アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

ゼロから見た世界

【ゼロ視点】


今日の任務も偽造貨幣工場で監視役ダガ…。
段々、ココ1ヶ月足らずで慣れては来てる。
しかし、この仕事…勤務時間が長いのだけが欠点ダ。
どう考えても将軍様は引き離そうとしてる魂胆だとしか思いようもネエ。
工場内では日夜、タ$や平$にソックリな貨幣を製造してる。
これを…いったい、いつ・・どこで使う気なのか?
そこまでの情報は廻って来ネエ。
大方、悪いことに使ってる事ダケは誰もが知ッテル…。
まあ、国家ぐるみで製造してる分、偽造貨幣と言えども…かなり精巧ダ。

この情報を知ってるのは…大方、邪神会議に参加する連中は知ってるかもしれネエ。
我が国があくどい事をしてるのは誰もが知ッテル。
宗教でそれを推奨シテル。
別に今更、詮索もしネエ…すればするほど、亡命もしにくくなるだけダ。
ミルルの気持ちは尊重するつもりダガ…。

正直、話せば…。
オレにすれば…ミルルが将軍様から処刑されないレベルに、トコトン嫌われて…平民へ落ち、嫁にするのが楽ダ。
この国への入国者が殆ど、祖国へ返還されてない現状もオレは知ッテル。
この国で結婚とは子供が出来た場合に…男が認知して、税金収めて終了ダ。
楽過ギル、重婚も許されてる…1夫多妻制だ。
個人主義の塊ダ。
しかし、この税金が割りと高い…政府がもうけ過ぎてる…、逃げる男も多い。
そんな国ダ。
軍関係に所属しなければ…義務教育はネエ、文盲で終ワル。
オレは苦労して、この軍に入ったが…自分の将来を考えると、亡命するより…ココにいた方が楽じゃねえかと思い始メテル。

あまり自分が亡命するのも現状、ノリ気ではネエ。
オレの身になって考えてもらいたい、この国にいれば、軍人ダ…別に食うに困らねえ。
死なぬ程度に働き、家庭持つ方が楽ダ。
外へ出て何の職に就くノカ、疑問も沸ク。
ミルルが我が国でどう対応しようか…連日、悩んでるラシイガ…。
同様のことが、オレが外へ行った場合も起きることは…予想も出来ル。
分化が違い過ギル、価値観が全く違ウ。

別に亡命する気が殆どねえが…しかし、ミルルがウルサイ。
どうすべきナノカ?
オレがまだ庶民で、食うに困る身分なら亡命も図ったガ…現在は食エテル。
別にそこまで外へ出るメリットがネエ…。
外では邪神教は猛烈に差別されてると言う噂もアル。
ミルルはこの辺が分かってねえラシイが…ミルルは世間に疎イ。
我が国では天然記念物と噂サレテル。

確かに記憶が飛んで、自殺未遂を図った自暴自棄もあったガ。
全く最近、致死の念もネエ。
薬も安定シテル。
色々あった事は認めヨウカ?
娘も死に家族も知らずに殺し…金は盗まれ、栄養に乏しく…暗黒時代が再来して・…。
しかし、今はそれも過ぎ去ッタ。
現在は生ぬるい仕事だが…。
これがまた命懸けの仕事にナッタ時には考えてもミヨウカ?
まあ、ミルルが将軍様へ頼み込んだ恩赦のお陰ダナ…。

ミルルはノアにも亡命をしたいか聞いてるラシイが…ノアも同じダロウ。
食うに困ったら、考えるダロウ…そう言うモノダ。
オレにとっては外の世界が謎だらけで…途中で頭痛しかけたガ…。
ミルルにとってもこの世界が不思議で仕方ねえのダロウカ?
住めば都ダ。
前はそこまで楽しくもネエとも思ったのも確かダガ…。
ミルルがココで暮らしていれば…別に亡命する意味があまりネエ。
現状で満足してる…正直、亡命するより…そっちの方が楽ダ。

まあ、ターシャ国や平和国が良い国だと言う事は認めてるガ。
どうせ、そっちへ行けば…ミルルだけ大成するに決まってる、オレが尻に敷かれる。
現在ですら、ソウダ。
あまり求めてる未来でもネエ。
ノリ気にナラネエ…。

☆☆☆

その時ダ、軍用に支給されてる携帯電話が鳴った。
ミルルには渡されてねえ…王宮用のオモチャトランシーバーしか手渡れてネエ。
お蔭でオレの方へは電話もかからネエ。
しかし、オレのは普通に繋がる。

件名が将軍様からと出た。
ちょうど…考えてる時に出るのも、アレだガ。
どうせオレとミルルを裂く話に決まってるのは…最近の経験からして知ッテル。
将軍様は猛烈にミルルを気に入ってるらしいガ…少し邪魔ダ。

ッチ…。

内心の舌打ちは胸に仕舞ウ。

☎【用件は何ダ?】

 声が低くなった、これがデフォルメだ。
最近、かなり丸くなったと部下から褒めラレテル…。
今日は確かにミルルへ八つ当たりもしたが…。
アレはミルルがオレの過去について責めたというノモアル。
過去は変えられネエ、今更言われたとこでオレも困るだけダ。

オレとしては売り春してた事や、スケこましをしてた過去はミルルには忘れてもらいたいのが…本音だが…。
今後、一切…その手の仕事は断ろうかとも思ってるが…。
もうスパイ活動するのも嫌になって来てもいるが…。
あのスパイ仕事には、別の奴に頼むように祈ってるが。
スケこまし班になりてえ奴らもいるらしいからダ。

で、今日の用件は何ナノカ?
ターシャ国や平和国からまたネットを通じて勧誘せよと言う依頼か?
内容によっては引き受けヨウ。
これが我が国での処世術ダ。
なるべく将軍様の命令には従う。
我が国での重罪は…将軍様への反逆罪、一つだけだからダ。

☏〈ゼロ、君へは任務を頼もうか?
 ミルルの母国、ターシャ国からミルルの返還金16億タ$が我が国へミルルと交換条件として、受け渡されることが決定した。
 
明朝、5時にはそこを出て…ミルルはヘリで、平和国ヴァカンス島へ輸送しろ。
 運転係は君に任せよう、君は去年頃にはヘリから爆弾を落とした経歴もある…出来るだろう?
 
ミルルの側近、ノアへは…後からボクが連絡する。
 どうせこの時間帯は寝てる筈だ、彼女には深夜にも研究レポを依頼してるからだ。
 
ノアには…君の監視役として一緒にヘリに乗ってもらおう…。
 君は変なことは考えるな。
 ヘリには監視カメラを他とした爆弾装置もある。
 まあ、ノアが監視するなら君が逃げることもないだろう。
 ノアは君に敵意があるらしいからだ。
 
それから、何故かミルルは君の命令にしか従わない…。
 不本意だが、君が輸送しろ〉
 
☎【御意】

一瞬、記憶が飛びかかったが…。
邪神会議内容はオレに知らされてねえ。
ミルルが異例なことに返還されると決まったラシイ。
これは前代未聞ダ。
いったい、我が国に飛んできて…何名、帰還されてネエのかは…。
数えきれねえほどだからダ…。
声は低いが…対応し切れてネエ状況ダ。

しかしミルルがここへ到着して翌日の朝礼で、オレだけ将軍様から直々に話されたことが脳裏に過った。



【初日の記憶】

〈キミには任務を与えよう。
 軽い任務だ、偽造貨幣の製造工場の監視員だけで今回は許そう。
 我が娘はキミを寵愛してるらしいからだ〉
 
【仕事はそれだけか?
 新派、旧派、異端派の制圧をしなくていいのか?
 戦地へは行かなくても?
 奴らは常に塩の利権について…オアシスの利権について戦争を続けてる。
 ココへ爆弾を仕掛ける可能性もアル。
 オレはブッ殺ス…。
 仕事をクレ】
 
〈キミは病み上がりだろう、キミに死なれると困るからね。
 あの子…ミルルから情報を頂く係としてキミを選定しよう〉
 
【フッ…。
 情報カ?
 何のだ?】
 
〈ターシャ国に関する情報だ。
 ミルルはボクの質問には答えないからだ。
 ミルルが一番、信用してる人間はキミらしい。
 ココは不思議でたまらないが。
 キミからターシャ国の情報を聞いてもらおう〉
 
【良イダロウ…】
 
〈しかし、体へは手出しするな。
 ミルルはキミが好きらしいが。
 良く考えてみたまえ?
 別にミルルとキミがくっ付いてボクに何の得がある?
 ハハッハハハ〉
 
〈あの子には身代金要求か、それか…他国への政略結婚としての貢物か。
 どちらかの線で行くつもりだ。
 クククク…。
 護身術はあのレベルで良い。
 むしろ、あそこまで上だと…もう十分だ。
 フフフフフフ〉
 
【ソウカ・…】
 
〈むしろだ。
 あれ以上、上がられると…ボクとしてはボク以上に武術が上だと色々使いにくいからね。
 アハハッハ…。
 ボクの首をあの娘が取りに来るとも限らない。
 どこにそれをしない保証があると言う?
 フフフフフ…。
 
キミには他の仕事を与えよう。
 しかし、キミは殺すつもりはない。
 キミが死ねばあの子は恐らくこの国に従わない筈だ。
 ククククク…。
 キミはそのために楽な仕事を与えようか?
 喜べ〉
 
【御意、オレは去ル。
 邪神国ニ幸アレ】
 
 
〈ゼロ…。
 キミはあの子の部屋で添い寝をしてるそうじゃないか?
 ノアから聞いたよ。
 フフフフフ〉
 

【チッ。
 ノアか、告げ口しやがったカ。
 しかし…何もネエ】
 
〈あの子が身持ちが固い子でボクとしては助かったよ。
 ハハッハハ。
 あの子は結婚するまで純潔でいさせよう。
 高値で売れそうだ。
 これはボクとしてとても機嫌が良い。
 さすが我が娘だ。
 そこは評価をしよう〉
 
【ハン?
 オレは任務へ向カウ・・・
 部屋に盗聴器があるってか?
 アァ?】
 
〈フフフフフ。
 葉っぱを掛けたが。
 あれだけキミへ懐いてたミルルと関係がなかったわけはそれしかないだろう?
 固い良い娘だ、そこは高評価だ〉
 
【チッ、娘自慢カ?
 ウッゼエ…】
 
〈おもしろいアクセサリーが出来た気分だよ?
 ミルルに関してはね?
 クスクスクス〉
 
【任務内容を話セ、手短にダ】
 
〈任務はね…比較的楽だよ?
 監視してるだけだ、偽造貨幣の製造工場のだ。
 これほど楽な仕事もないだろう?
 それに君の武力をもってすれば、全員従うだろう。
 割りと国家としては重要な仕事だ。
 特別待遇なのが分からないかい?
 
ジャシドンの製造へ向かわせてもよかったが。
 それとも大麻栽培工場でも良かったが。
 他にも邪神国号船の運搬屋や…。
 スケこましを他とする他国へのスパイ活動…麻薬の売り子…。
 それから他国から我が国への拉致引き抜き任務に…。
 全てにおいて…キミは優秀だ、非情に役に立つが。
 今は病み上がりだ。
 
キミへは貨幣工場の監視役を頼もう。
 あそこに強盗が入る可能性が高いからだ。
 我が国の偽造貨幣のレベルは今や、普通の貨幣と大差ない。
 これを狙う強盗集団すら、存在するのが証拠だ。
 
キミは暴れ足りないかい?
 ボクへ従えば、キミへは多大な報酬を約束する〉
 
【ハン?
 ウッセぇ】
 
〈キミは我が娘をどう思ってるんだい?
 これは興味だが〉
 
【我儘ダ】
 
〈そうだな・・。
 それには同意しよう。
 我が娘は威勢が良い…。
 それから気が強くたくましい。
 そこは…ボクは満足だ。
 クククク。
 前、死んだ奴とは大違いだ…。
 キミが見付けたヤツとはだ。
 骨がある娘らしい〉


【初日の記憶(終)】



 
一瞬、素早い速さで記憶がよぎった。
携帯電話から…まだ、将軍様の指令が続く。

アア…。
将軍様は有言実行な方ダ。
この線へ転ぶことも予想はシテタ。

☏〈平和国ヴァカンス島にはターシャ国の外交官がいるだろう。
 金だけ受け取って…ミルルは殺さず相手へ渡せ。
 
それから…。
 これから3年、君は手紙でミルルとやり取りをすることになるが、ターシャ国や平和国の情報を聞き出してこい。
 君が得意な分野だ。
 ミルルは君を疑おうともしないらしい。
 君にはこの線で行こうか?〉
 
☎【了解】
 
要するに、ミルルをスケこまして来いと言う意味だろうが…。
まあ、何回も似たようなことはさせられてた。
情報が我が国に必要ラシイ。
それは乗ロウ。
スケこます相手がミルルなら…まあ、任務内容として悪くはネエ。
フリならしようカ?

☏〈しかし、今回…ミルルへ手出しした件に関しては依頼外だ。
 情報収集しろとは依頼を頼んだが…、そこはボクは喜んでる筈もない。
 キミへはそれなりの処罰を与える気だ。
 ミルルはターシャ国へ返還されることが決まった。

 キミの亡命金のためにミルルは祖国を通じて20億タ$を稼ぐと宣言してる。
 キミは上手に手紙を送り、彼女から金を巻き上げれば良い。
 
まあ、ボクは別にミルルは殺す気になれなかった。
 キミはそれなりに罰を与えようか?
 どういう魂胆だ?〉
 
☎【うぜえ】

猛烈にウザい。
と言うか…バレタラシイ。
オレは表情にも出さなかった筈ダ。
大方、ミルルダ。
分かりやすい女だ。

それから…オレの亡命金まで稼ぐラシイ…。
ココは頭が点にナッテル。
オレは別に亡命する気にまだなってネエ。
 
☏〈まあ、今日は最後の晩餐としてミルルをもてなすが良い。
 ボクは悪いが、反対してる。
 ミルルは女帝の器がある女だ。
 この国から逃れられる筈もない。
 あれは…ボクの王家に入れるべき女だ。
 まあ、20億タ$の件に関しては、小さな課題だ。
 そのあとのことは知らない〉
 
☎【で、何すりゃ良イ?
 手短に話セ】

チッ…。

オレが望んでねえ展開へ突入したラシイ。
しかし、予想はシテタ。
初日に…将軍様はミルルをダシに、ターシャ国へ返還金を求めるとは宣言してたからダ。
 
☏〈どこまでも情報を探り止せ、ミルルを邪神国へ誘い込め。
 キミが説得すれば…ミルルは乗り気になるだろう。
 フフッフフフ。
 
キミはある意味、邪神国に貢献はしてる。
 しかし、今回はあまりおもしろくない。
 ボクのお気に入りのオモチャが汚された気分に近い。
 やってることは今までと同じだが…。
 ミルルは丁重に扱え、薬は売りつけるな。
 いちいちボクも言わないが、察するべきだろう。
 ボクは機嫌が悪いし、キミを処刑しても良いぐらいだが…。
 ミルルの手前、耐えようか?〉
 
☎【邪神国と将軍様に幸アレ】

いちいち言わなくても分かってるガ。
やはり、猛烈にヤリニクイ…。
精子バンクを介した父だからって…調子に乗り過ぎてねえか?
オメエ、ミルル…育てたことあるのかよ?
何様のつもりで、ここまで反対しやガル?
 コラ。

☏〈ミルルから誘うことはないだろう、固く慎ましやかな女性だからだ。
 キミは何を考えてる?
 ミルルをダシにこの国の頂点へ君臨するつもりかね?
 これは別に遊女へ抱く気持ちとも違うがね?
 ボクは手元にミルルを置いときたい気分でもあるんだがね…〉
 
☎【オレは任務に忙シイ】

やはり、ウザい…亡命すべきかもシレネエ…。
父親気取りし過ぎダロウガ…コラ。
チッ。
 
☏〈そうかい?
 君が何を考えてるかについてはサッパリ謎だ。
 これは周りの連中も同感らしいが。
 しかし、任務は忠実に守っていることだけは褒めようか?
 下手な薬を使わずとも、あの娘は君の虜らしい。
 情報を聞き出して来い、それまでは生かしてやろうか?〉
 
☎【有難キ御言葉…】
 
猛烈にウザかった…。
猛烈にダ。
将軍様から電話を切られた。

今の話で行けば…要するに将軍様はミルルへ手出ししたオレへ対して、猛烈に怒ってる。
情報を奪って来いとオレへ初日に依頼して…。
後からこの言いざま。
将軍様は自分勝手な御方ダ。
確かに初日に説明は受けたが…猛烈に、ウザい。



だいたいオレへ極悪非道任務を散々依頼しておいて。
どんな手を使ってでも情報を取れ、ノルマがある、麻薬も売れ…手が付かねえように殺せと言っておいて…。

いざ娘が非道人と一緒になると知れば大反対らしい。
この国、将軍様の反逆罪以外…。
全部、合法ダ。

おい、オレの友…ゼロの時は先天性エイズだと言って見殺しだったダロ?
しかし、考えてみりゃ…。亡き友、ゼロにも精子バンクを介する子だが、大金は渡してた。
その金のお陰で軍にもオレは入れたが。
まさか、将軍様は自分の子にだけは甘いのヵ?
しかし、サンミルはDNA判定で自分の子じゃないから処刑した癖に。
自分勝手な方ダ、あの方の思考回路は全く…解読不能ダ。
 
常通り極悪非道でいてくれれば、ミルルは情報奪ったあと薬を打って殺したふりして地下かどこかに監禁でもできると言うのに。
5つ子兄弟と同じ思考回路じゃネエが。
死んだふりして匿うのは常套手段ダロガ。
オレは確かに極悪非道で任務は完璧なばかりに遂行してきたで定評がアルが。
ノアが告げ口をしたに決まってる。
オレはミルルにどんな非道任務をしてきたか話したわけもねえ。

チ…。

面倒なことになって来タ…。

今まで将軍様は毎度毎度、悪のシナリオ通りに進ませてもらった癖に。
今回は怒ってるラシイ…。

ヤリニクイ、逆に…。
今回も非情になれば…良いモノヲ…。
今回に限ってナノカ?

☆☆☆

展開が突然な気がするが…毎度のことダ。
将軍様の指令は絶対ダ。
今日は猛烈に暗いかも知れネエ。
何も知らねえ5つ子兄弟は、帰宅のバス内部ではミルルのことについて今日も噂してやガル。
黄色い3階立てのバスが午後9時には水色の王族職員男性寮施設前に到着する。
バス内部も黄色の塗装ダ。
闇目に黄色は目立つだろう。

王宮庭園の空気は砂埃で濁ってる…窓からそれが分かる。
常のことだ。
男性寮前で手を振ってる全身黒装束の人間がバス内部の窓から見える…。
あれはミルルだろう。

最近、ヤット規則を覚えたのか…フードをするようになった。
そのせいで5つ子兄弟が落胆してるのは本人は知らねえダロウ…。
フードしねえのはヤッテもOKっていう意味だからダ。
連中はバス内部では今日も下ネタしか言ってねえが。
生理現象ダ。
別に許しテル。

 
 ☆☆☆
 バスから降りれば・…夜は35℃程度で日差しがネエ。
突風砂埃が吹き荒れてる。
歩けるレベルだ。
一番最初にオレがバスから降りれば…ミルルは頭にフードしたまま、抱擁してくる。

ミルルは明日の帰還話を知ってるのダロウカ?
一瞬、疑問も沸いたが…。
猛烈に嬉しそうな感じが感触から伝わって来る。
ミルルが着てる黒装束衣装のフードから覗く眼鏡の奥…黒い瞳は濡れてる。
ミルルに限って泣くこともネエだろう…この砂嵐、目が痛いだけなのだろう。
ミルルのまつ毛は邪神人と違い、砂嵐に耐えれるラクダ調のまつ毛でもねえからダ。
眼鏡は割りとこの国では高級品だ、良く似合ってる。
眼鏡屋のCMに出演するだけはアル。
ミルルの黒装束もオレと同じく風に揺れまくってる。


 
 《さあ、今からミルルとイチャイチャするわよ》
 
 【ウザ】
 
 ミルルは強引に手を繋いで引っ張って、王宮ロビーまで歩いて行く。
本当に積極的な女ダ。
これはバス内部でも全員から噂サレテル…。
ミルルは掌が小さい…それから白イ。
ミルルはオレよりか頭一つ分は低い。
それから華奢で曲線がある体躯なのは全身黒装束でも何となしに分かる。

☆☆☆

王宮の透明な玄関扉を開けば…王族専用1階ロビーだ。
ここは煌びやかな世界ダ。
温水プールにシャンデリア、巨大なテレビがある。
そこにエレベーターもある…館内が猛烈に涼シイ。
 
 《ゼロさん?
  暫くのお別れみたいね?
  それはとても悲しいわよ?
  ミルルのこと、忘れないでよね?》
 
 【ハア…】

知ってタラシイ。
溜息が漏レタ。
ミルルはずっとオレへ抱擁してる。
人肌の体温が黒装束越しに伝ワル。
今朝のことを回想した…つまらねえことで衝動的に当たったことをダ。
しかし、謝罪する気にナラネエ。
荷は重いが…陰鬱過ぎて対応しきれネエ。
 
 《まあ、悪いけど‥自信あるわよ?
  ミルル、絶対…ゼロさんを救い出してみるから?
  処刑なんてさせないわよ、安心して頂戴》
 
 【ウゼ…】
 
エレベーターが開いた。
ミルルの細い手がオレの掌に絡んできた。
細く華奢で体温が低めな手だ。
エレベーターの階数を見るためにエレベーター天井付近の表示ボタンを眺めた。
これは長年の癖ダ。

 《ゼロさん、何かあったら…ノアを頼って頂戴ね?
  頼んどいたから》
 
 【無理過ギダ】
 
 ノアは頼る気にもならネエ。
 
 《ミルルがいない間…。
  3年も開くなんて…。
  心配だわ…。
  ゼロさんのことがよ?
  絶対に自殺未遂なんてしないでね?
  処刑なんて絶対、止めてみるから…》
 
 【ウゼ…】
 
どういう話で伝わってるのかは知らねえが…。
オレは将軍様からミルルからオレの亡命金を巻き上げて、更にミルルから情報を引き出し…邪神国へ引き戻しに行くように依頼されてる訳で…。
オレへの処罰はそれなりにすると将軍様は今日、話してた。
オレの処刑は現状ではねえと願うが…。

〈情報を聞き出して来い、それまでは生かしてやろうか?〉

と仰ってた。

まあ、確かにこの国…将軍様の一言で決まる。
やはり亡命を真剣に考えるべきなのカ?
面倒くさいことになって来タ。

ミルルの一件で将軍様の怒りがオレへ向いてるからダ。
ミルル、育てた訳じゃねえのに…うるさすぎる奴ダ。
自分のことは棚に上げ過ぎてねえか?
あの方…何人、遊女囲ってるんだ?
言える身分なのか?
コラ。

精子バンクの父だろうガ…一度でも育てた経験あるのかよ。
ウゼ過ぎダロが…コラ。

チッ…。
今、一瞬…将軍様へ悪口散々、脳裏に浮かんだ…。
もう、オレはこの国にいれねえのかもしれねえ…。

因みにオレはミルル女帝説なんて御免ダ。
亡命したら好き勝手に生キル。
どういう話なのか…分からねえが…。
ミルルが去った後は、将軍様への御機嫌取りを徹底的にしなければならねえラシイ。
胃がヤラレル。
酒でも飲まないとやってられネエ。
要するにまとめれば…何が何でも引き離してえラシイ、将軍様ハ。

☆☆☆

最強に機嫌マックスに悪い。
エレベーターは6階に到着した。
ミルルはオレへ手を握ったままだ。
ここは良い…。

しかし…この流れにイラ付いてる。
エレベーターを出て、6階の長い赤色の渡り廊下を歩み続けた先・・
ミルルの暮らす棺桶部屋には、オレの友の墓もある。
その部屋の前、廊下で…泥酔して寝転がってる女に…またブチ切れ掛けた。

寄りによって、今日も邪魔する魂胆ラシイ。
この女もオレに邪魔しかしてこねえ。

ッチ…。

オレの目が座って…ドアの前で泥酔して…赤い廊下に寝転がってるノアを見据えた。
邪魔ダ。
ミルルさえいなければ…壁か廊下は蹴りあげるダロウ…。
この女とオレは本気で合わねえ。
 
 《ノア、まだ女性寮へ帰ってないの?》

 〔今日は何としてでも、ミルル様とゼロを引き裂きますわ?
  ミルル様、御考え直してくださいませ。
  ターシャ国へなど帰らず、女帝になって…。
  是非とも私をこれから先も側近に…〕

毎度毎度、オレの頭…切れることしか言わネエ。
地響きする声で眼だけ下を向いた。
 
 【帰レ、コラ】
 
 《二人とも喧嘩は止めて頂戴。
  ミルルは残念だけど…女の友情より男なの。
  ノア、サヨナラ》

ミルルはオレにベッタリ抱擁したまま、手を握ってる。
ここは機嫌少し治る。
最近…本気で丸くなった。
全員から今日も同僚に褒められた。
 
 〔ミルル様、酷いですわ?
  どこがいいんですの?
  こんな奴の?〕
 
 【チ…】

眼の下に隈が出来た。
女蹴るのは…ミルルの前ではしねえが…。
この女、嫌い過ぎてる…オレは…。
 
 《容姿に決まってるでしょ!
  ジャネ?
  バイバイ》
 
 ミルルは棺桶部屋の扉を閉めた。
ノアは扉の外で何かまだ言ってる。
不満がアルラシイ。
オレは幸運なことに…何故か不明だが…。
邪神人からは全くモテねえが…ターシャ人からはモテた。
ココは喜ばしきことダ。
この国の女、金でしか人間を判断しねえ。
オレは嫌いダ。

金で下剋上がアル・・オレは疲れテル。
既に7歳ぐらいですら…この国の女は全員ソウダ。
金ある人間にしか色目使わネエ。
金がなければ、女も買えネエ…全く可愛げがネエ。

その中でスケこまし班に入れられた時は、欲は満たせるし・・金は要らねえし、良しとしたこともあったが…。
アレに入るのも倍率があったわけで…通過出来て嬉しくもあった時もあったが…。
将軍様が頼むことは大抵…極悪非道を極めてる。
あの仕事はもう誰かに譲りテエ…。
アレに憧れてる奴らも何名もいるらしいからダ。

だいたい、この国の女はどうしてココまで守銭奴なのか…。
5歳児にして既にソウダ…DNAナノカ?。
その点、ターシャ人の女子高生はアホが多いが…オレはスキダ。
暗黒時代のことはオレですら記憶が飛んでる箇所もアル…。
もうミルルには忘れてもらいてえ。
それなのに…ノアが余計な情報しかミルルに与えネエ。



ゼロから見た世界1


目次

ゼロから見た世界3




さて、1話前の話が…再読してみると、ミルルは頭のフードをしてたということが判明して訂正しておきました;;。
ミルルが邪神国の規則についてノアから指摘を受けて頭にフードをしたのはゼロが置手紙をして去ってからそのあとすぐだったことに気が付きました。
あれ?
この場面、どんな映像だったっけと再読して発見しました。

日を開いて更新すると…いろいろ忘れることもあるので、つじつまを合わせるのが大変だったりしますね。

だんだん、頭がこんがらがって来て別視点で書くときに支障が出るので、とりあえずミルルが規則に慣れ始めた頃はいつだったのか確認しておきましたozu.

ゼロ視点はほぼギャグ要素がないのですが…次の平和国シリーズはほとんどギャグが中心になりそうな予感です。
今、どんな話にしようかとそっちの方のあらすじも考えてる途中です♪

いつもありがとうございます♪

それにしても…最近、大人っぽい話も書いてみたいなあとは思ってます。

うーん。

この世界観の話が終わった暁には、今度もジャンルを変えて、大人要素な話で行きたいなあとも思ってます。

毎回、ジャンルを変えるのが好きなので…。
まだ溜まってるネタがあるので、このゼロとミルルの方も番外後に続く可能性もあります。

平和国シリーズでは、タリアとマナナその後が出てくる予定にもなってるので、知ってる方は新鮮かもしれませんね。

では☆







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