アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

ター シャ泉の巫女A

 

「私はキセキの顔が好みなの。
 それからキセキの方が優しいし…。
 何故か理由はないけどタリアは嫌いなの、昔から…。
 あんなヤツの友達、駄目だと思う。
 悪いのがうつると思う」
 
 この調子でマナナはキセキにベッタリ甘えてる。
 本当に言いたい放題だ。
 俺はこんな女、大嫌いに決まってる。
  マナナの成績なんてトコトン下がれば良い。
 人生もドン底に落ちるべきだ。
  そんなふうに感じて当たり前だ。
 
≪ミルルもキセキさん大好き。
 幼稚園時代にはね?
 キセキさん、女々しかったけど…最近、男らしく育ったし…注目してあげてるわよ?
 それから…ミルルは、マナナが大嫌いよ!≫
 Uウチもや、キセキくん好きすぎ!
 ウチは高校からの転校生やけど、愛だけは負けへんで!U
 ||あたしもキセキ君派…。
 中学で出会ったころから一目惚よ!
 キセキ君に!!
 日の浅いカンサイなんて敵として、お呼びじゃないわ?
 早く、月神君がミルルを落として…キ セキ君があたしに行くように祈ってるのよ!||
 Uなんやて?
 愛は月日の長さちゃうで!
 ウチは一生、キセキくんを愛してるでU
 
 女子4名、全員がキセキに引っ付く…高校生にもなって、それはないだろう?
 キセキをアイドルか・・何かと勘違いしてる、女子4名…ミルル、マナナ、ナデシコ、カンサイ…馬鹿すぎる。
 女子ども全員…キセキしか眼中にない。
  面白くはない…俺は本当にモテない…。
 臭すぎて、笑えない…。
 どっか、他でやって欲しい。
 なんで…朝から教室で、こんなアホなバトルがあるんだ?
 もう止めて欲しい…。
 
「マナナの好みは分かった。
 ミルルは…少しはタリアを見直してやれ、タリアもミルル大好き人間なのに・・・不憫になる…。
 まあ、タリアもマナナは嫌いみたいだからお互い様だな。
 タリアがミルル大好きなことは誰でも、もう知ってる…。
 しかし…僕は借りた本を返しに行くよ」
 「ちぇ…。
 私も付いていっていい?」
 ≪ミルルもついていく、キセキさんに。
 マナナなんて大嫌い≫
 UウチもキセキくんについてくでU
 ||あたしも…えと・…その…||
 「ついてきても良いけど。
 マナナはタリアと喧嘩するなよ。
 ミルルはタリアのこと、好きになってやれよ…僕からも言う。
 タリアってシャイだが…割りと良い性格してる。
 タリアの気持ちになってやれ…僕より君はタリアへ行くべきだ」
 ≪月神さんって暗いからちょっと…。
 キセキさん、友達に遠慮なんてしなく て良いのよ?
 ミルルはキセキさんが好きなの≫
 U今日こそ、アイツ…ミルルに何か言えるやろか?
 ミルルがウチのライバルから削除される日なんて来るんやろうか…。
 ウチ、応援してるのに…U
 ||無理じゃない?
 ミルル、好きな癖に…月神君って…あ たし、変わってると思う・・。
 本当に根暗なのは確かよ・・。
 そりゃ、あたしだって…ライバルなんて要らないわよ。
 ミルルは月神君へどうぞ、差し上げるわよ||
 
 ナデシコ、カンサイ、ミルル、マナナ…その他、このクラスの女子…全員、ほぼ…キセキのことだけらしい。
 俺は本当にモテない…。
 
「しないわよ。
 喋べる訳ないでしょ。
 私はキセキだけなんだから。
 無視するわよ、いつもどおりよ」
 
 マナナは地雷ばかりだ。
 キセキが俺の席へやって来る。
 マナナやミルル、カンサイ、ナデシコ、を引き連れて。
 女子4名が寄って来ると…声が甲高くて痛い…。
 全員、真剣にキセキを争奪しあってる。
 
「これ、借りてた”SF小説”だけど。
 面白かった。
 ありがとう…。
 僕もこのシリーズに興味が出た。
 今日こそ、ミルルに自分から声掛けろよ、タリア…」
 『そうか…』
 
 キセキとは、SF小説に関する話は…趣味が合う。
 さりげなくミルルの話題で茶化されてる。
 いつもだ、慣れてる。
 噂が流れた途端、余計に酷い。
 
「ねえ、私にも…キセキ、SF小説…貸してよ?」
 
 マナナがキセキに甘えてる。
 
『おまえに貸す本はない。
 成績馬鹿のアホ女。
 人生も没落すればいい。
 キセキも嫌がってる。
 自分の身分を弁わきまえろ、屑』
 
 俺も言いたい放題、この女を目にすれば言える。
 長年のノリってヤツだ。
 
「アンタに言われたくないわよ。
 キセキ…ねえ、この席から離れましょうよ?
 私…どうしてもタリアだけは苦手で…」
 『恋愛しか考えてないから成績も底辺だ。
 キセキはお前のことを嫌ってる。
 俺には分かる』
 ≪ミルルには好き過ぎて声掛けれない癖に…マナナと喧嘩けんかし てる。
 まあ、マナナって性格が最悪すぎだから…勝手に居場所とって・・≫
 Uほんまや、ウチを差し置いて、マナナは。
 ウチ、嫌いやで。
 月神君ってマナナとは幼馴染らしいな、だからそのノリなんやろけど。
 ミルルとも月神君って幼馴染らしいけど…照れてミルルには言い返されへん。
 それも理解はできるで…。
  まあ、マナナは要らんし、撲滅して良 いで…。
 二人、仲悪いらしいな。
 そこは評価したるわ。
 でも、ミルルに声掛けろよ、好きなら…呆れ るわ、ほんま。
 ウチ、ライバルとかホンマ、要らんから…。
 それにしても、キセキくん…本気でモテモテやわU
 ||いつもどおりね。
 でも、今日は大好きなミルルに…月神君っ て、挨拶ぐらいできるかしら?
 あたしには分からないわ…。
 ミルルが月神君へ落ちるようには…あたしも計らってるんだけど…。
 駄目なのかしら?
 今日も…||
 
 …俺は気弱だと女子4名…ナデシコ、カンサイ、ミルル、マナナから批判されまくってる…。
 
「まあ、マナナ。
 嫌なら少し離れてろ。
 僕はタリアと”SF小説”の話がしたい」
 
 嫌な雰囲気が流れる。
  ―――キセキは…溜息を吐いた。
  …常時、モテまくりの男だ。
茶髪はフサフサでサラサラとしてる。
色素の薄い茶色い瞳を細めてる。
「え?
 私…迷惑?」
 
 マナナは水色セーラー服を着てる。
  …正面からマナナは学ラン姿なキセキに引っ付いてる…。
 女子3人トリオのナデシコ、カンサイ、ミルルは…、横へそれたらしい。
 マナナの気迫に跳ねのけられたらしい。
 
「迷惑じゃない…。
 ただ、タリアといればマナナは喧嘩するだろう?
 僕…SF小説はファンで…」
 「キセキ…。
 私もSF小説、知りたいな…」
 「マナナにも僕から違う本なら貸すよ」
 『マナナは離れろ。
 どうせ付いていけない話題だ』
 「アンタなんて大嫌い。
 私とキセキの仲を引き裂いてる」
 『それは勘違いだ。
 俺はただおまえが嫌いなだけだ。
 見るのも醜いレベルだ』
 「まあ、喧嘩するなよ。
 はあ…家が近所なのに…。
 昔からこのノリか…ミルルに君は声掛けろ?
 大好きな癖くせに…」
 ≪ミルル、論外…。
 気弱な男、大嫌い≫
 Uほんま今日もかいな?
 好きな癖して・・ほら、しゃべろよ?
 ミルルにU
 ||いつもの光景だわ。
 ミルルの前で…固まり過ぎてる…月神君って||
 
 俺は…ミルルを含む女子3人トリオから更に批判された…。
  ナデシコ、カンサイ、ミルルの三人組だ。
 
「キセキ…えっと…。
 私と付き合ってくれるって話は…」
 「そうだな…。
 マナナの成績が上がったら考えても良いよ。
 僕、マナナのことは別に嫌いじゃないから」
 「嬉しい。
 ありがとう。
 醜いタリアとは大違い。
 やっぱり顔のいい人は性格まで良い。
 私の思った通り」
 
 俺は教科書を黙読した。
 本気で俺はモテないのにキセキは何人の女に言い寄られてるか…。
 教室では4名だが…。
 このクラスは……ほぼ女子全員、キセキ派に属してる。
 楽しくもない、学校なんて。
 
「まあ、頑張って今日こそ、君はミルルにアタックするんだな。
 僕は協力してやっても良い」
 ≪ミルル、こんなナヨナヨしたの好かないわ?
 マナナなんて大嫌い。
 ねえ、ミルルと付き合いましょうよ?
 キセキさん≫
 Uああ…やっぱ、無理やん?
 今日も月神くん、ミルルに言えへんの?
 告白しろよ。
 ウチ、キセキくんと付き合いたいわU
 ||キセキ君と交際するのはあたし。
 この月神君が…どうミルルを落とせるかが、今後の課題ね?||
 『うるさい…』
 「こんな席、去りましょうよ。
 私、目が腐るわ。
 ずっと…イケメンのキセキの顔だけ見詰めていたいから」
 『マナナは邪魔だ。
 去れよ、ボケ』
 「分かった。
 悪かった。
 ミルルのことは応援してる、君なら出来るはずだ…」
 
 茶髪茶眼長身系色男―――キセキへベッタリくっ付く…ミルルを含む女子3人トリオと…マナナは退散した。
 俺は深く盛大に溜息を吐いた。
 
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 高校は5時ぐらいに終了する。
 そのあと、ターシャ泉ミサ施設へ向かう。
 いつもの職場だ。
 本当に高校なんて面白くもない。
 最近は…このターシャ泉ミサ施設が俺にとって憩いの場所となっている。
  ターシャ泉の半径1kmへ行けば俺の体は女体化する…。
 深い水色の後光に包まれてる…。
 自分の体を触ってみる。
 胸が柔らかい。
 少しふくらみがある。
 俺は見た目がまるで"ミロのビーナス"そのままだ。
 胸を触ることは割りと好きだ。
  男の時は本当にモテない。
 俺なりに勉強も頑張ってるのに。
 俺なりに女子にもモテたいのに…。
  泉の近く、半径1kmに入れば…学ランはブカブカになる。
 近くに青いテントがある。
 泉の巫女しか入ってはいけないことになってるテントだ。
 そこで着替える。
 自分の体をそこにある全身鏡で確認する。
 持ってきた鏡で覗くことも多い。
 厳おごそかな深い水色の光に覆われた華奢きゃしゃな体 躯な"ミロのビーナス"誕生絵図に似てる。
  普段が男の体だからとても新鮮だ。
 俺は生まれてこの方、こんな特殊体質だが…。
 自分の成長曲線も分かる…。
 日々、この泉へ来れば女性の体へとなって行ってる。
 俺が3歳の頃は泉1km近くでは…3歳の金髪女児だった。
  俺は女性変貌時の体が好きだ。
 観察するのがと言う意味だ。
 触れば柔らかい。
 それから…この姿で女性達から言い寄られるのも好いている。
 ここは神聖なる地で…。
 奥深くの泉付近には女性しか来れないが…。
  男性も年に1度だけ姿見せされる。
 ターシャ祭の時だ。
 男性客はだいたい色目線で俺を追う。
 これは本当に嫌がってる。
  俺は女体化してる時も心はやっぱり男らしい。
 この役目も…もうすぐ落とされる…。
  ターシャ祭も、村が平和でいるように祈る神事だ。
 祟りが起きないことを祝う…。
 同じような役目だ。
 
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 青いテントへ進み、服は着替えた。
  泉へ足を伸ばす。
  ターシャ泉は生暖かい。
  俺の脚は女神級な白さだ。
  そこには赤いテントがある。
  ここに座れば…客が午後7時から勝手に来る。
 今日は早かったかもしれない。
 6時30分だ。
  暫く待ってると。
 午後7時10分前からマナナが来た。
 指定された制服。
 ――――水色セーラー服でだ。
 日々、ココへ昔からやって訪れる。
  俺が幼い頃からだ。
 
「泉の巫女様。
 今日もお願い、聞いてくれますか?」
 
 俺は緑色後光に包まれてる…。
 
『開演料を払って下さったら。
 聞きますわ』
 「今月、お小遣いがピンチで。
 ここ一回1000タ$だから」
 
 その変わり、効いてるはずだ。
 マナナは相談するだけで、力は貰わないことも多い。
 呆れてる。
 他にこんな客はいない…。
 因みに力を与える儀式…。
 多い日はさすがに疲れる…。
 精神的にか…どうか…。
 割りと客共は効いてると言う。
 
『自宅に帰って下さりませ。
  私もこれで生計を立てているので…』
 
 後光が赤に変わり…緑に変わり忙しい…。
 本当に世界ビックリ人間だ。
 妖精風な見た目より…これにビックリする客が多い。
 
「そんな冷たいこと言わず…。
 聞いてくださいませ。
 泉の巫女様…」
 
 マナナは信じられないことに…。
 開演料金を払ったことがほとんどない…。
 小遣いを毎回、使い果たしてないらしい。
 親から頼まれたときだけ、払ってくる。
 割りと効いてるはずだ。
 
『もうすぐお客様がお見えになられるので…。
 私は忙しいので…』
 
 俺は溜息を吐いた…。
 後光が赤に変わり…緑に変わる…。
 赤と緑は対立色だ…少しチカチカする。
 
「いつ見ても泉の巫女様は絵から出て来たように綺麗ですね…。
 それからその揺れ動くイルミネーションが…神秘的です。
 えっと…私の成績、あがりますかね?
 泉の巫女様がすごい能力者だと言うことは私、知ってます。
 昔…私の高校試験が合格したのも、きっとここで祈ってもらったお蔭」
 
 マナナはギリギリ合格してる。
 俺は溜息を吐いた。
 俺は…今、水色後光に覆われてる…。
 
『…』
 
 そこから口を閉ざした。
 
「えっと…私たち、友達になれませんかね?
 良かったらその…。
 同じ年ぐらいですよね?
 髪はどこの美容院を…」
 『気持ち悪いです…』
 「え?」
 『どうして成績が上がる願い事だけのために私の元へ毎日、通い詰めるのですか?
 他のお客様の迷惑です。
 家で勉強した方がきっと身のためですわ。
 何が目的なのですか?
 まさか…レズなのですか?』
 
 毎日、来られるのが困る。
 俺から放出する後光も赤や紫…水色とユラユラ揺れてる…まるで、光るクラゲだ、確かに…。
 俺はマナナは突き放すことにした。
 
「ええ…。
 そう言う訳では…」
 『営業妨害で訴えますわ。
 もうすぐ私の元へ悩める子羊が訪れると言うのに…。
 私も神に仕える身。
 しかし…一応、これで生計を立てていますの。
 帰って下さらないかしら?』
 「ごめんなさい…。
 その…。
 えっと…成績は上がりたいんですけど…。
 全然、集中力がもたなくて…。
 その…」
 『…』
 「泉の巫女様は高校には通っているんですか?
 やっぱり泉の下に住んでいるのですか?」
 
 後光が茶色に変わり…そこから黄土色になってる…。
 
『どうしてそこまで…成績が上がりたいのですか?
 私には分かりません。
 貴方のしてることが…』
 
 後光はそこから赤になり…そして水色になってる…。
  声が小さくなった。
 特に意味はない。
 聞こうかとも感じた。
 
「え…。
 その…。
 お母さんに叱られてて…。
 それもあるのですが…。
 お母さんが泉の巫女様と友達に私がなれると良いねって微笑んでて…。
 えっと。
 その…」
 『帰って下さい。
 もう開演ですわ。
 お客様が見えました…』
 
 後光も赤になったり…紫になったり…忙しい…俺はキラキラ光る妖精だ…。
 常にこれだ。
 今日来たお客様は…20代ぐらいな女性だ。
 
[雑誌にココが載ってって…。
 ここで力を与えてもらうと…ゼロに近くて叶いにくいことでも6割の確率で叶うって。
 わああ。
 ターシャ神に選ばれるだけあって信じられないほど発光してるレベルの巫女様。
 紫の光なんですね…光も不規則に変わるって雑誌にも載っ てました。
 まるで…ミロのビーナス誕生の瞬間絵図えずの ような美しさって雑誌でも書いてたけど…。
 想像以上!]
 
 そんなふうに載ってるらしい。
 まあ、そうだろう…。
 逆に言えば…。
 全員、叶いにくいことばかりしか…ココには願いに来ない。
 
『汝の願い事をどうぞ』
 [実は…好きな人がいるんです。
 もう婚約までしてしまってて…私以外の女性と…。
 何とか別れさせて私の方へ振り向けさせたいんです…。
 お願いします。
 村の女神様…世界の救世主様…]
 
 今回は本当に大変な願い事を…してきた。
 こんな雰囲気が割りと多い。
 女性はそうだ。
  ターシャ祭が開催された時に男性からされる願い事も出世目当てとか、そんな雰囲気が多い。
 
『分かりましたわ。
 汝に力を与えましょう…』
 
 俺は女性客を誘導し、手を取った。
 脳裏のうり一点に集中する…。
 これが結構疲れる…。
 そして、脱力する…。
 そうすれば…俺は体内から客へ力が流れるイメージが沸く。
 ただそんなフリをするだけだ。
  どういう仕組みか分からないが…。
 "ミロのビーナス"のような外見をしてる俺に、これをされた人間は…。
 マインドコントロールか理由は不明だが…結果的に、割りと効いてる。
 
[これだけですか?]
 『そうです…。
 でも他の方達も割りと効いてるみたいですので』
 [そうですか…。
 なんだか…勇気が沸いてきましたわ。
 私、頑張ってみます。
 ありがとうございます、泉の妖精…ターシャ神の巫女様]
 
 頑張る…ということは…。
 略奪愛をするということか?
 仕事も精神的に疲れる…。
 奪われた方はどうなるのか?
 と一瞬、脳裏に過る。
 
『幸運を祈りますわ…』
 
 隣でマナナが俺をじっと凝視してる。
 もう長年、幼い頃からこんな感じだ。
  後光も赤くなったり…紫になって…水色と動いてる。
 
[うわあ。
 光り方が本当に変わった…綺麗、ファンになりそうです。
 それでは…。
 これ、御代。
 泉の巫女さん。
 ありがとうございます♪
 また来ます]
 
『どういたしまして。
 またのおこしを…』
 
 決まり文句で代金、1000タ$を戴く。
 意外にしかし…疲れてる。
 次も客がいる…。
 
[ターシャ神の巫女様…。
 泉の妖精様。
 お願い事があるんですが…息子のことで…]
 
 次は中年の叔母様だ。
 前も来てた。
 常連になる客も多い。
 こんな感じで業務は続く。
 隣にマナナは黙ってまだいる。
 俺はもう本気で早く帰って欲しいが…。
 今、緑の後光に覆われてる。
 
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 
 今日は5人…訪問した。
 夜9時になれば…やっと解放される。
 5人来た辺りから今日は暇だ。
 それでも俺は、ミサで読書する暇すらない。
 村の守り人としてだ。
  マナナが…今日は帰ってくれない。
  全身から黄色発光してる。
 
「泉の巫女様がどこへ帰るのか…今日は確認しますわ。
 えっと…。
 泉の巫女様…。
 もう私、10年は通ってるので…。
 今日こそ、お友達に…」
 
 この10年間、ほとんど成績アップの願い事だった。
 
『…』
 
 喋る気力も沸かない。
 今日は一番客の20代女性が一番若かった。
 たまに中学生くらいな子も訪れることもある。
開店が夜7時から9時だから、さすがに小学生は来ない…。
  マナナ以外で高校生くらいな可愛い子が来たときは一番、テンションも上がる仕事だ。
 俺も高校通ってるからだ。
 
「えっと…。
 私のこと、嫌ってるのですか?
 私、スピチュアルは信じる方で…。
 それで…えっと…。
 泉の巫女さんっていつも凄いなって」
 
 ストーカーも同然だ…。
 
『そこまで成績が上がりたいのなら神頼みなどおよしなさい。
 自宅か今、ここで勉強でも始めなさい』
 
「良いのですか…?
 ここで勉強しても」
 
 失言した気がする。
 
『自宅へ帰りなさい。
 ココでは許しません』
 「あの…泉の巫女様って…。
 勉強とかはしてるのですか?
 やっぱり泉の下に暮らす妖精さんなのですか?
 夜の闇に光る巫女様は本当に綺麗。
 見惚れちゃう。
 えと…数学や英語って分かりますか?」
 
 イラついた。
 俺を覆う光が…赤、紫へと変わる。
 
『お願いです。
 お帰り下さい』
 「えっと…。
 この問題なのですが…。
 数学2B って分かりますか?」
 
『…』
 
 俺は今、緑の光に覆われてる。
 いつも七変化に俺の体から出る光は・・クラゲ風に変わる。
 本当に職場から出たい…。
 まだあと30分も残ってる…。
 今、8時半か。
 
『私にこれから先ずっと忠誠をつかわせなさい。
 今、私に土下座をしなさい。
 そうすれば…一問だけ数学の問題を解いてあげましょう』
 
 相変わらず、後光は赤、紫、ピンクに変わってる。
 苛めようかとも感じた。
 
「え?」
 『出来ないなら帰って下さい。
 本気で営業妨害として訴えます。
 毎日、私は嫌がってます』
 
 これも真実だ。
 俺の肌から出る発光色素が赤、紫、ピンクへと順番に変わっていく。
 マナナは顔をポカンとしてる。
 まあ、数学の問題ぐらいで土下座は普通、しないだろう。
 要するに帰れ邪魔だ、ということだ。
 しかし…。
 
「お願いします。
 一問、解いてください。
 泉の巫女様」
 
 お前は大道芸人か?というノリで…。
 突然、夏服水色セーラー服姿で、地面にオカッパ頭な黒髪を付けてマナナは土下座をした。
 俺もそんなことをされれば、逆に反応に戸惑う。
 俺から放つ光が赤、茶色にユラユラ光ってる。
 
『…』
 「どうしてもわからないのです。
 私の頭では解けないのです。
 泉の巫女様の力が欲しいのです」
 
 開演料も払わず…よく言う…。
 後光が赤、緑に変化していく…。
 
『…』
 
「この問題なのですが?
 分かりますか?」
 
 マナナの黒い瞳が上目遣いだ。
 じっと…問題を見詰めた。
 悪いがすぐに解き方が分かった。
 そこまで難しい問題ではない。
 例題@に近い。
 俺から放つ光が黄色になる。
 …本当に、俺はいろいろ光り方が変わる珍妙な生物だ。
 お蔭で客も大勢来る。
 
『…』
 
 えっと…口でダメなら…。
 文字でも…。
  筆跡でバレそうだ。
 まあ、マナナが俺が書く筆跡を知ってる訳なんてないが。
  俺は仕方なく、口で回答することにしてやった。
 
『この問題は…』
 
 マナナも土下座までしたからだ。
 一問くらいなら許してやろうと思えた。
 マナナは黒目を輝かせた。
 
「凄い、泉の巫女様って…顔が良いだけではなくて、不規則な色へと光るだけじゃなくて。
 数学の問題まで解けるなんて、凄すぎる。
 えっと、泉の巫女様は…普段何をされてるのですか?
 そもそも人間なんですか?
 今も綺麗にユラユラ光ってる…」
 『…』
 
 俺から発光する光がピンク、赤、オレンジと忙しい。
 海のようにユラユラ揺れ動くイルミネーションが俺の売りだ。
 雑誌でも紹介されてる。
 そのお蔭で"泉の巫女"と信じて疑わず、"泉の下で暮らす妖精"だと思われてる。
  しかし…ここら辺、全く言う気にならない…。
  時計を見れば…やっと、9時だ。
 解放される。
  俺は…テントは出ることにした。
  俺は緑光してる。
   …髪も緑みかかった金色になってる。
 体もだが…。
 髪色も発光により微妙に色が変わってる。
 
「泉の巫女様…えと…」
 『ここから先は私にしか通ってはいけない。
 関係者以外立ち入り禁止区域ですわ。
 お帰り下さりませ』
 
 俺は俺用に用意されてる細道を通った。
 白いドレスを翻ひるがえして…泉の向こう岸に は…青いテントがある。
 それも…関係者以外立ち入り禁止区域ではある。
 
「そうですか…。
 それでは…。
 また明日。
 私たち、友達になれますか?
 えっと…数学の問題、教えてくださってありがとうございます。
 巫女様の光り方ってクラゲに例えられるけど…花火やネオンにも似て…本当に綺麗…」
 
 マナナはとても嬉しそうだ。
 俺の体も赤、桃色、オレンジ、黄色とせわしない。
 このお蔭で、誰もが普通の人間とは思わず、別世界から来た妖精扱いだ。
  俺は横目で眺めて…そっと…退散した。
  泉の向こう岸は割りと遠い…。
  泉の上は…関係者以外立ち入り禁止と書かれ、白い橋が架かってる。
 ターシャ泉には、空に浮かぶ三日月が反射して、映ってる。
 もう夜も深い。
 俺の体は…黄色に光ってる。
  500m〜1q程度ある…。
  そこまで進めば、マナナの姿はもう見えない。
  6畳しかない青い鉄筋で出来た高床式テントに入って…白いドレスを脱ぐ。
 女の体だ。
  ここには全身鏡もある。
  そこにうつる俺は…華奢な"ミロのビーナス"で…桃色に光ってる。
 金髪もピンク味が差してる。
 海洋生物が発光する色に似てる。
  それから…。
 5000タ$が入った封筒を手にして…学ランに着替える。
 まだ…俺の体は女性だ。
  しかし…青いテントから数メートル離れれば、そこが泉の端から1km境だ。
  俺は女から男へ体が戻る。
 毎回だ。
 もちろん、光らなくなる。
  いつも通り、鞄を手にして…自宅へ向かう。
 帰宅すれば…数学の宿題をするつもりだ。
 マナナの前で一問、解いたが…。
 アイツも全部、宿題は…キセキ辺りに聞けばいいのに。
 キセキは今頃、塾だろう…。
  俺だけ忙しすぎて通えない。
 俺の家へ課せられた宿命だ。
 俺は溜息を一回、吐いて…自宅への道を進んだ。
  明日もどうせ、俺はマナナと喧嘩するだろう。
 そんな運命にあるんだろう。
  俺はアイツは大嫌いに決まってる。













目次









≪眼鏡ミルル≫


「異能マナナ」
…月神タリアの幼馴染

☆「王族レイカ」
…スピルチュアルの好きな女子大生

 
『月神タリア』 (女体化)

 
「灯台キセキ」
…タリアの親友

 
U難波カンサイU
…キセキを崇拝する女子

 
||大和ナデシコ||
…キセキを崇拝する女子




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