平和国からコンニチハアナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

タリアのマナナ躾帳E

『タリア視点』



しかし、本音を話せば…俺の初恋はマナナで、お(かげ)(ひ ね)くれた性格に育ってしまった。
ムカつくから少しは反省をしまくれば良い。
マナナは本気で嫌な性格をした女だ…だからこそ一生、告げる気にもならない。
将来に渡り、マナナから俺へ愛享受(あいきょうじゅ)が 始まれば良い。
過去に受けた傷心(しょうしん)(い や)すぐらいな気持ちで、優しさを(そそ)い でくれることを祈る。
今後に期待しよう。
因果応報(いんがおうほう)だ。

感情にココまで格差があることが今でも嫌過ぎる…。
まだ足りない、信用には(いたら)ら ない。

本気でコイツは最低女だ、一番最初から一目惚れだったのに…幻滅も良いトコだ。

まだ許されない。
☆☆☆


ターシャ神社賽銭箱(さいせんばこ)向こう岸、 屋敷内黄色畳に…俺とマナナや母、父―――合計4者が立つ。

俺は黒(はかま)で成人式衣装正装だ。
俺を抱擁するオレンジワンピな低身長教尿系女子がマナナ。
あと…母は白無垢装束姿(しろむくしょうぞく)で… 俺から見て右隣にいる…。
俺の父は…影武者同前、母親背後へ隠れて見守り…今日も常通り、神父服姿だ。

外は快晴で…心地よい気候だ。


死んだ瞳で外を見()めてたら…神社石段か ら見知った人間達が、コチラへ向けて接近してくる。
一人は俺の親友…キセキ。
久々に会えば…茶髪茶眼は元々だが、緑アロハTシャツにジーンズ…。
一見して、雰囲気が遊び人だ。
(お前は…ヴァカンス島から遊んで、帰って来たんだろう…?)
と茶々を入れたくなる。

高校時代より更にチャらく…映ってしまう。
キセキはクォーターだが、顔は純黄色人種だ…言わないと茶髪が生まれつきだと分からない。
何故か、チャラチャラ…その辺で遊んでるように映ってしまう。
容姿と色素が合ってない。


その隣にいる人は…身長170〜180p、肩幅は男並みに広く筋肉隆々(きんにくりゅうりゅう)と して、顔にも(ひげ)が生えかけた英子さん…赤 い振り(そで)でビシッとめかし込んでる。

俺も母親も()えない容姿と表現されるが・… 一度も俺は女性に間違えられることもないし。
それから…母も男性に間違えられることはない。
しかし、英子さんは……何故か中年オカマにしか見えない顔だと言うことが大問題だ。
本当に女性か疑う…。
失礼だが――オリンピックなら、XXYなんじゃないかと…DNA検査デモを求めそうだ。
俺の許婚(いいなづけ)らしい。

俺を必死に抱擁するマナナを見詰めてみた。
そこら辺にいそうな凡人顔で、肩揃えな黒髪と低身長。
全くカモシカ脚でもなく…程よくムチムチな脚。
年中、ダイエットを己に課してる女だ…。
しかし…自分に甘く成功した試しがない。
「痩せる」と宣言してから…いったい何年、経過してるか?
取り柄は巨乳以外ない気がする。
しかし、性別が女性な事だけは一目瞭然だ。
マナナは頬を高くさせ、笑顔を浮かべた。

あ、分かる。
マナナは今、英子さんならオカマみたいに見えるし・…勝てそうみたいな表情をした。
これでは足りない。
もっと必死に…絶体絶命的な感じで心配させてみたい…。

今、そんな気分だ。

「キセキ!
来てくれたの!
平和国から帰って来たのね!
向こうの大学では…うまくいってるかしら?
今、夏季休暇なんでしょう?
ゆっくりして行ってね!!!」

俺を抱き締めながら、マナナが嬉しそうに叫んだ。

「ああ…。
今から…タリアの見合いが始まるんだろう…?
僕は今、嫌な人間に絡まれている…。
マナナ、僕を昔のように助けて欲しい。

タリア…それから君は自分の運命を受け入れるべきだ。
僕は今、モテているが…あまり嬉しくない」

賽銭箱付近、鈴を鳴らす紐前に…キセキと英子さんが仲良くいる。
キセキは見た通り、時々…俺へ地雷を踏んでくる友人だ。
キセキが英子さんから(から)まれて…茶目を潤 ませ、今にも泣きそうだ…。


♂え?
キセキさんって…留学してるんですか?
平和国で…♂

「マナナ…君も自分の運命を受け入れるべきだ、その方が絶対…君にとっても幸せだ。
僕は見守るだけだ。
役に立てそうにもない…。
申し訳ない」

「ううん…。
私、ずっとキセキの帰国を待ってたわ!
さすが、私の親友だわ!!
最近、ずっと大変で…。
もう精神的におかしくなりそうだわ!」

俺は神社境内(けいだい)黄 畳(きだたみ)で黙視してる。
今日はマナナがどういう対処をするか観察するつもりだ。

マナナは優柔不断が過ぎる女だし…そろそろ、キセキへハッキリと。
「今では昔、付き合ってたキセキよりタリアを愛してる」と声大にして伝えるべきだと感じる。

二人ももう子供じゃないし、疎遠になるべきだろう。
俺がいる隣で・・俺以上にLINEが(はず)ん で楽 しい訳もない。

『…』

隣で、白無垢着物姿な鬼母が勝手に提案した。

||「キセキさん、マナナさんの母から聞いたわよ。
キセキさんの許婚いいなづけ)は…元々、マナナ さ んの予定なんだったんですって?

うちのタリアと別れたマナナさんと…もう一度、やり直す気はないかしら?

タリアには英子さんという…申し分なく体力的にも知力的にも素晴らしい…月神家の許婚いいな づけ)が いますからね?
どうかしら?
キセキさん…」||

賽銭箱手前…鈴を鳴らす(ひも)付近にいるキ セキは…戸惑(とまど)った様子だ、奴は茶眼を左 右に揺らした。

ここら辺も親友なら、ハッキリと「マナナはタリアと一緒になるべき女性です。僕にはもう既に本命がいますので」
とでも反論するべきだろう。

キセキからマナナ充てに来たLINE内容を、読めば読むほど、下心しか伝わらないが…何故だろうか?
世界中で点在する女性全てを包み愛すレベルに、博愛精神だ。
気が多い男だ。
どうせ、未だに…マナナも恋愛候補へ入ってそうだ。
そんな気がしてたまらない。

「それは……」

キセキはケバイ化粧を施した赤い振袖(ふりそで)姿 でオ カマ風な英子さんに…キスを求められ…必死に拒んでる。
キセキは緑アロハ服とジーンズを身震いさせ、絶句してる。

「お願い、キセキ!
タリアを(しか)って…。
何も言ってくれないの!
悲しいわ、私…」

マナナは…オレンジワンピから柔らかい胸元を俺へ接近させて、半泣き状態だ。
どう見ても、今では俺達が恋人にしか映らないだろう。
キセキがターシャ国を去ってから3年で、俺が施した調教は成果を結び、ここ ま で可愛い女性へ進化した。
このレベルに至るまで…どれほど、教育しまくったか。
本当に最初は不満だらけだった。
大変だった、ここまで育てようと思えば。

『…』

キセキは・・今でも、マナナが俺を(けな)し、 キセキを絶対崇拝(すうはい)してると自惚れてる だろうが。
それは過去で、現在は変わってる…。
それを一回ぐらいは、キセキへ知らしめたい…と願ってた。

「タリア…君はいったい、何を考えているんだ」

賽銭箱、(かね)を鳴らす紐前に立つ…キセキは 茶目を涙で光らせた。
俺は地面を見た…視線が合いたいとも別に思わない。
これでやっとキセキへも理解できた筈だろう。

本望は半分、達成できた。
しかし、まだ心残りがある…これでも、まだ満たされないレベルに傷心が刻まれてる。

あの…陰鬱(いんうつ)なる時代は12年間だった らしい…。
それなら、マナナが変貌し始めて3年も月日が流れるし…。
あと9年間、従順(じゅうじゅん)さを守れた(あ かつき)で良いだろう。

それぐらいに余罪(よざい)が残ってる。
繊細で多感な思春期に犯された苦痛は…未だに、雪解(ゆきど)け とならず…まだ炎が燃えてる。
それを溶かそうと思えば…マナナが注ぐ純朴(じゅんぼく)な る愛でしか達成できない。

||「アホな(よめ)を 我が家に入れる訳にはいきません。
最低、4大には行って貰わないと…。
しかもお母さんが援助交際なんてしてたですって!
そんな緩い家の子は我が家にはいりません!
英子さんはそのてん、素晴らしいお方!
因みに…どうして、キセキさんと英子さんが一緒にいるのかしら?」||

隣にいる白着物姿な鬼母は…予想通り、マナナを(けな)し てるが…マナナは必死に戦ってる。
全ては俺を愛してるからに決まってる。
ここまで従順(じゅうじゅん)な女性に変化した、 素 敵なことだ。

「キセキの隣にいる赤い振袖(ふりそで)姿の女性 が…英子さんなのね?
どうしてなの?
キセキ?」

俺をギュッと抱擁する…マナナが首を傾げ、肩揃えな黒髪が揺れた。
どうせ・…ここからキセキから自慢話を開始されるのだろうが…。
キセキも一度ぐらい、(こた)えたらどうだ?

♂私から逆ナンしましたわ!
偶然にも、まさか・・・私の許婚いいなづけ)の 知り合いだなんて!
驚きですわ!
ホホホホ♂

赤い振り袖姿なオカマにしか見えない英子さんは…余程、気に入ったらしい…。
緑アロハTシャツにジーンズ姿をしたキセキへ、ベッタリと(へび)同 様に巻き付いたままだ。

隣から…白着物姿な母は冷気を流した。
母は凶暴でギラギラした視線をキセキへ注いでる。
キセキが着てる緑アロハ服がまた震え始めた。

俺は黒い袴着(はかまぎ)で、現場を見下ろす傍 観者に(てっ)そう。
これこそ俺が見たかった舞台だ。

「すごいわね、街角で逆ナンなんて。
いつもなの?
キセキ」

神社屋敷内部黄畳 で、俺へ熱い抱擁を交わす…丸(えり)オ レンジワンピなマナナ はビックリしたような声色だ。
隣に立つ白着物な母からは怨念(おんねん)オーラ − が漂ってる…。
常に、母は俺へ味方する。

賽銭箱(さいせんばこ)(か ね)を鳴らす(ひも)の 前にいる…赤い振(そで)姿な英子さんは…(タ コ)姿でキセキを吸引し、瞳は桃色に輝かせた。
緑アロハ服な茶髪茶眼長身体躯――モテ男、キセキは寒気付いてる。
少しは、攻撃が効いただろうか?

「さすがに…マナナ。
いくらなんでも、これが初めてだ」

♂海外留学してるなんて!
 しかも容姿もよし!
 私はこれにしましたわ!♂

「僕の家は悪いが…庶民で普通のサラリーマンだ」

キセキがオカマな見た目をした英子さんへ必死に弁解を始めた。

『…』

俺は神社黄畳へ立ち、寡黙(かもく)なりにも、上 座(かみざ)から様子を眺める。
隣で泣きながら…俺を包む女性はマナナだ。


(けな)すところがありませんわ。
旧家はしきたりがうるさくって、もうパーフェクトですわ!♂

「ずっとこの調子だ…」

神社砂利道へ立つキセキは半泣きで、足を後退させた…。
キセキへ密着する英子さんは強引な力でキセキをねじ伏せようとしてる。

その時、俺へ抱擁するマナナが高らかに声を上げた。

「お義母さん!
私達はもういつ子供ができてもおかしくない関係なんです!」

俺は少しビックリしたが…隣に君臨する鬼母から冷気を瞬時に察知して、地面を見詰(みつ)め た。
これから…更に過激化するだろう。

||「うちの子を…(たぶら)かしたとでも言う のね?」||

白無垢着物な母は…地響きがしそうな声色で…マナナを凝視した。
これは…さすがに…俺でも肝が冷えた。
予想はしてた。
しかし…反応が遅れた。

「タリア、どうして見合いになんて参加したの?
どうして、お母さんの言いなりなの?
今ではミルルより私で諦めがついたって言ったくせに。
どうしてなの?
ねえ!
何か言ってよ!」

オレンジワンピなマナナが…俺が着てる黒袴着を揺さぶり、胸元が肌蹴たが…。
それを元に戻す余裕がない。
頭が停止してしまった。

母が怖いことぐらい、経験で知ってる…。
対抗する気にはなれない。

その時、マナナが隣で盛大に息を吐き…大反論へ出た。

「分かりました!
私を捨てる気なら…コチラにも考えがあります!
お義母さん、タリアの秘密を今、ここで暴露(ばくろ)し ます!
私は復讐(ふくしゅう)します!
目的は慰謝料(いしゃりょう)では有りません!」

『…』

||「なんですって!!!!???」||

俺はマナナが浮かべる表情を横目でチラリと眺めた…。
まさか、あれを今…ここで言う気か?

俺から見て隣、黄畳へ立つ白着物着な母が…モアイ石像と化し、ポカーンと開口してる。

今日は…周囲に集合する参拝客達も遠慮して賽銭箱へ近付かない…。

鐘を鳴らす紐周辺では…。
緑アロハTシャツにジーンズ…茶髪茶眼なキセキが、下からコチラを真剣に見詰め…砂利を踏みしめてる。

その瞬間、キセキにへばり付く赤い振袖を着た英子さんが…男声で叫んだ。

♂まあ!
 容姿も最悪だし最低男だわ!
 私、キセキさんにしましたわ!
 月神(つきがみ)家とは縁を切ります!
 キセキさん、さぁ…デートしますわよ!!
 もう、ここから去りましょう!
 サヨウナラ!!♂


英子さんはキセキを引っ張って、ターシャ神社境内から退散する。
二人が…群衆に隠れ、消えた。
石段下をマッハスピードで下降したらしい。

「やったわ!
破談になったわ!
わあい!
お義母さん、これで…私を月神家の人間として、認めて下さりますよね?
これからは私は精神込めて、タリアへ尽くすと決めました。
お義母さん!
私を月神マナナにしてください」

||「マナナさん…。
甘いわ?
神社の嫁を()めないでちょうだい?
この家を切り()りするにはそれなりに才のあ る方しか・・無理なの。
まず、この家の床の間にある…あの掛け軸。
私がかけたものだわ?
それから…床の()()け てある…自由花。
あれも私が生けてるものだわ?
それ以外にも朝は早く…ミサもあり、協会に住み込みの方たちへは食事も()()わ なくてはならないの?
アナタにその(つと)めが出来るとでも思い?
英子さんなら完璧にこなせたのに…。
和菓子(わがし)饅頭(ま んじゅう)懐石(かいせき)料 理…それ以外にも…()(ば な)茶道(さどう)… レベルは(きわ)めてもらいたいわ?
だいたい、行儀作法(ぎょうぎさほう)もなってな い貴方がここで(つと)められるとでも、思って るの?
()めないでちょうだい。
私は・・ここで働いてるの!
朝4時近くから四六時中(しろくじちゅう)よ!
そんなに楽な仕事じゃないの!
帰ってちょうだい!」||

「頑張ります。
マスターします」

||「アナタには無理に決まってるわ?
学生時代の成績表も…知ってますからね?」||

「やります!
できます!」

||「何度も言うけど、甘くはないわ?
まず…花嫁修業として、御稽古事(おけいこごと)は 複数、通ってちょうだい。
話はそれからよ?
この家にそれが出来ない人を(よめ)にする訳に はいかないわ?
分かってるの?」||

「タリアのために私はします!
根性を出します」

『…』

参拝(さんぱい)客からパチパチパチと拍 手喝采(は くしゅかっさい)が上がったが…甘くないだろう。
マナナには正座すら、無理なレベルだ…先が思いやられる。

「私は過去に懺悔(ざんげ)し、今から生まれ変 わって…真人間(まにんげん)になります!
(しつけ)教室へ通いに行きます。
でも…その資金は…?
私の方が出すんですか?
御稽古事(おけいごごと)料金は…」

『…』

ここら辺が異常にチャかっりし過ぎてるが…我が鬼母は般若化(はんにゃか)し た。

||「マナナさん?
私は別れてくれて、大賛成なのよ?
タリアと本気で一緒になりたい気なら、ご自身の将来のために御稽古事(おけいこごと)へ 通うべきだわ?
今のマナナさんで、この家が(つと)まると思 い?
この家が駄目(だめ)だとしても…他のことに関し ても役立つでしょう?
ウチとしてはね?
許婚(いいなづけ)の英子さんのために稽 古料(けいこりょう)を払う気にはなっても・・。
貴女は大反対だわ!
どうぞ帰ってちょうだい!
だいたい、英子さんなら全てパーフェクトなレベルで出来ることなのよ!?!
再度、通ってもらう必要すらないのよ。
ウチとしては……貴女(あなた)以外の方で、もう 既に、これぐらいは出来る良家の子女を見合いで(よめ)に したいの。
ただ、お断りしたいだけの話なのよ?
嫌味(いやみ)が理解できてないの、貴女?」||

「分かりました…。
こっちで用意します。
何としても私は月神家(つきがみけ)(よ め)になります。
頑張ります」

『…』

観衆からパチパチと再度、拍手があるが・・先ほどより音がまばらだ。
これで、達成出来ると思い込んでるらしい。
大丈夫だろうか?
能力値を考えれば、限界を超えてる気がしてならない。

「どうしよかしら?
そうだわ!
高校時代のクラスメイト―――大和ナデシコへ連絡して、大和ナデシコ(しつけ)教 室へ通ってみるわ!
ね、タリア!
出来るわよね?
私」

『…』

||「ふん…。
3日坊主で終わるに決まってます。
期待なんて母さんはしてません。
タリア、戻りましょう」||

俺は白着物姿な母さんに引っ張られ…ターシャ神社内部へ連れ去られた。

マナナが押し入ろうとするが…母さんが内側から(かぎ)を かけた。
神社奥は関係者以外立ち入り禁止区域だ。

「タリア!
これから…私とのデートは?
ねえ!」

扉向こう岸で…マナナが叫び、ドアを叩いてる
鬼母は…ずっと、ジットリ怖い。

『…』

暫く、俺は沈黙を続けていた。
母は、盛大に金切り声を上げた。

||「母さんは反対に決まってます!
タリアちゃん、あの子とは別れなさい」||

『…』

俺を責める言葉は何一つない。
俺は無言で、空気が重い廊下(ろうか)を去 り…自室へ進んだ。
今、避難場所が必要だ。

||「アリオさんも何とか言ってちょうだい!!
ウチの可愛いタリアちゃんが悪い家の女狐(めぎつね)に 体で落とされ…金銭まで巻き上げられ、(ひど)い 目に()ってるのよ!
アリオさんも協力してくれるよね?」||

父『…』

背後で…神父着姿へ正装した父と、白着物姿な母が会話してる。

父は、アリオと言う名前で…(あり)並みに真面 目な性格だ。
良く働き、大人しい。

それから、母は…妙子(タエコ)だ…。
性格がヒステ リックな面もある。

…俺はアリオから"ア"と"リ"…妙子(タエコ)の 頭文字()仮名(が な)"タ"を取り―――"タリア"と名付けられたらしい。


||「アリオさん…。
今日の夕食も、豆腐の鰹節掛けと、卵かけ御飯になりそうだわ。
あと…モヤシ炒めだけよ。

ウチのタリアちゃんとあの女狐が別れるためには巨額な離別金が必要になりそうなの。
アリオさんも節約生活に協力してくれるかしら?」||

父『…』

||「いったい、何円を提示したら…あの女狐がタリアちゃんから手を引いてくれるかしら?
アリオさん、私はどうすれば良いのかしら?
示談金(じだんきん)(い く)らかかるのかしら?
どうすれば…」||

父『…』

父は常に母へ味方する。
今も背後から反論すらしない。

||「アリオさん、私はとっても真面目な性格で…アリオさんと会うまでは何一つ誓って不貞(ふ てい)はなかったのに。
アリオさんに似て、温厚で静かなウチの可愛いタリアちゃんが……変な家の娘に体で(そそのか)さ れて、(ひど)い目に()っ てるみたいなの。
私たち二人で頑張って、タリアちゃんの未来がマトモになるために協力しましょう。

タリアちゃんから、悪い虫を取り(のぞ)きま しょう。
アリオさんは…私と付き合う前にこんな目にあった事、ある?
もう…私、どうすれば…。
毎日、あの女狐がココへ押し寄せてきて…営業妨害(えいぎょうぼうがい)を するのよ。
どうすれば…」||

父『………』


いつも通り変わらない光景だ。
俺は自室扉を閉めて、外界音を遮断(しゃだん)し た。
そろそろ、肉が食べたい気分にもなる。

☆☆☆

部屋へ戻り…乱れた黒袴着(はかまぎ)を脱いだ。
堅苦しいし、汚す訳にはいかない。
すぐに着物掛けへ吊るし、ラフな服に着替えた。
暫く、袴着は風を通さなければならない…。

袴着に付属された収納袋から…スマホを取り出し、画面を開くと、マナナから連絡が来てた。
読めば、既読が付くが…。
一応、確認することにした。

✉「FROM;異能マナナ
件名;大変だったわ…。

本文;
何とか頑張ったわよ…疲れたわ。
ここ2日間、連絡がなかったけど…どうなってたの?
いったい何通送ったか、分からないわよ。
今日は帰宅したらゆっくり寝るわ」

一通は苦情メールに近い。
LINEは…。

☆☆☆

異能マナナ

☺---「電話にも出てくれないし…。☎
LINEも既読が付かないし…お義母さんはタリアにも会わしてもくれないし。
どうなることかと思ったけど…今日、会えて良かったわよ☺。
タリア、お義母さんの前では静かなのね
Σヽ(゚Д゚○)ノ。

あんなお義母さんとは私も知らなかったけど、これから…私は大変そうよ。
タリア、まさか…昔のことを今でも根に持ってるの?
(ノ_・。)ノ□

お義母さんから今日、責められて…言われてみて、思い出した程度だけど…☹。
そうなの?
ヽ(´Д`)ノ…」---

返事がしにくい内容だ。
実は正解で、ずっと心でシコリになっていたとは…伝えにくすぎる。
暫く、スマホ前で戸惑っていたら…マナナからレスが来た。

☺---「LINEに既読が付いたと言う事は…読んではくれてるのよね?
・゚・(ノ︵◉)✌・゚・

返事がないのはどう言う意味か不明だけど。
まあ、何とかなるわよ。
(*´σー`)✔

私、これから大変だわ…。
( ´・_・`)☃

ナデシコへも連絡したし、キセキへも苦情のLINEを送りつけたわよ。
ハアア…。
( ´_ゝ`)=3

で、タリアは私のこと、どう思ってるの?
(*≧д≦)」---

☺---「返事がないと言う事は…まさか、お義母さんの言うとおり、ずっと根に持ってたの?
(^ω^人)
仕方ないわね?

謝るわよ、少し確かに…暴言が、()ぎた自覚 もあるわよ?
ペコm(_ _;m)三(m;_ _)mペコ」---

☺---「既読が付くのに返事が来ないのは…困るんだけど?
(#´_>`)

えっと…私は。
仕方なしだけど、やってみるわよ。
これからに期待してみたら?
(( ´∀`))♪」---

返事がしにくい内容ばかりだが…一応、レスを送ってみた。

既読
---『…』---

☺---「やっと、レスが来たのは嬉しいわ?♥
でも、点線3つなの?
冷たくない?
゚。・゚(つω✚ฺ`)。゚・。」---


既読
---『…未来に期待してる』---
☺---「嘘でしょう?llllll(-ω-;)llllll
まさか…お義母さんの言う事、本当だったの?
私のことを(うら)んでたの?《(;´Д`)》
ねえ?。゚゚(´□`。)°゚。」---



既読
---『これから頑張れ、応援してる』---
☺---「分かったわよ。
信用されるように努めるわよ。
何よ、ええ?
.+゚.+゚(o(。・д・。)o).+゚.+゚

タリア…復讐(ふくしゅう)なんてするために私へ 接近したなんて嘘よね?
il||li(つд-。)il||li」---

どう反応すべきか困り…暫く、停止してた。
復讐(ふくしゅう)はさすがにないが…。
これ以上、マナナを甘やかしても良いか?
そんなことが頭に(よぎ)った。
マナナからは3分もしないうちにレスが来た。

☺---「返事が来ないけど、タリアも応援してるみたいだし…勇気は()い たわよ。
やってみるわよ。
私、御稽古事(おけいこごと)ほど嫌いなものはな いんだけど…。
はあ、忙しくなりそうだわ
彡(-_-;)彡。

じゃ、そろそろ夕飯食べるから
(✪‿✪)ノ☆彡。

ナデシコへ詳細を連絡したら、今日の夜から通う話になったのよ。
明日も夜に、大和ナデシコ(しつけ)教室へ行く 予定よ…。
忙しいから、この辺で…。

グッナ━─━─━ヾ(o✪‿✪o)シ━─━─━ァィ♪
(。→‿◕。)☆マタネ! オヤスミィ..。o○☆」---

既読
---『じゃ…』---


☺---「じゃ…」---


ここで、LINEは終了し…時刻を見た。
いつの間にか…確かに夕飯時だ。
また夕飯で、母親と顔を合わす事を思えば…気が重い。

暫く、自宅では節約生活を強いられ・…おかずが、豆腐(とうふ)と モヤシになると宣言してた。
俺とマナナが離別する決別(けつべつ)金を貯める ために協力してちょうだいと…父へも(うった)え てた。
陰湿(いんしつ)嫌味(い やみ)行為だ…。
今晩も粗食(そしょく)だろう。

マナナ下宿先で食べたグラタンや肉もやし(いた)め が(こい)しくもある。
あと何日、これが続くだろうか?
母親から、じわじわ拷問(ごうもん)が始まるらし い。
机へ近寄り…椅子に腰かけ、溜息を吐いた。








タリアのマナナ躾帳D

目次

タリアのマナナ躾帳F




アホな展開へ進む話ほど作者として執筆活動が面白いと言う…。
真剣な話ほど、作者としてはエネルギーが磨り減りますね。
戦争話、テロ勃発事件では自分の限界値を感じたので…あれ以降、平和国シリーズではギャグに徹しました。


さて…。
心温まるほのぼの小説が書けたら良いなと願いつつ…そういうジャンルほど意外に難しかったりするんですね。
現在…ハラハラ、すれ違い系ですが…最終話では一応、感動の結末になるように努めます。








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