうだった」
『ネジは好かん…』
「そうか…」
それは俺も同感だった。
アイツも、しけたヤロウで…サスケとは最強に相性が悪そうだ。
「そうだな…。
サスケがここで良いと言うなら。
それでいい。
オレもホッとした」
『…』
サスケが…安堵したような表情に変わった。
どうも余程上の学年に行きたいと願ってなかったのが察することが出来た。
「まあ、頑張れ。
生ぬるいかもしれんが、俺はおまえのことを応援してる」
『…』
サスケの表情は冷たい…。
今日はかなり喋った方だ…。
「おまえ…いつか復讐にいくんだってな。
そのために力をつけてるらしいな…」
『…』
サスケは目を細めた。
「止めとけ、復讐したとこで良いこともねえ…」
『復讐のために…生きる。
強くなる…』
あの事件以来、サスケは復讐しか頭にねえらしい。
復讐のため、サスケの部屋には…一年上の術式ばかり、並んでいるのだと。
俺は判明した。
「でも上の学年には…上がらねえんだろ?」
『それは…』
「なんだ?」
『復讐のため、強くなる…。だが、オレは…ジユウでいる。
飛び級すれば、サトに…扱き使われる。
一族がそうだった、全員…はやじに…してた…』
俺はそこでサスケの心情を察した。
理解した…。
サスケは一族の死を目の当たりにして…死が更に恐ろしくなったのだ。
だから、敢えてこのクラスに留まっているのか…。
「そおか…」
確かにそうだ。
サスケの一族は…うちはシスイ辺りも…年齢に合わねえ仕事で…早死にしたんだった。
イタチも狂乱はしたが…多忙は極めてた。
「俺で…いいのか?
教え方、ヘタだろ?」
『いい』
「そうか…。
復讐は反対する。
しかし、頑張れよ。
この学級から俺は里の勇者を出すのが夢だ。
全員に言ってる」
『…』
「おまえとナルトに俺は懸けてる」
『俺は復讐のため…頑張る。
俺は帰る…』
最近はサスケの口から二言目には『復讐』と出てくる。
よほど…あの事件が…こたえてるらしい。
「そうか…。
復讐は止めろ。
しかし…術の暗記は頑張れよ」
サスケが去って行った。
ま、サスケがああ言うんだ。
退屈ではねえんだろう。
あの”うちは一族惨殺”事件以来…サスケの手裏剣、飛術…全般の能力が飛躍的に上がった。
サスケの説明が本当なら…あながちウソでもないのだろう。
サスケの一族が”何かの節目に力を得ることが多い”という話なら…聞いたことがある。
昔、中忍試験の時、鉢合わせになった…イタチから”己は戦争を境にこの写輪眼を開眼した”とは説明を受けた…。
あり得るのかもしれん…。
サスケの場合は…体術全般が上がったらしい。
まあ…あれは相当な事件だった…うなづけた…。
確かに一学年上のネジとは…サスケは合いそうにもねえ。
このクラスで女侍らしてる方が、サスケにとっては…天国なのかもしれねえ。
一学年上のリーとも、サスケは合いそうにねえ。
というより、サスケと合う野郎が…俺には想像もつかんのだが…。
一学年上のテンテンを気に入らなかったのだろうか?
やっぱり…本当の理由は女なのかと…俺は疑ってる。
これは俺の疑い過ぎなのか。
サスケは…全く女には興味もなく、本当に…復讐のためだけに力を蓄えているのか。
実力もあるのに、どうして飛び級をしねえのか?
俺には不思議でたまらん。
俺の勘では…髪の長い女に…以前、サスケが執拗までに苛めてた女と言えば…くの一bP実力者イノしかいねえ。
俺は…最近、実はサクラにもサスケのことを頼まれてるが…離れるように…もって行った方が良いのか…。
俺はサクラを元の何色にも染まらぬ花に戻したい。
その方が男子どもの成長威力になるからだ。
どこまでもサクラにはサスケと離れるように斡旋する気だ。
最近、男子どもがへこんでやがる。
ナルトを苛めることしか頭にねえ。
悪い傾向だ。
サクラがサスケに行ってから…と言うものの、可哀そうに…俺のナルトは男子どもに陰口ばかりだ。
ナルトから日向を奪うことしか頭にねえ。
ドベのナルトから奪うのは…日向は力に屈服しねえ。
ナルトを日向の前で貶して…ナルトは精神的に弱者だと…日向に知らしめ…。
日向にナルトを幻滅させることで…。
野郎どもは…日向の心を…自分のモノにする気で…要るらしい。
これは良くない…。
俺の意志に反する。
これは俺が予想した通りだ。
と言うのも…クラスに唯一残った女子、日向は…最初からナルトしか見てねえ。
ドベなのに…女がいるということで…サスケ以上に恨まれてるのだ。
サクラがいたころは、まだ男子どもにも希望があったが…。
もう、希望がなくなったから…ナルトから日向を奪う気でいるらしい…。
まあ、サスケから女を奪うより、ナルトから奪う方が…。
ナルトには力がねえ。
簡単だろうと…男子ども結託してるらしい。
もうこれは…サクラがサスケに行った日…。
俺には予想出来てた。
かわいそうに…ナルトはあれ以来、いつも一人だ…。
裏で
”ドベの癖にどうしてクラスに唯一残された女子奪ってんだよ”
と手洗い場から聞こえてきた。
しかしだ…。
男子どもは結託して、日向がナルトに気があることを…伝える気は全くないらしいな…。
連日、泣いてるナルトと俺は…ラーメンを食べてる。
俺の役目は…サスケとイノをくっつかせ、他の女子どもを…サスケから離れさせ…クラスの戦争を止めることだ。
サクラを元の何色にも属さぬ天使に返すことだ。
サクラは元の純朴な花で良い。
凶悪になることなど俺は望まぬ。
しかし…イノと闘い始めてからは…サクラの成績は飛躍的に伸びてる。
俺は…どう対処すべきなのか…。
俺は日々、平和を祈ってる。
教師とは本当に大変な職業だ…。
【サスケ視点】
まだあの悲しみは…癒えたわけでもない。
それから…別にあの事件を境目に…俺の体術が上がったわけではない、
そこは適当に交わした。
”うちは一族”のことを…よく知らん教官だから、バレナイだろう。
俺は今でも…夢でうなされてる。
忘れたいのに、暗示のように…。
兄からの”復讐へ来い”の伝言だ。
上の学年に行って、癒される訳などない。
教官は、俺がイノを好きと…勘違いしてるらしいが。
それでいい。
その魂胆もあって、『髪が長い女が好き』と噂を流した。
イノの前で。
サクラには…
まだ…情報は伝わってないらしい。
俺は、サクラが俺のせいで女共に苛められるのを…もう見るに堪えん。
イノは強い、苛めも交わせる。
サクラは弱い、強い女に…ボコボコのリンチされそうだ。
クラスの女子は…凶悪すぎる。
俺の痛みは癒えたわけでもない。
しかし、サクラの抱擁によって慰められつつある。
イノは毎回、俺の正面を陣取るが…。
力のないサクラは俺の背後の少ない面積しか…接近できないらしい。
それも黙ってる。
俺には今、気力もない。
俺はイノの名前なら公園で聞いたが…頭に入ってなかった。
サクラとイノが仲良くなってから…サクラが呼んでるから、覚えた程度だ。
女子どもの接近が…少し前までウザかったが…。
最近は…ひと肌が恋しい。
俺には慰める教官もいなければ…。
病室でも一人だった。
女子どもの人格は好きにはなれんが。
温もりは嫌でもない、失った家族の抱擁を思い出す。
この学年を望む。
☆☆☆
更にいえば…俺は復讐のために術式を覚えてるのではない。
ネジを倒すためにやってる、
サクラの趣味がそうとう劣悪で…あんなしけた野郎でも歓声を上げてやがったからだ。
俺にはもう家族もいない。
サクラか復讐しかない。
サクラが目移りしたら、ここを去る気でいる。
ネジは俺が潰すべき壁だ。
学年上がる気にはなれん。
ネジのクラスに行きたいとも願わん。
ここが良い。
このクラスは俺にとってのメンタルサロンだ。
女共は肌で温めてくれるし…サクラは精神的に俺を癒してくれる。
俺は今、空虚だ…。
このクラスには俺の猫がいる…俺を魅了してくる可愛い飼い猫だ…俺にはそう感じる。
少し前まで躾がなっておらんと…感じてたが…。
今は俺に絶対服従らしい。
今、俺は絶望だ…どこまでも俺に愛を与えりゃ良い。
忠誠を遣わせれば良い。
それとだ。
ネジのクラスに…俺目当てで、サクラが遊びに来るのも願わん。
ヤツは俺にとって強敵だ。
潰す。
復讐は後で良い。
兄に会いたいとも願わん。
出来れば忘れたい。
なのに…悪夢は続く。
平和を望んでる。
☆☆☆
俺はどうも嘘つきらしい、何故かクラスで俺が誰を好いてるかバレルのを嫌ってる節がある…。
嘘の噂を流した、変なバトルに巻き込まれたいとも願わん…。
サクラは軽々しいが、時々…茶化されてるだけかと思うことがある…。
サクラは毎日、女友達と楽しそうに競い合ってるようにも見える…。
気のせいならいい…。
俺が黙ってても慕ってくれてるらしい、もっとサクラが強くなり…俺に近づけばいい。
待ってる。
ずっと続くことを祈る。
それにしても…イルカ教官は…。
「おまえとナルトに俺は懸けてる」
こう言った。
ドベのナルトに期待をかける意味が俺には分からん。
よほど、ナルトを寵愛してるとみえる。
俺はナルトを嫉妬してる。
ナルトには日向と言う陰から求愛されてる女がいる…ヤツの好みかは知らん。
俺には女子軍団がいるが…悪いが、俺の失った一族の方が顔面偏差値がよかった…俺の瞳には凶悪なモンスターのようにしか映らん。
その中でアイツだけは別格だ。
猫耳もよく似合う俺の癒しのペットだ。
俺にはアイツだけが癒しだ…俺だけを見てもらうことを祈る、永久に。
【サクラ視点】
わたしはサスケくんに初めて…応援した後…。
イノより先に応援したことで…。
女子トイレで集団リンチにあった。
それ以来、きちんと順番は守ってる…。
わたしはサスケくんのために変わることを決めたけど。
毎回、イノに負けて泣きそうになる。
一生懸命、サスケくんと密着しようとするのに、イノにすぐ引きはがされ、…っサスケくんの背後しか毎回取れない。
わたしだって、サスケくんの正面にいきたいのに…甘えてみたいのに。
サスケくんのファンの女の子は…いっぱいみたいで…その背後すら、全面が取れたわけでもない。
わたしは…強くなりたい。
そして、サスケくんのお嫁さんに、いつかなりたい。
サスケくんってどうして、こんなにモテるんだろ…悲しくなってくる。
サスケくんが手裏剣、上手くなってから…更に酷くなった気がする。
わたしはサスケくんへ…近づくことすら大変で。
陣取れないから…サスケくんに、少しでもアピールしたくて。
サスケくんの悪口言う男子、ナルトはサスケくんの前で殴ってる。
その間、女子とサスケくんは…引っ付いてるけど…。
わたしは…わたしなりの、やり方で…サスケくんの心に、響けばいいなと願う。
強くなろうと願うけど…夜になると泣きそうになる。
今日、イノから言われたことや…女子からの明らかな嫌味や…。
中傷。
でも、一生懸命、内部に強い自分を飼って、戦ってる。
もう、負けるわけにもいかない。
本当は泣きそうになることも多いけど、
私は強いんだって…。
強くなるために必死。
最近のサスケくんは…変。
ほとんど…言葉を発してない。
わたしに…いま、なにができるんだろ…。
今年から強くなるんだって決めたのに…。
私はまだ強くなりきれてない。
心の中で「しゃーなろ!イノは倒す!負けない!」って叫んでるけど…。
イノは強すぎる。
私は…もっともっと…ガンバりたい。
いつも家では鏡に向かって…「強くなる」って自分に言ってる。
それから…強くなった自分を想像してる。
このままじゃ、二重人格になるレベルで…。
わたしは…それでもいい。
つよくなりたい…。
明日もガンバる。
☆☆☆
わたしはいったい、いつからサスケくんが好きなんだろ。
サスケくんの隣にいる時が一番幸せ。
昔、友達がいなくて泣いてた。
サスケくんにはお世話になった。
それからやっと女友達が出来た。
これでサスケくんに迷惑掛からないって…イノから説得された。
辛かった。
一緒にいたかったのに…断れなくて。
家に帰って泣いてた。
毎日、孤独だった。
わたしは…こんなに好きなのに。
一度は諦めようとしてた…。
闘っても、勝ち目がないと思って。
けど…イノのいないときは…ずっとサスケくんのことばかりで。
ずっと見てた。
男子たちが…サスケくんファンクラブに入ってないのが私ぐらいで…。
日向がナルトを好きなことぐらい。
すぐにわかる。
毎日、ウザいくらい声を掛けてもらえた。
でも…わたしは…サスケくんじゃなきゃ、ダメだってわかった。
無謀な戦いで…怖かった。
わたしは…弱いし、あそこにいけば…リンチされそうだし、イジメまくられるのすぐに分かるし。
泣くのが怖くて逃げてた。
サスケくんが大好きなのに。
遠目に見てただけ。
でも…。
イノには耐えられなくて。
離別を言い渡した。
アソコにいても…わたしには居場所がなかったから。
それからもずっと、サスケくんを見てた。
サスケくんが、ある日を境に表情を失い…それから…急変してから。
わたしは…何故か…里抜けの道で…サスケくんが去るような気がして…。
サスケくん、いつも里抜けの道でウロウロしてるし…。
不安で勇気を出して、告白した。
もう以前のサスケくんじゃ…なかった。
けど、それから根性で戦うことに決めた。
わたしは…確かに…強い男の人が好きみたいで。
サスケくんの手裏剣には惚れ惚れしちゃうみたい。
確かにそう…。
自分が泣いてばかりで弱かったから…小さいころから憧れだった。
強い人が…。
すごいな…って感動するみたい…。
わたしも、なりたいなって…。
わたしはまだ…泣いてばかり…。
でもサスケくんはそれだけじゃない。
とっても温かい心を持ってるの、わたし…知ってる。
それから凄く好みの顔。
ライバルだらけで…本当に大変だけど。
夢見てる、サスケくんと一緒になることを。
わたしは…強くなりたい…。
なれたら、いいな…。
わたしは、サスケくんが…だいすき。
【イノ視点】
私はサクラのことを…とっても、ムカついてるの。
だからとことん苛めてるのよ?
理由は確かにサスケくんは
≪髪が長いこと短いのどっちが好き?≫
と尋ねて…
『長いの…』
と生まれて初めて、私と会話してくれたのよ?
≪キャーーー。
私、サスケくんの好みなのね。
嬉しいわよ?
サスケくん?≫
とサスケくんの前で…歓声を上げたわ…。
あれは…。
サクラが…ナルトをボコりに行って…。
ファンクラブのメンバーが密着してる時のことね?
それから…あとから…他のメンバーもうるさいのよ!!
[私も髪が長いわよ]
[私かしら?]
[サクラには黙っておこうと…この情報]
[私かしら?]
[ふふふふ]
二人っきりの会話じゃない!
それから…サスケくんの視線を見れば…
私じゃなく…サクラとナルトを見てるの。
サスケくんは…サクラがナルトをボコってるのを…遠目に眺めて…微笑してるのよ??
そこが一番腹立つわ・…。
私を…見てないの!
あれはどういう意味なのかしら?
サスケくんって…やっぱり思考回路、変わってるのかしら?
それ以外にもあるわ?
サクラは…サスケくんのことを「強くて、格好良くて、優しくて…だから好き」
って言ってたけどね…。
私はサスケくんが≪格好良くて、強い≫から好きなの!
サスケくんは…私の前で一度も優しかった経験なんてないわ!
私は…サスケくんが…好きな子を苛める性格であることを祈ってるのよ?
そういう人間もいるって聞いたことがあるわ、両親からね?
サスケくんって変わってるから、ありえそうよ…?
毎日、私のことを強く見て…まるで睨むかのように観察してた頃もあるし。
それだけじゃなく、以前、手裏剣は毎回、私の前の地面に落ちてたの。
あれ、『すごいだろ?』って私にアピールしてたのか…って…浮かれてたのに。
最近、サスケくんったら突然、上手になったのよ?
きっと私の応援のおかげで…うまくなったのね?サスケくん…。
私の祈りが効いたわ???
サクラには最初から勝ってるわ。
だって、私にだけ毎回よ。
他の女子にはないのよ。
明らかな特別扱い。
私には分かるのよ?
サスケくん、きっと私の前では照れて会話が出来ないだけよ…私の美貌に屈して自分から接近できないだけ。
サスケくんはシャイな性格なのよ??
サクラなんかに勝ち目なんてある訳ないわ、ふんっ!
だって…この私の美貌に魅了されないんだもの、きっと変わってるのよ?
私は自分のことなら…とっても自信があるの。
これは生まれつきね、常に勝気よ?
その精神で敵も倒してきたわ。
それから成績だって優秀…。
私ほど素晴らしい女性もいないはずなの。
私はこの世界の主役だと信じているわ…?
サスケくんは…私のものよ。
昔、サクラだけ跳ね子だったころ、面倒少しだけ見てもらえたからって。
付け上がってるんじゃないわよ、サクラ?
あれは…サスケくんの御厚意なのよ。
サスケくん、恐らく泣き虫だったサクラなんて見下していたわ。
私が救ってあげたのよ、感謝しなさい???
成績だって、サクラに勝ってるし。
今日はサスケくん…メンバーたちの前で初めて…「長いのだ」って答えたし…。
きっと、わたしのモノなのよ、サスケくんは。
それなのに、この私に無謀な戦いを挑むなんてサクラってバカね?
サクラはとことん、潰す。
どこまでも倒す。
今日から、ファンクラブのメンバーもサクラのことなんて見向きもしないわ。
まあ、この私の美貌なら…瞬殺で落ちてるでしょうけどね。
しかも私って面倒見も良いし、それから成績優秀だし。
最高の女性だもの。
女友達だって100名はいるのよ?
仕切るのもうまいし、貶すことなんて何一つない女だもの?
だけど…きっと、サスケくんファンクラブのメンバー。
今日から…私に対抗してくるわね。
だって、サスケくんは髪の長い女が好きなんですもの。
きっと、私のことなのよ?
周りから視線を感じるわ…。
戦いのリングね…。
いいわよ?
受けて立ってあげるわ、その喧嘩。
だって、サスケくんは私のものだからね?
私の実力を…なめんじゃないわよ?
アンタたちなんて、すぐ倒せるんだからね?
おとなしくするのね?
勝ち目は…私にあるわ。
私は、常に勝気だしね???
うちは事件の里抜け計画
☆目次
☆サクラの罪(サスケ+イルカ先生)「俺はまだサクラを許したわけではない…」