アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

ター シャ泉の巫女C



「巫女様って本当に綺麗…見ていれば、クルクル光り方が変わって。
まるでオルゴールの中の妖精さんみたい。
えっと…泉の巫女様には好きな方っていらっしゃいますか?」

突然だ。
自分のことは答えないのに。
そんなことを尋ねられても困る。

俺の発光が灰色から赤へと変わっていく…、確かに謎の生命体にしか見えないだろう。

『私は神に仕える身。
神が好きです』

「そうですか。
泉の巫女様は…普段、どこで生活なされてるのですか?
いつみてもミロのビーナスにそっくりなんですが…。
この頃、どんどん似て来てますね…。
それから、本当にその光り方が凄いですね。
もう異世界の人だっていう噂、信じてしまいそうです…」

そうだろう。
俺もそう感じる。
子供時代は…ミロのビーナス子供版って感じではあった…。
それから…ここまで発光色がユラユラ揺れてる人間を…異世界の人と思われても仕方ない…。
逆にやりやすい、仕事が。

『…』

「泉の巫女様は18歳までここで勤務を続けるのが村のならわしだって…。
お母さんから聞きました。
そのあとは…どこに行くのですか?」

『…』

俺の前は…。
俺の叔母さんがこの役で。
泉の神子ではあった…18歳までだ。
その時に数名の男性陣とも会ってるだろう。

つまり…俺が終われば…。
次、俺の家の第一子に当たる人間がまた…この役目を継ぐ。
毎年、いると言う訳でもないし…。
分家と本家の2人いた場合は…先に生まれた者がこの役目を受け継ぐ仕組みでもある。

この祟り収めの儀式。
サボるとどうなるのか謎だが。
今のところ、守ってる。
噂によれば…一度サボった人間がいたらしく…。
そいつは心臓発作で即日に亡くなり…。
村は一度、洪水になったとか言う神話はあるが…。
怖くてサボる気にもなれない。
命は惜しい。

「答えて下さらないのですか?
私…泉の巫女様がこの役目から下りても付いていきたいです。
願い事も叶えてくれたことだってありますし…。
それに…。
個人的に友達になれたらなって」

『…』

「ダメですか?
えっと…」

『もうすぐ開演時間です。
帰ってもらえますか?』

俺から出てる後光が赤から紫になり…深い水色で落ち着く…。

その時はもう忘れて欲しいと言う意味でもある。
というよりどうしてここまで慕われるのか…。
確かにこの姿の時は村人全員に神のように崇拝はされてる。
まるで神童とでも言わぬばかりの待遇ではある。
お布施だけではなくお供え物まで俺にする人間もいる。
勘違いはされてる。
確かに特異体質であることは認めるが。

「お願いします。
お友達になって下さい」

マナナは水色制服姿のまま、俺の前で土下座をした。
マナナの若干、雨に濡れた肩揃えな黒髪から…床へ水滴が落ちた…。
テントの中だから外は雨だが…濡れはしないだろう。

俺から放つ光が…深い水色から少し赤へなる。

昨日も大道芸人かというノリでしたが。
一度すればもう慣れたのか恥まで捨てて俺に頼んでる。
悪い気はしないが。

『…』

「どんな命令でも従います。
私を神様の仲間に入れてください」

こういう雰囲気で村人だけではなく世界から訪れる人間どもは本気で俺を神様と勘違いしてるヤツも多い。
俺はこの仕事、だんだん好きにはなってる。
まあ、この後光の七光変化も手伝って…神様だとでも思われてる。

『…』

「天国ってどんなとこなんですか?
神様の世界ってあるのですか?
泉の下には妖精の国があるのですか?
泉の妖精様。
巫女様、教えてください」

こんな感じに変な力があるばかりに…勘違いされてることが多い。

『私には分かりません。
私は神に仕える身で神ではございませんので』

マナナはガクリと肩を落とした…肩揃えな黒髪が揺れた。
赤だったのが、黄色の光が俺にまとってる…まあ、神様に見えるかもしれない…。
少し俺の機嫌も治ってる。

「死んだおばあちゃんは私を許してますか?
天国はありますか…。
私、おばあちゃんの死に目に会えなくて…。
それで…」

去年、マナナのおばあちゃんは亡くなったらしい。
それは知ってる。

『私には何もわかりません。
力を授けるしか能がございませんので』

「そうですか…。
ごめんなさい、とりみだして…」

マナナは涙を手で拭ってる。

『…』

俺にまとわりつく光が黄色から深い水色へとなる…。

俺は溜息を吐いた。
今日は溜息ばかりの日だ。
高校ではおまえは…キセキにベッタリだった癖に。
どうも塾の時間になって…マナナはキセキから引き離されたらしい。

こういうとき、俺にはどうすれば良いのか謎でもある。

俺はこの仕事、割りと好きだ。
全員、俺に優しいし。
つかの間のモテ気分が味わえる。
きっとキセキも毎日がこうなんだろう…。

もうすぐやって来るお客様も俺にべた褒めしてくるに決まってる。
俺は神仏に身を捧げるに等しい…絵画の中の美女だからだ。
別に裸ではない。
何故かミロのビーナスに似てる。
見る人見る人に驚かれてる状態でもある。

「あの…泉の巫女様の髪って…まるで光り輝くようですね…光り方によって…髪まで発光の仕方が変わるなんて。
触ってみても良いですか?
見たこともないレベルに光り輝いてて…キラキラで。
ずっと触りたいって思ってて。
お友達になれたら…」

まあ、確かに髪の色も褒められまくってる。
星のように光り輝いてはいる…色も俺から放つ光で変わる…今、赤い光になって…赤みのかかった金髪だろう。

ミロのビーナスより…。
動いてるぶん、綺麗なのかもしれない。
神がかり的には輝いてはいるが。

『…』

「ダメですか?
あの…。
ふわふわしてそうで…サラサラなのか?
猫のような手触りなのか…気になって」

『…』

俺は臥せ目がちだ。

「あの…。
どうすれば…お友達になってもらえるんですか?
泉の巫女様って…本当に肌までランダムな色で発光してて。
夜道を歩けば…泉の巫女様のところだけ光ってるみたいで……。
普通の人間とはどう考えても思えないのですが…。
本当に…どういう仕組みなのですか?
あれは…。
中に懐中電灯か…何かを・?
それとも特殊なものを体に塗って光らせてるとか…」

『…』

ここまで細かく聞かれたのはマナナが初めてだが。
確かに常に俺は光ってる。
特異体質だ。

まるで深海に光るクラゲの状態でもある。
体の中に光る色素があるのかもしれない…。
微細に光ってる。
夜道は特にそれがわかる。
部屋の中ですら、少し分かる。
お蔭で見る人見る人から崇拝される種にはなってる。

「答えて下さらないのですね…。
私では友達として不足ですか?」

『そこまで汝が私の友達になりたい訳はなんなのですか?
私には分かりません…』

「泉の巫女様は私にとって神様そのものだからです。
村人たちだって、泉の巫女様を神様として崇拝してます。
私も同じです。
なってくれたら泣いて私は喜びます」

マナナは顔を真っ赤にして、俺へ言い寄ってる。
少し狂気すら感じる。
熱狂的ファンなのは理解できるが。
キセキもマナナを目にしてる時、同じ気持ちなのか…?

『私は残念ですがレズではございません。
ノーマルです。
あなたは好きな方の元へ走るべきです』

あまりにも俺へ真っ赤な顔で詰め寄られると、困る。
俺は女でマナナは女。
神への崇拝も高まるとここまでになるものなのか?
ずっと何年も…子供時代からストーカーされてる状態だ。
たまに・・・手作りの菓子とか布施でくれるが…。
何か異常にも感じては来る。

「あっと…。
そういうわけでは…」

マナナは肩ラインな黒髪を揺らして、肩を揺らし身をモジモジしてる…水色セーラ服のスカート裾が揺れる。
黒目が微妙に動いて、潤んでる…唇が小さく振動してる。
靴は履かず、マナナはここでは赤いスリッパを履いてる…脚には白いソックスを履いてる。
何故か全身を観察してしまった…違和感がある仕草だ。

と言うより…。
もう開演時間7時前だ。

『今日も仕事なので…』

「隣で待っていても良いですか?
それとも邪魔でしょうか…帰った方が…」

心が重い。
向こうの方から客が来てくれた。
助かった。

[ここかしら?
泉の巫女様がいるっていうテントは…。
まあ、本当に絵から飛び出してきたような…光る泉の妖精様…。
雑誌でもランダムに光り方まで変わるって書いてたわ…本当に神秘的ね…綺麗…]

今日は女子大生くらいか?

『御用は何でしょうか?』

「あの…もしかして私の友達に…。
えっと、今…泉の巫女様…」

『黙って下さい。
仕事です』

マナナに気が付かれたらしい。
俺の顔は熱くてたまらない。
少し変なことを考えてた、今…実は。

[もうすぐ就活なので…。
どこかいい会社に決まるように力を授けてください]

『分かりました。
それでは目を閉じて』

いつもは目を閉じろともいわない…。

『それから手を差し出して…』

女性は手を差し出してくれた。
そこへ手を添えて、力を与えるように集中する。
集中が途切れたところで脱力する。

『目を開けてください』


[何だか…手があたたまった感覚ですわ。
麗しい泉の巫女様ありがとうございます。
勇気が沸きました]

女性は微笑んでる。
この仕事、本当にだんだん好きでもある。

『またお越しください』

これも決まり文句だ。

女性は去って行った。

俺から出てる光が赤から桃色になる…絶え間なく光り方が変わることで、有名だ。
それが見たくて来る客も多い。

マナナは黙って俺を見詰めてる。

「えと…私の勘違いなのでしょうか?
やっぱり友達なんて無理ですよね。
そっか…」

『…』

客は一人去った。
雨だから少ないとは思う、今日は。

本音は悪いが下心しかない。
キセキも同じ気持ちなのか?
しかし…。

『私の仕事が終わるまで待って下さったら。
私と友達になる方法を教えても良いでしょう』

「え?
良いのですか?
嬉しい、泉の巫女様」

マナナは喜んでる。

『それまで離れててください』

「うん、うん…」

隣でマナナは首を振ってる、肩ラインな黒髪が揺れる。

俺は疲れてる。
癒しも必要だ。
クラスでもモテない。
今ぐらいしかモテ気分も味わえない。

☆☆☆


☆☆☆


仕事を捌けば…。
今日は結局10名も来た。
まあ、上出来だろう。
意外に何故か疲れてる。
今日は学校でもつまらなかったからだろう。
キセキばかり女に言い寄られてモテまくり状態でもある。

諦めにも近い気持ちだが。
女子殆どキセキ狙いだ。
何なんだ、この埋まらない…格差は…。
勉強頑張ればモテると思ったのに…。
全然、楽しいわけもない。

マナナは俺が仕事が終われば…。
ニコニコしてる。

「えっと…もうすぐですよね?
閉店時間。
9時ですから…。
本当に私の友達になってくれるのですか?」

『…。
良いでしょう。
私の命令に従えるなら』

少し、沈黙は続いたが。
まあ、キセキにも恨みはある。
モテすぎてる。
毎日、腹も立ってる。
クラスの女子全員がヤツの熱烈ファン状態でもある。
俺はクラスではミルルが好きと言う話が飛び交ってるが…。
全然、学校は楽しいわけもない。

それからマナナ。
性格が悪すぎる。
俺が少しぐらい懲らしめまくったところで罰など起きない筈だ。

どうせならとことん苛め倒すのも良いかもしれない。
だが。

「何なんですか?
命令って土下座ならしました。
えっと…出来ることならやります」

どうせなら無理すぎる課題でも良いかもしれない。
友達になる気になれない。
マナナは性格が悪すぎることを俺は知ってるからだ。

『私の唇にキスが出来たら。
まあ、無理でしょう。
要するに、あなたと私は友達になる気になれない。
それが私が出した回答です。
本気で気持ち悪いので帰って下さい。
他にも私の足を舐めろレベルの嫌な課題を与える気ではいました』

正直に貶しまくった。
まあ、口で苛めるレベルで良い。
本気で仕事も疲れたし…自宅に帰りたい。

俺は背中を向けた。
帰ると言う意味だ。

「泉の巫女様、それぐらいで私の友達になって下さるのですか?」

背中からマナナから掴まれて俺は固まった、というか停止した。
どこまでおまえは崇拝してる?
というか…このレベルですらそれぐらいと簡単に言えるレベルの神仏への崇拝なのか…。

ここはドン引きにもなった。

「今からします。
友達になって下さい」

『私は帰ります、離れてください』

マナナは俺の背中から抱擁して、突然、俺の生足を舐めた。

俺はあまりのことに動けなくなった。

『あの…』

「あとキスですよね?
まあ、それぐらいなら世界各国では挨拶レベルですわ。
それだけで本当に天女様のお友達に…」

『先ほどのは悪すぎる冗談です。
ごめんなさい』

さすがに謝った。
というか…背を向けたまま、動けなくなった。
どこまで崇拝されてるんだろう?
神への崇拝も過ぎると変態の域だ…。

俺はビビってる、マナナにだ。

「今からしてもいいですか?
挨拶のキスを…」

『…』

俺は死んだ瞳だ。

「そのあとに髪を触らせてください、このブロンドヘアーっていつも輝いてますがどういう仕組みなのですか?」

俺が死んだ瞳でマナナから見詰められて、マナナは俺へ背伸びして。
軽くキスしてくれた。
そのあと、勝手に俺の女体化で伸びた金髪を触りたくってる。
俺を泉の妖精と信じて疑わないらしい。

これでは…キセキやマナナへの嫌がらせには全くならなかった。
というか読みは外れた。
嫌がってもらえるかと想像してたが…。
ここまで崇拝されてるとも気が付かなかった。

もうマナナは俺が友達になれたとでも勝手に勘違いしてニコニコだ。

俺はアホらしくなって突き放してた…。

俺は20畳はある俺の仕事場…高床式鉄筋屋根の赤いテントから出た。
マナナも慌てて…俺を追う。

首から掛かってた鍵付きネックレスで…テントのドアにロックする。
その間も俺へ近寄ろうとマナナはうるさい、邪魔すぎる。

「本当にこの髪、綺麗…いつも光り方まで違う…」

『…』

俺は鍵をかけ終わったら…。
泉の上に架かる…関係者以外立ち入り禁止区域の白い橋を歩き始めた。
下にあるターシャ泉はさっきより水滴で揺れてる…雨の影響でだ。

今日は小雨だ。
髪も濡れるが…俺は夜にはクラゲのように発光する。
俺をまとう光が桃色からいつの間にか赤になってる…七変化の光り方が売りだ。
暗い夜に俺だけ…赤く光ってるのが分かる…。
まあ、神様と勘違いされても仕方ないのかもしれないが…。

「泉の巫女様。
これで私を従者として迎えてくれますか?
あの…。
私たち、分かり合えますか?
友達になれますか?」

後ろからうるさすぎる。
俺はもう振り返らずスタスタ前進した。

怒ってる。

それから高床式鉄筋の青い6畳テントについて、学ランに着替える。
ここには全身鏡がある…そこに映るのは…華奢な体躯の可憐な女神、後光が赤い…。
この青いテントに傘はある。
学生鞄に白いバスタオルがある、髪は拭く。

この青いテントから数メートル離れれば元の体に戻るが。
今日の命令、本当に意味がなかった。
というかマナナがあそこまで崇拝してるとも思わなかった。
まさかターシャ教の信者なのか?
マナナの家は。

村ではターシャ神を絶対崇拝はしてる。
理由は不明だが…。
奉らないと災いが村に起きると言う伝説はある。
現代は平和すぎるから全然、実感が湧かないが。
この役目をサボると心臓発作で死ぬとか言う神話があるから。
仕方なしに俺はミサには連日通ってるだけだ。

俺は溜息を吐いて…歩いてる。
青いテントから数メートル離れた。
元に戻って、男の体だ、もちろん光も止まる。

俺はターシャ泉半径1kmを境に性転換する

今日は溜息ばかりの日だ。






翌朝も学校だ。
水曜日になる。
まあ、普通に登校はする。

俺が教室へつけば。
俺が密かに好きだとクラスで噂が流れてしまってる…眼鏡ミルルは3人女子トリオ(ナデシコ、カンサイ、ミルル)を組んで。
マナナと対立してる。

≪ミルルはマナナがキセキさんの彼女なんて認めない。
こんな性格も最悪で勉強も底辺女のどこが良いの?
納得いかない。
絶対にミルルの方が女としては格上に決まってるわ。
当たり前よ、ミルルは雑誌読者モデルまでしてるのよ?
あり得ないわ≫

ミルルが、マナナとキセキが付き合ったことに対して…ブチ切れてる。
眼鏡を手でクイクイと何度も動かし、腰まで伸びた茶髪を手で払ったり…忙しい。
イライラしてるのが伝わって来る。

Uウチも。
アンタなんてキセキくんに釣り合う訳もないやん。
頭もアホな癖してU

||あたしもよ。
そんなこと認めないわ?||

「うるさいわね。
私はキセキと一番、付き合いが長いの。
もう諦めなさいよ。
残ったタリアとかにしときなさい?
イケメン、キセキは私のものよ!」

会話までマナナはドン引きだ。
いろいろ衝撃発言過ぎてる。
これは…昔からだ…。
俺との初対面からずっとだ。

「マナナ。
怒るなよ…。
こんな感じでいいのか?
付き合っているって言っても僕は昨日、塾で忙しすぎて。
最近、ずっとそうだが…」

「うん、キセキ。
良い。
手だけ繋ごう?
この3人女に見せつけるのよ?
私、キセキみたいな格好良い人と付き合えて幸せ。
タリアの顔面とか論外だから」

想像絶する光景でもある。
教卓の前でだ。
どういう恋愛ドラマなんだこれ?
俺はモテ男ほど憎いモノもない。

一人、机に座る。
SF小説でも読む。
これだけが俺にとっての癒しでもある。

このSF小説のヒロイン達は割りと可愛い。
それで癒されてはいる。

「おはよう、タリア。
今日こそ、ミルルに会話しろよ。
君って本当にシャイだな…」

『おはよう、キセキ』

懲りずにキセキも俺の机に来る。

他の奴に話を振れよ。
俺は孤独を愛してる。
バレタクナイ実家の情報だらけだ。
極秘機密であまり他人と交わりたいとも思わない。

「今日は何の小説だよ?
それか…。
僕も読んだことがある。
それは新刊だよな。
展開がとても面白かった。
特に新たに表れたキャラクターとかツボで」

キセキの茶色い瞳が爛々と光り輝いてる…嬉しそうだ。
本の中身をチラリと見て分かったらしい。
俺は本には緑のカバーで中身は隠してる状態だ。

「何の小説なのかな?
キセキ?
どうせ醜いタリアの小説だから悪いのにきまってるだろうけど。
キセキが影響を受けるのは私、反対かも」

マナナは上目づかいで、キセキを見詰めてる。

あまり教える気にもならない。
実はこれ、18禁も入るような同人小説だ。
極秘に根性で買ってる。

『マナナは馬鹿。
去ってろ』

キセキもばれることは恐れてるはずだ。
女子どもに。

「ええ…。
何なの?
どうして教えてくれないの、キセキ?
しかも…タリアの本にカバーまで」

『うるさい女は引っ込んでろ』

何故かいつものノリだ。
俺はもう癖でマナナを見れば攻撃する。

「タリアの顔は見るの汚れるわ。
早くこの席、離れましょうよ、キセキ。
せっかく私たち、付き合えたんだから。
キセキ…あのSF小説は…」

「そうだな…。
マナナには難しい小説かもしれない」

「ええ?」

その間もイチャイチャとキセキとマナナは手を繋いでる。
まあ、子供の頃から勝手にマナナはキセキへ手を繋ぎに積極的でもある。
見慣れた光景だったが。
教室であるのはレアでもある。

ミルルも向こう岸でカンカンに怒ってる…。

キセキが来れば…ミルルを含めた女子3人トリオまで俺の元へ来る。
俺の席の前に…キセキ、ミルル、ナデシコ、カンサイ、マナナ…。
合計5名も結集して、騒々しい。

≪手、離しなさいよ…。
キセキさん、ミルルと付き合って。
ミルルと手を繋いでくれないかな?≫

Uウチと握手だけでもU

||あたしと…手を触れるだけでも…||

「ダメよ、私が勝ったんだから。
あんたたちはタリアで我慢しときなさいよ、ナデシコやカンサイやミルルは。
タリアはモテないからすぐ落とせそうよ。
見ればすぐ、タリアがモテないことなんて分かると思うけど。
だいたい、ミルル…キセキは私の方が好きなのよ?
分かってるの?
そこら辺?」

《マナナ!
ミルルに歯向かう気?
生意気だわ》

ミルルとマナナはバチバチの視線だ。
ミルルは腰まで伸びた茶髪の髪をくねらせて…背中へ手を空けて身を逸らし、上から目線で眼鏡を光らせ…。
マナナは上目づかいに睨みまくり…肩揃えな黒髪を猫のようにビリビリと静電気を発して、総毛立ち…巨乳を突出し。
いつもの光景だ。

長年、こうだ。
マナナは醜いものは許せない潔癖症らしい。
本当に躾がなってない女だ。
俺も幻滅は続いてる。
当たり前だ、ドン引きを通り越して…。
これが日常になり、もう諦めもついてる。

こう言う女だ、マナナは。
クラス中で俺がマナナを嫌悪してる噂を知らないものなどいない。
俺はマナナが近付けば長年、機嫌最悪も良いところだ。
周囲のクラスメイトまで俺の豹変ぶりに驚いて、恐れられてはいる。

じっとりと俺はキセキを見る。

「えっと…。
君たちは去ってくれないかな?
僕は…タリアと会話がしたいから…。
マナナやミルル、ナデシコ、カンサイは…ここから少し去ってもらいたい。
駄目だろうか?」

≪ええ…≫

||そんな||

Uウチもなん?U

「ねえ、キセキ。
私は良いでしょ?
彼女だから。
タリア見るの最悪だけど耐えるから。
後ろで隠れても良い?」

『かわい子ぶってんじゃねえよ、ボケ。
マナナ』

「タリアが怒る。
どうすれば僕は良いんだろう…。
ごめん、ミルルに言い寄られて…。
君がミルルが好きって知ってるのに」

いつもこの調子で男子たち全員からミルルのことを俺は言われてる…。

『おまえももう彼女いるんだから去れよ、キセキ。
機嫌最悪だ。
俺はうるさいの嫌だ。
マナナは醜すぎる性格が。
昔から俺の敵でしかない…おぞましいモンスターも良いとこだ』

「タリア…」

「ねえ、ここは…去りましょう、キセキ?
彼女である私の言うことを聞いて…。
私、タリアほど嫌いな人間っていないの。
何故か無理。
あんな奴とお友達になんてなっきゃダメよ、キセキ」

『俺もマナナと同じだ、マナナはずっと嫌ってる。
そういうことだから去れよ、キセキ。
分かれよ。
まあ、後でメールぐらいなら相手してやるよ』

「そっか…タリア。
悪いな…。
君からのレスを心待ちにしてる」

キセキは去って行った。
女子何人か引き連れて。
4人だ。
ミルルとナデシコとカンサイとマナナ…。
どれだけいる?
他にも教室から出てきそうだ。

俺は溜息だ。
俺のクラスでは俺がミルルが好きと言う噂が流れて…隣のクラスまで響き渡ってる状態だ。

最近は…あまり昔のように会話することもない。
キセキとだ。
というか。

面白くはない。

俺は今日は大人しい気分だ。

キセキはミルルなどの女子3人トリオに言い寄られて…。
それから隣でキセキにアタックするマナナ。

結局、見てれば関係は変わってない。
キセキが迷ってるらしい…。


≪お願い、マナナと別れてミルルを選んで≫

腰まで伸びた茶髪に眼鏡をかけた長身の体躯なミルルは…学ラン姿なキセキに向かって泣いてる。
キセキは自分の茶髪をボリボリと掻き毟って、茶目を横へ逸らす…優柔不断な態度だ。

Uウチにしてよ、ウチなら一緒に関西巡りもするから。
関西一緒に旅行に行こうよ♪U

ロリ体型黒髪ツインテールな女子、カンサイは明るいノリだ。

||あたしがダメな理由はなんなの?
あたしは花まで生けれるし…茶道も出来るし…。
料理もよくて…慎ましやかなのに・・。
どうして?||

腰まで伸びた黒髪に純和風顔のなでしこは…顔真っ赤にして照れてる。
一生懸命、アピールしてるらしい…。

「…僕はクラスメイト全員、平等に愛してる。
強いて言えば、幼馴染2人の味方だ。
タリアとマナナと僕は…幼馴染3人組だからだ。
僕のことは忘れて欲しい。
特にミルルは無理だ、タリアがミルルを好いてることぐらい有名な話だ」

キセキは困った顔だ、茶目が左右に動いてる…どちらの花にしようか迷った様子だ。

《ミルルとキセキさんの2人で幼馴染って訂正しなさいよ!
月神さんとマナナは幼馴染から外して頂戴!
ミルルはね、キセキさんとは何回も言うけど‥幼稚園時代からの仲なのよ。
キセキさんは…ミルルが育てたのも同然なのよ。
感謝してもらいたいぐらいだわ!
今のキセキさんがあるのは、ミルルのお蔭なのよ!》

U愛は月日の長さちゃうで。
ウチは高校からの転校生やけど…キセキくんへ衝撃的なレベルで、滅茶苦茶惚れたんやで!U

||あたしは中学からだけど、もうずっとキセキ君一筋よ!
マナナなんて敵に決まってるわ。
負けないわ、あたし||

女子3名トリオ…ミルル、カンサイ、ナデシコが大反論してる。

「キセキ、大好き。
嬉しい。
やっと、タリアからキセキを引きはがせて嬉しすぎる。
キセキってカッコいいね。
でも、私はタリアは幼馴染って認めてないよ。
キセキと私と…ミルルの3名で幼馴染で良いんじゃないの?
キセキは私の彼氏だし…それからミルルは私の親友よ」

マナナはニコニコしながら、首を左右に振ってる…肩揃えな黒髪が揺れ、頬が高い位置へ上がってる。
マナナと俺は険悪だ、これはいつものことだ。
マナナは察するに…恐らく面食いだ。

そんな情報が視界に入って来た。

《ミルルはマナナは友達なんて思ったことないわ!
良い迷惑よ!
別にファンになんてなって貰わなくても良いから!
ミルルはドラマで活躍するだけだから》

マナナはミルルが子役時代からテレビでドラマを演じてることに関しては…応援していたり、する…。
今ではキセキを巡るライバルに…マナナとミルルはなってしまったが…。

正直、昨日の今日で…何か俺の態度が変わるかと思ったが。
いつもどおりだ、マナナへの態度が。
やっぱりいつ見てもあの女の性格は最悪すぎる。
それだけは分かった…。

俺は学校ではずっと胸がキリキリするレベルにムカついてる。
マナナも嫌いだし、キセキも嫌いだ。
もう幼馴染とは認める気にもなれない。

俺は教室ではミルルを密かに慕ってるという噂が流れてるが…。

アイツら…キセキとマナナは、俺を裏切ってばかりいる。
そんなふうに思う。

ミルルは確かにキセキにゾッコンだな…。
俺のことを考えて…敢えてミルルを選ばなかった選択…アレは俺にとってあまり…意味がない。
見てれば何も変わってない。

それからマナナはミルルと俺をくっ付けようと励んではいるが…俺へ失言ばかりだ。

キセキだけが俺とマナナとキセキで幼馴染のコンビと信じて疑わないらしい。
キセキ…アイツは善人、気取り過ぎる…。

特にマナナ。
いつも学校でキセキしかアタックしない癖に、もう願い事叶ったんだから、それでもまだターシャ泉の巫女に何故まだ来る?
俺はマナナ、嫌い過ぎるのに。
もう疲れ果ててる。


俺の仕事も大変だ。

☆☆☆

☆☆☆


学校が終われば。
またミサの時間になる。
俺は今日のミサは心苦しい。

ターシャ泉の半径1km東の地へ行けば…そこは関係者以外立ち入り禁止区域だ。
俺の体は女性化する。
もうすぐオレの誕生日になる17歳に近い。
そのあと、1年程度で役目を下ろされるだろう…。

青いテントで着替えて…。
白いドレスとベールを付ければ完成だ。
俺はとぼとぼ泉の小道を渡る。

関係者以外通れない道だ。
そこから泉へ行けば…。
赤いテントがある。

俺の仕事場だ。

そこで座り込んだ。

今日は来てないらしい。

今、7時10分前か。
確かに願いは叶えた。
と言うか勝手に叶った。
ということは来ないのかもしれない。
別にどうでも良い。

俺は淡々と仕事をする。
一時間ぐらい経過した。
その間に4人程度捌いた。

しかし、今日は静かだ。

☆☆☆

その時、客として…5人目に…。
やって来た。

肩まで伸びた黒髪…低身長巨乳系な水色セーラー服を着た女子―――マナナだ。

「泉の巫女様。
私の友達になって下さい。
これ、祈祷料です。
今月、お小遣いがもらえました。
私に力をください…」

俺の力はゼロを6割程度にする程度だ。

『私の能力はゼロを6割程度に出来るぐらいです。
受け取る訳には…』

あまり気乗りしない依頼だ。
全く友達になりたくない、マナナは。

「お願いします。
泉の巫女様はなんびとにも平等なんでしょう?」

俺は溜息を吐いた。









小説目次




≪眼鏡ミルル≫


「異能マナナ」
…月神タリアの幼馴染


☆「王族レイカ」
…スピルチュアルの好きな女子大生

 
『月神タリア』 (女体化)

 
「灯台キセキ」
…タリアの親友

 
U難波カンサイU
…キセキを崇拝する女子

 
||大和ナデシコ||
…キセキを崇拝する女子



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