アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

【泉 の巫女】番外B



そんなノリが続いた。

俺が関係者以外立ち入り禁止の白い橋を渡る時、たまに犬イルカに遭遇する。
そんな時は機嫌が良い。
オレンジ色の光に俺は発光もする…。
水面から顔を出して、愛らしい柴犬にも似た見た目だ。
ついつい餌を与えそうになる…。
しかし…だいたい、「バウ!」と吠えられて…集団で遠いところへ逃げられる…。
あの瞬間は切ない…。
未だに犬イルカと俺は和解できてない…。
これは無理なのかもしれないが…。
見た目があれだから時々、期待してしまう…。

☆☆☆

連日、ミサへマナナ親子は来る。
小学生のうちは…保護者同伴で来るらしい。
俺はとうとう小学生1年から、力を与える儀式が開始された。
6歳までは母がしてくれてた。

7歳からどうしても母が神事に忙しいのか…。
確かに仮面を付けても居眠りをしてた。
俺が店番になった。

しかし…行と帰りは母が迎えには来てくれる…。
常に父からは

父『ボロが出ないように振る舞え。
危ないと感じたら、風邪ひいたとでも言って逃げろ』

とは。
説得されてる。
父は

父『叔母さんも出来たからおまえも出来るはずだ、頑張れ…』

とは言われてるが…つまらない。
客はクレーマーばかりだ。
俺は仕事を放任して…客が来ても、布団でゴロゴロすることも多い。
そんな時、勝手に俺の隣へ来るのはオカッパ黒髪な女子…マナナだが。
学校でアイツは態度悪すぎだ。
ソッポを向いてる。
客がこれば、マナナから逃げるように対応してる。

[まあ。
愛らしい、妖精様…。
ギュッと抱きしめたくなるような愛らしさですね?
一目惚れしました]

『…』

[髪に触っても良いでしょうか?
そのキラキラ光ってる髪は…どういう仕組みなのですか?]

『汝の用件をどうぞ』

[脱線してすいません。
えと…ターシャ泉の巫女様…力を与えて欲しいです…。
私に悪口散々なヤツ。
アイツに天の裁きが来るように。
どうか私に力を…]

『分かりました。
私は何人にも平等なターシャ泉の妖精。
貴女の願いが叶いますように。
それでは瞳を閉じて…手をこちらへ』

父から暗記させられたマニュアルだ。

『迷える子羊が正常な道へ歩めますように…。
汝に神のご加護がありますように』

手だけ握って・・力を与えるイメージを頭でして…。
手を離す。

『終わりました』

[何だか・…力が沸いた気がしますわ。
あんなヤツ、酷い目にあっても当たり前に決まってますわ。
私の悪口散々]

この台詞。
マナナにこそ言ってやりたい。

『またのお越しを』

[可愛い妖精さん、ありがとう。
また来るわね。
信じられないくらい…可愛いわ、本当に…。
さすが村の妖精さん]

何とか…出来てる。
客が去れば・…また寝そべったり…。
俺はジッとしてるのも辛い域だ。




幼稚園はミルルやキセキ、マナナと同じクラスだった。

それから…小学校のクラス決めは…くじ引きだった…。

2年に一回…卒業の小学6年までに…小学1年、小学3年、小学5年の3回…クラス決めのくじ引きがある仕組みだ。
くじ引き箱に数字が書かれた紙がある…。

7歳8歳…1年2年は、キセキ1組、マナナ2組、俺3組、ミルル4組になった。

その間も…俺は無口だ、クラスでも会話交わす程度の人間ならいるが。
相変わらず…帰りはキセキと共に行動してた…キセキには頼られてた。
帰り道…そこへ勝手に乱入するのが、マナナ。
それから苛めに走って来るのはミルルだ。
キセキをミルルから隠すのが俺…キセキをミルルから助けるのがマナナの役目だった。

9歳10歳…3年4年は…俺とキセキとミルル、マナナの4人で同じクラスになった…。


☆☆☆

俺は4年生…10歳になった。

今日はミルルが海外旅行をして休んでるらしい…。
ミルルは…平和国へ母親の仕事関係で…二人でヴァカンスらしい…。
羨ましい。
いつも俺の目の前で開催されるバトルがない。
心なしか、マナナの覇気がない、戦う相手がいないと大人しいらしい…。
いつも取っ組み合いのキセキを苛めるミルルVS守るマナナの闘いしか見てなかった…。
こんなマナナは新鮮である。
あんなミルルでもいないと教室は静かだ…。
今日は…キセキが茶色い瞳をキラキラさせて、満面の笑みだ。

『キセキは俺の友人だ。
成績底辺な恋愛低脳女に落ちるわけない。
お前は離れてろ、屑。
邪魔すぎる。
俺はキセキと今から遊ぶ約束をしてる』

「醜いタリアのことなんて無視で良いわ。
ねえ・…キセキ、泣かないで、私を頼って良いのよ?
いくらでも…。
ミルルが主犯だけど…クラスにいる女子たちが…全員、キセキを女の子みたいってからかうのも…。
キセキが素晴らしく容姿に恵まれて嫉妬してるのよ。
私はキセキが大好き。
将来、お嫁さんにしてくれたらな…」

『俺はおまえの顔見るのも嫌いなレベルだ…。
アッチ行ってろよ。
男同士の話題がキセキとある・・・。
お前は性格まで最低だ。
キセキ、俺の味方だろ?
あんな勉強も出来ない女、キセキが好きなわけないだろ?
そうだろ?』

「そうだな…。
僕は…マナナとタリアと僕で幼馴染だと思ってる。
確かにマナナは僕へアタックしてる女の子で…。
タリアは僕の隣にいる男友達だが…。
そう感じてる・・・。

それから、僕はマナナには甘い。
マナナが勉強が出来るようになれたら、僕はきっとマナナを選んでも良いよ」

俺の味方は母さんだけだが。
母さんは自宅でマナナをボロ糞だ。

「本当に?
キセキ…。
ありがとう、優しい・・・。
タリアは容姿最悪だけど…心まで狭い…嫌い過ぎる」

『分かったから。
もうマナナは去れよ。
おまえは道徳皆無なモンスター級の性格最低女だ。
俺はおまえ…嫌いに決まってる』

マナナを俺は睨んでる、視線すら合わない。
キセキへ目くばせした。

『キセキも同じ気持ちだろ、俺の味方だろ?
俺達…友人だ、そうだろ?キセキ…』

「まあ、怒るなよ…。
タリア…。
マナナのこと、許してやれよ。
僕はマナナとも仲良くありたいし…。
タリアとも仲良くいたい…。
僕は3人でいる時、とても居心地がいい…。

学校で、僕は…ミルルやクラスメイト女子全員から…連日、苛められ続けてるが…。

君たち二人の存在に…僕は救われてる。
この恩を…僕は絶対に忘れない…。
僕はマナナもタリアも好きだ」

『キセキ…。
何言うんだ?
お前は俺だけで良い。
キセキは俺の友達だ!!』

これが俺なりの会話だ。
キセキは良い奴だ。

『お前は俺とキセキの友情まで邪魔する屑野郎だ。
去れよ、ボケ…マナナ』

『俺はマナナは幼馴染とは認めない。
キセキは博愛主義すぎないか…?』

キセキへ視線を少し、送って。
ヤツは睨む。
俺は認めない。

「タリアとマナナは本当に険悪だな。
見ればいつも喧嘩してる…。
僕はどうすれば良いんだろう…。

そう言えば…タリア、君はミルルが好きらしいな…。

ミルルは確かに…マナナと正反対のタイプだ。
君は…よっぽど、マナナが嫌いなんだな…。
僕はタリアもマナナも幼馴染と認めてると言うのに…。

僕はミルルからも女っぽいと苛められてる状況にある…。
僕は…タリアとミルルの恋を…全面協力しても良いかもしれない…。

マナナには…宿題丸写しを連日でも良いかもしれない…」

「キセキって本当に優しい…。
ねえ?
タリアなんて放置して…私とだけで遊びましょうよ?
公園でデートなんて♪」

『うるさいな。
キセキは俺の唯一無二な親友だ。
諦めろ、去れよ!』

俺はこっそりアタックしてる。

「まあ、怒るなタリア。
何で、二人はこんなに仲が悪いのか…。
僕は学校では女子に女っぽいとカラかわれて…ショゲテ…。
マナナが僕を唯一、好きでいてくれる貴重な女子だ。
タリアもマナナを大事にしてやってくれ…僕はマナナに感謝してる。

それにしても…マナナ。
君は僕に勉強は聞いてばかりで一問も解こうとしない。
それだけは頑張れ。
僕は君が心配だ…君は僕にとって家族にも近い存在だからだ…」


『マナナ…でも、俺とミルルの恋に協力するなら…。
お前とキセキの恋に協力してやっても良いかもしれない。
お前と友達になっても良いかもしれない』

どの言葉でも視線が合わない。
コイツに効く台詞はこれかとも感じた。

マナナが凝視した。
初めてマジマジと見られ。
焦った。

『ミルルのことを…協力してくれるなら…。
お前と和解も良いかもしれない…。
俺は…そう思ってる…。
別にお前と友達になっても…。
ミルルと俺を協力するならだ…』

罰は悪い。
マナナと友達になって、どこまでもキセキとの仲を撲滅する魂胆である。
点数稼ぎに決まってる。

「何言ってるの?
私は全くタリアと友達になる気はないわ。
容姿最悪だし、自分でキセキにはアタックできてるし。
タリアも自分でミルルに言いなさいよ。
人を頼らずに…」

マナナには睨んで叱られた。

「マナナ、怒るな。
このとおり、タリアはこう見えてミルルの前ではシャイなんだ。
僕には分かる。
タリアって…結構、普段おとなしい。
そのお蔭で僕も癒されてる。
タリアはこう見えて良い男だ」

『キセキ、おまえだけが俺の親友だ』

俺は横目でキセキを見た。
ムカつく。
撲滅する。

『マナナは去ってろ!
邪魔だ』

マナナは威嚇した、常に睨む。

「キセキ…もう、タリアは捨てて、私とデートしましょうよ…。
ねえ…」

マナナが俺を押しのけて、キセキに正面からスリスリした。
潰そうかと感じてる、この空気。
イラつく。
俺だけモテない。

『おまえは邪魔だ。
今からキセキと…恋愛相談する。
ミルルについての話だ。
コッチへ寄るな』

ずっと睨んでるが…視線すら一度だけだ、合ったの。

「マナナ、そう言う訳だ。
またあとで話そう。
僕はタリアとも友達だからだ」

「キセキ…待ってるから…私…。
本当に、タリアって他力本願なんだから。
呆れるわ…キセキも大変でしょ?
キセキ、本当に可愛い顔してるわ。
大好き」

『キセキと恋愛話する。
おまえには関係ないことだ。
向こう行け、邪魔だ』

睨んでる。
こんな性悪女、好きとは認めない。

「キセキ…私を選んでね、キセキのために勉強…頑張るから…」

「僕は君に期待してる」

マナナから離れた後…。

『キセキ、あんなヤツ・・どこが良い?
まさかキセキ、アイツ…好きなのか?
俺は反対だ、性格最低だ。
俺の容姿ばかり貶す道徳の少ない、しかも…勉強も底辺だ。
キセキ、こんな奴のどこが良い?
理解に苦しむ。
キセキ、俺の味方だろ?
おまえは…』

俺は二人の関係を潰しにかかる。

「僕は…タリアもマナナも同じくらい好きだ。
両方、僕の大切な幼馴染だ。
君たちがいるから学校が楽しい。
怒るな、タリア…」

そしてミルルへの恋愛話で盛り上がる。
悪いが…あれはフェイクだ。
どうせクラスで誰が好きか言えば…一日で噂が広まることぐらい知ってる。
嘘に決まってる。
勝手に騒げばいい。
その方が楽だ。
俺は親友も騙してる。

☆☆☆

小学生4年だったと思う…。
マナナの家が大変なことになった。
俺の母親がした勘もあながちウソではなかった。
マナナの母は本気で元ビッチだったらしい…。
小学生から…100人切りをするレベルだったらしい…。
今でもAVが流出してるらしい…。
一度流れると止められないらしい…。

マナナの前にも流産した子が2人もいたことが判明した。
そこは良い。
それでも、マナナが出来てからは人間が変わったように慎んでいたらしい。

 「私は若い頃、性依存症かと思うレベルに旺盛でした…。
後先考えず、冒険がしたい性格でした…。
私の罪は・…償えるでしょうか…?」

『私は万人に平等な…泉の下に暮らす妖精ですので…。
汝が改心すれば…きっと神様も願い事を叶えて下さるでしょう…』

言葉がもつれそうにはなる…。

これは…マナナの母親が…俺が巫女の時にされたディープすぎる願い事だ。
神の前で…罪を懺悔された。
俺はそんなこと10歳で聞くと困る…。
マナナもいた。
マナナの母は…マナナにだけは同じ道を歩んでほしくないから聞いて欲しい、と泣いてた。
重すぎる願い事…1000円だ。
しかし、まあ、祈った。

マナナの母は26歳だった…子宮癌になった。

若い頃の豪遊が祟ったと、何とか癌を撲滅してくれと力を授ける儀式を頼まれた。
俺はこの話…黙ってたが…。
勝手に噂は流れた。

マナナの母がうっかり参観日に言ってしまったらしい…。
確かにあの人、秘密とか隠すの下手そうだ。
ずっと、連日…癌告知があった日から…あの人ですら、暗かった。
当たり前だろう…。
後先、考えそうにない性格の人でもある…。

マナナはその日から…ビッチの子として…。
ビッチと噂された。
マナナは教室で暗い。
ビッチと言われることより…親の体が心配らしい…。
マナナの方が…あの親よりまだマトモに見える…。
半分、父の血が入ってるからなのか…。

一応、遺伝子検査はして、マナナは…マナナの父の子供であることは確実らしい。
確かに…15歳でナンパで一夜で結婚と言う話は…変だとは感じてた。
俺も聞いて動揺しまくってたが…マナナも衝撃的だっただろう…。
複数関係があるなかで…日にちからして…勘でマナナの父が…。
相手じゃないかと女の勘だったらしい…結果的に当たってたが…。
間違えていたら、どうなってたのか?

俺は最近…保険体育で体の仕組みを習ったところだ。
マナナも同じだろう…。
多分、クラスメイト女子で生理がある人間なんていると思わない…。
物凄く…俺には重すぎる話だ。
しかし、俺は一人で対応してる。

設定が、泉の下に暮らす神話にいる生物…妖精さんと信じて疑わないからだ…。
ビックリしまくって…。
光り方が…赤やピンクや緑や茶色にクルクル変わってる。
俺の光り方は…感情を表してることに…。
まだ、この母子は気が付いてないらしい…。

普通の10歳児…これ聞くと、どう反応して良いのか分からない。
しかも知り合いの人間の秘密話も良いとこだ。

『汝に神のご加護がありますように…。
迷える子羊に救いの手を…』

マニュアル通りの対応しかしてない…。

☆☆☆

それから小6までは…願い事をしながら…俺のミサへ母子で通い詰めてた。

5年6年は…ミルルとマナナは同じ2組で…。
俺とキセキも同じ1組だった…。
クラスは別れたが…帰り道とミサでは、マナナとも会ってた。

マナナの母親は…何とか…癌治療を克服できたらしい。

 「癌だから治って良かった、エイズじゃなくて良かった。
きっと、巫女様のお蔭」

と感謝されたが…結局、マナナの母の精神力が並大抵じゃなく強いからだろう。
そう感じてる。
本当に見てると悩みがないのかと思うぐらい明るすぎる人だ。

俺の母の方が悩みまくってる印象だ。

ふっくらしてた人だったのに、痩せてる…。
あれから…2年経過した。
癌は再発してないらしい…。
そこは良かったと思う。

それなのに…俺の母は更にマナナの家を批判しまくってる。
マナナは相変わらず、ビッチとあだ名が付いたが…。
最近、明るい。
親の癌が治ったからだろう。
マナナも精神的にタフらしい、そこはあの親に似てる。
カラカラしてる。

俺が逆の立場なら凹みそうだ…。

ビッチと言われてもなお、キセキにアタックしてる…。
アレはダメだ。
マナナはだんだん、胸が出てる。
キセキにそれでもベッタリ抱擁してる。
俺はマナナの母から頼まれたことも含めて…。
小学生でビッチ道へ転落しないように二人を引き離さなくてはならない。
冷や冷やしてる。

☆☆☆

中学1年になった。
キセキとマナナが同じ1組だ…。
俺とミルルが同じ2組だ。

帰り道…ここら辺からミルルが…激怒を始めた…。
ミルルは少しずつ、キセキを好きになり始めてるらしい…。
マナナはまだ、キセキにベッタリだ…。

茶髪茶眼色素が薄く多動気味な奴―――キセキがだんだんモテ始めてるのを感じる…。
あまり面白くないかもしれない・・・。
背が一気に伸び始めてる、多動気味だったのが治りつつある。

中一のクラス決め…あれは、どう言う仕組みで決めたのか…謎だ。
中学の先生も…小学校から通達があって…マナナには勉強を見るキセキが必要とでも判断したのか??
キセキを苛めるミルルは離したのか?
マナナとミルルの喧嘩を止める目的なのか?
不思議だ。
俺はキセキとも離されてた、確かに俺とマナナは険悪だが…。



☆☆☆

中二になって。
キセキが突然物凄くモテ始めた。
あんなにキセキを苛めてたミルルや…。
それから中学から同じになった…大和ナデシコっていう女子まで。
キセキに目を付け始めた。
全く面白くない。

少し、キセキとは距離が出来つつある。
中三もこのクラスらしい…。

ミルルに友達が出来た。
大和ナデシコ…顔が純和風で、黒髪が腰まで伸びた女子だ。
ミルルは最近、ドラマの関係で…茶髪に染め始めた、眼鏡だけはトレードマークでそのままだったりする。
ミルルと大和ナデシコは二人でコンビを結成して、キセキから寵愛を受けるマナナと闘う気らしい。

現在、マナナと俺とキセキ…それからミルルとナデシコが、同じクラスだ。

最近、どんどんキセキが…上から目線へと変貌しつつある…。
前までは女子に苛められてたくせに…。


その間も…中学からは…親なしでマナナはミサへ通ってた。
成績アップの願い事だ。
願い事する暇があれば…自宅で勉強すればいい。
しかし、相変わらず、キセキに丸ごと宿題写させて貰ってる。

キセキも今では女子に苛められてもいないくせに…。
マナナには恩があるからか…見てると甘い。
二言返事で貸してる…。

アレはよくない空気だ、撲滅するに限る。
俺はモテない、ムカつく。

マナナは母親の言いつけを忘れて…学校ではキセキに色仕掛けをしてる。
正面からキセキにべったり胸をくっ付けて…窓の前の机に座って…イチャイチャだ。
空気がピンクにもなる。
マナナの家にいる母が見たら、悲しむ。
成敗しなければならない。

マナナは確かに最近…AVに出てくる人の体型に似てる…と噂されてる…。
未だにマナナの母が昔、出演したAVは流出してる…。
どれなのか見る気は全くない。

まだ、マナナにはビッチと言う偏見が流れてる…。
あれでは余計だろう…。
キセキにベッタリ…くっ付いてる。
女子たちも怒り狂ってる。

☆☆☆

中二の時、忘れ物ばかりするマナナから教科書を見せてくれと。
頼まれた。
隣の席になった時だ。

「タリア…。
えっと…教科書見せてくれないかな?
てへ」

『…』

「前の席にいるミルルにも断られて…。
後ろの席のナデシコにも断られて。
仕方なしに」

『…』

「あまり気乗りしないけど…。
はあ、別になしでも…。
でも欠点になりかけてて…。
はあ。
隣の席がキセキだったら良かったのに…」

『…』

「見せてくれないの?
黙ってるけど…」

ムカつく。
コイツ、俺の悪口散々な癖して。
しかし、断れなかった。
暴言なら頭で山ほど唱えたが、黙って見せた。

『…』

「ミルルが見せてくれたらな・…。
はあ…」

これが俺の日常だ。
やっぱり見せるの止めようかと思わせる台詞の連続だ。

「アンタって無口ね。
キセキが一緒の時だけ多弁になるのね…」

『…』

確かに無口だとは母にすら言われてる。
俺は突然のことに対応が下手な性格かも知れない。
キセキがいた方がココで言い返せただろう…。
マナナが俺に頼みごとをするのは珍しい、天変地異の域だからだ。

「アンタ、それでミルル落とせるの?
キセキもずっと心配してるわよ。
私にはどうでも良いことだけど…」

『…』

マナナにもキセキにも協力されてる状態ではある。
しかし無視してる。

というか…マナナからここまで積極的に会話されたのって人生で初めてかもしれない。
元の姿でいるときに、二人の会話…今までなかった気がする…。

そこから会話は止まった。
マナナは前の席をしっかりみて、授業に集中してるらしい。
授業中は私語を慎むことは当たり前だ。

俺は…マナナから朝晩…挨拶すら長年されてない状況だ。
今日はおかしすぎる、何かあったのか?と勘ぐってしまうレベルだ。

☆☆☆

そのあと…。
予想通りにクラスメイトから…。
マナナがいない席でカラカワレル。
これが一番、俺が嫌いなことだ。
俺は騒がれるのが大嫌いな性格だ。

[おまえ…険悪な仲のマナナに頼まれて教科書、貸してるんだってな]

[いつの間にアイツと和解したんだ?]

[タリア、ミルルを好きなのに。
アイツのこと、許したのか?]

許すわけない。

『アイツはキセキだけじゃなくて他の男にも色目線を送る男タラシのだらしない女だ。
もう嫌がってる、そうに決まってる。
俺はああいうタイプの股の緩そうなフシダラな女は最低だ。
好きになれるわけもない。
しかも頭も悪い、良いところなしだ。
更に忘れ物までする、もう救いようのない馬鹿も良いところだ。
和解なんてしてる訳もない、向こうから一方的にだ…』

照れてることも隠す。
あんな男タラシ最低すぎだ。

『俺はマナナだけは大嫌いだ、勉強も出来ないし、本気で良い迷惑してる…。
俺は嫌がってる、隣の席になったこともだ。
ミルルが好きに決まってる』

ミルルはどうでも良い。
勝手に騒げばいい。

『俺はマナナなんて論外も良いとこだ、正反対のミルルが好きだ、当たり前だ。
協力してくれ、ミルルのことを…これからも』

マナナで茶化すな。
俺はミルルが好きってことにして欲しい。

☆☆☆


☆☆☆

ミサが始まる…。

いつも通りにマナナが来る。

今日はいったん…家に帰ったのか…私服だ…。
前開きで脱がせそうな…前面にボタンが並んだ赤い服だ。
制服の白いTシャツより更に色が赤で…胸がピチピチだ。
胸元が開きすぎて…胸の谷間が丸見えだ…。
まるで誘われてるかのようだ…。

マナナは普段…こんなに露出の激しい服を着てるのか…そうなのか…。
そう言えば…マナナの母も若い頃は似たような服を着ていたが…。
俺が幼稚園ぐらいまでは…。

癌で闘病生活になって以来…痩せて、そんなことはなくなった。
今のところ、マナナはまだビッチへは転落してない…。
しかし…これは胸の谷間が丸見えだ…隠そうともしてない。
まさか…下に一枚も服は着てないのか?。
ブラジャーが透けてる…。

前開きボタンから…肌が見えそうだ…。
露出狂なのかと疑うレベルだ…。
まさか…マナナの母がビッチだったから…マナナも同じなのか?
違うとは願う。

脚も生足…ミニだ。
肩も開いてる服だ…。
全体的に露出が多い気がする…。
肩揃えな黒髪はいつも通りだが…最近、ミルルと取っ組み合いの激闘してない分、ボサボサが落ち着いてる。

「巫女様、今日も来ました。
えへ♪
髪の毛触って、抱き締めまくってもいいかな?
見て見てこの服、似合うでしょ?
巫女様のために、めかして来ました」

昔からだが、ずっとこのノリだ。

『商売道具なので…離れてください』

不思議と…この姿の方が話しやすい。

「巫女様、今日もおごそか…。
こんだけ通ってるんだもの?
今日こそ、友達に・・・。
ギュッとしていい?
今日はクッキー持ってきました」

マナナは俺の前へクッキーを出した。

「あと…どうしても…ミルルが通う成績優秀高校へ通いたいんです。
今日は力を与える儀式してもらっても良いですか?」

なんか…机の上に…手をついて…わざと胸を突き出してる…。
わざと胸の谷間を見せつけてる…。
丸見えだ。
警戒心すらない。

ミルルが通うと言うことは…キセキが行く高校でもある…。
ミルルはキセキを追ってるらしいからだ。

『良いでしょう』

マナナには成績優秀高校は無理すぎるだろう。
行けて低脳高校だろう。

『目を閉じて、手をこちらへ』

マナナは瞳を閉じて…手をこっちへ差し出す。
何とか…根性でも浮かれるように念を入れた。

『終わりました。
瞳を開けて下さい』

「何だか…運が付いた気がします。
ここへ毎日通って、妖精様の姿さえ拝めば…入れそうなそんな気力が…」

どれだけ・…都合のいい頭なんだろう…。
今、マナナは欠点らしい…。
大丈夫なのか?
マナナは俺の手をまだ離さない。
摩ってる…。

「頑張ります。
気力は高いです。
きっと、できるはずです」

『汝に神のご加護がありますように…』

その間も俺の手を握ってる…。
いつもこのノリだ。

『そろそろ手をお放し下さいませ』

「え?
あの…握手ってことで。
握手会です。
サインは…」

マナナは手を離した。
それから…色紙を出してきた。
勘違いされてる…。

『ここはアイドルのファン会場ではございませんので…』

「それでは…二人でツーショットぐらいなら…」

『許しません』

「そうですか…それは残念です。
でも私、諦めません。
それではまた明日も来ます。
明日こそ、友達になれて…ギュッと抱擁させてくださいね。
巫女様♪」

マナナは立ち上がった。
スッキリした顔だ。

「今日も麗しくて…心が洗われるようでした。
目の抱擁です。
クラスにいるヤツとは大違い。
ありがとうございます」

マナナは照れた笑顔だ。

『…』

俺は黙って机に座ってる。

マナナは最後に俺へ側からベッタリくっ付く。

「ああ…やっぱり巫女様、綺麗だわ。
癒される」

『もう次の客が来るのでお帰り下さい』

マナナは寂しそうな顔で去って行った。
マナナって誰にでもくっ付きに行ってるイメージだ。

キセキにもだが…。
昔は喧嘩するミルルにもくっ付いて行動を止めてた。
俺にも横からなんかくっ付いてくる。

アイツ…エロい気がする。
今日…何か…服の上から乳首が立ってたような気がする…気のせいなのか…。
もう一枚、服を着た方が良い気がする…。

いつもこのノリだ。
他の客も何故か似たようなノリだ…。

☆☆☆

そんなことが連続3日続いた。
ミサに来るとき、ちょっと前よりマナナが可愛く感じる。
学校から帰るとボンヤリする。
このまま、友達になれても良いかもしれないと感じた。

4日目のことだ。
また、アイツが貸してくれと頼みこんだ。

『俺とミルルの仲を協力するなら。
おまえとキセキの仲を協力してやっても良い。
それなら、おまえと友達になっても良い。
俺には女心が全然分からない、女友達も必要だ。
おまえと和解しても良いかもしれない…』

もちろん、仲良くなって撲滅させる魂胆だ。
当たり前だが。

「自分で言えないなんて最低も良いところ。
私は自分の恋は自分で解決する。
人に頼らない」

マナナには激怒され、机を1mは離された。
やはりモテないらしい。
少し勘違いしかけてた。

俺は教室では非モテ男だ。
母さんだけが俺の容姿を褒めてくれてる。
母さんだけが味方の筈だが…。
マナナのことは未だに母さんは、ボロ糞だ。
俺はいつになったらモテるのか…。
このまま、ターシャ教関係の見合いコースなのかもしれない。
それでも良いのかもしれない。

☆☆☆

家で、母には…。

||「タリアにはお母さんが許婚(いいなづけ)を 用意してあげてるから。
タリアが勉強とミサのお(つと)めさえ頑張った ら、20歳ぐらいの頃に会える計画よ。
それまで頑張って!

大丈夫よ。
恋愛なんて良くないわ。
お母さんもお父さんとは許婚(いいなづけ)関係 だったけど、見合いで出会えて…今、大満足なんだから。
タリアも絶対、その方が良いわよ?
だから…。
変な虫にだけは引っかからないように、注意してちょうだい!」||

毎日、こう言われ続けてる。

俺には許婚(いいなづけ)がいるらしいが・・どん な人なんだろうか?

『母さん、俺の許婚(いいなづけ)って…どんな人 なの?』

||「まあ!
タリアちゃん…会いたいね!
それは二十歳までのお楽しみよ!!
きっと貞淑(ていしゅく)で能力値にもたけ、素晴 らしい女性よ!
良家(りょうけ)子女(し じょ)なのよ!
もう、お父さんも心待ちにしてるのよ!」||

『そう…』

少し、(あきら)めもある。




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