アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

ター シャ泉の巫女@




俺は月神(つきかみ) タリア17歳。A型。
普通に高校へ通う男子高校生だ。

クラスではきっとあまりモテてないと思う。
他人からよく() えない容姿と(ひょ う) される…あと、(しゃべ) るのが猛烈に苦手だ。
これは俺の家系は全員、そうらしい…ある意味、個性だ。


今日は祝日で日曜日だが…俺に休みはない。
今、夜6時頃だ…。

||「タリア。
今日も…行くでしょ?」||

母さんだ。俺の母さんは俺には甘く、優しい性格だ。

||「今年…17歳になるのね…。
毎年、連日、よく頑張ってるわ。
あなたはターシャ村のために…」||

『…』

||「ターシャ泉へ行く時間よね?
今日もターシャ泉へ…。
夜、7時から9時はミサに出席をお願いね。
母さんも一緒に行った方が良いかしら?
今日は少し…用事があるけど…」||

『良い。
俺だけで行く』

||「そう…。
ウチの家も本当に大変な役目を背負ってるわ。
何もタリアに全てを任さなくても」||

『…』

||「あなた、眼鏡(めがね)ミルルちゃんって子 が好きらしいわね。
タリアの 幼馴染(おさななじみ)、キセキ君から聞いたわ よ…。
タリアにはもう既に許婚(いいなづけ)がいるの よ?
タリアが勉強、頑張った暁には…タリアが20歳ぐらいで面会する話になってるけど…。
ミルルちゃんはどんな子なの?」||

俺は…。出発することにした。
いつもどおり…学校帰りはターシャ泉へ。
実家はターシャ神社で、ターシャ国立自然公園の中にある。
そこから…少し歩けばターシャ泉と言う世界遺産にも登録された泉がある。
俺はただ、(かばん)を置きに帰宅しただけだ。

『…』

||「タリア…。
辛いでしょ?
アナタも…。
アナタのお父さんの…お姉さんも同じ役目だったけど…。
一度、眼鏡(めがね)ミルルちゃんって子紹介して ね…モデル体型の長身美人さんらしいわね。
キセキ君から聞いたわよ…。
頭脳明晰(ずのうめいせき)で、しっかりした子み たいだけど…宗派は何なの?
タリア…」||

『行ってくる、母さん』

||「行ってらっしゃい。
タリア」||

俺は…実家がターシャ教神社で、屋根には十字架もある。
門は赤い鳥居だ。
黒い玄関の扉には…ターシャ教が示すシンボル…右半分がオレンジ色で笑顔、左半分が紫色で泣き顔…そんな鬼面(お にめん)模様が描かれてる…。
宗教画もたくさん飾られてる。

時刻は6時だが、まだ外は明るい…。
少し、空は(あかね)色になって来つつある。


俺は…もう生まれてからずっと、ターシャ村が平和であるために犠牲(ぎせい)と なってる。
これは慣れっこでもある。
今日もターシャ泉へ俺は向かう。
連日の行事となってる。

俺が暮らしてる家は、ターシャ国立自然公園に複数ある…神社の一つだ。
もちろん、ターシャ教を(たてまつ)ってる。

家から少し行った先に"ターシャ泉"がある。
結構、広い湖だ…遠浅な青い泉だが、中心が沼地になってるらしい。

ターシャ泉は、現在…女人しか入れない神聖地だ。
年に一度、開催される"ターシャ 祭(まつり)" だけ、男女ともに通過が許可される。

☆☆☆

ターシャ泉へ近付けば…半径1qから俺の体つきは変わる。
俺は人と違う。
これは…俺の血筋…月神家(つきがみけ)、第一子 はこんな感じだ。

18歳までは…ターシャ泉付近…半径1kmで性転換する。
男から女へ変わる。

ターシャ泉、東の関係者以外立ち入り禁止地区に、青いテントがある…。
6畳一間だ。
着替えるだけに存在するスペースだ。
一応、屋根は鉄筋だ、高床式で見た目以上に頑丈だ。
これも重要文化財らしい…。

俺は青いテントへ入り、着替えをする。
そこにはクローゼットがある。
"ターシャ泉の巫女"で装備する衣装が、入ってる。
手前に鏡台もある。
そこで…姿を確認すれば…俺は青い光にまとわれた天女そのモノだ。
天使や"ミロのビーナス"…そういう妖精的な(たぐい)の 生き物に見える…。

もうすぐ夜7時だ。
それまでに用意しなくてはならない。

ターシャ泉は浅い。
(たけ)はせいぜい足が浸かる程度な湖だ。
そこで足を浸す。

俺は今、髪が長い16〜17歳程度の女だ。
華奢な白い服を着てる。
髪はオレンジと金色の間で星のように輝き…。
体は華奢で…人形とはよく言われる…。
"ミロのビーナス"にソックリらしい…あれより華奢な手足かも知れない・…。

誰が見ても"泉の巫女"にしか見えないだろう。

俺の普段は…髪は黒髪短髪の普通の男だが…。
ターシャ泉前では・…色素が薄い肌に、色素が薄い淡い金髪に、瞳からもほとんど色が消え青くなる…それから女性の体だ。

俺は天へ向かって祈りを(ささ)げる。
村が平和でいるようにと…。

そこへ女性たちがやって来る。
ここは女性しか来てはダメな神聖な湖だ。

「ターシャ泉の巫女様。
会いたかった…」

顔を真っ赤にして…瞳まで輝かせて…俺へ近寄って来る…。
熱烈に、"ターシャ泉の巫女"ファンらしい…。

これは、俺が所属する学校に通うクラスメイトの女子だ。
名前は異能(いのう) マナナ。
見た目は普通の女子だ。
顔に特徴なんてない。
肩で切り(そろ)えられたオカッパな染めてない 黒い髪。
それから…まあ、スタイルは良いかもしれない。
華奢と言うか巨乳だ。

俺は"ターシャ泉の巫女"姿では華奢(きゃしゃ)な" ミロのビーナス"体型だが。
マナナは肉感的だ、年中ダイエットしてるらしい…。
ダイエットするなら、お菓子を食べるな…とは言いたくもなる…。

目鼻立ちもまあ良いのかもしれない。
しかし性格がダメ過ぎる…もう最悪も良いところだ。
クラスでは割りと男には好評だが俺は大嫌いだ、ずっと本気でドン引きしてる。

クラスではとても仲が悪すぎて…仕方ないが…。
俺がターシャ泉の巫女であるとき、異常に接近してくる。
どうも"ターシャ泉の巫女"を崇拝してるらしい。
俺の正体には気が付いてない。
俺は今、黄色い後光が差す"泉の妖精"だからだ…華奢な金髪碧眼系女神に変貌してる。

『…』

俺は、いつも通り無視する。

俺はクラスで…マナナが大嫌いで通ってる。
それから、マナナと正反対なミルルを好きだと言う噂が流れてしまってる。
噂と言うものは…一度、口にすればすぐに流れるモノらしい…。

☆「ターシャ泉の巫女様。
マナナのことなんてどうでもいいわ。
私と話してくれる?
えと…もうすぐ試験なんだけど合格するように祈ってくれるかしら?」

今日、お祈りに来た。
お客さんらしい…。
マナナもよく来てるが…このお客さんも数回目だ。
俺より2歳上で19歳の女子大生らしい。
髪は茶髪で胸元ぐらい…。
服は普通でピンクシフォントップスに…下はデニムのスカートだ。
スピチュアルが大好きらしい・・・。
週に1度、巫女様姿へ変貌した俺からの祈祷(きとう)を 求めて…訪れる程度の固定客だ。

『祈ってあげましょう…。
汝に幸せが訪れるように…』

☆「ありがとうございます。
本当にいつ見ても女目線でも()()れ する美人だわ。
ターシャ泉の巫女様って。
さすがターシャ神に選ばれるだけあるわ…。
私とは格の違う人間って感じね…」

他にもいろいろな人たちが、俺が出勤する赤いテントへやって来る。

[もうすぐ娘に子供が生まれて来る予定です…。
その時、安産でいてくれるように祈ってくれないでしょうか…。
ターシャ神に選ばれたターシャ村の巫女…ターシャ泉の妖精様…。
私に力をください。
お願いします…]

今回は中年の太っちょな叔母様だ。

『お祈りいたしましょう。
心を込めて』

正体がばれない様に。
今だけは女言葉をつかってる。
体も女に変身してるから…声も女声だ。
"ターシャ泉の巫女"とは…村にとって、(ささ)げ モノみたいな儀式だ。
俺は…この役目…嫌がってる。

"ターシャ泉のミサ"へ村の女性たちは頻繁に来る。
ここで心を洗うらしい。

他村からも…世界中から女性たちが…俺がいる"ターシャ泉ミサ仕事場"へ悩み事だけ吐き捨てて行く…。
俺はターシャ村のために…。
必ず、どんな日も…。
台風が来たとしても…。
熱が出ても…。
夜7〜9時はココに立たなければならない村の守り人だ。

一番、最初に来た客・…マナナは、俺が会話しないことを…今日も(あきら)め たらしく、去って行ったらしい。
肩で息を吐いた。
マナナの姿がミサ施設内に見えない。
一端、外へ行ったのかもしれないし…勝手に帰ってくれたのかもしれない。

どうせ好奇心目的なんだろう。
アイツがする悩みは毎回…テストの点数が上がりますように。
それぐらいだ。
俺に祈る暇があれば…家で勉強をすれば良い。
俺は勉強する時間まで、ミサで奪われてる。
これが…俺の家に掛けられた…呪いだ。

「ターシャ泉の巫女様。
私と友達になってくれます?
同じ歳ぐらい…ですよね?」

『・…』

そこで不意を突いて、肩揃えな黒髪に低身長巨乳系女子…同じクラスメイトなマナナが、俺へ近づく。
どこかに隠れてたらしい、マナナは時々…こういうことをして面白がる。
人の反応が見たいらしい。
俺の後光が赤く光り…それから紫に変わる…そのあと緑だ。

今日は日曜日だから…マナナは私服だ。
ラフな服だ。
白いシフォン調丸襟(まるえり)ワンピースの胸元 から…乳房の谷間が(のぞ)いてる…。
マナナの肩揃えな黒髪が揺れて…上目遣いで、黒い瞳は潤んでる。

マナナの今の服…俺が今、着てる服に似てる…。
わざわざ似た洋服を選んだのか?
まさか…。

『…』

俺はガン無視だ。
俺は今、ターシャ泉の不可思議な力で性転換をし…金髪美人に化けてるが。
マナナは好きではないからだ。

「本当にいつ見てもターシャ泉の巫女様は綺麗ですね。
私も尊敬します。
毎日、ここでお祈りを…村のためにしているんでしょ?」

『…』

本当に馴れ馴れしい。
俺の後光が…赤に変わり…緑にもなり…濃い紫へと変わる。
俺はまるでクラゲみたいに後光が変わる…見た目が妖精の不思議生物だ。
俺は溜息(ためいき)()い た。

「美しい金の髪に白い肌。
金髪美人ですね…体全身から出るランダムな光り方も本当に綺麗…。
さすが泉の妖精って感じです…夢のような美しさ。
家はどこなんですか?
やっぱり…泉の下なんですか…?」

呑気に聞いてくる。
俺に存在する後光は今、緑色だ・・・。
この後光が珍しく…リピートする客も多い。

『私は忙しいのです。
今、構っている暇などございません。
他にお客様がたくさんいらっしゃいますから』

早く帰れ、去ってくれ。
と言う意味だ。
ずっとこんな感じだ。

「そうですよね…。
お仕事の邪魔したらダメですよね…。
私、機転が効かなくてすいません…」

マナナは肩揃えな黒髪を振動させて…困ったような表情だ。
黒目を左右に動かして上目づかいに伺い見てる。
マナナが着てる白いワンピ丸襟は胸元が大きめに開いて…谷間が覗いてる。
マナナの私服は露出が激しめなものが多い気がする…。
これは気のせいで、流行ってるからなのかもしれない…。

俺はマナナは嫌いだ。
顔も見たいとも思ってない。

今、赤い後光に包まれてる…それから紫にも変わる…。

冷たく睨んだ。

「ごめんなさい。
邪魔して…。
私の家のお母さんもターシャ泉の巫女様のファンで…。
毎回、聞いてるのですが…お名前ってあるんですか?」

『…』

俺は一切、無視して次の客へ会話する。

『来てくださってありがとうございます。
今日の御用件は何でしょうか?』

[良いのですか?
隣の女の子…。
何やら…ターシャ泉の巫女様に話しかけていますが…。
先に私が語りかけても…]

『良いですわ。
私は…なんびとにも平等ですから…』

今日は特に人が多い。
10人ぐらい捌いたら帰れると思ってたのに…。
今、金髪美女に俺は変身してるが…溜息を吐いた。

「私、帰ります…。
また明日も来ても良いですか?
私のテストの点数、上がりますか?
ターシャ泉の巫女様には特別な力があると…村の人から聞いてます。
友達になれたらなあ…」

マナナは隣でまだウルサイ、ずっと執拗(しつよう)(から) んで来る。
仕事が他の客へやりにくい、営業(ぼう) 害も良いところだ。

『要件をお願いします。
ミサは時間が決まってるので…』

[えっと…夫が病に伏せていて…。
それで…病が治るように祈ってもらいたいのです…。
お願いします…。
ターシャ村の泉に住むという…神々しき巫女様の力を借りれば…。
万事治ると聞いて遠方からやって来ました。
それにしても本当に…妖精のようですね。
肌が光ってると言うか…]

『分かりました。
手を差し出してください。
私が力を与えます』

これは本当に力を与えてるか謎だが…決まり文句だ。
割りと何故か俺の元へ来た客はこんな感じでも、マインドコントロールか仕組みは謎だが…。
御利益は(もら)えてるらしく…再度、効いたか ら訪れる人間が多い。

[力がみなぎるようですわ。
また…何かあったら来ます。
遠方ですが…効きそうです。
巫女様の光る手から…私の元にパワーが沸いてきた気がします]

肩揃えな黒髪、白いワンピに巨乳低身長な女子――異能(いのう)マ ナナは…帰って行ったらしい。
俺の後光が青い…そこから水色に変わる…。
この後光が効いて…誰もが妖精と信じて疑わない…。

俺は溜息を吐いた。
今日の顧客名簿(こきゃくめいぼ)リストを眺め た、あと…6人も今日は客がいるらしい…。

☆☆☆

俺は6人は捌いた。
寄付も貰えるが…これが俺の家にとっては収入源にもなる。
俺の家は実家がターシャ国立公園内にあるターシャ神社だ、立地条件はミサ施設の隣にある神社だ。
しかし…"ターシャ泉の巫女(みこ)"が俺である ことは町中に黙ってる。

もうそろそろミサが終わる時刻で、夜9時だ。
これのせいで塾すら通えない状態だが…学校で全て覚えてる。
頭は悪くない。

ミサが終われば…真っ先に家へ帰って課題を終えなければならない。
宿題も山積みだ。
ターシャ泉…付近にある青いテントで着替えを済ませ…。
ターシャ泉から1km離れれば俺は男へ戻る。
俺は今日、日曜だから私服だ。
上は青いチェックのボロシャツ、下は普通の長ズボンだ。

父親は今頃…寺で神仏に祈祷してるだろう。
町が平和であるように…。

☆☆☆

自宅へ到着する。

『母さん、ただいま』

||「おかえりタリア。
今日は何人、お客様が?」||

『31人…』

||「それは多かったわね?」||

日曜は(かせ)ぎ時だ。

『これ、寄付』

||「ありがとう…」||

こんな日常だ。

『もう二階上がる。
夕飯、部屋まで持ってきてほしい』

||「分かったわ。
母さんがあとで持っていくから。
タリアは本当にミサに毎日通ってくれて悪いわね…。
学校の宿題もあるんでしょ?||

『…』


||「そう言えば…。
タリアが通う学校の生徒が…タリアは眼鏡ミルルちゃんって子が好きって…ウチの家に面する道の前で(う わさ)してたけど…アレ本当かしら?
さっきも話したけど、タリアの幼馴染…キセキ君から詳しく聞けたわ。
それにしても…息子の成長は早いモノね…。
絶対、眼鏡(めがね)ミルルちゃんって子、母さん にも写真で教えてね。
ウチの月神家(つきがみけ)(よ め)に来るかもしれない子なら尚更(なおさら)ね…」 ||

『…』

返事はしない…。
俺は毎日、本当に忙しい。

学校では何とか上位をキープできてる。
俺は人並み以下の顔立ちな男だ。
きっと、"ターシャ泉の巫女"姿は普段と比べて、数段容姿が良いだろう。
あれは神がかり級な美貌でもある。
俺は特異体質だ。

"ターシャ泉の巫女"姿へ変貌するために…美貌を全て奪われたと嘆くレベルに、俺は見た目に自信などない。
同じ高校へ通う親友の灯台(とうだい) キセキが羨ましすぎる、もうホストへ行っとけよと皮肉を言いたくもなるが…。
キセキの隣で歩けば…女はだいたい、隣のキセキしか見ない。
もう長年、そんな感じだ。

しかし…ヤツはああ見えて真面目だ、多分、そんなとこでバイトなどしないだろう。
キセキは…俺がターシャ泉の仕事をしてる時間に…塾へ通ってる…。
俺は…任務を下りられないことになっていると言うのに…。

自分でもターシャ泉へ近づいて泉に映る自分の姿を見て…。
ギリシア神話級な姿だとは…子供時代に思った。
お蔭で客は寄って来る。
大儲けにはなっている…。

誰もが村に現れた泉の妖精と思って疑わないからだ。
しかし…絵画より更に線が細い。
あまり人間味がしないのが難点だ。
妖精には陰毛がないのか…。
今、17歳に近いが…まだ女体で生理はない。
逆に助かってる。
18歳で任期を迎える瞬間、最後までないのかもしれない…。
女体化と言っても元のDNAは男だ、これも不完全変態に近いのかもしれない。
普通の女には興味ありまくる。
背だけが伸びて少女めいた体躯になってる…。
2次成長がないまま、男なのか女なのか分からないまま、サオ竹のように背が伸びた天女ではある…。
自分が変貌する女体にも不満がある。

やはり元のDNAが男だから、幾らなんでも…完全に女へはなれないのか?
俺は女になって胸を揉みまくりたいと言うのに…。
陰毛すらない、腋毛(わきげ)すらない。
全身毛すらない…。
ちょっと幻滅してる…。

マナナは嫌いだが。
女子大生や可愛い子が来たときは内心、喜んでる。
俺にも下心はもちろんある。
それを出さないように女言葉は使い分けてるが。
小さな楽しみにもなれてる…。

俺は二階の机で溜息を吐いた。
それから瞬きをした。
"ターシャ泉の巫女"も…俺は16歳…今年17歳になるが…誕生日はすぐだ。
来年18歳には下ろされる。
最初は嫌がってたが。
不思議な感覚だ。







月曜日になる。

俺は学校が好きではない。
学校では成績が悪くないが。
楽しみなどないからだ。

学校に到着する。
昨日、必死で課題は終えた。

学校へ着けば。
俺が昔から交流してる男――灯台(とうだい) キセキと目が合う。
コイツも成績は悪くない。
そこはどうでも良いが…。
コイツは遊び人風の容姿でもある。
しかし内面は普通だ、でも上から目線だ…最近。
大昔、幼稚園時代には…コイツ、女によく間違われて、泣いてた癖に…今は女からモテるから…生意気になって来てる…。
余裕のノリだ、ムカつく。

長身な体躯の男子で、白い肌に茶髪と茶目だ。
キセキの茶髪は生まれつきだ、染めてる訳でもない。

「よう、タリア。
今日こそ、ミルル落とせると良いな…」

キセキ…腹が立つが、コイツの方が容姿が良い。
女からモテてる。
俺は並み以下だろう…。

≪無理に決まってるわ、ミルルはキセキさんが好きなんだから。
月神さんなんて…いつもミルルの前で固まってばっかり情けない≫

眼鏡(めがね) ミルルだ…。
俺がクラスでミルルを好きと言うのは…もう全員からネタにされてるらしい…。
モデル系スレンダー長身…髪が茶髪ストレートロング…眼鏡系インテリ女子だ。

||本当よね…もう小学時代から月神君ってミルル好きな癖に、声も掛けられないなんて。
えっと…月神君とミルルって、幼稚園時代から親交があるんでしょ?
どれだけ根暗なの?
月神君…||

ミルルの友達、大和(やまと) ナデシコだ。
身長普通、体重普通、黒髪、前髪パッツンロング、純和風顔だ。

Uウチもさすがにコイツのこと、呆れてる。
ミルルにアタックすらできひんの?
こいつ…。
ウチはな、応援してるねんで!
だって、一人…ライバルが減るやろ!
頑張れよ、月神くん!
ミルル、好きやったら…男らしくアタックぐらいしろや!U

難波(なにわ) カンサイ…転校生だ。
黒髪ツインテールで、声が高い超ロリ体型だ…。

ミルルもナデシコもカンサイも…女子三人とも…キセキにベッタリだ…。
今日もか。

『キセキか…』

いつも通り…俺はキセキにだけ…声を掛ける…。

灯台(とうだい) キセキは俺の幼馴染だ…一応、親友と言う認識だ、クラスでは…。
コイツは、ホストになれそうな雰囲気でもある。
巷で女子たちが王子様みたいだと噂してたのを聞いたことがある。
ハッキリ言えばムカつく。

俺の親友、キセキは異常にモテすぎる男子で…この通り、毎朝…実に4名の女子からアタックされ続けてる。
お蔭で耳も痛くなるし…誰か一人に絞って欲しい。
それに反して、俺はモテた経験もない。

毎朝…声が甲高くて大変だ。
その・…キセキを慕う女子4名の中に、俺と幼馴染の女子…眼鏡(めがね)ミ ルルと異能(いのう)マナナも入って来てる。
他の女子、大和ナデシコと難波カンサイからはオマケみたいなものだが…キセキへの熱が凄い。

会えばこんな感じで、ミルルのことを全員にカラかわれてる…。
俺はクラスでも町内でも…眼鏡ミルルのファンだと流れてしまってるからだ。
どうでもいいことだ。

もう"ターシャ泉の女"で生きる方が良いのか?
と思うレベルに女体化してるときだけ、俺は女神級の美貌でもある。
しかし…まあ、オトコを好きになることは無理だ。
俺は女好きだ。
しかし…その女共ですら"ターシャ泉の巫女"の時だけ優しすぎる。
だいたい、俺の美貌を褒めてくる。
もう、あのまま一生あの役で良い気もするのも…本音だ。
それも18歳にその能力は失われるらしい。
18歳越えたら…俺は18禁の店に通わないと女に無縁な運命なのかもしれない…。
少し自虐的になってた。

俺はドッカリと自分の机に座った。
この席は俺の陣地だ。

俺は教室でコンプレックスだらけだ。
今日もキセキを見てる女たちの多いこと…。
と言うか…誰も女子が俺を見てない。
視線を感じるが…男子ぐらいだ、まあ…挨拶のノリだ。
今日こそ、ミルルを落とせるか…男子ども懸けてるらしい…。
俺は男子からも…ミルルにアタックが出来なくて気弱だと…レッテルを張られてる…。

幼馴染なのに何だ?
この格差は。

「キセキ!
おはよう!」

俺が座ってる席から・…。
オカッパな黒髪に巨乳低身長なマナナが…茶眼茶髪長身男、キセキへ引っ付きに行ってる様子が見える。
これも日常だ。

「キセキ!
勉強、教えて。
私、成績悪くて。
数学解けなくて」

自分で解けばいい。
朝から学校では、青春ドラマが流れてる…。
俺はモテないのに、親友のキセキはモテ街道まっしぐら最前線だ。

「おはよう、マナナ。
仕方ないな。
僕で良ければあとで教えるよ」

≪何言ってんの?
この女、ミルル…ムカつく!
慣れ慣れし過ぎでしょ!
キセキさん…?
マナナにだけ甘いけど…これはどういう意味なの?
ちゃんと説明してちょうだい≫

U確かに、ウチも嫌いやわU

||あたしを差し置いて…キセキ君に・・・||

キセキを崇拝する女子3名…ミルル、カンサイ、ナデシコが怒り出した。
ミルルの一人称は…昔からミルルだ。

モテ男―――キセキはこの通り、マナナへ一番…甘く、毎朝…宿題を丸写しにさせてる。

それを他の女子3名、ミルルとカンサイとナデシコが………楽しく思う訳もなく、今ではトリオを結成して・・毎朝、宿敵のマナナと激闘を交わしてる。

俺だけ放置されて…親友のキセキを巡って、女子4名は毎朝…アホらしい戦いをしてる。

「キセキ、優しい。
大好き。
不細工なタリアとは大違い過ぎる」

俺はマナナほど嫌いな人間はいない。
いつも…俺がターシャ泉付近で性転換をして、巫女様姿(みこさますがた)―――金 髪碧眼華奢女神(きんぱつへきがんきゃしゃめがみ)に変貌してる時は… 営業妨害ばかりだ。
クラスではこの通り、俺への誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)が 凄すぎる。


マナナは女子3人…ナデシコ、カンサイ、ミルルを避けて…茶髪茶眼(ちゃぱつちゃがん)長 身体躯(ちょうしんたいく)なモテ男―――キセキへ接近しに行って る…。

キセキは…毎日、青春日記かよ。
(みにく)い。
俺は一人、教科書でも読んでる。
次の時間、テストがあるからだ。

「ちょっと、その前にタリアに返さなければならないものがあって…。
前、借りた本返すから…マナナ、待ってくれないかな?
ミルル、君は…タリアの方へ行くべきだ。
君がこっちに来ると…僕はタリアに恨まれる。
タリアはもう小学生の頃から……ミルルが大好きだからだ…」

学ラン姿なキセキは茶目を(うる)ませて…自分 の茶髪をボリボリと手で掻きむしった。
ミルルは…顔に掛けた眼鏡を光らせ、長い腰まで伸びた茶髪を手で払い…フンっと横を向いた。

≪月神さんより…ミルルはどうしても…キセキさんが好きなの。
マナナ、あっちへ行きなさいよ≫

Uほんま、月神(つきがみ)くんも…ミルルが好き でコッチばっかり、今も見てる癖に…。
いざ、ミルル見たら…いつも・・・知らん顔して…。
ウチはマナナ大嫌いやで。
はよ、ミルルを落としてくれよ。
ライバルとかウチ、要らんから…U

低身長ロリ体型なカンサイは、首を揺らし、黒髪ツインテールをピョンピョン動かしてる。

||月神君ね…確かに…ミルルの方ばかり見てる…。
今もコッチ、見てるわ。
月神君が…ミルル大好きなのって有名な噂よね?||

ナデシコは…長い黒髪を真剣に見つめて…手で触ってる…どうやら、枝毛を探してるらしい。

もうこの通り…俺に関することはミルルへもバレてる。
その域だ…。
俺がミルルを好きだと言う話は…町内中、学校も飛び越えて、(うわさ)に なってる。
理由は、ミルルが有名人で…TVのCMにまで流れたり、子役時代からドラマで活躍する級の芸能人だ。
全員から高嶺(たかね)の花だとからかわれ、()け 事の対象にされていたりする。
それももう、慣れてる。

「タリアなんてほっときなさいよ、キセキ。
あんなヤツ…タリアみたいな不細工、私…大嫌い」

マナナは肩揃えな黒髪を動かし、(しか)め面に なる…マナナの突き出た胸が少し揺れる。

本当にマナナは口が悪い。
人が一番、気にしてることを。

確かに、俺は残念なことに顔面偏差値が底辺だ。
しかし、努力で成績だけは上位だと言うのに。
殺意すら芽生えてくる。

「マナナ、言い過ぎだって。
アイツ、不細工とは僕思わない。
タリアは僕の大切な親友だ。
幼稚園時代からの唯一無二な存在だ。
それは…君も僕にとっては友達にも近い存在だが…」








小説目次








登場人物など


≪眼鏡ミルル≫


「異能マナナ」
…月神タリアの幼馴染


☆「王族レイカ」
…スピルチュアルの好きな女子大生


『月神タリア』
(女体化)


「灯台キセキ」
…タリアの親友


U難波カンサイU
…キセキを崇拝する女子



||大和ナデシコ||
…キセキを崇拝する女子





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