アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

紫陽花B



サスケ視点



サクラの去り際のあのセリフ。
あの感じでは…。
まさか。
香燐に嫉妬してるのか?

俺が戦前には全く嫉妬すらしなかったのに。
最近に入って…やっと、そうなのか?

遅くないか?

気のせいかも知れねえが…。

俺は忙しい。

やはり…。

カカシの言う通り、サクラは親としてなんか、俺を愛してない。
サクラは男として俺を愛してる。

残念だったな、カカシ…。

俺は、とても機嫌が良い。

サクラが香燐に嫉妬してるのが証拠だ。

☆☆☆


今から里の職場施設に侵入する。

里の職場施設に入れば…まず、カカシのいる火影室の前でノックだ。
夕飯前に渡さないと意味がねえ。

まだ業務がたんまりあるのかカカシのデスクには紙が山積みだ。

カカシとは今朝、対面してる。
今日は二度目の会談だ。

「サスケか」

『結果を聞こう』

「俺は俺なりにした。
会議も開いた」

『…』

「里の数名は反対してる。
特にサイとリーとガイ先生は大反対らしい。

イルカ先生もだが…これはナルトが頑張って説得してくれてる。

正直、日曜日の夜までに出来るかは…。
俺は火影だが・…自信がねえ。

多数決になるだろうが…。
現段階では分が悪い」

『…命を懸けてみろ』

「分かってる。
おまえに命を隕石の件でも。
戦争中も助けてもらった。
俺は確かに恩がある。
そのことには理解してる。
しかし…」

『復讐する』

「もう復讐はよせ。
サクラを泣かすな。
家族を大事にしろ」

『…』

「俺はどうなるか…予想付かねえ。
リー、ガイ先生、サイ。
この3名は無理かもしれねえ。

他の人間たちも…キバやチョウジは…ナルトに言われて…考えてる程度で…。

全体を見れば…かなり部が悪い。
ナルトは

「サスケが…遠征任務で里外の交流に力入れてくれたお陰で、里外の恋愛は…合法になったてばよ?

みんな、サスケ、許してやれってばよ。
俺は火影になる!
里中、全員幸せにするってばよ」

と説得しまくりだ。

綱手は…。

//サクラの手前、許す//

と強く言ってくれた。
シカマルは

【めんどくせが、ナルトに従う】

と言った。

ナルトには感謝した方が良いらしい。
アイツは火影に向いてそうだ」

『…』

俺は…ナルトが嫌いだ。

火影室、カカシのデスクに…持参した弁当を置いた。

『ここにおまえの好物を置いた。
明日もおまえは頑張れ。
日曜の夜までそれに専念しろ。
結果が悪ければ、俺はおまえの罪を里に流す。
隣里の我愛羅は真面目に職務に励んでる。
我愛羅にも告げ口をする。
全里におまえの恥を晒す』

「悪かった。
理解はある。
火影は予想以上にハードだ。
体力と精神勝負だ」

『…』

「弁当は何だ?
塩サンマと茄子の味噌汁、ごはん。
鳥のササミ。

俺の好物ばかりだ。
これは…サクラが作ったのか?」

『俺はサクラに頼まれてる。
強行手段でも、カカシを説得しろと。
しかし、サクラには…この件を話すな』

「サクラには確かに今日も、来週の任務を取りやめてもらえないかと…泣き付かれた。
早く、サスケを里で認めさせてやりたいらしい。

不憫な子だ。
全員が嫌がる仕事をサスケに与えてるのも自覚ある…」

『…』

「この料理、美味しいな。
味噌汁が甘くなくて濃い目だ」

俺がサクラに注文した。
俺このみの味だからだ。

「サクラは本当にいい嫁さんだな」

カカシに褒められるのが嫉妬してる。
カカシと俺の味覚は似てるらしい…。
女の趣味は…どうか知らん。

カカシ、サクラから離れろ。

俺は背を向けた。

「おふくろがいれば。
味噌汁はこんな味なのかもな…」

カカシの声が後ろから聞こえる。
しかし、俺はサクラを渡す気はねえ。

カカシ…。
おまえはそろそろ、過去から現実へ目を向けて、結婚すべきだ。

火影の座を一週間も俺に仕事だけ押し付けて…。
替え玉の術をして、女豪遊旅行へ出掛けたらしいが…。
収穫はなかったらしいな。

諦めろ、サクラには近付くな。
すでに俺の手中だ。
サクラが俺を慕い続け、この度、教え子たちの結婚が決まり、おまえのガックリも理解はできる。

おまえの仲間、二人は今頃、天国でイチャイチャかもしれん。
もう忘れろ。

早く誰でも良いから、他に女を見つけろ。

小説の世界に逃げてねえで、謙虚に誰でも良いから選ぶべきだ。

火影の権力で女など大量に落とせるはずだ。

サクラとは離れてほしい…。
いい大人なんだから…。

☆☆☆


次だ、次。

今度は医療班を叩いた。
サクラも仕事を終え、それから…イノも終わり…。
自宅へ向かってるが…。
高級職ほど最後までいる。
独身だから余計、ここで好き勝手に暮らしてる。

//誰だ?//

『おまえに褒美を渡す』

弁当と酒を置いた。

//これは?//


塩サンマと茄子の味噌汁、ごはん。
鳥のササミだ。

//鳥のササミか…おいしそうだ。
地酒まで//

『何を持っても、殴っても良い。
他の奴らをおまえの力で屈服し、票を集めろ。
酒も渡す』

//分かった。折れた//

二言返事だ。
よほど、酒が好きらしい。

//私も昨日、考えた。
確かにサクラのためにも良いだろう。
協力はする//

『サクラに頼まれてる、しかたなしに俺はおまえを脅しに来た。
しかし…この件は里の誰にも言うな。
言えば、おまえの横領レシートを空から落とす。
サクラにも言うな。
カカシにもだ。
ナルトにも。
里中全員に秘密だ、理解しろ』

//…//

綱手の顔が青ざめた。

『おまえはそろそろ賭け事を慎むべきだ。
里の借金を増やすな。
カカシになってから借金は桁違いに減った。
どういう意味か分かるか?』

//悪かった。
しかし火影が予想以上に糞仕事で大変すぎて、楽しみも必要で…//

カカシと言ってることが違わねえ。

俺はギロリと睨んだ。

//分かった。
壁に叩きつけてでも説得を開始する。
日曜の夜までには決める…。
怒るな//

『…』

俺は背を向けた。
コイツとは面識が少ない。
明日もどうせサクラと顔を合わす人間だ。
あまり強くは出ん。


医療班はスタスタ出る。
このレシート。
本当に役に立つ。

忍者秘蔵出版社へ行かなければならねえ。
自来也の秘蔵文章だ。
綱手には酒。
カカシには秘蔵書籍だ。

月の光を頼って地図を片手にそこへ足をしのぶ。

☆☆☆

今、何時だ?
もう9時頃か。
出版社閉店ギリギリに忍び込み…。
現地で俺の目の力を使って…。
倉庫を漁る。
もうドロボウだ。
今回は説得もいい。
略す。

倉庫は年号順、アイウエオ順に整理されてる。
自来也が他界した4〜3年前の分で一致した。
何とか自来也の書いた原稿に当たった。
”イチャイチャタティックス””イチャイチャバイオレンス””イチャイチャパラダイス””
木ノ葉の里でR指定として映画化されたほどの人気作品だ。
自来也はこれで名前を歴史に残したようなものだ。
今でも熱大なるファンは大勢いるらしい…カカシもその一人だ。
何とか偶然、茶封筒の束を発見できた。
自来也の直筆バージョンだ。
ボツになった原稿でもある。
分厚い。
段ボールに詰められてる…。

これは…バレれば相当の罪だろう。
複写の力を使って…俺の瞳にこれを暗記する。
そのあと、同じものを紙に映す。
白紙の紙だけ盗ませてもらう。

さすがにこれを盗むわけにはいかねえ。
すぐにバレル。
木ノ葉の新聞で大々的に広まる。
人気シリーズの原稿だからだ。
そのうち、このネタ帳とボツ原稿も、ファンの要望により出版される可能性も高い…。

☆☆☆

それ以外にも俺の愛好してる小説も発見した。
これもついでに瞳に入れて、紙に映させてもらった…。
これは個人的趣味だ…また犯罪に手を染めた気分だ。
官能小説サクラ…これからも続くらしい。

今はあれだが…任務先ではまたお世話になるかもしれないからだ。
出版者の欄で…衝撃の事実が発覚した…作者がリーらしい…。
半分怒りは来るが…この小説は本当に俺の好みドンピシャだ、叱る気になれない…。
今回は不倫モノだ…。
ココも許せないが、このシリーズだけは気に入ってるから許そう。
去年はこれを楽しみに読んでたからだ…ヤツには長生きを望む…。
俺はヤツが長年サクラを狙ってることも知ってる。
この小説はまるで俺が遠方にいてもサクラと会ってる気分になれるぐらいリアルタイムのサクラに忠実な描写の小説だ。

今のところ、サイはリーに眉毛が弱点であることを伝えてないらしい…ココに安心してる。
サクラはリーの太眉だけは絶対に許せないらしいからだ。
俺の勝利は一目瞭然だ、今のところ。
リーの眉毛が細くなってから…俺はリーを戦友と認知する気だが…たぶんないと願う。

その後、出版社は立ち去った。

☆☆☆。

今、10時だ。
そろそろ腹も減ってる。
カカシは飯を食べただろう。
カカシのいる火影室を更に叩く。


「何だ?
俺は寝てる」

怒りが沸く。
俺も少し寝たい。

『渡しモノだ。
おまえに褒美を前渡する。
日曜の夜までに決着付けろ』

カカシが今朝と同じように寝ぼけ眼だ。

段ボールごと渡した。
中身を見た途端、カカシの目が爛々だ。

「まさか…これ」

『ボツ原稿集と生の原稿集の束だ。
編集長のレポートなどだな…』

「いいのか?これ?
まさか…犯罪なんじゃ」

『現物の模範だ。
犯罪と言えばそうかもしれねえ。
おまえにはこれぐらいしてやる。
絶対、他人には見せるな。
公開前の分だ。
ネタ帳や余談も載ってる。
おまえも共犯だ、自覚しろ。
その代り、生涯、俺に忠誠しろ』

「わかった。

絶対、日曜の夜、良い回答をする。

猛烈にうれしい…」

簡単に落ちた。
目が輝きまくってる。
しかし…大変だった。

『じゃな』

俺は岐路に着く。

「今日はこれ、徹夜で読もう。
うわあ。
サスケ、気が利くな」

カカシの声だ。
本当に変わってねえ。
大昔から。

☆☆☆

家に到着だ。
インターホンは押さねえ。
今日は先、飯もらう。

こっそり、忍び込み、渡り廊下渡って食卓へ行く。
サクラが待ってたらしい。

マフラーを編んでるらしい。
マフラーの編み方っていう本を前において…頑張ってる。

「サスケくん、おかえり…。
今日はベル、押さなかったの?」

『ただいま、サクラ。
飯貰う』

「私、サスケくんが帰って来ないのかと。
任務先で食べたのかと思って。
食べちゃった。
怒ってない?」

『全く』

返事はそれだけで。
箸を付けた。
冷めたが。
味噌汁は確かにうまい。

『おかわり』

「うん」

サクラが飯と味噌汁のお代わりを入れてくれる。

本当に空腹だった。

おかわり、3回ぐらい今日は食べた。

腹は満たされた。

「サスケくん、美味しかった?」

『ありがとう』

一時間だけ寝たいと願った。

『サクラ、少し机で寝る』

「サスケくん、いつも頑張ってるものね。
私、マフラー編んでるから」

俺は皿を避けて机で少し寝た。
仮眠だ。
1時間欲しい。

1時間たったらしい。
俺の回復力は桁違い、人並み以上ではある。
目を覚ませば。

サクラはマフラーがまた一かららしい。
前のマフラーが失敗してハサミで切った跡がある。
絡まったらしい…。

「サスケくん、起きたの?」

『よく寝た』

「風呂沸いてるよ」

サクラはもう風呂に入ったらしい。
俺が寝てる間にだ。
サクラの髪が濡れてる。

『…』

また金曜は忙しい。

風呂よりしたい。
それから風呂でも良い気もする。

そんな目で見つめてたら察してくれたのか。

「サスケくん。
えと。
今日もキスして良いかな?」

そうだ、今日は帰りのキスも行ってきますのキスもしてない。

サクラからしてくれた。
あとはなし崩しだ。
熱が上がった。
ココでも良いが。

『サクラ、隣の寝室へ行こう』

「うん…」

サクラの乳房を揉みながら、廊下を渡る。
隣の寝室に着けば…俺はフスマを開けて。
床の間に生けてあるアジサイを見て。
サクラから離れて行き、蹴つまづいた。

床の間の花瓶は倒れ、紫陽花も瓶から出た。

そしてサクラの元へフラフラと戻った。
項垂れたフリをしてだ。
痙攣はある。

「サスケくん、どうして?
え?」

『疲れてるから、足元が狂った。
布団に入ろうとした。
眩暈が今、した』

「大丈夫?今日は止めた方が」

『良い。
俺は飽きるまでこれをする。
疲れてるから。
今日はお前から全部来い』

最近、騎上位も覚えてくれてる。
ちょっとかわいい。
サクラの顔はすぐ困ってくれる。

「えと…あの」

腹上死も良いかもしれん。

「待つ」

『…。
サスケくん、あの弁当はいったい誰に?』

「うざい」

『香燐さんとこういうことは…』


「…」

『サスケくん、私、うまくなった?
香燐さんと私、どっちがうまい?』

「…」

嫉妬は可愛いけど、誤解は少し切れてる。

待ってれば、キスしてくれる。
これも愛らしくもある。
頭は撫でる。

布団に押し倒す。

今日も大変だった。
明日もヤリまくる。


☆☆☆



一日が終われば。
サクラは幸せを噛みしめてるのか終わった後は、ゆったり寝てくれる。

人肌は心地いい。
サクラとの密着は心地いい。

「私はサスケくんがずっとずっと好き。
何があってもこれからもずっと大好き」

今日もしてるときに言ってくれた。

「サスケくんのこときっと絶対幸せにする。
大好き」

本当にできたいい女だ。
サクラは本当に優しい。
天使も同然だ。

いつも結局、布団にいる気がする。
思えばサクラには恋人もなく新婚へ突入してる。

肝心なことが昔から言えない。
俺の家族が亡くなった話も俺はクラスで誰にも言えずそのまま七年間もいた。

何かがないと言えない。
それも死ぬ間際ぐらいになって話せる程度だ。

酷いとその瞬間すら言わないかもしれない。

イタチもそうだった。

ネジも似たような感じだ。

両方、今はあの世だ。

サクラのために何かしたいとはいつも思ってる。
何をすれば良いのかそれがわからない。
自分にあるのは強さ、この瞳の能力が桁違いにあることだと知ってる。
しかし、弱さに染まってる。
今の平和が幸せだからだ、俺は盛大にダダをこねてる。
いつか走らねばならない時が来そうだ。
里なんてどうでもいい。
俺とサクラだけで良い。
世界もどうでもいい。
サクラはそれでも里で俺が認められるために毎日、戦ってる。

知ってる。
今日もリーにいろいろ言われて辛かったことや。
サイにも責められてることだ。
あの二人は一筋縄では落ちない。
それからガイ先生、これもリーの味方だ。

サクラのために走らねばならない時が来るのかもしれない。
自分にしかできないことがあればそれを受け入れなければならないのが。
うちはの役目なのかもしれないが。
それでもまだ逃げ出したい。
他にうちは一族は残ってないのかとも。
逃げ腰だ。
どうしてなのか。
重たすぎてサクラには言えない。
何とか逃げたい。
里で認められなくても良い。
側にいたい。
俺は我儘が始まってる。
サクラに頼ってはダメだと理解もしてる。
どうして里に帰ったのか後悔もある。
まだ根強く俺の人格に対して里は許してない。
社会的制裁がある。
こんなに嫌なのに贖罪の旅はまだ続くのか。
犯した罪の深さも理解してる。
しかし、出来れば逃げ切りたい。

平和が続けば良い。
しかし、カグヤの気配が出てこれば。
俺は駆り出されそうだ。
里を脱出したい。
この頃、サクラに甘えてばかりだ。

サクラと一緒に里抜けしたい。
どうすれば良いんだ。

俺はサクラと共に里を抜けて。
カグヤが世界中の人間を殺して。
どうせナルトは生き残る。
ナルトはヒナタぐらい庇っとけばいい。

最後に俺とナルトでカグヤを倒せば…。
人間もいっぱい消えてる。
我愛羅とかも死んでそうだ。
俺の国家も作れそうだ。
そんなことばかり考えてる。

残った4人だけで解散し、新帝国をつくれば。
俺の完璧なシナリオなのにと…そんな妄想ばかりだ。
しかし、サクラのために耐えてるだけで。
俺はひたすらその時に備えて強くなりたいだけだ。
本音は。
里の規則なんて邪魔でしかない。
俺をここまで職を奪い、遠征ばかりさせる里を愛せる訳もねえ。
大好きなのはサクラに決まってる。
サクラには全く伝わってねえ。

☆☆☆







イタチ視点




やはり…己が見張っといて正解だった。
恐れてたことが始まってる。
一族にはサスケのことは死ぬまで見守ってくれとは頼まれた。
里で勇者になり、子子孫孫栄えるためには己の力が必要。

こう全員に説得されてる。
シスイにも母さん、父さん、饅頭屋の叔母さんにまでだ…。

「サスケくんがとうとう結婚なのね。
私ね。予感はあったのよ?
サスケくんをつけてる女の子が、うちの饅頭を買ってるって話したとき、サスケくん、どんな子か尋ねてきたの。
髪が桃色の子って言ったら、もう照れたのかサスケくん、顔真っ赤になって…」

天国で隣の饅頭屋の叔母さんの噂話が続いてる。

己が報告するサスケの出来事もほとんど一族には筒抜け状態だ…。

里に残れたことを連中、大喜びしてるらしい…。


己が生前あれだけ…うちはの家紋が描かれた壁を殴ったぐらい、悩んだことなど嘘のように、みんなアッケラカンだ。

生きてるうちに賢くなってほしかった…。

己はもう死人。
死人に口なしだ。

この世界に留まり、輪廻転生の時期を待ちたいのに。
許してはくれぬらしい。

サスケの中にまた”里崩し”という狂気が始まってる。

これはまだ大歓喜の一族には黙ってる…。

伝えにくい…。


理解は出来る。
今更、里に帰っても…誰もサスケに職を与えない。
そこも分かる。

己はそれでもなお・・夢枕にて何とかサスケにサクラを道連れにする里抜けは止すように強く説得しなければならない。
己の役目も大変だ。
弟の守りも、重役だ。
しかし、うちはが里で認められ、子子孫孫栄えるにはこれしかないのだ。

一族全員一致で闇世界の帝王になることについては反対してる。
生前は里にクーデターを起こし、新帝国を設立するために団結してたくせに。
死んだとたん、言うことが変わってる。

馬鹿は一度、死ななきゃ治らないらしい。

サスケに一族が犯した罪全部を被らせるのは可哀そうでもある。

一族がクーデターさえ起こさなければ…。
サスケは今頃、復讐になど走ってなかった。

己はここで悪い連鎖を止めなければならない。
力付くでもだ。

と言っても己ももう瞳だけの存在だ。
サスケが任務後にカカシや綱手の元へ走りまくってるのも見えた。

言葉が聞こえなくても場面だけですぐ分かる。

サクラのいない場面では己はずっとサスケを監視して…。
スパイしてる。
天国の一族全員に伝えてる。

今頃になって、一族は…サスケの新帝国樹立は反対で。
木の葉に根付いてもらいたいとか言ってる。
自分のことにならないと他人任せでもある。

己には重い役目だ。

深夜、夢枕に立ってみた。

これでサスケが贖罪の旅を開始してから3度目になる。

一度目は…任務中に寂しがってた時。

二度目は…三重スパイで追い詰められて、どう判断を下そうか悩みまくってた時。

三度目の今回が一番酷い。

里崩しを考えてる。

己は根性で止めてみせる。





サスケ視点



"サスケ…"

『イタチ?』

これが夢なのか。
俺には分からねえ。
隣にはサクラがいる。
布団に入ってる。
床の間の花…アジサイは今日も倒した。
サクラには躓いてこけたフリをした。
辛抱強い愛なんて俺は嫌だからだ。

床の間に…兄さんがいる。
俺は今、20歳。
亡き兄さんは21歳。
どんどん歳が近い。

"まずは結婚、おめでとう"

『ありがとう…』

本当に不思議な感覚だ。
金縛りにあったように。
動かない。
…視線は動く。
口も動かないのに…頭で念じた言葉が…。
音となって響く…。
超能力のようだ…。

何故か床の間にいるのが、俺は横向きで寝てるが。
見える。

"サスケは本当に良く頑張ってる"

『ありがとう』

その通りだ。

"己だけじゃない。
一族全員がおまえの身を案じてる。
おまえの幸せを祈ってる"

『ありがとう』

そんなことを言われると逆に重い。
俺は自由気ままに生きようとしてたからだ。

結婚祝福のタイミングで現れるのは理解できる。
これはまた夢なのか。
それとも何かの暗示か?

"おまえには里の勇者になり、子子孫孫、木の葉で栄えて欲しい"

また兄さんの決まり文句だ。
理解は出来てる。
兄さんのこの瞳に里崩しを映すわけにはいかないとだ。

『…』

返事が出来ねえ。
まさか、見透かされてるのか?
これは夢なのか?
俺のダークな面を夢で責める…そんな夢で。
俺の葛藤心を象徴する夢か?

『イタチは死んだはずだ』

"そうだ"

「これは夢なのか?
それとも、この俺の瞳を介する術なのか?
イタチは俺の中にいるのか?
どちらなんだ?」

夢でも良い。
気になるから質問した。

"夢だ。
夢とは不可思議なものだ。
何があるか分からない"

『夢か』

安心した。
夢に決まってる。
確かに、俺は兄さんに結婚を祝福されたいとは願ってた。
仏壇にある俺の一族写真を眺める度にだ。

俺は兄さんのことは今では他人にもイタチと呼ぶ。
そうすることで同じ土俵にいるつもりだが…。

"夢だからこそ。
好き勝手に話しても良い。
己は聞き役に徹する"

『最近、大変だ。
里はまだ俺を認めねえ。
俺は里から逃げたいと願い始めてる。
イタチは俺にそれを望まねえが。
少し弱気だ。
予想以上に木ノ葉は秩序に関しては厳しい。
イタチには理解できねえだろう。
俺を捨てて死に急いだから』

"悪いと謝罪心もある。
思えば、一番、大変な役目をおまえに残した。
確かに闇へ転ずる方が現状では楽だろう。
己もそれを知ってたからこそ、闇へ進んだからだ"

『なら、何故。
俺に敢えて重いことを頼む?
イタチは本当に里に留まる人生を望んでいたのか?』

"一族皆の願いだ。
うちはは木ノ葉に根付いて欲しい。
幸せを望む。
己にも責任がある。
だから、おまえをこれからも守る"

『夢だろう?』

"夢だ。
しかし…"

『イタチはいい。
俺だけで良い。
イタチは天国で暮らすべきだ。
あるのかは知らねえが』

"己はおまえを愛してる。
その瞳には世界平和を映してほしい。
これは己の生を賭けた願いだ。
それが本望だ。
おまえがどちらに転じてもきっと愛してる。
しかし、平和のために生を捧げて欲しい"

『…。
俺も平和は好きだ。
この平和が続けば良い』

"何かあれば、己を呼べ。
すぐ来る"

『夢だろう?
それともこの瞳にイタチはいるのか?
どちらなんだ?
大蛇丸はミタラシアンコの呪印から転生した。
あり得そうだ。
解答を頼む』

"それはない。
己はおまえの心を通じて出た夢だ。
夢とは人の記憶を通じて出てくる代物だ。
おまえが過去見た己の姿が映写されているに過ぎない。
しかし、相談は出来る。
夢を通じて己が召喚された。
おまえが潜在意識で己の存在を求めてる証拠でもある"

『…。
生前のイタチの性格、そのままだな。
懐かしくはある。
俺は今、過去に戻ってたのか?』

"おまえには構ってやれなくて悪かった。
その瞳はくれぐれも平和目的にして欲しい"

『今日、自来也の書籍を盗んだことを怒ってるか?』

"アレは良い。
まだ許す。
里崩し、里抜けは望まない"

『そおか…』

"おまえの考えなど己は筒抜けだ。
己はおまえの兄だからだ"

『イタチを越えるのは大変な役目だ』

"おまえは己以上に大変な役目をうちは一族全員から引き受けてる。
しかし、復讐の連鎖はもう終わらせろ。
己はもううちは一族の黒歴史を終わらせたい。
その目を通して…うちは一族に関する歴史をおまえも読んだだろう?
うちはの地下集会所に載ってた筈だ"

『読んだ。
想像絶してた』

"だろう?
己も最初、読んだときは衝撃だった。
瞳を巡って兄弟間で闘争する話もそうだが…。
それ以外にも。
おまえには己が死ぬ直前に少しは語ったが"

『アレは作り話でもなかったのだな。
あの頃は…俺を怒りへ導くための寓話とも思ったが』

"警告のためだ。
おまえにはまっとうな道へ進んでほしい。
兄なりの愛だ"

『俺に残された道はこれしかないのか?』

"応援はする。
何があっても己はおまえを守る。
約束する"

『イタチはサクラと言ってることが全く同じだな。
サクラは俺の現状を分からず言ってるぶん、アレだが』

"おまえはアジサイが嫌いなのか?
紫陽花を里抜けの道で最近、踏みながら歩いてる…"

『…』

"花言葉は辛抱強い愛だ。
サスケなら出来る。
きっと、サクラも待ってくれる。
他の男に目移りなんてしない。
いい嫁だ。
天国の一族も喜んでる。
サスケのことを己は応援してる"

言葉は出ない。
俺はアジサイ。
最近、嫌いになってるからだ。

"サクラは辛抱強くおまえを愛してくれる。
紫陽花の花を見る度、サクラを思い出せ。
おまえは強くなれ"

紫陽花を踏むのは止めようかと思えた。

そこで目が覚めた。

朝だ。

サクラは隣で寝息。

俺は布団の中。

床の間を見れば…花瓶のアジサイは倒れてる。

俺は仕方なしに。

花瓶を戻し、紫陽花も花瓶に入れた。

時刻は6時か。

今日も任務だ。

服を着る。

鏡を見て、髭を剃る。

自分の瞳を見る。
これはイタチの目だ。

俺の瞳ではない。

この瞳になってから夜目が効く。
イタチはどれほど暗い世界にずっと住んでいたのか。
理解できる。

昼も夜も分からず。
夜は薄暗い昼。
朝は眩しすぎる。

平和の文字は輝いて見える。
俺はもう里崩しなんて考えてはダメだ。

一瞬、サクラだけ連れて、結界でも張って。
カグヤが出て来て…世界消滅の瞬間を狙って。
今回はかなり遅いタイミングまで待って…人類がほぼ絶滅した世界になってから…。
それでも、どうせ最後まで生きてるナルトと二人でカグヤを倒して・…。

残った限られた数名の人間だけで新帝国樹立を…。
と危険思想に囚われていたが…。

俺の写真をとれば…。
その瞳はイタチの目だ。

飾ればイタチが俺を監視してるようにも映る。

俺が、サクラと共に写れば…イタチとサクラのツーショットにも見えるかもしれない…。

それが少し怖い。

目元だけイタチの瞳だ…。
生前の兄の瞳、そのものだ。
当たり前だ、移植したのだから…。
複雑な気分だ。

イタチは…俺に里の勇者になることを望んでるらしい。
世界平和にとことん貢献してほしいらしい…。
サクラもだ。

イタチも生前は我愛羅を潰しにかかったり…ナルトを殺そうとしたり…。
ペインに加入して自分の理想世界を構築しようと動きまくってたくせに。
俺には自分の出来なかったこと…、里に留まり里の勇者となり子子孫孫、栄えて欲しいらしい。

荷が重い…。
擦り付けられてる…。

イタチも本当はそうしたかったとか今頃、夢で出てくる。
穢土転生で会った時のイタチだった。
怖いイタチではなかった…。

死んでから変わったのか…それとも他人任せだから簡単に言えるのか…。

夢のお告げだが。

☆☆☆

今日は金曜日だ。
昨日、大体…手配は済ませた。
里の永住権はいただきたい、日曜の夜までにだ。

今日も任務は大変だ。

最近…サクラはやり過ぎで疲れてるのか…寝坊してる…。
それから、喘ぎ過ぎで…声が朝、枯れてる…。

かわいい女だ…。

真面目に長期遠征任務だけは…。
嫌なのだが…。

来るべき瞬間までは…。
仕方ない、やりまくる…。

サクラとやるのが楽しくてたまらない…。



紫陽花A



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温泉宿@結婚19〜21日目ハネムーン「サスケくん…香燐さんとは、いったい…?」











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