【泉
の巫女】番外A
それから1か月が経過した…。
入園式がその日、あって…。
俺は猛烈に…落胆した。
☆☆☆
その日もミサならある。
俺は母親に連れられてミサへ駆け込んだ、今日は強い水色光に俺は覆われてる。
今日も夜から開始されるミサへ俺を妖精と信じて疑わない人々がぞろぞろだ。
幼稚園での打撃が酷くて、俺は対応なら母へ任せる。
布団に包まる。
今日もまさか、アイツが来るのか…?
ーーートントン…。
ーーードンドン…。
俺はミサの壁を叩きつかれて寝込んだ。
拳が赤くなるまで叩いてた。
||「タリア…可哀そうに…。
今日は…あんなことがあったんですもの…」||
『…』
||「お母さんも今日は機嫌最悪よ!」||
布団で寝てると…勝手に喫茶店と勘違いしてるクラスメイトがやって来た。
桃色セーラー幼稚園制服にオカッパ黒髪、平凡で親近感が沸くタイプな容姿の女子児童。
悪いが今日、一日で幻滅も良いところだ。
強い紫の光に俺は包まれてる。
見放した。
「巫女様。
今日、入園式で幼稚園へ通ったのです。
巫女様は幼稚園へは?」
勝手に俺が寝てる布団まで押しかけてくる。
||「巫女様は忙しい身。
あまり、接近なされないように…」||
俺も今日はもう背を向けた…布団で寝返りを打った。
嫌いになりかけてる。
「マナナがごめんなさいね。
巫女様…。
友達になりたいみたいで…。
ウチの子と友達になってくれないかしら?」
「巫女様。
友達になろうよ。
ね?」
『・…』
ブチ切れが酷い。
『私は忙しいので…。
今日は早めにお帰り下さいませ…』
「え?
巫女様?」
「マナナ…残念ね…巫女様、今日は忙しいみたい…。
早めに帰りましょうか?」
「うん…。
明日もココよっても良い?
お母さん?」
「まあ、どうせ…。
この辺のスーパーにはよく来るし…。
良いわよ?」
「ありがとう、お母さん。
優しい。
巫女様、明日こそ。
友達に…」
『…』
マナナは去って行った。
俺はふて寝してる。
なんか少し嫌いになりかけてる。
アイツ、可愛くない。
ムカつくかもしれない。
☆☆☆
ミサが終わった。
俺の母親が溜息を吐いた。
||「今日も来たのね…。
あの子。
本当に非常識だわ」||
『…』
俺の体から出る光が紫から水色へと変貌する…。
||「タリア、あんな子とだけは友達になったらダメよ。
ウチのタリアに幼稚園で散々、悪口言ってたくせに。
もう母さん煮えくり渡って」
『かあさん、大丈夫。
俺、アイツ、嫌い過ぎる』
ハッキリ言えた。
||「そうよね?
タリア。
タリアに初対面で…「不細工、どうしてコイツがキセキの友達?
邪魔だからキセキ、疎遠になったら?
目が汚れるでしょ?
容姿が悪いのが移ったらどうするの?」
あんな躾がなってない子初めてよ?
母さん…」||
『母さん…』
||「タリアがやっとキセキくんって言う男友達が…出来たのに…。
それを横から…強引に乱入して来て…。
キセキくんへタックルして抱き付いて…。
しかも…ウチの可愛いタリアに…「不細工、邪魔」と猛烈に攻撃しまくって…。
殺意すら芽生えたわ、母さん…」||
『…』
||「それに対して。
ウチのタリアがやっとできた男友達には…
「まるで神童。
神の奇跡,、美しい。
私をお嫁さんにして。
私好みなタイプ。
今から目を付ける。
一目惚れかもしれない…私。
私の名前はマナナ」
と自己紹介までして、絶賛しまくってって…。
母さん、ずっと白目…向いてたわよ…」||
『…』
||「何でうちの子だけがこんなに可愛そうなの?
無口なのに、ヤット出来た男友達を…。
あの子、根性で奪おうとしてる。
最低だわ。
タリア、キセキって男の子と友達になれるように応援してる。
あんな女の子、撲滅しなさい。
性悪よ、あの子…」||
『…』
||「これからも毎日でも家であの子の悪口なら母さん言ってあげる。
タリアが自分で言えない代わりに…」||
俺が文句を言わなくても…母さんが代わりに言ってくれるらしい…。
||「こんな可愛いうちの子の…。
どこが不細工だって言うの?
あの女の子には叩きたい気分よ?
母さん…。
それからあの親にだって文句言いまくりたいわ!
よっぽど、ウチの子の方が可愛いに決まってる。
何なの?
あの平凡な顔立ちのそこらへんにウジャウジャいそうな個性すらない顔の子!
怒り狂ってるわよ、母さん。
あんなモンスター親子大嫌いだわ…」||
『母さん…父さんが待ってる…。
家に帰ろう…』
||「なんてウチの子は不憫なの?
もう怒り狂ってる。
今日はさすがに噛みつきたいと思った。
あんな子。
このターシャ泉にいる危険生物…ジャンピングマイマイや…。
犬イルカに噛まれればいいのよ!
もうムカついて…悲しくて…。
ウチの子のどこが…」||
母さんは常に俺の味方だ…。
俺以上に母さんが…怒ってるらしい…。
あの日から…。
幼稚園では俺にとっての宿敵はマナナだ、喧嘩ばかりだ。
ミサでも仲が良いわけない…。
いつも、俺はソッポ向いてる。
☆☆☆
俺は今、幼稚園にいて…。
泣き虫なキセキと言う男友達といる…。
俺は無口だ…。
『…』
黙ってる…。
隣でキセキは何故かホッとした顔してる…。
そこへ…突撃しに来る女子がいる…。
途端にキセキが茶髪を揺らし、茶目から涙を流し…顔色を変えて、俺の背後へ逃げようとする…。
キセキを猛烈に苛める女子…ミルルだ。
髪は黒く背中まで伸びたスタイルで、足は年齢の割にながい、それから.眼鏡をかけた女子だ。
何故かキセキを苛めに走ってくる…。
俺とキセキがいる時も常に…。
≪キセキさん、ミルルの言うこと聞きなさいよね?≫
「何だ…来るな、ミルル。
助けてくれ、タリア・・。」
≪キセキさんってどう見てもミルルより女だわ。
ミルルムカつく。
罰として、ターシャ泉のミサへミルルと来なさいよ?
来ないと明日ズボンを幼稚園のクラス全員がいる前で脱がすわよ≫
「ミルル止めてくれ、僕は男だ。
タリア…かくまってくれ…。
僕はミルル、いやだ」
キセキは…背が低いかもしれない…ちょっと成長の遅れてる子だ、色素が薄くて…ボーとした顔してる…。
見た目に反して…勉強は出来るらしいが…泣いてばかりだ。
ミルルがキセキの茶髪を引っ張って、キセキの尻を足で蹴ってる。
ミルルは苛めっこらしい。
≪ミルル、見てるだけで女女しい男なんてイライラするのよ。
精神的に、弱ちょろいのなんて、論外よ!
泣き虫!
ちび!≫
「ウウウ…」
とうとう俺の親友、キセキが泣き出した。
『…』
俺はこういう時、対処の仕方が下手かもしれない、ショートしてる…ビックリしすぎて…。
キセキは怖いのか俺の背中へ隠れてる。
眼鏡を光らせ、長い髪を振り乱して…キセキを苛める鬼女児―――眼鏡ミルルから逃げたいらしい。
「タリア、お願いだ。
ミルルから僕を救ってくれ…」
この、キセキって男子…いろいろ遅れてる気がする。
ボーとしてるような顔をしてる。
そこへ突撃してくるのは…これまた成績が芳しくない女子、マナナだ。
「ミルル、キセキを苛めたら…私が許さない。
タリアは醜い、邪魔…ここから去りなさいよ。
私がキセキを助けるんだから。
キセキは私の将来のお婿さん。
今のうちに点数稼ぐんだから」
マナナは…髪は黒く、オカッパ。
それからどこにでもいそうな顔をしてる…これが親近感が沸くところでもあるが…。
ミルルの方が眼鏡を外せば…テレビアイドルになれそうだ。
眼鏡で顔を隠してるが…一度外してもらった時に…クラス全員が美少女と称賛していた…。
マナナは顔は平凡だ、俺の母も言ってたが…確かにその辺にウジャウジャいそうなタイプだ。
しかし…クルクル表情が変わってる…そんな子だ。
あと、躾がなってない…ビックリするレベルにだ。
『…』
こういう感じに普通に俺を貶し、キセキを褒める。
しかし…ミルルへの対処は俺では無理だ。
マナナに任せよう…。
「マナナ、君は…。
何て優しいんだ」
「その代わり、キセキ…。
私の宿題を今日もしてよ?
私には無理だから」
「それぐらい良いだろう。
ミルルを撃退してくれマナナ」
『…』
俺ですらミルルは怖いと思ってる…。
≪マナナは邪魔なのよ?
キセキさんはミルルとターシャ泉のミサへ行くの。
キセキさんってどうみても女だわ。
きっと、あそこでも通れるわよ?
試してみるわ、私。
キセキさん、ミルルに逆らったら・・明日、どうなるか?
ボコボコ集団リンチよ?≫
「マナナ、僕を救ってくれ。
タリア、僕を助けてくれ」
『…』
悪いが確かに…キセキなら…あの泉も余裕で通れそうだ。
確か…職場へ行くまでに一般者通路には…見張り番がいるらしい。
女か男か…見分ける人間が…。
俺は別に来ても良いかもしれない…キセキが。
「キセキ、私・…キセキとならミサに行っても良いわ?
私、毎日…お母さんとミサへ通ってるの。
喫茶店代わりに…」
「そうなのか?
マナナ。
それは羨ましいな。
僕は男だから、無理だろう…」
『…』
俺の隣で…ミルルは眼鏡をクイクイと動かし、光らせた。
数秒後…突然、ミルルはキセキの茶髪を掴んで思いきり、引っ張り…キセキの尻を蹴りまくり…。
マナナは…慌てて、オカッパ黒髪を揺らし…茶色い瞳から激動の涙を落とすキセキへ…蛙のようにベッタリくっ付いてる…正面から…。
俺だけ、この場に取り残されてる…。
「良いわ。
私、キセキのこと…お母さんに紹介したいし…。
見張り番の人の目は誤魔化せないかもしれないけど…。
一緒に来たら?
無理だったら、キセキだけお母さんと一緒に送ってあげる…」
「そこまでしてもらっても良いのか?
マナナ・・。
ウう…苛めないでくれ」
キセキは…ミルルから茶髪を引っ張られる度に泣いてる…。
「いつも宿題丸写しの恩があるから…。
この前も宿題、してもらったから…。
助かってる。
お母さんもお父さんも、私がキセキから勉強について助けてもらってること…喜んでる…」
マナナはこれ見よがしに…幼稚園指定男子児童制服を着た―キセキへすりついてる…。
「僕はマナナの役に立てて嬉しい・・ウウ」
≪ミルルはこんな人間…。
認めない…。
今もまた泣いてる…。
ボロボロ泣きすぎなのよ?
勉強がマナナぐらいだって、いい気になってるんじゃないわよ?
マナナは別に幼稚園レベルの勉強なんてスラスラなんだから。
マナナがキセキさんなら猛烈に躾けるわ。
見てて、イライラしてたまらないから…≫
ミルルは思い切り…キセキの茶髪を引っ張った。
まるでDV男の女版だ…こんなドラマ…見たことある…。
キセキの茶色い瞳がウサギのように濡れてる…。
マナナがさすがに…ミルルへタックルした…。
ミルルは倒れかけて、腰まで伸びた髪がハラリ…と揺れた。
マナナは必死な表情で、ミルルを止めようと抱き締めてる…動きを止める目的だろう…。
「ミルル!
キセキを苛めるのは止して。
私ならキセキを甘やかしてあげる…」
「マナナ…うう…。
タリア…ミルルから見えないように後ろに隠れさせてくれ」
『ああ…』
俺は二言返事だ。
ミルルは怖くて、会話する気になれない…。
≪マナナは邪魔よ・くっつかないでよ、うっとうしい・。
こんなキセキさんなんて…髪の毛、引っこ抜いてやるから…≫
マナナとミルルは取っ組み合いだ…。
マナナは必死でミルルの行動を抱き締めることによって止めてるらしい・・。
「マナナ…ミルルが怖すぎる。
タリア、ミルル…僕を救ってくれ…。
僕の何が悪いって言うんだ…。
アアア…」
「泣かないで、キセキ…。
キセキのお蔭で最近、敬語が上手に話せるようになった。
キセキが教えてくれたから…
何とか・・・。
あ、巫女様の前では敬語なんだよ?
キセキ…そういうルールなんだって。
これからもよろしくね?
キセキ…」
まだ、マナナは暴れるミルルを必死で抱きしめてる。
あれを離せば…すぐミルルのキセキへの攻撃が始まるのだろう…。
俺の後ろで、キセキはガタガタ震えて泣いてる…。
「マナナ・…。
君はなんて優しい人間なんだ…。
僕は普通に敬語ぐらい話せる…。
マナナはまだ…日本語が下手みたいだったが…。
ウウ…」
≪ミルルは認めないわ!?
この女男!泣き虫!
イライラする、親のしつけが見てみたいわ?
キセキさんが来るなら、とことんイジメてでも躾けてあげるわ。
ミルルと来なさいよ!
キセキさん?≫
ミルルがマナナに暴走するのを抱き締められることで…止められたまま、叫び始めた。
マナナも顔が真っ赤だ・…よほど、止めるのが大変なんだろう…頑張ってる。
「ミルルとは断ろう。
マナナとなら…。
ううっ…」
俺の背後で・・・キセキはシクシク泣いてる。
『まあ、キセキ。
泣くな…。
行くなら…絶対、今のウチだぞ。
今のお前なら監視員の目も誤魔化せそうだ。
さすがに…小学校入ってからは自信ない』
「…タリアは来ないのか?」
『俺は女装までして行こうとも思わない。
キセキは行きたいのか?』
「そうだな…。
マナナは羨ましい。
興味はある…しかし、女装はする気ない。
普通に幼稚園の男子服で行く!」
『それはさすがに監視員にバレルだろう…』
「バレテいい。
僕はミルルやその他女子に毎日、女男と苛められて嫌だ。
監視員に見抜かれるのは本望だ、僕の自信へとつながる!」
≪ミルルは監視員に馬鹿にされて…男の制服を着た女って思われることに懸けるわ?
こんなミルルよりチビでミルルより女みたいなやつ、認めない!
ミルルが、クラス一美少女で良いの。
キセキさんなんて、オカマになれば良いのよ?≫
とうとう、運動神経抜群なミルルに…運動音痴のマナナは負けたらしい…。
マナナは床に頭から激突した…マナナはオカッパ黒髪を手で抑えた。
それから…ミルルが…俺の後ろにいるキセキへ走って来て…。
ミルルがキセキの背中を数回蹴ってる…。
「ウウ・・
助けてくれ、マナナ…キセキ!!」
俺は背後を振り向いた…。
ミルルは眼鏡を光らせ、鬼のような形相だ…長い黒髪が乱れてる。
また…運動音痴でも根性でマナナがキセキを助けるために…。
ミルルへ抱き締めに行った…。
ミルルは暴れまくって抵抗してる…。
マナナは根性でしがみ付いてる…マナナの顔が真っ赤だ、よっぽど大変らしい…。
一方、ミルルの眼鏡の奥の瞳は平然としてる…力の差は歴然だ。
俺はキセキと共に二人から距離を置いた…。
「ミルル、キセキは私の将来の婿なの!
苛めないでくれる?
幾ら自分より可愛いからって、かわいモノ苛めは認めないわ」
『…』
俺の後ろで…キセキは震えてる…。
隠れやすいらしい…。
≪まあ、もし来なかったら…。
どうなるか?
分かってるわよね?
キセキさん…。
もっと猛烈に明日、ミルルは苛めるから。
こんなレベルなんて甘っちょろいわよ?≫
「マナナ…攻撃してくれ。
タリア、僕をかくまってくれ」
キセキは俺を盾にして…ミルルの眼鏡の奥に眠る視線から逃れてる。
マナナが援助してる…。
「キセキは私のモノなの。
キセキを苛めることは私を貶すと同じ。
それとタリア、アッチへ行きなさいよ。
キセキを助けるのは、私だけで良いの」
マナナは必死なのか…顔を真っ赤にしたまま、床に倒れても…ミルルの足を掴んで…ミルルの行動を止めてる。
…ミルルは床にいるマナナを眼鏡の奥から睨み付けてる…。
マナナはどこを見てるのか分からない…。
あれは時間の問題だ…もう、マナナが負ける・・。
この戦いで、マナナのオカッパ黒髪は収取がつなないレベルにボサボサになってる。
毎日がこれだ…。
『キセキは俺の友人だ。
マナナが去れば良い』
「ふんっ、ねえ?
キセキ…私の方が大切よね?
こんな醜い奴より、私の方が良いでしょ?
キセキ?」
マナナはミルルの足を掴んだまま、俺の後ろで隠れてるキセキへ聞く。
「僕は…マナナもタリアも幼馴染だ…。
感謝してる」
『キセキはこう言ってる。
おまえが去れば良い』
その時、注意がそれたのか…。
ミルルの足が…マナナから離れた…。
ミルルはまた長い髪を揺らし、眼鏡をギラギラに光らせて…俺の背後に隠れたキセキへ走り寄り…キセキの茶髪を引っ張りに来る。
「うるさい。
キセキを助けるのは…私の役目!。
ミルル…キセキの髪を引っ張らないで!」
マナナがまたオカッパ黒髪で頭突きして…ミルルへ突撃してる…。
ここから…先ほどと、同じように喧嘩に発展しそうだ。
今のうちに…俺はキセキを連れて、マナナのいる元から去ることにした。
マナナはオカッパ黒髪をボサボサにして、下から睨み…。
ミルルは、長い髪を振り乱し、眼鏡を曇らせ…上から目線で。
二人の女子は抱き合って…視線をバチバチ合致なまま、攻防戦を続けてる…。
☆☆☆
キセキは俺の後ろにいる。
ミルルの姿が見えなくなったところで…。
キセキは溜息を吐き、俺の隣に来た。
「タリア…ありがとう。
君には恩がある。
いつか僕は返す…」
『マナナと別れろ、あんな俺の容姿を否定してばかりの女…。
俺は認めない。
キセキ…おまえは俺の味方だろ?
マナナなんて好きになれるはずないだろ?
俺の友達の癖に、アイツの肩ばかり持って。
優柔不断すぎるだろ、キセキ』
「マナナは良い子だ。
見直してる。
僕はタリアもマナナも好きだ、家族同然だ。
確かに・…マナナは君に中傷するが…。
でも、僕はマナナと君…どちらも選べない・…」
『俺がお前の友達、止めても良いのか?』
「それは嫌だ。
君も大切だ…理解してくれ…タリア…」
『あんな女、俺は仲間って認めてない…。
いつも俺とキセキが遊んでる時…勝手に割り入って来るだけだ。
俺の悪口しかあの女、言ってない』
「怒るな、タリア。
僕は君って良い奴だと思う。
認めてる…」
『…』
向こうの方でまだ…マナナとミルルは口喧嘩してるらしい…。
走ってこないのが証拠だ。
≪キセキさんのどこを庇う訳?
見てるだけでイライラするでしょ?
何なの?
あのすぐに泣く性格?
ミルルが精神を叩き直してあげるわ。
あんな人間…男って認めないわ、泣き虫!≫
「ミルル、もうキセキを苛めるのは止めるように、他の女子にも言って!
キセキだって悪気ない。
よく泣くけど…それも個性で良いじゃない?」
取っ組み合いの喧嘩は終わったらしいが…今度は口論の喧嘩らしい…。
≪フンッ。
ミルルはね?
弱い人間は認めないのよ?
どこまでも叩くわよ?
躾けるわよ?≫
「ミルル…キセキが可哀そうよ…。
キセキだって頑張ってる…!!」
言いたい放題…キセキは言われてるらしい…。
「タリア…。
僕は君が羨ましい。
何故、僕だけ…クラス女子から苛められるのだろう?」
キセキは遠目にそれを見て…茶色い瞳からボロボロ涙を流してる。
確かに…キセキは背も低いが…。
ちょっと精神的に遅れてる気がする…。
幼稚園、教室の床にキセキの茶色い髪が何本か落ちてる…ミルルに抜かれたものだ。
抜かれた茶髪はまた生えてくる…大丈夫だろう。
マナナは勉強が無理みたいだが…キセキよりは、マシかもしれない…。
マナナも子供と思ったが…。
キセキはまるで赤子みたいだ…。
「ウウウウ…」
俺は泣かれると困る…。
『…』
黙る運命にある。
「君が無口なことに、僕は救われてる。
君もマナナも僕にとってヒーローだ」
突っ込みどころ、満載だ。
しかし、まあ…無口な俺と友達になろうとする人間は…キセキぐらいなものである。
良いだろう、面倒見ても。
仕方なしにこんな日常が続いてる・…。
☆☆☆
茶髪茶目低身長遅れた泣き虫男児―――キセキは何とか…監視員の目を通り抜けられたらしい…。
結局、キセキとマナナ、ミルルが…マナナの母に連れられてやってきた。
ミルルは…母子家庭で忙しいらしい。
ミルルの母は高齢出産でミルルを産み、弁護士らしい…。
ミルルの父が何者なのか…俺は一度も聞いたことがない。
ミルルすら知らないらしい…。
ミルルが言うには…ミルルの母は精子バンクから提供を受けただけだから…。
ミルルすら父親の存在を知らないらしい…。
いろいろ凄すぎる家だ。
ミルルが言うには…
≪ママは…。
精子バンクから提供を受ける時、見せてもらったデーター写真で確認した限り…ミルルに似た顔の良い成績優秀な運動能力もある男性を選んだらしいの…。
それが…ミルルのパパなんだって…。
今は珍しいけど…未来はこれが主流になるって言って…ママは聞かないの…。
でも、ミルルは家に…パパがいないことだけ、不満…
今、何してる人なのか…ミルルも知らない…≫
と言ってる…。
ミルルは確かに…眼鏡はしてるが…髪も黒くロングだが…。
クラスの女子では一番、眼鏡の下にある素顔は良いかもしれない…。
性格は…苛めっ子で…椀力もある。
成績もまあ優秀だ、女子では一番だろう…。
クラスで精子バンクから提供を受けてシングルマザーなのって…ミルルの家しかない。
俺、ビックリした…聞いたとき。
意味が分からなくて…母親に説明を願った。
『精子バンクって何なの?
ミルルの父さん…そこから選んだ人らしい』
||「タリアにはまだ早いわ…。
マリア様と同じって意味よ」||
母親の説明には謎が多いが…。
お父さんがいなくても子供は出来るらしい…。
ビックリした。
ミルルの母って…マナナの母親とは性格も正反対らしい…。
確かに…全てにおいて、マナナとミルルは違い過ぎる…。
因みに…マナナの家は15歳の時、街角で歩いてたら見知らぬ年上男性からナンパが掛かり…一夜で出来ちゃった結婚らしい。
入籍が16歳で…大変だったと、ぼやいてた。
と言うことは…今、21歳なのかもしれない。
若いとは思ってた。
俺、まだ出来ちゃった結婚の意味が分からないから…。
母に聞いた。
『母さん、ナンパで一夜で出来ちゃった結婚ってどういう意味なの?
母さんの前で…マナナの母…言ってたけど…』
||「タリアは聞かなくて良いの。
タリア…ああいうタイプと親交しちゃダメよ。
アバズレっていう意味よ、ビッチってことよ。
股が緩い女って意味なのよ」||
『母さん、アバズレって何?
ビッチって何なの?
股が緩いってどういうこと?』
||「タリアは…知らなくて良いのよ。
あの子とだけは付き合っちゃダメ。
母さん、怒ってる。
あの母と娘、そっくり。
マナナも同じ人生を歩む可能性があるわ。
ムカつく、ウチの子に「不細工」なんて…暴言を…。
ウチの子の方がよっぽどカワイイに決まってる。
あんな非常識で平凡な顔立ちの子に貶されなきゃならない理由なんてない」||
母さんは…カンカンだ。
俺の容姿を褒めるなんて、母さんぐらいだ…俺って絶対、余程母さんに愛されてるらしい。
ココは嬉しい。
でも、母さんは…マナナ母子と仲が悪い気がする…。
マナナのお母さんって若いかもしれない…「育児も分からない」って…いつもぼやいてる。
見てれば放任主義だ、高校出たのかすら…知らない。
マナナのお父さんって…お母さんと歳、物凄く離れてるみたいだ。
||「あの子のお父さん…ここら辺の役所で勤めてるらしいけど…。
中学生なんてナンパして職場で白い目線で見られなかったの?ロリコン。
いろいろ突っ込みどころがあるわ、あの人…苦手よ。
どうせ売春でしょ?
押し掛けて来たから責任取らされただけでしょ、そうに決まってるわ」||と…。
俺の母親が…家でいっぱいマナナ宅を批判してた…。
俺は黙ってる…。
俺がマナナを怒る以上に…ビックリするぐらい…常に母の方が…貶しまくってる…。
それに反して、ミルルの家は躾が厳しいらしい…俺やキセキを呼ぶ時ですら敬称に”さん”が付かないと…ダメだとか…ミルルは言ってた…。
過干渉な家らしい。
俺の家はターシャ教関係で見合いだ。
キセキの家は社内恋愛らしい…。
マナナとミルルの項目だけ…。
母さん、黙り込んでた…。
☆☆☆
外で、キセキの大歓喜する声が…ミサ施設まで聞こえてくる。
因みに、幼稚園の男物セーラー水色制服だろう…きっと。
監視員も…あまり見てないんじゃないか?
「あの生き物は何だ?
湖に浮かぶ…。
顔が犬みたいな…体がイルカで…。
オナカに袋がカンガルーみたいにあって…そいつの子供がいる…。
何匹かいる…あれ、可愛い」
≪犬イルカよ。
ターシャ泉は独自の進化を遂げてるのよ。
近いところは浅いけど…。
真ん中はとても深い湖なのよ…。
真ん中へ行くと…キセキさん…。
死ぬわよ?
まあ、ミルル、キセキさんが溺れても助けないけど≫
犬イルカに遭遇したらしい…珍しい。
俺ですらアイツ、懐いてはくれない。
人間が品種改良した犬とは違う。
柴犬みたいに可愛い顔してるくせに…絶対、人に近寄らない。
警戒心が強くて賢い生き物だ、餌付けなんて無理だろう。
よく、可愛いから勘違いする客が多い。
犬から派生したアザラシにも似た生き物だ、耳が可愛いかもしれない…。
普通に”バウバウ”と鳴くが…体はアザラシのように足は魚状だ、前腕も短い。
魚取るのが上手なハンターだ。
知能が高く、翼魚でも飛び跳ねてでも狩猟する…不思議生物だ、尻尾はない、全身には短い毛が生えてる…。
「私は助けるわよ…。
キセキ、泣かないで」
「ウう」
≪泣き虫。
因みにあの犬イルカ…。
懐かないわよ。
野生だから…≫
「噛むのか?」
≪噛むわよ、痛いわよ?
吠えるのよ?≫
「ミルル。
キセキを泣かせないで…」
「あの…タコ…2匹…。
あれは…」
「ターシャ泉の上から上がって、巻きを炊いて火を起こし…魚を焼いてるタコね。
キセキ、アレは普通のことよ」
「僕はあんなタコ…初めて見た」
「私はここでは、よく見るわ」
「あの…地面で飛び跳ねてる…カタツムリは…何だ?
まるで…顔が蛇みたいで…僕怖いかもしれない…」
≪ジャンピングマイマイね?
噛まれると痛いわよ?
毒がある可能性もあるわよ?
口から二手に別れた舌が出るわよ?
キセキさんに飛びつくかもね…≫
「嘘だろ…。
そんなに怖い生き物なのか…。
あれ…」
「私も知らなかった…。
捕まえようとしたことあったけど…。
逃げられた。
止めた方が良いんだね…」
≪マナナは本当に無学ね。
ここにしかいない不思議生物はいっぱいなんだから。
だからここは国の重要文化財でもあるのよ?≫
「そうなんだ…。
てっきり、巫女様がいるから世界遺産にこの場所…なってるとばかり…」
「それから…。
あの…空に飛んでる…綺麗な光は何だ?
マナナ」
「アレは翼が生えた空飛ぶ魚よ。
普通にいるわよ」
≪普通にはいないわよ。
マナナ。
勉強弱いのね?
ここで独自に進化した、翼ウオよ。
トビウオの上バージョンよ。
光るのは…威嚇してる証拠よ?≫
「凄いな…。
このターシャ泉…。
知らない生物だらけだ…」
そうだろう…。
因みに…このターシャ泉、魚類が正常な代謝を維持するために最小限必要な電解質を含ませた水で構成されてる。
好適環境水とも言うらしいが…。
金魚や鯉と鯛も泳いでる。
仕組みは…この水…浸透圧やミネラルが淡水魚、海水魚の双方に適してるらしい。
と言うか…ここに現存する金魚やコイ、タイもへんてこりんな見た目だ。
脚が付いてたり…してる…地上へ上がりたいのか?
岩場でまるでヒレを足のようにして歩いてる…タイもいる…。
別に毒はない、舐めても大丈夫だと思う。
しかし、村人で海にいる赤いタイや、夏祭りで釣れた金魚を面白がって放流した馬鹿がいる。
罰金は50万円だ。
駆除はしたらしいが、当たり前だが・・・外来生物を入れたり…ここで飼育するのは禁止だ。
この泉は世界遺産にも登録されてる。
泉の端には…。
ハイポニカ農法という水栽培で出来た…鈴なりのトマトがなる木や、これまたメロンの木がある。
しかし、勝手にトマトやメロンを採取してはダメだ。
これも50万円の罰金だ、一応…国立公園の私有地だ。
どんな味なのか…。
近所にある料亭では食べれるらしい…。
翼ウオやトマト、メロンなどだ。
木になるトマト…意外に普通の味らしい。
翼ウオだけは身が締まってる味らしい…。
焼いた後も…蛍光色が含まれてるから皿の上で青光りしてるのに…客は驚くが。
白身魚で普通の味らしい…。
≪他にもあそこにある…濃い紫の花…。
何でも食べるから気を付けなさいよ?
鳥も食べるわよ?
子供の手ぐらいなら溶かすわよ?
キセキさん…突っ込んでみる?≫
ミルルは詳しいのか…解説を続けてる…。
「マナナ助けてくれ…。
ミルルがまた怖い」
キセキの泣く声が聞こえてくる…。
「キセキを苛めないで。
幾ら自分以上に可愛いからって…攻撃するなんて…」
≪ふんっ。
キセキさんだけパパもいて。
ミルルより可愛いなんて認めない。
しかも躾すらなってない。
ミルル、ムカつきまくる。
気弱大嫌い!≫
「マナナ…」
「キセキ、大丈夫。
マナナから私がキセキを守るから…。
巫女様へ会いに行きましょう…」
≪この分だと…巫女様を見て…。
また泣き虫キセキさんがビックリしそうね…。
苛め甲斐があるわ…≫
テントの扉が開いてる…。
外の会話は丸聞こえだった。
俺は布団で寝転んでる。
母親がマナナの母親に対応してる…。
子供たちは勝手に…外で遊んでるらしい・・。
マナナの母も放任主義だ。
結構、怖い生き物もココにはいると言うのに…。
手洗い場の飲水機で喉をマナナの母はうるおわせ…。
テント備え付けの…”ターシャ泉の生物生態日記”という書物を読んでる…。
まるで図書館に勘違いされてるらしい…。
また、俺の母親が怒りそうだ…。
俺の母親は鬼面を付けて…。
黙り込んでる…。
俺は…ひょっこり布団から出て来た。
母には今日、俺の親友…キセキやその他…幼稚園児が来る可能性があると言ってる。
母も俺には甘い。
許してくれた。
「泉の妖精様。
娘、マナナと…。
その彼氏…キセキ君。
あと親友…ミルルちゃんが…やっとコチラに来たみたいですわ…。
それにしてもココは快適ですね?」
それにしても…。
いつの間に…キセキは、マナナの彼氏になって…。
ミルルはマナナの親友になったのだろう?
俺には全くそんなふうに映らない・・。
「巫女様…今日も会いに来ました」
最近、やっと敬語が話せるようにマナナもなって来た。
オカッパ黒髪を揺らして、マナナは下へお辞儀をした。
少し、礼儀正しくなったらしい。
≪これが巫女様ですか?
トリックはあるのですか?
神様って本当にいるのですか?
ミルル、現実主義だし…。
宗教って信じにくい性格です≫
ミルルは眼鏡を光らせ、フンと横を向き、腰まで伸びた自分の長い髪を手で払った。
「うわああ。
光ってますね…。
オレンジ色の光ですね…。
僕はキセキって言います。
よろしくお願いします」
キセキは茶色い瞳を光らせ、ウキウキと体を左右へ動かしてる、キセキの茶髪が少し揺れた。
ちょっと多動児みたいだ。
≪うるさいわね。
アンタみたいな女男、相手にしないわよ?
巫女様…。
コイツ、村の掟を破って…やって来ました。
制裁を食らわせても良いです。
トコトン泣かせてください、巫女様≫
「ミルル…僕はそんなつもりじゃ」
「巫女様、お許しください。
巫女様はきっと優しいから。
万人に平等なお方…。
そこにいる…テントの管理人さんより…常に私たちの味方でいてくれる…。
巫女様…」
「巫女様・・・良いですよね?
私たち母子…連日、ココに通い詰めてますから…。
もう、仲間も同然ですよね?
ウチの子と…巫女様…」
『まあ、今回だけ…。
良いでしょう。
次回は許しませんよ…』
「巫女様、お優しい」
||「用事が終わったら、すぐにお帰り下さいますように…。
巫女様は妖精。
忙しい身なので…」||
「僕…巫女様と写真撮ってみたいかも。
記念に…」
≪ダメに決まってるでしょ?
この男女。
帰りましょう?
巫女様がキセキさんを泣きに苛めないなんてつまらないわ…≫
「私は…巫女様とキセキ、ミルルの4人で…。
ターシャ泉で写真が撮ってみたい…。
巫女様…いいですか?」
『良いでしょう…』
||「まあ、巫女様がそうおっしゃるなら…」||
「それでは。
巫女様。
あと…マナナの彼氏…キセキくん?
それと、マナナの親友…ミルルちゃん…?
一緒にターシャ泉の前へ行きましょう♪
カメラなら持ってきたから♪」
「うん!
お母さん」
マナナの母…本当にマナナに甘い。
≪ふんっ、今回だけよ?≫
「マナナ、マナナのお母さん…。
巫女様…。
ありがとう。
僕、嬉しい」
キセキも喜んでるらしい。
良いだろう。
俺は母さんの方角を見た。
母さんは鬼面を付けたまま…。
黙りこくってる…。
寝てるのかもしれないし…。
怒ってるのかもしれない…。
表情すら読み取れない・・・このお面…。
☆☆☆
俺は…静かに固まる母さんをテントに残して…。
テントの外へ出た…。
母さんも確かに大変だ。
家事や神社5時からの儀式…。
それに客への対応…。
いつ寝てるのか可哀そうなレベルかもしれない…。
母さんって昼寝してるのだろうか?
結構、神社って毎日…人が大勢来て忙しい。
俺は4人仲良く…マナナの母さんに撮影してもらえた。
「はあい。
巫女様。
マナナ。
マナナの彼氏…キセキ君。
マナナの親友…ミルルちゃん…。
並んで?…。
笑顔よ?
チーズ♪」
----カシャ。
カメラのフラッシュが…たかれた。
途中で…ミルルが…キセキの髪を引っ張り、キセキの背中を蹴ったらしい…。
「痛い…ウう」
シャッターが鳴る瞬間・…。
キセキの泣き声がした…。
ミルルは写真撮影が終わると…。
≪フンっ≫
と横を向いて、腰まで伸びた長い髪をハラリと揺らし…眼鏡を元の位置へ鼻を鳴らした。
マナナは俺の女体化で光り輝く金髪を勝手に触ってる。
俺の光は今、オレンジだ。
〜一番左が俺で…女体化して金髪碧眼美少女で白いドレスを着込み、全身がオレンジ色の光に覆われてる。
それから俺の右隣が…オカッパ黒髪なマナナでヒョウキンな顔してる。
マナナは俺の伸びてる金髪へ左手を伸ばし触り、右手はピースサインをしてる。
マナナの右隣にいる茶髪茶目低身長男児、キセキは水色ズボンを着て・・・茶色い瞳から涙を流してる。
一番、右にいる長髪なミルルは、眼鏡の奥から怒った表情で、右手はキセキの茶髪を引っ張り、脚でキセキを蹴ってる・…。
背後はターシャ泉で、夜空には星が煌めいてる〜
こんな写真だ。
初めて…幼稚園児らしいことも出来た。
大満足だ。
母さんへも頼んだ甲斐があった。
母さんは||「連日来るモンスター母娘へ対応することで疲労感マックスよ?」||と…。
家で文句タラタラしてる。
俺は…今日、楽しかったと言うのに…。
←ターシャ泉の巫女A
小説目次
→番外B
入園式がその日、あって…。
俺は猛烈に…落胆した。
☆☆☆
その日もミサならある。
俺は母親に連れられてミサへ駆け込んだ、今日は強い水色光に俺は覆われてる。
今日も夜から開始されるミサへ俺を妖精と信じて疑わない人々がぞろぞろだ。
幼稚園での打撃が酷くて、俺は対応なら母へ任せる。
布団に包まる。
今日もまさか、アイツが来るのか…?
ーーートントン…。
ーーードンドン…。
俺はミサの壁を叩きつかれて寝込んだ。
拳が赤くなるまで叩いてた。
||「タリア…可哀そうに…。
今日は…あんなことがあったんですもの…」||
『…』
||「お母さんも今日は機嫌最悪よ!」||
布団で寝てると…勝手に喫茶店と勘違いしてるクラスメイトがやって来た。
桃色セーラー幼稚園制服にオカッパ黒髪、平凡で親近感が沸くタイプな容姿の女子児童。
悪いが今日、一日で幻滅も良いところだ。
強い紫の光に俺は包まれてる。
見放した。
「巫女様。
今日、入園式で幼稚園へ通ったのです。
巫女様は幼稚園へは?」
勝手に俺が寝てる布団まで押しかけてくる。
||「巫女様は忙しい身。
あまり、接近なされないように…」||
俺も今日はもう背を向けた…布団で寝返りを打った。
嫌いになりかけてる。
「マナナがごめんなさいね。
巫女様…。
友達になりたいみたいで…。
ウチの子と友達になってくれないかしら?」
「巫女様。
友達になろうよ。
ね?」
『・…』
ブチ切れが酷い。
『私は忙しいので…。
今日は早めにお帰り下さいませ…』
「え?
巫女様?」
「マナナ…残念ね…巫女様、今日は忙しいみたい…。
早めに帰りましょうか?」
「うん…。
明日もココよっても良い?
お母さん?」
「まあ、どうせ…。
この辺のスーパーにはよく来るし…。
良いわよ?」
「ありがとう、お母さん。
優しい。
巫女様、明日こそ。
友達に…」
『…』
マナナは去って行った。
俺はふて寝してる。
なんか少し嫌いになりかけてる。
アイツ、可愛くない。
ムカつくかもしれない。
☆☆☆
ミサが終わった。
俺の母親が溜息を吐いた。
||「今日も来たのね…。
あの子。
本当に非常識だわ」||
『…』
俺の体から出る光が紫から水色へと変貌する…。
||「タリア、あんな子とだけは友達になったらダメよ。
ウチのタリアに幼稚園で散々、悪口言ってたくせに。
もう母さん煮えくり渡って」
『かあさん、大丈夫。
俺、アイツ、嫌い過ぎる』
ハッキリ言えた。
||「そうよね?
タリア。
タリアに初対面で…「不細工、どうしてコイツがキセキの友達?
邪魔だからキセキ、疎遠になったら?
目が汚れるでしょ?
容姿が悪いのが移ったらどうするの?」
あんな躾がなってない子初めてよ?
母さん…」||
『母さん…』
||「タリアがやっとキセキくんって言う男友達が…出来たのに…。
それを横から…強引に乱入して来て…。
キセキくんへタックルして抱き付いて…。
しかも…ウチの可愛いタリアに…「不細工、邪魔」と猛烈に攻撃しまくって…。
殺意すら芽生えたわ、母さん…」||
『…』
||「それに対して。
ウチのタリアがやっとできた男友達には…
「まるで神童。
神の奇跡,、美しい。
私をお嫁さんにして。
私好みなタイプ。
今から目を付ける。
一目惚れかもしれない…私。
私の名前はマナナ」
と自己紹介までして、絶賛しまくってって…。
母さん、ずっと白目…向いてたわよ…」||
『…』
||「何でうちの子だけがこんなに可愛そうなの?
無口なのに、ヤット出来た男友達を…。
あの子、根性で奪おうとしてる。
最低だわ。
タリア、キセキって男の子と友達になれるように応援してる。
あんな女の子、撲滅しなさい。
性悪よ、あの子…」||
『…』
||「これからも毎日でも家であの子の悪口なら母さん言ってあげる。
タリアが自分で言えない代わりに…」||
俺が文句を言わなくても…母さんが代わりに言ってくれるらしい…。
||「こんな可愛いうちの子の…。
どこが不細工だって言うの?
あの女の子には叩きたい気分よ?
母さん…。
それからあの親にだって文句言いまくりたいわ!
よっぽど、ウチの子の方が可愛いに決まってる。
何なの?
あの平凡な顔立ちのそこらへんにウジャウジャいそうな個性すらない顔の子!
怒り狂ってるわよ、母さん。
あんなモンスター親子大嫌いだわ…」||
『母さん…父さんが待ってる…。
家に帰ろう…』
||「なんてウチの子は不憫なの?
もう怒り狂ってる。
今日はさすがに噛みつきたいと思った。
あんな子。
このターシャ泉にいる危険生物…ジャンピングマイマイや…。
犬イルカに噛まれればいいのよ!
もうムカついて…悲しくて…。
ウチの子のどこが…」||
母さんは常に俺の味方だ…。
俺以上に母さんが…怒ってるらしい…。
あの日から…。
幼稚園では俺にとっての宿敵はマナナだ、喧嘩ばかりだ。
ミサでも仲が良いわけない…。
いつも、俺はソッポ向いてる。
☆☆☆
俺は今、幼稚園にいて…。
泣き虫なキセキと言う男友達といる…。
俺は無口だ…。
『…』
黙ってる…。
隣でキセキは何故かホッとした顔してる…。
そこへ…突撃しに来る女子がいる…。
途端にキセキが茶髪を揺らし、茶目から涙を流し…顔色を変えて、俺の背後へ逃げようとする…。
キセキを猛烈に苛める女子…ミルルだ。
髪は黒く背中まで伸びたスタイルで、足は年齢の割にながい、それから.眼鏡をかけた女子だ。
何故かキセキを苛めに走ってくる…。
俺とキセキがいる時も常に…。
≪キセキさん、ミルルの言うこと聞きなさいよね?≫
「何だ…来るな、ミルル。
助けてくれ、タリア・・。」
≪キセキさんってどう見てもミルルより女だわ。
ミルルムカつく。
罰として、ターシャ泉のミサへミルルと来なさいよ?
来ないと明日ズボンを幼稚園のクラス全員がいる前で脱がすわよ≫
「ミルル止めてくれ、僕は男だ。
タリア…かくまってくれ…。
僕はミルル、いやだ」
キセキは…背が低いかもしれない…ちょっと成長の遅れてる子だ、色素が薄くて…ボーとした顔してる…。
見た目に反して…勉強は出来るらしいが…泣いてばかりだ。
ミルルがキセキの茶髪を引っ張って、キセキの尻を足で蹴ってる。
ミルルは苛めっこらしい。
≪ミルル、見てるだけで女女しい男なんてイライラするのよ。
精神的に、弱ちょろいのなんて、論外よ!
泣き虫!
ちび!≫
「ウウウ…」
とうとう俺の親友、キセキが泣き出した。
『…』
俺はこういう時、対処の仕方が下手かもしれない、ショートしてる…ビックリしすぎて…。
キセキは怖いのか俺の背中へ隠れてる。
眼鏡を光らせ、長い髪を振り乱して…キセキを苛める鬼女児―――眼鏡ミルルから逃げたいらしい。
「タリア、お願いだ。
ミルルから僕を救ってくれ…」
この、キセキって男子…いろいろ遅れてる気がする。
ボーとしてるような顔をしてる。
そこへ突撃してくるのは…これまた成績が芳しくない女子、マナナだ。
「ミルル、キセキを苛めたら…私が許さない。
タリアは醜い、邪魔…ここから去りなさいよ。
私がキセキを助けるんだから。
キセキは私の将来のお婿さん。
今のうちに点数稼ぐんだから」
マナナは…髪は黒く、オカッパ。
それからどこにでもいそうな顔をしてる…これが親近感が沸くところでもあるが…。
ミルルの方が眼鏡を外せば…テレビアイドルになれそうだ。
眼鏡で顔を隠してるが…一度外してもらった時に…クラス全員が美少女と称賛していた…。
マナナは顔は平凡だ、俺の母も言ってたが…確かにその辺にウジャウジャいそうなタイプだ。
しかし…クルクル表情が変わってる…そんな子だ。
あと、躾がなってない…ビックリするレベルにだ。
『…』
こういう感じに普通に俺を貶し、キセキを褒める。
しかし…ミルルへの対処は俺では無理だ。
マナナに任せよう…。
「マナナ、君は…。
何て優しいんだ」
「その代わり、キセキ…。
私の宿題を今日もしてよ?
私には無理だから」
「それぐらい良いだろう。
ミルルを撃退してくれマナナ」
『…』
俺ですらミルルは怖いと思ってる…。
≪マナナは邪魔なのよ?
キセキさんはミルルとターシャ泉のミサへ行くの。
キセキさんってどうみても女だわ。
きっと、あそこでも通れるわよ?
試してみるわ、私。
キセキさん、ミルルに逆らったら・・明日、どうなるか?
ボコボコ集団リンチよ?≫
「マナナ、僕を救ってくれ。
タリア、僕を助けてくれ」
『…』
悪いが確かに…キセキなら…あの泉も余裕で通れそうだ。
確か…職場へ行くまでに一般者通路には…見張り番がいるらしい。
女か男か…見分ける人間が…。
俺は別に来ても良いかもしれない…キセキが。
「キセキ、私・…キセキとならミサに行っても良いわ?
私、毎日…お母さんとミサへ通ってるの。
喫茶店代わりに…」
「そうなのか?
マナナ。
それは羨ましいな。
僕は男だから、無理だろう…」
『…』
俺の隣で…ミルルは眼鏡をクイクイと動かし、光らせた。
数秒後…突然、ミルルはキセキの茶髪を掴んで思いきり、引っ張り…キセキの尻を蹴りまくり…。
マナナは…慌てて、オカッパ黒髪を揺らし…茶色い瞳から激動の涙を落とすキセキへ…蛙のようにベッタリくっ付いてる…正面から…。
俺だけ、この場に取り残されてる…。
「良いわ。
私、キセキのこと…お母さんに紹介したいし…。
見張り番の人の目は誤魔化せないかもしれないけど…。
一緒に来たら?
無理だったら、キセキだけお母さんと一緒に送ってあげる…」
「そこまでしてもらっても良いのか?
マナナ・・。
ウう…苛めないでくれ」
キセキは…ミルルから茶髪を引っ張られる度に泣いてる…。
「いつも宿題丸写しの恩があるから…。
この前も宿題、してもらったから…。
助かってる。
お母さんもお父さんも、私がキセキから勉強について助けてもらってること…喜んでる…」
マナナはこれ見よがしに…幼稚園指定男子児童制服を着た―キセキへすりついてる…。
「僕はマナナの役に立てて嬉しい・・ウウ」
≪ミルルはこんな人間…。
認めない…。
今もまた泣いてる…。
ボロボロ泣きすぎなのよ?
勉強がマナナぐらいだって、いい気になってるんじゃないわよ?
マナナは別に幼稚園レベルの勉強なんてスラスラなんだから。
マナナがキセキさんなら猛烈に躾けるわ。
見てて、イライラしてたまらないから…≫
ミルルは思い切り…キセキの茶髪を引っ張った。
まるでDV男の女版だ…こんなドラマ…見たことある…。
キセキの茶色い瞳がウサギのように濡れてる…。
マナナがさすがに…ミルルへタックルした…。
ミルルは倒れかけて、腰まで伸びた髪がハラリ…と揺れた。
マナナは必死な表情で、ミルルを止めようと抱き締めてる…動きを止める目的だろう…。
「ミルル!
キセキを苛めるのは止して。
私ならキセキを甘やかしてあげる…」
「マナナ…うう…。
タリア…ミルルから見えないように後ろに隠れさせてくれ」
『ああ…』
俺は二言返事だ。
ミルルは怖くて、会話する気になれない…。
≪マナナは邪魔よ・くっつかないでよ、うっとうしい・。
こんなキセキさんなんて…髪の毛、引っこ抜いてやるから…≫
マナナとミルルは取っ組み合いだ…。
マナナは必死でミルルの行動を抱き締めることによって止めてるらしい・・。
「マナナ…ミルルが怖すぎる。
タリア、ミルル…僕を救ってくれ…。
僕の何が悪いって言うんだ…。
アアア…」
「泣かないで、キセキ…。
キセキのお蔭で最近、敬語が上手に話せるようになった。
キセキが教えてくれたから…
何とか・・・。
あ、巫女様の前では敬語なんだよ?
キセキ…そういうルールなんだって。
これからもよろしくね?
キセキ…」
まだ、マナナは暴れるミルルを必死で抱きしめてる。
あれを離せば…すぐミルルのキセキへの攻撃が始まるのだろう…。
俺の後ろで、キセキはガタガタ震えて泣いてる…。
「マナナ・…。
君はなんて優しい人間なんだ…。
僕は普通に敬語ぐらい話せる…。
マナナはまだ…日本語が下手みたいだったが…。
ウウ…」
≪ミルルは認めないわ!?
この女男!泣き虫!
イライラする、親のしつけが見てみたいわ?
キセキさんが来るなら、とことんイジメてでも躾けてあげるわ。
ミルルと来なさいよ!
キセキさん?≫
ミルルがマナナに暴走するのを抱き締められることで…止められたまま、叫び始めた。
マナナも顔が真っ赤だ・…よほど、止めるのが大変なんだろう…頑張ってる。
「ミルルとは断ろう。
マナナとなら…。
ううっ…」
俺の背後で・・・キセキはシクシク泣いてる。
『まあ、キセキ。
泣くな…。
行くなら…絶対、今のウチだぞ。
今のお前なら監視員の目も誤魔化せそうだ。
さすがに…小学校入ってからは自信ない』
「…タリアは来ないのか?」
『俺は女装までして行こうとも思わない。
キセキは行きたいのか?』
「そうだな…。
マナナは羨ましい。
興味はある…しかし、女装はする気ない。
普通に幼稚園の男子服で行く!」
『それはさすがに監視員にバレルだろう…』
「バレテいい。
僕はミルルやその他女子に毎日、女男と苛められて嫌だ。
監視員に見抜かれるのは本望だ、僕の自信へとつながる!」
≪ミルルは監視員に馬鹿にされて…男の制服を着た女って思われることに懸けるわ?
こんなミルルよりチビでミルルより女みたいなやつ、認めない!
ミルルが、クラス一美少女で良いの。
キセキさんなんて、オカマになれば良いのよ?≫
とうとう、運動神経抜群なミルルに…運動音痴のマナナは負けたらしい…。
マナナは床に頭から激突した…マナナはオカッパ黒髪を手で抑えた。
それから…ミルルが…俺の後ろにいるキセキへ走って来て…。
ミルルがキセキの背中を数回蹴ってる…。
「ウウ・・
助けてくれ、マナナ…キセキ!!」
俺は背後を振り向いた…。
ミルルは眼鏡を光らせ、鬼のような形相だ…長い黒髪が乱れてる。
また…運動音痴でも根性でマナナがキセキを助けるために…。
ミルルへ抱き締めに行った…。
ミルルは暴れまくって抵抗してる…。
マナナは根性でしがみ付いてる…マナナの顔が真っ赤だ、よっぽど大変らしい…。
一方、ミルルの眼鏡の奥の瞳は平然としてる…力の差は歴然だ。
俺はキセキと共に二人から距離を置いた…。
「ミルル、キセキは私の将来の婿なの!
苛めないでくれる?
幾ら自分より可愛いからって、かわいモノ苛めは認めないわ」
『…』
俺の後ろで…キセキは震えてる…。
隠れやすいらしい…。
≪まあ、もし来なかったら…。
どうなるか?
分かってるわよね?
キセキさん…。
もっと猛烈に明日、ミルルは苛めるから。
こんなレベルなんて甘っちょろいわよ?≫
「マナナ…攻撃してくれ。
タリア、僕をかくまってくれ」
キセキは俺を盾にして…ミルルの眼鏡の奥に眠る視線から逃れてる。
マナナが援助してる…。
「キセキは私のモノなの。
キセキを苛めることは私を貶すと同じ。
それとタリア、アッチへ行きなさいよ。
キセキを助けるのは、私だけで良いの」
マナナは必死なのか…顔を真っ赤にしたまま、床に倒れても…ミルルの足を掴んで…ミルルの行動を止めてる。
…ミルルは床にいるマナナを眼鏡の奥から睨み付けてる…。
マナナはどこを見てるのか分からない…。
あれは時間の問題だ…もう、マナナが負ける・・。
この戦いで、マナナのオカッパ黒髪は収取がつなないレベルにボサボサになってる。
毎日がこれだ…。
『キセキは俺の友人だ。
マナナが去れば良い』
「ふんっ、ねえ?
キセキ…私の方が大切よね?
こんな醜い奴より、私の方が良いでしょ?
キセキ?」
マナナはミルルの足を掴んだまま、俺の後ろで隠れてるキセキへ聞く。
「僕は…マナナもタリアも幼馴染だ…。
感謝してる」
『キセキはこう言ってる。
おまえが去れば良い』
その時、注意がそれたのか…。
ミルルの足が…マナナから離れた…。
ミルルはまた長い髪を揺らし、眼鏡をギラギラに光らせて…俺の背後に隠れたキセキへ走り寄り…キセキの茶髪を引っ張りに来る。
「うるさい。
キセキを助けるのは…私の役目!。
ミルル…キセキの髪を引っ張らないで!」
マナナがまたオカッパ黒髪で頭突きして…ミルルへ突撃してる…。
ここから…先ほどと、同じように喧嘩に発展しそうだ。
今のうちに…俺はキセキを連れて、マナナのいる元から去ることにした。
マナナはオカッパ黒髪をボサボサにして、下から睨み…。
ミルルは、長い髪を振り乱し、眼鏡を曇らせ…上から目線で。
二人の女子は抱き合って…視線をバチバチ合致なまま、攻防戦を続けてる…。
☆☆☆
キセキは俺の後ろにいる。
ミルルの姿が見えなくなったところで…。
キセキは溜息を吐き、俺の隣に来た。
「タリア…ありがとう。
君には恩がある。
いつか僕は返す…」
『マナナと別れろ、あんな俺の容姿を否定してばかりの女…。
俺は認めない。
キセキ…おまえは俺の味方だろ?
マナナなんて好きになれるはずないだろ?
俺の友達の癖に、アイツの肩ばかり持って。
優柔不断すぎるだろ、キセキ』
「マナナは良い子だ。
見直してる。
僕はタリアもマナナも好きだ、家族同然だ。
確かに・…マナナは君に中傷するが…。
でも、僕はマナナと君…どちらも選べない・…」
『俺がお前の友達、止めても良いのか?』
「それは嫌だ。
君も大切だ…理解してくれ…タリア…」
『あんな女、俺は仲間って認めてない…。
いつも俺とキセキが遊んでる時…勝手に割り入って来るだけだ。
俺の悪口しかあの女、言ってない』
「怒るな、タリア。
僕は君って良い奴だと思う。
認めてる…」
『…』
向こうの方でまだ…マナナとミルルは口喧嘩してるらしい…。
走ってこないのが証拠だ。
≪キセキさんのどこを庇う訳?
見てるだけでイライラするでしょ?
何なの?
あのすぐに泣く性格?
ミルルが精神を叩き直してあげるわ。
あんな人間…男って認めないわ、泣き虫!≫
「ミルル、もうキセキを苛めるのは止めるように、他の女子にも言って!
キセキだって悪気ない。
よく泣くけど…それも個性で良いじゃない?」
取っ組み合いの喧嘩は終わったらしいが…今度は口論の喧嘩らしい…。
≪フンッ。
ミルルはね?
弱い人間は認めないのよ?
どこまでも叩くわよ?
躾けるわよ?≫
「ミルル…キセキが可哀そうよ…。
キセキだって頑張ってる…!!」
言いたい放題…キセキは言われてるらしい…。
「タリア…。
僕は君が羨ましい。
何故、僕だけ…クラス女子から苛められるのだろう?」
キセキは遠目にそれを見て…茶色い瞳からボロボロ涙を流してる。
確かに…キセキは背も低いが…。
ちょっと精神的に遅れてる気がする…。
幼稚園、教室の床にキセキの茶色い髪が何本か落ちてる…ミルルに抜かれたものだ。
抜かれた茶髪はまた生えてくる…大丈夫だろう。
マナナは勉強が無理みたいだが…キセキよりは、マシかもしれない…。
マナナも子供と思ったが…。
キセキはまるで赤子みたいだ…。
「ウウウウ…」
俺は泣かれると困る…。
『…』
黙る運命にある。
「君が無口なことに、僕は救われてる。
君もマナナも僕にとってヒーローだ」
突っ込みどころ、満載だ。
しかし、まあ…無口な俺と友達になろうとする人間は…キセキぐらいなものである。
良いだろう、面倒見ても。
仕方なしにこんな日常が続いてる・…。
☆☆☆
茶髪茶目低身長遅れた泣き虫男児―――キセキは何とか…監視員の目を通り抜けられたらしい…。
結局、キセキとマナナ、ミルルが…マナナの母に連れられてやってきた。
ミルルは…母子家庭で忙しいらしい。
ミルルの母は高齢出産でミルルを産み、弁護士らしい…。
ミルルの父が何者なのか…俺は一度も聞いたことがない。
ミルルすら知らないらしい…。
ミルルが言うには…ミルルの母は精子バンクから提供を受けただけだから…。
ミルルすら父親の存在を知らないらしい…。
いろいろ凄すぎる家だ。
ミルルが言うには…
≪ママは…。
精子バンクから提供を受ける時、見せてもらったデーター写真で確認した限り…ミルルに似た顔の良い成績優秀な運動能力もある男性を選んだらしいの…。
それが…ミルルのパパなんだって…。
今は珍しいけど…未来はこれが主流になるって言って…ママは聞かないの…。
でも、ミルルは家に…パパがいないことだけ、不満…
今、何してる人なのか…ミルルも知らない…≫
と言ってる…。
ミルルは確かに…眼鏡はしてるが…髪も黒くロングだが…。
クラスの女子では一番、眼鏡の下にある素顔は良いかもしれない…。
性格は…苛めっ子で…椀力もある。
成績もまあ優秀だ、女子では一番だろう…。
クラスで精子バンクから提供を受けてシングルマザーなのって…ミルルの家しかない。
俺、ビックリした…聞いたとき。
意味が分からなくて…母親に説明を願った。
『精子バンクって何なの?
ミルルの父さん…そこから選んだ人らしい』
||「タリアにはまだ早いわ…。
マリア様と同じって意味よ」||
母親の説明には謎が多いが…。
お父さんがいなくても子供は出来るらしい…。
ビックリした。
ミルルの母って…マナナの母親とは性格も正反対らしい…。
確かに…全てにおいて、マナナとミルルは違い過ぎる…。
因みに…マナナの家は15歳の時、街角で歩いてたら見知らぬ年上男性からナンパが掛かり…一夜で出来ちゃった結婚らしい。
入籍が16歳で…大変だったと、ぼやいてた。
と言うことは…今、21歳なのかもしれない。
若いとは思ってた。
俺、まだ出来ちゃった結婚の意味が分からないから…。
母に聞いた。
『母さん、ナンパで一夜で出来ちゃった結婚ってどういう意味なの?
母さんの前で…マナナの母…言ってたけど…』
||「タリアは聞かなくて良いの。
タリア…ああいうタイプと親交しちゃダメよ。
アバズレっていう意味よ、ビッチってことよ。
股が緩い女って意味なのよ」||
『母さん、アバズレって何?
ビッチって何なの?
股が緩いってどういうこと?』
||「タリアは…知らなくて良いのよ。
あの子とだけは付き合っちゃダメ。
母さん、怒ってる。
あの母と娘、そっくり。
マナナも同じ人生を歩む可能性があるわ。
ムカつく、ウチの子に「不細工」なんて…暴言を…。
ウチの子の方がよっぽどカワイイに決まってる。
あんな非常識で平凡な顔立ちの子に貶されなきゃならない理由なんてない」||
母さんは…カンカンだ。
俺の容姿を褒めるなんて、母さんぐらいだ…俺って絶対、余程母さんに愛されてるらしい。
ココは嬉しい。
でも、母さんは…マナナ母子と仲が悪い気がする…。
マナナのお母さんって若いかもしれない…「育児も分からない」って…いつもぼやいてる。
見てれば放任主義だ、高校出たのかすら…知らない。
マナナのお父さんって…お母さんと歳、物凄く離れてるみたいだ。
||「あの子のお父さん…ここら辺の役所で勤めてるらしいけど…。
中学生なんてナンパして職場で白い目線で見られなかったの?ロリコン。
いろいろ突っ込みどころがあるわ、あの人…苦手よ。
どうせ売春でしょ?
押し掛けて来たから責任取らされただけでしょ、そうに決まってるわ」||と…。
俺の母親が…家でいっぱいマナナ宅を批判してた…。
俺は黙ってる…。
俺がマナナを怒る以上に…ビックリするぐらい…常に母の方が…貶しまくってる…。
それに反して、ミルルの家は躾が厳しいらしい…俺やキセキを呼ぶ時ですら敬称に”さん”が付かないと…ダメだとか…ミルルは言ってた…。
過干渉な家らしい。
俺の家はターシャ教関係で見合いだ。
キセキの家は社内恋愛らしい…。
マナナとミルルの項目だけ…。
母さん、黙り込んでた…。
☆☆☆
外で、キセキの大歓喜する声が…ミサ施設まで聞こえてくる。
因みに、幼稚園の男物セーラー水色制服だろう…きっと。
監視員も…あまり見てないんじゃないか?
「あの生き物は何だ?
湖に浮かぶ…。
顔が犬みたいな…体がイルカで…。
オナカに袋がカンガルーみたいにあって…そいつの子供がいる…。
何匹かいる…あれ、可愛い」
≪犬イルカよ。
ターシャ泉は独自の進化を遂げてるのよ。
近いところは浅いけど…。
真ん中はとても深い湖なのよ…。
真ん中へ行くと…キセキさん…。
死ぬわよ?
まあ、ミルル、キセキさんが溺れても助けないけど≫
犬イルカに遭遇したらしい…珍しい。
俺ですらアイツ、懐いてはくれない。
人間が品種改良した犬とは違う。
柴犬みたいに可愛い顔してるくせに…絶対、人に近寄らない。
警戒心が強くて賢い生き物だ、餌付けなんて無理だろう。
よく、可愛いから勘違いする客が多い。
犬から派生したアザラシにも似た生き物だ、耳が可愛いかもしれない…。
普通に”バウバウ”と鳴くが…体はアザラシのように足は魚状だ、前腕も短い。
魚取るのが上手なハンターだ。
知能が高く、翼魚でも飛び跳ねてでも狩猟する…不思議生物だ、尻尾はない、全身には短い毛が生えてる…。
「私は助けるわよ…。
キセキ、泣かないで」
「ウう」
≪泣き虫。
因みにあの犬イルカ…。
懐かないわよ。
野生だから…≫
「噛むのか?」
≪噛むわよ、痛いわよ?
吠えるのよ?≫
「ミルル。
キセキを泣かせないで…」
「あの…タコ…2匹…。
あれは…」
「ターシャ泉の上から上がって、巻きを炊いて火を起こし…魚を焼いてるタコね。
キセキ、アレは普通のことよ」
「僕はあんなタコ…初めて見た」
「私はここでは、よく見るわ」
「あの…地面で飛び跳ねてる…カタツムリは…何だ?
まるで…顔が蛇みたいで…僕怖いかもしれない…」
≪ジャンピングマイマイね?
噛まれると痛いわよ?
毒がある可能性もあるわよ?
口から二手に別れた舌が出るわよ?
キセキさんに飛びつくかもね…≫
「嘘だろ…。
そんなに怖い生き物なのか…。
あれ…」
「私も知らなかった…。
捕まえようとしたことあったけど…。
逃げられた。
止めた方が良いんだね…」
≪マナナは本当に無学ね。
ここにしかいない不思議生物はいっぱいなんだから。
だからここは国の重要文化財でもあるのよ?≫
「そうなんだ…。
てっきり、巫女様がいるから世界遺産にこの場所…なってるとばかり…」
「それから…。
あの…空に飛んでる…綺麗な光は何だ?
マナナ」
「アレは翼が生えた空飛ぶ魚よ。
普通にいるわよ」
≪普通にはいないわよ。
マナナ。
勉強弱いのね?
ここで独自に進化した、翼ウオよ。
トビウオの上バージョンよ。
光るのは…威嚇してる証拠よ?≫
「凄いな…。
このターシャ泉…。
知らない生物だらけだ…」
そうだろう…。
因みに…このターシャ泉、魚類が正常な代謝を維持するために最小限必要な電解質を含ませた水で構成されてる。
好適環境水とも言うらしいが…。
金魚や鯉と鯛も泳いでる。
仕組みは…この水…浸透圧やミネラルが淡水魚、海水魚の双方に適してるらしい。
と言うか…ここに現存する金魚やコイ、タイもへんてこりんな見た目だ。
脚が付いてたり…してる…地上へ上がりたいのか?
岩場でまるでヒレを足のようにして歩いてる…タイもいる…。
別に毒はない、舐めても大丈夫だと思う。
しかし、村人で海にいる赤いタイや、夏祭りで釣れた金魚を面白がって放流した馬鹿がいる。
罰金は50万円だ。
駆除はしたらしいが、当たり前だが・・・外来生物を入れたり…ここで飼育するのは禁止だ。
この泉は世界遺産にも登録されてる。
泉の端には…。
ハイポニカ農法という水栽培で出来た…鈴なりのトマトがなる木や、これまたメロンの木がある。
しかし、勝手にトマトやメロンを採取してはダメだ。
これも50万円の罰金だ、一応…国立公園の私有地だ。
どんな味なのか…。
近所にある料亭では食べれるらしい…。
翼ウオやトマト、メロンなどだ。
木になるトマト…意外に普通の味らしい。
翼ウオだけは身が締まってる味らしい…。
焼いた後も…蛍光色が含まれてるから皿の上で青光りしてるのに…客は驚くが。
白身魚で普通の味らしい…。
≪他にもあそこにある…濃い紫の花…。
何でも食べるから気を付けなさいよ?
鳥も食べるわよ?
子供の手ぐらいなら溶かすわよ?
キセキさん…突っ込んでみる?≫
ミルルは詳しいのか…解説を続けてる…。
「マナナ助けてくれ…。
ミルルがまた怖い」
キセキの泣く声が聞こえてくる…。
「キセキを苛めないで。
幾ら自分以上に可愛いからって…攻撃するなんて…」
≪ふんっ。
キセキさんだけパパもいて。
ミルルより可愛いなんて認めない。
しかも躾すらなってない。
ミルル、ムカつきまくる。
気弱大嫌い!≫
「マナナ…」
「キセキ、大丈夫。
マナナから私がキセキを守るから…。
巫女様へ会いに行きましょう…」
≪この分だと…巫女様を見て…。
また泣き虫キセキさんがビックリしそうね…。
苛め甲斐があるわ…≫
テントの扉が開いてる…。
外の会話は丸聞こえだった。
俺は布団で寝転んでる。
母親がマナナの母親に対応してる…。
子供たちは勝手に…外で遊んでるらしい・・。
マナナの母も放任主義だ。
結構、怖い生き物もココにはいると言うのに…。
手洗い場の飲水機で喉をマナナの母はうるおわせ…。
テント備え付けの…”ターシャ泉の生物生態日記”という書物を読んでる…。
まるで図書館に勘違いされてるらしい…。
また、俺の母親が怒りそうだ…。
俺の母親は鬼面を付けて…。
黙り込んでる…。
俺は…ひょっこり布団から出て来た。
母には今日、俺の親友…キセキやその他…幼稚園児が来る可能性があると言ってる。
母も俺には甘い。
許してくれた。
「泉の妖精様。
娘、マナナと…。
その彼氏…キセキ君。
あと親友…ミルルちゃんが…やっとコチラに来たみたいですわ…。
それにしてもココは快適ですね?」
それにしても…。
いつの間に…キセキは、マナナの彼氏になって…。
ミルルはマナナの親友になったのだろう?
俺には全くそんなふうに映らない・・。
「巫女様…今日も会いに来ました」
最近、やっと敬語が話せるようにマナナもなって来た。
オカッパ黒髪を揺らして、マナナは下へお辞儀をした。
少し、礼儀正しくなったらしい。
≪これが巫女様ですか?
トリックはあるのですか?
神様って本当にいるのですか?
ミルル、現実主義だし…。
宗教って信じにくい性格です≫
ミルルは眼鏡を光らせ、フンと横を向き、腰まで伸びた自分の長い髪を手で払った。
「うわああ。
光ってますね…。
オレンジ色の光ですね…。
僕はキセキって言います。
よろしくお願いします」
キセキは茶色い瞳を光らせ、ウキウキと体を左右へ動かしてる、キセキの茶髪が少し揺れた。
ちょっと多動児みたいだ。
≪うるさいわね。
アンタみたいな女男、相手にしないわよ?
巫女様…。
コイツ、村の掟を破って…やって来ました。
制裁を食らわせても良いです。
トコトン泣かせてください、巫女様≫
「ミルル…僕はそんなつもりじゃ」
「巫女様、お許しください。
巫女様はきっと優しいから。
万人に平等なお方…。
そこにいる…テントの管理人さんより…常に私たちの味方でいてくれる…。
巫女様…」
「巫女様・・・良いですよね?
私たち母子…連日、ココに通い詰めてますから…。
もう、仲間も同然ですよね?
ウチの子と…巫女様…」
『まあ、今回だけ…。
良いでしょう。
次回は許しませんよ…』
「巫女様、お優しい」
||「用事が終わったら、すぐにお帰り下さいますように…。
巫女様は妖精。
忙しい身なので…」||
「僕…巫女様と写真撮ってみたいかも。
記念に…」
≪ダメに決まってるでしょ?
この男女。
帰りましょう?
巫女様がキセキさんを泣きに苛めないなんてつまらないわ…≫
「私は…巫女様とキセキ、ミルルの4人で…。
ターシャ泉で写真が撮ってみたい…。
巫女様…いいですか?」
『良いでしょう…』
||「まあ、巫女様がそうおっしゃるなら…」||
「それでは。
巫女様。
あと…マナナの彼氏…キセキくん?
それと、マナナの親友…ミルルちゃん…?
一緒にターシャ泉の前へ行きましょう♪
カメラなら持ってきたから♪」
「うん!
お母さん」
マナナの母…本当にマナナに甘い。
≪ふんっ、今回だけよ?≫
「マナナ、マナナのお母さん…。
巫女様…。
ありがとう。
僕、嬉しい」
キセキも喜んでるらしい。
良いだろう。
俺は母さんの方角を見た。
母さんは鬼面を付けたまま…。
黙りこくってる…。
寝てるのかもしれないし…。
怒ってるのかもしれない…。
表情すら読み取れない・・・このお面…。
☆☆☆
俺は…静かに固まる母さんをテントに残して…。
テントの外へ出た…。
母さんも確かに大変だ。
家事や神社5時からの儀式…。
それに客への対応…。
いつ寝てるのか可哀そうなレベルかもしれない…。
母さんって昼寝してるのだろうか?
結構、神社って毎日…人が大勢来て忙しい。
俺は4人仲良く…マナナの母さんに撮影してもらえた。
「はあい。
巫女様。
マナナ。
マナナの彼氏…キセキ君。
マナナの親友…ミルルちゃん…。
並んで?…。
笑顔よ?
チーズ♪」
----カシャ。
カメラのフラッシュが…たかれた。
途中で…ミルルが…キセキの髪を引っ張り、キセキの背中を蹴ったらしい…。
「痛い…ウう」
シャッターが鳴る瞬間・…。
キセキの泣き声がした…。
ミルルは写真撮影が終わると…。
≪フンっ≫
と横を向いて、腰まで伸びた長い髪をハラリと揺らし…眼鏡を元の位置へ鼻を鳴らした。
マナナは俺の女体化で光り輝く金髪を勝手に触ってる。
俺の光は今、オレンジだ。
〜一番左が俺で…女体化して金髪碧眼美少女で白いドレスを着込み、全身がオレンジ色の光に覆われてる。
それから俺の右隣が…オカッパ黒髪なマナナでヒョウキンな顔してる。
マナナは俺の伸びてる金髪へ左手を伸ばし触り、右手はピースサインをしてる。
マナナの右隣にいる茶髪茶目低身長男児、キセキは水色ズボンを着て・・・茶色い瞳から涙を流してる。
一番、右にいる長髪なミルルは、眼鏡の奥から怒った表情で、右手はキセキの茶髪を引っ張り、脚でキセキを蹴ってる・…。
背後はターシャ泉で、夜空には星が煌めいてる〜
こんな写真だ。
初めて…幼稚園児らしいことも出来た。
大満足だ。
母さんへも頼んだ甲斐があった。
母さんは||「連日来るモンスター母娘へ対応することで疲労感マックスよ?」||と…。
家で文句タラタラしてる。
俺は…今日、楽しかったと言うのに…。
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