班結成@
☆☆☆
俺は自分が兄に騙された事件以来は…疑って疑って疑いまくる。
それぐらいの精神だ。
サクラの俺への感情も恋愛とは認めん。
それから俺もだ…別に恋愛じゃねえ、親愛だ。
6歳でそれは早すぎだ。
サクラも恋に恋する乙女をしすぎてる…少女マンガみたいな恋愛に憧れてるらしいが。
あれは無理すぎる。
少し現実に目を向けさせたいとは願ってる。
俺の両親は一族婚で見合いで…ある日突然だ。
数日、見合わせもあったが…そんなものだ。
13歳以降は相手の存在を知る程度だが…距離は置いてたらしい。
デートもなかったらしい。
20歳ぐらいで突然だ。
お互い、思い合っていたらしいが…修行に明け暮れそれどころでもなかったらしい。
俺の”うちは一族”は…大抵、このコースだった。
親に決められた道筋を辿るのが割と多かった。
あまり親戚同士の見合いが多いから、不思議に感じて、去年ははぐらかされたが…。
いろいろ縁談の時に、跳ねられることがあるらしい。
そこらへんは…まだ実感わかん。
うちは一族は強すぎるがゆえに…里で差別される嫌いがある。
狂乱した兄が話した言葉の意味は知らねえが。
確かにあの…兄の狂乱話を聞けば…俺が兄のせいで、逆に偏見されそうだ。
俺も兄と同じで…力のためなら一族殺しでも何でもやるのか?と。
そう言う解釈で正解かは知らん。
恋愛婚が…俺の身内には…そう言えば、いねえ。
何か、俺の一族に大昔、他の血筋と恋愛した奴がいたらしいが…失敗して…里から逃亡した人間の話なら聞いたことある。
意外にいる…今頃、何してるか知らん…死んだかもしれん…。
俺の血筋は一途で固い奴らの集団だが…里の住人はどれだけ軽いか分からん…。
軽すぎだ、年中…いろんな恋に、頭は満ち満ちてる。
隙あらば…落とそうと言うのも見えてる…ドン引きレベルだ…。
幻滅し続けてる…いろんな人間を観察するにつれて。
平然と傷心の人間に、空気の読めん説得を掛けやがる…里の住人は…。
気変わりだらけだ…この里の人間は…。
俺の一族に残る…貴重な恋愛話だが…。
「時が解決する…。
別れたら次の人だ」
それを女の浮気相手の男から言われた俺の先祖は…相手の男は殺したらしい。
当たり前だ…空気読めんのも良いとこだ。
そのあと、女連れて里の外出たらしい。
先祖は強かったから…余裕で、里の外にウジャウジャいる敵から…女の身を守れたらしい。
女には
『浮気の罰として…一生、結界で張って監禁する…』
とか宣言して…行方くらませたらしい…。
今頃、何してるのかもしらん…女が許されたか…その血が途絶えたか…続いてるのかすら謎だ…。
生前、父は、そこから突然変異が起きて、違う血継限界の血筋が他里に流れたんじゃないか?
と論説してたが…それも疑わしい…。
他にもいる。
女の浮気相手の男も女も…両方、戦死したパターンで。
+時が解決する…。
別れたら次だ…+
同じことをいろんな人間に説得されたが…。
制裁しようにも…両方が戦死してる…天罰は落ちてる…。
しかし、煮え切れず…里の外へ出て行ったらしい…。
里の外で、他の相手が見つかったのかは知らん……。
一族のために…謎の任務に没頭して殉職したかもしれん…。
「時が解決する…。
別れたら次の人だ」
あの説得は…俺の一族には禁句だ。
俺の一族は、失恋に弱いらしい…全員、コミュニケーションスキル低い…。
その点、一族同士の見合いは、確かに楽だ…。
他の家はどうかは知らん。
俺は一族には…
"恋愛は重いもんだ"
とコンコンと聞かされてた。
;見合いは楽だ。
サスケくんも見合いがいいわよ;
とも。
しかし…”うちは饅頭屋”前で、サクラと一族が対面してからは…。
;あの子にしときなさいよ。
良い子よ?
あの子;
と俺の一族も乗り気だったらしい…。
俺は一生、恋愛したいと願わん。
聞いてると大変そうだからだ。
楽に…サクラと見合いが良い。
恋したいと願わん。
☆☆☆
忍者として…術式も大切だが…。今一番いるのは…。
漢字力だな…。
自宅、帰ったら今日も辞書を開く。
俺の憎き兄さんは神童だった…。
既に満6歳で12歳までの漢字は読み書き可能で。
それ以外にも。
忍者の術式も可能だった…。
算術も、木ノ葉の歴史、地理…。
風馬手裏剣、体術…剣術。変化の術。
全部だ。
全科目オールマイティーだ。
しかも写輪眼も開眼だ…。
そして6歳でアカデミーは卒業してる。
飛び級でだ。
俺は…。
文字だけは何とか読めるレベルにはなれてる…。
盲特訓した。
うちはの血は凄いのだ。
書くのはまだだが、結構できる…。
これは人間の基本だ…。
辞書を開くとき、格好よく映る単語だけは覚えてる。
”孤高”これは絶対明日使ってみてえ…。
あと
”日常”これもだな…。
それから…。
”お節介”これも使うか…。
”低俗”これも俺はお気に入りだ。
”友好関係”これも良いな…。
格好良く映りそうな単語だけは…必死で意味も覚える。
これを台詞に入れれば、株も上がるだろうと…。
サクラからのだ。
6歳で…これを使えば…モテそうだ…。
サクラはモテる男が好きなのだ。
妹の期待には兄として全力でこたえなければ…なるまい…。
昔のような泣いて笑って怯えて忙しい俺は捨てた。
アレはモテん…クールで格好良い男になって寵愛をいただくのだ。
もっと妹には「すごい、惚れちゃう」と言ってもらわねば…。
俺は兄として理想の姿でありてえだけだ。
ヨコシマな感情などねえ。
あまり難しいのはいれん。
堅苦しすぎる男もモテん。
俺は…。
格好よく映りてえだけだ。
兄さんの呼称も”兄”とそろそろ呼ぶ。
俺は…。
兄は憎い。
できれば会いたくねえ。
今年中に写輪眼の開眼は無理でもだ。
読み書きは徹底する…。
兄レベルは目指す。
基本だ…。
サクラはペーパー凄いからだ、満点だ…毎回。
常用漢字は全部読めるようになりてえ。
目標は高くそれぐらいの気だ。
あと、書くのは12歳レベルは目指してえ。
サクラには負けられん。
文章もうまくなりてえ。
サクラの前では常に格好良くありたいのだ…。
これは不思議な感情だが。
第二の家族、妹の前でだ、俺は…。
よく思われてえらしい…。
広辞苑で使えそうな単語は…毎晩、覚えてる。
クラスで株を上げるためだ。
今のところ、女子どもも俺にメロメロらしいな…。
俺はこの里で認められるためなら何でもやる努力家なのだ。
構ってアピールばかりのナルトとは違う。
俺が出来る範囲で認められることと言えばこれぐれえだな。
俺の味方と言えば女子だけだ。
更なる高みを目指す気だ。
公園行ってもだ。
劣等感しか沸いて来ねえ。
俺だけ一人だ、何話せばいいのか分からん。
人間嫌いだ、俺は。
一人でいる方がマシだ。
心残りはだ、寮室にヤツぐれえ呼びたいぐらいか、俺の妹だな。
妹決定だ、ヤツは…。
☆☆☆
翌日になった。
☆☆☆
4時限目は…最近、課外だ。
イルカ先生に引率されて…外の景色を眺めれば…。
どんどん秘境に変わっていく。
滝がかなり上から落下してそれが渓流へ流れていく。
下には赤と金色の鯉が泳ぐ渓谷を抜けたなら…。
次に見えたのは陸橋だ。
だんだん上流へと近づいてるのが分かる。
水が深く濁っている場所は越えた。
下の川は青緑色だ。
そこから、上に向かうにつれて果てしない水が続く…とうとう…上流らしい。
空には大鷹が飛んでいる。
今日は紺碧の空、快晴だ。
サクラは…ポケットの金平糖を舐めてる。
赤、黄、青の色が綺麗な菓子だ。
11月で木から緑は減ったが…ところどころに紅葉が残り、山は赤と茶色に近い。
昨日は木枯らしが吹いてた。
最近、気まぐれな天気だ。
普段は…緑の鬱蒼と茂る森らしい。
目の前には広がる川の景色。
森の山頂から見える地平線は素晴らしい。
向こうに見える里の明かり。
雲は下に見える。
すごいところへ来たと思う。
魔物や知らない虫がウジャウジャだが…イルカ先生から…生態についての説明は受けてる。
それから植物についてもだ。
これは…第二試験のサバイバル技術。
それと植物魔物の生態、地図…地形の読み方などが試されてる。
しかし…常にイルカ先生がいるから安心ではある。
イルカ先生が魔物を瞬殺で倒すのも…見ものだ。
バチバチ光る電撃的な大技で一発だ。
ナルトが大歓喜、サクラはまだ少し星ひとつの瞳だ。
本当に躾のなってねえ女だ。
ま、倒し方の勉強にもなる。
☆☆☆
サクラは…河原に転がった綺麗な石を集めてる。
川の流れに…磨り減らされ角の消えた擦りガラス。
ザラザラした感触の透明のスケルトン青い石だ。
「きれい。
キャー」
河原でそんな石ばかり探してる。
少女らしいのがまた愛らしい。
俺は転がった瓶の底にあるビー玉を不思議そうに眺めてる。
ビー玉に俺の顔が映る。
こんな瞬間…俺は6歳に戻れる…。
ずっと最近、強がってばかりだが…。
少し前まで母さんにはいつも『俺と兄さん、どちらが好き?』とうるさかった…。
そんな時ですら、俺は亡くなった家族を思い出してる…。
視線を横に移せば…川の水は冷たく透き通るようだ…。
周りにある木が…川に鏡のように反射してる…。
金木犀や柿木などが…川に映ってる。
川の上は…コスモス畑だ。
黄色い、菊の花も咲いてる…。
もう11月も終わりに近い。
今日は透き通るような青空で…雲が少し流れてるくらいだが…。
冷たい空気だ。
川の水はいつもより増して冷たいだろう…。
魚が泳いでるのは見える。
ここは迷いの森でも安全な箇所らしい。
最近、授業でも木ノ葉の地理が入って来てる。
魔物生息場所も暗記してる。
これは重要だ。
危険地帯にはなるべく近づかん。
俺は今、河原の石の上に座ってる。
隣にいるのはサクラ。
その他、女子もいるが…存在すら無視してる。
今日から班決めだ。
河原の石を眺めてる…間に、赤い沢蟹が…のそのそ動いてる。
ここが綺麗な水である証拠だ。
ここでは鮎も採れたりする。
今日も、4時間目は魚釣りだ。
いつもは里近くの安全な川を選ぶが…昨日から迷いの森に流れる川に…。
クラスメイト全員で、イルカ教官と集合してる…。
俺は全く、眼中にすらないから…説明省きまくってたが…。
今日から、3人で班を組まされる。
これも一か月ごとに変わるらしい…。
「今日から、昨日は迷いの森で初めての魚釣りで戸惑った者も多いとは思う。
今日から、4時限目の魚釣りでは班を組むことになる。
これは成績順で平等にこちらで組むことにした。
各班男女混合班だ。
これは忍者学級になってもそうだが…。
その予行だ。
因みに班決めは毎月変わる。
これはクラスの友好関係を深める目的もある。
月末の成績順で決めさせてもらう。
班の名簿を言う。
”ドベのナルト、女子トップのイノ、それから…女子中間のヒナタ”」
イルカ先生が号令する。
「俺、おんな二人だってばか?」
≪成績順?
私、トップだし。
サスケくんと一緒になれないのが辛いけど…
サスケくん強い女の子好きらしいし仕方ないわね≫
イノだ。
「ナ、ナ、ナ…ナルト君と一緒の…班」
ヒナタだ。
俺は…この班決め平等だとは思えん。
絶対、イルカ先生…ナルトに優遇してる。
女子二名なのが証拠だ。
☆☆☆
クラスのドベ…ナルトと、女子の成績主席、イノ…それと女子の中間ヒナタ。
釣り合うだろう。
ヒナタはとても嬉しそうだな。
イノは嫌そうな顔しかしとらん。
ナルトはどれだけ鈍いのかしらん。
ヒナタはナルトが振り向けばそっぽ向いてるが…クラス中全員知ってる。
早く気付くべきだ。
サクラをチラチラ見るのが憎い。
ナルトは最近…俺を少しにらんでる。
それからそのせいで…余計にナルトはクラス中の男子から敵認知されてるらしい。
●なんだよ?●
両手に花かよ
●バウウウ!●
--赤丸。
{ヒナタとイノ…。
ナルトが羨ましいな…ムシよ}
ぶんぶんぶん…
--シノ。
【だりい…】
--シカマル
◎モグモグ…俺はどうでも良い顔の女か…。
お菓子食うぜ◎
--デブのチョウジ。
いつもつるんで…声の判別が難しいから。
記号で分別しといた。
俺はどうでも良い奴は…声も興味ねえ。
サクラの声はどこにいても分かる。
俺はイノは花とは認めんが…。
まあ、クラス見渡せば…トップ3位だな。
ヒナタは2位。
ダントツ主席はサクラに決まってる。
男子らの気持ちも分かる。
男子らには…顔も覚えられんレベルの似たような容姿だ…俺にとっては空気だ、人間ですらない。
あれでは全く無感情だろう…。
俺は言葉には出さんが…容姿の差、成績の差くらい…誰でも見れば分かる。
サクラのように明らかに中傷などせん…。
それにだ、俺は美的センスは優れてると思う、明らかにサクラは美しいと感じられるからだ。
俺はいちいち他人を評価などせんが…それは躾と言うより、道徳だ、俺の中での。
しかし…分かりやすいレベルで語ってくれるサクラは参考にはなる。
どんな趣味なのか猛烈に伝わるという意味でだ。
この1年程度で俺はサクラの好みが熟知した。
第一に強さ、第二に容姿、性格は第三ぐらいか?
俺は自分の性格には自信などない…。
口は悪い、対人関係スキルゼロだ。
自己表現能力に欠ける。
甘い口説き文句ほど嫌いなものなどない…無理すぎる…寒気が走る…頭に痙攣が起きる。
あれは…空想の世界だと思いたい、俺のキャラではねえ。
サクラの少女漫画は酷過ぎた、メルフェン世界の住人らしい…サクラはだ。
俺は…相手の反応をとことん確かめ、愛を試す反応しか出来ん。
何故かは知らん、サクラに俺の母親と同じ距離では接することは無理らしい。
俺は強くありたいらしい。
他人にはあまり興味もねえ。
俺は多くは求めん、一点集中派だ。
まあ…良いだろう。
サクラの好みも許そう。
それから容姿のストライクゾーンが、俺には不可解なレベルで広い。
ドベなナルトの容姿を貶さんのが証拠だ。
俺にはあれは…見苦しくて仕方ない…。
シカマル、シノ、キバも大丈夫らしい…、チョウジだけ痩せろとうるさかった…。
おまえはチョウジが痩せれば…許せるのか…。
恐ろしいレベルの博愛主義者だ、サクラは。
俺の…この瞳では…男は俺の血が流れるヤツ以外は容姿レベル屑だ。
俺と同じ血継限界の人間だけは素敵に映るが…あとはダメすぎだ。
俺は自分の血筋を誇ってるからだ。
俺の血筋から離れれば離れるほど…悪く映る。
しかし、サクラは違うらしい。
何故か…容姿レベル並み過ぎても…力さえあれば…瞳がキラキラだ。
そこが…男子どもに受けてるらしい。
サクラのあの悪癖だけは、俺が徹底的に封印させる。
あれのせいで…男子ども「俺でも強くなれば落ちるかも」と変に期待してやがる。
あれはダメだ。
躾がなっとらん。
兄としてだ、妹の貞操を守るためにも…野郎どもに隙を与えんためにも。
俺は全力で俺の力であれを…止めさせる。
どんな手段をつかってもだ。
☆☆☆
「続いて…サスケ、男子中間のシカマル、女子ドベのサクラだ。
シカマル…。
おまえは成績、頑張るように」
【だりい…】
「サスケくんと一緒?
うれしい」
『はあ…』
俺は溜息だ…。
俺はシカマルが嫌いだ。
クラスの男子平均だが…。
父が有名職らしいな…昨日、手洗いで聞いた…強くなられたら困る。
それだけではない。
いちいち男子どもを誘導するのが全部コイツの作戦だ。
俺はクラスの中間なんて相手にすらしてやらん。
仲間とは認めん。
友達になるなら、弱い男の方がマシだ。
友達になるならドベで良い…俺は、謙虚だからだ。
今日からシカマルは嫌いだから耳に【】をつけてやる。
俺のなりのシャットアウトだ…。
【めんどくせ…サスケとかよ】
「おまえは最近、たるんでいる。
もっと成績を頑張れ。
ゲームばかりするな…。
やればできるはずだ」
イルカ先生だ。
説得してやがる。
【だってよ。
楽しみなんて俺にはねえし…。
恋愛ゲームしてるぐらいだな…。
あとチェスか…】
「俺はこのクラスからエリートを出すのが夢だ。
どうしたんだ?
サスケが一位になる前はおまえが一位だった筈だ。
確かにあと3人も同じレベルに近かったが…おまえが頻繁に勝ってたはずだ。
ヤル気出せ」
【だりい…。
俺は修行よりかゲームの方が楽しいぜ…】
「シカマル…」
イルカ先生は嘆いてる。
俺は認めない、コイツと班を組むことをだ。
☆☆☆
俺の班はだ、女子のドベ…サクラと…。
最近、ゲームしかせず急速に成績が下落したシカマルだ…。
しかし…昨日のルーペで火を起こす件でも感じたが。
コイツは切れる。
トイレの会議でもだ。
まさか…わざと…成績をサボってるんじゃねえかとも俺は…疑いまくってる。
☆☆☆
サクラ、俺、イルカ先生、シカマルの4人で…。
迷いの森の川の前にいる。
「迷いの森だが…俺がいる前だから安心だ…。
この迷いの森には…恐ろしい野獣がウジャウジャいる…。
俺は結界貼ってる…。
あまり離れた単独行動だけは慎むように。
半径100メートルほどにしとけよ」
「分かりました、イルカ先生」
サクラは物わかりが良い。
「サスケ、コイツのやる気を戻してくれ。
サクラ、シカマルのことは頼んだ…」
「イルカ先生、私はサスケくんのことだけで忙しいので。
時間なんてないわ」
「なんて、冷たい女子なんだ。
前まで…おまえは何色にも染まらぬクラスの希望の花だったというのに。
シカマル、サスケを倒すんだ。
元の活気を戻すんだ」
【めんどくせ…
俺、もうこの里の女子、どうでもいい…】
「シカマル…。
昨日のルーペでも分かってる。
おまえの頭は…年齢に見合わず…猛烈に良い。
俺はおまえには期待してる…」
”期待してる”…これはイルカ先生の口癖らしい。
全員に言ってるのかもしれん…。
【めんどくせ】
「今日は渓流で魚釣りだ。
頑張れよ。
サスケ、シカマル、サクラ」
イルカ先生が朗らかな笑顔だ。
「イルカ先生。
見ていてくださいね?
サスケくん、行こう」
サクラが俺の正面からピタッと接近する。
これは…始めてだ…。
前でシカマルが見てる。
『ウツツに抜かさず、修行しろよ…。
うざい』
俺は照れると”ウザい”と言いたくなることに最近、気づいた。
「サスケくん?
分かった、私…ドベは抜ける。
来月はサスケくんと同じ班じゃないかもしれない。
でも、私、サスケくんに認めてもらうために強くなる。
だから、イノより私を選んでね。
サスケくんが大好きだから」
サクラは必死だ。
俺はここで盛大に溜息だ。
俺の胸元でサクラは密着したままだ。
これは放置してる。
いつも女子にされてる…しかし…。
この状態が続けば…サクラは女子にリンチされかねん。
暫く待って。
仕方なしに、引き離した。
『くっつくなよ』
「サスケくん…」
本音は。
俺がずっと引っ付きたい、あの事件以来、ずっとだ。
サクラのひと肌はとても心地いい。
失った家族を思い出せる…慰めて欲しい…。
しかし…甘えれば、どんどん弱くなるだろう…俺は強くなる。
それから…サクラが、ドベだ、非力だ…女子にリンチされる。
現在も俺は…サクラを好いてない演技しねえと…サクラが裏で制裁にあう。
しかし、ドベをサクラが抜けると…俺と班は変わる。
それから…俺がトップでなくなれば…サクラは他のヤロウに崇拝の目線を送る。
それは楽しくない。
俺は…サクラのトップを祈るしかねえ。
そこから先、女子たちは認めさせるのが得策だ。
今日も演技は続ける…。
サクラは…俺の生き縫いぐるみに近い。
可愛い奴だ。
【本当にだりい…】
シカマルだ。
コイツがクラスの平均なわけがない。
俺は腹立ってる。
絶対、これは作戦だ…。
俺への挑戦状だ。
俺を精神的に追い詰める作戦だ…恐らく…。
ヤツは…まだサクラを狙ってるのか…???
現在は…俺とサクラと…平均のシカマル。
そして…ナルトとヒナタとイノの…スリーマンセルだ。
しかし…、コイツがクラスの平均だってことは…。
…俺とサクラと…クラスの平均女子ヒナタで、班を結成して…。
シカマルが…イノとナルトと班を組むこともあり得たわけだ…。
俺とナルトとヒナタって線もあった。
シカマルとイノとサクラってことも、あり得た…。
俺とシカマルとナルト…イノとヒナタとサクラって線はねえ。
男子:女子=2:1か…、男子:女子=1:2で班決めが決定してるからだ…。
班は男女混合ペアーだ。
あり得るのは…この3通り。
だが…どれに転んでも…シカマルが、ヒナタと班を組むことはあり得ん…。
早くヒナタ派に、所属しやがれ…。
つまり…シカマルは、内気で陰から見守る性格の…ヒナタには…全く脈がねえ。
イノか…サクラか…。
割りと…強気な女が…好みらしいな…。
だが…イノは…顔重視だ…、要するに…サクラに転んでる…まだ落とせそうだと…。
クラスの男子ども全員…サクラが、ダントツ主席の俺に行ったことで…。
ドベのナルトを慕うヒナタに…行ってると言うのにだ。
まだ…サクラからいただいた崇拝の目線が忘れられんのか?
確かに…クラスで俺以外で…一番、あの目線をいただけたのは…シカマルだった。
やはり、サクラの…あの瞳は危険だ。
絶対、俺の力で封印しなければならねえ…。
あの瞳は…可愛すぎる…まるで少女漫画の美少女ヒロインそのものだ…。
俺は今、イライラと幸せの両方だ。
【まあ、チェスでもしねえか?】
『良い…。
俺は遊ばねえ…』
--シカマルにチェスで負けるのは分かってる。
サクラの前で失態を犯す訳にはいかん。
仲良くする気もねえ。
「サスケくんは断ってるわ。
平均なんて相手にしないわ。
サスケくんは強くなるのに忙しいのよ。
怠慢なんてしてる暇ないわよ」
サクラがシカマルを向いて歯向かってる。
俺の愛らしいシモベだ。
勝ち目はシカマルにはねえ。
【表情崩せよ…】
『素だ…』
--最近、暗いことの連続で表情など戻らん。
「サスケくんはクールなのよ」
ここもサクラがフンっとシカマルに、つっけんドンだ。
サクラはクールが好きなのか?
良かった…。
オレにチャらい系キャラは無理だな。
あの少女漫画の一件から不安だったが…サクラは俺が良いらしい。
【めんどくせ…】
『つるむ気はねえ…』
--本性を晒す気もねえ。
俺は分かりやすい。
サクラに俺が…結構脈あることもバレたくねえ。
恋愛とは認めんが…女子の中ではサクラが断トツだな。
ま、説明なくても容姿の差は一目瞭然だ。
「諦めたら?
サスケくん、私に構って」
サクラが俺の右肩に密着だ。
甘えてる…。
可愛い妹だ。
【サクラ、離れてくれねえか?
サスケと話してえ】
--シカマル、おまえは邪魔だ。
「え?」
俺の右肩で密着してるサクラは…シカマルを見て驚いた顔だ。
サクラ、俺の方を見ろ。
そいつの顔は見んでいい…目が汚れる。
【サスケ、俺と話してくれねえか?】
『日常に構う暇などねえ…』
ここで昨晩、覚えた使いたい単語を披露した。
格好よくサクラに映っただろうか…?
「断ってるわよ」
俺の肩に密着してるサクラは俺ではなく、シカマルを見てる。
ここは機嫌がとても悪い。
【俺はおまえのことを知ってる。
その件に関してだな…。
ココで言っても良いのか…これ?】
「何?何?
何の話?」
俺の右肩で寄り添うサクラが、不思議そうに俺の顔をパチクリ…見てる。
少し機嫌が戻ったが…。
しかし…。
『サクラ、向こう行け…』
「え?
サスケくん…」
右肩に寄り添うサクラは…俺の胸元にソッと手を添えてる。
今、最高密着の状態だ。
人肌がぬくい。
季節は11月も終わりに近いが…暖かい。
ずっとこのままでいたい…だが…。
『俺は女とつるまねえ。
ウツツに抜かす気もねえ…。
野郎共と会話する…。
おまえも察しろ…』
俺なりの格好付けた台詞だ。
別に戦闘すると言う意味ではねえ。
「そうよね?
サスケくんも男友達欲しいよね?
ごめんね。
私、理解できなくて…」
良いように解釈してくれて良かった。
そう取ると想像してた。
一昨日、サクラと二人っきりの会話で…。
サクラは自分のせいで俺に男友達が出来てないのではないかと…。
悩んでたのが判明してたからだ。
その通りだ、モテるサクラが俺に転んだから…男子たちの嫉妬を、俺は大いに受けてる。
しかし…サクラと友好関係を完全に戻すわけにもいかん。
俺はサクラが男子と仲良いのをよくは思わんらしい。
サクラと俺は”友達”ではない。
サクラは俺の第二の妹”家族”だ。
それで結論が付いた。
シカマルの台詞…。
俺にはどちらかしかねえ…。
俺の家族か…サクラのことか…。
あまり聞かれたくねえ話かもしれん…。
『向こうの木へ行けよ。
50メートルは離れろよ…』
サクラは俺の顔を心配そうに見つめながら、離れたくはない…と必死で俺に縋り付いてる。
俺の視線はシカマルにある…サクラは見ん、見ればシカマルは察するだろう。
コイツはかなり有能だからだ。
シカマルはダルそうな顔で…俺らを見てる。
見せ付けてる状態だな…。
「分かったわ。
何分くらいかな?」
俺はほぼ無表情でシカマルだけを見てる…こんな不細工見ても、何も楽しくもねえからだ。
サクラだけは俺の胸元でスリスリしてる。
最近、寒いからこれは暖かい。
シカマルは頬を掻いた。
【終わったら、呼んでやるよ。
めんどくせえが…】
「シカマル、サンキュ。
じゃ…サスケくん、ゆっくりね…」
サクラは最後まで俺の顔だけ見詰めて、俺の体から離れ…去って行った。
☆☆☆
流れる川の向こうに金木犀の木がある。
あの場所から…この場所の会話は聞こえんだろう。
俺とシカマルは河原にいる。
背景には冷たい清流だ…川は太陽光に反射して煌めいてる。
河原の石に…俺はどっかりと座りこんだ。
シカマルも座禅を組む。
風が流れた…俺の髪が揺れてる…。
50メートル先の木に隠れてるサクラへ視線を送る。
俺達を心配そうに見つめてる。
サクラの足元は濃厚ピンクなコスモスの花畑が…満開で続いてる…。
黄色い菊も生えてる…。
コスモスは…”秋桜”とも書く…サクラと同じ名前が漢字に入ってる。
最近、覚えた。
花言葉は…”少女の純潔””乙女の心”。
開花時期は6〜11月…、今が旬だな…。
サクラに…よく似合う花だ…。
おまえの周りはいつも花が咲いてる…、おまえは乙女心そのものだ。
それから…サクラの近くには…金木犀の木。
小さく華奢な薄いオレンジの可愛らしい花が…木に花開いてる。
もう開花時期を越えてるのか…花の色が薄くなっている…。
大気汚染の酷いところでは花開かぬ繊細な…花だ…。
金木犀の花言葉は…”謙遜””真実””陶酔””初恋”だったか…。
花については…くの一bPのイノの方が詳しいか。
サクラはガサツだ、知りもせんだろう…毎回、イノから説明受けてる方だから。
とても懐かしい…亡くなった母の香りだ…。
俺は金木犀の香り…大好きだ。
俺の亡くなった母は…謙虚で慎ましげで…黒髪を背中まで…垂らし…。
綺麗な女性だった。
陶酔、初恋。
その通りだ。
俺の初恋は母さんだ…。
兄に殺された…。
俺は母さんからの寵愛が欲しかった…。
今、サクラの髪が…少し揺れてる…。
サクラの上空を鷹か鷲か知らん鳥が…旋回してる…。
雲に映る影は…まるで…天狗のようだ…。
金木犀の木の隣には…柿の木が連なってる。
大鷹が…柿の木に止まり…俺たちの方角を睨んでる…。
そして、柿の実だけをついばんで、バサバサ大空高く帰って行った。
イルカ先生が、視線で威嚇したらしい…。
サクラは怯えながらそれを眺めてる…。
会話も早めに終わらせたい。
この森には危険が多いからだ。
イルカ先生は見張ってはいるが…サクラ一人にさせるのは…心配だ。
俺の横で…赤い沢蟹が…横歩きだ…。
空は青く…日差しが心地良い。
秋晴れの天気だ。
今頃、天国で母さんは…俺のこと、笑って見守ってくれてるだろうか?
まだ…兄への復讐に向かわぬ俺を怒ってるのか?
母さんはそんな女性ではない。
きっと、俺に会えば、黙って抱き締めてくれるだろう。
「サスケ。
アナタを残して。
亡くなってごめん…。
母さんはアナタの幸せをいつも祈ってるから…」
母さんならそう言う。
本当に美しく…慎ましげで…謙虚で…。
俺を陶酔させる…初恋を思わせる女性だ…金木犀によく似合う…。
母さんを回想させる金木犀に…サクラが寄り添ってる。
サクラ…。
おまえはいつも輝いてる・…。
俺はおまえのために雑学王になりそうだ…。
強くなる
目次
班結成A
俺は自分が兄に騙された事件以来は…疑って疑って疑いまくる。
それぐらいの精神だ。
サクラの俺への感情も恋愛とは認めん。
それから俺もだ…別に恋愛じゃねえ、親愛だ。
6歳でそれは早すぎだ。
サクラも恋に恋する乙女をしすぎてる…少女マンガみたいな恋愛に憧れてるらしいが。
あれは無理すぎる。
少し現実に目を向けさせたいとは願ってる。
俺の両親は一族婚で見合いで…ある日突然だ。
数日、見合わせもあったが…そんなものだ。
13歳以降は相手の存在を知る程度だが…距離は置いてたらしい。
デートもなかったらしい。
20歳ぐらいで突然だ。
お互い、思い合っていたらしいが…修行に明け暮れそれどころでもなかったらしい。
俺の”うちは一族”は…大抵、このコースだった。
親に決められた道筋を辿るのが割と多かった。
あまり親戚同士の見合いが多いから、不思議に感じて、去年ははぐらかされたが…。
いろいろ縁談の時に、跳ねられることがあるらしい。
そこらへんは…まだ実感わかん。
うちは一族は強すぎるがゆえに…里で差別される嫌いがある。
狂乱した兄が話した言葉の意味は知らねえが。
確かにあの…兄の狂乱話を聞けば…俺が兄のせいで、逆に偏見されそうだ。
俺も兄と同じで…力のためなら一族殺しでも何でもやるのか?と。
そう言う解釈で正解かは知らん。
恋愛婚が…俺の身内には…そう言えば、いねえ。
何か、俺の一族に大昔、他の血筋と恋愛した奴がいたらしいが…失敗して…里から逃亡した人間の話なら聞いたことある。
意外にいる…今頃、何してるか知らん…死んだかもしれん…。
俺の血筋は一途で固い奴らの集団だが…里の住人はどれだけ軽いか分からん…。
軽すぎだ、年中…いろんな恋に、頭は満ち満ちてる。
隙あらば…落とそうと言うのも見えてる…ドン引きレベルだ…。
幻滅し続けてる…いろんな人間を観察するにつれて。
平然と傷心の人間に、空気の読めん説得を掛けやがる…里の住人は…。
気変わりだらけだ…この里の人間は…。
俺の一族に残る…貴重な恋愛話だが…。
「時が解決する…。
別れたら次の人だ」
それを女の浮気相手の男から言われた俺の先祖は…相手の男は殺したらしい。
当たり前だ…空気読めんのも良いとこだ。
そのあと、女連れて里の外出たらしい。
先祖は強かったから…余裕で、里の外にウジャウジャいる敵から…女の身を守れたらしい。
女には
『浮気の罰として…一生、結界で張って監禁する…』
とか宣言して…行方くらませたらしい…。
今頃、何してるのかもしらん…女が許されたか…その血が途絶えたか…続いてるのかすら謎だ…。
生前、父は、そこから突然変異が起きて、違う血継限界の血筋が他里に流れたんじゃないか?
と論説してたが…それも疑わしい…。
他にもいる。
女の浮気相手の男も女も…両方、戦死したパターンで。
+時が解決する…。
別れたら次だ…+
同じことをいろんな人間に説得されたが…。
制裁しようにも…両方が戦死してる…天罰は落ちてる…。
しかし、煮え切れず…里の外へ出て行ったらしい…。
里の外で、他の相手が見つかったのかは知らん……。
一族のために…謎の任務に没頭して殉職したかもしれん…。
「時が解決する…。
別れたら次の人だ」
あの説得は…俺の一族には禁句だ。
俺の一族は、失恋に弱いらしい…全員、コミュニケーションスキル低い…。
その点、一族同士の見合いは、確かに楽だ…。
他の家はどうかは知らん。
俺は一族には…
"恋愛は重いもんだ"
とコンコンと聞かされてた。
;見合いは楽だ。
サスケくんも見合いがいいわよ;
とも。
しかし…”うちは饅頭屋”前で、サクラと一族が対面してからは…。
;あの子にしときなさいよ。
良い子よ?
あの子;
と俺の一族も乗り気だったらしい…。
俺は一生、恋愛したいと願わん。
聞いてると大変そうだからだ。
楽に…サクラと見合いが良い。
恋したいと願わん。
☆☆☆
忍者として…術式も大切だが…。今一番いるのは…。
漢字力だな…。
自宅、帰ったら今日も辞書を開く。
俺の憎き兄さんは神童だった…。
既に満6歳で12歳までの漢字は読み書き可能で。
それ以外にも。
忍者の術式も可能だった…。
算術も、木ノ葉の歴史、地理…。
風馬手裏剣、体術…剣術。変化の術。
全部だ。
全科目オールマイティーだ。
しかも写輪眼も開眼だ…。
そして6歳でアカデミーは卒業してる。
飛び級でだ。
俺は…。
文字だけは何とか読めるレベルにはなれてる…。
盲特訓した。
うちはの血は凄いのだ。
書くのはまだだが、結構できる…。
これは人間の基本だ…。
辞書を開くとき、格好よく映る単語だけは覚えてる。
”孤高”これは絶対明日使ってみてえ…。
あと
”日常”これもだな…。
それから…。
”お節介”これも使うか…。
”低俗”これも俺はお気に入りだ。
”友好関係”これも良いな…。
格好良く映りそうな単語だけは…必死で意味も覚える。
これを台詞に入れれば、株も上がるだろうと…。
サクラからのだ。
6歳で…これを使えば…モテそうだ…。
サクラはモテる男が好きなのだ。
妹の期待には兄として全力でこたえなければ…なるまい…。
昔のような泣いて笑って怯えて忙しい俺は捨てた。
アレはモテん…クールで格好良い男になって寵愛をいただくのだ。
もっと妹には「すごい、惚れちゃう」と言ってもらわねば…。
俺は兄として理想の姿でありてえだけだ。
ヨコシマな感情などねえ。
あまり難しいのはいれん。
堅苦しすぎる男もモテん。
俺は…。
格好よく映りてえだけだ。
兄さんの呼称も”兄”とそろそろ呼ぶ。
俺は…。
兄は憎い。
できれば会いたくねえ。
今年中に写輪眼の開眼は無理でもだ。
読み書きは徹底する…。
兄レベルは目指す。
基本だ…。
サクラはペーパー凄いからだ、満点だ…毎回。
常用漢字は全部読めるようになりてえ。
目標は高くそれぐらいの気だ。
あと、書くのは12歳レベルは目指してえ。
サクラには負けられん。
文章もうまくなりてえ。
サクラの前では常に格好良くありたいのだ…。
これは不思議な感情だが。
第二の家族、妹の前でだ、俺は…。
よく思われてえらしい…。
広辞苑で使えそうな単語は…毎晩、覚えてる。
クラスで株を上げるためだ。
今のところ、女子どもも俺にメロメロらしいな…。
俺はこの里で認められるためなら何でもやる努力家なのだ。
構ってアピールばかりのナルトとは違う。
俺が出来る範囲で認められることと言えばこれぐれえだな。
俺の味方と言えば女子だけだ。
更なる高みを目指す気だ。
公園行ってもだ。
劣等感しか沸いて来ねえ。
俺だけ一人だ、何話せばいいのか分からん。
人間嫌いだ、俺は。
一人でいる方がマシだ。
心残りはだ、寮室にヤツぐれえ呼びたいぐらいか、俺の妹だな。
妹決定だ、ヤツは…。
☆☆☆
翌日になった。
☆☆☆
4時限目は…最近、課外だ。
イルカ先生に引率されて…外の景色を眺めれば…。
どんどん秘境に変わっていく。
滝がかなり上から落下してそれが渓流へ流れていく。
下には赤と金色の鯉が泳ぐ渓谷を抜けたなら…。
次に見えたのは陸橋だ。
だんだん上流へと近づいてるのが分かる。
水が深く濁っている場所は越えた。
下の川は青緑色だ。
そこから、上に向かうにつれて果てしない水が続く…とうとう…上流らしい。
空には大鷹が飛んでいる。
今日は紺碧の空、快晴だ。
サクラは…ポケットの金平糖を舐めてる。
赤、黄、青の色が綺麗な菓子だ。
11月で木から緑は減ったが…ところどころに紅葉が残り、山は赤と茶色に近い。
昨日は木枯らしが吹いてた。
最近、気まぐれな天気だ。
普段は…緑の鬱蒼と茂る森らしい。
目の前には広がる川の景色。
森の山頂から見える地平線は素晴らしい。
向こうに見える里の明かり。
雲は下に見える。
すごいところへ来たと思う。
魔物や知らない虫がウジャウジャだが…イルカ先生から…生態についての説明は受けてる。
それから植物についてもだ。
これは…第二試験のサバイバル技術。
それと植物魔物の生態、地図…地形の読み方などが試されてる。
しかし…常にイルカ先生がいるから安心ではある。
イルカ先生が魔物を瞬殺で倒すのも…見ものだ。
バチバチ光る電撃的な大技で一発だ。
ナルトが大歓喜、サクラはまだ少し星ひとつの瞳だ。
本当に躾のなってねえ女だ。
ま、倒し方の勉強にもなる。
☆☆☆
サクラは…河原に転がった綺麗な石を集めてる。
川の流れに…磨り減らされ角の消えた擦りガラス。
ザラザラした感触の透明のスケルトン青い石だ。
「きれい。
キャー」
河原でそんな石ばかり探してる。
少女らしいのがまた愛らしい。
俺は転がった瓶の底にあるビー玉を不思議そうに眺めてる。
ビー玉に俺の顔が映る。
こんな瞬間…俺は6歳に戻れる…。
ずっと最近、強がってばかりだが…。
少し前まで母さんにはいつも『俺と兄さん、どちらが好き?』とうるさかった…。
そんな時ですら、俺は亡くなった家族を思い出してる…。
視線を横に移せば…川の水は冷たく透き通るようだ…。
周りにある木が…川に鏡のように反射してる…。
金木犀や柿木などが…川に映ってる。
川の上は…コスモス畑だ。
黄色い、菊の花も咲いてる…。
もう11月も終わりに近い。
今日は透き通るような青空で…雲が少し流れてるくらいだが…。
冷たい空気だ。
川の水はいつもより増して冷たいだろう…。
魚が泳いでるのは見える。
ここは迷いの森でも安全な箇所らしい。
最近、授業でも木ノ葉の地理が入って来てる。
魔物生息場所も暗記してる。
これは重要だ。
危険地帯にはなるべく近づかん。
俺は今、河原の石の上に座ってる。
隣にいるのはサクラ。
その他、女子もいるが…存在すら無視してる。
今日から班決めだ。
河原の石を眺めてる…間に、赤い沢蟹が…のそのそ動いてる。
ここが綺麗な水である証拠だ。
ここでは鮎も採れたりする。
今日も、4時間目は魚釣りだ。
いつもは里近くの安全な川を選ぶが…昨日から迷いの森に流れる川に…。
クラスメイト全員で、イルカ教官と集合してる…。
俺は全く、眼中にすらないから…説明省きまくってたが…。
今日から、3人で班を組まされる。
これも一か月ごとに変わるらしい…。
「今日から、昨日は迷いの森で初めての魚釣りで戸惑った者も多いとは思う。
今日から、4時限目の魚釣りでは班を組むことになる。
これは成績順で平等にこちらで組むことにした。
各班男女混合班だ。
これは忍者学級になってもそうだが…。
その予行だ。
因みに班決めは毎月変わる。
これはクラスの友好関係を深める目的もある。
月末の成績順で決めさせてもらう。
班の名簿を言う。
”ドベのナルト、女子トップのイノ、それから…女子中間のヒナタ”」
イルカ先生が号令する。
「俺、おんな二人だってばか?」
≪成績順?
私、トップだし。
サスケくんと一緒になれないのが辛いけど…
サスケくん強い女の子好きらしいし仕方ないわね≫
イノだ。
「ナ、ナ、ナ…ナルト君と一緒の…班」
ヒナタだ。
俺は…この班決め平等だとは思えん。
絶対、イルカ先生…ナルトに優遇してる。
女子二名なのが証拠だ。
☆☆☆
クラスのドベ…ナルトと、女子の成績主席、イノ…それと女子の中間ヒナタ。
釣り合うだろう。
ヒナタはとても嬉しそうだな。
イノは嫌そうな顔しかしとらん。
ナルトはどれだけ鈍いのかしらん。
ヒナタはナルトが振り向けばそっぽ向いてるが…クラス中全員知ってる。
早く気付くべきだ。
サクラをチラチラ見るのが憎い。
ナルトは最近…俺を少しにらんでる。
それからそのせいで…余計にナルトはクラス中の男子から敵認知されてるらしい。
●なんだよ?●
両手に花かよ
●バウウウ!●
--赤丸。
{ヒナタとイノ…。
ナルトが羨ましいな…ムシよ}
ぶんぶんぶん…
--シノ。
【だりい…】
--シカマル
◎モグモグ…俺はどうでも良い顔の女か…。
お菓子食うぜ◎
--デブのチョウジ。
いつもつるんで…声の判別が難しいから。
記号で分別しといた。
俺はどうでも良い奴は…声も興味ねえ。
サクラの声はどこにいても分かる。
俺はイノは花とは認めんが…。
まあ、クラス見渡せば…トップ3位だな。
ヒナタは2位。
ダントツ主席はサクラに決まってる。
男子らの気持ちも分かる。
男子らには…顔も覚えられんレベルの似たような容姿だ…俺にとっては空気だ、人間ですらない。
あれでは全く無感情だろう…。
俺は言葉には出さんが…容姿の差、成績の差くらい…誰でも見れば分かる。
サクラのように明らかに中傷などせん…。
それにだ、俺は美的センスは優れてると思う、明らかにサクラは美しいと感じられるからだ。
俺はいちいち他人を評価などせんが…それは躾と言うより、道徳だ、俺の中での。
しかし…分かりやすいレベルで語ってくれるサクラは参考にはなる。
どんな趣味なのか猛烈に伝わるという意味でだ。
この1年程度で俺はサクラの好みが熟知した。
第一に強さ、第二に容姿、性格は第三ぐらいか?
俺は自分の性格には自信などない…。
口は悪い、対人関係スキルゼロだ。
自己表現能力に欠ける。
甘い口説き文句ほど嫌いなものなどない…無理すぎる…寒気が走る…頭に痙攣が起きる。
あれは…空想の世界だと思いたい、俺のキャラではねえ。
サクラの少女漫画は酷過ぎた、メルフェン世界の住人らしい…サクラはだ。
俺は…相手の反応をとことん確かめ、愛を試す反応しか出来ん。
何故かは知らん、サクラに俺の母親と同じ距離では接することは無理らしい。
俺は強くありたいらしい。
他人にはあまり興味もねえ。
俺は多くは求めん、一点集中派だ。
まあ…良いだろう。
サクラの好みも許そう。
それから容姿のストライクゾーンが、俺には不可解なレベルで広い。
ドベなナルトの容姿を貶さんのが証拠だ。
俺にはあれは…見苦しくて仕方ない…。
シカマル、シノ、キバも大丈夫らしい…、チョウジだけ痩せろとうるさかった…。
おまえはチョウジが痩せれば…許せるのか…。
恐ろしいレベルの博愛主義者だ、サクラは。
俺の…この瞳では…男は俺の血が流れるヤツ以外は容姿レベル屑だ。
俺と同じ血継限界の人間だけは素敵に映るが…あとはダメすぎだ。
俺は自分の血筋を誇ってるからだ。
俺の血筋から離れれば離れるほど…悪く映る。
しかし、サクラは違うらしい。
何故か…容姿レベル並み過ぎても…力さえあれば…瞳がキラキラだ。
そこが…男子どもに受けてるらしい。
サクラのあの悪癖だけは、俺が徹底的に封印させる。
あれのせいで…男子ども「俺でも強くなれば落ちるかも」と変に期待してやがる。
あれはダメだ。
躾がなっとらん。
兄としてだ、妹の貞操を守るためにも…野郎どもに隙を与えんためにも。
俺は全力で俺の力であれを…止めさせる。
どんな手段をつかってもだ。
☆☆☆
「続いて…サスケ、男子中間のシカマル、女子ドベのサクラだ。
シカマル…。
おまえは成績、頑張るように」
【だりい…】
「サスケくんと一緒?
うれしい」
『はあ…』
俺は溜息だ…。
俺はシカマルが嫌いだ。
クラスの男子平均だが…。
父が有名職らしいな…昨日、手洗いで聞いた…強くなられたら困る。
それだけではない。
いちいち男子どもを誘導するのが全部コイツの作戦だ。
俺はクラスの中間なんて相手にすらしてやらん。
仲間とは認めん。
友達になるなら、弱い男の方がマシだ。
友達になるならドベで良い…俺は、謙虚だからだ。
今日からシカマルは嫌いだから耳に【】をつけてやる。
俺のなりのシャットアウトだ…。
【めんどくせ…サスケとかよ】
「おまえは最近、たるんでいる。
もっと成績を頑張れ。
ゲームばかりするな…。
やればできるはずだ」
イルカ先生だ。
説得してやがる。
【だってよ。
楽しみなんて俺にはねえし…。
恋愛ゲームしてるぐらいだな…。
あとチェスか…】
「俺はこのクラスからエリートを出すのが夢だ。
どうしたんだ?
サスケが一位になる前はおまえが一位だった筈だ。
確かにあと3人も同じレベルに近かったが…おまえが頻繁に勝ってたはずだ。
ヤル気出せ」
【だりい…。
俺は修行よりかゲームの方が楽しいぜ…】
「シカマル…」
イルカ先生は嘆いてる。
俺は認めない、コイツと班を組むことをだ。
☆☆☆
俺の班はだ、女子のドベ…サクラと…。
最近、ゲームしかせず急速に成績が下落したシカマルだ…。
しかし…昨日のルーペで火を起こす件でも感じたが。
コイツは切れる。
トイレの会議でもだ。
まさか…わざと…成績をサボってるんじゃねえかとも俺は…疑いまくってる。
☆☆☆
サクラ、俺、イルカ先生、シカマルの4人で…。
迷いの森の川の前にいる。
「迷いの森だが…俺がいる前だから安心だ…。
この迷いの森には…恐ろしい野獣がウジャウジャいる…。
俺は結界貼ってる…。
あまり離れた単独行動だけは慎むように。
半径100メートルほどにしとけよ」
「分かりました、イルカ先生」
サクラは物わかりが良い。
「サスケ、コイツのやる気を戻してくれ。
サクラ、シカマルのことは頼んだ…」
「イルカ先生、私はサスケくんのことだけで忙しいので。
時間なんてないわ」
「なんて、冷たい女子なんだ。
前まで…おまえは何色にも染まらぬクラスの希望の花だったというのに。
シカマル、サスケを倒すんだ。
元の活気を戻すんだ」
【めんどくせ…
俺、もうこの里の女子、どうでもいい…】
「シカマル…。
昨日のルーペでも分かってる。
おまえの頭は…年齢に見合わず…猛烈に良い。
俺はおまえには期待してる…」
”期待してる”…これはイルカ先生の口癖らしい。
全員に言ってるのかもしれん…。
【めんどくせ】
「今日は渓流で魚釣りだ。
頑張れよ。
サスケ、シカマル、サクラ」
イルカ先生が朗らかな笑顔だ。
「イルカ先生。
見ていてくださいね?
サスケくん、行こう」
サクラが俺の正面からピタッと接近する。
これは…始めてだ…。
前でシカマルが見てる。
『ウツツに抜かさず、修行しろよ…。
うざい』
俺は照れると”ウザい”と言いたくなることに最近、気づいた。
「サスケくん?
分かった、私…ドベは抜ける。
来月はサスケくんと同じ班じゃないかもしれない。
でも、私、サスケくんに認めてもらうために強くなる。
だから、イノより私を選んでね。
サスケくんが大好きだから」
サクラは必死だ。
俺はここで盛大に溜息だ。
俺の胸元でサクラは密着したままだ。
これは放置してる。
いつも女子にされてる…しかし…。
この状態が続けば…サクラは女子にリンチされかねん。
暫く待って。
仕方なしに、引き離した。
『くっつくなよ』
「サスケくん…」
本音は。
俺がずっと引っ付きたい、あの事件以来、ずっとだ。
サクラのひと肌はとても心地いい。
失った家族を思い出せる…慰めて欲しい…。
しかし…甘えれば、どんどん弱くなるだろう…俺は強くなる。
それから…サクラが、ドベだ、非力だ…女子にリンチされる。
現在も俺は…サクラを好いてない演技しねえと…サクラが裏で制裁にあう。
しかし、ドベをサクラが抜けると…俺と班は変わる。
それから…俺がトップでなくなれば…サクラは他のヤロウに崇拝の目線を送る。
それは楽しくない。
俺は…サクラのトップを祈るしかねえ。
そこから先、女子たちは認めさせるのが得策だ。
今日も演技は続ける…。
サクラは…俺の生き縫いぐるみに近い。
可愛い奴だ。
【本当にだりい…】
シカマルだ。
コイツがクラスの平均なわけがない。
俺は腹立ってる。
絶対、これは作戦だ…。
俺への挑戦状だ。
俺を精神的に追い詰める作戦だ…恐らく…。
ヤツは…まだサクラを狙ってるのか…???
現在は…俺とサクラと…平均のシカマル。
そして…ナルトとヒナタとイノの…スリーマンセルだ。
しかし…、コイツがクラスの平均だってことは…。
…俺とサクラと…クラスの平均女子ヒナタで、班を結成して…。
シカマルが…イノとナルトと班を組むこともあり得たわけだ…。
俺とナルトとヒナタって線もあった。
シカマルとイノとサクラってことも、あり得た…。
俺とシカマルとナルト…イノとヒナタとサクラって線はねえ。
男子:女子=2:1か…、男子:女子=1:2で班決めが決定してるからだ…。
班は男女混合ペアーだ。
あり得るのは…この3通り。
だが…どれに転んでも…シカマルが、ヒナタと班を組むことはあり得ん…。
早くヒナタ派に、所属しやがれ…。
つまり…シカマルは、内気で陰から見守る性格の…ヒナタには…全く脈がねえ。
イノか…サクラか…。
割りと…強気な女が…好みらしいな…。
だが…イノは…顔重視だ…、要するに…サクラに転んでる…まだ落とせそうだと…。
クラスの男子ども全員…サクラが、ダントツ主席の俺に行ったことで…。
ドベのナルトを慕うヒナタに…行ってると言うのにだ。
まだ…サクラからいただいた崇拝の目線が忘れられんのか?
確かに…クラスで俺以外で…一番、あの目線をいただけたのは…シカマルだった。
やはり、サクラの…あの瞳は危険だ。
絶対、俺の力で封印しなければならねえ…。
あの瞳は…可愛すぎる…まるで少女漫画の美少女ヒロインそのものだ…。
俺は今、イライラと幸せの両方だ。
【まあ、チェスでもしねえか?】
『良い…。
俺は遊ばねえ…』
--シカマルにチェスで負けるのは分かってる。
サクラの前で失態を犯す訳にはいかん。
仲良くする気もねえ。
「サスケくんは断ってるわ。
平均なんて相手にしないわ。
サスケくんは強くなるのに忙しいのよ。
怠慢なんてしてる暇ないわよ」
サクラがシカマルを向いて歯向かってる。
俺の愛らしいシモベだ。
勝ち目はシカマルにはねえ。
【表情崩せよ…】
『素だ…』
--最近、暗いことの連続で表情など戻らん。
「サスケくんはクールなのよ」
ここもサクラがフンっとシカマルに、つっけんドンだ。
サクラはクールが好きなのか?
良かった…。
オレにチャらい系キャラは無理だな。
あの少女漫画の一件から不安だったが…サクラは俺が良いらしい。
【めんどくせ…】
『つるむ気はねえ…』
--本性を晒す気もねえ。
俺は分かりやすい。
サクラに俺が…結構脈あることもバレたくねえ。
恋愛とは認めんが…女子の中ではサクラが断トツだな。
ま、説明なくても容姿の差は一目瞭然だ。
「諦めたら?
サスケくん、私に構って」
サクラが俺の右肩に密着だ。
甘えてる…。
可愛い妹だ。
【サクラ、離れてくれねえか?
サスケと話してえ】
--シカマル、おまえは邪魔だ。
「え?」
俺の右肩で密着してるサクラは…シカマルを見て驚いた顔だ。
サクラ、俺の方を見ろ。
そいつの顔は見んでいい…目が汚れる。
【サスケ、俺と話してくれねえか?】
『日常に構う暇などねえ…』
ここで昨晩、覚えた使いたい単語を披露した。
格好よくサクラに映っただろうか…?
「断ってるわよ」
俺の肩に密着してるサクラは俺ではなく、シカマルを見てる。
ここは機嫌がとても悪い。
【俺はおまえのことを知ってる。
その件に関してだな…。
ココで言っても良いのか…これ?】
「何?何?
何の話?」
俺の右肩で寄り添うサクラが、不思議そうに俺の顔をパチクリ…見てる。
少し機嫌が戻ったが…。
しかし…。
『サクラ、向こう行け…』
「え?
サスケくん…」
右肩に寄り添うサクラは…俺の胸元にソッと手を添えてる。
今、最高密着の状態だ。
人肌がぬくい。
季節は11月も終わりに近いが…暖かい。
ずっとこのままでいたい…だが…。
『俺は女とつるまねえ。
ウツツに抜かす気もねえ…。
野郎共と会話する…。
おまえも察しろ…』
俺なりの格好付けた台詞だ。
別に戦闘すると言う意味ではねえ。
「そうよね?
サスケくんも男友達欲しいよね?
ごめんね。
私、理解できなくて…」
良いように解釈してくれて良かった。
そう取ると想像してた。
一昨日、サクラと二人っきりの会話で…。
サクラは自分のせいで俺に男友達が出来てないのではないかと…。
悩んでたのが判明してたからだ。
その通りだ、モテるサクラが俺に転んだから…男子たちの嫉妬を、俺は大いに受けてる。
しかし…サクラと友好関係を完全に戻すわけにもいかん。
俺はサクラが男子と仲良いのをよくは思わんらしい。
サクラと俺は”友達”ではない。
サクラは俺の第二の妹”家族”だ。
それで結論が付いた。
シカマルの台詞…。
俺にはどちらかしかねえ…。
俺の家族か…サクラのことか…。
あまり聞かれたくねえ話かもしれん…。
『向こうの木へ行けよ。
50メートルは離れろよ…』
サクラは俺の顔を心配そうに見つめながら、離れたくはない…と必死で俺に縋り付いてる。
俺の視線はシカマルにある…サクラは見ん、見ればシカマルは察するだろう。
コイツはかなり有能だからだ。
シカマルはダルそうな顔で…俺らを見てる。
見せ付けてる状態だな…。
「分かったわ。
何分くらいかな?」
俺はほぼ無表情でシカマルだけを見てる…こんな不細工見ても、何も楽しくもねえからだ。
サクラだけは俺の胸元でスリスリしてる。
最近、寒いからこれは暖かい。
シカマルは頬を掻いた。
【終わったら、呼んでやるよ。
めんどくせえが…】
「シカマル、サンキュ。
じゃ…サスケくん、ゆっくりね…」
サクラは最後まで俺の顔だけ見詰めて、俺の体から離れ…去って行った。
☆☆☆
流れる川の向こうに金木犀の木がある。
あの場所から…この場所の会話は聞こえんだろう。
俺とシカマルは河原にいる。
背景には冷たい清流だ…川は太陽光に反射して煌めいてる。
河原の石に…俺はどっかりと座りこんだ。
シカマルも座禅を組む。
風が流れた…俺の髪が揺れてる…。
50メートル先の木に隠れてるサクラへ視線を送る。
俺達を心配そうに見つめてる。
サクラの足元は濃厚ピンクなコスモスの花畑が…満開で続いてる…。
黄色い菊も生えてる…。
コスモスは…”秋桜”とも書く…サクラと同じ名前が漢字に入ってる。
最近、覚えた。
花言葉は…”少女の純潔””乙女の心”。
開花時期は6〜11月…、今が旬だな…。
サクラに…よく似合う花だ…。
おまえの周りはいつも花が咲いてる…、おまえは乙女心そのものだ。
それから…サクラの近くには…金木犀の木。
小さく華奢な薄いオレンジの可愛らしい花が…木に花開いてる。
もう開花時期を越えてるのか…花の色が薄くなっている…。
大気汚染の酷いところでは花開かぬ繊細な…花だ…。
金木犀の花言葉は…”謙遜””真実””陶酔””初恋”だったか…。
花については…くの一bPのイノの方が詳しいか。
サクラはガサツだ、知りもせんだろう…毎回、イノから説明受けてる方だから。
とても懐かしい…亡くなった母の香りだ…。
俺は金木犀の香り…大好きだ。
俺の亡くなった母は…謙虚で慎ましげで…黒髪を背中まで…垂らし…。
綺麗な女性だった。
陶酔、初恋。
その通りだ。
俺の初恋は母さんだ…。
兄に殺された…。
俺は母さんからの寵愛が欲しかった…。
今、サクラの髪が…少し揺れてる…。
サクラの上空を鷹か鷲か知らん鳥が…旋回してる…。
雲に映る影は…まるで…天狗のようだ…。
金木犀の木の隣には…柿の木が連なってる。
大鷹が…柿の木に止まり…俺たちの方角を睨んでる…。
そして、柿の実だけをついばんで、バサバサ大空高く帰って行った。
イルカ先生が、視線で威嚇したらしい…。
サクラは怯えながらそれを眺めてる…。
会話も早めに終わらせたい。
この森には危険が多いからだ。
イルカ先生は見張ってはいるが…サクラ一人にさせるのは…心配だ。
俺の横で…赤い沢蟹が…横歩きだ…。
空は青く…日差しが心地良い。
秋晴れの天気だ。
今頃、天国で母さんは…俺のこと、笑って見守ってくれてるだろうか?
まだ…兄への復讐に向かわぬ俺を怒ってるのか?
母さんはそんな女性ではない。
きっと、俺に会えば、黙って抱き締めてくれるだろう。
「サスケ。
アナタを残して。
亡くなってごめん…。
母さんはアナタの幸せをいつも祈ってるから…」
母さんならそう言う。
本当に美しく…慎ましげで…謙虚で…。
俺を陶酔させる…初恋を思わせる女性だ…金木犀によく似合う…。
母さんを回想させる金木犀に…サクラが寄り添ってる。
サクラ…。
おまえはいつも輝いてる・…。
俺はおまえのために雑学王になりそうだ…。
強くなる
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班結成A