アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

永住権A



☆☆☆

隣の黄色畳式座席、女性陣は…。

[あの…全科首席のサスケくんが…まさか犯罪者。
それから…ドベのナルトが…エリートへの道をスイスイなんて。
分からないものだわ。
ナルトの言うとおり、サスケくんは許したわ。
ナルトもヒナタから別れないかしら?]

[ヒナタ…本当に怖いのよ?
ナルトのいるところでだけ可愛い子ぶってるだけ。
戦い挑むと…時々、人間殺戮兵器みたいな怖い瞳に豹変するの]

[そうなのよね?
想像絶する怖さよね?
あれ…。
あの冷気…どこから来るのかしら…。
サスケくんのことは今では過去よ。
どうやって、ナルトを取ろうかしら?
私…料理忍者になれたし…やっぱり、胃袋でかしら?]

[止しときなさいよ…?
本気でヒナタに腕、もぎ取られるわよ…。
ヒナタ、怖いわよ…]

[そうよね…。
ここでもあまり言うと…あとで…ヒナタに…裏から何かされそうね…。
黒魔術の本とか…持ってそうなイメージよね…ヒナタって。
ヒナタはどこでもストーカーしてるから…。
ナルトに関することは…]

[私たちで”ナルトとヒナタを撲滅会”を結成しましょうよ]

[そうね…。
でも…ヒナタ予想以上に怖いのよね…。
今のところ、全敗ね…]

独身の女性陣数名は…女子会を開催してるらしい。
しかし、強敵ヒナタと戦う勇気はないのか…。
声を潜めてヒナタの悪口を荒探しして…。
今日も女子軍団はあること、ないこと…一生懸命、噂話に耽ってる。

☆☆☆

違う丸い黒テーブルでは…。

{ムシよ。
俺は今日は特に虫の居所が悪い。
サスケの永住権なんて絶対に俺は認めない。
サクラとの離婚を望んでる…。
いくら綱手に壁に激突を拳で喰らって脅されても…これは男の闘いだ。
引き下がるわけにはいかない…。
しかし、綱手は怖かった…}
ブンブンブン…。

シノは虫の居所が悪い様だ。

その他、無理やり…票を入れたことに対する反発文句が続いてる…。

☆☆☆

●この居酒屋、犬が可で良かったな?
赤丸…。
綱手には恐喝されたが…仕方ないか…折れたぜ…。
タマキ、早く来いよな…●
●バウ●

キバの地面には大犬”赤丸”だ。
いつの間に大きくなったのか…もう巨犬だ、重くて肩には乗らない…。
犬の成長とは早いものだ…。
尻尾を振って、大きな牙を口から見せ…居酒屋の料理、犬飯をモリモリいっぱい食べている。

居酒屋の床…茶色木目調に…白い巨犬”赤丸”がコントラストで映し出される。
その上の黒い丸テーブルには日本酒の白い瓶と小さなオチョコ。
キバはほろ酔いだ。
…女性…タマキを待ってるらしい。

●ごめんな、赤丸。
最近…俺、背中が凝ってて…。
帰りは背中に乗せてやるから。
許せよな?●

●バウウウウ!!!●

巨犬、赤丸は良い声で吠えた。


【めんどくせ…綱手とナルトに折れた。
テマリ…来るまでここで待つ…。
早く来いよな?
砂がくれからだと…少し時間まだあるな…。
寝とくか】

シカマルはテーブル席で、恋人…テマリを待ってるらしい…。
テーブルに頭を付けて寝ている…。

◎この居酒屋、美味しい、お菓子あるか?
点心があるぜ。
ゴマ饅頭ひとつ。
ああ、ナルトと綱手に折れたぜ…◎

チョウジの黒い丸テーブルには…饅頭の皿が山盛り積みあがってる。

「よく食べるわね」

対面座席にいる女性、カルイは感心してる。

☆☆☆

時刻は5時だが…。
3時から入って来たサイはもう酒に酔ってベロベロなのか、顔が茹蛸のようだ。
一人酒らしい。

サイだけ、イノが自分をほって…用事を入れたことへの不満で一人酒だ。

+イノは今頃、何してるんだ?
まさか…僕を捨てて男遊びなど…。
いや、イノに限って、そんなことするわけない。
イノは…僕にゾッコンの筈だ。
もうすぐ僕たちは…結婚式なんだから…。
僕が、サスケくんなんて認めるはずなんてない。
世界の果てまでも…僕は認めない。
あんなヤツ、どこが良いんだ…?
イノは…僕だけのモノだ+

☆☆☆

サイの隣席には…リーとガイ先生。
それから向こうの席には…リーのアカデミー時代の未婚男性。
一年下の学年の男性人…ナルトやサスケと同じ年代の男性群もいる。

4人掛けのテーブル席を2人で独占して、ウーロン茶しか飲まず、ツマミを食べてるリーが…。
黒いテーブルを激しく手で叩いて…涙を流している。

<僕ほど不幸もいません。
綱手さんに壁を叩かれて…//サスケの永住権を賛成しろ、評を入れろ//と説得されても僕は諦めません。
認めません…。

カグヤの情報がそろそろ出て来てほしいです…。
そうすれば、サスケくんは真っ先に飛ばされるはずです。
サスケくんしか出来ない事ですから。

その間…今の平和な時期も…僕は根性でも票なんて入れません。
認めません。
僕は努力の天才ですから…>

リーと同席のガイ先生は涙を流してる。

「俺も同じだ。
おまえと同じで綱手に壁へ拳を入れられて恐喝されようが票は入れない。
おまえが不憫だからだ、リー。
先生の仕事…頑張ってるか?
サクラも趣味が悪すぎる。
なぜ、リーよりヤツを選んだのか…不明だ。
しかし、最後まで諦めるな。
勝負は…何があるか分からないぞ、リー。
例えば…サクラが離婚して子持ちでもおまえは許す覚悟か?
それとも…サスケが殉職してサクラが未亡人になってもおまえは迎える覚悟か?」

現場は熱気に包まれた。

<僕はサクラさんの全てを受け入れます。
サスケくんよりずっと懐の大きい男です。
当たり前です、ガイ先生。
全力でサクラさんを幸せにするのは僕です。
サクラさんも早く…今すぐ気が付くべきです>

テーブルの上は涙の洪水だ。

「そうか。
おまえの心意気に俺は号泣だ」

<ガイ先生。
僕ほど不幸はいません…。
大親友のネジは戦死し…長年好きだったサクラさんは犯罪者と結婚し…。
僕は絶望です。
しかし、リー先生が職業を譲ってくれました。
僕はこれだけが今、生き甲斐です…>

「リー。
良いんだ。
おまえの心の痛みを思えば俺の職業など。
俺にはまた別の仕事を上から与えられた」

<ガイ先生。
ガイ先生は僕の命の恩人です。
僕は…>

「分かってる。
おまえは本当に努力の天才だ。
そんなおまえが大好きだ」

<ガイ先生>

そこへガイ先生とリーのテーブルへ…。
ベロベロに酔い過ぎて判断能力すらなくなった…隣のテーブルに座るサイがやって来た。

ガイ先生はほろ酔い。
リーは素面。
サイは悪酔い…フラフラの千鳥足だ。

+僕も同感だ。
いくら綱手から壁激突攻撃を喰らっても…。
サスケくんのことは認めない。
イノもどうしてあんな趣味の悪い奴に…昔、マフラーを渡したり…。
誕生日まで祝ったり…。
全部、僕の情報収集スキルをもってすれば…簡単に分かる。
あんなヤツ里入りは認めない。
ヒック+

イノのことしか話してない…。

<サイくん。
君まで僕の味方になってくれるんですか?
僕は泣くほどうれしくてたまりません。
サクラさんのこと、協力してくれませんか?>

リーの目が輝いた。
リーとサイが仲良くなったのはこれが初めてだ。

+サスケくんよりは良いだろう。
僕は第七班のメンバーだがサスケくんの代わりにはなれない。
ナルトとサクラを応援してたが。
ナルトはヒナタを選んだ。
サスケくんは闇世界に戻し…僕は君とサクラの恋路を協力しようかと願う。
イノがいる里の平和のために僕は貢献する+

サイの目は酔い過ぎて座ってる。

<うれしいです。
僕は感激しまくってます。
今日はサイくんと言う心強い味方が出来ました。
ガイ先生、今日は…僕もお酒を飲んでも良いですか?>

リーは手を挙げて店員を呼ぼうかとした。
それを決死の表情でガイ先生は止めた。

「おまえはダメだ。
リー。
ウーロン茶で耐えろ」

<どうしてですか?
僕ももう21歳。
成人です>

「飲むなら森で飲め。
酒屋では慎め。
これは俺の与える試練だ。
これをクリアーできればきっとサクラもおまえに落ちる」

ガイ先生はビシッとリーを指差す。

<そうですか、僕頑張ります!
ガイ先生、ありがとうございます>

リーはガッツポーズだ。

そこへ酒屋入口にある青い暖簾を通って…サイの恋人、イノが…サイとリーとガイ先生の黒いテーブル席へやって来た。

≪サイ?
そんなところにいたの?
窓の外から見えたら…やっぱり、あなただったのね?≫

+イノ?
君はいつ見ても美人だ。
何の用事だ?+

サイはどうみても酔ってる。

≪もうすぐ私たちの結婚式でしょ?
いろいろ用意してただけよ?
サプライズのために。
これからデートしましょうよ?
ねえ、サイ?≫

サイはテーブルを立ち上がった。

+そうだな。
イノ、君は本当に良い女だ。
それから気も効く。
それでは、リー。
さよならだ。
幸運を祈る+

サイはイノに連れ立って…酒屋玄関…招き狸の像がある方向へ…歩き出した。

<ガイ先生、僕は仕事が恋人です>

「俺はおまえが不憫で仕方ない。
まるで昔の俺を見てるようだ。
おまえのことをこれからも盛大に応援してる」

リーは更に一人涙。
ガイ先生はリーの肩を激しく叩いて、悔し涙を拭ってる。


☆☆☆




サスケ視点


時刻は夕方になった。

俺はそろそろ…サクラを屋敷に置いて、大仕事に出ることにした。
服装の乱れだけ確認して鞄を用意する。
サクラも服装の乱れを正してる。

「サスケくん…日曜日なのに…仕事って。
大変なんだね。
サスケくんは…」

サクラはションボリ肩を落としてる。
寂しそうな表情だ。
少しだけ寝てたが起きてくれたらしい。
日曜なのに仕事と来週から1週間いないという件が効いてるらしい…。

『…』

現在、俺らは食卓にいる。

「サスケくん…日曜日なのに仕事って…どんな内容なの?
カカシ先生に文句言ってくる。
カカシ先生もサスケくんを扱き使いすぎる。
いくらサスケくんが有能だからって、休みもないなんて…」

サクラの肩が怒りで震えてる…俺の絶対的味方だ。

『極秘任務だ。
カカシへの苦情は止めろ』

「そっか…。
うん、そうだよね。
サスケくんの妻として耐え忍ぶ」

『・・・』

「サスケくん。
来週からまた一週間もいないんでしょ。
寂しいな…」

サクラは俺へ肩を寄せて擦り寄った。

『行ってきます、サクラ』

俺の顔と声色は柔らかい。

「行ってらっしゃい、サスケくん。
あの…」

鞄だけぶら下げて…。
渡り廊下を通り、靴を玄関で履き、引き戸を引いた。

「今日は…いつ帰って来るの?」

サクラは目が泳いでる…。

『今日中だ』

「そっか…待ってるね」

玄関を出て扉の外、サクラは手をひらひら振ってる。
今日は、サクラはうちはの家紋が入ったワンピースを着てる…。
少しだけ後ろを振り返って、それから去った。

だいぶ進んでサクラの姿が見えなくなったところで。
地面を見た。

品行方正はここまでと言う意味だ。


☆☆☆

時刻は6時半近い。
俺は木ノ葉の職場施設に侵入し、最上階、火影室への道を急いだ。
白い廊下だ。
部屋の前には”火影室”と表示された看板がある。
ノックをして…。
開けば…。

部屋には本棚が連なり、それから机の上には書類やファイルの山。
椅子に座ったカカシがいる。




カカシ視点


日曜でも火影の仕事は待ってくれない。
俺は毎日忙しい…今日も火影室でデスクワーク…机の上に書類が散乱してる。
突然、部屋の扉が開いた。
今日は日曜で俺以外誰もいない。
誰かと思えば…俺の愛弟子だ。

「今日は挨拶もなしか・・サスケ」

『カカシ。
結果を聞こう』

全く表情が相変わらずない。

「サスケか…。
話は長くなる」

俺は頬をポリポリ掻いた。
弟子に脅されてる…。

『結論を言え』

低い声だ。

「まあ、急ぐな…」

『手短にしろ』

ゆったり会話を始めた。
少し怒りもある…焦らせてやろうかと思った。
わざとゆっくり話してみた。
辛口な内容だ。

「ナルトは…今日もだな…。

「サスケが頑張って里外の恋愛を合法にしてくれたってば。
票入れろってば」

と言ってた。

これで…シカマルは

【めんどくせ…テマリの手前、入れるぜ】

チョウジは

◎カルイのために入れてやるぜ。
新味のお菓子、寄越せよな◎

キバは

●タマキのために入れてやる。
他に理由はないな?
赤丸●

●バウウウウーーー!●

と言ってた。

困ったことに…。
シノだけが…。

{俺は入れる気はない…。
サクラと離婚して俺に返してくれれば考えても良い}

と言ってる…。
おまえ、サクラと離婚する気あるか?」

『まとめろ…』

サスケの声は低く、表情は硬い…。
まあ、先を急がすな…たまには耐えろ。

「あと…。
リーも…。

<僕は世界の果てまで綱手さんに追いかけられて殴られても意見を変えません。
サスケくんが離婚してくれれば、考えても良いです>

ガイ先生も

「サクラと離婚してくれれば、永住権に関して考えても良い。
リーのためだ」

あとは…。
サイも

<僕は絶対に認めません。
サスケくんが里で永住するなんて。
僕の目から見て信用に値する人間ではないことは明らかです>

こう言ってるな…」

そこで、言葉を止めて…サスケの反応を伺う。
魂胆が分かったのか。

『カカシ…話が長いが…俺への嫌がらせか?
先を急げ…結果はどうだ?』

サスケは頬が白くげんなりした瞳だ。
声は相変わらず気怠い感じで低い。
これはコイツの個性でもある。

「聞けよ。
俺の苦労を。

綱手と俺とナルトは賛成だ。

あと…アカデミー時代の役職に就けた男子どもは…。
最初はほとんどが大反対だった。
特に未婚の男ども全員がだ。

最近は…綱手の圧力に押されて…仕方なしに折れたらしい。
綱手は壁に拳を激突させては…男共や女共へ票を入れるように脅してた。
綱手へ感謝しろ。
綱手がどうしてあそこまで協力する気になったのかは知らねえが…。
恐らく、愛弟子サクラのためだろう…サクラのために綱手は頑張ってくれた」

これが嫌味を交えた説教であることは気が付いてるだろうか?
要するにおまえでなくてもサクラは相手など寄りどりみだりだ。
感謝しておまえは品行方正を貫け、サクラのために。
と言う意味だ。
日曜に単独行動をして俺に脅すようでは甘い。

『…』

サスケは無表情だ。


「一応、案は通った。
女子たちも何とか…オッケーが出た。
ナルトがこれは説得してた…ナルトが最近、モテ期に入ってる話は以前したと思う…。
ヒナタはお蔭で大変そうだ…。

以上だ。

来週の任務は取りやめになった…」

俺の顔は朗らかだ。
辛口な嫌味を散々言えたので少しはスッキリした。

『ご苦労だ』

サスケは相変わらず上から目線だ。
顔色はないに等しい…。

「俺は大変だった。
明日からは…自宅から通える範囲の任務だ。
里での勤務ではねえが…そこはまだ住人共、許してねえらしい。

しかし、イチャイチャシリーズの小説はまだ完読してねえが。
ありがとう。
恩に着る…」

あれだけは好評価だ。
犯罪に手に染め入手するのはおまえらしいが…お蔭で俺は癒されてはいる。

『了解した。
あと…この土産、カカシの特権を利用して、メンバー全員、集合させて配れ。
サクラからの土産だ』

サスケは俺の書類で積みあがったデスクの上に…自分の鞄から出した土産を渡した。

温泉まんじゅうと書かれた箱だ。

サスケの瞳は柔らかく。
俺の目はパチクリだ。

『カカシと、イノとサイ、それからナルトとヒナタ、あと…綱手のぶんだ。
全部で6箱だ』

「俺は忙しい…。
旅行へ行ったのか?」

少しゲンナリしてる。
罪人の癖におまえは優遇されすぎてる。
サクラ以外に里の外で女がいないかというのも実は気になる…。
香燐とはどうなったんだ?
結局…。

『新婚旅行だ。
祝日を利用して…昨日、一泊だけだ。
イチャイチャシリーズ…秘蔵版は…面白かったか?
カカシ…』

さりげなく脅して来る。
サスケの表情はないに等しい…声は淡々としてる。

「わかった…」

『これで頼むこともたぶんない』

サスケは小さい声だ。

「土産は…温泉まんじゅうか?
俺は甘いものは苦手だ…食えない…」

俺は溜息ついた。

『チョウジに渡せ』

サスケの声はぶっきら棒でもある。

「そうか。
確かに新味のお菓子を渡せとうるさかった…。
仕方ない。
配ってやる。

サクラに…味噌汁うまかったと伝えてくれ…。
毎日でも欲しいぐらいだ…。
サクラは本当にいい嫁だな、サスケ」

これはサクラへの礼だ。
本音だ。
嫌味ではない。

『…』

「おまえは本当にサクラに愛されて幸せ者だ。
しかし…おまえはサクラが好きなのか?
おまえが結婚してもなお、男性群はサクラを狙ってるらしいぞ。
おまえの感情が聞きたい。
第七班の師匠としてだ」

当たり前のように心配だ。
俺以外にもサイも心配してる…。
アイツも第七班だからだ…。
ナルトは甘いのかすっかり許したようなノリだ。
それはサクラもだ…サクラは少し甘すぎる、サスケに対してだ。

『関係ない』

「関係大有りだ。
俺はサクラが不憫だ。
聞かせてもらおう」

俺だけは辛口に尋問してやる。
心配でたまらない。
今ですらこの行動だからだ。

『俺は…サクラの深い愛情でだ、あの戦後を交え、贖罪の旅を通して…過去を懺悔して。
正常な判断が出来るようになってから、サクラが俺に捧げた愛情の貴重さを…身に染みて…実感し。
…それからサクラからの求婚を受けて、里に留まることを…決めた。

サクラの気持ちを受け取ることにしたのは最近だ。
しかし、過去は捨てた…復讐心も今はない。
それ以外の回答はない。

確かに昔は…一族の復讐しか頭になかったが、贖罪の旅を通して、人の愛情が理解できるようになった。
サクラも俺がサクラの求婚を受けたことを…とても喜んでる気配だ』

もっともらしい意見ではある。
しかし第七班としてサクラを二度と泣かせないように俺は説得にかかる。

「そおか…。
サクラは確かに…愛情深い子だ、いじらしくもあるな…。
おまえが悪人に転んでも…。
おまえがサクラを殺そうとして…刀を向けても…。
それから殺意を持って、千鳥を向けようが…。
おまえに…幻術の中で、胸を刀で刺されて…長期にわたり、気絶されても…。
それでもなお、おまえを慕ってる…。
無条件にだ。
おまえのために涙を流す…。

本当に…不憫な子だ。
他にいくらでも相手も良そうなのに…俺に、何年でもおまえの刑期を待つと申し出て来た。
おまえの母のようでもある。

あの子の好意を…利用することだけは俺は許さない。
里の住民もだ。
けじめはつけろ。
昔の女は清算したか?」

誰でも聞く。
里中がこの件に関して噂の荒しだ。
俺は仲間は大事にする。

『…』

「香燐とはどんな関係だったんだ?
俺だけで良い。
教えろ」

猛烈に気になる。
一度もどこまでなのかコイツは言ったこともないからだ。

『何もない』

サスケの表情は冷たく低い。
しかし何故か心配だ…サクラのためだ、もう一度聞く。

「どこまでだ?
どこまで進んでた?
嘘を吐くな…俺には分かる…。
俺も男だ、サクラは分からねえようだが…雰囲気で察知は出来る。
サクラには黙っておく。
約束する。
どれぐらいだったんだ?」

お節介かもしれない。
しかしもっと強く細かく否定しないと俺は…だな…。

『俺は忙しい。
自宅に帰る』

サスケは突き放したような表情だ。
この件になると大体、逃げたような態度だ。
聞かれたくない話らしい…。

「そっか。
毎日、任務ありがとうな。
おまえのお蔭で里は平和だ。
俺はおまえを信じる気でだんだんいる。
しかし、サクラは泣かせるなよ。
これは第七班の師匠として当たり前の願いだ。
俺のお節介も理解しろ」

サスケは火影室を去った。




☆☆☆





カカシ視点



俺はカカシだ。
火影になってから日曜日すらない。
労働基準法に違反してると、木ノ葉の忍者たちに訴えたいが…。
仕方ないか…と、耐え忍んでる。

サスケには…俺が少しだけ、仕事をサボって…旅行へ飛んだことがバレタらしい。
俺は…最近、つまらねえ。

俺より随分年下の弟子は…3人とも結婚。
俺の仲間、二人はあの世。
それから家族もいず、幼少期から戦争孤児だ。

俺ほどグレテおかしくねえ境遇の人間もいねえが。
全うな道をずっと歩んでる。
サスケも俺を見習え…と、叱咤してやりたい気分ではある…。

俺とサスケは似てると第七班時代、特別に目を掛けたこともあった。
しかし…。
俺は復讐になど一度も走ったことはねえ。
そこはダメだ。

仲間を大事にしない人間などクズも良いとこだ。
俺は徹底的に第七班時代、教育したはずなのに。
チームワークこそ大切だって躾けたはずなのに…未だにサスケだけ独走状態だ。
単独行動が目立つ…。
贖罪の旅から3年たつが…一人で火影室の扉へやって来て…。
俺の弱みを握り、永住権に関する項目を許可しろなどと脅す人間はサスケぐらいのモノだ。
サスケの永住権に関する項目ほど…木ノ葉にとって重要な課題はないだろう…。
本当は獄中永久生活か…死罪も免れなかったのを俺の権力を利用して…贖罪の旅って形に変更して…。
ナルトが…一生懸命、木ノ葉の住民共を説得したのに…。
これは…国家機密的問題だ…簡単に通る案でもない…。
可愛い弟子ではあるが…そこは本気で許してねえ。

サスケには木ノ葉に危険が及びそうな気配が漂ったら…真っ先に飛んでもらう話で蹴りを付けてる。
確かに最近、平和だ。
そのお蔭で俺も火影を少しサボれた…呑気に旅行も出来た。
今のうちだとサスケが焦る気持ちも理解できる。
しかし…本当の魂胆が何かは分からねえ…。

里崩しはさせねえ。
俺はまだ本気で心配してる…。
今回の事件で余計にだ。
サスケなら自分をまだ認めない木ノ葉の住人を恨んで復讐を決行しかねないからだ…。
里の住人には…この件は話すなとは、サスケに圧力を掛けられてる…。
ここ3年はおとなしかっただけに…俺はショックが酷い…。
去年、俺を隕石から助けた恩まで…利用してきたことについてもだ…。

サクラはすっかり、完全に許したような顔だ…責めようとすらしねえ、甘すぎる…。
ナルトもだ。
あの子のためにも…俺は二度と、サスケが悪の道へ走らないように口うるさくするつもりだった。
辛口になってるのは自覚もある…。

しかし、思惑は外れ、サスケには弱みを握られ…良いようにつかわれてるらしい…。

確かにイチャイチャシリーズは…面白すぎる、少しサスケを許しつつある…。
だが…アイツは恵まれてる…。

火影は大変だ、ナルトもなれば…現実にビックリするだろう。
ほぼ火影室で寝泊まりな日々が続いてる。
火影室には仮眠用のベッドまである。
まるでここから出るなとでもいうような処置だ…。

しかし、俺には誰よりも強い木ノ葉一番の絶対権力はある。
メール一つで木ノ葉にいる人間なら集合はする。
召喚術並みだ。
我愛羅ですら時間が経過すればメール一本で繋がる。
それぐらいだ。

愛弟子サスケの頼みだ…仕方なしに…。
呼び出すことにした。

【件名;集まれ。

用事がある。
火影室まで来い。

送信者;カカシ
送信先;サイ、ナルト、綱手、リー、チョウジ】

2行メールで人間は来る。

まあ、30分もすれば来るだろう。

あまり…職権乱用はしたくないが…。

☆☆☆

時刻は7時か…。

30分後ぐらいに…全員が予想通り…集合した。
火影とは本当に便利な肩書だな…。

綱手は医療班で飲んでいたのか…ほろ酔いの顔だ。
綱手も毎日、大変そうでもある。

それからサイも酔ってる…。
イノも一緒だ…。

リーは酔ってない…こいつは酔うと手におえない。
ナルトはいつもどおりのノリだ。

「カカシ先生、何の用事だってば?
もう、会議は終わったはずだってば?
俺、凄く頑張ったてばよ?
俺、火影に向いてるってばか?」

「そうだな…俺はいつナルトに火影を譲って良い。
おまえはそのために…俺がいうとおりに動け。
とても役に立ってる…」

「嬉しいってばよ」

確かに…説得仕事はナルトに毎回任せてる。
これが予想以上に大変だ。
強情な人間ばかりだからだ。

すんなり通らないことが多い。

+手短に頼む。
イノが待ってる+

サイは機嫌悪そうだ…。

<僕は悔しいです。
どうして多数決でサスケくんが許されるのですか?
納得いきません。
彼は…今すぐ飛ぶべきです、遠方に。
今、平和だからこそ行くべきです…。
認めません>

リーはまだ泣いてる…。

俺も大変だ…。

//用事は何だ?//

綱手に急かされた。

◎新味のお菓子くれよな…。
カルイ待たせる訳にもいかねえぜ◎

チョウジは片手に駄菓子を持ってる。
何歳になっても変わってねえ…いい大人が…。

「おまえたちに褒美だ。
サスケとサクラの新婚旅行らしい」

「アイツ、行ったてばか?」

ナルトのビックリ眼だ。

<僕は受け取りません>

リーは激しく首を振ってる…。

+僕もだ…別に要らない+

サイは…冷たい表情だ…。

≪新婚旅行…どこにする?
サイ?
私のリードでも良い?≫

イノは全く聞いてない…。

//私は貰おう//

綱手は二言返事。

◎くれよ。食べ物なら喜ぶぜ◎

チョウジは絶叫だ。

「温泉まんじゅうだ。
甘いと思う」

火影室の書類が積みあがった俺のデスク上に温泉まんじゅうの箱を置いた。
勝手に受け取れって意味だ。

◎俺、貰うぜ。
これもらって…カルイのとこすぐ行くぜ◎

チョウジはウキウキしてる。

「嬉しいってばよ。
気が利くな、サクラちゃんもサスケもよ。
ありがとうだってば、カカシ先生」

ナルトは頬を真っ赤にして照れながら喜んでる。
コイツは確かに…今日の会議でも頑張ってくれた。

<僕は結構です。
認めません。
そんなこと>

リーはボタボタ泣いて…腕で目をこすってる。
いつも熱い奴だ…。
気持ちは理解できる…。

+僕もだ、甘いものは苦手だ+

サイの表情は硬い…。

≪サイ…サクラからの土産、貰いましょうよ?
私…甘いものが好きだから…≫

イノはサイの隣でベッタリ甘えてる。
独身にこれはキツイ…。

+仕方ない。
僕は甘いもの、好きではないが…。
イノは自宅で喜ぶだろう。
第七班のメンバーとして受けとる義務がある。
あとで、礼は述べとく+

サイは突然、態度急変だ。

<僕はサスケくんの買った土産なんて受けとりません。
サクラさんの買った土産なら受けとります>

リーの目は潤んでる。

「サクラからのだ」

俺は情けで嘘を吐いた。
嘘も方便とは…昔から言うな。

<サクラさんが僕に?
あとでお礼を言わなきゃ…>

リーの目は突然、蘭々だ。
顔まで真っ赤だ・・・単純な奴だ。
ガイにそっくりだな…。

◎ちぇ、俺…二箱貰おうと思ったのによ。
じゃ、貰ったし…カルイのところへ戻るぜ。
今日は機嫌最高潮だぜ◎

チョウジは一番最初に去って行った。

「カカシ先生、ありがとうだってばよ。
サクラちゃんにも礼言っとくぜ。
俺は火影になる!」

ナルトもスキップしながら…去って行った。

//ありがとう。
明日、職場でサクラに礼を言っておく//

綱手は確かに頑張ってくれた…壁ドンで説得をだ。

銘々が俺に感謝して火影室を去って行った。

イノとサイは二人の世界にいるのか俺に言葉もなく…イチャイチャしながら…出て行った…。

リーは<サクラさんからの…初めての…プレゼント…>

それだけうわごとで呟いて退散してくれた…。

全員、機嫌よさそうで良かった。

俺は甘いものは苦手だ。
今から秘蔵版イチャイチャタティクス完成秘話を読み込むとする…。

サクラの味噌汁なら何度でも貰っても良い…。

☆☆☆



永住権@


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永住権A








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