アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

【泉の巫女】番外@(幼少期



【番外】幼稚園時代のイラスト→制服と か…読むときのイメージづくり参考程度に…。


  


俺は月神家の長男として生まれてきた。
特異体質でターシャ泉の半径1km以内に入ると性転換が起きる。
しかし不完全変態な気もする・・。
男から女体化はするが…女性の時、生殖能力は元のDNAがオトコな関係でないらしい。
父からの説明だ。
泉の波長が俺を狂わせる仕組みは分からない。
変な磁派が出ているのか…。
それとも俺の体だけ人とは違うからか…。
月神家の一子はこうなる定めらしい。
因みに俺が亡くなった場合…俺に兄弟がいれば…次の兄弟が同じようになるらしい…。
俺は不思議生物も良いところだ。

俺の一族は神様がこの泉に住んでたクラゲクマノミという光る性転換する魚と人間を組み合わせて人体実験した…半魚人の末裔だと言う神話すらある。
確かに不思議生物、ココに来たりではある。
それから…このターシャ泉は進化が特殊で世界遺産に登録されてる…。
日々、観光客で賑わっている…。
特に犬イルカが…おなかにカンガルーのように子供がいる…顔は犬、体はアザラシだ。
あれが一番人気で…犬イルカせんべいと言う菓子も売っている。
これは犬イルカ専用の菓子らしい…。
最近、犬イルカの数も増えてきているので…あまり、えさを与えないように…看板に表示されてる…。

因みに犬イルカは餌付けは無理だ。
餌を食べたらサッサと遠くへ逃げていく…「バウ!」と吠えて集団で逃げていく…。
ちょっと、犬より猫なのかと疑うレベルに警戒心の強い知能が高い生き物だ。


☆☆☆

生まれた時から…ずっと。
夜、7〜9時は母親に背負われて…ターシャ泉へ行った。
俺はこの村の守り人として…この時間には泉を守るためにいなくてはならない定めを背負った人間らしい・・。

赤子時代、ミルクを飲むことすらこの場所。
きっと、母親は大変だっただろう。
母親は俺の祖母と一緒に…仮面を付けて…育児に励んでたらしい。

俺はどうして、ここにいるのか。
不思議だったらしく・…。
初めて話した言葉は…

『カーたん』

それから暫くして、

『家帰りたい』

ある程度話せる3歳にはダダコネまくりで客を困らしたらしい。

客は…俺がいる姿だけを見物しにゾロゾロ来てたらしい…。
俺は村の祭壇へ祈りを捧げる巫女らしい。
説明は受けた。

母からの昔話で…サボれば…俺は心臓発作で死ぬのだと…。
村に災いが起きるのだと…。
そんな話を聞かされた。

それが真実か試す勇気はないが、取りあえず…俺は両親に従った。
それから俺の正体も話すなと両親は口酸っぱかった。
子供時代はボロが出そうになれば・…隣にいる母に唇を手で抑えられた。

母の顔にはターシャ教公式お面。
右半分オレンジ笑顔…左半分紫泣き顔で構成されてる鬼面だ。

見た目に怖いので、これだけでも泣いてたらしい…。
と言うか今、見れば笑いそうになる変なシンボルだ。
しかし今では慣れてる。
そんな頃は忘れてる。

物心ついたのは5歳程度かもしれない。
それすら、忘れかけてる。

☆☆☆


5歳、入園前…。
仮面を被った母がミサのテーブルにいる。


ーーーートントン・…。

俺はつまらないから、壁を叩いてる…。
壁を叩けば、まるで太鼓のようだ。

母は俺が壁を叩く姿を見て、笑っていたらしい…。

 ||「タリア、じっとできないの?」||

ーードンドン…。

『…』

ーーートントン…。

 ||「もうすぐミサよ、じっとしていなさい…」||

『…』

||「本当に大人しいんだから、タリアは…。
でも、壁を叩いてはダメよ、お客様の前ではね…」||

ーートントン…。

母は優しく俺を叱ってたらしい…。

その後、俺は…。
夜7〜9時にターシャ泉ミサ会場…赤いテント内部テーブル席で寝てたらしい。
6時に夕飯を済ませて。

その時、俺と同じ年の子供が…母親に連れられてやってきたらしい。

☆☆☆

母は他人行儀に会話する。
仮面を被った母は…ターシャ教の関係者…。
テントの管理人として雇われたバイトの人…。
という設定らしい…。
テントの中で…子供時代、お母さんと呼ぶことすら許されてなかった。
言いかけると…思いっきり、足を隣の母から踏まれた。
痛かった覚えがある…。

母は俺を起こしたらしい。
客として同じ年の子供は珍しいからだ。

||「巫女様。
お客様がお召です||

俺は眠いけど…仕方なしに起きた。
目の前に…黒髪を肩で切りそろえ、黒い瞳を猛烈に輝かせた5歳女子がいた。
その母親が俺の母へ…。
嬉しそうに会釈してる。

「名前あるんですか?
起きてくれた。
うれしい。
ありがとうございます」

 「本当に妖精さんね?
マナナ、おとなしくするのよ。
泉の巫女様よ。
ありがとうございます・…」

マナナと言う名前らしい。
俺はまだジッと出来ない子供だった。
寝ようかと思った。
しかし、勝手に目の前にいる幼児が…女体化で輝く俺の金髪を触る。
困って、緑色に体が発光を変えた。

「おかあさん、凄い…。
本当に妖精さんだけど…。
今、青い光から…緑の光に変わった」

 「本当ね…。
私、巫女様に会うのは初めてだわ…」

『…』

「あの…なまえあるの?
何て呼べば…」

 「巫女様に敬語が主流なのよ、マナナ。
でもまあ、巫女様がお許し下されば…」

||「泉の巫女様は…神の使い・・。
恐れ多くもタメ語は許されません。
そこはご了承を…」||

俺からボロが出来ることを焦ったのか…。
隣にいる仮面を被った俺の母が勝手に発言してる。
俺の代わりに。
俺はその時、母に足を踏まれた。
いつもおごそかに…神らしく…。
しかも、女性言葉で…。
それから村人を騙せと…親から強要されてる…。
大変だ、本気で…。

 「そうですよね。
マナナ、巫女様はアラ人神。
崇拝するのよ?」

「うん、お母さん」

ちょっと羨ましい。
俺はココにいるとき、お母さんを…そんなふうに呼べない。
同じ年なのに…この差はいったい…。

「綺麗…。
また、明日も来ます。
巫女様」

 「えっと…力を授ける儀式は…。
あるのですか?」

俺には人間の願いを叶える力があるというように村人を騙せと両親から強要されてる。

||「まだ、巫女様は修行の身ゆえ…。
責めてあと何年かしてからで…」||

 「妖精様にも修行があるの…。
マナナ、明日も来たいの?」

「うん、お友達になれたらって…」

この母と子…また敬語なしだ。
俺の母が少し怒ってるのが伝わってくる・・。

『…』

「それにしても綺麗すぎる・・・」

マナナと言う子が勝手に…テーブル席へ座る俺へ・・・抱擁してきた。
ちょっとビックリした。
躾がなってない子らしい。

また、仮面を被った俺の親が怒ってるのが伝わってきた。

 「ごめんなさいね…。
まだ5歳で…子供は自由だから」

俺の母が無言だ。
これは相当、怒ってる…。

俺も本音は遊びたい。

「ねえ、これから泉へ遊びに行こうよ。
きっと、楽しいよ…。
巫女様…」

||「巫女様を呼ぶときは敬語でお願いします」||

 「ごめんなさいね…。
マナナはまだ…敬語なんて使えなくて…。
子供で…」

||「そんな子供はここに呼ばないでください」||

母が怒ってる…ボロが出ることを恐れてる。
でも、俺は猛烈にこの仕事、つまらない。
大人より自分と歳の近い人間が来る方が楽しいに決まってる。

『来ても良いです…』

||「え?
巫女様」||

母の驚いた声だ。
仮面を被ってるから関係者と言う設定だ。
しかし、ここでは俺の方が遥かに権力が高いはずだ。
たまには母にも逆らいたい…。
ちょっと反抗期にもなる。
家で叱られてばかりだ。

『私が言うから良いはずです。
私はこの泉の妖精…。
ターシャ泉の巫女ですから…。
許しましょう。
貴女が通うのを。
私は万人に平等ですから…』

ここまで上手に言うために…。
日々、自宅で漢字や単語を教育されまくってる…。

「いいのですか?
巫女様」

ちょっと、尊敬されたのか…。
マナナって言う子から敬語になった。
これは快感だ。

 「ありがとうございます。
さすが、巫女様。
心が広くあるのですね…。
私はとっても巫女様のことが気に入りましたわ。
また、明日もマナナと一緒に来ますね。
まだ、躾がなってない少女らしい子供ですが…。
それでは」

『ありがとうございます…』

母は無言だ。
今回は俺からボロも出なかった…。
まあ、許してくれたんだろう。
これが俺の日常だ。

俺は特殊な素性ゆえ実家に友達すら呼ぶことを許されてない。
村に幽閉された存在だ。
ストレスだって、たまには溜まる。

☆☆☆

そこから先、また大人ばっかりだ。
これはつまらない。
ポテトチップスでも食べて寝転びたい…。
俺はもうじっとしてるのが辛い域だ。
母親が隣で怖い。
全部、対応する…鬼の面を被った母が。
本当に俺から見れば鬼母だ。

俺はつまらないから眠った。
勝手に終われば良い…。
そんな雰囲気でミサは9時で閉店だ。
俺をまるで見世物小屋のように村人や世界中から見学に来る。
好奇な目線だ。

本当に同じ年の人間が来ないのはつまらない。

そのあと…9時を越えれば、やっとポテトチップスが食べれる。
それを食べて…職場、20畳程度の赤いテントから去り…母親と一緒に関係者以外立ち入り禁止の泉に架かる白い橋を渡る。
俺の体は青光りしてる。
碧眼金髪少女だ。
見た目がまあ、泉の妖精ではある。

青いテントで衣装を母親からはがれてたのは…。
3歳まで…。
最近は自分で着替えろとウルサイ。
躾が俺の親、ウルサイ。
よほど、俺の正体が村人にバレルことを恐れてるらしい。
バレルとどうなるのか…。
それは知らない。
村で家族が暮らせなくなるらしい。
この役目、大変だ。

母親は怒る時以外、寡黙な女性だ。
俺も結構、静かな性格だ。

今日来た子のことを頭に浮かべる。
そこらへんにいそうな見た目の子だった。
だけど…まあ、躾がなってない。
けど、愛嬌はある。
意外に可愛い子だとは感じた。
勝手に俺へ喋りまくりだ。

明るい子だった。

『母さん…怒ってる?
まさか…反抗したこと』

||「良いでしょう。
タリアは不憫ね。
村の犠牲になって…家族のためにも頑張ってる。
たまには…友達も必要なこと、知ってるわ。
私は…子供時代、自由だったから…。
嫁いできた身だし…。
タリアだけ辛いのは理解してる。
母さんを許して」||

母さんは職場を出れば…こんなふうに優しい。

『…』

||「ただ気を付けるのよ。
絶対、ボロは出さないことよ」||

『分かってる』

俺はまるでサーカス団に所属する人間みたいだ。
村人を騙してスター気取りだ。
それか・・手品師のようでもある。
それを強要されてる親からも。

鏡に映る俺の姿は金髪碧眼深い水色光りで覆われてる。

子供服に着替えた。
男女兼用タイプなズボン服だ。

しばらく歩けば…。

ターシャ泉半径1kmを境に俺は…元の姿に戻る。
黒髪の男だ、発光も止まる。

少し歩けば…自宅だ。
眠い…。
そんな時は…母親が背負ってくれる。
車で送ってくれてる。

家は近所だが…さすがに俺はまだ子供だ。
眠くなってる。

明日もこの勤めのために…。
台詞に出てくる漢字や単語、それから敬語の使い方、それから…妖精としての振る舞い、茶道まで…。
稽古ごとに追われる。
ボロが出てはダメだかららしい…。
妖精として、神の子供として…。
強要され過ぎてる…これが堅苦しい…。

茶道はならってるが…実家も神社だ。
しかし、俺がターシャ泉の巫女であることは…俺の実家以外知らない。

あと…ターシャ教の聖書を暗記することまで強要されてる…。
人間の子供とバレテはダメらしい…。
大変すぎてる…。

たまには遊びまくりたい…。

早く力を与える儀式を一人で出来るレベルになれと父から命令されてる。
村人を騙すのも大変だ。
村人もさすがに中身のなってない妖精では尊敬もしてくれないらしい…。

少し、今日来た躾のなってないマナナって子…羨ましすぎる…。

☆☆☆

ちょっと俺は反抗期かもしれない。
今までは勝手に俺が言葉すら喋れないのに…。
歩くことすら出来ないのに、連れられてた…職場で。
ダダをこねまくりたい気分かもしれない。

翌日もミサに連れられる。
俺は母親の前で赤いテントに付けば…腹を出して…床で擦り付けて。

『母さん、今日はここで寝たい。
どうせまだ俺には力を授ける仕事は無理。
俺は布団で寝てる。
母さんが勝手に対応して。
じゃないと俺はボロを出しまくる。
俺だけ何で、母さん』

思いっきり、文句言った。
今まで同じ年の子と会ったことがなかった。
大人ばかりで。
そう言うものだと洗脳されてた。
あれを見て嫉妬も沸く。
俺だって甘えたい。

母さんは突然、狼狽え始めた。

||「お願い、タリア…。
もうすぐミサなの」||

『母さんだってひどい。
自分のこと棚に上げて。
母さんだって子供の頃、遊びまくってたって昨日、言ってた。
どうして俺だけ…。
漢字覚えるのも、茶道も、敬語使うのも、女装して女言葉ももう嫌。
責めてここで寝ても良いだろ?』

||「タリア…」||

俺は泣いた。
それぐらいしても良い。
何で俺だけ。

||「そうね…。
お父さんには黙ってあげるわ。
タリアにはまだ難しすぎるわよね。
母さんだって、無理だった、子供の頃なんて…。
その代り、布団で大人しくしてるのよ。
今日は風邪でも引いたってことにしてあげるわ。
毎日、タリアばかり見世物小屋みたいで…。
母さんも…心がいたかったの…。
ごめんね」||

『…』

母さんはこの通り、優しい。
俺はホッとした。
本音は…布団に入って…テレビでも見たい。
ココには何もない。
寝るしかない。

俺は母さんに布団を敷いてもらった。
少し俺の体がオレンジ色発光してる。
布団に入っててもそれが分かる。

||「母さんが全部、対応してあげる。
父さんには内緒よ」||

『母さん、ありがとう』

俺はターシャ教のシンボルマーク…右半分オレンジ笑い顔、左半分紫泣き顔の鬼面紋章が刻まれた…布団へ入った。

今日は眠れる…。
もう嬉しい。
ごろごろ出来る。

家で躾が嫌すぎる。

母さんがお客様に対応してくれてるらしい…。

[ここにターシャ泉の巫女様がいると聞いて…遠方から参りました。
まだ、修行中でもうすぐ力を与える儀式をしてくださると聞いてます。
色々な光に変わる妖精様だと聞くのですが・・。
本当でしょうか?]

||「すいません…。
あの布団にいる金髪碧眼で…それからオレンジ色に光ってる子が、妖精様です」||

[本当なのですか?
遠いので少し分かりにくいですが…]

||「妖精様はまだ生まれて5歳…。
じっとしてられないもので…。
ご了承を…」||

[泉の巫女様でも…そうなのですか?
まるで人間の子供みたいですわ。
本当ですか?]

||「そうです…。
それと風邪まで引いてらっしゃって…」||

[泉の妖精様が風邪をひきなさるのですか?]

||「泉の巫女様も泉の下から通じる異世界から来た使者。
聖書にもそう載っています。
しかし…みたとおり、まだ子供も同然。
どんな生物にも子供時代はありますから…。
人間に限らず、様々な動物…。
そういうものです…。
妖精様のことも我儘をお許し下さい…」||

[ふうん…遠くから写真だけ良いかしら?]

||「その程度なら…。
あまりフラッシュはお許しください…」||

[そうですか…。
あれが…ターシャ教の正統なる血統者…泉の妖精…。
毎年、いる訳でもないと聞きます。
先代は男性で…ここへは男しか通えなかったとも・・]

俺が寝てる布団の向こう側で…写真撮影をしてる音が聞こえた…。

[とれましたわ…。
まあ、確かに…美少女ですわ…。
全身からオレンジに発光してらっしゃる…。
きっと、力を授ける儀式が始まった時にはまた来ます。
さようなら。
泉の巫女様]

||「はい、お越しを楽しみにしてますわ」||

[今日は本当に残念ですわ。
遠方から参りましたのに…]

||「遠目に見れただけでも貴女様にはご利益が訪れるでしょう…。
泉の巫女とは神聖なる妖精。
ターシャ神のご加護が汝にありますように…」||

母がマニュアル通りの対応をしてる…。
これを嫌なことにいつか俺もしなければならないらしい、一人で・・。

[そうですか…。
それは嬉しいですわ。
ここで願い事をお祈りしても良いからしら?
巫女様を拝みながらすると…叶いそうな気もするわ…]


||「どうぞ…」||

[どうか…私の願いが叶い、女を作って蒸発をし、別居中の旦那が…浮気相手の女と別れ…家庭円満に戻れ、離婚を免れますように・・。
ターシャ神さま。
どうか、私の願いを叶えてください。
あの憎き女には制裁を…。
お願いします…]

俺は全然まだ世間は知らないが・・。
勝手に重い願いを掛けられてるらしい…。

||「汝の願いが叶いますように…。
神のご加護がありますように…」||

母親が対応してる。
ああ言わなくてはならないらしい…いつか、俺も・・。

[スッキリしましたわ。
きっと、あの女…今頃、交通事故でも起こして…骨折でもしてる。
そんな映像が今、頭に。
本当に憎い・・。
きっと、私の生霊が飛ぶはずです…]

||「家庭円満に戻れますように…。
ターシャ神は常に…拝みにくる人々の味方です…」||

ああいうふうに返答しなければならないらしい…俺にはまだ難しすぎる・・。
いつも父にはどう返すべきか…。
毎回、テストされてる…。

[ありがとうございます…。
それ以外にも願い事があります。
今日はもう一ついいですか?
その代り、御代なら払います…。
1件に付き1000円でしたよね?
2件なので2000円払います。
叶えてもらいたい願い事なので…]

||「どうぞ…」||

俺はいつかあんなふうに対応して…一件に付き1000円寄付としてもらわなくてはならないらしい…。

『姑が憎たらしくて…私のことをことごとく攻撃してくるんです。
ムカつきまくってます。
どうか癌にでもなって…倒れますように。
それか、もう私の家には寄り付きませんように・・]

||「汝に神のご加護がありますように…」||

俺には絶対、あんな人の対応…難しすぎる…。
この仕事も見てるだけで…ハードで大変すぎる…。

[それでは…また来ますわ。
スッキリしましたわ…]

女性は去って行ったらしい…。
溜息を俺は布団で吐いた。

また、次の客が来た。
俺は寝ることに決めた。

☆☆☆

しばらくして3人目の客…。

「あれ?今日は巫女様は…どちらへ…」

俺と同じ歳の子・・マナナだ。
少し機嫌は良い。
布団から出ようかとも思った。

 「妖精様はどちらへ行ったのでしょうか?」

昨日来たマナナって女の子の母親が聞いてきた…若い女性だ。

||「今日は風邪で寝込んでます。
お帰り下さい」||

母親がまたボロが出ないように突き返してる…。

俺は布団から座り込んだ…。
そこへ俺が立ち上がるより前に女の子が…俺の元へ走って来た。

「巫女様、風邪ひいてるの?
大丈夫?」

逆に元気だと言いにくくなった。
俺はもう一度、布団で寝込むことに決めた。

「私の名前はマナナ。
マナナって呼んで頂戴、巫女様」

||「巫女様に話すときは敬語で…」||

 「もうしわけございません。
まだ敬語さえ使えない子供で・・。
少し・・勉強が苦手みたいで…」

マナナの母が困った声だ。

||「そんな子供をこちらへは…」||

「巫女様、私も布団で一緒に寝ても良い?
夕飯食べて来たし」

『…』

俺は眠い、欠伸をした。
マナナは勝手に入ってくる。
躾がなってない子らしい。
そんな顔してる。

 「あら、マナナ。
ここはそう言えば…9時までなのよね?
お母さんは良いわよ。
マナナが巫女様と友達になることは大賛成よ。
頑張ってね、マナナ」

||「ちょっと、私は…。
それは…」||

『良いでしょう。
妖精として、私は許しましょう。
一緒に昼寝ではなく、ここで仮眠をとることを。
私は眠ります。
風邪をひいてるので…』

欠伸をした。
たまにはサボりたい。

||「巫女様…」||

 「本当に万人に平等な巫女様。
躾のなってない我が娘まで許して下さるなんて。
まるで天使。
ここにいる仮面を被ったこのテントにバイトできてる鬼面を被った管理人さんとは大違い。
さすが、神様に選ばれるだけある…。
私はもう、マナナ同様巫女様のファンになりそう…」

||「…」||

アレは俺の母親、怒ってるか・…それとも動揺してるか…。
あの仮面の下の表情は…見たくはない・・。

俺は無視して寝ることにした。
まあ、良いだろう。
友達が出来た気分だ。

母さんにも友達がいたらしいから。
男友達も女友達も幼稚園ぐらいには既に…親を介していたと…。
おれのお婆ちゃんも言ってた。

俺だけいないのは不平等に決まってる。

そこで寝てる。
あまり喋ればボロが出るからだ。
マナナも大あくびして…俺より先に寝た。
やっぱり、子供らしい子だ。
俺も寝ることに決めた。

本音は布団でゴロゴロ今日はサクサクスナックでも食べたい…。

キャラクターものの菓子だ。

☆☆☆

9時になったらしい。
俺の母親が起こしに来た。

||「巫女様、それと…そこにいるマナナって子…。
もう、おかえりの時間ですよ…」||

 「本当に悪いわね?
巫女様…。
ウチの子と仲良くしてね…。
本当に巫女様って天使だわ」

俺は目をこすった。
マナナはダダを込ねた。

「私、帰りたくない。
ここで寝る。
うわーーん」

||「だから、子供は困るのです…。
ちょっと貴女も親なら何か…」||

仮面を被った俺の母が叱りつけた。

 「マナナ、泣かないで・・・。
巫女様…ここへ泊ることは…」

この母と子供・・・俺でもビックリするレベルに厚かましいかもしれない。

||「ダメに決まってるでしょ?
巫女様、今回こそ。
妖精様としてビッシリお断りくださいませ」||

本音は俺も泊まりたい。
しかし、鬼面を被った母。
あの仮面の下は…今日は絶対、怖いに決まってる。

『また明日会えるでしょう…。
ターシャ神のご加護がありますように。
私はこれから泉の下へ帰らなくてはならない身なので…』

このマニュアルの台詞も何回も見て覚えさせられた。
父親に。

 「マナナ。
私が負ぶって帰るわ。
巫女様、泉の下へ帰るらしいわ。
この店、閉店みたいだから」

「また明日、遊びに来るわね?
巫女様。
帰ったらお父さんにも話してくれる?
お母さん…」

 「もちろんよ、お父さんも泉の巫女様の大ファンみたいだから…。
今年のターシャ祭りでは…夫も連れて、一緒に出席しますわね、巫女様。
それでは…。
私は夫のいる職場へ…」

「お父さん、まだ…残業なの?」

 「まあ、ここで喫茶店代わりに涼めたから良かったわ。
これで喫茶店代も浮いたし・・」

「そっか…」

信じられない会話だ…。
俺の母親…仮面の下で怒ってそうだ…。

「巫女様、明日もここでいても良いよね?」

『…』

俺は机に座る母が怖いから返事をしなかった。

 「また来ます。
それでは巫女様…」

台風のように…母と娘…マナナ親子は去って行った…。

マナナとその母が去ると…。
俺の母が…仮面をつけたまま、俺の手を引いた…。

赤いテントを抜けて…そこの鍵を母がかける…。

それから関係者以外立ち入り禁止の・・泉に架かる白い橋を…母と渡る…。

その間、一切…会話がない…。

仮面の下・…怖いかもしれない…。

青いテントへ着いて…。

俺は着変えを始める…自分で出来る。

その時、初めて…母が…鬼面を取った…。

猛烈に怒り狂った顔だ。

||「タリア…。
明日も…あの母と娘、喫茶店代わりにここを利用するって…」||

『母さん、ごめん…。
俺の我儘で』

||「そうよね、タリア。
母さんが怒ってごめん。
タリアにも友達が必要よね?…。
ただ、あまりにも慣れ慣れしいから…母さん、少し怒って。
タリアが不憫で可哀そうなことぐらい知ってる。
母さんはタリアのために耐えるから…」||

『母さん、ありがとう』

母さんは俺には甘い…。

||「父さんには黙っておくわ。
それにしても…泊まるだなんて…。
あまりにも…信じられないわ。
どれだけあの親、子供に甘いわけ。
私だってタリアをもっと甘やかせたいのに…。
村のために犠牲になってる我が子が…もう見るのも辛くて…」||

『母さん、ありがとう。
母さんは俺に甘い、優しい…』

||「タリア…」||

母さんは俺に甘いと思う。
でもどうすればいいんだろう。
マナナのことを気に入ってないらしい…。
俺は良い子だと思った。

俺は母さんの背中に負ぶさって…車まで行く。
俺は寝てる。

母さんが運転して…神社まで行ってくれる。
今日は楽だった。

ただ、写真を勝手に撮られることを除いては…。
確かに俺は珍獣扱いだ、この村で…。

俺の母さんって…なんか、将来、俺に恋人が出来たら…。

猛烈にうるさそうなタイプな気がしてたまらない…。

俺には甘いけど…。

気のせいだろうか?

今日、来た…お客さんでそんなことを頼んでる人がいた…。

そんな話、ここへ来るお客さんから…よく聞くけど…そうならないように俺は祈る。




そんな感じの日常が続いた。
入園式まであと1か月だが…。

毎晩、喫茶店代わりにマナナ親子はここへ来る。
確かに手洗い場前には飲水機はある。

公民館代わりにも利用されてるらしい。

マナナの母は・・・待合ソファーで座りながら寝たり…。
持ってきた雑誌を読んだり…。

備え付けの聖書雑誌を読んだり・・・。

せわしない。

父親がココの近所勤めらしい…。

どうも、待ってるらしい…。

まあ、ココにいたら…。


俺にもマナナが会える。

俺は妖精だ、見るだけでご利益すらあると村ではされてる。

見世物小屋のようでもある。

俺は任務をサボり、布団にいる。

勝手に机で座ってる鬼面を被った俺の母が対応してる・…。

客はクレーマーばかりだ。
その中の一人に・…マナナ親子がいると…。

俺の母は自宅で怒ってる。


俺の隣にまるで抱き枕に縋り付くかのように接近するのが…マナナだ。

マナナは俺を妖精の少女と信じて疑わない。

俺は母にあんな子とだけは結婚しないでよと説教されてる。

俺の性別が男であることは村人は知らない。

勝手に俺の髪を…躾がなってないのか、マナナは触りまくってる。

まあ、平凡な顔立ちの子だ。
ヒョウキンな顔をしてる。
綺麗可愛いかと聞かれれば、違うだろう。

俺の妖精姿の方が上手に化けすぎてる。

それでも不思議だ、ここまで懐かれると可愛くも見えてくる。

「巫女様、遊ぼうよ…。
遊ぼうよ、どうしてダメなの?」

俺に布団で引っ付いたまま。
マナナはこんな感じに甘えてる。
敬語が難しいらしい…。
俺の母がまた怒りそうでもある。

俺は黙ってる。
ボロが出たら母から叱られる。

「巫女様って本当に綺麗。
友達になれたらな…。
今日、私の家に泊まりに来ない?
お母さんもお父さんも歓迎するから」

 「マナナ、頑張って。
泉の妖精さんと友達になるのよ」

とてもマナナの母は協力的だ。

俺は母の方向を見る…。
最近、マナナ親子の悪口が自宅で続いてる。

ダメだろう…。
しかも俺は泉の半径1kmから元の体へ戻る…。

『…』

「ねえ、お話ししようよ。
巫女様。
巫女様って静かだね?
いつも何してるの?
あ・・敬語…。
ですって語尾に付けらら良いのです?」

日本語が…まだダメなレベルらしい。
しかも…無理したのか…舌がもつれた発音だ。
舌足らずな声だ。

「巫女様と友達になりたいです。
がんばるです」

『…』

そっと見守ってる。

「もうすぐ、わたしも幼稚園に行くのです。
友達が出来たらいいなです」

『…』

マナナは…幼稚園でいろいろな先生に勉強を教わった方が良いかもしれない。

「私、巫女様がすきです。
これからもよろしくねです」

 「凄いわ、マナナが敬語までつかえるなんて。
頑張って。
まだ下手だけど…そのうちできる筈よ、期待してるからね?
お母さん…」

||「まあ、下手すぎるけど許しましょう。
子供心に必死で巫女様を崇拝してらっしゃることは伝わりますから。
巫女様はアラ人神。
失礼のないように…。
それから、幼稚園では敬語の使い方を覚えるように…」||

「巫女様って本当に綺麗ねです。
私、一緒にいて楽しいかもです」

『…』

まあ、ここまで下手な敬語もきっと…幼稚園に入れば…。
そのうち出来るはずだ。

『頑張ってくださいね。
期待してます』

親にはボロが出るから話すなと指導されてるが…。
さすがに言いたくもなった。

「ありがとうです。
きっとできるはずよです」

『…』

いろいろ面白い子でもある。


ターシャ泉の巫女M


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