デコをさらけ出して頑張るとき。
私は3歳。
最近、やっとお母さんと一緒に公園デビューした。
イノという友達が出来た。
☆☆☆
私は5歳。
今日からお母さんなしで公園に行ってみた。
今日も公園に行ったら…男の子が来たみたい。
初めて見た子だ。
凄く格好いい子だ。
私と同期のくの一集団が真っ先にその男の子の元へすり寄っていった。
私は見てるだけだった。
私は…消極的だから…。
イノもその中にいる。
イノがその男の子に尋ねた。
≪なまえ、おしえて?≫
『カッコウいい!』
『ステキ…!』
『ひとめぼれ』
『イケメン』
『ほれた』
『いいオトコ』
『キャー』
『しびれる…』
拾うのも大変なレベルの…女子達から熱狂的な声。
どれだけモテる男の子なんだろう…。
「うちはサスケ」
何故か…。
その男の子の目とピッタリ合った。
どうしてか顔が火照った。
格好良いから。
サスケくんて名前みたい…。
≪わたしは、イノ≫
『わたしは…』
女の子…皆がサスケくんの前で自己紹介を始めてる。
サスケくんの周りを取り囲んでる
私は遠くで見てるだけ…。
すごい人気者。
女の子全員の自己紹介が終わったみたい…。
私だけ…言えなかった…。
私も…仲間になりたいのに…。
私は何も言えずに見てる…。
少し泣きそうだ…。
本当はみんなの輪に入りたいのに…。
その間、私の方、見てる、気のせいかな?
「おまえ…」
一瞬…誰に言われたのか分からず、反応が遅れた。
「なまえは…?」
「…。
春野サクラ」
「サクラか…」
それで会話は終わった。
あとは女の子たちが嬉しそうにサスケくんと話してる。
私は遠くから見詰めてただけ。
私が…喋れないのを見越して…聞いてくれたって、すぐわかった。
サスケくんって優しい男の子みたい。
胸がホワアってなった。
その日、私は一人ぼっちを味わった。
お母さんがいないと友達も出来ないみたい。
私は泣いてばかりだから…。
イノも違う子と喋ってる。
これから公園で一人になるのかな…。
サスケくんは一瞬であんなに友達が出来てる。
凄いな。
☆☆☆
一年が経過して。
6歳になった。
私はいつも泣いてた。
お母さんと公園デビューしたときも、泣いてた。
前はイノが慰めてくれたけど。
最近、見捨てられたみたい…。
集団に入れない。
いつも里抜けの道で一人遊んでいる…。
『やーい、デコ』
これからアカデミーに上がるというのに…。
サクラだけ友達もいなかった。
そんなのがここ1年続いてた…。
公園デビューは5歳頃から果たしたが…何故かサクラだけ友達が出来ないのだ。
3歳から5歳までは母親同伴だったので…何人か仲良くしていた筈なのに。
一人で遊びに行ってからは声掛けすらしてもらえない。
その中にイノもいるが…。
最近、冷たいのだ。
唯一、サクラにとってサスケくんと喋ってもらえるのが楽しみだった。
「サスケくん」
「サクラか」
「サスケくんはどうして、わたしと…おはなししてくれるの?」
「サベツはきらいだ。
おまえだけ、はねられてるからだ」
「え?」
「ヘンケンとか、きらいだから」
「サスケくん…。
わたしの…おともだち、なってくれる?」
「わかった」
「サスケくん…やさしいね…」
サクラはうれし涙をした。
「わたし、いつもなくから…、きらいになられるの…
デコもひろすぎるし…」
「…」
「おこってない?
わたしのはなし…」
「きいてやる」
「ありがとう、サスケくん…」
サスケくんはとっても優しいのだ。
私が泣いてても黙って聞いてくれる。
集団からはね子にされてる人間にも優しいのだ。
差別とかしない性格だ。
しかも格好良いし、頭も良いし、強いのだ。
女子たちの憧れの的だ。
☆☆☆
遠方からそれを目撃した女忍集団がサスケの元へと接近した。
そして、サクラからサスケを奪うかのようにサスケを遠くへ誘導して行った。
サクラは溜息を吐いた。
(こんな日々がずっとココ1年も続いてる。
サスケくんは…仲間外れされてる人間にも優しく、面倒見が良いのだ。
サスケくんはみんなのスターだ。
私に構ってる暇などない…)
サクラはずっと一人だった。
☆☆☆
サスケから拒まれて立ち去るざる得なくなった、くの一集団の会議が始まった。
『わたしね。
サクラ、きらい。
イノもそうでしょ?』
≪うんとね…≫
『サスケくんに、しゃべりかけてもらえて…。
はらたつ!』
『ブリっこしてんじゃないわよ!
…よくみたら、カワイイかおしてるていどで…』
『せいかくウジむしのくせに』
『デコかくしてるからかわいくうつるのよ。
ほんとうはブスよ…コロす』
『ホネのズイまで…イジめる』
イノは少し賛同しかねた。
確かに、イノはサスケくんファンクラブを束ねる隊長ではあるが…少し前まで母親を通じで公園デビューで遊んでた頃もあったからだ。
≪わたしたちが…イジめるから…。
よけいに…サスケくん…。
サクラに…かまうんじゃないかしら?≫
イノは弁解した。
『どういう…いみよ』
≪だから。
わたしたちが…サクラとなかよくなったら…。
サスケくんの、トクベツあつかいも…おわるかもよ?≫
これはイノの勘だ。
『ふんッ』
『でも…。
わたしたちが…イジメめる、まえ…。
サスケくん…いちばん、はじめに…サクラへ…こえ…かけた…でしょ?』
『だから…イジめたのよっ!』
『キーーーー』
『サクラがトロくて、なまえ…いえないから。
サスケくんが、きいてやっただけよ、きっと』
『そうよ、ノロマでなきムシだから』
『サクラはかんちがいしてる!』
『…ズにノりすぎよ!』
『たおす』
仲間の反論が出て来た。
イノは提案をした。
≪えとね。
わたしから…サクラと、なかよくなって…。
サスケくんから…とことん…ひきはなす!
これならどう?≫
イノが名乗り出た。
面倒見の良い女を演じて…イケメンなサスケくんをゲットする魂胆だ。
このファンクラブの中で一番、評を上げる気でいる。
『サクラとは、なかよかったし…。
うまくいくかもよ?』
イノも実はサクラだけ跳ね子にする集団の意見に…最近では賛同しかねていたからだ。
『サスケくんと、サヨナラさせてよ』
『おもいっきりよ』
『ガンバれ!』
『ファイト』
≪わかってるわよ≫
イノは計画を実行することに決めた。
☆☆☆
サクラは…。
友達もいない。
寂しいから大抵、里抜けの道か…サスケを発見したら尾行をしていた。
(サスケくん…)
声がかけたいのに自分からは声掛けが出来ない。
そうして…ついて行った先は…サスケの本宅。
近所に「うちは饅頭」と表示された看板があった。
100円程度で買えるらしいが…。
偶然にもサクラは小銭を持っていたのだ。
それで買うことに決めた。
サスケはサクラには気が付かず、自宅に入っていったようだ。
「あの…えと…」
幼いサクラはうちは饅頭屋の前で立った。
「お嬢ちゃん、ひとりかい?」
「ください…」
「何個だい?」
「ひとつ」
「はいよ…」
ホカホカの饅頭が袋に詰められた。
「幼いのに偉いね、おつかいかい?」
「・・・・はい」
「そうかい、そうかい。
また寄ってらっしゃいよ」
こうしてサクラのカバンに饅頭が入れられた。
サクラは家に帰ったら食べる気でいた。
(それにしても敷地が広いなあ…)とサクラは感動した。
そして…サクラは元来た道をトボトボ帰って行った。
サクラは…暗記だけは自信があるのだ。
そういう理由で道順を間違えずに自宅まで帰れた。
今日もひとりぼっちだったが。
鞄にはお土産がある。
食べてみると優しい味わいだ。
(やさしいサスケくんと…おなじだ…)
サクラの胸がホッコリした。
☆☆☆
翌日もサクラは里抜けの道にいた…。
遠くで、女の子の集団は仲良く喋ってるのに…。
サクラにだけ声を掛けてはくれない。
『デコー』
と言われて素通りされるだけだ。
(ここ1年もこの調子だ。
それからサスケくんが来たら、くの一集団は一直線にサスケくん目掛けて接近を試みるのだ。
どうもサスケくんは凄くモテるらしい。
全員のアイドルで、人間に平等に優しいのだ)
その日、珍しいことが起きた。
イノがツカツカツカ…とサクラの方に歩み寄ってきた。
少し前までは公園で母親を通じてよく会話した。
それなのにここ1年は冷たい。
イノは…サスケが来るといつもサクラから奪っていく。
また「デコ」と言われて去られるのかとサクラは首を落とした。
イノがサクラに告げた。
≪オデコかくすから…みんなにデコって、いわれるのよ。
アンタよくみたら、かわいいカオしてるんだから…。
オデコだしなさいよ≫
サクラは目をまたたきした。
そのあと、イノはニコリとサクラに微笑んで去って行った。
サクラの胸がジーンとなった。
(サスケくん、私…もしかして…やっと女友達できるかも…。
これで、サスケくんに迷惑かけなくて済むかな…
この里でお友達、たくさんできるかな??)
☆☆☆
『いった?』
≪いったわよ≫
イノが返した。
あまり気乗りしないような顔だった。
『デコだし…キョウセイさせた?』
≪させたわよ…≫
イノは頷いた。
『よし。
コレで…サスケくんも、サクラのデコに、おどろいて。
きらいになるわ』
『わたしたちも…サクラと、なかよくしてやるわ?』
ファンクラブのメンバーが黒笑した。
『できるだけ…サスケくんとバイバイよ!』
メンバーはガッツポーズで喜んでる。
≪そうねえ…≫
イノは納得した。
『イノ?
サクラは…サスケくんのこと、すきなの?』
≪さあ…。
いまのところ…なにも…いってないし…。
わたしが、つくったファンクラブに…はいらない、ということは…。
なにもないんじゃ…ないかしら?≫
イノは否定した。
『コワすのは…いまね』
『めざわりなのよ。
なきムシのくせに…トクベツあつかいされて』
『はやく…はなれさせて…』
イノもサスケは大好きだ。
離れてくれることはありがたかった。
≪わたしたちが…イジめすぎたから…。
よけいに、サスケくん。
ふびんに…おもって…そんなことするんじゃないかしら?≫
イノは自信があった。
今の状態では自分たちが悪役で…サスケに悪評価を与えかねない。
汚名を挽回して…面倒見の良い女であるところを証明せねばならない。
そうすれば、簡単にサスケが落ちるかもしれない…心を許すかもしれない。
と踏んだのだ。
だから、その役にイノは願い出た。
『サスケくんはやさしいだけで。
トクベツな…イミはないってこと?』
≪おそらく。
あのイケメンなサスケくんがサクラになんて相手にするわけないじゃない?
成績もそんなにすごくないし…サクラ普通だし…≫
イノは断言した。
『さいしょのアレも…サクラがトロいから…。
しかたなしに…サスケくんから、いった…だけなのかもよ?』
イノは考察した。
『そうよね…それしかないわ…』
『そうにきまってる…』
『サクラとろいし…』
『にぶいし…』
『なきムシだし…』
『イライラするしね…』
サスケファンクラブでサクラの悪口が始まった。
イノは聞くに堪えず、言葉を挟んだ。。
≪まずは…サクラとの…ゆうじょう…を…とりもどすわ≫
そして…里のbPイケメンを…自分がゲットする…、イノはその気でいた。
☆☆☆
夕方ごろ、イノはサクラに接近した。
するとオールバックにしたサクラがいた。
デコが強調されてる。
イノはポケットから黄色のリボンを渡した。
≪これ、わたしたちの…ゆうじょう…のあかし、
あんたにあげる≫
「ありがとう、イノ」
(サスケくん…わたし初めてお母さんの力なしで…女友達出来た…)
サクラは涙を流して喜んだ。
≪これからは…わたしたち、ともだちよ。
いっしょに、あそびましょう≫
「イノ…」
(友達になってくれて、嬉しい)
≪あとね…わたし、サスケくんがすき。
わたしたち、ともだちよね?
きょうりょく…してね?
サクラ?≫
「え?」
≪できる…?≫
「うん…」
≪サスケくんとは…しゃべらないでね。
サスケくんはみんなのアイドルだから……
ファンクラブではルールがあるの…≫
「そっか…」
≪わたしを、とおしてからじゃないと…ダメなのよ?
わたしがつくったファンクラブだから。
サスケくんは…みんなのものだから≫
「うん…」
(サスケくんは…やっぱり、とってもモテるみたい…)
≪サクラ…オキテをやぶると…ウラまれるわよ…。
まえは…みんな、おこってたけど…わたしが…とめてあげたのよ?
かんしゃしなさいね?≫
「…」
(そうだよね…。
はねコにしてる…わたしだけ…サスケくん、めんどうみてたし…。
しかられて…あたりまえだよね…)
≪しんぱいしないで。
これからは、みんななかよしだから…。
セットクもしといたから。
わたしも…のりきじゃなかったのよ…。
ただね?
サスケくん、ほんとうにモテるのよ…。
すっごく、カッコウいいから…≫
「しってる…」
(みたらわかるよ…。
サスケくん、やさしいし…カッコウいいし…つよいし…)
≪これからは…ぜんいん、サクラのともだちよ。
ただルールだけは…まもってね?≫
「うん…」
(ほんねは…さびしい…)
≪サクラと、これから…ハナわを、いっしょに…つくりましょう。
わたしたちの、ゆうじょうの…ふっかつを、キネンして≫
「うん」
(イノ。
なかまに、いれてくれて…ありがとう)
こうして二人の友情は戻ったのだ。
☆☆☆
それから数か月が経過した。
6歳だ。
この数か月の間に親友の域までイノとサクラは来ていた。
アカデミーへ入学も果たした。
今ではあまりサスケに声掛けはしてもらえないが…サクラはあの時の恩を忘れたわけでもない。
気が付けば。
チラチラ、サスケを見詰めてる自分に気が付いた。
それから…サスケと出会った日以来…気が付けば…いつも…サスケをストーカーしてる自分にサクラは気が付いたのだ。
たまに喋りかけてもらえれば、
「ともだち…できたんだな、よかったな」
と優しく対応してもらえてる。
その刹那、何故かサクラの…胸が高鳴るのだ。
しかし…サスケとサクラの距離はどんどん離れてく。
アカデミー前に、公園や里抜けの道でいたときより…更にアカデミーに入ってから、サスケは目をつけられたらしい。
女の子は絶賛してる。
サスケの手裏剣の腕は上手ではないが、「そこもいい!」と女子は弁護してる。
サクラは…アカデミー入学前…サスケが『オレはつよいと…おもう』と話してたことを思い出した。
しかし…先生に残されるレベルの腕だ。
(あれは…どういう意味だったんだろう…?)
とサクラは頭を悩ませていた。
(もしかして…サスケくんは私の前で強がっていたのかな…。
あれ、嘘だったのかな。
サスケくんは…強くはないのかな…)と…。
サスケの間違えた軌道の手裏剣が…女子たちの服に当たって…制服が切れそうになることもある。
サスケに一番、近づく…イノは軽い擦り傷になってしまったことは数回ある。
サスケの手裏剣は…かなり危険な軌道だ。
授業中、女子たちがサスケの後ろから接近しようとすると…。
サスケの手裏剣は…的ではなく後ろに向かって…飛ぶのだ…。
そして、地面に突き刺さる・・・。
一瞬、驚いてる女子も多いが…。
イノはそれでもめげてないみたいで…。
何回か軽い被害にあっている。
サスケの半径3メートル圏内は…危ない…。
イノは
≪わたしがガンバって、サスケくんをつよくする。
それがわたしのユメなの≫
とサスケのいない時に…サクラの前でウルサイ…。
応援ばかりしてる。
今のところ、遠目から見て近づいてないサクラは…被害にあってないし…。
ファンクラブに所属してない日向も…サスケに接近してないから、怪我もしてない。
毎日、サクラはサスケを…遠目に眺めていた。
(ある意味凄いな…。
サスケくん…上手に…後ろの人間に命中してる…。
背中…後ろ向けてないのに、後ろに目があるみたいに…。
前に見える…的の木じゃなくて…。
今のところ…応援団で、致命傷になってる人はいないけど…。
お蔭で先生はハラハラしながら…サスケくんを指導してるみたい…)
(サスケくんは…もしかして…男友達が欲しいのかな。
私も…女友達出来たけど…。
サスケくんはモテすぎて…男友達、誰もいないみたいだし…。
女友達は…あんなにサスケくん…いるみたいだけど…)
内気なサクラは…サスケの間違えた軌道の手裏剣が人間に当たりそうになるたびに…。
怖くて泣いてばかりだった。
今のところ…流血沙汰になってないのが不思議なレベルの凶悪なスピードで…後ろにシュッと跳んでくるのだ。
地面に亀裂がいくことがある…。
幼いサクラは怖くて…泣きそうになる…イノや応援団の足に擦り傷が出るたびに…。
サクラは後ろから…ボタボタ泣いてる。
(サスケくんの手裏剣が上達しますように…)
先生は…ドベのナルトより、サスケに付きっ切りで指導してた。
人命に関わるレベルの恐ろしさだからだ。
ナルトの手裏剣は飛ぶこともなく、すぐにボタッと落下する・…。
被害は周囲に与えないだけ…先生はおろそかになるようだ。
ナルトは先生に「構ってくれってばよ…」と必死のようだ…。
☆☆☆
アカデミー入学してから半年後ぐらいの話だ…。
最近では…サスケの手裏剣の腕前は相当で…。
サスケが…同級生では敵なしだと…サクラに話していたのも頷けた。
急に上達したのだ…以前は残されて先生と…手裏剣の課題をしてたのに…。
(「オレはつよい、おなじトシでは…だれよりも…」って言ってたの、本当だったんだ…)
サクラは感激してた。
複数の手裏剣が飛び交うさまを…百発百中だ。
しかも軌道も蛇のように自由自在にコントロールできてる。
素晴らしすぎる…。
(それなのに…どうして、少し前までは先生に残されるレベルだったんだろ…。
サスケくん…もしかして…女子に絡まれるの…嫌がってる???
だから…下手なふりを…)
ある日を境に…居残りレベルから…翌日…急に…学園ナンバーワンレベルに変わったのだ。
達人級だ。
あれでは生徒だけではなく…もちろん、先生もサスケが今まで…下手な演技をしていたと…すぐに見抜いただろう。
前日まで居残りで先生とサスケは残って…一度も成功させず…。
翌日の授業で…その間練習もなく…サスケは一度で決めたのだ。
女子達の歓声で…サクラは…耳がやられそうになった。
以前…先生なりに余計に時間を取って、サスケに親身にしてたのは…サクラは見てる。
先生は…そのせいで…怒っているのか、サスケに話しかけようとも最近ではしない。
(サスケくんは…女友達じゃなく…男友達が欲しかったのかな???)
(私もアカデミー入ってからは…女友達できたもの。
私たち、6歳だし…サスケくんも男友達、欲しい年頃だよね…。
女子たち邪魔なのかな…、そのせいで男子…サスケくんに冷たいみたいだし…。
私、サスケくんに友達作り協力してもらえたのに…何かできないのかな…。
役に立てないのかな…私に何が出来るんだろう…)
その証拠に…最近、サスケは以前よりずっと女子集団に冷たい。
愛想笑いすらしようともしないのだ。
しかし…サスケは…さらにクラスの女子たちのアイドルだ。
ファンクラブの数は増え…更にメンバーの熱意が増してる。
近づくことすら出来ない…。
本当は…サクラも応援したいのに…他の女子集団に押されて応援できず…。
遠目に崇拝の瞳を送るだけの関係になってた。
(サスケくんは…格好良くて、優しくて、強い!!!
凄い!!!
キャーーー)
それまでは帰宅するサスケのあとをこっそりつけてたが…最近は女子集団から逃げるように…。
アカデミーが終了するとサスケは…俊足でいなくなるので尾行できない状況に…サクラはあった。
仕方なしに、6歳のサクラは…記憶を頼りに…サスケの屋敷周りを徘徊しようとした。
サクラ一人で…サスケの屋敷へ向かうのは…始めての経験だった。
いつもはサスケを隠れて追跡のあとに目的地へ到着してたからだ。
しかし…道は…立ち入り禁止の看板が立っていたのだ。
奥へは進めず…行き止まりになっていた。
工事中らしい…。
(どうもサスケくんは引越ししたらしい)
ということにサクラは気が付いた。
いつも「うちは饅頭」の常連になっていたのだが…。
引越しをしたらしい。
この話は、サスケには話せなかった。
ストーカーしてたことがマルバレになるからだ。
この日を境ぐらいにサスケの表情が暗いな…とサクラはいつも遠目に見詰めていた。
今まではサスケの方から声掛けしてもらえてた。
サクラが内気で泣き虫だから。
待ってるだけだったのだが…。
全く公園にも来ない。
里抜けの道辺りでウロウロしてるのは目撃したが…。
女子の集団が近づく前に逃げるように去ってる。
接近しても、走り去る。
表情もない。
変だな…。
とサクラは疑問視してた。
☆☆☆
サスケが手裏剣修行の時ぐらいしか…最近ではサクラは近づけない。
遠目に見てるだけだが…胸がときめいて仕方ない。
本当は…サクラも歓声をあげて…応援したいのだ。
見れば胸が痺れてたまらない。
しかし…サスケは学園中のアイドルだ。
自分には勝ち目もなさそうなぐらいライバルだらけだ…。
学園一成績優秀のイノまで、サスケを恋い慕い絶賛してる。
(もしかして…私はサスケくんに恋をしているのだろうか?)
と…観戦途中からサクラは上の空だった。
イノには…
≪わたし、サスケくんがすき。
わたしたち、ともだちよね?
きょうりょく…してね?
サクラ?≫
と仲直りしたときに、言ってもらえた…。
それから…。
≪サスケくんとは…しゃべらないでね。
サスケくんはみんなのアイドルだから……
ファンクラブではルールがあるの…≫
≪わたしを、とおしてからじゃないと…ダメなのよ?
サクラ…オキテをやぶると…ウラまれるわよ…≫
≪まえは…みんな、おこってたけど…わたしが…とめてあげたのよ?
かんしゃしなさいね?≫
≪サスケくんは…みんなのものなのよ…≫
とは、強制されてた。
でも…それでも…。
サクラは…イノのためにも助力しようとはしたけど…心が痛むのだ。
イノとの会話よりサスケとの会話の方が…幸せな気分に浸れるのだ。
そこで気が付いた。
サクラはサスケに友達としてではなく…惚れているということを自覚した。
(わたしは…サスケくんが…だいすき)
サクラは…イノが、サスケくんファンクラブの隊長であることは知ってたが。
耐えられない気分になって。
その日、清々堂々勝負に出ることを決心したのだ。
「イノ、サスケくんって…モテるんだよね」
≪そうよ。
カッコウいいからね、つよいし≫
イノも最近では…サスケの強さを認めたらしい。
前は顔だけ褒めていたのが証拠だ。
イノは誇らしげな表情だ。
「サスケくん。
やさしくて…つよいし…カッコウいいから…。
いっぱいサスケくんのこと…すきなひと…いるんだろうな…。
イノもすき?」
≪すきよ…≫
「わたしも…サスケくんのこと、すき。
イノ、このリボンは…かえす。
きょうから…わたしたちはライバルだから」
サクラは黄色いリボンを外した。
イノが挑戦的な顔に変化した。
≪わかったわ。
わたしは…ヨウシャなんて、しないからね≫
「わたしも」
その日を境に二人の仲はとても険悪になった…。
恋の格闘の日々が始まったのだ…。
絶対に負けないとサクラは自分を変えることを決意したのだ。
☆☆☆
サクラはイノが設立したサスケくんファンクラブには入らないことに決めた。
そこに所属すれば様々な情報や、隠し撮り写真や、その他諸々の会議に参加できる特典があるらしいが…。
敢えて一人で対立することに決めたのだ。
ルールがあったら、やりにくいからだ。
お蔭でファンクラブのメンバーからは恨まれるかもしれないが…
サクラは女の子の集団全員を敵に回しても良いくらい…
サスケくんが好きな自分に気が付いたからだ。
☆☆☆
アカデミー内で…イノはくの一ではトップだ。
サクラはサスケと毎日会えるのが嬉しくてたまらなかった。
サスケの手裏剣はコントロールできるぐらいの腕で…サクラはそれがたまらなく格好良くて仕方ない。
見ているだけで叫びたくなる…それなのに内気だから…女子たちに負ける…。
最近、全く会話をしてないことに気が付いた。
サクラはイノに宣言したものの、まだ、サスケには告白もしてないことに気が付いた。
チラチラ見ているだけで。
自分から声を掛けた経験すらないのだ…。
とても照れるからだ。
しかし…このままでは積極的なイノに乗り遅れてしまう。
サクラは変わると決意したのだ。
イノに…ライバル宣言した…あの瞬間。
弱い自分を押し隠し、第二のサクラを内部に飼うことにした。
自宅で毎日、強くなるために精神トレーニングをしている。
内部にいる「内なるサクラ」は常に強気だ。
(しゃーなろ!!
強くなる!!
イノにはまけない!!!
サスケくんは…わたしのもの!!!
いってこい!)
今日こそ、言おうと決意したのだ。
「サスケくんのおヨメさんになりたい」と。
イノに負けるわけにはいかなかったから。
泣き虫だけど頑張ることに決めたのだ。
木の葉の里のラスボスナルト3〜12歳。「打倒サスケ、火影になる」
目次
☆サクラとの出会い←既読の方、スルー(時系列を正すために分割)
最近、やっとお母さんと一緒に公園デビューした。
イノという友達が出来た。
☆☆☆
私は5歳。
今日からお母さんなしで公園に行ってみた。
今日も公園に行ったら…男の子が来たみたい。
初めて見た子だ。
凄く格好いい子だ。
私と同期のくの一集団が真っ先にその男の子の元へすり寄っていった。
私は見てるだけだった。
私は…消極的だから…。
イノもその中にいる。
イノがその男の子に尋ねた。
≪なまえ、おしえて?≫
『カッコウいい!』
『ステキ…!』
『ひとめぼれ』
『イケメン』
『ほれた』
『いいオトコ』
『キャー』
『しびれる…』
拾うのも大変なレベルの…女子達から熱狂的な声。
どれだけモテる男の子なんだろう…。
「うちはサスケ」
何故か…。
その男の子の目とピッタリ合った。
どうしてか顔が火照った。
格好良いから。
サスケくんて名前みたい…。
≪わたしは、イノ≫
『わたしは…』
女の子…皆がサスケくんの前で自己紹介を始めてる。
サスケくんの周りを取り囲んでる
私は遠くで見てるだけ…。
すごい人気者。
女の子全員の自己紹介が終わったみたい…。
私だけ…言えなかった…。
私も…仲間になりたいのに…。
私は何も言えずに見てる…。
少し泣きそうだ…。
本当はみんなの輪に入りたいのに…。
その間、私の方、見てる、気のせいかな?
「おまえ…」
一瞬…誰に言われたのか分からず、反応が遅れた。
「なまえは…?」
「…。
春野サクラ」
「サクラか…」
それで会話は終わった。
あとは女の子たちが嬉しそうにサスケくんと話してる。
私は遠くから見詰めてただけ。
私が…喋れないのを見越して…聞いてくれたって、すぐわかった。
サスケくんって優しい男の子みたい。
胸がホワアってなった。
その日、私は一人ぼっちを味わった。
お母さんがいないと友達も出来ないみたい。
私は泣いてばかりだから…。
イノも違う子と喋ってる。
これから公園で一人になるのかな…。
サスケくんは一瞬であんなに友達が出来てる。
凄いな。
☆☆☆
一年が経過して。
6歳になった。
私はいつも泣いてた。
お母さんと公園デビューしたときも、泣いてた。
前はイノが慰めてくれたけど。
最近、見捨てられたみたい…。
集団に入れない。
いつも里抜けの道で一人遊んでいる…。
『やーい、デコ』
これからアカデミーに上がるというのに…。
サクラだけ友達もいなかった。
そんなのがここ1年続いてた…。
公園デビューは5歳頃から果たしたが…何故かサクラだけ友達が出来ないのだ。
3歳から5歳までは母親同伴だったので…何人か仲良くしていた筈なのに。
一人で遊びに行ってからは声掛けすらしてもらえない。
その中にイノもいるが…。
最近、冷たいのだ。
唯一、サクラにとってサスケくんと喋ってもらえるのが楽しみだった。
「サスケくん」
「サクラか」
「サスケくんはどうして、わたしと…おはなししてくれるの?」
「サベツはきらいだ。
おまえだけ、はねられてるからだ」
「え?」
「ヘンケンとか、きらいだから」
「サスケくん…。
わたしの…おともだち、なってくれる?」
「わかった」
「サスケくん…やさしいね…」
サクラはうれし涙をした。
「わたし、いつもなくから…、きらいになられるの…
デコもひろすぎるし…」
「…」
「おこってない?
わたしのはなし…」
「きいてやる」
「ありがとう、サスケくん…」
サスケくんはとっても優しいのだ。
私が泣いてても黙って聞いてくれる。
集団からはね子にされてる人間にも優しいのだ。
差別とかしない性格だ。
しかも格好良いし、頭も良いし、強いのだ。
女子たちの憧れの的だ。
☆☆☆
遠方からそれを目撃した女忍集団がサスケの元へと接近した。
そして、サクラからサスケを奪うかのようにサスケを遠くへ誘導して行った。
サクラは溜息を吐いた。
(こんな日々がずっとココ1年も続いてる。
サスケくんは…仲間外れされてる人間にも優しく、面倒見が良いのだ。
サスケくんはみんなのスターだ。
私に構ってる暇などない…)
サクラはずっと一人だった。
☆☆☆
サスケから拒まれて立ち去るざる得なくなった、くの一集団の会議が始まった。
『わたしね。
サクラ、きらい。
イノもそうでしょ?』
≪うんとね…≫
『サスケくんに、しゃべりかけてもらえて…。
はらたつ!』
『ブリっこしてんじゃないわよ!
…よくみたら、カワイイかおしてるていどで…』
『せいかくウジむしのくせに』
『デコかくしてるからかわいくうつるのよ。
ほんとうはブスよ…コロす』
『ホネのズイまで…イジめる』
イノは少し賛同しかねた。
確かに、イノはサスケくんファンクラブを束ねる隊長ではあるが…少し前まで母親を通じで公園デビューで遊んでた頃もあったからだ。
≪わたしたちが…イジめるから…。
よけいに…サスケくん…。
サクラに…かまうんじゃないかしら?≫
イノは弁解した。
『どういう…いみよ』
≪だから。
わたしたちが…サクラとなかよくなったら…。
サスケくんの、トクベツあつかいも…おわるかもよ?≫
これはイノの勘だ。
『ふんッ』
『でも…。
わたしたちが…イジメめる、まえ…。
サスケくん…いちばん、はじめに…サクラへ…こえ…かけた…でしょ?』
『だから…イジめたのよっ!』
『キーーーー』
『サクラがトロくて、なまえ…いえないから。
サスケくんが、きいてやっただけよ、きっと』
『そうよ、ノロマでなきムシだから』
『サクラはかんちがいしてる!』
『…ズにノりすぎよ!』
『たおす』
仲間の反論が出て来た。
イノは提案をした。
≪えとね。
わたしから…サクラと、なかよくなって…。
サスケくんから…とことん…ひきはなす!
これならどう?≫
イノが名乗り出た。
面倒見の良い女を演じて…イケメンなサスケくんをゲットする魂胆だ。
このファンクラブの中で一番、評を上げる気でいる。
『サクラとは、なかよかったし…。
うまくいくかもよ?』
イノも実はサクラだけ跳ね子にする集団の意見に…最近では賛同しかねていたからだ。
『サスケくんと、サヨナラさせてよ』
『おもいっきりよ』
『ガンバれ!』
『ファイト』
≪わかってるわよ≫
イノは計画を実行することに決めた。
☆☆☆
サクラは…。
友達もいない。
寂しいから大抵、里抜けの道か…サスケを発見したら尾行をしていた。
(サスケくん…)
声がかけたいのに自分からは声掛けが出来ない。
そうして…ついて行った先は…サスケの本宅。
近所に「うちは饅頭」と表示された看板があった。
100円程度で買えるらしいが…。
偶然にもサクラは小銭を持っていたのだ。
それで買うことに決めた。
サスケはサクラには気が付かず、自宅に入っていったようだ。
「あの…えと…」
幼いサクラはうちは饅頭屋の前で立った。
「お嬢ちゃん、ひとりかい?」
「ください…」
「何個だい?」
「ひとつ」
「はいよ…」
ホカホカの饅頭が袋に詰められた。
「幼いのに偉いね、おつかいかい?」
「・・・・はい」
「そうかい、そうかい。
また寄ってらっしゃいよ」
こうしてサクラのカバンに饅頭が入れられた。
サクラは家に帰ったら食べる気でいた。
(それにしても敷地が広いなあ…)とサクラは感動した。
そして…サクラは元来た道をトボトボ帰って行った。
サクラは…暗記だけは自信があるのだ。
そういう理由で道順を間違えずに自宅まで帰れた。
今日もひとりぼっちだったが。
鞄にはお土産がある。
食べてみると優しい味わいだ。
(やさしいサスケくんと…おなじだ…)
サクラの胸がホッコリした。
☆☆☆
翌日もサクラは里抜けの道にいた…。
遠くで、女の子の集団は仲良く喋ってるのに…。
サクラにだけ声を掛けてはくれない。
『デコー』
と言われて素通りされるだけだ。
(ここ1年もこの調子だ。
それからサスケくんが来たら、くの一集団は一直線にサスケくん目掛けて接近を試みるのだ。
どうもサスケくんは凄くモテるらしい。
全員のアイドルで、人間に平等に優しいのだ)
その日、珍しいことが起きた。
イノがツカツカツカ…とサクラの方に歩み寄ってきた。
少し前までは公園で母親を通じてよく会話した。
それなのにここ1年は冷たい。
イノは…サスケが来るといつもサクラから奪っていく。
また「デコ」と言われて去られるのかとサクラは首を落とした。
イノがサクラに告げた。
≪オデコかくすから…みんなにデコって、いわれるのよ。
アンタよくみたら、かわいいカオしてるんだから…。
オデコだしなさいよ≫
サクラは目をまたたきした。
そのあと、イノはニコリとサクラに微笑んで去って行った。
サクラの胸がジーンとなった。
(サスケくん、私…もしかして…やっと女友達できるかも…。
これで、サスケくんに迷惑かけなくて済むかな…
この里でお友達、たくさんできるかな??)
☆☆☆
『いった?』
≪いったわよ≫
イノが返した。
あまり気乗りしないような顔だった。
『デコだし…キョウセイさせた?』
≪させたわよ…≫
イノは頷いた。
『よし。
コレで…サスケくんも、サクラのデコに、おどろいて。
きらいになるわ』
『わたしたちも…サクラと、なかよくしてやるわ?』
ファンクラブのメンバーが黒笑した。
『できるだけ…サスケくんとバイバイよ!』
メンバーはガッツポーズで喜んでる。
≪そうねえ…≫
イノは納得した。
『イノ?
サクラは…サスケくんのこと、すきなの?』
≪さあ…。
いまのところ…なにも…いってないし…。
わたしが、つくったファンクラブに…はいらない、ということは…。
なにもないんじゃ…ないかしら?≫
イノは否定した。
『コワすのは…いまね』
『めざわりなのよ。
なきムシのくせに…トクベツあつかいされて』
『はやく…はなれさせて…』
イノもサスケは大好きだ。
離れてくれることはありがたかった。
≪わたしたちが…イジめすぎたから…。
よけいに、サスケくん。
ふびんに…おもって…そんなことするんじゃないかしら?≫
イノは自信があった。
今の状態では自分たちが悪役で…サスケに悪評価を与えかねない。
汚名を挽回して…面倒見の良い女であるところを証明せねばならない。
そうすれば、簡単にサスケが落ちるかもしれない…心を許すかもしれない。
と踏んだのだ。
だから、その役にイノは願い出た。
『サスケくんはやさしいだけで。
トクベツな…イミはないってこと?』
≪おそらく。
あのイケメンなサスケくんがサクラになんて相手にするわけないじゃない?
成績もそんなにすごくないし…サクラ普通だし…≫
イノは断言した。
『さいしょのアレも…サクラがトロいから…。
しかたなしに…サスケくんから、いった…だけなのかもよ?』
イノは考察した。
『そうよね…それしかないわ…』
『そうにきまってる…』
『サクラとろいし…』
『にぶいし…』
『なきムシだし…』
『イライラするしね…』
サスケファンクラブでサクラの悪口が始まった。
イノは聞くに堪えず、言葉を挟んだ。。
≪まずは…サクラとの…ゆうじょう…を…とりもどすわ≫
そして…里のbPイケメンを…自分がゲットする…、イノはその気でいた。
☆☆☆
夕方ごろ、イノはサクラに接近した。
するとオールバックにしたサクラがいた。
デコが強調されてる。
イノはポケットから黄色のリボンを渡した。
≪これ、わたしたちの…ゆうじょう…のあかし、
あんたにあげる≫
「ありがとう、イノ」
(サスケくん…わたし初めてお母さんの力なしで…女友達出来た…)
サクラは涙を流して喜んだ。
≪これからは…わたしたち、ともだちよ。
いっしょに、あそびましょう≫
「イノ…」
(友達になってくれて、嬉しい)
≪あとね…わたし、サスケくんがすき。
わたしたち、ともだちよね?
きょうりょく…してね?
サクラ?≫
「え?」
≪できる…?≫
「うん…」
≪サスケくんとは…しゃべらないでね。
サスケくんはみんなのアイドルだから……
ファンクラブではルールがあるの…≫
「そっか…」
≪わたしを、とおしてからじゃないと…ダメなのよ?
わたしがつくったファンクラブだから。
サスケくんは…みんなのものだから≫
「うん…」
(サスケくんは…やっぱり、とってもモテるみたい…)
≪サクラ…オキテをやぶると…ウラまれるわよ…。
まえは…みんな、おこってたけど…わたしが…とめてあげたのよ?
かんしゃしなさいね?≫
「…」
(そうだよね…。
はねコにしてる…わたしだけ…サスケくん、めんどうみてたし…。
しかられて…あたりまえだよね…)
≪しんぱいしないで。
これからは、みんななかよしだから…。
セットクもしといたから。
わたしも…のりきじゃなかったのよ…。
ただね?
サスケくん、ほんとうにモテるのよ…。
すっごく、カッコウいいから…≫
「しってる…」
(みたらわかるよ…。
サスケくん、やさしいし…カッコウいいし…つよいし…)
≪これからは…ぜんいん、サクラのともだちよ。
ただルールだけは…まもってね?≫
「うん…」
(ほんねは…さびしい…)
≪サクラと、これから…ハナわを、いっしょに…つくりましょう。
わたしたちの、ゆうじょうの…ふっかつを、キネンして≫
「うん」
(イノ。
なかまに、いれてくれて…ありがとう)
こうして二人の友情は戻ったのだ。
☆☆☆
それから数か月が経過した。
6歳だ。
この数か月の間に親友の域までイノとサクラは来ていた。
アカデミーへ入学も果たした。
今ではあまりサスケに声掛けはしてもらえないが…サクラはあの時の恩を忘れたわけでもない。
気が付けば。
チラチラ、サスケを見詰めてる自分に気が付いた。
それから…サスケと出会った日以来…気が付けば…いつも…サスケをストーカーしてる自分にサクラは気が付いたのだ。
たまに喋りかけてもらえれば、
「ともだち…できたんだな、よかったな」
と優しく対応してもらえてる。
その刹那、何故かサクラの…胸が高鳴るのだ。
しかし…サスケとサクラの距離はどんどん離れてく。
アカデミー前に、公園や里抜けの道でいたときより…更にアカデミーに入ってから、サスケは目をつけられたらしい。
女の子は絶賛してる。
サスケの手裏剣の腕は上手ではないが、「そこもいい!」と女子は弁護してる。
サクラは…アカデミー入学前…サスケが『オレはつよいと…おもう』と話してたことを思い出した。
しかし…先生に残されるレベルの腕だ。
(あれは…どういう意味だったんだろう…?)
とサクラは頭を悩ませていた。
(もしかして…サスケくんは私の前で強がっていたのかな…。
あれ、嘘だったのかな。
サスケくんは…強くはないのかな…)と…。
サスケの間違えた軌道の手裏剣が…女子たちの服に当たって…制服が切れそうになることもある。
サスケに一番、近づく…イノは軽い擦り傷になってしまったことは数回ある。
サスケの手裏剣は…かなり危険な軌道だ。
授業中、女子たちがサスケの後ろから接近しようとすると…。
サスケの手裏剣は…的ではなく後ろに向かって…飛ぶのだ…。
そして、地面に突き刺さる・・・。
一瞬、驚いてる女子も多いが…。
イノはそれでもめげてないみたいで…。
何回か軽い被害にあっている。
サスケの半径3メートル圏内は…危ない…。
イノは
≪わたしがガンバって、サスケくんをつよくする。
それがわたしのユメなの≫
とサスケのいない時に…サクラの前でウルサイ…。
応援ばかりしてる。
今のところ、遠目から見て近づいてないサクラは…被害にあってないし…。
ファンクラブに所属してない日向も…サスケに接近してないから、怪我もしてない。
毎日、サクラはサスケを…遠目に眺めていた。
(ある意味凄いな…。
サスケくん…上手に…後ろの人間に命中してる…。
背中…後ろ向けてないのに、後ろに目があるみたいに…。
前に見える…的の木じゃなくて…。
今のところ…応援団で、致命傷になってる人はいないけど…。
お蔭で先生はハラハラしながら…サスケくんを指導してるみたい…)
(サスケくんは…もしかして…男友達が欲しいのかな。
私も…女友達出来たけど…。
サスケくんはモテすぎて…男友達、誰もいないみたいだし…。
女友達は…あんなにサスケくん…いるみたいだけど…)
内気なサクラは…サスケの間違えた軌道の手裏剣が人間に当たりそうになるたびに…。
怖くて泣いてばかりだった。
今のところ…流血沙汰になってないのが不思議なレベルの凶悪なスピードで…後ろにシュッと跳んでくるのだ。
地面に亀裂がいくことがある…。
幼いサクラは怖くて…泣きそうになる…イノや応援団の足に擦り傷が出るたびに…。
サクラは後ろから…ボタボタ泣いてる。
(サスケくんの手裏剣が上達しますように…)
先生は…ドベのナルトより、サスケに付きっ切りで指導してた。
人命に関わるレベルの恐ろしさだからだ。
ナルトの手裏剣は飛ぶこともなく、すぐにボタッと落下する・…。
被害は周囲に与えないだけ…先生はおろそかになるようだ。
ナルトは先生に「構ってくれってばよ…」と必死のようだ…。
☆☆☆
アカデミー入学してから半年後ぐらいの話だ…。
最近では…サスケの手裏剣の腕前は相当で…。
サスケが…同級生では敵なしだと…サクラに話していたのも頷けた。
急に上達したのだ…以前は残されて先生と…手裏剣の課題をしてたのに…。
(「オレはつよい、おなじトシでは…だれよりも…」って言ってたの、本当だったんだ…)
サクラは感激してた。
複数の手裏剣が飛び交うさまを…百発百中だ。
しかも軌道も蛇のように自由自在にコントロールできてる。
素晴らしすぎる…。
(それなのに…どうして、少し前までは先生に残されるレベルだったんだろ…。
サスケくん…もしかして…女子に絡まれるの…嫌がってる???
だから…下手なふりを…)
ある日を境に…居残りレベルから…翌日…急に…学園ナンバーワンレベルに変わったのだ。
達人級だ。
あれでは生徒だけではなく…もちろん、先生もサスケが今まで…下手な演技をしていたと…すぐに見抜いただろう。
前日まで居残りで先生とサスケは残って…一度も成功させず…。
翌日の授業で…その間練習もなく…サスケは一度で決めたのだ。
女子達の歓声で…サクラは…耳がやられそうになった。
以前…先生なりに余計に時間を取って、サスケに親身にしてたのは…サクラは見てる。
先生は…そのせいで…怒っているのか、サスケに話しかけようとも最近ではしない。
(サスケくんは…女友達じゃなく…男友達が欲しかったのかな???)
(私もアカデミー入ってからは…女友達できたもの。
私たち、6歳だし…サスケくんも男友達、欲しい年頃だよね…。
女子たち邪魔なのかな…、そのせいで男子…サスケくんに冷たいみたいだし…。
私、サスケくんに友達作り協力してもらえたのに…何かできないのかな…。
役に立てないのかな…私に何が出来るんだろう…)
その証拠に…最近、サスケは以前よりずっと女子集団に冷たい。
愛想笑いすらしようともしないのだ。
しかし…サスケは…さらにクラスの女子たちのアイドルだ。
ファンクラブの数は増え…更にメンバーの熱意が増してる。
近づくことすら出来ない…。
本当は…サクラも応援したいのに…他の女子集団に押されて応援できず…。
遠目に崇拝の瞳を送るだけの関係になってた。
(サスケくんは…格好良くて、優しくて、強い!!!
凄い!!!
キャーーー)
それまでは帰宅するサスケのあとをこっそりつけてたが…最近は女子集団から逃げるように…。
アカデミーが終了するとサスケは…俊足でいなくなるので尾行できない状況に…サクラはあった。
仕方なしに、6歳のサクラは…記憶を頼りに…サスケの屋敷周りを徘徊しようとした。
サクラ一人で…サスケの屋敷へ向かうのは…始めての経験だった。
いつもはサスケを隠れて追跡のあとに目的地へ到着してたからだ。
しかし…道は…立ち入り禁止の看板が立っていたのだ。
奥へは進めず…行き止まりになっていた。
工事中らしい…。
(どうもサスケくんは引越ししたらしい)
ということにサクラは気が付いた。
いつも「うちは饅頭」の常連になっていたのだが…。
引越しをしたらしい。
この話は、サスケには話せなかった。
ストーカーしてたことがマルバレになるからだ。
この日を境ぐらいにサスケの表情が暗いな…とサクラはいつも遠目に見詰めていた。
今まではサスケの方から声掛けしてもらえてた。
サクラが内気で泣き虫だから。
待ってるだけだったのだが…。
全く公園にも来ない。
里抜けの道辺りでウロウロしてるのは目撃したが…。
女子の集団が近づく前に逃げるように去ってる。
接近しても、走り去る。
表情もない。
変だな…。
とサクラは疑問視してた。
☆☆☆
サスケが手裏剣修行の時ぐらいしか…最近ではサクラは近づけない。
遠目に見てるだけだが…胸がときめいて仕方ない。
本当は…サクラも歓声をあげて…応援したいのだ。
見れば胸が痺れてたまらない。
しかし…サスケは学園中のアイドルだ。
自分には勝ち目もなさそうなぐらいライバルだらけだ…。
学園一成績優秀のイノまで、サスケを恋い慕い絶賛してる。
(もしかして…私はサスケくんに恋をしているのだろうか?)
と…観戦途中からサクラは上の空だった。
イノには…
≪わたし、サスケくんがすき。
わたしたち、ともだちよね?
きょうりょく…してね?
サクラ?≫
と仲直りしたときに、言ってもらえた…。
それから…。
≪サスケくんとは…しゃべらないでね。
サスケくんはみんなのアイドルだから……
ファンクラブではルールがあるの…≫
≪わたしを、とおしてからじゃないと…ダメなのよ?
サクラ…オキテをやぶると…ウラまれるわよ…≫
≪まえは…みんな、おこってたけど…わたしが…とめてあげたのよ?
かんしゃしなさいね?≫
≪サスケくんは…みんなのものなのよ…≫
とは、強制されてた。
でも…それでも…。
サクラは…イノのためにも助力しようとはしたけど…心が痛むのだ。
イノとの会話よりサスケとの会話の方が…幸せな気分に浸れるのだ。
そこで気が付いた。
サクラはサスケに友達としてではなく…惚れているということを自覚した。
(わたしは…サスケくんが…だいすき)
サクラは…イノが、サスケくんファンクラブの隊長であることは知ってたが。
耐えられない気分になって。
その日、清々堂々勝負に出ることを決心したのだ。
「イノ、サスケくんって…モテるんだよね」
≪そうよ。
カッコウいいからね、つよいし≫
イノも最近では…サスケの強さを認めたらしい。
前は顔だけ褒めていたのが証拠だ。
イノは誇らしげな表情だ。
「サスケくん。
やさしくて…つよいし…カッコウいいから…。
いっぱいサスケくんのこと…すきなひと…いるんだろうな…。
イノもすき?」
≪すきよ…≫
「わたしも…サスケくんのこと、すき。
イノ、このリボンは…かえす。
きょうから…わたしたちはライバルだから」
サクラは黄色いリボンを外した。
イノが挑戦的な顔に変化した。
≪わかったわ。
わたしは…ヨウシャなんて、しないからね≫
「わたしも」
その日を境に二人の仲はとても険悪になった…。
恋の格闘の日々が始まったのだ…。
絶対に負けないとサクラは自分を変えることを決意したのだ。
☆☆☆
サクラはイノが設立したサスケくんファンクラブには入らないことに決めた。
そこに所属すれば様々な情報や、隠し撮り写真や、その他諸々の会議に参加できる特典があるらしいが…。
敢えて一人で対立することに決めたのだ。
ルールがあったら、やりにくいからだ。
お蔭でファンクラブのメンバーからは恨まれるかもしれないが…
サクラは女の子の集団全員を敵に回しても良いくらい…
サスケくんが好きな自分に気が付いたからだ。
☆☆☆
アカデミー内で…イノはくの一ではトップだ。
サクラはサスケと毎日会えるのが嬉しくてたまらなかった。
サスケの手裏剣はコントロールできるぐらいの腕で…サクラはそれがたまらなく格好良くて仕方ない。
見ているだけで叫びたくなる…それなのに内気だから…女子たちに負ける…。
最近、全く会話をしてないことに気が付いた。
サクラはイノに宣言したものの、まだ、サスケには告白もしてないことに気が付いた。
チラチラ見ているだけで。
自分から声を掛けた経験すらないのだ…。
とても照れるからだ。
しかし…このままでは積極的なイノに乗り遅れてしまう。
サクラは変わると決意したのだ。
イノに…ライバル宣言した…あの瞬間。
弱い自分を押し隠し、第二のサクラを内部に飼うことにした。
自宅で毎日、強くなるために精神トレーニングをしている。
内部にいる「内なるサクラ」は常に強気だ。
(しゃーなろ!!
強くなる!!
イノにはまけない!!!
サスケくんは…わたしのもの!!!
いってこい!)
今日こそ、言おうと決意したのだ。
「サスケくんのおヨメさんになりたい」と。
イノに負けるわけにはいかなかったから。
泣き虫だけど頑張ることに決めたのだ。
木の葉の里のラスボスナルト3〜12歳。「打倒サスケ、火影になる」
目次
☆サクラとの出会い←既読の方、スルー(時系列を正すために分割)