アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

ター シャ泉の巫女B







 翌朝、教室で見た光景は――いつも通りだ。
今日は火曜日だ。
昨晩、マナナから土下座されて、一問だけ数学の問題を解いてはやったが…。
クラスを見渡せば。

「キセキ、昨日の数学の宿題。
写させて」

「またか?
マナナ…。
仕方ないな…」

 茶髪茶目長身色男―――キセキの席でこんな会話してるのが、聞こえてきた。

「えっと…。
一問は解けたけど…他が全然分からなくて…」

「一問、解けたのか。
偉いな、マナナ」

 ドン引きだ。
このために昨日、俺に質問したのか?と言うノリだ。
昨日、俺が泉の巫女姿へ変貌してる時に解いた問題を利用して…どうも、マナナはキセキに点数(か せ)ぎ してる。
小賢しい女だ。

「だって…。
キセキ、いつも学校が終わるとすぐ帰宅するでしょ?
塾に忙しいみたいだし…。
今しかないからノート写させてよ」

「仕方ないな。
数学の時間までに返せよ」
「ありがとう。
キセキって優しいね。
大好き。
(みにく)いタリアとは大違い。
それからキセキって顔も良い」

 毎日がこのノリだ。
俺も見飽きてる。
 自分の席へ鎮座して、漢字暗記勉強に集中する。
次の時間は、漢字の小テストがある筈だ。
全員、着席してる。
 向こう岸で女子がヒソヒソ噂話をしてる。


≪マナナって。
生意気よね?
幼馴染だからってキセキさんにばかり宿題写させて貰って。
ミルル、ムカつく。
だいたいね?
ミルルだってキセキさんと幼稚園時代から親交があるのよ?
どうして、マナナだけ特別扱いなわけよ?≫

 眼鏡ミルルは…長身スレンダーモデル体型。
茶髪ロングな眼鏡をかけた知的女子だ。
キセキを崇拝する三人トリオ、主犯格だ。
しかし…オカッパ黒髪低身長巨乳系女子――マナナもキセキ派だ、もう4人トリオにしても良い気がするが。
キセキがマナナだけを特別扱いしてる。
 他の女子…ミルルとナデシコ、カンサイは…そのせいで3人トリオを結成して、マナナと毎朝…対抗してる。
お蔭で耳がうるさくて仕方ない。
 ミルルとマナナとは合わないらしい。
よく二人は喧嘩をしてる。
眼鏡ミルルと俺、異能マナナと灯台キセキ…。
4人は一体、どういう因果か…一応、幼稚園時代から何故か同じ高校に入ってしまった関係だ。
その割に、俺は二人の女子と…仲良しではない。
 まず、マナナはモテ男キセキが好きでアタックしてる女子だし…。
ミルルも同じでキセキを最初は(いじ)めていた が、最近に入って…キセキ崇拝が凄くなった。
俺はただ、キセキの親友というポディションで…どっちの女子とも親交はない。
ただ、マナナには嫌われてるらしいが…眼鏡系女子ミルルにはマナナほど、嫌われてはない空気が漂ってる。
 俺がミルルを好きって言う噂は…もうクラスに流れてしまってる。
男子たちから…カラかわれるのも、もう慣れっこだ…。

||本当よね?
ミルル。
腹立つわ、あたしのキセキ君なのに…||

 特徴は薄いが…。
クラスにいる大和撫子的存在の女子だ。
身長、胸も平均的で…ストレートな黒髪が背中まである。
キセキを前にした時だけ多弁になる…。
幼稚園、小学校は別だが…ナデシコとは中学から面識があるようになった。
名前は…大和ナデシコって名だ。
怒らせると怖い。
普段はおとなしい。

Uナデシコも同じ気持ち?
ムカついてたまらないわ。
あの子、何様のつもりなん?
ウチのキセキくんに…U

 高校から編入で…関西から転校してきた女子だ。
見た目は黒髪ツインテールだ。
背が低くて幼児体型かもしれない。
難波(なにわ)カンサイって名前だ。
この女子とは高校からの知り合いだ。
 一度聴いたら忘れられないレベルのアニメ声だ、地声らしい。
 俺だけじゃなく、女子複数からも…マナナは嫌われてるらしい…。

||ちょっと、キセキ君。
あたしたちにも宿題、写させてよ||

そこから突然、声色(こわいろ)が変わる…。
女子3名ぐらいが…キセキの席へ行く。

≪昨日の問題がミルルには解けなくて…。
マナナばかり(ひど)い…≫
「え?
君たちは…成績そこまで悪くなかったはずだけど。
難しかったか?
特にミルル、君は…タリアに聞けばいい…」
Uえっと…ウチ、数問だけ…分からへんから…U
||あの…あたしの成績が上がったら…付き合ってくれないかな?
キセキ君||
≪ミルルは成績もう上位だから…キセキさんと付き合っても良いかな?≫
「ダメよ、私が先にキセキに約束してるんだから。
大昔から」

 ミルルは眼鏡をギラギラに光らせ、腰まで伸びた茶髪をしならせ…茶髪茶眼長身男、キセキへ密着し・・。
負けずにマナナが接近する。
マナナは…オカッパ黒髪を猫のように逆立てて、水色セーラー服から突き出てる巨乳をキセキへブチ当ててる…。
ミルルとマナナの視線が閃光を放って合致してる。
 女子ども4人…ミルル、マナナ、ナデシコ、カンサイから、キセキを巡るバトルが開始される。
それは…キセキが座る席の前で始まってる…。
見苦しい。
 マナナは確かに…そんな約束をしてたのは知ってるが。
結局、昔からずっと成長などない。

「マナナとした約束は…。
僕の成績をマナナが一回でも越えたらという約束だ。
つまり、君たちなら学年一番を一年間キープするぐらい難しい約束だ」

 そうだ、昔…俺の前でマナナとキセキがした約束はそれだ。
結局、10年間…一度もどのテストでもマナナはキセキを越えることなどない。
少し…キセキもマナナには難しすぎる試練を与えすぎだとは思う。
キセキはマナナに脈がないのかもしれない…。
どうなのだろうか?
そこら辺は分からない。

||えっと?
それは…その…||
≪ミルル、やるわ。
やりとげるわ。
楽勝よ。
成績なら常にトップだから≫
Uキセキくんを手に入れるためならウチ、猛烈に頑張るわU

 ミルルを含む女子たちはやる気になってるらしい…。

「ダメよ。
私が越えるんだから。
ねえ?
キセキ…。
私のために次の小テスト…一回でも良いから手抜きしてよ」
「それでは意味がないだろう」
「ええ…」

 マナナの黒目はビックリ(まなこ)だ。
俺は溜息を吐いた。
俺も馬鹿な話に集中しないで、漢字を覚えなければならない…。

「ねえ?
キセキを越えるのはさすがに難しすぎると思うの。
私のこと、キライじゃないって前、言ったよね?
私の成績があと10番上がったら…ダメかな?」

 さすがにそれは甘すぎだろう。

「そうだな…。
マナナとは10年も約束してるし、ここら辺で少しだけハードル低くしても良いか」
「え?
良いの?」
≪なに?
それ?
マナナだけ?
ミルルは?≫
||酷いわ…||
Uウチらは?U
「僕はクラスメイトの女子、平等に愛してる。
しかし…この中では一番、マナナとの約束が長く、付き合いも長い」
「え?
じゃあ…」
「しかも…あのマナナが今日は数学の問題を一問、自力で解いた。
僕と付き合いたいから、マナナは必死に勉強してる。
ココはいじらしい。
そういうことだ…好評価かも…しれない…。
よくやった、マナナ。
僕は嬉しい、褒めてやる」
「キセキ。
ありがとう。
優しい、大好き」

 どういう理屈だ、それは。
キセキ、おまえ…マナナに甘すぎだろ…。
毎朝、宿題までマナナにノート丸写しにさせて…。

||あたし…納得いかないわ||
Uそりゃ、ウチは…キセキくんと知り合って1年もないけど、転校生やし…U
≪ミルルは…キセキさんのことこんなに好きなのに≫

 ミルル含む女子3人トリオ…ミルル、ナデシコ、カンサイがうるさい。
他にも口にしないだけで…じっとり何名かの女子が…キセキを狙ってる。
 もうウルサイ。
勉強が頭に入らない。
というか…そんなにマナナが好きならもう付き合ってやれよ、キセキ。
茶番劇見るよりはマシだ。

「それじゃ、僕はタリアの席に行く」
「え?
またタリアの席?
どうしてよ?
ええ?」
「ここにノートは置いておく。
勝手に写せ」
「ええ?
タリアのところに行かないで。
私、タリアは苦手なの。
いっつも怒ってる」
「まあ、僕も男友達も必要だ」
「嫌よ、キセキ。
ねえ…。
私と付き合ってよ。
そしたら…」
「僕は君が好きか謎だ。
確かに昔から幼馴染だが。
それでも良いのか?
僕はクラスメイトの女子全員好きらしい。
誰がとは決めにくい」
「それでも良い。
まず付き合ってから考えよう…」

 何だか…。
凄い話になってる。
モテ男は思考回路が変だ。
まあ、マナナ以外のクラスメイトの女子全員好きだと言うのは共感できる。
俺も悪いが同じだ。
しかし、ハッキリそれを言っても良いのか?

「そうだな…。
まあ。
別に良いかもしれない。
女なら誰でも、僕は…」
「ええ?
じゃあ?」
||ちょっと、ダメに決まってるでしょ?||
U何言ってるん?
キセキくん…ウチは?U
≪キセキさん?
ミルルとも…≫
「…」
「お願い、キセキ…。
私と付き合って」

 マナナが水色セーラー服から突き出た巨乳を…キセキの学ラン胸元へ密着させ…正面からベッタリくっ付いて…。
頼み込んでる。
キセキが自分の茶髪をボリボリとかきむしる、少し照れてる様子だ。
いろいろ凄すぎる図だ…。

「まあ、退いてくれ。
マナナ」

 キセキはマナナを引きはがし…俺の席へ来る。
アレは女子軍団から逃げたと言う意味なのか?
 俺の席、目前に3人女子トリオやマナナまで来る。

「タリア、頼む。
今、僕は絡まれてる。
助けて欲しい…。
それから、ミルルは君が落とせ…好きなんだろ?」
『…』

 キセキの茶色い瞳が困ったように濡れてる…、おまえ…情けなさすぎだろ…。
 俺は返事すらしない。

「キセキ、タリアの席は私、イヤよ。
目が腐るから」
『帰れよ…』

 オカッパ黒髪低身長巨乳女子―――マナナがこれば俺は冷たい。
長年、そのノリだ。
これを利用してキセキは面倒事(めんどうごと)か ら逃げようとしてる…。

「ねえ…キセキ。
お願い、私じゃダメなの?
とにかく付き合ってから…」
「誰か決められないのに…マナナは本当に良いのか?
僕はクラスメイト女子全員好きだ。
ほら、タリア…ミルルと会話しろ」
『…』

 俺は絶句もする。
ハッキリ言ってる。
そうだろう、俺も悪いが…マナナ以外の女子全員好きだ。
女好きだ、俺は。

「そっか…。
でも、やっぱりクラスの男子では私、一番…キセキが好きかも」
≪ミルルもよ≫

 腰まで伸びた茶髪を背中で揺らし、ミルルは上から目線で眼鏡を光らせ・…。
対して、マナナは肩揃えな黒髪を揺らし…上を向いて、水色セーラー服の胸を突出し…。
 ミルルとマナナは…険悪ムードで睨めっこをしてる、視線がバチバチだ。

Uキセキくん…この席から離れへん?。
何か睨まれたわ。
ウチ…U
||この席、怖いから…。
えっと…キセキ君…あたしなんて…どうかな?||
『もう、キセキ。
誰でも良いから決めとけよ。
毎朝、うるさすぎる。
俺はもうおまえとSF小説について語る気にはならない。
疲れてる』

 これも本音だ。

「え?
タリア…。
漢字勉強の邪魔か?
ほら、ミルルいるから君もミルルに話せ。
シャイだな、君は…」
『当たり前だろ。
そこにいる女子でも誰でもマナナでも決めとけ。
合わなければ別れれば終わるだろ?
マナナにも答えをやれ。
こんな性格最低女、好きになれない気持ちは同感だが』
 ミルルのことはスルーした。

「お願い、キセキ。
私にして。
まずはお試しで」
||あたしにしてよ、キセキ君。
愛情はたっぷりで、あたしは料理に嵌まってて性格も良いわ||
≪キセキさん、ミルルにして≫
Uキセキくん…ウチではダメなん?
ウチもキセキくんのこと好きやし…U
「そうだな…。
本気で誰か…僕は決めかねるが…。
強いて言えば一番長い付き合いはマナナだ。
タリアはマナナが嫌いらしいし…。
マナナもタリアが嫌いらしい。
他の女子を選べば僕はタリアから怒られそうな感じもする…。
またおまえのせいでクラスから女子が減ったと…タリアに僕が責められかねない」
俺の机の前に立つキセキの茶色い瞳が…左右に動き、ヤツは茶髪を掻き毟った。
||何の話よ?
キセキ君…。
えっと……||

 ナデシコが長い黒髪を触りながら、反論し始めた…。
普段はおとなしめな和風女子なのに、白目を向き始めてる。

≪月神さんのことなんてどうでも良いでしょ?
ミルルにしてよ!
ミルルは…キセキさんとは幼稚園時代から親交があるのよ?
忘れたって言うの?
ミルルとキセキさんの愛の記憶を…≫

 ミルルは腰まで伸びた茶髪をしならせ…眼鏡の奥から蛇のようにキセキを見詰めてる。

Uお願い、キセキくん…。
ウチにして…ウチ、純情やで?
そりゃ…高校から突然、転校して来たし、親交は浅いけどな…。
愛ってそう言うもん、ちゃうで。
ウチはキセキくんだけやで!U

 低身長ロリ体型なカンサイはドングリ眼で甲高い声だ、ウサギのようにツインテールが揺れた。
3名の金切り声が合唱し、耳が痛い。

『…キセキの好きにしろよ。
女子たちもこう言ってるし、俺は別に怒ることもない。
うるさいだけだ…。
決めてやれ、聞くのも疲れる、耳が腐る。
クラスメイト全員の迷惑だ…呆れてる』
「私はキセキが良い。
お願い、キセキ…。
私にして?
キセキ…覚えてる?
 私が幼稚園の時、キセキと最初に会って…言ったこと。
私とキセキの両親はもう仲良しだし…。
私たち、許婚(いいなづけ) も同然なんだから…。
何を迷うことがあるって言うの?
キセキ…」

 マナナは首を横へ動かし・・肩揃えな黒髪を揺らし、キセキへ上目づかいした。
キセキの茶目がグルリと一周し、マナナの位置で止まった。

「分かった。
僕はタリアとマナナの味方だ。
付き合いも長い。
マナナと付き合おう。
それなら良いだろう」
「やった、うれしい。
良いの?
私で」

 マナナは黒い瞳を爛々と光らせ、若干ムチッとした太腿(ふともも)で、 盛大に飛び跳ねた・・。
途端に、オカッパな黒髪は宙へ舞い、水色セーラー服の(すそ)と スカートが(ひるがえ)って、少し胸元が揺れ た。
 余程、嬉しいらしい。
 女子たち3名…眼鏡ミルル、大和ナデシコ、難波カンサイからは非難轟轟(ごうごう)の 嵐だ。
腰まで伸びた茶髪を手で払い、ミルルは眼鏡を光らせ…薄い唇を()み 締めて、宿敵(しゅくてき)マナナを睨みつけて る。
いつの間にか許婚(いいなづけ) になってた話は知らなかったが、確かに…まあ、それもありえたかもしれない。

≪どういう話よ?
それ、ミルル、根性でも引き離すから?≫
||納得いかないわ。
酷いわ、キセキ君…あたしだって…||
Uなんでウチじゃないん?
えっと…。
キセキくん、諦めへんで。
許婚(いいなづけ) やって!?
何の話やU
「キセキ、これからよろしく。
まあ、ウチのお母さんとキセキのお母さんが仲良しなのは本当よ。
だって…私がキセキを昔、(いじ)めから(か くま)ったんだもの。
当たり前の話でしょう…」
「はあ…結論も出た。
去ってもらいたい。
僕は今からタリアと”SF小説”同好会を開きたい。
マナナなら別に良いかとも思う」
『…』

 長年の決着はついたらしい。

『まあ、性格最悪女なのにキセキに選んでもらえたことを感謝するんだな、マナナ』

 一応、祝ってはやった。

「うるさいわね。
タリア。
私は物事は自分で解決するわよ。
あんたもミルルへちゃんとアタックしたら?
他人任せが酷過ぎでしょう?」

 マナナが俺を睨み怒った。

「キセキ…またあとでね」

 それからキセキに手を振って去った。
キセキの席にある…数学のノートを写しに行ってるらしい・・・。

||キセキ君、あたし…諦めないから。
成績上位目指すから…だから…その…。
許婚(いいなづけ) の話…本当なの?||
Uキセキくん、ウチもそう。
またあとで…今からキセキくんに認められるために…ウチ、頑張る・・。
許婚(いいなづけ) なんて解消してや。
前々からマナナにだけキセキくんが甘くて変やとは思ってたけど‥。
あの女、キセキくんの許婚(いいなづけ) やったん?
ウチ、めっちゃショックやわ。
泣くかもしれへんで…。
はよ、別れてや…マナナとやU
≪キセキさん、ミルル…次の数学で上手に黒板で解いて見せるから。
それと…マナナとキセキさんは合わないと思うの…。
ミルル、死ぬほど…ショックよ。
ミルルだってね?
キセキさんとは幼稚園時代からの幼馴染だったのに…いつの間に、マナナと許婚(いいなづけ) になったのよ…。
認めないわよ。
じゃ、またあとでね?
キセキさん≫

 ミルルは…腰まで伸びた茶髪をクネクネと蛇のように動かし、手で眼鏡をクイクイと上下に動かしながら…フン!とソッポを向く。
 カンサイは頂点から伸びた黒いツインテールを揺らしながら…キャハっと顔をクシャクシャにさせて、笑い…キセキへ向かって手をバイバイと横へ振る。
 ナデシコはおとなしそうな表情で首を下へ向けて地面を見詰め…キセキを横目だけで見て…腰まで伸びた黒髪を手に取って、枝毛を探し始めた様子だ。
 3人はやっと……そのタイミングで無言で去って行ってくれた。
何だか…ミルルを含めた女子3人トリオでヒソヒソ会議をするらしい…。
どれだけキセキは…モテるんだ…。
ゲンナリもする。
毎朝これだ…。
 異能マナナVS(眼鏡ミルル+大和ナデシコ+難波カンサイ)…。
この4名が俺の親友…灯台キセキを巡って恋の対決をしてる。
この教室は…耳が痛くて、仕方ない…。
見てるとアホらし過ぎる…。

「うるさくてごめん。
昨日のSF小説の続きだが…タリアは最近、どんな小説に(はま)まっ てる?
もう前に借りた小説のヒロインがツボで。
タリアの趣味は本当に良いと思う」
『そうか…。
ありがとう』
「僕のこと、怒ってるか?
確かに漢字の勉強…邪魔になったな?」
『もう覚えた』
「そおか…。
女子3人トリオ、ナデシコやカンサイやミルルも…やっと去ってくれたらしい…。
大変だった」

 自慢されてるようにしか聞こえない。
今日は疲れ切ってる。

『キセキ。
悪いが俺は寝る』
「寝るのか?
今から”SF小説”同好会を始めるんじゃなかったのか?
僕は君の解説と切り口大好きなんだが…」
『おまえばかりモテて俺は(うら)みまくって る…』
「そんなつもりは…。
そうだよな、確かに女子三人トリオまで君のことを貶してた。
でも、僕は君って良い奴だと思う」
『寝るから去れよ』
「ここを離れればまた女子に絡まれる。
まあ、マナナは今日から彼女だが。
何だか不思議な気分だな、これは…。
これで僕は良かったんだろうか?
確かに毎朝、(から)まれて誰かに決めなければ ならない気にはなってたが…。
流されたような気もする…。
しかしあ、のマナナが数学の問題を自力で解いたと言うのが効いた…。
僕のために必死でやったに決まってる、マナナは…。
しかも、もう僕の両親までマナナのことについては認めてる・・許婚(いいなづけ) も同然なことも自覚がある。
僕が気が多いことも知ってるが…。
まだ、もう少しだけ遊んでいたいのも本音だが…」
『一人身に自慢は痛い。
寝るから』

 俺にだって…勉強頑張れば、20歳になれば…会える許婚(いいなづけ)が いるらしい
母さんも父さんもターシャ教関係の見合いで出会ってる。
別にどうでも良い話だ…。

「ごめん。
失言(しつげん)だったか。
えと…」
『…』

 もう本気で寝ることにした。
ふて寝ともいう…。

「タリアは夜、何時ぐらいにいつも寝てるんだ?
あまり寝てないのか?」

 キセキが何か話しかけてるが…頭には入らない。
楽しくはない。

「大きい声では言えないが…タリアは、密かにこっそりミルルが好きなんだってな。
昔から聞いてる。
三人トリオ…カンサイやナデシコやミルルだけは選ばない様にしてやった。
ミルルは確かにマナナとは性格も正反対だな。
君のこと応援してる。
タリアなら出来る(はず)だ、僕は信じてる」
『…』

 俺は本当にモテてない。
ミルルは…長身スレンダーモデル体型。
茶髪ロング、眼鏡をかけた知的女子だ。
マナナとは合わない様子で喋ってる姿を見たことすらない。

「ミルルが僕に言い寄って来るたびにどう反応すればいいのか。
お蔭で僕は困ってる。
君の好みは本当にマナナとは見た目も性格も特徴まで正反対なんだな。
ミルルはAB型、マナナはO型。
全てにおいて正反対過ぎる、よほどミルルが嫌いなんだな。
タリアは…」
『…』
「まあ、()ねるな。
タリアのこと、僕は応援してる」

 俺はモテるこいつ、嫌いに決まってる。

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 学校が終わった後は。
いつものミサだ。
今日の学校は本当に見苦しいも良いところだった。
あまり元気すらない。
 ターシャ泉半径1kmに入れば俺の体は女体化する。
ターシャ泉半径1km東側は…関係者以外立ち入り禁止区域に当たる。
そこに6畳程度の高床式青い鉄筋テントもあるが…。
そこでサッサと着替えを済ませる。
青いテント内部の全身鏡で見れば・…おごそかな深い水色の光に身をまとった天女がそこにいる。
華奢な体躯…長い睫に縁どられた淡い瞳、白い肌、何色にも変わる金色の長い髪、細い鼻筋、薄紅色の唇…何故かあまり人間味のしない宗教画が更に線が細く なった女がそこにいる。
俺は美目麗しき妖精だと脳裏に叩付ける。
 今日も仕事を済ませなければならない。
小雨がチラついてる。
どんな日も俺はミサに出勤しなければならない。
台風の日もだ。
サボったことは生まれてこの方ない。
これをサボれば、この村に災いが訪れるらしい。
真相は謎だ。
しかし…両親からコンコンと言い聞かされてる。
 青いテントで純白なドレスと透明なベール。
それとファイクの花輪を頭にかざして…。
 泉の上へ架かる”関係者以外立入禁止橋”を渡る。
橋の下に映るターシャ泉は…夜で暗く…しかし、雨で水滴が揺れてる…。
雨音が深まっている。
小雨だが…傘がいるかもしれない…。
俺の周りだけ神聖な深い水色の光に包まれてる…。
外は雨で夜だし…視界は暗い。
 赤いテントがある…。
泉の中心地まで足を進める。
 今日は雨がチラついてる…。
髪が濡れた。
赤いテントにある、タオルで煌めく金髪を拭く。
客が少なければ幸いだ。
今は6時30分ぐらいか…。
今日も早めに訪れた。
 どうせ他に楽しみがある訳でもないし。
待ってれば…。
百日参りならぬ…10年近く参りする女はヤツだ。
と言うか。
今日も尋ねてきたことに驚いた。
報告でもしていく気なのか。

「今日もお勤めですか?」

 マナナの黒い瞳は輝き、上目遣いだ…。
肩揃えな黒髪は雨で若干濡れて、少しだけ水色セーラー服も濡れて…服が透けてる。
ブラジャーは見えそうで見えない…。
俺の瞳は暗い。

「えと…昨日は数学の問題、教えてくれてありがとうございます。
今日はお蔭で助かりました」
『…』

 俺から光る色が赤、紫、深い水色と変貌する…不思議生物ここにありって雰囲気ではある。
どう返事すればいいのか。
溜息が漏れた。

「泉の巫女様って素敵ですね。
発光して色が変わったり、綺麗なだけするだけじゃなく…。
数学の問題まで解けるのですね、もう感動して。
次は…英語の宿題でも…」
『ここは塾ではございません』

 俺の体から放つ光が赤になり、そこから紫になり…また深い水色へ移行する…。
 まだ開始30分前だ。
非情に慣れ慣れしすぎる。
こんなことをするのはマナナぐらいだ。

「いつ見ても…光り方が本当に綺麗ですね。
ここへ来るお客様全員が巫女様を見て癒され、喜ぶのも分かります。
見た目も凄い綺麗ですし…ずっと見てたくなります」
『…』

 俺は赤い後光に包まれてる…。
ユラユラ光り方が変わるクラゲのようだ。
まあ、人間には見えないだろう…。
鏡で確認しても自分でもそう感じてる。

「すいません。
入館料も払わず、会話だけ…。
お母さん辺りに何か頼みごとがあるか聞いてきますから。
やっぱり、私…思うんです。
泉の巫女様には不思議な力があるって…」

 俺の周囲に纏う光が赤から紫。
そして…神聖なる深い水色へと変わる…。
俺は発光体だ。
微妙に光ってる。
 今日、学校でキセキと付き合えた話のことだろうか。
それしかない筈でもあるが。
その話をすれば突っ込まれるに決まってる。
――――何故、知ってるのかと。
俺は寡黙を貫き通す。

『どこまで暇なんですか?
他にすることないのですか?』

 キセキのところへ行って来いと言う意味だ。
俺も業務妨害にもなってる。

「えと…。
家にいてもどうせ勉強なんて分からないし…。
ココにいた方が楽しいし…」

 こんな空気で衝撃発言ばかりだ。
もう頭が痛くなってくる。
 俺の周りに漂う光が黄色にもなり、緑にもなり、紫に変わる。

『好きな方とかいないんですか?
男性の…』

 知ってるが。
知らないフリをして語りかける。

「えと…その…」
『私にばかり絡まないでください。
私は神に仕える身。
あなたはその方の元へ走るべきです』

 正論だろう。
と言うかもう願い事なら今日、叶った筈だ。
これ以上、俺の元へ通い詰める理由もないだろう。
 俺に絡む発光が紫から…おごそかな深い水色になる。

「えと…。
どうなんだろう…あっと…」

 何だかはぐらかれてる。
まさか…あのあと、やはりすぐ振られたのか?
まあ、あり得るかもしれない。
この通り、マナナは性格が良いとは言い難い。
 俺から放つ光が深い水色から緑に変わり…紫へと変わる。

『失恋なさったのですか?
その言葉のよどみは…』

 またマナナに頼まれるかもしれない。
力を与えて欲しいと。
マナナに力を与えるのは気が進まない。
というか…俺の力は成功率ゼロに近くても6割程度にしか上がらないらしい。
効くのかどうかも不明でもある。


「えと。
あ…」

 マナナの頬が赤い。
これはどちらの意味なのか?
照れてるのか?

『私には関係のないことですね…』

 俺から出てる光が灰色だ…。
本当に俺は七変化の光を放つ不思議生物で、妖精そのものだ。
 俺は地面へ視線を注いだ。
溜息を吐いた。
空気が重すぎる。









小説目次




≪眼鏡ミルル≫


「異能マナナ」
…月神タリアの幼馴染


☆「王族レイカ」
…スピルチュアルの好きな女子大生

 
『月神タリア』 (女体化)

 
「灯台キセキ」
…タリアの親友

 
U難波カンサイU
…キセキを崇拝する女子

 
||大和ナデシコ||
…キセキを崇拝する女子






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