平和国からコンニチハアナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

平和国からコンニチハ18
…[社R18]根性で交際相手の見合を撲滅した元カノは結婚へ。キセキは何を思うのか?

「キセキ視点」

「実はそれは僕も自信がなくて…」

☆「そうでしょう?
知ってるわ。
ウチの家も大変なのよ、財閥だから。
忙しすぎて移動がほとんど、自家用ヘリよ。
じゃ…ココまでで良いわ?」

石段はあっという間に降りてしまった。
レイカさんが僕の親友…タリア以上に大変な家で育ってることは…僕は理解してる気だ。
どう答えれば良いのか、僕はこの()(お よ)んで悩んでしまったのだ。
マナナのように義母と一生、闘い…御稽古事(おけいこごと)教 室でマナー全部を年単位で習得し…強く生きれるのか…。

マリアの父が今日、言ったことは正論かも知れない。
僕も…タリアはマナナを逃すと、次の(よめ)が 来そうにないと感じる。
マナナは本当に…タリアのために生涯をかけて頑張る気なのが、僕にも伝わって来た。
ターシャ神社は…予想以上にシキタリも大変そうだ。
これからも、マナナのことなら…僕は陰で見守る。

いつの間に、マナナがあんなにタリアを好きになったのか分からないが…。
僕が留学してる5年間で、マナナの気持ちが強く固まったのだろう。
頑張れ、マナナ。
僕は応援してる。

しかし、僕にはまだ…その自信がなかった。
レイカさんが僕に葉っぱをかけるために嘘を吐いたとは思えなかった。
僕は親友、タリアの…実家の実態を今日、目撃してしまった。

僕にそんな大層なことが勤まると大きな声で言いにくかった。
僕はレイカさんの家より、レイカさんの体に興味がある。
抱いてみたいと思うだけだ…。

実際…レイカさんの家は大金持ちかも知れないが・・。
あの財閥を…監修しなければならないんだろう?
大変に決まってるだろう?
まず、僕は冗談抜きでマナナじゃないが…複数の資格習得教室へ通わされそうだ…。

それから…。
いったい、フランチャーズで何件、店があるんだ?
僕は睡眠時間まで削られるのはゴメンかもしれない・・。
どう答えれば良いんだ?
僕の代で倒産になんてなったら…。
聞いてると、一瞬で心臓がハラハラドキドキした。

石段の目前にある黒い横長なベンツは…レイカさんの実家―――王族家の所有物だ。

運転席には…車係兼ボディーガードを勤める男性がいる。
顔に深い傷を負い、黒タキシードに黒サングラスを装着した…王族マモルというヤツだ。

黒ベンツの後方席扉が開いた。
車内から…レイカさんの側近で、腰の曲がった白髪の御婆さん…王族婆ヤさんが叫び始めた。

また来たザますか!
いったい、レイカ御嬢様に何の用事ザますか!
他の女性がいないザます!
レイカ御嬢様の他に女性が2名、今日は来て…。
ターシャ神社でレイカ御嬢様とあわして4名で集合と聞いたザますよ!
どういうことざますか?”


☆「それが…マリアさんはもう既に用事を終えたみたいで…。
あと、可憐さんは…祖父の容態が急変して、予定をキャンセルしたみたいなのよ」

レイカさんが僕をフォローしてくれた。
これは嬉しい。

何ザますか?
それは?
言いわけに決まってるザます!
レイカ御嬢様!
男の人は狼ザます!
じゃ、レイカ御嬢様、お車に乗るザます!”

「えと…レイカさん…。
その…えっと…今日は…ターシャ祭りは夜、花火が上がりますし…。
僕とデートでも…。
それから…レイカさん…これから、どこへ?」

☆「また、平和国で会いましょう。
それなりに、今日は楽しかったわ。
ありがとう。
キセキ君、ごめんなさい…。
これから見合いなの」

「レイカさん・……またですか?」

☆「ごめんなさい・…お父様の御仕事関係で…どうしても、断れないの。
ウチの財閥にも関わってくる会議だから。
見合いって言っても、得意先と接待だけなのよ…。
私には全然、別に脈なんてないのよ?
王族財閥の娘として…仕事の一環よ、これも。
得意先の息子を交えて一族で、立食パーティーをするだけよ。
誤解しないでちょうだい」

レイカ御嬢様、行くザますよ!
弁解しなくて良いザます!
こんなミズボラシイ男、婆ヤは認めてないザますよ!
レイカ御嬢様から去るザます!
本当に悪い虫ザます!
ごめんあそばせ!!”

「あの…レイカさん…僕に希望は?
えっと、今回の見合いは脈がないんですね?
それから・・前回の見合いは脈があったんですか?」

レイカさんは車の中でヒラヒラと優雅に手を振っている。

☆「キセキ君?
勘違いしてるわ…。
アレは私の仕事のうちよ。
今日は楽しかったわ?
また、塾で会いましょう・・・」

レイカ御嬢様、行くザますよ!
得意先の御子息が首を長くしてレイカ御嬢様を待ってるザます。
レイカ御嬢様はミスターシャ王立女子大。
美貌にも恵まれ才にも溢れ、実家も申し分ない淑女。
こんなルンペンに引っかかってる場合じゃないザます!
下々の者たちの気持ちを理解するため、御嬢様には財閥傘下の塾で、受付嬢としてバイトまでしてもらってますが・・。
あのバイトも考え物かもしれないザます!
旦那様にも相談するザます!
勘違いされては困るザます!”

黒いベンツの扉を閉める前に、白髪を頂点で結い上げて…腰が曲がった婆ヤさんは僕を(にら)ん だ。
車内の窓から映るレイカさんは口パクで何か僕へ伝えようとしてる。

☆「バイバイ、ありがとう」

口パクで、こう言ってくれてる気がする…。

水色ワンピから突き出た胸は柔らかそうだし、細いリボンで(しぼ)ら れたウェストは細い。
そこから下半身に伸びたマーメイドラインが…シフォンワンピに揺れて、柔らかそうだ。
婆ヤさんが言うことももっともだ。
しかし、いつになったら進展するのか。
さすがに辟易してる。

どうすれば進展できるのか?
他へ行くべきなのか?
どうすべきなのか???

☆☆☆

祭りは夜もあると言うのに…レイカさんは忙しいらしい。

見合いなのか?

タリアだけじゃないのか?

確かに…ターシャ祭の日に結婚式や見合いなどが多い。

レイカさんも連日、見合いで忙しそうだが…毎回、見合いはしてるけど…断ってくれてる。
今回もそうであることを祈る。

僕のレイカさんも思えば、夜間はスケジュールのほとんどが御稽古事で埋まっていたり…。
夜は塾で受付嬢をしてたり、昼は大学院へ通っていたり・・・。
休日は見合いで埋まっていたり・・。

本当に良く動く人だ、尊敬する。
レイカさんって、僕は超真面目だと思う。
見合いなのか…。
マナナじゃないが僕だって、妨害したいかもしれない・・。
マナナは凄い、尊敬する…昔、映画で暴走族が花嫁を(さら)っ ていくのを見たことがあるが…。
マナナはあれの男版だった。
彼女の根性は認めよう。

僕は…今、呆然(ぼうぜん)としてる。

レイカさんは今まで何件見合いして来てるのだろうか…?
僕では数えきれない回数だ。

☆☆☆

僕はトボトボと半ば死んだ瞳で、ターシャ泉の方角へ進んだ。
あの泉の下に僕の友達…泉の巫女様が眠っているという噂だ。
金髪碧眼で全身が発光し、不思議な力を持っていて…願い事を叶えてくれる妖精様だ。
今日は、タリアの一族があの場所にいるかもしれないが。
やはり、せっかく帰国して来たんだ。
このターシャ祭のためにだ。
絵馬ぐらい買いたいかも知れない。

神社から数分歩けば、ターシャ泉に到着する。
ターシャ泉は不思議な泉だ。
タコは泳いでるし…(たい)や金魚が泳ぎ、トマ トやメロンの木が鈴なりになっている。
空には翼魚(つばさざかな)が飛んでいる、来るた びに不思議な景色だ。
レイカさんの愛しのペット…犬イルカも遠い場所で泳いでる。

―――バウウウウウーーー!――

犬イルカの遠吠(とおぼ)えが聞こえた、そろそろ あの生物も恋のシーズンなのか?
実は特別天然記念物だけにあまり生態が解明されてない。

ミサの前にはバス停がある。
普段、ミサ内部は…今では特別な時以外は一般者進入禁止になってる。
ターシャ祭りなど…臨時で、神父から祈祷をしてもらえる場所になっている。
僕はタリアの父から祈祷してもらう気にはならなかったが。

ミサ施設へ入った。

ミサ施設内部では…机があり、そこに絵馬と犬イルカ煎餅(せんべい)な どが売っている。
犬イルカ煎餅とはよく観光客に勘違いされるが…人間が食べる煎餅ではない。
ターシャ泉に泳ぐ犬イルカ専用の煎餅だ。
人間が食べても無害らしいが、全く味がなく糖度に乏しい草味な煎餅だ。


「いらっしゃいませ!
あら?
キセキ!
どうしたの?
さっきは突然、逃げて…」

その机にいたのは…肩揃えな黒髪ヘアーの低身長巨乳な僕の幼馴染…マナナだ。
いつの間にか…上半身は突き出た胸が誇張(こちょう)さ れる白衣、下半身は丈が足首まである朱色の緋袴(ひばかま)…。
履物(はきもの)白足袋(し ろたび)
神社用巫女装束に、マナナの服装が変わってる。
しかし…まるで、コスプレだ、よく似合ってはいる。
22歳にして、人妻になってしまったのか?
早くないか?
そんなに(あせ)らなくても…惜しくもある。

「マナナ。
君は何をしてるんだ?
ここで」

「何って…。
今日はターシャ祭でしょ?
手伝いをしてるのよ、タリアの家の…」

「そうなのか…。
君は偉いな、本当に・・。
僕は尊敬する。
タリアの家はバイトの子を雇わないのか?
君にさせているのか?」

「当たり前よ!
もうこれから先は、私も月神家になることが決定したんだから。
月神家の親族会議で。
タリアの家は…質素倹約がモットーみたいだわ。
私もこれから花嫁修業第二段が始まるみたいなのよ・・。
これを乗り切れないと、駄目みたいなの!
このミサだけは関係者以外立ち入り禁止みたいで…。
バイトの人を雇う訳にはいかないみたいで…」

「そうか…。
確かに…このミサの地下に巨大な防空壕(ぼうくうごう)が あることなら僕も知ってる。
この場所は世界遺産どころではないこともだ。
まるでカラクリ屋敷だ。

タリアは知ってるのか、謎だが…。
この施設の地下に秘密通路があることは…僕と巫女様とマナナ、学習兄弟や学習博士などの秘密だからだ。

それで・…タリアや…お母さんやお父さんは…どこへ行ったんだ?」

「タリア達ね?
何か、血相(けっそう)を変えて…走って行った わ?
いろいろ、行事事で忙しいみたいよ。

役所へ走って、私の入籍を止めたいみたいだけど…タリアのお母さんは。
それ以上に、今日のターシャ祭は大変なのよ!
そこら辺中、参拝客だらけでしょう?
今頃、神社の支度でしょう?
だから私が点数を稼ぐわけよ!
理解した?」

「そうなのか…。
君の家は…今日、タリアの実家で見合いがあることを知ってたのか?」

「ウチのお母さんは放任主義よ。
お父さんも呑気(のんき)なものよ。
根性で男は寝落として来なさい!
こんなノリよ」

「そうか…」

マナナの実家ならあり得る。
そう言う経緯で結婚した家だからだ。
マナナだけ一人で、見合い会場へ走って来たと言うのか?
凄い根性だ、ある意味。
僕は瞬きをした。

というか…マナナ、まさかタリアを寝落としたのか?
今、凄い単語が台詞で流れていたが…。
僕の幼馴染からだ…。
僕はまだこの期に及んで、童貞だったりする。
タリアとマナナが…いつ子供が出来てもおかしくない関係になったのは、2年前の見合いで知ってる。
僕は反応に困って来る。

「じゃ、僕は…。
竹の笹に飾る絵馬を一つ、買うとしよう」

マナナの寝技とはどういうものなのか…。
色々、想像は巡るが…敢えて聞かない。
ココは空気を読むだろう。

そう言えば、マナナの実母は元AV女優だ。
まさかマナナは濃いのか?
そんなピンクな妄想が頭の中へ循環しまくった。

「他にも買って行ってちょうだいよ♪
犬イルカ煎餅(せんべい)なんてどう??」

「え・・。
僕は絵馬ひとつで」

「これから先はウチの家の収入になるの!
幼馴染なら貢献して当たり前でしょ?♪

1セット150タ$よ、犬イルカ煎餅は。
きっと、癒されるわよ?
買ってよ、ねえ?♪」

「そうか・・。
それなら、絵馬ひとつと、犬イルカ煎餅1セットで」

僕は押しに弱く、買ってしまった。
一瞬、マナナがどうやってタリアを寝取ったのか…。
そこに気が取られていたのは、確かだ。

「ありがとう!
お会計が650円ね!
おまけとして、これ…祝い酒ね。
そう言えば…キセキはお酒飲めるの?」

マナナは満面の笑みだ。

「僕はあまりだ。
しかし、ありがたく…いただいておこう」

僕は盃に入った祝い酒をありがたく戴いた、ほんのり甘い。
少量だ。

「それにしても…君はいつの間に着替えたんだ…」

「今日は忙しいのよ、ターシャ祭だから。
もうそろそろ、またタリアのお母さんがコッチへ来るわよ?
キセキのこと、ちょっと怒ってたわよ。
タリアのお母さんが。
私は…御蔭で助かったけど。
美神敏子さんとタリアの縁談を破談にしてくれて、ありがとう!
キセキには感謝しまくってる。
恩にきる♪」

「そうか…。
それなら、僕はサッサと犬イルカに煎餅をあげて、絵馬を書こう」

「これ、油性マジックよ。
これで絵馬に願い事を書いて。
また神社へも寄ってね、キセキ♪」

「分かった。
ほとぼりが冷めたら、来ても良い。
タリアのお母さんが…僕へ怒らなくなった頃にだ」

僕は絵馬に願い事を書いた。

今年の願い事は…。

―――泉の巫女様、これを見てますか?
彼女が出来ますように!!
どうか僕に力をください−――

これで良い。
本当の願い事は神社で祈って来た。

レイカさんとエロが今年こそできますように。
今年こそ、童貞が捨てられますように!だ。
玉砕続きのレイカさんとエロが無理ならもう、風俗へ通うのか・…それとも僕を慕う女性陣の中から選ぶのか。
そこまで僕は追い詰められている状況だ。

神様は不公平だ、幼馴染の3人は既にゴールし。
ミルルにも、マナナにもタリアにも恋人がいると言うのに。
何故、僕だけまだ童貞で…一人寂しく、勉強に燃えなくてはならない運命なのか?
納得がいってない。

しかし、まだ救いはある。
僕の知人…学習双子兄弟、サーファー男の学習イッチ―も、アニオタの学習ニイ〜も…。
それから、本命のレイカさん。
あとは美神敏子さん、月神マリア、馬髪可憐、大和ナデシコ、難波カンサイ。
これだけの人間がまだ誰の手にも染められてない。
僕も元気を出さなければ…。

頑丈英子さんだけカウントしなかった…。
僕の中では、論外だからだ。
僕は英子さんからはカツアゲにあっただけだ。

30歳で童貞だと妖精になると言う噂が大学内で流れてるが…本当なのか?
僕はターシャ泉の妖精になれるのか?
ターシャ泉の下の世界で暮らしてる”泉の巫女様”と再会が出来るのか?
まさか、泉の巫女様に愛されて、僕は童貞な運命なのか…。

瞼に…金色の細い髪を風に棚引かせて、頬は抜けるように白く絵画から抜け出て来たような天女の笑みが浮かび上がった。
泉の巫女様の姿だ。
柔和な表情で僕を優しい光で包んでくれた…あの妖精様に僕は愛されてしまったのだろうか?
もしかして、僕は気が付かなかったが…彼女は僕に恋慕してたのだろうか?
そんなふうに見えなかったが…。

それなら…彼女の前で「本命のレイカさんと一緒になれますように」と言う願い事は酷だったのか。
彼女と最後に会ったターシャ祭りでは別の願い事にすべきだったのか?
泉の巫女様は…現在、別世界でどうなさっているのだろうか?
僕の恋愛事が上手くいかない件に関して微笑んでらっしゃるのか?

色々、ボケーと物事を考えた。








「キセキって本当にストレートね。
でも、願い事は…レイカさんと付き合えますようにじゃないの?
ふふ。
これ、巫女様が見たら…どう思うかしら?
きっと、笑うと思うわ♪
正直すぎない?
キセキぐらいよ、こんな願い事してる人って。
みんな…もっと、マトモな願い事してるのよ」

「さすがに、それは全員…僕のお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも見てる。
それは絵馬には書きにくい。
この辺で僕の祖父母も暮らしてるからだ」

「それもそうね…。
知ってる?
レイカさんも絵馬を買いに来たのよ…」

「え?」

僕は目をパチクリとした。

「ここって、開館は…11時からだろ?」

「絵馬だけは、ネットでも予約販売をしてるのよ。
割りと売れてるわよ、当日のターシャ祭より前から」

「そうなのか…」

「縁結びを願ったり、商売繁盛とか…色々ね?。

あと…去年もだけど、今年も来てたわよ?

タリアのいい名づけ…頑丈英子さん…。
キセキのことしか、聞いてなかったけど…。

私、英子さんにはキセキのこと、伝えなかったわ?
これで合ってるかしら?」

頑丈英子さんとは…何故か、見た目がオカマにしか見えない女性だ。
僕は…英子さんからはカツアゲまでされたことがある。

タリアの許婚だったが…僕に一目惚れして以来…熱烈なるストーカーと化し。
現在、夜な夜なターシャ村で男を逆ナンしてるらしい。
モッパラの噂だ。

「今年も…英子さんは来たのか?
もう…あれから2年ぶりだろ?
英子さんのことはどうでも良い。

レイカさんは…何を書いて行ったんだ?」

「それは秘密よ。
まあ、竹の笹を一生懸命探せば、分かるんじゃない?
来年はまさか…頑丈英子(がんじょうえいこ)さん だけじゃなく、美神敏子(みかみびんこ)さんま で…。
この神社へキセキのことを聞きに来るんじゃないかしら?」

美神敏子さんは…縁があっても良いかもしれない。
確かに絶世の美人ではあった。
儚げな雰囲気で色白で世間知らずで無垢そうで・…瞳がチワワのように潤み、黒髪ショートカットの可憐な女性だ。

「敏子さんか…。
彼女は美人だった」

「あら?
キセキ…脈があるの?」

「僕の選択肢に入れても良いかとも思う。
君がタリアと一緒になった代わりにだ」

「そう…。
ミルルも今や、人妻だからね…。
キセキも一人に(しぼ)った方が…。
ウカウカしてると、一人ぼっちになっちゃうわよ?」

「レイカさんは…何て書いたんだ?
絵馬に…。
教えてくれてもいいんじゃないか??」

「そうね…?
レイカさん、優しいわよ。
キセキのSP試験が受かるように絵馬に書いてくれたわよ」

「素敵な情報、ありがとう…。
実は…さっきも、レイカさんからターシャ神社の賽銭箱へ3000タ$を投入してもらって、同じ願い事をしてもらった。
つい、さっきの話だ」

「良かったじゃない?
少し進展があったんじゃない?
キセキ。
レイカさん、賽銭箱に3000タ$も寄付してくれたの?♪
嬉しいわ、ウチの家の収入になるわ!」

「そうだな…。
ちょっとは、進展したかもしれない…」

僕は上は白、下は赤の袴着な黒髪オカッパヘアーのマナナへ会釈(えしゃく)し た。
マナナは相変わらず、突き出た良い胸をしてるが…人妻になることが決定したらしい。
僕の周囲も結婚が早過ぎないか?
僕は変に(あせ)るぞ、もっと…ゆっくりでも良 いんじゃないか?

僕の本命、レイカさんだって言ってた。
☆「ゆっくり、焦りたくないわ。
別に結婚なんて30歳ぐらいで良いわ」と。

少し…マナナが結婚して寂しい気分が漂った。
僕の選択肢が…ミルルは消え、マナナが消え・・。
有力候補ほど早く消えて行く・・。
それなのに、頑丈英子さんは今でも残ってる。

ミサ施設の玄関から出て、すぐに視界に巨大なターシャ泉が目に映る。

そこに背の高い青竹が飾られてる。
ターシャ祭り用として、地上に設置された青竹、笹の葉は…ターシャ泉の水面へ反射して映ってる。
これで…泉の下に暮らす別世界の人間…泉の巫女様に絵馬が読めてるというのか?
僕は不思議に感じたが、縁起担ぎとして…竹の笹へ絵馬を飾った。

レイカさんの絵馬を探してみた。

ターシャ泉の目前に飾られてる青竹に達筆な絵馬がある。
ワープロで印刷してるのかと疑う級の文字だ。

☆「キセキさんのSP試験が受かりますように 王族レイカ」

僕はその絵馬を見て、ホッコリした。
レイカさんはこんな感じに優しいところがある。

タリアも達筆だが…癖がある、彼は掛け軸の字にも似た毛筆体だ。
正直、続け字に書かれると…逆に、僕は読みにくいが…神社では必要なのだろう。

神社の子だ、習字ぐらい稽古して来てるんだろう。

レイカさんの文字はパソコンの明朝体にソックリだ。
僕はレイカさんの笹へ絵馬を(つな)げた。

―――泉の巫女様、これを見てますか?
彼女が出来ますように!!
どうか僕に力をください−――

二つの絵馬を並べ比べれば…確かに、驚くほどに字も性格も違うらしい。
僕の字はミミズ文字に近い。
僕は字が下手で有名だったりする…絵も棒人間で終了だ。
字を見れば、分かる…。

きっと、レイカさんはワープロ習字辺り御稽古して来たんだろう。
僕はレイカさんの温厚そうで柔らかな眼差しを思い出した。
彼女はやはり、真面目だ。

マナナの絵馬も飾ってある。

「これ以上、お義母さんから苛められませんように…。
タリアと仲良くいけますように…」

マナナの字は丸文字だ、柔らかそうな字をしてる。

タリアの絵馬は掛かってない。

奴は何故か…毎年、ターシャ祭に参加してなかったが…。
彼はいったい、何を願ってるのだろうか?

ほれ、見ろ!
マナナは絵馬にまで…こんな願い事をする級に悩んでる。
マナナが不憫だ。
僕の我が友は無口を通り越して…何を考えてるのか意味不明だ。
僕はマナナの願い事も叶うように祈った。

この絵馬を見て、タリアは何を思うのか?
タリアのお母さんは少しは改善するのか?
僕は泉の下にいる妖精様…ターシャ泉の巫女様にも祈った。

☆☆☆

それから…ターシャ泉へ犬イルカ煎餅を、ポチャン…と落としてみた。
犬イルカ煎餅は白く丸い薄っぺらい煎餅だ。
犬イルカが食べるようの煎餅だ。

――バウ!!―――

途端にターシャ泉の向こう岸から、犬イルカの大群が泳いで迫ってくる。
この生物、顔は狐か犬に似てる…下半身はイルカだ。
犬イルカ達は…尾ひれをビンビンと振って、水しぶきを上げた。

普段は人間慣れしない癖に…餌付けに弱いらしい。

――キャンキャン!!―――

犬イルカはゴロゴロ喉を鳴らして、泉から顔だけ露出して喜んでる。
この動物、性格は猫にも似てる…警戒心が強い生き物だ。
それから犬にも似てるし…狐にも似てる。

マナナに頼まれて、犬イルカ煎餅を買ったが…。
割りと癒されるかもしれない。
それにしても…レイカさんの屋敷庭園で暮らすペット、犬イルカのラッシーは…現在、どうしてるのだろうか?

最近、全く…レイカさんからラッシーの自慢話を聞かない。
ラッシーのことを尋ねると、レイカさんは表情が暗くなってる。
まさか、容態が悪いのか??

僕はレイカさんのことを思い出した。
犬イルカ達が―――ワオーン!――と遠吠えをしてる。

右側にいる犬イルカのお腹には…カンガルーのように子供が入ってる。
メスの犬イルカらしい…。

その左側にいるのは…オスの犬イルカなのだろうか?
腹に袋がない。

僕はなんだか、今年こそ落とせそうな…そんな気がした。
ここはパワースポットらしい。

☆☆☆


その年のターシャ祭も無事に終わり…。
夜空へ花火がターシャ泉から上がる。
僕は祖父母宅2階の窓から天の川へ浮かぶ花火を眺めた。
ターシャ祭は7月7日…七夕でもある。
年に一度、彦星と織姫が会えるそんな行事でもある。

僕とマナナはいつの間に疎遠になったのだろうか?
僕が帰国するのは毎年、ターシャ祭り7月7日だ。
年に一度、マナナと会ってる計算だ。

僕とマナナがいい名づけだった筈なのに…いつの間にかマナナはタリアへ心変わりをし・・。
僕も違う本命が現れた。
結婚するのが早かったのは、マナナの方だった。

赤や黄色の菊模様…スイカ柄の花火。
ドドドドド…と地響きを鳴らして、空気が振動する。
僕の脳裏に…女友達、マナナの顔と…本命のレイカさんの顔が浮かんだ。
人生とは何があるか分からない、不思議なものだ。

ターシャ国立公園へ付近へ行けば、人だかりで場所取りに追われる。
今日は浴衣を着た女性陣も多い、だいたい…カップルで連れ立ってる。
しかし、ターシャ泉へ足を伸ばせば…ターシャ村で逆ナンをして男を漁り歩いてる英子さんにも捕まる。
本命のレイカさんがいないのに、ターシャ泉へわざわざ行く気にもなれなかった。
どうせ、僕がターシャ泉へ行けば…レイカさん以外の数名の女性から絡まれる。
別に女性と花火を見るのは気分転換になるし楽しいが…英子さんだけが苦手だ。

祖父母宅2階の窓から花火を眺めていると…僕のスマホ、LINE着信音が鳴った。
スマホ画面を確認すれば…マナナからだった。

その他、何名からも来てる。
女性陣から誘われるのだろう。
そういう星に生まれついてる。

家に籠っていても…勝手に女性から連絡が来る。
常に僕はいつの間にかそうだ。

他にも月神(つきがみ)マリア、馬 髪可憐(うまがみかれん)、大和ナデシコ、難波(な にわ)カンサイからもLINEが来てる。
もう…こんなに全員、確認できない。
モテ過ぎるのは嬉しいが、全員にレスなんてすれば…寝不足になる。
平和国へ帰国してからで良いだろう。
一番、気になった”マナナ”だけ見ることに決めた。












平和国からコンニチハ17


目次

平和国からコンニチハ19




さて…この話も終盤ですね。
あともう少しで終わります。
管理人が書く話って基本的に私生活も入り混じって綴ってます。
どこら辺の箇所が?
とはさすがに説明できませんが…。
殆どの作家様がそうだと思います。
恋愛小説は難しいですね。

さて、キセキが超激モテ設定に関しては…。
EAGLESのTAKE IT EAZY”辺りの歌詞を聞きながら創作しました。
それと…ヘレマンヘッセのメルフェン短編集に…裏覚えなのですが…。
不思議な名付け親に…超能力を息子を授かるように、母親が頼み込み、誰からも愛されるようになるという話がありまして…。

オチ、裏覚えなんですが…そこら辺にも影響されて書いてます。
小説書くに当たってはどうしても大昔、読んだ本に影響される訳です。
最後まで楽しみながら読んでいただければ幸いです。







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