紫陽花@
今日も任務が終了した。
だんだん、情報は繋がってる、永続的に平和が続くことを…俺は祈ってる。
外はすっかり夜も更けてる。
6月の空気は気持ちいい。
初夏だ。
帰宅して…前庭の石段を渡る。
引き戸の隣、チャイムを鳴らせば。
向こうから扉が開く。
サクラのお出ましだ。
サクラは俺が初日に与えた…黒字にうちは一族のロゴが入った服を着てる。
ノースリーブだ。
家の明かりがある。
「サスケくん、ただいま。
お疲れさま。
今日はお風呂?
ごはん?
それとも私?」
帰ってきたら。
抱擁がある。
それからキスまでしてくれる。
とても癒されてる。
『ただいま、サクラ』
「サスケくん、デートしようよ」
サクラはモジモジしてる。
今週は…実はしようと思ってるが…俺は言えねえ。
俺は家の仏壇までの道はサクラの顔は一切見ねえ。
いつものことだ。
今日は特にイライラしてる…任務中に出た嫌な話でだ。
「いつも家ばっかり…」
初日から言われてる…。
渡り廊下を俺は歩いてる。
顔は見ない。
仏壇がある部屋に向かう。
「普通のデートしてみたいよ♪
サスケくん」
『…』
「サスケくんと考えてみたら…再会した翌日に結婚で…。
そっからしてばかりで…。
キャー。
しゃーなろ…。
で。
ね?
普通のデートしたことないんだよ?
私たち…」
『…少し離れろ』
俺は家の居間につき…、ふすまを引き…。
仏壇の前に敷いてある青い座布団にどっかり腰を下ろし、手を合わせる。
昨日と違う花が生け変えられてる。
黄畳の部屋だ。
今日は青い花、アヤメだ…。
これは許す。
アヤメの花言葉は″希望″だからだ。
その間は…俺の後ろでサクラも黙ってくれる。
俺が祈ることと言えば。
(この平和が続いて。
それからサクラのためにも俺が良い職に付けますように)
これだ。
俺は職はどうでもいい。
しかし、サクラが最近では将来性のある男が好きらしい。
これが苦しい。
昔のように力だけを見てくれれば楽だっただが。
今は権力に服従する予感がしてならねえ。
俺の気のせいであればいい。
「私もしてみたい。
ナルトとヒナタも、イノとサイも、それからシカマルとテマリも…。
チョウジとカルイも、キバとタマキも…。
みんな、里でデートばかりで…。
動物園や茶屋へ遊びに行ってばかりで…。
結婚式だってしてて…。
してないカップルも、これからするつもりだったりして…。
それから、イルカ先生とアスマ教官まで…」
俺は溜息を吐いた。
まず第一に…俺が大嫌いな単語”ナルト”がサクラの口から出ている。
こう誘えば、サクラも俺が積極的にデートしてくれるとでも考えてるのか?
ナルトにはアカデミー時代、常に
「しけた野郎だってば、こんな奴に恋愛なんて似合わねえってば。
俺ならデートもするってば。
女子達、全員、俺を好きになった方が良いってば。
どうしてこんなヤツに群がるんだってばか?
顔も無表情だってばよ。
俺にしとけってば。
サクラちゃんもコイツ、止めて、俺を好きになれってばよ。
サスケになんて一生、恋愛、無理だってばよ。
きっと、強くなることしか頭にねえ馬鹿だってばよ」
この台詞…毎度、激しく怒り狂ってた。
俺に無理なことを簡単にできるヤツに対して嫉妬心も含めて。
今でもまだ俺はナルトを完全に許せねえ。
サクラへの謝罪心はたくさんある…。
しかし、俺はまだ…。
里で楽しく結婚式を実施するつもりもない…。
全員の視線が痛い、理解してほしい。
この里は居心地が悪い。
サクラだけが俺に残された居場所でもある。
『俺は忙しい。
里で認められるのに必死だ』
半分、建前。
本音もだ。
「理解してる。
サスケくんが失った分の年月を埋めようと…必死なのも。
だけど…」
『…』
いつもこの里にいるとき、俺は劣等感だ。
全員、役職があるのに、俺だけまだ中忍試験すら受けれない。
サクラには辛い思いばかりだ。
サクラは医療忍者として優秀な人材だ。
俺は狂うぐらい苦しい。
サクラのために命懸けで何かをしたいと願ってた。
それなのに、サクラに頼ってばかりだ。
いろいろな面でだ。
木ノ葉の里は特に厳しい。
当たり前だ。
昔、ミズキと言う…イルカ先生のライバルに当たる上官が、任務中に仲間を一人見殺しにした事件があった。
その時の判断について考慮され、師範試験を成績では通過したが…里の判断で失格にされたらしい。
要するに過去の性格面まで職については考慮される。
その後、ミズキ上官は24歳…俺が12歳に実施されたアカデミー卒業試験の頃…当時、ドベで変化の術すら出来ないヘボのナルトをそそのかし、里で保管されてる禁断の巻物を盗むように誘導した。
結局、イルカ先生のお陰でナルトの罪はまぬがれ、ミズキ上官は獄中へ送られた。
その事件のせいで、ミズキ上官と椿とか言う女は結婚できずにいたらしい…。
そのとき、ナルトは巻物のお陰で独自に影分身の術を会得したらしい。
思えば…。
この頃からヤツに才能はあった…。
ムカつく。
そのあと2年後…ミズキ上官は26歳…。
俺が14歳、既に大蛇丸へ走り…里抜けしてる時。
ミズキ上官も里を抜け出すことを計画し…自由と力を求めて大蛇丸へ走ろうとしたらしいが…。
里に発見され…再び、牢獄に入れられたらしい。
この事件で再び、ミズキ上官と椿とか言う女は結婚できずにいたらしい…。
俺のアカデミー時代、担任だったナルトの絶対敵味方、イルカ先生も…戦後すぐ、30歳前後にして…やっと、ナルトやシカマル、リーなどが里で認められ、俺も何とかもとに戻り里の英雄になれた功績で、アスマ教官からアタックされたらしい。
イルカ先生と同じ歳のライバル、ミズキ上官がどうなってるのかは風の知らせにも入らねえ…。
そろそろ椿とか言う女の元に戻ったのか…。
それとも椿に捨てられたのか、俺にはそんなことは全く関係ねえ。
俺は…。
アカデミー時代、常にイルカ先生には、
「俺と同じ歳のライバル、ミズキ上官に…おまえは似てる」
とか言われ、あまり大事にされた覚えがない。
あの先生もエコ贔屓がひどいとも思う…。
ナルトの絶対的味方だ。
サクラはナルトをボロ糞に貶し、俺を褒め称えるくらいで、釣り合いがあうと思う。
☆☆☆
俺の犯した罪は…そのミズキ上官、以上だ。
俺は…ダンゾウ。
元火影を暗殺した。
ダンゾウは里を守る名目で白やザブザの討伐、俺の一族ほぼ皆殺しを命令してるのに。
ダンゾウのせいで何人亡くなったのか、分からない…。
絶対君主恐怖政治にすら近いのに…。
火影が綱手になってからそれはなくなった…。
カカシになってからもだ。
里のためなら大量殺人が合法で、里に歯向かうなら非合法になるのも不思議でもある、しかし…俺にはサクラがいる。
サクラに悪評が流れるのが一番困る。
反省してる。
どれだけ功績を残しても…同じラインに里では立てないのが大変なところでもある。
砂がくれの我愛羅の方が…ずっとすぐに風影になれたが…。
我愛羅も自分を殺そうとする叔父を殺して発狂した日からずっと…6歳から13歳の間は里の最終秘密殺戮兵器として、利用され続けてた…。
その功績を考慮されて、風影に上がれた。
実に7年…それから3年…。
6〜16歳までを我愛羅は砂隠れからの任務には忠実に従い…最終殺戮兵器として身を捧げた訳だ…。
ヤツも数え切れない人間を自分の砂で跡形もなく消失させた…。
中忍試験の時、砂がくれが木ノ葉に対して起こしたクーデターでも我愛羅は里の最終秘密兵器扱いだった。
俺が6歳ぐらいの頃には、隣里に最終秘密兵器がいるとは噂が流れてた。
奴と対戦するときは棄権しろ、殺されると噂が手洗い場で流れてた。
シカマルが流した情報だ…ヤツの父は他里と交流のある職らしいから…息子を守るために伝えたのだろう…。
そんなシカマルの父も3年前、戦死した…。
シカマルは俺が、ここ3年間も里外の友好活動に貢献してるお陰で…。
テマリとの交際が正式に認められ、結婚へ至るらしい。
シカマルも俺に感謝すべきだ…。
3年前のあの戦争では…その他…ネジも戦死し、イノの父も戦死し…。
あの戦争はその他大勢の命を奪った。
カグヤは…木ノ葉だけに留まらず、各地に点在する里…世界、最大の脅威ではある。
それは、理解はしてる…。
我愛羅の件については、サクラやナルトは恐らく知らねえ。
俺もその時に聞いた。
我愛羅は殺戮こそするが…砂がくれの里にとっては忠実なシモベではあった。
俺がした功績はまだまだ足りない気がする。
まだ刑期すら終えてない、そこから更にいろいろある。
中忍試験すら受かってない…試験資格すら満たされてるのかも不明だ。
サクラは上忍試験の上も受かってる。
ナルトは火影への階段を着実に進んでる。
俺がこれを知らねえわけがねえ。
サクラは俺の前で健気に里の男たちの職に就いて話そうともしねえが。
俺の能力で知らないわけなどない。
調べればすぐ分かる。
リーに挑発されなくてもだ。
火影と言えば…里で最高役職、それを暗殺した俺は革命家、重罪人だ。
その妻、サクラはきっと、俺が知らない場面で辛い思いばかりだと思う。
この里の住人は道徳心が少ないからだ。
サクラの昔からの知り合いは大丈夫かもしれねえが。
それ以外の奴らには白い眼差しで見られてるだろう。
現状は俺の一族が残した遺産を切り崩してる状況でもあるが、底を付けばサクラに頼りっきりだ。
里に残るより俺の本心を考えれば闇世界でサクラと自由気ままに暮らす方がどれだけ楽か分からない。
しかし、俺の亡き兄さんも敢えて苦しい里に留まることを祈ってた。
抜け忍だけで死罪の厳しい里にだ。
サクラも里を愛してる。
仕方がない。
闇世界で人間を力で屈服し俺の帝国を根性で作り上げ…そこへサクラを妻として娶る。
このストーリーの方が俺にとってはどれだけ楽チン人生か分からねえ。
邪魔しそうな人間と言えばナルトぐらいなものだ。
俺の力に匹敵するのは…この世界で現在ヤツだけだ。
ヤツさえ倒せば俺は自分の帝国を簡単に作れそうでもあるのだが…。
仕方ない、耐え忍ぶしかねえらしい。
天国の兄はそれを望んでねえ。
里も俺の力に屈服し、俺を認め、最高役職につかせ、里の永住権を与え…。
それから長期任務を別の人間にさせれば良いものを。
俺ももう婚姻の身だ。
ココにいたい。
他に出来るヤツはいねえのか…?
俺だけ大航海時代じゃねえが…開拓民なのか?
冗談であればいい。
誰がこれを言い出した?
言いだしっぺに制裁を喰らわせたい…。
しかし、どうせ里の住人は嫌な任務の擦り付けあいだ。
俺しか出来ねえのは分かる、また天を俺は恨んでる。
逃げ出したい、”自己犠牲の精神でいろ”とは六行仙人にも説教のごとく。
”うちはシスイこそ真の忍びだ。
忍者とは忍び愛する者のことを言う”とか諭されたが。
全く、納得できねえ。
何故、ナルトではなく…俺なのか。
またなのか??
カグヤが現れても良い。
サクラと俺だけ里から逃げ出して結界でも張って自由気ままに生きたい。
そんな衝動が沸くのだが。
里で認められようと必死な件に関して喜んでるサクラを見れば言う気にならねえ。
サクラは思えば…一度も本気で里抜けを考えたことはねえ気配だ。
里を愛してる、それが伝わってくる。
ナルトと同じ人種だ。
自分の両親を捨ててまで俺について来ようとはしそうにねえ…。
ガックリ来てる…。
香燐もあの時、殺さなかったのが証拠だ。
それぐらいの覚悟で俺と闇世界に来る気はねえらしい…。
俺は自分勝手な性格なのは自覚ある。
そこまで里のために自己犠牲をしなければならないのか。
サクラのためだと必死で俺は里に忠誠しようとは努めてるが…。
逃げ腰にもなる。
リーに圧力を掛けられた日から余計に…権力のなさによる非力さを身に沁みる。
ココで頼ってばかりで良いのだろうかと…、今、何が出来るのか悩んでる。
また戦争並みの事件が10回起きて初めて認められそうな気配でもある…。
今日の職場での会話で、俺だけまたマグロ漁船ではないが、遠方に飛ばされそうな気配なのを感じた。
いつかは知らんが、俺だけカグヤの情報をつかめ次第…どこまでも引き離されそうな気配でもある。
それも…何年か分からねえ…10年にも及ぶ可能性があるらしい…。
火影暗殺、革命、それから拉致…暁への加担、鷹への加入。
ありとあらゆる悪行を里に対してしたのも理解してる。
死罪から無期懲役…そこからの減刑も喜んではいる。
牢獄生活よりマシなのも。
しかし、里に良いように利用されまくりな気もする…。
少しまた、里を恨んでる。
いくら俺しか出来ない任務であってもだ。
うちは一族は代々、強すぎる力ゆえに嫌な任務ばかりで…一族が結託して里にクーデターを企でたが…。
理由も判る、文句も言いたくもなる。
俺は自分の両親を責める気にもなれねえ。
一生、このまま事件もなく平和が続けば良いなと願ってる。
溜息だ。
今日は機嫌が悪い。
サクラにはこの件を言う気にはなれねえ。
最悪だ。
しかし、来週の任務は…クーデターとまではいかねえが、文句轟轟にカカシに言いまくって、里から遠征に出来ねえか。
交渉しまくろうかとも願ってる。
俺もダダをこねたい。
里が平和な今なら許されそうな気配でもある。
えげつなく今日は暗すぎる。
まだ、仏壇のある居間にいる。
瞑想をしていた。
「サスケくん、外に出ようよ。
ね?
デートしようよ。
手を繋いで散歩でも良いよ。
私、サスケくんと心が繋がってとても嬉しい。
だから、ね?
最近、オープンしたらしいけど…動物園とか、里のデートでは…定番だけどどうかな?」
『・…』
全然、理解されてねえ。
俺は手を繋ぐデート、無理だ。
動物園もさすがにそこでは犯せねえ。
楽しくはねえ、申し訳ねえ。
ヤレルとこなら許す。
「サスケくん?」
『家で良い』
「そっか。
そうだよね。
サスケくん、頑張ってるものね。
私も耐える。
今日の夕飯はトマトとザル蕎麦、それから卵焼き、アサリの味噌汁だよ。
ごはんどうする?」
『ありがとう…。
あとでいい。』
「ううん。
そっか。
サスケくんがこの里で認められるのに必死なの知ってる。
それと家族が欲しいことも。
私、元気な赤ちゃん産む」
『…』
「サスケくん?
キスして良い?」
『すきにしろ』
サクラから来てくれたら俺はそのあとは抱く。
好きすぎてたまらない。
今日は特に暗いから口数がねえ。
サクラが喘いでるのが耳につく。
俺はしてるときはスキダともアイシテルとも言えるが。
まだ全ては話しきれねえ。
アカデミーの頃、誕生日も家族のことも全て、言えずにいた。
相手が調べてくれねえと伝えられねえ性格らしい。
サクラは鈍いのか。
俺がしてるデコピンについても尋ねては来ねえ。
尋ねたとしても俺は貝のように押し黙るかもしれねえ。
サクラを抱いた後は、課題仕事する。
それか夕飯だ。
「サスケくん・・・夕飯食べる」
『ありがとう』
サクラの飯はおいしい。
机にある椅子に座る。
隣の部屋…赤いのれんが掛かる先にある台所から…サクラがヒョッコリ顔を出して…今日の夕飯を運び出してくれてる。
机の後ろには…木のタンス。
その上には…写真スタンドがある。
何もまだ入ってない。
最近は…だいたい、…やって、飯食べて、時間があれば風呂だ。
皿の上に乗ったトマトとザル蕎麦、それから卵焼き。
お椀に入ったアサリの味噌汁。
どれもうまい。
「美味しいかな?
お味噌汁、どう?」
サクラは俺の隣の席に座る。
「ありがとう」
少し甘めだがまあ、許す。
「えっと…味は?」
『おまえの味だ』
「え…そんな」
『これ食べたらすぐまた課題仕事する』
「え…あのあと・…。
サスケくん、私たち、まだ写真撮ってないよね?
撮ろうよ。
家に写真機はないけど…写真館でも…」
まだ写真は木ノ葉では高価だったりする。
これがとても助かってる。
『俺は写真は嫌いだ』
「え?」
『おまえの写真だけ飾っておけ』
俺は自分の顔が好きではない。
サクラの顔が好きだ。
自分の顔見る度にゲンナリしてる…。
サクラがナルトがカグヤの前で化けた男軍団たち…あの顔面偏差値に嫉妬してる。
あれの正体…本体がナルトなのにサクラが鼻血を流したことについてもネックだ。
殺意さえある、ナルトにだ。
俺は家にはサクラの顔だけを飾りたいだけだ。
自分の顔など毎回、気持ち悪い、寒気が起きる…家に飾りたくねえ。
サクラは俺の美しい花だ。
自画像など別に要らん。
髭剃るときぐらい鏡で見れば終わる。
醜く映られて幻滅されるよりましだ。
サクラの中の記憶を頼りにすれば良い。
サクラの中では俺は格好よく映ってるらしいからだ。
「えええ?
サスケくん、カッコウいいのに。
私、撮りたいよ」
『いい…』
「イジワル」
☆☆☆
実は、最近…この瞳に臓器移植してからイタチを思い出す。
鏡を見る度にだ。
俺の顔…目元だけ…どう見ても…生前の兄の瞳、そのものだ。
他人から見れば兄弟の瞳の差など分からないだろう。
俺は兄弟だからこそ、その差が分かる。
これは俺の目ではない…夜目がよく効く、瞳孔が開きやすい…昼は眩しい。
イタチの瞳だ…瞳孔が開き、黒目がちだ…。
俺はイタチに頼まれ、イタチの出来なかった人生を歩んでくれと頼まれてる。
エド転生でだ。
しかし…写真を撮れば…イタチの瞳と、隣にはサクラ。
そんな写真が撮れそうで…恐ろしくもある。
イタチに嫉妬しそうな自分のためにも写真が最近、苦手だ。
この瞳になってから、複雑な気分だ。
イタチの瞳でサクラの痴態を映してるのかと思えば。
そこに怒りが来るらしい。
いくら兄とはいえ、見てないことを願ってる。
あり得そうで仕方ない。
ミタラシアンコの呪印から大蛇丸が転生された。
イタチとは贖罪の旅で2回も夢枕に下りてる。
夢枕では否定してくれてる。
しかし…この瞳を通じて監視されてる気がして仕方ない。
気のせいであればいい。
大蛇丸すら、俺は大蛇丸に体を乗っ取られそうになり、逆に大蛇丸に勝てたあのとき…。
そのあと、イタチとの討伐戦で…まだ大蛇丸が俺の体に憑依していて…イタチが完全に消失してくれたのだ。
イタチの瞳…。
これに…イタチの残留思念がある可能性は…高い気がして仕方ねえ。
あまり、気になるから大蛇丸には査定してもらいたい…。
いくらイタチといえども、サクラは渡す気になれない…。
兄弟でもそれだけは嫌だ。
サクラは俺の嫁だ。
イタチには申し訳ない。
結婚も出来ず亡くなってる。
俺のためだけに生きてくれた。
しかし…。
そこは許せない。
時々、仏壇でも祈ってる。
(イタチ、まさか…俺の瞳にいるのか?
いなくてもいい。
いてもいい。
しかし、サクラだけは俺のモノだ。
申し訳ない。
そこだけは許してほしい)
これは祈ってる。
兄弟でまさか趣味が同じなら俺は嫌だ。
イタチには悪いが。
実はサクラは記憶の彼方らしいが…イタチとサクラは一度、接触がある…幼少時代、俺が6歳ぐらいにだ。
その事件を機に俺はイタチは越えるべき壁だと認知した。
俺は…イタチの歩みたかった人生を進んでるらしい。
イタチの瞳を交換後は確かに、イタチのことを考えて進んでる…。
そこが恐ろしくもある…。
☆☆☆
飯も完食した。
『サクラ、ごちそうさま』
「ごちそうさま…どうだった?
卵焼き」
『おいしかった』
前は甘めだったが今日はしょうゆ味が効いてた。
「良かった」
『おまえはごはんを食べたら、寝てろ。
まだ元気なら抱いてやってもいい』
「え…サスケくん。
えと」
『俺は夫婦生活に、とことん没頭することに決めてる。
時間があるうちはそうしてみたい』
今日、本気で嫌な話を聞いた。
余計にヤリまくりたい。
「サスケくん、忙しいものね」
『そうだな』
「サスケくん、じゃ…」
俺は一応、隣の寝室へ行く。
帰宅してすぐは…仏壇のある居間だった…。
渡り廊下を通れば空の月が天井にある。
今日は七日月くらいか?
庭の池に月が反射してる。
庭の石段も草が生えまくってる。
手入れは大変でもあるが。
自然体がスキだ。
フスマを開けば…寝室だが…床の間に掛け軸がかかってる。
サクラの枝を持った天女の掛け軸だ。
背景が山が連なる。
山水画だ。
サクラの趣味らしい。
少し前までは…生前の母から伝聞によれば…俺が誕生した瞬間ぐらいにイタチがアカデミーで書いたらしい習字。
隠れ、忍び耐える者″
という達筆な文字が掛け軸には飾られてた。
魂胆は今年こそ、俺の誕生日を祝えという意味だが…サクラはもしかして…察してくれたのだろうか?
掛け軸が今日は変わってる。
確かに、今の俺にイタチの言葉は重い…遠征任務、嫌がってる。
サクラは良い趣味をしてる…ここは感激だ。
掛け軸の前には…青い花器。
壺状の花器のなかには…アジサイ。
黄畳には黒地にうちはの紋様が印刷された布団が二組。
枕と共にある。
それから円窓。
壁は砂壁。
小さな机がある部屋だ。
サクラは…照れてる。
今日は暗い。
別に最後まで回数はなくてもいい。
触っていたい。
サクラの肌は心地いい。
俺は甘えることに決めた。
最近では寝室に布団がちゃんと敷いてある。
黒字にうちはの家紋入りの布団だ。
すぐ押し倒せるから嬉しい。
サクラのために認められたいとは願う。
しかし、来週からの長期任務はカカシに文句轟轟してみようとも願ってる。
平和なうちにだ。
「サスケくん、私のこと、好き?」
素面では話せない。
しかし、
繋がってる時には言ってやる。
『ありがとう、好きだ』
俺は絶対普通では言えない、サクラはそこを理解してねえ。
「サスケくん、大好き」
終わった後はスッキリだ。
あと何年、この平和が続くのか…カグヤが現れねえのか。
俺は常にそれを危惧してる。
『サクラ』
「サスケくん?」
『・…』
おまえが俺のせいで大変な目にあってるか。
心配だ。
それが言えない。
「どうしたの?
今日は変だよ?」
『あ』
おまえは俺がもし10年単位の長期任務に出ると知れば…どうする?
他の男に行くか?
それも聞けねえ。
サクラを抱き締めた。
俺は泣いてた。
「サスケくん。
どうしたの?」
『俺は…』
「サスケくん?」
『…』
そこから何も話せねえ。
本当、昔から性格に進展がねえ。
大昔、家族を失った時もこれで隠したまま時間が過ぎた。
7年の月日がだ。
「サスケくん。
今まで辛かったんだね。
家族を失って。
だから、泣いても良いんだよ。
きっと、今、嬉しくて泣いてるんだね。
私、サスケくんのために理想の家族になる。
大好き」
勘違いされてる。
それも昔からだ。
裸のまま抱き合ってる。
俺だけ泣いて何も伝えることは出来ない。
どんどん弱さが出て来てる。
「大丈夫、きっと。
私たち、家族になれる。
大好き」
『ありがとう』
結局、この件は話せずにいた。
「サスケくん、今…6月だけど、私、マフラー編む練習してるんだよ。
9月までに出来たら、いいな。
サスケくんの誕生日、7月23日だよね。
カカシ先生から教えてもらえた。
誕生日は盛大に祝おうね」
『ありがとう』
やっと、俺の誕生日が分かったらしい。
これもアカデミーの時は、サクラが知らないので泣いてた。
そのことを思い出して涙も止まった。
もしかしたら、今年初めてサクラから誕生日を祝ってもらえるのかもしれない。
イノからはアカデミー時代、毎年祝われてた…。
『期待してる』
「ケーキも頑張って作る」
『俺は甘いのは苦手だ』
「トマトなの?
よく食べてるよね」
『味噌汁で良い』
「そっか。
味噌汁。
最近、出してるよね?
おいしい?」
『ありがとう』
「味のこと聞いてるんだよ?」
『おいしい』
「そっか…。
サスケくんのお母さんってどんな味の味噌汁だったの。
甘め?
辛目。
濃い目」
『濃かったかもしれない…』
「そっか。
うちは甘めで。
減塩で濃い目に変えるね」
『ありがとう』
本当に良い女だ。
☆☆☆
布団の中でサクラを抱き締めながら、思案してた。
どうやってカカシに交渉すべきかだ。
俺は刑が消える速度を遅くなっても良い。
今、平和なうちは里にずっといたい。
来週の長期を取りやめてもらいたいが。
カカシの好物と言えば塩さんま、それから茄子の味噌汁。
饅頭ではねえ。
どれだけ甘いものを貢いだ方が楽かは知らねえ。
俺は絶対、家にカカシを呼んでサクラの手料理など振る舞う気にはなれねえ。
どうやって交渉すればいい?
本気で悩んでる。
なんかねえのか…。
『サクラ、俺は来週から一週間、ココにいねえ。
お前はどう思ってる?』
「とても寂しい。
カカシ先生にも頼んでる。綱手様にも…。
大変なんだね、任務…」
『ありがとう』
「私にできることならサスケくん、何でもする」
綱手の好物は鳥のササミ、酒。
俺は溜息を吐いた。
『サクラ、頼みがある』
「サスケくん。
何?」
『明日の夜は茄子の味噌汁、塩さんま、鳥のササミが食べたい。
明日、買い物も頼む。
地酒があれば買ってほしい…良い酒なら何でも良い。
悪い』
「分かった。
美味しく作るね」
『4人分、頼む』
「え?」
『2人分は、俺の部下に配る。
日頃の恩を込めて』
「味噌汁なんて配れるの?」
『何か蓋の付いた容器に入れる。
適当にする』
「そっか」
『悪い』
「いいよ、何でも言って」
これだけで落ちるとも思えん。
あと…どうやって、奴らを納得させるかだ。
カカシ…ヤツにはイチャイチャ小説の秘蔵版を与えねばならねえ。
ヤツが持ってねえ冊子をだ。
あるかは…知らねえ。
自来也の家から最後の遺書を探すか…。
それとも出版社に圧力を掛けるか…しかし、バレればまた罪が増える。
とにかく俺の目の力も総動員して探すべきだ。
勘ではありそうだ。
それから綱手にはお酒…地酒が好きだろう。
両方、何を持っても買ってきて。
それから…弱みを握って、威圧しなければならねえ。
カカシには火影の癖に、任務をサボって女遊び豪遊旅行を企画してたことを…里中にばらすと圧力を掛けて…。
飯と本を渡す。
それから…綱手には木ノ葉の金を少しネコババして…、懸け事接待に利用してたレシートを見せて…酒と鳥のササミを与える。
綱手のレシートならもう既にある。
前からこれは計画してた。
ずっと弱みを探してた。
二人はこれで落とす。
何とか永住権を力付くでも手に入れる。
平和なうちにだ。
手段は選ばん。
罪などゆっくり償えばいい、これ以上…平和なうちは永住させてもらいたい。
俺には口での交渉能力はねえ。
綱手は酔わせさえすれば契約書にサインをさせるのは…割りと簡単に進めそうだ。
問題はカカシだ。
1年前、カカシの命を俺は…隕石を爆破して助けたこともある・…恩着せがましく、その件を語り始める。
それでも良いだろう。
命の恩人には弱いはずだ。
弱みを握ったのも同然だ。
自来也の所属してた出版社に行けば…。
俺の力なら…そこの社にある紙は隠してても読める。
あるかもしれねえ。
出版原稿に入れられてねえ文章がだ。
カカシはこの線で行く。
時間が余り俺にはねえ。
4日後の日曜日、夜に全て決める。
それまでに情報を調べ切らねばならねえ。
明日…木曜日の夜、カカシのデスクに弁当を置いてかねばならねえ。
綱手にもだ…。
俺の力なら…朝、こっそり潜入することなど楽勝だ。
それに今では許可もある。
カカシには明日、会う話だ。
そして…木曜日…明日は帰り際…自来也の所属する出版社にも行かねばならん。
図書館に自来也の本がない可能性は高い。
公園近所の忍者書店に行き、18禁コーナーで出版社名を頭にメモしなければならねえ。
そこからだ。
本屋は開店10時、閉店午後9時だが。
俺は便利なことに…本屋内部程度の書籍なら…。
閉店してたとしても…本屋のシャッター前から、全部を調べられる。
それから、里の図書館で出版社の住所を調べ。
これも閉店してても内部の書籍なら調べられる。
中忍試験の時、カンニング問題でした術の応用だ。
本が多い分、上手くいくか分からないが。
開店10時、閉店7時には間に合わない。
何なら鍵をこじ開けて図書館に潜入するか。
俺だけ任務で調べ事があるとカカシに圧力を掛け、図書館のカギを貸してもらうか…。
見張りの元、図書館に通してもらわなければならない。
そちらの方が良いかもしれねえ。
カグヤに関する情報収集だとでも言えば一発だ。
明日、出勤前にカカシの元に行き、そう言おう…。
里の最高職、火影だから早朝勤務に決まってるだろう。
ほぼ、職場に寝泊まりの日々なはずだ。
木ノ葉の地図なら自宅に持ってる…鞄に明日は携帯しておき。
それを頼りに木曜日、金曜日までには…任務帰りに行かねばならない。
また時間が取られる。
今日は…。
水曜日…。
明日、木曜日には殆どの情報を揃えないと…。
金曜日は忙しい。
今週末…土日のデートは難しい…。
旅館帰りの日曜夜…俺だけ、走って…綱手とカカシに会いに行かねばならん。
大変そうだ…。
☆☆☆
サクラがどうして最後まで俺を好いてたのかが未だに不思議でたまらない…。
俺ですら自分の兄弟だと言うのに…血を通った兄を信じきれず、死んでからその歪な愛の形に気が付いた。
イタチは確かに俺の強さがあがるために犠牲になった。
俺はイタチと共にいたかったが。
俺は旅に出なければ甘えてばかりで弱いままだっただろう。
サクラはいったい…俺の何処が好きなのか…それだけが、謎でたまらない。
どこまで悪さをしても許されるのか。
本気でどこを好いてるのか。
サクラの趣味は相当、悪いと感じてる…。
サクラは俺を優しいと表現する。
そうだろう、分からないように差別してずっと優遇してる。
しかし…別に俺が助けなくてもナルトがサクラを助けてた。
始終ずっとだ。
第七班結成後は…ドベのナルトが強くなりすぎて、ずっとそんな状態だった。
ナルトも不憫でもある…ナルトは俺の隣でも、いないところでも…死に物狂いで常にサクラを守ってた。
俺はナルトには…サクラに気が合った時があった気がしてたまらない。
ヒナタに落ちたのも、サクラの熱意にやられて、アイツが下りただけと言う可能性だってある。
アイツは博愛主義すぎるからだ。
そんな可能性もある男だ。
しかし、最後までサクラはナルトへ転ばなかった。
途中経過はどうであれ、結果が全てで良い。
そういうことにしておく。
サクラの心が揺れ動いてた時期があったとしても、許す。
俺ですら兄の真意に気が付けず、恨み続けて。
死んでから気が付いた。
サクラが天使なのは認めるが。
サクラにしてることを思えば胸が痛むこともある。
サクラに優しいのはどう見ても、俺よりナルトだろう。
確かに俺は冷酷だ。
一点以外どうでも良い。
常にそうだ。
サクラはそれでも許すらしい。
感謝してる、サクラへの償いの意識はある。
サクラは「ナルトがラーメンのように私のことを好きだって言ったのよ」と笑った。
「ナルトにはラーメンの好きも、女の好きも分からないみたいなの」と。
しかし、俺は知ってる。
ナルトにとってラーメンは欠かせないものだ。
イルカ先生との思い出で。
これがないと頑張れないご褒美でもある。
ナルトはラーメンがないと死にそうなレベルでラーメンを愛してる。
まだ「アイスクリームの好きと私の好きは一緒なの」と言われた方が…。
俺としては良かった。
ナルトにとってのアイスクリームは一瞬の娯楽だからだ。
普通に考えて思春期で常に隣にサクラがいた。
アカデミー時代からナルトはサクラにアタックがうるさかった。
ナルトですら気が付いてない頃に、ナルトはサクラに脈があった可能性が高いと俺は見てる。
ナルトは俺の勘ではアカデミー時代はサクラしか見てなかった。
ドベの癖にだ。
俺が10歳ぐらいの頃は、いつもサクラにナルトがアタックして、俺を睨んでた。
ヒナタにはナルトは変人扱いで見向きすらしてなかった。
ヒナタもナルトへ全くモーションすらしてない、そんな頃の話だ。
ナルトの初恋がサクラの可能性が高い気がして仕方ない…。
俺が一番、不思議なのはナルトがどうしてサクラを諦めたかだ。
ナルトならしかねない。
やはり戦後なのか?
まさか、俺の本意に気が付いたからなのか。
謎は残る。
ネジが戦死した後…そのヒナタが抱える精神的痛みをナルトが相談役になり…。
それでもまだサクラは俺を慕い、ナルトがヒナタに折れた気配が…ある。
ネジは死に際、ナルトにヒナタを頼んでた。
そういう意味だ、ネジの行動は。
たくさんの不思議がある…。
サスケの日常結婚16日目任務後半
☆目次
紫陽花A