アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

ター シャ泉の巫女D



『良いでしょう。
終わったら帰って下さりますか?』

「はい・・・。
えと…」

マナナの…手を握った。
マナナの手は身長に相応しく、紅葉のように小さく…プニッと肉厚がある。

力を与えるのは高校入試以来だ。
毎回、マナナは神頼みだ。

『目を瞑って下さい。
そのあとに手を出してください』

「目を瞑るのですか?」

『その方が私が集中しやすいので力を送る時に』

確かに前、女子大生が来た時も目を瞑ってくれた方が集中できた。

「分かりました。
お願いします。
泉の巫女様」

マナナが目を閉じて手を出して来る。
マナナの手を握って。
それから俺も目を閉じて力を送るイメージをする。

結構集中がいる…。

暖かい力がこみ上げてくるようだ。

今日は成功したのかもしれない。
手が熱い気がする。

「何か手が暖かいですね。
これが力なんですね…」

マナナへも伝わったらしい。
疲れたから数秒、休みをもらった。
数秒の沈黙のあと、マナナへ声を掛けた。


『それでは終わりです。
目を開いてください』

「泉の巫女様…」

マナナは俺を見てる。


「コレ、祈祷料です」

『…』

これは一応、受け取る。
そう言う仕事だ、俺は。

「あの…力が沸きました…」

『…』

それは俺と友達になるパワーが沸いたということか?
どう反応すればいいのか。

瞬きをした。

「お願いです。
私は何でもします。
泉の巫女様を崇拝してます。
こんなに綺麗な妖精さんを見たのは初めてです。
今も、後光が光ってる…。
どこの世界から来たんですか?」

俺の体全身今は光ってる。
赤紫光りだ。

「何でもするので友達になって下さい。
昨日は足も舐めたし、キスも出来ました。
何でもします。
もう、私…綺麗なものに弱くて」

やはりそうなのか…。
本気でまさか。

『あなたはレズなのですか?』

ドン引きもある。

「違います。
私は純粋に綺麗なものに弱いだけです。
アナタを最初に見た時からこんなに美しい人間がいるなんてって。
どこの世界の人なんですか…」

こういうセリフは違う客にもよく言われるが…。
なぜか…マナナに言われると…。
変なふうにしか俺は解釈できない。
異常を感じてしまう。
これはどうしてなのか?

「アナタを崇拝してます。
私も神様の仲間にして欲しいです」

よく村人にも世界中の人間にも俺は神童として…。
この時間は村の守り人として崇拝されてる。

しかし…。
何故なのか?
知り合いに言われると・・・ドン引きレベルの台詞だ、これは。

「これは私が泉の妖精さんへの友情の証として…。
つくったクッキーです。
どうか、食べてください…」

『…』

マナナからのクッキーだ。
意外に前、貰ったが食べれた。

毒は入ってなかった…。

「私はあなたのことが好きです。
こんなに綺麗な女神さま見たことありません。
私の家族もターシャ教でターシャ神を崇拝して…。
ターシャ泉で行われるターシャ祭では毎年、幹部をしてますわ。
お願いです。
私を何としてでもアナタの友達に…」

『…』

やはり…熱烈だと思ったら…。
熱狂的な…ターシャ教の信者だったらしい。

俺はどう反応すればいいのか…。

「どこまでもついていきます。
毎日、10年通って。
確かに成績は上がりました。
高校に入れました。
まだ成績はよくないですが…。
ここでお祈りしてもらったことは叶うと信じてます。
お願いです。
友達になって下さい」

マナナが俺の手を持ったまま、頼み込んでる…。

俺は友達になどなる気はないというのに…。


「生き神様を見た気になれたんです。
初めて…泉の妖精さんを見た時に…。
どうか…お友達に…。
もうずっと、頼んでますが…」

『…』

この役目、来年で俺は下ろされると言うのに。
俺は溜息を吐いた。

「ダメなんですか?
何故なんですか?
どんな命令にだって猛烈なのだって私は従います。
殺人や自殺の強要以外なら何でも…。
私を従者にしてください」

『…』

もういろいろ遠い目だ。

「あと…もう一度、泉の妖精さんの髪に触らせてください。
星のように輝いてて。
とてもさわり心地が良くて。
さすが妖精さんは違いますね。
髪の毛、一本持って帰っても良いですか?」

それはダメだ。
ターシャ泉1kmを越えれば俺の男の毛に変わる。
良くない。
ダメだ。

『それは許しません…』

「ええ?
触るのだめなんですか?
私、感動したのに…」

マナナの顔が赤い。
よほど興奮してるらしい。

『あなたは綺麗なモノなら男でも女でもどちらでも好きになる性癖なんですか?』

「え?」

毎日、学校でキセキをイケメンと崇拝してるのに似てる気がしたからだ。

「それは…」

『あなたの崇拝は異常です。
連日ココへ通う方もいらっしゃいますが…。
その中でもひときわ目立って、いつも来ますよね?』

マナナ以外にもスピチュアルに嵌まってる女子大生も週に1回程度は来るが…。
マナナが一番多い。

拝観料を払い、力を授かりに来るわけでもないのに…。

「えと…。
あの…。
私は…その…」

『…』

考えてみれば…ここで俺がマナナと友達にならないと…。
俺が力を授けたのに…叶わなかったと悪い噂が村に流れる。
商売上がったりだ。

「えと…。
あの…」

『はっきり言ってください。
いつも何故、そこで言いよどむのですか?
成績アップの願い事については叶えたはずです。
高校受験の時に』

あの頃は中学で…キセキと同じ高校へ通うと言ってうるさかった。
そのつぎは…キセキと付き合うために成績上がりたいと学校でうるさかった。
でも…それも昨日で終わってるはずだ。
まだ、どうして通ってくる?
俺は聞いてみたい。
コイツの思考回路は本当に変だからだ。
学校でもそれを感じ続けてる。

コイツぐらいなものだ、俺にハッキリと醜いと言う人間は。
普通は思ってもあそこまで言わない。
どこまで躾がなってないヤツなのか分からない。
俺にコイツの考えは全く読めない。

勉強もここで頼んでる暇があれば…。
家ですれば良い。
誰もが思うことだ。
どこまで馬鹿なのか…。

「あの…」

『答えられないなら友達にはなれませんね。
残念ですが…』

「あ…と・・・」

何故か。
マナナの顔が赤い。
モジモジしてる。
照れる理由なのか…?
何だ?

ココへ通う理由は…キセキならもう叶えただろ?
何か知らないが…とりあえず、交際は出来たみたいだし。
いつの間にか許婚(いいなづけ) にまで発展してたらしいし…他に何を願うのか?
というか、他にあるのか?
願い事が…。

「えっと…。
泉の巫女様、ドン引きしないでくださりますか?」

『…』

今まで何回もマナナにはドン引きの連続だ。
すぐにそうですとは俺は言えなかった…。

「やっぱり良いです…。
えと…」

『黙って聞きます。
私はなんびとのも平等な泉の巫女…。
ターシャ泉の精霊ですから』

これで良い。
と言うか。
何なんだ?
本気で…。

「私、実は…」

『…』

「男が無理で女しか好きになれないんです」

『え』

俺は沈黙した。

『あの…どういう意味なのでしょうか?
それは…』

パニックになった。
と言うか。
マナナは学校でキセキと付き合っている。
あれはどういうことなのか…。
しかも、幼稚園時代から親交のある俺ですら知らなかったが…キセキと許婚(いいなづけ) にまでなれたらしい…。
これは俺を騙すための嘘なのか…。

『あの…あなたには好きな方がいると以前、私に話してたこともありましたね…。
あれは…えと…』

「私は本当は泉の巫女様が大好きなんです。
お願いです。
私を友達にしてください」

『…。
レズなんですか…』

「はい。
大好きです」

『次のお客様がもうすぐ見れられるので…。
あとにしてください。
空気が汚れます…』

「えと…」

『来ましたわ。
私は仕事が忙しいので…』

「あの…」

[泉の巫女様…。
いつ見ても美人ですわね?
あの…私の大学でテストが…。
もうすぐあるのですが…いい成績が取れるように祈ってくれないかしら?]

『お安い御用です』

来たのは…俺の常連客の一人、スピチュアルに嵌まってる女子大生だ。

『目を瞑って下さい。
汝に私は力を与えます…』

そこからまた何人か並んでる。
仕事に頭を切り替えることにした。

マナナは俺の隣で座り込んでる。

俺の方が悪いが混乱してる。
物凄くドン引きしてる。
俺は悪いがノーマルだ。

☆☆☆

今日はそのあと10名も捌いた。
と言うか…今日は16名か。
体もくたくただ。
オナカも減ってる。

ギリギリの閉店時間間際9時にまで来た。
俺の評判が上がってる証拠だ。

ココは喜ぶ。

『今日はこれでミサは終わりですが…』

[お願いですわ、忙しくて間に合わなくてね…それで…]

最後にお婆さんはギリギリだが入れてあげた。
これも合して今日は16名。

終わった後に…。

ずっと沈黙が続いた。

俺の隣に座り込んでるのはマナナだ。

あれからずっと大人しい。

何て会話すればいいのか分からないレベルにある。

こういうのをカミングアウトとか言うと…テレビでは流れてたが…。

学校にいるキセキはあれは…どうなるんだ?
彼氏で許婚(いいなづけ) なんだろ?
どうなるんだ?
レズなことを…キセキは知っているのか?

「ミサ…終わりましたよね」

最初に沈黙を破ったのはマナナだ。

『そうですわ。
今日も大勢、神を頼って迷える子羊たちが…』

これは決まり文句だ。
俺は神父のような言葉になってしまった。

「今日はたくさん、お客様が訪れてましたよね?
泉の巫女様」

『…』

なんなんだ?
このノリ。
もう俺の友達になった気分でいるのだろうか?
俺の方がどちらかと言えば頭が付いていってない。
学校にいるキセキは・・・。
アレは何なんだ??
今日、交際がめでたく開始されたはずだ…。

「泉の巫女様。
もう私も秘密を語ったわけですし…。
私たちは親友ですよね?
これを話したのは私、貴女だけです」

『…』

悪いが全然、納得いってない。
今日、俺の目の前で二人の交際が…開始されてる。

『私は…。
不思議な力を持ってます』

「え?あの…」

『力を授ける以外にも持ってます。
少しぐらいなら来ているお客様の境遇が見えます』

「え?
えっと…」

悪いがハッタリだ。
こうでも言わないと…何故、知ってるのかと俺は尋ねられる。
さっき、仕事している間にもどういうふうに聞こうかとは頭を働かせてはいた。

『あなたは嘘を言ってます。
私には分かります』

「何の話でしょうか?
泉の巫女様…」

『私はあなたの性格を知ってます。
アナタは学校に既に彼氏がいます。
それから…醜いモノに対して非難轟轟。
私は心の狭い人間は従者として迎える気にはなれません。
神仏に仕える身ですから。
貴女の性癖に関してはドン引きしないと言う約束で聞きいれました。
しかし…アナタは嘘つきでしかも…心が狭い人間です。
そんなアナタを私は友達としてみることは無理です』

「えええ…。
泉の巫女様。
信じてください。
私は…確かに…。
分かりました、これからは変わります。
私は心を入れ替えて善人になり、人を見た目で判断せず…。
それから…嘘も止めます。
私は…自分の彼氏より泉の巫女様を崇拝してます」

いろいろやっぱりビックリ発言ばかりだ。
キセキが不憫だ、許婚(いいなづけ) なのに…まさか、レズと…あいつ、一緒になるのか?
混乱しかない。

『あなたは…彼氏を騙したのですか?
私を騙してるのですか?
どちらなんですか?』

「え?
どういう意味でしょうか?」

『あなたは自ら私を崇拝してると宣言しました。
しかし…彼氏がいる。
別にそれは良いです。
ただ、さっき、貴女は自らをレズだと貶しました。
その事実とは矛盾しています。
他に理由があるんではないんですか?
ココへ通う理由が…。
私には嘘まで吐いて…何を隠そうとしてるのか…わかりません』

「え…」

『あなたには彼氏がいる。
それが私の瞳に映りました。
アナタは大ウソつきですね。
それから…心が狭い人間みたいです。
そんな映像が一瞬、流れました』

素性がばれない様に話すのは割りと大変だ。

「違うんです…。
私、どうしても…そんな自分が認められなくて…。
とりあえず、彼氏さえ強引に作れば変われるのかと…。
でも、本命は…ずっと泉の巫女様だけです。
信じてください」

俺はどう反応すればいいのだろうか?
パニックでもある。
というか…キセキはどうなるんだ?
俺は悪いが来年にはこの役目、下ろされる。

『あなたは自分の彼氏を私利私欲のために騙していると?』

「ごめんなさい。
自分を認めるのが怖くて…。
お願いです。
心を入れ替えるので。
私を友達に…」

『…』

本当なのか?
今、言われてもあの…学校や…それ以外も外での10年間が…。
全く嘘だったなんて信じられるわけもない。
ずっとキセキにアタックしてたくせに。
あり得なさすぎる…。
そりゃ、ずっと俺の元にも通い詰めていたが。

俺と友達になりたい。
宗教が激化しすぎたせいで危険思考に陥ってるのではないか?
しかも、お前ら許婚(いいなづけ) なんだろ…。
突っ込みどころしか今ない…。

『…』

「彼氏とは別れます。
もう醜い人間を見ても文句は言いません。
善人になります。
だから…私を女神さまのお友達に…」

『…』

悪いが本気で信じられない。
キセキへ今日もアタックしてた。
俺は見てる。

「信じてください。
私を神の従者に。
ターシャ泉の妖精様の仲間に入れてください。
長年、貴女に憧れていたんです」

『彼氏のことは…。
あなたは…嘘をついていたと…』

頭がこんがらがって来た。

「私は確かに彼氏の容姿は気に入ってはいます。
クラス男子では一番、美しい。
しかし、あなたほど綺麗な人間なんて私は見たこともないです。
神々しくてまるで…神仏そのものです。
彼氏を捨てることであなたが手に入るなら。
私は手段を選びません。
彼氏はそれぐらいです。
きっと私と別れても私の彼氏はすぐに恋人ぐらいできますから。
あなたの美しさは…宝石並みです」

『…』

マナナは顔が真っ赤だ。
それから黒い瞳は照れたように潤んでいる。

嘘だろ?
本当なのか?
おい…。

「私は綺麗な人に弱いんです。
あなたが最高です。
私の人生で。
初めて会った時からもうドキドキして」

どう反応すればいい。
俺は悪いがノーマルだ。
キセキも不憫に感じる、マナナに騙されて…レズと共に生きる人生を選ぶのかもしれない。

『あなたが善人になれたら友達になることを考えましょう』

しかし・・。
クラスは確かにつまらない。
キセキも少しはこたえれば良い、アイツ…モテすぎだ。
それから俺は毎日、中傷されるのも嫌がってる。
命令することにした。

「良いんですか?
嬉しい…」

マナナは顔を真っ赤にして涙を流して…。
それから手で顔を拭ってる。

どういう場面なんだ?

『友達ですよ。
それぐらいなら…。
アナタが善人になれたら考えても良いでしょう。
もう、ミサも終了しました。
私は帰ります。
アナタも夜道、気を付けて』

今日はなぜか…心配して労う言葉が出た。
確かに…マナナのことは…将来が心配にはなった…。
今日一瞬で。

「泉の巫女様。
ありがとうございます。
これからは頑張ります。
泉の巫女様はどこへ帰るんですか?
やっぱり泉の底ですか?
夜の泉の底は暗いですか?
この泉…中心部は沼地ですが…底はどうなってるんですか?
いろいろ聞かせてください…」

俺はマナナに背を向けて歩いてる…。
禁断の関係者以外立ち入り禁止区域の小道だ。

返事はしない…。
言葉すら見つからないレベルに…。
頭が止まってる。

「今日も泉の巫女様の髪が…夜に輝いてる。
とっても綺麗。
私たち、お友達になれると良いですね…」

後ろからマナナの声だ。
もうそろそろ帰った方が良いと思う。
マナナも一応、ああ見えて見た目は女だ。
夜は危険だろう。

というか混乱してる。






翌朝も学校へ通う。
木曜日になる。
もう最近、俺はずっと家では溜息ばかり吐いてる。
それはまあ、そうもなるだろう…。

教室へ到着すれば…。

腰まで伸びた茶髪をクネクネと動かせ、眼鏡を光らせて―――ミルルが、常の通り、キセキへアタックしてる。
キセキは自分の茶髪を手で掻き毟り、茶目を右や左へ動かして忙しい。

≪キセキさん、付き合って≫

Uキセキくん、マナナと別れたんやって?
ウチにしてよU

||キセキ君…あたしは…純情だよ?
マナナみたいに優柔不断じゃないから…||

「まさか…マナナから…昨日…メールで振られるとは僕も思わなかった…。
確かに…僕も塾へ夜は通って、マナナはつまらなかったかもしれない…」

キセキは少しは凹んでるのか…どうか…。
二人は両親公認の仲、許婚(いいなづけ) らしい…振られたことを少しは反省してるのかもしれない。

まあ、復讐は成功なのかもしれない。

キセキもモテすぎだとは感じていた。

マナナは…自分の席に座って…真面目に勉強をしてる。
こんなことは初めてだ。

俺は…首がマナナが座る席の方向で停止した。

茶眼茶髪長身の体躯・・我が友、キセキは…自分の教室内指定席へ着座してる。

そこで…。
学ラン着たキセキが俺の元、教室の扉付近へ走り寄る。

「タリア。
おはよう。
聞いてくれよ…」

『ああ。
何があったんだ?
キセキ、おはよう』

さっきの会話で…聞こえてはいたが…。

「僕は…マナナに昨日、メールで振られた」

『そうか…』

俺はマナナの方角を見た。
マナナは…真面目に勉強してる。
全然進んでないのか。
分からないらしく。

肩揃えな黒髪を(うめ)きながら左右へ揺らし、 首を振り…頭を抱えて、マナナはすぐに…机で…寝込んだ。
いつもは…キセキから宿題のノートをねだっては奪っていた。

俺は一瞬、ボーっとなった…。
全然、違うことを考えてしまってた。
アイツがレズだと言うどうしようもない事実だ…誰もが混乱する。
キセキにも言いにく過ぎる…。

「僕も確かに塾ばかりだった。
塾でそれを知った…」

『そうか…。
それなら・・・おまえは今、一人なのか…』

「それがまた…塾でも告白された。
そのときすぐにだ。
僕はどうすれば良いんだろう。
付き合うべきなのか…。
それとも受験までは控えるべきか…」

モテ男は俺が心配しなくても次から次へと来るらしい。

『おまえ…。
マナナに未練はあるのか?』

「別にないと言えば嘘かもしれない。
しかし…塾にも気になる子がいるし…。
僕はクラス中の女の子、全員好きだ。
一人に固められないのが本音だ」

いつもこう言ってる。
キセキは…。

『おまえ…まさか…。
塾ばかり行くが…。
塾に気になる子がいるのか…?』

キセキの台詞を借りて反復しただけだ。

「塾にいるのかもしれない…。
塾にいるバイトの子…好みかもしれない」

『そおか…。
3人トリオは不憫ではある…』

「マナナにそれがバレタのかもしれない。
確かに僕は塾に通ってばかりで…構ってあげられず…」

『マナナのことは忘れろ』

マナナはレズらしい、ドン引きだ…俺。

「タリア、君がマナナのことをぼろ糞に貶さないのは珍しいな。
いつもならここで。
マナナは売女とでも批判するのかと思った。
それか優柔不断な股の緩い恋愛脳女とでも…。
貶しまくって、僕の傷心を慰めてくれるとばかり…タリアなら…」

『俺は…おまえの味方ではない。
自分の味方だ。
お前はモテすぎだ、一度ぐらい、痛い目にあえ。
俺もモテたい』

「君も冷たい人間だな。
まあ、頑張って三人トリオ…ミルルを落とせよ」

『…』

「ミルルは残念だが僕にうるさい。
僕は塾にいるバイトの子だけだ。
あとの希望の光は・・。
それか…喫茶店のバイトの子だ。
僕はモデル体型は好みではない」

確かにマナナはモデル体型ではない。

「それ以外にもよくバス停でバッタリ会う…名前の知らない子も。
僕のストライクだ。
僕は割りとストライク…多いのかもしれない…」

キセキはこんな調子で俺といる時は女の話ばかりだ。
どれだけ女が好きか分からない…。
普通の男はそうだし、普通の女もそうだと思っていた…。
マナナはアブノーマルだったらしい。

『まあ。
キセキならすぐに女が出来るだろう。
俺は慰める気にすらならない。
お前はモテすぎだと前から思ってた…。
俺には自慢にしか聞こえなかった、ずっと…』

「そうなのか・・・。
しかし…。
僕はマナナは割りとストライクだった。
それなのに…。
一瞬、塾にいるバイトの子に目移りしたばかりに…。
僕が塾に行ってマナナに構わなかったから…」

俺は…キセキが女好きすぎることを知ってる。
だから一人に決められないと言うことも。
まあ、マナナもキセキと付き合えばすぐに肉体関係を迫られそうではあった。
俺達二人はそんな”SF小説”しか読んでないからだ。
マナナの性癖があれだ。
キセキも忘れるしかないだろう。

俺はキセキには伝える気には全然なれない。
今日は平和な1日かもしれない。
俺も今のところ…マナナから一度も容姿を(けな)さ れてもない。
マナナは必死で勉強はしてるが…進んでないらしい。
答えを全部、ノートに書いてる。
相変わらず、成長のない奴でもある。

俺の幼馴染は変わってるらしい。
今日はモテ男、キセキが…初めて挫折を味わった日だ。
機嫌は良い。
仕方ないから、マナナもキセキも俺の幼馴染と認めてやろう。
キセキは…ずっと、俺とマナナが揃って、幼馴染と思っているらしいからだ。

『まあ。
この”SF小説”貸すから機嫌直せよ…。
キセキ』

鞄に入ってたものを渡した。
と言うかここで渡すとも思わなかった。
これでも読んで慰めにしておけと言う意味だ。

「僕の好みのキャラがいるか?」

『何人か女性キャラならいる。
お前なら喜ぶだろう』

俺は…本音を話せば、この小説の初期話が最高傑作で、一番好きかもしれない…。
まあ、ミステリー調に段々、展開してはいるが…。
キセキならこういう話の方が好きそうだ。
核を防ぐレベルの防空壕な挿絵が今期の小説ではある…女性キャラが一気に増えたなあという感想だ。
キセキなら女性キャラが増えれば増えるほど喜びそうだ。
何か…突然、ナースとか警察官とか女子大生とか、レオタードを着た新体操の女性とか…。
スチュワーデスとか増えまくってる。
まあ、読んでて楽しい…そこは認めよう、キセキなら死ぬほど喜ぶ展開だろう。

「そうか…。
それでは借りるよ。
ありがとう、タリア」

俺が教室、扉付近で本を渡したところで…。
3人トリオと…ミルルの会議が終わったのか…。
俺の元へ…キセキ目当てにミルルなどの女子3人トリオが押し掛けてくる。

どうせここからまた色仕掛けでも…。
キセキにするつもりなんだろう。
キセキはモテすぎる。
やはり、面白くはない。

しかし。
まあ、キセキの挫折は俺にとって蜜の味だ。
機嫌最悪とも言い難い。

ミルルは必死に俺の前で…キセキにベッタリ引っ付いてる。

≪キセキさん、ミルルを好きになって…≫

「君は…。
タリアが君を好きだから・・・。
それに僕も他に好きな子が…」

月神(つきがみ)さん?
ミルルのこと好きらしいけど…ミルルは月神さんには興味すら沸かないから…。
嫌いとかじゃないけど…。
ねえ、キセキさん、ミルルにして≫

あれが前まで、マナナが邪魔して出来なかったのを俺は知ってる。
キセキはモデル体型は抱き心地が良くないのか。
キセキはマナナを見てる。
まだ未練があるらしい。

モテ男は本当にうらやましいとは思うが。
挫折したのか表情が暗い。

キセキは…マナナに引っ付かれてた時の方が明るい顔だった。
マナナとミルルは確かに正反対だな。

「はあ…。
僕は塾でも昨日、告白されて…その…そっちが有力候補と言うか…」

キセキも塾にも本命がいるらしい。
固まれよ。とは思う。
マナナは昨日知ったが…アレは無理だろう。
諦めた方が良いだろう。

Uウチにしてって。
ウチ、幼児体型とか言われるけど…。
尽くすから夜も。
下ネタもするから…U

||あたしは品のないことなんてしないわ?
手料理も凄いし…それから慎ましやかで…クラスでも好評だから…。
えっとその…キセキ君?
あたしはどうかな?||

それにしてもキセキは本当にモテる。
呆れてはいる。
俺の机の前で…凄い光景だ・・。
女子3人が…キセキに猛烈に言い寄ってる…。
ミルルも含めて女子3人トリオは…俺を無視して、ベタベタとキセキに構ってアピールをしてる…。

俺はクラスではミルルが好きと噂が流れているというのに。
キセキも大胆でもある。

まあ、今日はキセキが挫折を味わった日だから最高に機嫌が良いが。

一方、マナナは自分の机で寝てる。

☆☆☆


放課後終われば…。
俺は鞄を持って、ターシャ泉へ通う。
もう何年もそうだ。
俺が幼児時代は…母親に背中で抱かれたまま、3歳ぐらいまでそうだった。
それから…6歳程度までは母親と一緒に行った。
7歳から10歳を期に…母親も神事に忙しくなり、来なくなってる。
何故なら…一応、俺と母親が行ってる時、母はカツラと白いターシャ教の面までして顔を隠してる。
素性が俺はバレる訳にはいかないからだ。
ターシャ教公式な御面は右半分がオレンジ左半分が紫な鬼面だ。
右半分は笑顔、左半分は泣き顔をモチーフにされてる。
夜と昼を象徴する面らしい。

ターシャ祭の時にも、ターシャ教公式鬼面は売ってる。
自宅で鬼門へ飾れば…魔除けにもなる。
俺が暮らす実家…神社にもこれが飾られてる。

神社には十字架まである…。
ターシャ教が祀る神々へ祈りを父も母も毎朝そこで欠かさない…。

☆☆☆

夜、7時前になれば…。
俺は必ず…ターシャ泉にいる…もう生まれてからずっとだ。
骨折など許される訳もない。
そういう宿命にある。

ターシャ泉から半径1km離れた東側にある地には…関係者以外立ち入り禁止と表示された看板と…。
青いテントがある。
ここら辺へ着けば…俺は体が反応して…性転換し始める。

体は透き通り…クラゲのように光り出す。
今日は緑色に光ってる。
魚が…性転換を起こすが如く…この泉から出る波長はなぜか…俺を狂わせる。
これが俺の血筋へ掛けられた呪いらしい。










小説目次















≪眼鏡ミルル≫


「異能マナナ」
…月神タリアの幼馴染


☆「王族レイカ」
…スピルチュアルの好きな女子大生

 
『月神タリア』 (女体化)

 
「灯台キセキ」
…タリアの親友

 
U難波カンサイU
…キセキを崇拝する女子

 
||大和ナデシコ||
…キセキを崇拝する女子



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