アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

ゼロから見た世界

【ゼロ視点】



 
 
《そうなの…。
 ありがとう…。
 アイシャドウ、碧なのね…。
 濃いピンクもあるけど…。
 ここまで色のキツイのミルル…使ったことないわよ。
 さすが外国製ね…。
 ミルルの国ではナチュラル風メイクが流行ってるのよ?
 ココの国は割りと褐色の肌にエキゾチックなのが流行ってるみたいだけどね…》
 
〔邪神美人はエキゾチックな遊女さま方のようにベールが似合う女性とされてますからね?
 ダンサー化粧にも似てますが…?
 
しかし、将軍様の好みだけは理解できませんわ?
 妃さま方の容姿を見るにつれ…どうも古典的なターシャ国の女性が好みみたいですわ?
 
知ってますか?
 将軍様の部屋には置物として、日本人形や浮世絵画を飾っておいでですわ?
 妃さま方のような容姿は…我が国では物凄く珍しいのですよ?〕
 
《ミルルも図書館の隣にある展示室で見たわ…。
 イチ妃は…平安美人で、二妃は江戸の見返り美人ソックリだったわ・…。
 ビックリしたわよ?》
 
〔それがですね…。
 妃さま方は…将軍様の強い推薦で当時は"邪神美女ドル"に入ったらしいのですが…。
 その時だけお琴の歌劇になったらしいのですが…。
 現在の邪神美女ドルにあのようなタイプはいませんわ?
 
将軍様も古典的なターシャ国の美女は貞操が固いと信じておいでだったみたいですが…。
 妃さま方が宦官を数名、囲い始めたあたりから…もう失望したみたいですわ?
 現在は純粋なる若い邪神美人が良いみたいですが…。
 
あ…それから、これはパスポートですわ?〕
 
《戻ってきて、良かったわ…》
 
ヘリは空へ舞いあがり始めて、機内が揺れた。
一年前の嫌な思い出が蘇ル。
ヘリも少しトラウマになりつつアル。
 
《ゼロさん…えっと》
 
運転席背後から声はするが対応しねえ。
 
〔静かにすべきです、運転が失敗すれば…笑えませんわ?〕
 
《少しぐらい、話しても大丈夫でしょう?
 ゼロさん…ミルルのこと、忘れないで頂戴ね》
 
【ウゼ、静かにシヤガレ】

これぐらいキツメに言うべきダ。
 
 
〔ミルル様、車と同じと思ってもらったら…困りますわ?
 先日も…このヘリにちょうど…カモメが…ヘリのプロペラに絡まってですね…。
 落下した軍人もいましてね?
 
割りと…左右見渡さないとダメなわけですよ?
 理解してくださいませ?〕
 
《プロペラに…カモメ?
 カモメなんて飛んでないわよ、邪神国には。
 ねえ、あのゼロさんの隣座席に置かれた大きな荷物は何なわけ?》
 
〔あれはですね…。
 もしもの場合の救命道具ですわ?
 パラシュートと空気ですぐに膨らむヨットですね?
 この海の下には鮫もいますので。
 時々、ミルル様の食卓に上がった魚は…この邪神鮫ですわ?
 白身が効いて割りと美味しかったでしょう?〕
 
《え…鮫なんて食べてたの…ミルルは…》
 
〔平和国ヴァカンス島の上空にはですね…。
 それがウヨウヨとカモメが要るんですよ。
 平和鳩とも呼ばれているみたいですが…。
 これもよく夕飯で出てましたよね?
 平和鳩の唐揚げは…軍内でも出ますので?
 平和国に近付けば…これは手に入ります〕
 
《唐揚げは美味しかったわよ。
 平和国でも食べれるわ?》
 
〔もう少しすれば…平和国鳩が飛んでる場所へ行きますが…その大群へ入るのは至難技で…。
 たまに集団から乱れて飛び出す馬鹿な平和国鳩がいるわけです。
 それにも運転中は気を配らなくてはいきませんね?
 
だいたい、ヘリは使わず…平和国ヴァカンス島へ行く輸送手段は…潜水艦が主なんですが…。
 潜水艦、邪神号は…極秘でしてね?
 ミルル様が暮らすターシャ国の外交官にその存在をバレル訳にはいかないのですわ?〕
 
《そうなの…》
 
〔ミルル様…私が話した情報は絶対に外交官へ漏らさないように…。
 全てですよ?
 
ミルル様の体内には未だにマイクロチップが入ってますわ?
 これは脅しではなくて、真実ですわ?
 あと、このヘリの内部にも監視カメラがあるらしいので…。
 今の会話も将軍様に筒抜けですわ?
 
しかし、別にこれぐらいの情報なら将軍様もお怒りにならないでしょう。
 私は邪神国と将軍様万歳の忠実なる部下ですので?
 ゼロの監視はしっかりしますわ!
 
これからもミルル様、私がこの国で優遇されるように祈って下さいね?
 
今日は…化粧品までミルル様に進呈しましたわ?
 将軍様、この映像を見ていますか?
 フフフフ。
 
それでは…ミルル様、お気を付けて〕
 
《ヘリにも監視カメラがある訳?
 ミルル…見張られてるの?
 将軍に…。
 
えっと、平和国のヴァカンス島の平和鳩ね…。
 確かに見た目はカモメだけど…。
 ここからヘリで平和国のヴァカンス島まで何分ぐらいなの?》
 
〔30分もあれば大丈夫ですわ?
 10分で行けるコースもあるのですが…。
 そこはちょうど…平和鳩の集団ルートにもなってて…。
 カモメみたいな鳥たちが一斉に飛んでますので、そこを避けて動くでしょう。
 
いつもは救命道具なんてヘリに乗せずに飛ぶんですよ?
 自爆テロなんてものは帰りのガソリンすら積んでいませんわ?
 その方がヘリのスピードが上がりますからね?
 
今日はミルル様がいるからこそ。
 将軍様が直々にゼロが運転する席の隣…助手席に大きな救命道具を進呈してくれたわけですよ?
 ミルル様、将軍様に感謝なさってくださいね?
 とても優遇されていますよ?〕
 
《ふうん…。
 でも…あの救命道具が入ってるらしい黒い巨大な風呂敷包み…。
 猛烈に邪魔だわ。
 アレのせいで、ミルルは…ゼロさんの隣の席に座れないのよ?
 将軍がしたの?
 そうなの…》
 
ヘリ内部…まだ早朝だけある。
視界が暗い、日が昇ってネエ。
ヘリのライトだけで・…平和国鳩を避けなければナラネエらしい。
これは軍仲間が至難技だと漏らしてた意味も納得が行く。
人間じゃねえ分、行動が読めネエ。
渡り鳩の大群は横手にあるが…たまに外れてる馬鹿な鳩もイヤガル。
鳩避けのサイレンが欲しい気分ダ。

まだ鳩が白色だから幸いだが…。
たまに斑の鳩や黒い鳩にナルト…もう、お手上げに近イ。
これ、意外に神経使う。
まあ、渡り鳩のルートは避けてるが…なぜ、集団から乱れて…わざわざ、コチラへ飛んでくる?
たまにいるが避けてる。
運動神経が足りねえ鳩なのか?
その辺で休むつもりなのか?
鳩の思考回路はヨメネエ。
車運転中…山道で突然、出てくる猪の感覚に近イ。
確かに、ココは運転大変地帯ダ、慎重にナル。

☆☆☆

背後席の会話は全く聞こえねえ。
 
☆☆☆
 
神経擦り減らしたが…日が昇って来た、逆に運転がやりやすい。

鳩を避けやすい、もうすぐ平和国のヴァカンス島ラシイ。

緊張が一瞬、緩みかけた。

 
《うわ、日の出だわ。
 綺麗だわ。
 ゼロさん、いつもヘリからこの景色見てるの?
 それにしても…もしかして…あれが平和国のヴァカンス島かしら?
 もう着いたの?》
 
【到着ダ】
 

〔ミルル様、シートベルトはしたままに…。
 説明は覚えましたよね?
 それでは…。
 私が16億タ$の札束が入ったカバンを受け取りますわ?
 ミルル様、もちろん…私が向こうの国の外交官が変なことを考えた場合は…。
 庇ってくださいね?
 
将軍様、ヘリ内部に設置された監視カメラからこの映像を見てますか?
 私、猛烈にこの国に貢献してますわ?
 それにしても…監視カメラどこにあるのでしょう?
 そこだけが謎ですわ?
 
それからヘリから降りたら…。
 もちろん、ゼロには密着などなさらず…バイバイですよ。
 では…まず、私から降りますね?〕
 
【オレは何すりゃ良イ?
 ヘリ内部にいろってカ?】
 
〔ゼロは…まあ、外交官方が変なことを考えないように…。
 拳銃を持って威嚇する係にしておきましょうか?
 得意分野でしょうから〕
 
【チ】

ヘリを降下する。
平和国ヴァカンス島、ビーチ…。
ここが連中との待ち合わせ場所だと、メールでも来た。
 
 ヘリからバタバタ音がする…。
懐かしい感覚ダ、一年ぶりナノカ…。
 
《ゼロさん…お別れなのね?
 猛烈に悲しいわ。
 ねえ、ミルルと今…抱擁して頂戴よ。
 ヘリ内部なら良いんでしょう?》
 
〔ミルル様、窓の外から相手のSP辺りが望遠鏡あたりで見てる可能性もあるので…。
 もう終わりですわ?
 ササ〕
 
先に二人が下りるらしい。
エンジンはそのままで良いだろう、すぐに去る話だ。
向こうが攻撃する可能性も見越して、隙なくすぐに去る話ダ。
このヘリは4人乗りで…。
助手席には救命道具があるからダ。

 
ヘリの扉を開き、外へ出れば…平和国ヴァカンス島の砂浜。
ここは風が涼しい。
邪神国とは大違いダ。

 そこに…サングラスにタキシードを着た外交官が一人。
背後に23名はいる銃口を持ったSP、その他…上下白スーツ着た茶髪巻き髪ターシャ人の報道関係の女が1人…他にもぞろぞろいるが。
向こうが発砲した場合は…的確にあれを撃たねばならねえ。
射撃の腕は邪神国一ダ。
ヘリの運転はそこまでで…神経擦り減らしたが…ココから先は別に余裕ダ。

そのあと、どうなるかは知らねえ。
なるべく相手が発砲しねえようには祈るが…。
そこは知らねえ…邪神国と平和国も険悪ダカラダ。
お互い、敵関係ダ。
いつもの段取りになる。
私情は消す。


[人質を解放しろ。
 金なら用意した!
 ここに16億タ$揃った鞄がある…]
 
黒いタキシードを着たサングラスの男が威勢良く鞄をチラつかせて、宣言し始めた。


鞄は数個ある。
 
 
【先に金渡セ。
 そのあと、人質解放ダ】
 
〔私に渡して下さいませ?
 16億タ$あるか…。
 今日持参した機械で数えてからですわ?
 全ての話は?〕
 
オレとノアは頭からフード被ってる。
オレの手には巨大ライフルガン。
まあ、一瞬で打てる自信はアル。
ヘリに爆弾装置もアルダロウ・…。

ノアはあれは…紙幣計算機カ?
巨大な白い機械を地面に置いた。

オレの視線は相手のSPにある。
人数が多い分、そちらにしかネエ。
 
[分かった。
 これで全てだ。
 この鞄、全部…受け取れ。
 変なことを考えるな。
 人質を殺せば…こちらが攻撃する]
 
ノアが…サングラスに巨体と顔に傷を負ったタキシードの外交官から鞄を複数受け取ったラシイ・…。
 ノアが段取りよく、紙幣計算機に鞄の中身全部を入れ…。
 計算し始メタ。

その間も視線はSPどもにだ。
変なこと考える隙を与えねえ。

 
 
〔ありがとうございます?
 それでは人質を解放しますわ!〕
 
ノアは急に声を上げた。
半分以上…今日の仕事も終わりダ。
 
[早くしろ!
 人質には危害を加えるな!]
 
相手のサングラスをかけた顔に傷が付いたタキシード姿な外交官。
これはいつものノリだ。
視線はずっと、SP共にあるが…。
 
《ちょっと待って!
 サヨナラだけさして》
 
集団から乱れて走って来る馬鹿な鳩が一匹イル。

 
《握手だけね?》
 
【チ】
 
オレはライフルガンを掲げたまま…視線はSP共にある。
頭からフードを被ってる。
オレの右手を勝手に握りしめて、ミルルは…背中を向けて走り出した。

任務完了ダ。

次は…他のタスクがアル。

これで終わりダ。



すぐにオレはヘリに飛び乗った、ノアもダ。

エンジンは待機してた。
すぐさま、上空へヘリが上がる。
オレの視線は空にアル。
振り返らねえ。
私情をもつれさせるのはすべて終えてからダ。
まだ、鳩の大群を避けて運転しなければナラネエ。
帰宅してからで良いダロウ。



ヘリ内部で背後席から自棄に上機嫌な声でノアが絡んできた。
 
〔上手に情報を聞き出したり、ミルル様を落としたりするじゃない?
 アンタのせいで商売あがったりだわ。
 また、冷房の暑い部屋行きになるわよ。
 ハア…〕
 
【ウゼェ】
 
〔はあ、ミルル様…女帝の線がダメなら、これからは妃様方へ媚びへつらわなくては。
 それにしても将軍様はミルル様には甘いわ。
 まさか、ターシャ国へ無傷で返還なされるなんて…〕
 
【帰ルゾ】
 
〔あんたはこれから、どうする気?
 次は何を企んでるの?
 ミルル様をたぶらかして、この国で座を奪うつもりだったのでしょうけど。
 ミルル様はあの態度…。
 本当に分かりやすいったら。
 はあ…、今年の熱期は暑いのかしら?
 はあ…〕
 
【オメエ、黙レ】
 
この後、網で平和鳩を捕獲しなければならねえ。
それから塩とサボテンを超高層山で頂戴して…。

☆☆☆

平和国鳩を数羽以上、ヘリで内蔵された網で捕獲した。
そのあと、超高層山から塩とサボテンを戴き、ヘリに詰めれるだけ収納した。
頂ける数も限界があるが…一度で出来る限りの食材を入手するのも我が国のやり方でもアル。

そのあと、ヘリは軍事車庫へ到着し…ヘリ内部の荷物をそこで待機していた複数の軍人どもが輸送し始める。
トランク鞄はノアが手に持ち、将軍様がニンマリと笑った。

〈やあ、やあ、ご苦労だった…。
こうして金も手に入った。
ボクは最高に機嫌が良いよ。
ハハハハ〉

将軍様は常の通り、カラ笑いなさった。

ノアもトランクケースを開き…札束を見てはウットリした表情だ。

将軍様の周囲には複数の軍人どもがSPとして待機してる。

〈すぐに部下たちにこの金をボクの邪神国銀行口座へ振り込んでもらおうか?
フフフフフ〉

将軍様も上機嫌ダ。

〔私が紙幣計算機を持ってですね?
このトランクケースを戴いたわけです!
うふふふふ〕

〈ボクは現在、金が入ったし…最高に機嫌が良い。
ということで、ゼロの処罰の件だが…。
恩赦として、3日の牢獄で許してやろう〉

【ハア?】

オレは声が裏返った。


〈罪名は…王族への性犯罪にしておこうか?
ミルルの件でだ。
3日プラス罰金だけで許してやろう。
ボクは今日、最高に機嫌が良いからダ〉

【ハ?】

〔将軍様の御厚意に感謝しなさいね?
フフフフフ。
まあ…良いんじゃないの?
牢獄は冷房完備よ?
死刑じゃなかっただけ感謝するのね?
フフ〕

〈と言う事だ、ボクの命令に一度でも歯向かった。
次はないと言う意味も込めてだ。
今日から3日…牢獄だ。
3年入りたくなければ…そうだな…200万邪$払ってもらおうか?
出来るダロウ?〉

【ハ?】

眼が点にナッタ。

〔じゃね?
あの…将軍様、私の位は…?〕

〈ミルルなきあとだ、ミルルがいないのに…側近と言うのも変だ。
君は軍事医療班へ行ってもらおうか?〉

〔ええ…降格ですの?
それは…〕

〈しかし、優遇はする。
冷房完備な職務室に改造してやろう。
あと、君の寮室は…今まで通り使っても良いだろう〉

〔ありがたきお言葉ですわ…〕

ノアも少しは不服そうな顔だ。

確かに、一度…将軍様に反抗ならした。
情報収集の際にミルルへ手出しするなと命令に注釈されたにも関わらず…反抗した。
それで、この罪は甘いのかもシレネエ…。
将軍様は最高に機嫌良さそうな表情だ。
トランクケースは軍人どもによって、入金されるラシイ。

軍人どもにすぐにオレだけ手を後ろで組まされ、手錠をかけられた…。
ココは軍用車庫で、今日は特別に冷房がガンガンに効いてヤガル…。
将軍様の御厚意ダ。


〈連行する前に…軍人どもよ、暫しの間…ゼロから拳銃は没収ダ。
少し君も頭を冷やすんだな?
ボクは最高に機嫌が良い、これでも相当…処罰は甘イ〉

軍人どもが一斉に、オレの黒装束衣装内部のポケットを漁り、拳銃を没収した。

【チ…】

拳銃が数丁と、今朝…ミルルから渡されたメモ用紙を折りたたんだ手紙が…オレのポケットから灰色の地面へ転がり込んだ。
庭園は砂漠の砂さながらに塵が舞っている。
まだ読んでナカッタ、これは予想外の出来事だったからダ。

〈そのメモ用紙は何かね?
んん?〉

オレは、険悪な表情をした軍人どもに両手組まされ…銀の手錠をハメられてる。

【ウゼエ、ミルルからオレ宛てに今朝頂いたモノダ…。
まだ読んでネエ】

〈そうかい…、まあ…。
読んだところ、大丈夫そうだ。
ターシャ国に関する情報は書いてない。
キミへ渡そうか?
キミはこれから3年、ミルルと手紙を通じて…情報交換するだろう。
その時にターシャ国や平和国…芸能界関係について洗いざらいに聞け。

この手紙の続きからキミは手紙を書け。
ボクへミルルから来た手紙は全て見せて貰おうか?
キミが書いた手紙もだ。
ミルルはキミの筆跡を覚えてるらしいが…。
キミはミルルへ手紙を書いたことがあったのか?〉

【チ…。
一度だけダ。
以前…ミルルから1週間に渡り…逃亡する前にダ…。
”旅ヘ出ル。
サヨナラ。
他に良い男、見付ケロ”
とはブラックジョークで書いてヤッタ。
邪神語と平和国言語でダ】

〔将軍様…それなら、私も見ましたわ?
ミルル様からは…相談されていて…。
ああ、ミルル様なら確かに…。
一度で覚えそうですわ?
瞬間記憶の方ですから。

あの方は…。
政治に関することも覚えが異常に早くて…。
邪神語は最初は会話のみでしたのに…。
いつの間にか、読むだけではなく、書けるようにまでなったとは…。
私も驚きですわ?
是非ともミルル様を女帝に…〕

〈そうか…。
ノアが言うなら真実なのか?
それではミルルに嘘は付けないらしい。
ミルルは…キミが処刑されてないか確認も込めて、手紙でやりとりを指定してきた。

メールでは相手の個人が特定できないと嫌がった。
秀才な娘だ〉

〔ミルル様なら…恐らく見分けますわ。
天才なのは認めましょうか?

是非とも女帝としてミルル様をこの国に歓迎する件について…。
私は大賛成ですわ?
将軍様…どうなされる気なんですか?
いったい…?〕

【チ…】

ノアはこの期に及んで往生際が悪いらしい、愛想笑いを口に浮かべてる。
オレは手錠で身動きが出来ねえ…表情、頑なダ。
周囲に上から目線な軍人がイル。

ここは…数千台ものヘリがズラリと並ぶ軍事用のヘリ収納庫ダ。
今日は特別に冷房が効いてる。
将軍様が来るときは臨時で冷房を効かすのが…我が国の慣習ダ。

〈それにしても…キミがブラックジョークか?
キミはどうして逃亡した癖にこんなことにナッタ?〉

【情報収集のためダ。
それ以外で情報収集が出来ナカッタ。
まだ探りたらねえ情報がたくさんアッタからダ。
それがオレの生きザマダ…。
他に答えもネエ】

だいたい、こう返事するのも決まり文句だ。

〈そうか…。
キミらしい解答だ〉

〔私は大反対ですわ!
ミルル様とゼロに関してですわ〕

ノアはうぜえ、睨み付けた…ノアの瞳には将軍様しか映ってネエ。

〈フフ。
ミルルは賢い娘だ…一度で、キミの筆跡を覚えたと言うのか?
彼女ならあり得そうだ…物事を一度で覚える、超人級の記憶力だ。

ハッハ。

この手紙はキミが牢獄でも読みたまえ。
この手紙の続きから…キミは手紙を書け。

どこまでもミルルを通じて…情報を探り寄せろ。
我が国は情報が命だ〉

【御意…】

この調子で…、冷房は効いた軍用の車で牢獄施設まで輸送されることにナッタ。
この王宮から牢獄は南の橋を通らねばならねえ。
輸送車がノアの車よりリッチなのは幸いダ。
車の窓から市場が映った。
相変わらず…地面には黒装束を纏った死体しかねえ街を通った先に灰色の巨塔、囚人施設がアル。

確かに…罪状の割には刑は軽いことなら認めようか?
しかし、やはり…この国は敵ばかりだ。
真剣に亡命について考え始めてる・・。

☆☆☆

まさか…また牢獄へ入れられる羽目になるとも思わなかった…。

以前は独房に収容されてたが…。
今回もだ、部屋まで同じダ。

前回、オレが壁に頭突きをしたらしい血痕が同じ牢獄に未だにアル。
清掃すらこの牢獄はしてねえラシイ。

この展開は全く予想してなかった…。
しかし、あり得るかとも思ッテタ。
将軍様は有言実行な御方だからダ。
照明が暗く楽しみに乏しい。
前回ここへ収容された際の記憶も何故か飛んでる。

【チ】

3日間ラシイ…。
前回も似たような日数だったダロウカ?
信じられねえ国ダ。
この国。
やっぱり、亡命するべきなのカ?

そこへ今日の昼飯を差し入れに来たのは…。

牢獄の番人、ネズミチュウ太郎だ。
顔は褐色の肌で、容姿がネズミに似てヤガル…。
頭からフード被ってるのもまさにネズミに似てる。
顔から生えた髭がまるでネズミのようだ。

発音までネズミに似てる訛方ダ。

牢獄の檻越しに、ネズミチュウ太郎は鬼が持つような黒い棍棒を持って話しかけてきた。

ーーーまた、ここに入ったんかいな?
チュー。
オミャ、牢獄好きやな。
チュウ−−−


【ウゼエ】


ーーーなんや?
罪状は…王族への性犯罪?
将軍様への軽反逆罪かいな?
あの嬢ちゃんとなんかあったんかいな?
チュウーーー

【関係ねえ、飯食ワセロ】

ーーーまあな…。
飯はあげたるで?
しかし、交換条件や。
オミャ、ノアと同じ勤務なんだろ?−−−

【アア?
ウゼエ】

ーーーノア。
どうしてたん?
元気やったんかいな?
何か言ってへんかったか?
オリャのことやでーーー

【何も言ってネエ。
オレは寝ル、超絶ウゼ】

ーーーなんでや?
で…相談や。
ノアの隠し撮り写真とか…オミャ、持ってへんかいな?
これくれたらや…少しは牢獄で良い待遇に代えたるでーーー

【ウゼ。
んなもん、持ってる訳ねえ】

ーーーなんでや?
ノアは…軍内でTOP3内に入る人気の女やで?
売ってるやろうが?
軍内ショップでや。
なんで持ってへんのやーーー

【ハン?
オメエで買いに行け、コラ】

ーーー勝手に軍には入れへんのや…。
そうかいな。
ジャ、オミャは通常通りの待遇やーーー

【アア?
コラ…】

ネズミチュウ太郎は去って行った。
信じられねえが…この通り、ノアは何故か知らねえが意外に軍でモテてるラシイ。
性悪女にも需要がアルラシイ…。
あの女の隠し撮り写真など買う気にナラネエ、ボケカスが。

飯は3日間…まずいことが今ので決定したが、耐えヨウ。
ネズミチュウ太郎も毎度、このノリで…。
鬱陶シイ。
牢獄も快適とは言い難イ。

独房で、ミルルの手紙なら読んだが…。
呆気ないものダ。
メモ用紙を畳んだような代物だ。

《ゼロさんへ。

理由はないみたいだけど、好きみたい。
きっと必ず、救出するから・・ミルルを信じて欲しい。

ありがとう》

御丁寧にも邪神語で書かれてる。
牢獄内の照明具が暗すぎて、ミルルの手紙文字が読みニクイ…。
まあ、将軍様が…この内容について、お怒りにならないわけは理解シタ。
将軍様の筋書き通りだからダ。



☆☆☆


牢獄での3日間はアッと言う間に過ぎ去った。
手洗いの時だけ、いちいち門番のネズミチュウ太郎に申告して…手洗いへ行くガ…。
他の独房を見れば、男囚人しかココはいず、女囚人室とは別れてるラシイが…。
全員、監獄内ではエロ本ぐらいしか読んでネエ…。
堂々と檻で丸見えなのに…シコってヤガル。
いろいろ衝撃的ダ。

コレが3年もココに収容されたら慣れてしまうのか?
やはり、200万邪$で解放されるのなら・・将軍様へ支払うべきなのか?
それでも3日間はココにいなければナラネエらしい…。
手洗いですら壁がネエ。
シコる場所がネエ。
やはりこの国は地獄ダ…亡命を真剣に考え始めテル。
ネズミチュウ太郎もアクドイ。
連日、この囚人たちを見て…何か思わねえノカ?
衝撃的ダ。

ミルルとノアが来た時はこの非道なるモノが、特にミルルに見えなくて良カッタ…。
偶然だったのダロウ…。
私生活が、丸見え過ギル。

確かに3日ぐらいなら…別にオレも耐えられそうな気もするが…。
将軍様もアクドイ。
これが魂胆なのか?
手洗いでシコレと言う事なのか?
まあ、そこが一番…見えにくいだろうガ…。
それとも独房で寝てる時にシーツを上から被ってするのが最善か?
全く、プライバシーってもんがネエ。
感傷に浸る時間すら与えてクレネエ。

この国、やはり残酷ダ。
亡命を真剣に考えるべきカ?

☆☆☆

オレも実は感傷には浸ってる。
牢獄の消灯時間に独房でシーツを上からしてムスコを慰める羽目になるとは誰が予想したダロウカ?
やはり、絶対…この国から亡命してヤル。
ここで、決意が生まれた。
固く誓ッタ。

檻の中の黒いベッドへ横たわり、冴えない頭を張り巡らした。


《ゼロさんへ。

理由はないみたいだけど、好きみたい。
きっと必ず、救出するから・・ミルルを信じて欲しい。

ありがとう》

この続きから手紙を送りつけなければナラネエらしい…。
手紙は黒装束のポケットへ再度、収納した。
これから先、また一仕事ダ…。

☆☆☆





ゼロから見た世界3


目次

ゼロから見た世界5




今回は別視点と言う事で、邪神国その後を書いてみました。
ミルル視点とはまた違った話になると良いなと願いながら綴ってます。
いつも愛読ありがとうございます。

この”ゼロから見た世界”なのですが…1〜3話はミルル編と被っているので、新鮮さについてはどうなのかな?と首を傾げる所もあったのですが…。
ようやく、4話目にして…ミルル編ではなかった邪神国その後が書けました☆






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