「キセキ視点」
「そんなに問題なんですか?」
||「ええ…。
でも、嫁 にするときに別に宗派変更させて
も良いだけどね…。
まあ、タリアにはいろいろ頑張ってもらってるし、夢は見させてあげたいし…。
ソっとしてあげても、良いんだけどね・…」||
「タリアは…まるで自分のことのように、ミルルを自慢してます」
||「そうなの、タリアが…ミルルちゃんを…。
確かに、モテそうよね?
あの子は」||
「ミルルはクラスで一番モテてます。
タリアが大好きで有名です…。
この近所でも有名な筈です、僕は知ってましたが…。
えっと、余計でしたか?
おばさんへ伝えるのは…」
||「良いわ?
タリア、おばさんには全く何も言ってくれないからね?
そう…ありがとう。
キセキ君、これからも情報よろしくね?
たまに遊びに来てちょうだいよ。
タリアも喜ぶわ」||
「ありがとうございます!」
こういうやり取りが…あれは僕が10歳の頃にあった。
タリアのお母さんは、僕へ優しい対応で会釈 し
てくれた。
確かに、この国は…国境がターシャ教だ。
そこら辺中にターシャ教関係の神社が存在するが…その中で一番、ターシャ神社が有名に決まってる。
タリアが大変なことが伝わって来た。
タリアが駄目な場合、住む家を失い・・・一家で路頭に迷うらしい。
僕はそれを知って、唖然となった。
だからこそ…毎年、7月7日に開催されるターシャ祭りにタリアだけ参加しないのか…と納得した。
全てのことが繋がった瞬間だった。
しかし、親友のタリアからは『実家のことはクラスメイトに黙って欲しい、騒がれたくない』と頼まれてる。
僕はずっと、旧友の約束を守って来た。
彼はターシャ神社の跡取りを継 ぐために、
ずっと実家のために犠牲となり…ガリ勉人生だったのだと思う。
17歳からマナナと交際が始まったものの、僕の記憶では全くデートをしてなかった。
実際、僕がタリアのお母さんから聞いた言葉だ…これは確信に近い。
それ以外にも…ターシャ神社は連日、その辺・・参拝客だらけだ。
いったい、誰が掃除するのか?
それ以外にも…新年のお守りを売る儀式や…初詣には世界中から人間が集まり、長蛇の列だ。
僕のイメージでは…猛烈にいろいろ儀式が大変そうなイメージだ。
タリアは全く教えてくれないが…。
そんな雰囲気がする、しかもタリアは一人っ子だ。
仕方ないのかもしれない…。
二人が別れた後、僕がどういうふうにマナナを慰 め
るかが・・課題だ。
☆☆☆
バスを下車して…数分歩けば、成績優秀高校と低脳中学の中間点へ到着した。
そこに割りと普通の家がある。
古い木造家屋の2階建てで20ツボもあれば良い方だ。
ここが僕の父方祖父母の実家だ。
僕の家は外観は普通で・…代々の家だ。
この辺いったい、ターシャ国内では地価が高い筈なのに…。
何故か、猛烈に広大な敷地の屋敷もある。
特にターシャ神社は世界遺産だけあって別格に広い。
僕の家は一般人で、庶民の家だ。
レイカさんの家は…ここから離れた”王族シティ”と言う名前のVIPタウンにある。
そこがターシャ国で一番、高級住宅街だ。
まだ、この辺の地価は高いと言えども…、ターシャ神社がある分、厳しい規制があり過ぎて…開けてない。
ターシャ法と言うモノで、昔ながらの外観が守られている。
マンションや建築物に関しても高さにも制限がある、ターシャ村には高層ビルが存在しない。
確か、3階立て以上の建築物はアウトだ。
3階立てですら、ターシャ駅付近の商業鉄筋ビルのみで…。
ターシャ神社付近は基本、2階建てまでだ。
少し行けば都会の筈なのに…強烈に、田舎臭が漂 う。
デパートなどで遊ぶには、ターシャ村からバスで20分移動して…港町で遊ぶしかない。
ここら辺は昔ながらの閑静な住宅街だ。
しかし、ターシャ国際空港がある港町は…繁華街で治安が悪いとも聞く。
噂によると邪神教集団の拉致 もあるらし
い…本当なのか?
メイド喫茶やホステスなどで遊ぶなら港町まで行かなければならない感じだ。
僕はまだホステスには通った経験はないが…。
難波カンサイが勤めてた”ターシャ国港町遊楽街メイド喫茶”デビューは…3年前、果たした。
僕の実家付近は娯楽が少ない。
☆☆☆
祖父母の実家、灰色の屋根瓦に普通の2階建て古い木造家屋のインターフォンを押す。
連絡ならしておいたが…もう、合い鍵まで渡されてる関係だったりする。
外観は狭小住宅に近く…20坪に満たない感じだ。
♪ピンポー――――ン♪
婆「はい?
こちら、灯台ですが…。
どちら様でしょうか?」
「僕だ、僕。
昨日、電話してた筈だ」
婆「キセキ君かい?
もう昨日から待ってたんだよ。
来ないのかとばかり…」
「今日の昼に来る予定だ」
婆「昨日の昼にカレーを作ったからね。
今から玄関に行くから待っておいてよ…」
「振り込め詐欺にあわないか…。
僕は心配だ」
僕のお祖母ちゃんの快活な声がインターホン越しに耳へ入った。
健康そうで何よりだが…。
僕は昨日、何回も「明後日の昼に来る」と伝えた筈だ…。
婆「まあ!
キセキ君、大きくなって…。
今、高校生だったか?」
「お祖母ちゃん、違う・…僕はもう成人だ」
婆「そうかいそうかい、婆ちゃんからしたら、高校生も成人も同じだよ。
同じ顔にしか見えない」
「僕は昼ご飯を食べたら、すぐに去る」
婆「息子がね…3人もいると、孫が6人もいるんだよ。
お祖母ちゃんは悪くないよ…。
えっと、誰が高校生だっけ…。
孫の誰だっけ?」
「僕の従兄弟に高校生はいない、中学生ならいるが…」
婆「そうかい、その子がもうすぐ高校だったのかい…。
もう6名もいると覚えてられないよ」
「弁解は良い。
中に入らせてもらう。
従兄弟は来てるのか?」
婆「遠方に行ってしまってね‥。
暮らしてる場所が違うから遊びに来ないよ。
夏休みの筈なのに、悲しい話だ」
「中学生は9月、夏休みではない」
婆「そうかい…。
まあ、難しい話は置いといて、キセキ君の好きなカレーライスだよ」
「まあ、それはありがたい。
アリガトウだ」
僕は室内へ進んだ。
普通の家だ。
6畳部屋が1階に2つほどで…階段がある若干狭小住宅だが、ここら辺の地価は地方と違い倍近くに高い。
ココはターシャ村でも下町だし、普通だ。
僕の家は何度も弁解するが、庶民だ。
婆「まあ、婆ちゃん・・キセキ君のことだけは孫でも間違わないんだよ。
なんせ外人の血が入ってる分、髪の色が違うからね。
瞳の色も違うし…覚えやすいよ。
茶髪だしね。
平和国はどうだい?
お父さんとお母さんと一緒に暮らしてるのかい?」
「二人とも平和国本土の社宅だ」
婆「そうかい…」
婆ちゃんは知っているのか、理解してないのか…。
ウンウンと首を振った。
祖父ちゃんが奥のコタツ机へ座ってる。
冬はコタツとして活躍するが、今は秋だ…布団はしてない。
部屋にはテレビがある、いつの間にか薄型テレビに変わっている。
僕の祖父母は…そこら辺にいる老人な雰囲気で、見た目に特徴が薄い…。
婆ちゃんはお腹が出て、染めた黒髪だ…。
祖父ちゃんは少し毛が薄いかもしれない。
僕はあまり、祖父母に似てない…クォーターだからだ。
爺「うわあ、外人がやってきた。
婆さん、ビックリだ」
婆「何を言ってるんですか?
キセキ君だよ」
爺「分かっているよ。
大きくなったね。
キセキ君。
で、彼女…出来たかい?」
婆「出来たんかい?」
「まだだ。
突然じゃないか?
僕は勉強に忙しい。
恋愛は捨ててる」
爺「そうかい、いつか金髪碧眼美女を紹介してくれよ。
平和国の美女は別嬪さんばかりだ」
婆「もう、怒りますよ。
さあさ、キセキ君。
婆ちゃんのためにもまだ、恋愛なんて良いからねえ?
もちろん、婆ちゃん孝行をしてちょうだいよ。
キセキ君」
「僕はいったい、どこで暮らすか分からない…。
もしかしたら、平和国で一生かも知れないし・・。
保証がない」
婆「まあ、婆ちゃんを困らせるなら、カレーはあげないよ!
婆ちゃんの家へ、たまには寄ってよ。
もう他の孫は冷たいったら…」
爺「次来るときは、平和国美女…金髪美人を紹介するんだぞ。
祖父ちゃん、楽しみにしてるからな」
「僕は恋愛は捨ててる、勉強に生きる」
こういうノリに毎回なる。
僕の父方祖父母はもうターシャ人の老人代表ってくらい、特徴に薄いが・・。
割りとノリが良い。
それから、涙もろかったりする。
畳に胡坐をかいて、コタツ机に座る。
婆ちゃんと祖父ちゃんは、折り畳み式の…背もたれ座布団へ腰かけてる。
僕にも貸してくれた。
机の上に乗ってるカレーライスはとても懐かしい味がする。
壁にはいろいろな写真が掛かってる、僕の御先祖様の写真だ。
どこか懐かしい風景だ。
タンスなども置いてあり、割りと片付いた昔ながらの家だ。
婆「キセキ君、男前だね?
本当に彼女、いないのかい?
正直に話しても良いんだよ…」
爺「平和国で金髪巨乳美人の彼女出来たか?
祖父ちゃんに紹介してほしいぞ。
ボインはいないのか?」
「僕はそれどころではない、今日はターシャ国にいる昔の友達にあって来るところだ」
爺「キセキの昔の友達は…要するにコレかい?
キセキの昔の女なのかい?
祖父ちゃん、気になるが…」
婆「祖父ちゃん…!
キセキ君は勉強に生きてるんだからね。
恋愛なんてまだしないって言ってるんだからね。
さあさ♪
おかわり、欲しいかい?
カレーのお代わりがあるよ」
「ありがとう。
しかし、もう…僕は行ってくる」
婆「そうかい、キセキ君…。
同窓会、頑張って来てよ。
帰りにも祖母ちゃんの家に寄って来てよ。
お父さんにもよろしくね?」
爺「祖父ちゃんにもキセキの女、紹介しろよ。
同窓会、応援してるからな!」
二人はこの調子だ。
僕もまさか…こんなふうに年を取って行くのだろうか?
今は全然、ピンと来ない。
僕のお祖父ちゃんは割りと女好きなのじゃないか???
テレビで色々な種類の女優さんが現れる度 、釘 付けになっている。
その度に・・お祖母ちゃんが怒ってる。
祖父ちゃんは博愛精神に溢れていて、老若男女すべての女性に基本、優しい。
小さな童女から・…果ては老女にまで、全員に対して、レディーファーストで通ってる。
物凄く、ストライクゾーンが広い。
僕のお祖父ちゃんは昔から、例え…5歳児だとしても、女性は優しくしろ…チャンスが増える…と煩 かった。
そこが良いところでもあり、欠点でもある。
☆☆☆
父方祖父母の木造家屋から出た。
元気そうで何よりだった。
お祖父ちゃんの話、通りではないが・・僕は今から元カノに会って来る予定だった。
しかし、あの空気で言える雰囲気ではなかった。
お祖父ちゃんの要望を照らし合わせると…。
僕は金髪碧眼巨乳美女のタリアの従兄弟…月神マリアと一緒になる未来なのかもしれない…。
僕はいったいどこで暮らすのか?
それから、いったい誰と一緒になるのか?
将来は未知数だ。
☆☆☆
色々考えながら、歩いてる。
今日の服は緑色のアロハ服に下はジーンズだ。
このアロハ服も幼馴染のミルルに見立てて貰ったが…。
話のネタにはなるだろう。
今日はタリアとマナナに会って来る予定だからだ。
平和国土産としてもアロハ調の服は有名だ。
その時だ、向こうの方から赤い振袖 姿
の女装をした男性が…声を掛けてきた。
♂あのですね…♂
今日は最悪な日かもしれない。
何の用事なのか?
道を尋ねたいとでも言うのか…。
♂えっと、この辺にターシャ神社があると聞くのですが…うふふふふふふ♪
知らないでしょうか?
道筋を…♂
声からして、オカマだ。
差別は駄目だが…僕は女性が好きだ。
「ターシャ神社なら…この辺ですが…」
♂まあ!
偶然ですわ!!
もう道に迷っちゃって…♂
僕は今からターシャ神社へ行く予定なのだが…。
少し時間をずらしていくべきなのか?
それとも道筋案内人になるべきなのか…。
嫌な予感がした。
赤い振袖 姿の女装をした男性が…僕へ
突然、抱擁 して来た時には…さすがに
肝が冷えた。
♂まあ!
本当に私好みのイケメンですわ!!
貴方、お名前は!!
一目惚れですわ!!♂
「僕は今から用事があるので…僕には本命がいるので…」
♂本命ですか?
彼女ですの?
それとも…まさか結婚?♂
「違う、今から一緒になる予定で…」
♂それなら・・わかりましたわ!!
私にもチャンスが!!♂
「君は・・オカマだろう?」
♂まあ!傷つきましたわ!
よく間違われますが…れっきとした女ですわ!!
私の名前は…頑丈英子!
ターシャ王立女子大学に通う申し分ない良家の子女ですわ♂
「英子…」
僕は聞いたことのある名前に顔が固まった。
♂私には許婚 がいるのですが…。
写真を見せてもらったところ…全然、気乗りしなくて…。
今日は親同士が決めた許婚 との面
会の日なんですわ…。
もう、私が生まれる前から決まってた話みたいで…。
でも。
正直、他の方と見合いをしたいのが山々なんですわ!
私の彼氏って話にして…今日の見合いに参加してくれないかしら?
断りたいんです!!♂
「僕が…君の彼女なのか…」
♂今から暇なら一緒に!!!
是非とも…。
ターシャ神社へ一緒に行くだけですから!
貴方のお名前は!!!
ウホホホホ!♂
「僕は忙しい、逆ナンに捕まってる暇はない…」
凄い話になって来た。
僕は何故か、英子さんを僕の選択肢の8人目に入れる気になれない…。
何故だろうか?
タリアに英子さんを譲って、それからマナナを僕で良い気がする。
♂私の名前は頑丈英子!
英子ちゃんって呼んで下さいね!
ホホホ♂
「英子…。
君はまさかタリアの許婚 の…。
そうなのか…」
一応、聞いてしまった。
聞いてから僕はしまったと…後悔をした。
僕は人生でいったい、何回後悔をして生きているのだろうか…。
しかし、時間は戻らない…。
♂タリア…。
月神タリア知ってるんですか?
私の許婚 ですわ。
全く気乗りしないので、根性でいい大学に受かったし…他で見合いする気、満々ですわ!
と ころで私の許婚 とはどういう関係な
んですの?♂
「親友だ」
♂まあ!
運命を感じますわ!
これからカラオケに行きましょう!
もちろん、そっちの奢りで!!!♂
「僕は遠慮する」
♂え?
じゃあターシャ国立公園でデートでも!!!
正直、もう見合いに行く気が失せましたわ!!
ドタキャンで良いですわ!♂
「他を当たってくれ、忙しい」
♂どうしてですの?♂
「今日はその月神タリアに会う日だ…」
♂それなら、私もついていきますわ!
ホホホホ。
私のことをどうか、彼女だと伝えてくださいね?
これで、上手に断れますわ♂
「それは断る。
僕は見守るだけだ」
♂ええ…。
なんでですの?
ところで…電話番号なんて教えてくれませんか? ♂
「知らない人間に教えない」
♂分かりましたわ。
酷ですが、私の許婚 ―――月神タ
リアから、キセキさん
の電話番号を聞きますわ!
ウホホホホ。
親友なのでしょう?♂
「君はタリアと一緒になるべき女だ」
僕を慕う女がまた一人増えた。
しかし、男にしか何故か見えない…。
見た目が男だ…。
男が女装をして振袖 を着てるようにし
かみえないのは何故だろう?
どうして英子さんはオカマに見えてしまうのだろう???
ターシャ神社に到着した。
ターシャ神社の長い石段を渡ると…鳥居を越えて、境内 に
入る。
僕の隣には…赤い振袖 姿の女装をした
男にしか何故か見えないケバイ化粧の頑丈英子さんがいる。
石段の上には、タリアのお母さんが今時珍しい白い着物姿だ…正装をして待機してる。
それから、その横には僕の親友…タリアが黒い袴 を
着てる。
タリアの隣には黒髪にオカッパ、低身長に巨乳なマナナがいる。
マナナの今日はオレンジ色のワンピースで割りとラフな格好だ。
「キセキ!
来てくれたの!
平和国から帰って来たのね!
向こうの大学では…うまくいってるかしら?
今、夏季休暇なんでしょう?
ゆっくりして行ってね!!!」
「ああ…。
今から…タリアの見合いが始まるんだろう…?
僕は今、嫌な人間に絡まれている…。
マナナ、僕を昔のように助けて欲しい。
タリア…それから君は自分の運命を受け入れるべきだ。
僕は今、モテているが…あまり嬉しくない」
ここで、僕の隣にいる赤い振り袖姿な英子さんが高らかに声を上げた。
♂え?
キセキさんって…留学してるんですか?
平和国で… ♂
僕は英子さんの質問を無視した。
「マナナ…君も自分の運命を受け入れるべきだ、その方が絶対…君にとっても幸せだ。
僕は見守るだけだ。
役に立てそうにもない…。
申し訳ない」
「ううん…。
私、ずっとキセキの帰国を待ってたわ!
さすが、私の親友だわ!!
最近、ずっと大変で…。
もう精神的におかしくなりそうだわ!」
マナナが嬉しそうに叫んだ。
『…』
タリアはほぼ無表情だ。
タリアはお母さんの言いなりと言う話だが…本当なのか?
僕はそう言えば、タリアが母と一緒にいる場面をあまり、見たこともない。
普段からタリアは結構、大人しいキャラだ。
||「キセキさん、マナナさんの母から聞いたわよ。
キセキさんの許婚 は…元々、マナナ
さ
んの予定なんだったんですって?
うちのタリアと別れたマナナさんと…もう一度、やり直す気はないかしら?
タリアには英子さんという…申し分なく体力的にも知力的にも素晴らしい…月神家の許婚 が
いますからね?
どうかしら?
キセキさん…」||
「それは……」
いきなり、唐突に話しかけてくる白い着物姿に正装をしたタリアの母に僕は戸惑った。
「お願い、キセキ!
タリアを叱 って…。
何も言ってくれないの!
悲しいわ、私…」
マナナがタリアのお母さんの隣で…僕に頼んでくる。
『…』
確かに、タリアが…黒い袴姿のまま、ほぼ無表情で声を発してない。
「タリア…君はいったい、何を考えているんだ」
僕はタリアに聞いたが…タリアは僕から視線を逸 ら
して地面を見た。
自分の運命に逆らわず、神社の未来のために…英子さんを受け入れる気になったのか?
僕はタリアの使命感に…閉口した。
急にタリアの母が嬉しそうに元気になった。
||「アホな嫁を我が家に入れる訳にはいきません。
最低、4大には行って貰わないと…。
しかもお母さんが援助交際なんてしてたですって!
そんな緩い家の子 は我が家にはいりません!
英子さんはそのてん、素晴らしいお方!
因みに…どうして、キセキさんと英子さんが一緒にいるのかしら?」||
確かに白い着物姿の正装着なタリアの母は…マナナを貶 し、
英子さんをべた褒 めしてる。
「キセキの隣にいる赤い振袖 姿の女性
が…英子さんなのね?
どうしてなの?
キセキ?」
オレンジワンピースのマナナが首を傾げた、マナナの肩揃えな黒髪が揺れた。
3年ほど前までは水色セーラー服だったが…私服のオレンジワンピは胸元が丸く、胸の谷間が丸見えだ。
マナナがここまで巨乳だとは僕は知らなかった、体型は太りもせず痩せもせず…あまり変わってない。
いつのまにかスッピンだったマナナが女子大生風へ化粧気付いてるのも印象的だった。
タリアがマナナを捨てて、自らの運命を受け入れ…英子さんと共になるなら。
僕は断然、オカマにしか見えない赤い振袖 姿
な英子さんよりマナナを選ぶとしよう。
エロするなら僕はどう考えても…英子さんよりマナナだ、この場合の二択なら…そうだ。
レイカさんからは玉砕
続きだからだ、それでも良いかとも思えた。
♂私から逆ナンしましたわ!
偶然にも、まさか・・・私の許婚 の
知り合いだなんて!
驚きですわ!
ホホホホ ♂
赤い振り袖姿のオカマにしか見えない英子さんはその間も…。
緑のアロハTシャツにジーンズ姿の僕へベッタリと引っ付いたままだ。
白着物なタリアのお母さんから僕は凶暴な視線を感じて、身震いしかけた。
タリアはずっと黒い袴着 で神社の境
内 から僕を見下ろしている。
何を考えているのか…読めない。
「すごいわね、街角で逆ナンなんて。
いつもなの?
キセキ」
賽銭 箱の向こう岸、神社屋敷内部黄畳
へに立つ丸襟
オレンジワンピを着たマナナはビックリしたような表情だ。
マナナから熱い抱擁されてる黒袴なタリアは無表情だ。
タリアの隣にいる…神社内部黄色畳の右側にいる白着物なタリアの母は怖すぎる視線だ。
それから賽銭箱、鐘を鳴らす紐の前…僕の隣でベッタリとタコのように密着する赤い振袖姿な英子さんは…僕へ熱視線だ。
僕は寒気付いた。
僕の瞳には何故か…英子さんがオカマに見えるからだ、僕にその気は誓って全くない。
「さすがに…マナナ。
いくらなんでも、これが初めてだ」
♂海外留学してるなんて!
しかも容姿もよし!
私はこれにしましたわ!♂
「僕の家は悪いが…庶民で普通のサラリーマンだ」
僕は赤い振り袖姿で僕へ抱擁 してくる
オカマにしか見えない英子さんへ必死に弁解をした。
白い着物姿なタリアの母が…突如、鬼の形相に豹変した。
怖すぎる。
僕は泣きそうになって、タリアを見詰めたが・・。
『…』
タリアは黒い袴姿のまま、僕を見下ろしてるだけで…無反応だ。
あれは、自らの運命を受け入れた顔なのかもしれない。
♂貶すところがありませんわ。
旧家はしきたりがうるさくって、もうパーフェクトですわ!♂
「ずっとこの調子だ…」
僕はタリアのお母さんに対して、言ったつもりだ。
怖いからだ・・タリアのお母さんが…顔が…どんどん、般若 化
してる。
タリアは…素顔だ。
マナナは困った表情だ。
それから…マナナが突然、心臓が止まることを言い始めた。
「お義母さん!
私達はもういつ子供ができてもおかしくない関係なんです!」
オレンジワンピを着たラフな格好のマナナは…黒い袴姿のタリアへ必死に抱擁して、叫んだ。
僕は唖然 とした。
タリアの方を見たが…タリアの視線は…。
僕にはなく、マナナへ向かうこともなく・・英子さんにも行かず…それから、タリアのお母さんにも注 がず、地面で停止した。
この瞬間、白い着物姿なタリアのお母さんが…マナナを睨んだ表情は、もう夢に出てくるレベルに怖かった。
||「うちの子を…誑 かしたとでも言う
のね?」||
僕は空気が凍りつくのを感じた。
「タリア、どうして見合いになんて参加したの?
どうして、お母さんの言いなりなの?
今ではミルルより私で諦めがついたって言ったくせに。
どうしてなの?
ねえ!
何か言ってよ!」
オレンジワンピのマナナは…黒袴なタリアを揺さぶってるが、タリアは地面しか見ていない。
マナナは盛大に溜息を肩で吐いた。
それから…黒袴着 なタリアにしが
み付く
オレンジワンピのマナナが…。
反対に白無垢 着物姿なタリアのお母さんに
対して、勝ち誇 ったような表情を浮かべ始
めた。
「分かりました!
私を捨てる気なら…コチラにも考えがあります!
お義母さん、タリアの秘密を今、ここで暴露
します!
私は復讐 します!
目的は慰謝料 では有りません!
」
『…』
||「なんですって!!!!???」||
僕には何のことか、分からないが…タリアの秘密と言えば、アレしか浮かばなかった。
黒袴姿なタリアは…やっと、自分の隣にいるマナナの方を目線だけでチラリと見た。
白無垢着物姿なタリアのお母さんは…目をドングリにさせてマナナを注視して、口が開いていた。
僕とタリアのお母さんだけの秘密かと思ったが…。
マナナも知っていたらしい…。
空気がまた冷たく張りつめた。
平和国からコンニチハ7
目次
平和国からコンニチハ8
||「ええ…。
でも、
まあ、タリアにはいろいろ頑張ってもらってるし、夢は見させてあげたいし…。
ソっとしてあげても、良いんだけどね・…」||
「タリアは…まるで自分のことのように、ミルルを自慢してます」
||「そうなの、タリアが…ミルルちゃんを…。
確かに、モテそうよね?
あの子は」||
「ミルルはクラスで一番モテてます。
タリアが大好きで有名です…。
この近所でも有名な筈です、僕は知ってましたが…。
えっと、余計でしたか?
おばさんへ伝えるのは…」
||「良いわ?
タリア、おばさんには全く何も言ってくれないからね?
そう…ありがとう。
キセキ君、これからも情報よろしくね?
たまに遊びに来てちょうだいよ。
タリアも喜ぶわ」||
「ありがとうございます!」
こういうやり取りが…あれは僕が10歳の頃にあった。
タリアのお母さんは、僕へ優しい対応で
確かに、この国は…国境がターシャ教だ。
そこら辺中にターシャ教関係の神社が存在するが…その中で一番、ターシャ神社が有名に決まってる。
タリアが大変なことが伝わって来た。
タリアが駄目な場合、住む家を失い・・・一家で路頭に迷うらしい。
僕はそれを知って、唖然となった。
だからこそ…毎年、7月7日に開催されるターシャ祭りにタリアだけ参加しないのか…と納得した。
全てのことが繋がった瞬間だった。
しかし、親友のタリアからは『実家のことはクラスメイトに黙って欲しい、騒がれたくない』と頼まれてる。
僕はずっと、旧友の約束を守って来た。
彼はターシャ神社の跡取りを
17歳からマナナと交際が始まったものの、僕の記憶では全くデートをしてなかった。
実際、僕がタリアのお母さんから聞いた言葉だ…これは確信に近い。
それ以外にも…ターシャ神社は連日、その辺・・参拝客だらけだ。
いったい、誰が掃除するのか?
それ以外にも…新年のお守りを売る儀式や…初詣には世界中から人間が集まり、長蛇の列だ。
僕のイメージでは…猛烈にいろいろ儀式が大変そうなイメージだ。
タリアは全く教えてくれないが…。
そんな雰囲気がする、しかもタリアは一人っ子だ。
仕方ないのかもしれない…。
二人が別れた後、僕がどういうふうにマナナを
☆☆☆
バスを下車して…数分歩けば、成績優秀高校と低脳中学の中間点へ到着した。
そこに割りと普通の家がある。
古い木造家屋の2階建てで20ツボもあれば良い方だ。
ここが僕の父方祖父母の実家だ。
僕の家は外観は普通で・…代々の家だ。
この辺いったい、ターシャ国内では地価が高い筈なのに…。
何故か、猛烈に広大な敷地の屋敷もある。
特にターシャ神社は世界遺産だけあって別格に広い。
僕の家は一般人で、庶民の家だ。
レイカさんの家は…ここから離れた”王族シティ”と言う名前のVIPタウンにある。
そこがターシャ国で一番、高級住宅街だ。
まだ、この辺の地価は高いと言えども…、ターシャ神社がある分、厳しい規制があり過ぎて…開けてない。
ターシャ法と言うモノで、昔ながらの外観が守られている。
マンションや建築物に関しても高さにも制限がある、ターシャ村には高層ビルが存在しない。
確か、3階立て以上の建築物はアウトだ。
3階立てですら、ターシャ駅付近の商業鉄筋ビルのみで…。
ターシャ神社付近は基本、2階建てまでだ。
少し行けば都会の筈なのに…強烈に、田舎臭が
デパートなどで遊ぶには、ターシャ村からバスで20分移動して…港町で遊ぶしかない。
ここら辺は昔ながらの閑静な住宅街だ。
しかし、ターシャ国際空港がある港町は…繁華街で治安が悪いとも聞く。
噂によると邪神教集団の
メイド喫茶やホステスなどで遊ぶなら港町まで行かなければならない感じだ。
僕はまだホステスには通った経験はないが…。
難波カンサイが勤めてた”ターシャ国港町遊楽街メイド喫茶”デビューは…3年前、果たした。
僕の実家付近は娯楽が少ない。
☆☆☆
祖父母の実家、灰色の屋根瓦に普通の2階建て古い木造家屋のインターフォンを押す。
連絡ならしておいたが…もう、合い鍵まで渡されてる関係だったりする。
外観は狭小住宅に近く…20坪に満たない感じだ。
♪ピンポー――――ン♪
婆「はい?
こちら、灯台ですが…。
どちら様でしょうか?」
「僕だ、僕。
昨日、電話してた筈だ」
婆「キセキ君かい?
もう昨日から待ってたんだよ。
来ないのかとばかり…」
「今日の昼に来る予定だ」
婆「昨日の昼にカレーを作ったからね。
今から玄関に行くから待っておいてよ…」
「振り込め詐欺にあわないか…。
僕は心配だ」
僕のお祖母ちゃんの快活な声がインターホン越しに耳へ入った。
健康そうで何よりだが…。
僕は昨日、何回も「明後日の昼に来る」と伝えた筈だ…。
婆「まあ!
キセキ君、大きくなって…。
今、高校生だったか?」
「お祖母ちゃん、違う・…僕はもう成人だ」
婆「そうかいそうかい、婆ちゃんからしたら、高校生も成人も同じだよ。
同じ顔にしか見えない」
「僕は昼ご飯を食べたら、すぐに去る」
婆「息子がね…3人もいると、孫が6人もいるんだよ。
お祖母ちゃんは悪くないよ…。
えっと、誰が高校生だっけ…。
孫の誰だっけ?」
「僕の従兄弟に高校生はいない、中学生ならいるが…」
婆「そうかい、その子がもうすぐ高校だったのかい…。
もう6名もいると覚えてられないよ」
「弁解は良い。
中に入らせてもらう。
従兄弟は来てるのか?」
婆「遠方に行ってしまってね‥。
暮らしてる場所が違うから遊びに来ないよ。
夏休みの筈なのに、悲しい話だ」
「中学生は9月、夏休みではない」
婆「そうかい…。
まあ、難しい話は置いといて、キセキ君の好きなカレーライスだよ」
「まあ、それはありがたい。
アリガトウだ」
僕は室内へ進んだ。
普通の家だ。
6畳部屋が1階に2つほどで…階段がある若干狭小住宅だが、ここら辺の地価は地方と違い倍近くに高い。
ココはターシャ村でも下町だし、普通だ。
僕の家は何度も弁解するが、庶民だ。
婆「まあ、婆ちゃん・・キセキ君のことだけは孫でも間違わないんだよ。
なんせ外人の血が入ってる分、髪の色が違うからね。
瞳の色も違うし…覚えやすいよ。
茶髪だしね。
平和国はどうだい?
お父さんとお母さんと一緒に暮らしてるのかい?」
「二人とも平和国本土の社宅だ」
婆「そうかい…」
婆ちゃんは知っているのか、理解してないのか…。
ウンウンと首を振った。
祖父ちゃんが奥のコタツ机へ座ってる。
冬はコタツとして活躍するが、今は秋だ…布団はしてない。
部屋にはテレビがある、いつの間にか薄型テレビに変わっている。
僕の祖父母は…そこら辺にいる老人な雰囲気で、見た目に特徴が薄い…。
婆ちゃんはお腹が出て、染めた黒髪だ…。
祖父ちゃんは少し毛が薄いかもしれない。
僕はあまり、祖父母に似てない…クォーターだからだ。
爺「うわあ、外人がやってきた。
婆さん、ビックリだ」
婆「何を言ってるんですか?
キセキ君だよ」
爺「分かっているよ。
大きくなったね。
キセキ君。
で、彼女…出来たかい?」
婆「出来たんかい?」
「まだだ。
突然じゃないか?
僕は勉強に忙しい。
恋愛は捨ててる」
爺「そうかい、いつか金髪碧眼美女を紹介してくれよ。
平和国の美女は別嬪さんばかりだ」
婆「もう、怒りますよ。
さあさ、キセキ君。
婆ちゃんのためにもまだ、恋愛なんて良いからねえ?
もちろん、婆ちゃん孝行をしてちょうだいよ。
キセキ君」
「僕はいったい、どこで暮らすか分からない…。
もしかしたら、平和国で一生かも知れないし・・。
保証がない」
婆「まあ、婆ちゃんを困らせるなら、カレーはあげないよ!
婆ちゃんの家へ、たまには寄ってよ。
もう他の孫は冷たいったら…」
爺「次来るときは、平和国美女…金髪美人を紹介するんだぞ。
祖父ちゃん、楽しみにしてるからな」
「僕は恋愛は捨ててる、勉強に生きる」
こういうノリに毎回なる。
僕の父方祖父母はもうターシャ人の老人代表ってくらい、特徴に薄いが・・。
割りとノリが良い。
それから、涙もろかったりする。
畳に胡坐をかいて、コタツ机に座る。
婆ちゃんと祖父ちゃんは、折り畳み式の…背もたれ座布団へ腰かけてる。
僕にも貸してくれた。
机の上に乗ってるカレーライスはとても懐かしい味がする。
壁にはいろいろな写真が掛かってる、僕の御先祖様の写真だ。
どこか懐かしい風景だ。
タンスなども置いてあり、割りと片付いた昔ながらの家だ。
婆「キセキ君、男前だね?
本当に彼女、いないのかい?
正直に話しても良いんだよ…」
爺「平和国で金髪巨乳美人の彼女出来たか?
祖父ちゃんに紹介してほしいぞ。
ボインはいないのか?」
「僕はそれどころではない、今日はターシャ国にいる昔の友達にあって来るところだ」
爺「キセキの昔の友達は…要するにコレかい?
キセキの昔の女なのかい?
祖父ちゃん、気になるが…」
婆「祖父ちゃん…!
キセキ君は勉強に生きてるんだからね。
恋愛なんてまだしないって言ってるんだからね。
さあさ♪
おかわり、欲しいかい?
カレーのお代わりがあるよ」
「ありがとう。
しかし、もう…僕は行ってくる」
婆「そうかい、キセキ君…。
同窓会、頑張って来てよ。
帰りにも祖母ちゃんの家に寄って来てよ。
お父さんにもよろしくね?」
爺「祖父ちゃんにもキセキの女、紹介しろよ。
同窓会、応援してるからな!」
二人はこの調子だ。
僕もまさか…こんなふうに年を取って行くのだろうか?
今は全然、ピンと来ない。
僕のお祖父ちゃんは割りと女好きなのじゃないか???
テレビで色々な種類の女優さんが現れる
その度に・・お祖母ちゃんが怒ってる。
祖父ちゃんは博愛精神に溢れていて、老若男女すべての女性に基本、優しい。
小さな童女から・…果ては老女にまで、全員に対して、レディーファーストで通ってる。
物凄く、ストライクゾーンが広い。
僕のお祖父ちゃんは昔から、例え…5歳児だとしても、女性は優しくしろ…チャンスが増える…と
そこが良いところでもあり、欠点でもある。
☆☆☆
父方祖父母の木造家屋から出た。
元気そうで何よりだった。
お祖父ちゃんの話、通りではないが・・僕は今から元カノに会って来る予定だった。
しかし、あの空気で言える雰囲気ではなかった。
お祖父ちゃんの要望を照らし合わせると…。
僕は金髪碧眼巨乳美女のタリアの従兄弟…月神マリアと一緒になる未来なのかもしれない…。
僕はいったいどこで暮らすのか?
それから、いったい誰と一緒になるのか?
将来は未知数だ。
☆☆☆
色々考えながら、歩いてる。
今日の服は緑色のアロハ服に下はジーンズだ。
このアロハ服も幼馴染のミルルに見立てて貰ったが…。
話のネタにはなるだろう。
今日はタリアとマナナに会って来る予定だからだ。
平和国土産としてもアロハ調の服は有名だ。
その時だ、向こうの方から赤い
♂あのですね…♂
今日は最悪な日かもしれない。
何の用事なのか?
道を尋ねたいとでも言うのか…。
♂えっと、この辺にターシャ神社があると聞くのですが…うふふふふふふ♪
知らないでしょうか?
道筋を…♂
声からして、オカマだ。
差別は駄目だが…僕は女性が好きだ。
「ターシャ神社なら…この辺ですが…」
♂まあ!
偶然ですわ!!
もう道に迷っちゃって…♂
僕は今からターシャ神社へ行く予定なのだが…。
少し時間をずらしていくべきなのか?
それとも道筋案内人になるべきなのか…。
嫌な予感がした。
赤い
♂まあ!
本当に私好みのイケメンですわ!!
貴方、お名前は!!
一目惚れですわ!!♂
「僕は今から用事があるので…僕には本命がいるので…」
♂本命ですか?
彼女ですの?
それとも…まさか結婚?♂
「違う、今から一緒になる予定で…」
♂それなら・・わかりましたわ!!
私にもチャンスが!!♂
「君は・・オカマだろう?」
♂まあ!傷つきましたわ!
よく間違われますが…れっきとした女ですわ!!
私の名前は…頑丈英子!
ターシャ王立女子大学に通う申し分ない良家の子女ですわ♂
「英子…」
僕は聞いたことのある名前に顔が固まった。
♂私には
写真を見せてもらったところ…全然、気乗りしなくて…。
今日は親同士が決めた
もう、私が生まれる前から決まってた話みたいで…。
でも。
正直、他の方と見合いをしたいのが山々なんですわ!
私の彼氏って話にして…今日の見合いに参加してくれないかしら?
断りたいんです!!♂
「僕が…君の彼女なのか…」
♂今から暇なら一緒に!!!
是非とも…。
ターシャ神社へ一緒に行くだけですから!
貴方のお名前は!!!
ウホホホホ!♂
「僕は忙しい、逆ナンに捕まってる暇はない…」
凄い話になって来た。
僕は何故か、英子さんを僕の選択肢の8人目に入れる気になれない…。
何故だろうか?
タリアに英子さんを譲って、それからマナナを僕で良い気がする。
♂私の名前は頑丈英子!
英子ちゃんって呼んで下さいね!
ホホホ♂
「英子…。
君はまさかタリアの
そうなのか…」
一応、聞いてしまった。
聞いてから僕はしまったと…後悔をした。
僕は人生でいったい、何回後悔をして生きているのだろうか…。
しかし、時間は戻らない…。
♂タリア…。
月神タリア知ってるんですか?
私の
全く気乗りしないので、根性でいい大学に受かったし…他で見合いする気、満々ですわ!
と ころで私の
「親友だ」
♂まあ!
運命を感じますわ!
これからカラオケに行きましょう!
もちろん、そっちの奢りで!!!♂
「僕は遠慮する」
♂え?
じゃあターシャ国立公園でデートでも!!!
正直、もう見合いに行く気が失せましたわ!!
ドタキャンで良いですわ!♂
「他を当たってくれ、忙しい」
♂どうしてですの?♂
「今日はその月神タリアに会う日だ…」
♂それなら、私もついていきますわ!
ホホホホ。
私のことをどうか、彼女だと伝えてくださいね?
これで、上手に断れますわ♂
「それは断る。
僕は見守るだけだ」
♂ええ…。
なんでですの?
ところで…電話番号なんて教えてくれませんか? ♂
「知らない人間に教えない」
♂分かりましたわ。
酷ですが、私の
ウホホホホ。
親友なのでしょう?♂
「君はタリアと一緒になるべき女だ」
僕を慕う女がまた一人増えた。
しかし、男にしか何故か見えない…。
見た目が男だ…。
男が女装をして
どうして英子さんはオカマに見えてしまうのだろう???
ターシャ神社に到着した。
ターシャ神社の長い石段を渡ると…鳥居を越えて、
僕の隣には…赤い
石段の上には、タリアのお母さんが今時珍しい白い着物姿だ…正装をして待機してる。
それから、その横には僕の親友…タリアが黒い
タリアの隣には黒髪にオカッパ、低身長に巨乳なマナナがいる。
マナナの今日はオレンジ色のワンピースで割りとラフな格好だ。
「キセキ!
来てくれたの!
平和国から帰って来たのね!
向こうの大学では…うまくいってるかしら?
今、夏季休暇なんでしょう?
ゆっくりして行ってね!!!」
「ああ…。
今から…タリアの見合いが始まるんだろう…?
僕は今、嫌な人間に絡まれている…。
マナナ、僕を昔のように助けて欲しい。
タリア…それから君は自分の運命を受け入れるべきだ。
僕は今、モテているが…あまり嬉しくない」
ここで、僕の隣にいる赤い振り袖姿な英子さんが高らかに声を上げた。
♂え?
キセキさんって…留学してるんですか?
平和国で… ♂
僕は英子さんの質問を無視した。
「マナナ…君も自分の運命を受け入れるべきだ、その方が絶対…君にとっても幸せだ。
僕は見守るだけだ。
役に立てそうにもない…。
申し訳ない」
「ううん…。
私、ずっとキセキの帰国を待ってたわ!
さすが、私の親友だわ!!
最近、ずっと大変で…。
もう精神的におかしくなりそうだわ!」
マナナが嬉しそうに叫んだ。
『…』
タリアはほぼ無表情だ。
タリアはお母さんの言いなりと言う話だが…本当なのか?
僕はそう言えば、タリアが母と一緒にいる場面をあまり、見たこともない。
普段からタリアは結構、大人しいキャラだ。
||「キセキさん、マナナさんの母から聞いたわよ。
キセキさんの
うちのタリアと別れたマナナさんと…もう一度、やり直す気はないかしら?
タリアには英子さんという…申し分なく体力的にも知力的にも素晴らしい…月神家の
どうかしら?
キセキさん…」||
「それは……」
いきなり、唐突に話しかけてくる白い着物姿に正装をしたタリアの母に僕は戸惑った。
「お願い、キセキ!
タリアを
何も言ってくれないの!
悲しいわ、私…」
マナナがタリアのお母さんの隣で…僕に頼んでくる。
『…』
確かに、タリアが…黒い袴姿のまま、ほぼ無表情で声を発してない。
「タリア…君はいったい、何を考えているんだ」
僕はタリアに聞いたが…タリアは僕から視線を
自分の運命に逆らわず、神社の未来のために…英子さんを受け入れる気になったのか?
僕はタリアの使命感に…閉口した。
急にタリアの母が嬉しそうに元気になった。
||「アホな嫁を我が家に入れる訳にはいきません。
最低、4大には行って貰わないと…。
しかもお母さんが援助交際なんてしてたですって!
そんな緩い家の子 は我が家にはいりません!
英子さんはそのてん、素晴らしいお方!
因みに…どうして、キセキさんと英子さんが一緒にいるのかしら?」||
確かに白い着物姿の正装着なタリアの母は…マナナを
「キセキの隣にいる赤い
どうしてなの?
キセキ?」
オレンジワンピースのマナナが首を傾げた、マナナの肩揃えな黒髪が揺れた。
3年ほど前までは水色セーラー服だったが…私服のオレンジワンピは胸元が丸く、胸の谷間が丸見えだ。
マナナがここまで巨乳だとは僕は知らなかった、体型は太りもせず痩せもせず…あまり変わってない。
いつのまにかスッピンだったマナナが女子大生風へ化粧気付いてるのも印象的だった。
タリアがマナナを捨てて、自らの運命を受け入れ…英子さんと共になるなら。
僕は断然、オカマにしか見えない赤い
エロするなら僕はどう考えても…英子さんよりマナナだ、この場合の二択なら…そうだ。
レイカさんからは
♂私から逆ナンしましたわ!
偶然にも、まさか・・・私の
驚きですわ!
ホホホホ ♂
赤い振り袖姿のオカマにしか見えない英子さんはその間も…。
緑のアロハTシャツにジーンズ姿の僕へベッタリと引っ付いたままだ。
白着物なタリアのお母さんから僕は凶暴な視線を感じて、身震いしかけた。
タリアはずっと黒い
何を考えているのか…読めない。
「すごいわね、街角で逆ナンなんて。
いつもなの?
キセキ」
マナナから熱い抱擁されてる黒袴なタリアは無表情だ。
タリアの隣にいる…神社内部黄色畳の右側にいる白着物なタリアの母は怖すぎる視線だ。
それから賽銭箱、鐘を鳴らす紐の前…僕の隣でベッタリとタコのように密着する赤い振袖姿な英子さんは…僕へ熱視線だ。
僕は寒気付いた。
僕の瞳には何故か…英子さんがオカマに見えるからだ、僕にその気は誓って全くない。
「さすがに…マナナ。
いくらなんでも、これが初めてだ」
♂海外留学してるなんて!
しかも容姿もよし!
私はこれにしましたわ!♂
「僕の家は悪いが…庶民で普通のサラリーマンだ」
僕は赤い振り袖姿で僕へ
白い着物姿なタリアの母が…突如、鬼の形相に豹変した。
怖すぎる。
僕は泣きそうになって、タリアを見詰めたが・・。
『…』
タリアは黒い袴姿のまま、僕を見下ろしてるだけで…無反応だ。
あれは、自らの運命を受け入れた顔なのかもしれない。
♂貶すところがありませんわ。
旧家はしきたりがうるさくって、もうパーフェクトですわ!♂
「ずっとこの調子だ…」
僕はタリアのお母さんに対して、言ったつもりだ。
怖いからだ・・タリアのお母さんが…顔が…どんどん、
タリアは…素顔だ。
マナナは困った表情だ。
それから…マナナが突然、心臓が止まることを言い始めた。
「お義母さん!
私達はもういつ子供ができてもおかしくない関係なんです!」
オレンジワンピを着たラフな格好のマナナは…黒い袴姿のタリアへ必死に抱擁して、叫んだ。
僕は
タリアの方を見たが…タリアの視線は…。
僕にはなく、マナナへ向かうこともなく・・英子さんにも行かず…それから、タリアのお母さんにも
この瞬間、白い着物姿なタリアのお母さんが…マナナを睨んだ表情は、もう夢に出てくるレベルに怖かった。
||「うちの子を…
僕は空気が凍りつくのを感じた。
「タリア、どうして見合いになんて参加したの?
どうして、お母さんの言いなりなの?
今ではミルルより私で諦めがついたって言ったくせに。
どうしてなの?
ねえ!
何か言ってよ!」
オレンジワンピのマナナは…黒袴なタリアを揺さぶってるが、タリアは地面しか見ていない。
マナナは盛大に溜息を肩で吐いた。
それから…
反対に白
「分かりました!
私を捨てる気なら…コチラにも考えがあります!
お義母さん、タリアの秘密を今、ここで
私は
目的は
『…』
||「なんですって!!!!???」||
僕には何のことか、分からないが…タリアの秘密と言えば、アレしか浮かばなかった。
黒袴姿なタリアは…やっと、自分の隣にいるマナナの方を目線だけでチラリと見た。
白無垢着物姿なタリアのお母さんは…目をドングリにさせてマナナを注視して、口が開いていた。
僕とタリアのお母さんだけの秘密かと思ったが…。
マナナも知っていたらしい…。
空気がまた冷たく張りつめた。
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