アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

判決8

《ミルル視点》

いろいろ考えてるうちに、ミルルは寝てたみたい…。

ーーーピピピピピピーーーー


朝、4時50分を知らせるアラームが鳴った。
毎朝、定時に鳴るように王宮電話のアラーム機能でセットしてる。
この巨大黒色携帯フォンともミルルは今日でお別れ。

今日は8月23日。

ミルルがココへ来たのは…確か、7月11日にターシャ国を飛び出して…翌日の7月12日にここへ来た。
あれから実に1ヶ月少し…アッという間だった。
昨晩のエロが長くて…あまり寝てない…。
エロだけでエンドレスに時間が取られてる。


それから、猛烈に眠い。
昨晩、寝てない。
ミルルは寝不足にだけは弱いから…。

《寝ぼけてて…昨日の記憶が霞んでるんだけど…。
今日はミルル、普段着で帰るのよね?》

【ソウダ】

ゼロさんは既に着替えてる。
服をまだ着てない。
慌てて、布団の上にあった洋服を着た。
これはミルルが初日に着ていた桃色のワンピース…。
実はまだ持ってた。
寝る前に必死で用意した…。

今日はこれで帰った方が良いって昨晩、ゼロさんから説明を受けたから。
一応、説明は受けた気がする。
この後の段取りについて…。
でも、眠気も手伝い…昨晩の記憶が霞んでる。

《確か、ゼロさんがヘリの運転をして…ノアがゼロさんを見張って…。
ヘリの中にテレビカメラがあって…。
そんな話だったわよね?
平和国ヴァカンス島にターシャ国の外交官がいるから…。
ノアが外交官から札束16億タ$が入ったカバンを受け取ったら…。
すぐにミルルはヘリから降りて・・・えっと…。
ヘリから降りたら…絶対、ゼロさんやノアのことについて触れてはいけないんだったかしら?
えっと…》

【チッ…。
時間厳守ダ、グズグズすんナ。
急ゲ】

《分かったわよ。
ミルル、どうしても眠いときは記憶が飛ぶから心配で聞いてみただけよ。
いつも夜の9時から朝の5時はグッスリ寝てるんだから。
支度10分なの?
化粧は…》

【なしで良いダロ?
平和国ヴァカンス島でシヤガレ】

《分かったわよ…責めて、ヘリ内でするわよ。
ミルル、睡眠だけが弱点なのよ…。
ゼロさんと別れるのは本当に悲しいわ?
でも…少し眠気が来てるだけよ…。
邪神国、どうなることかと思ってたけど…。
ミルルは運が良かったみたいだし…。
割りとゼロさんとの仲も進んだ気もするし…、楽しかったけど…ただ眠いだけよ。
夜のお勤めさえなければ完璧なんだけどね?
あ、ゼロさん充てに昨日の昼に手紙を書いて…渡しそびれてたから…。
机の上にあるけど、今…取りに行くから》

【読むのは後で良イ。
服着たダロ?
外、出るゾ】

《もしかして…だけど…。
ゼロさんって短気なの…?
こう言う時は感動の別れが・・・》

【5時出発ダ。
5分前には庭に集合ダ。
チ…】

《分かったわよ。
ミルル…まだ迷ってるのよ?
ゼロさんに説得されたから、仕方なく邪神国から帰るんだけどね?
ゼロさんに説得されなかったら…今から反抗しに行く気だったんだから…。
帰るの嫌よ。
成功する自信はあるけどね?》

【ウゼ】

ゼロさんは急に怒りだして…ミルルが机の上に置いた手紙だけ、黒装束のポケットに入れたみたい。
その手紙…メモ用紙を折りたたんだだけだけど…、割りと便箋を手に入れるの苦労したわ?
図書館にしかメモ用紙なんてないんだから…。
どこにでも紙があるわけじゃないのね?
メモ用紙の質もわら半紙に近いわよ?
それから…字はイカ墨に近いインクかしら?
一応、邪神語で書いたわよ?


それから、部屋から扉を勢いよく、開けて…。
外へ出てしまった。

《待ってよ。
ちょっと…ミルルの話を少しぐらい聞いてくれたらどうなの?
また何か怒ってるわけ?
全く、分からないわよ!》

ゼロさんが寝室の棺桶部屋から出て行ったし…。
ミルルは仕方なしに…外へ向けて歩き出した…。
でも廊下にいない…。
6階の長く赤い渡り廊下を歩んだ先のエレベーターにもゼロさんがいない。
エレベーターの1台は下へ向かってるみたい。
ゼロさんはミルルを待たずに…エレベーターに乗ってしまったみたい。行ってしまったみたい…。

残された1台へミルルは乗ることにした。

ゼロさんは何だか…忙しいみたい。
ヘリのチェックとかしなきゃダメみたいで…。
王宮の庭にノアが待ってるとは説明を受けてる。
鏡の中に映るミルル…桃色ワンピは久しぶり。
だけど、スッピンだわ?
ノアから初日に盗まれた鞄、返して貰えたら…そこに化粧品も入ってるんだけど‥。
色々考えている内に、エレベーターは1階に到着した。

1階のロビーは天井がシャンデリア。
エレベーターの前には温泉プール。
それから壁面に大きなテレビモニター。
そこにNEWSが流れてる。

ーーー素晴らしき国家…邪神国に魅せられて、自ら名乗り出て来た偉大なる将軍様の娘…ミルル様が。
このたび、邪神国の更なる発展のために、諸外国で女優として働き…20億タ$もの金銭を邪神国へ寄付する目的で…、女優を目指すと宣言なさりました。
ミルル様は…ターシャ国では”眼鏡屋”のCMを他とした眼鏡ミルルと言う芸名の清純系アイドルで知られており…その衝撃の容姿はこちらですーーー

テレビモニターに眼鏡屋CMが流れてる。
ミルルがオレンジ色ノースリーブのワンピで青空の上、白い雲に寝転がって・・。
目元に赤い眼鏡をしてるCM。

ーーーミルル様は王宮内の美女ランキングにもトップ3に降臨しており…我が国としてはミルル様が去ることは誠に遺憾なのですが…。
ミルル様、ご本人が邪神国のために、諸外国で女優となって…20億タ$もの金銭を邪神国へ寄付するために働くと宣言なさりました。
今日はこれからミルル様、秘蔵映像をTVで流しますーーー

テレビの時報が4時58分を指してる。
ミルルはテレビ報道のすさまじさに一瞬、ポカーンとなってたけど。
これを見てる暇なんてない。
テレビモニターから背を向けて…王宮1階玄関ロビーを走り出した。
透明の玄関扉を開いた先に見えたのは…。
ノアが手を振ってる。

〔ミルル様、おはようございます!
遅いので、今から迎えに行こうかと思っていましたわ?
集合は朝の5時なので…〕

《ノア!
おはよう…。
全然、話が見えないけど…。
ミルルのパスポートを返して頂戴。
鞄も返して頂戴。
それから…スマホも…。
鞄の中に化粧品が入ってるのよ!

それから…手に何か…白い巨大な機械を…持ってるけど、それは何なの?》

〔ミルル様、残念ですが…。
パスポートだけはお返ししましょうか?
しかし…他は全て没収ですわ?
特にスマホにはDPS機能があるので…初日に木端微塵に大破しましたわ?
もうミルル様のスマホは…木端微塵級です

あと…今日持ってるこの機械は…。
札束を数える機械ですわ?

幅34cm × 奥行18cm × 高さ23cm
重量 8kg ・…結構重いですわ?
紙幣計算器とも言いますわ?
結構高価なんですよ、これ…128000邪$しますよ?

これは今日の必需品なので〕

《札束を数える機械…。
初めて見たわ…。
銀行とかで使ってる機械かしら?
8s ね?
持てないことないけど…≫

〔そうですわ?
電池で動くタイプです。
産後で大変ですが…。
これを持って…ヘリへ入りますわ?〕

《持ってる物が何か正体は分かったから良いけど…。

ミルルの化粧品ないわけ?
ミルル、今…スッピンなのよ?
これからTVに映るんでしょう?
嘘でしょう?
化粧品だけでも良いから…。
だって、一応…清純系アイドルなのよ!?
テレビではほんの少しでも実物以上に綺麗に見せなきゃ…》

〔えとですね…〕

《ノアは綺麗に化粧してるじゃない?
ミルルのスッピンを世界中に晒す訳には…。
これから何としてでも売って行かなきゃダメなのに…。
20億タ$を何としてでも…ゼロさんの亡命金のためにも稼ぎまくらなきゃダメなのに…。
どうすれば…》

〔ああ、ミルル様。
落ち着いてください。
私ので良ければ…ヘリ内部でお貸ししましょうか?
この黒装束衣装…中は全面ポケットなので…鞄として使えるので・・。
化粧ポーチなら、女性として身だしなみとして持ってますわ?
ヘリでなされては…?〕

《ノア、ありがとう!
で、ゼロさんは今…どこへ?》

〔そろそろでしょう…。
5時に、ヘリ庫からココへヘリを降ろしに来ますよ?

フワァ…。
ミルル様、御気を付けて。
ダメならもちろん・・今度は女帝としてなるために戻ってきてくださいね?
何とか全面協力しますからね?

昨日の電話では…将軍様はミルル様へ叱りつつも…女帝としてなることに歓迎的な気配があると私は読み取りましたわ?
ゼロのことは…将軍様もお怒りあそばしてますが…。
ミルル様については…非がない雰囲気を感じ取りましたわ?

まあ、ゼロの亡命金に関して失敗した折にはぜひ・・・邪神国へお戻りになられても…〕

《冗談止めてよ。
ブラックジョークでしょ?

将軍はミルルが邪神国へ戻ろうものなら…ゼロさんはすぐに処刑で。
ミルルの元へ処刑した写真を送って来るって話してたわ?》

〔ゼロに対しては将軍様もお怒りです。
ミルル様に対しては…処刑なさらないようですわ?〕

《帰る訳ないでしょう?
そんな状況で。
ミルルは根性でやり抜くわよ?》

〔それがですね…。
ミルル様が本気で失敗した折には…。
私がミルル様のために…ゼロを匿う件についてなんですが協力しても良いですわよ?
私には強力なコネがいますので・・。
牢獄辺りに知り合いのよしみで頼み込んでも良いですわ?

その代りの交換条件なんですが…。
その際は、絶対にミルル様が女帝になられた際には是非とも私を側近に…〕

《ノア?
それ、本当なの?
手伝ってくれるの?
助かるわ…。
ありがたいわ?》

〔まあですね?
良いですわ?
フフフフフ。
その代り、お礼は高くつきますがね?
フフフフ〕

《ノア…それにしても…知り合いなんて…牢獄にいるの?
誰なの?
牢獄に放り込まれてる囚人の誰かかしら?
それとも職員なのかしら?》

〔それは…。

アア、ヘリが来ましたわ?
この話はここまでで…。
ミルル様と私だけのこれは秘密の約束ですわ?

フフフフ〕

☆☆☆

ーーーバタバタバタバタバタバタ…ーーー

ミルルは頭上を見上げた。
ヘリが空を舞ってる。
かなりの音がしてる…。

ーーーバタバタバタバタバタバタ…ーーー

それから、地面にヘリが着陸した。
暗い星さえ見えない空に強い砂風が舞う。
ヘリは黒くて…いかにも軍隊のヘリって感じ。

〔ササ、ミルル様…乗って下さい?
私が乗りますから…そこに続いて。
後ろ座席が空いてますわ?〕

《ミルルヘリに乗るのは…初めてなのよ!
ゼロさんが運転してるの!》

〔館内は静かになさってくださいね?〕

☆☆☆

ノアが8kgの紙幣計算器を手に持ったまま…先に乗って。
ミルルも後に続いて…ヘリ内部を見渡した。

運転席でゼロさんが座ってる。
助手席、座りたかったけど…大きな黒い風呂敷包みがある。
ミルルはゼロさんの背後席に座って、ノアがミルルの隣。

ノアはシートベルトをして着席し、太ももの上に紙幣計算機を置いて、手で大事そうに抱きかかえてる。

ゼロさんの運転姿・・カッコいいし、痺れる。

《ゼロさん…。
運転、上手ね?
格好良いわ!
もう痺れるわよ!》

ミルルは立ち上がって歓声を上げた。

【ウゼ…】

〔黄色い悲鳴は抑えてくださいませ。
耳がやられますわ?
サ、ミルル様も座って…シートベルトを。

それでは…再度、ミルル様に説明いたしますわね。
私たちは頭からフードを被って…ミルル様の母国、ターシャ国の外交官から札束が入ったカバンを受け取り次第…。
ミルル様は決して何も語らず、振り返らずに…外交官の元へ走り出してくださいね?
コチラの情報を向こうへ渡す訳にはいかないので…。
ゼロとのサヨナラもここまでです。
その時にはゼロへは密着などはなされないように…〕

《じゃあ、今だけなの?
でも…ゼロさん…運転中でしょ?》

〔そうです。
つまり、今も黙っててください。
運転が失敗したら…私も海へ落下です。
静かにミルル様はこれから私が渡す化粧品グッズで身だしなみでも整えてくださいね?
分かりましたか?〕

《分かったわよ…。
ヘリの運転って…そんなに神経、つかうものなの?》

〔当たり前ですわ?
車の運転より事故が多いですからね?
輸送中に海へ落下事故なんて…笑えませんわ?
サアサ、ミルル様…。
邪神国製ですが…化粧品ですわ?
これ、ミルル様に進呈しますわ?
その代り、ミルル様の鞄の中にあった…化粧品はいただけますよね?〕

《良いわよ、別に…》

絶対、ミルルが持ってるモノの方が高級そうだけど。
ココはありがたく頂くことにした。
意外にチープコスメに見えるけど…。
割りとシンプルなのがまた良い。
ロゴがない黒い化粧品ばかり。
黒地に白い文字で”将軍様と邪神国に万歳”と邪神語で機械表記されてる。
邪神国の化粧品は…こんなものなんだと…。
目が点になった。

《これ、”将軍様と邪神国に万歳”って書かれてるけど…。
これは…。
えっと…。
そういうブランドなのかしら?》

〔そうですわ?
邪神美女ドルも使ってる邪神国では割りと超高級化粧品ですわ?
邪神国外では売ってませんがね?
品質は確かですよ。
邪神美女ドルも舞台化粧としても使ってますから。
カバー力も抜群ですわ?
私も常にこれですわ?
テレビの映像にもきっと生えますわ?〕

《そうなの?
変な顔料とか使ってない?
いかにも色が鮮やかで…ミルル、常はここまで発色が良すぎるもの使ってないから…。
海外製のは合うかどうか…。
このファンデ…ちょっとミルルの肌より黒い気が…》

〔大丈夫ですわ?
パッチテストも合格してますので…。
邪神美女ドルはミルル様もテレビで見たでしょうが…彼女たちもこれをつかってる筈ですわ?
なかなか邪神国では手に入らないのですよ?
これを持つのもステータスですわ?
ミルル様のお肌の色に会う化粧品はこの国ではありませんので…。
日焼け風メイクとして使ってくださいませ?〕

《そうなの…。
ありがとう…。
アイシャドウ、碧なのね…。
濃いピンクもあるけど…。
ここまで色のキツイのミルル…使ったことないわよ。
さすが外国製ね…。
ミルルの国ではナチュラル風メイクが流行ってるのよ?
ココの国は割りと褐色の肌にエキゾチックなのが流行ってるみたいだけどね…》

〔邪神美人はエキゾチックな遊女さま方のようにベールが似合う女性とされてますからね?
ダンサー化粧にも似てますが…?

しかし、将軍様の好みだけは理解できませんわ?
妃さま方の容姿を見るにつれ…どうも古典的なターシャ国の女性が好みみたいですわ?

知ってますか?
将軍様の部屋には置物として、日本人形や浮世絵画を飾っておいでですわ?
妃さま方のような容姿は…我が国では物凄く珍しいのですよ?〕

《ミルルも図書館の隣にある展示室で見たわ…。
イチ妃は…平安美人で、二妃は江戸の見返り美人ソックリだったわ・…。
ビックリしたわよ?》

〔それがですね…。
妃さま方は…将軍様の強い推薦で当時は"邪神美女ドル"に入ったらしいのですが…。
その時だけお琴の歌劇になったらしいのですが…。
現在の邪神美女ドルにあのようなタイプはいませんわ?

将軍様も古典的なターシャ国の美女は貞操が固いと信じておいでだったみたいですが…。
妃さま方が宦官を数名、囲い始めたあたりから…もう失望したみたいですわ?
現在は純粋なる若い邪神美人が良いみたいですが…。

あ…それから、これはパスポートですわ?〕

《戻ってきて、良かったわ…》

ヘリは空へ舞いあがり始めて、機内が揺れた。

《ゼロさん…えっと》

ミルルは後ろ座席にいる。
ミルルがゼロさんへ接近しようとして、ミルルのドレスを引っ張って…ノアが威嚇した。

〔静かにすべきです、運転が失敗すれば…笑えませんわ?〕

《少しぐらい、話しても大丈夫でしょう?
ゼロさん…ミルルのこと、忘れないで頂戴ね》

【ウゼ、静かにシヤガレ】

ヘリを前の席で運転してるゼロさんの背中から声がする。
このヘリ、4人乗りだし…。
ミルルがゼロさんの運転席の隣でも良いと思うのに…。
ノアがダメだとウルサイ。
ゼロさんの隣座席には荷物が置かれてる。
ミルルはゼロさんの背後席で、その隣がノア。

〔ミルル様、車と同じと思ってもらったら…困りますわ?
先日も…このヘリにちょうど…カモメが…ヘリのプロペラに絡まってですね…。
落下した軍人もいましてね?

割りと…左右見渡さないとダメなわけですよ?
理解してくださいませ?〕

《プロペラに…カモメ?
カモメなんて飛んでないわよ、邪神国には。
ねえ、あのゼロさんの隣座席に置かれた大きな荷物は何なわけ?》

〔あれはですね…。
もしもの場合の救命道具ですわ?
パラシュートと空気ですぐに膨らむヨットですね?
この海の下には鮫もいますので。
時々、ミルル様の食卓に上がった魚は…この邪神鮫ですわ?
白身が効いて割りと美味しかったでしょう?〕

《え…鮫なんて食べてたの…ミルルは…》

〔平和国ヴァカンス島の上空にはですね…。
それがウヨウヨとカモメが要るんですよ。
平和鳩とも呼ばれているみたいですが…。
これもよく夕飯で出てましたよね?
平和鳩の唐揚げは…軍内でも出ますので?
平和国に近付けば…これは手に入ります〕

《唐揚げは美味しかったわよ。
平和国でも食べれるわ?》

〔もう少しすれば…平和国鳩が飛んでる場所へ行きますが…その大群へ入るのは至難技で…。
たまに集団から乱れて飛び出す馬鹿な平和国鳩がいるわけです。
それにも運転中は気を配らなくてはいきませんね?

だいたい、ヘリは使わず…平和国ヴァカンス島へ行く輸送手段は…潜水艦が主なんですが…。
潜水艦、邪神号は…極秘でしてね?
ミルル様が暮らすターシャ国の外交官にその存在をバレル訳にはいかないのですわ?〕

《そうなの…》

〔ミルル様…私が話した情報は絶対に外交官へ漏らさないように…。
全てですよ?

ミルル様の体内には未だにマイクロチップが入ってますわ?
これは脅しではなくて、真実ですわ?
あと、このヘリの内部にも監視カメラがあるらしいので…。
今の会話も将軍様に筒抜けですわ?

しかし、別にこれぐらいの情報なら将軍様もお怒りにならないでしょう。
私は邪神国と将軍様万歳の忠実なる部下ですので?
ゼロの監視はしっかりしますわ!

これからもミルル様、私がこの国で優遇されるように祈って下さいね?

今日は…化粧品までミルル様に進呈しましたわ?
将軍様、この映像を見ていますか?
フフフフ。

それでは…ミルル様、お気を付けて〕

《ヘリにも監視カメラがある訳?
ミルル…見張られてるの?
将軍に…。

えっと、平和国のヴァカンス島の平和鳩ね…。
確かに見た目はカモメだけど…。
ここからヘリで平和国のヴァカンス島まで何分ぐらいなの?》

〔30分もあれば大丈夫ですわ?
10分で行けるコースもあるのですが…。
そこはちょうど…平和鳩の集団ルートにもなってて…。
カモメみたいな鳥たちが一斉に飛んでますので、そこを避けて動くでしょう。

いつもは救命道具なんてヘリに乗せずに飛ぶんですよ?
自爆テロなんてものは帰りのガソリンすら積んでいませんわ?
その方がヘリのスピードが上がりますからね?

今日はミルル様がいるからこそ。
将軍様が直々にゼロが運転する席の隣…助手席に大きな救命道具を進呈してくれたわけですよ?
ミルル様、将軍様に感謝なさってくださいね?
とても優遇されていますよ?〕

《ふうん…。
でも…あの救命道具が入ってるらしい黒い巨大な風呂敷包み…。
猛烈に邪魔だわ。
アレのせいで、ミルルは…ゼロさんの隣の席に座れないのよ?
将軍がしたの?
そうなの…》

ミルルはヘリから下を見た。
邪神国が小さく見える。
海は灰色に近い、あそこに邪神国名物ミール貝の養殖で失敗した死骸も散乱してるみたい。
空は邪神国を越えたあたりから急に澄み渡る。
砂が舞い上がってない空はこんなにも透明みたい。
まだ東の空には日が昇ってない。
星が煌めいてる。
邪神国の上空は灰色で星なんて見えなかったのに。

横をカモメに似た白い平和国鳩達が一斉に飛び交ってるのが、ヘリのフロントライトに照らしだされた。
泳げる距離に平和国ヴァカンス島と邪神国はあるとは聞いてる。
空から行くには…途中、鳥が渡るルートを避けなきゃダメらしい。

ミルルは急いで、化粧し始めた。
口紅やアイシャドウ、それからファンデーション。
まあ、どこの国でも変わらない。
意外に使えて助かってる。
ノアには感謝してるわ?

《ミルル・…ちょっと、太ったんじゃないかしら?
体重計に最近、乗ってないけど…》

鏡の中の自分を見て、答えた。

〔良いんじゃないですかね?
この国で太れるのは大した肝ですわ?
全員、ガリガリになって行くのが末路ですからね?
将軍様の御厚意に感謝しあそばせ?
ミルル様は本当にラッキーガールですわ?〕

《ミルル…。
平和国で女優として大成できるわよね?
きっと?》

〔でしょうね?
一応、将軍様も裏から手配して下さるようですね?
平和国に暮らす富豪家へミルル様が女優になる件について話すらしいですわ?
真実、話せば…ミルル様はこの富豪家へ政略結婚も兼ねて嫁ぐ話も出ていたのですがね?
強力なスポンサーにはなってもらえそうですわ?〕

《えっと…。
平和国人でも邪神国と繋がってる人もいるのね…》

〔世界中にいますわ?
割りと、マフィアやヤクザ絡みと邪神国は密接な関係がございましてね?
その他、凶悪犯罪者などは自らの場所を求めて…邪神教へ改心なされる方もいましてね?
フフフフ…。
まあ、極秘ですがね?〕

☆☆☆

アッと言う間に30分は流れた。
化粧して、ゼロさんの背中やヘリの窓から見える景色を眺めてたら…時間が流れてしまった。
ヘリから眺める景色…東の空から太陽が上がってくる瞬間は猛烈に綺麗だった。
海の近くだけあって…色が信じられないぐらい鮮やかで…。
空が一瞬、桃と紫や水色のマーブル模様で感動した。

《うわ、日の出だわ。
綺麗だわ。
ゼロさん、いつもヘリからこの景色見てるの?
それにしても…もしかして…あれが平和国のヴァカンス島かしら?
もう着いたの?》

【到着ダ】


〔ミルル様、シートベルトはしたままに…。
説明は覚えましたよね?
それでは…。
私が16億タ$の札束が入ったカバンを受け取りますわ?
ミルル様、もちろん…私が向こうの国の外交官が変なことを考えた場合は…。
庇ってくださいね?

将軍様、ヘリ内部に設置された監視カメラからこの映像を見てますか?
私、猛烈にこの国に貢献してますわ?
それにしても…監視カメラどこにあるのでしょう?
そこだけが謎ですわ?

それからヘリから降りたら…。
もちろん、ゼロには密着などなさらず…バイバイですよ。
では…まず、私から降りますね?〕

【オレは何すりゃ良イ?
ヘリ内部にいろってカ?】

〔ゼロは…まあ、外交官方が変なことを考えないように…。
拳銃を持って威嚇する係にしておきましょうか?
得意分野でしょうから〕

【チ】

ヘリが平和国のヴァカンス島へ降下するみたい。
場所は邪神国と平和国を繋ぐ海に面するヴァカンス島のビーチ。
まだ早朝で誰も泳ぎに来てない。

降下するときって飛行機が着陸する間際、味わう無重力な感覚にも似てる。
ジェットコースターが一瞬、下りる時に・・体が浮かぶ感覚にも。
ヘリはバタバタと猛烈な音がしてる。
ミルルはシートベルトはずっとしたまま。

《ゼロさん…お別れなのね?
猛烈に悲しいわ。
ねえ、ミルルと今…抱擁して頂戴よ。
ヘリ内部なら良いんでしょう?》

〔ミルル様、窓の外から相手のSP辺りが望遠鏡あたりで見てる可能性もあるので…。
もう終わりですわ?
ササ〕

ノアはミルルより、ヘリのドアに近い席にいる…。
大事そうに抱きかかえてた8キロの白い機械、紙幣計算機を手に持ったまま、ノアはヘリからすぐに降りた。
ミルルは後部座席から…一瞬、運転席にいるゼロさんの黒装束な背中を見てたけど…。
我に返って…慌てて、ノアに続いてヘリから下りた。

ヘリの外は平和国ヴァカンス島。
朝日に輝き、ヤシの木がどこまでも続く。
海が脇にある。
砂浜に降ろされた。
そこに…サングラスにタキシードを着た、外交官?らしき人がいる。

外交官と言うよりか…SPにも近いし…?
ちょっと強面。
その人の顔には…顔に傷がある。

[人質を解放しろ。
金なら用意した!
ここに16億タ$揃った鞄がある…]

鞄は数個ある。

ゼロさんも後に続く。
黒いタキシードを着たサングラスの人の後ろには…拳銃を持った人たちが複数いる。
それから…あの上下白スーツを着た茶髪ロングな巻き髪とつぶらで釣り目気味な瞳な女性は…ミルルのマネージャー、根性レポ子さん。
今日は…カメラを片手にマイクを持って報道しにココへ来たみたい。

それ以外にも報道関係も多数、来てるみたい。
凄い根性だと思う。
こんなところまで報道関係が来るなんて…。
予想はしてたけど…化粧しておいて、正解だった。
ちょっとファンデーションの色が合わないから日焼け風のメイクになったけど…。
頭がプリン頭になってるわ?
ここ1ヶ月強、ヘアカラーなんてしてないし…。
そんなことが脳裏に過った。

【先に金渡セ。
そのあと、人質解放ダ】

〔私に渡して下さいませ?
16億タ$あるか…。
今日持参した機械で数えてからですわ?
全ての話は?〕

ノアとゼロさんは頭から黒いフードを被って、目だけしか見えない状況。
ミルルは黙って、二人に任せる。

ゼロさんは身長180CM強いで黒装束衣装を全身着て、緑の瞳・・手に黒い巨大なライフルガンを持って、SPたちに威嚇してる。
ノアは身長がミルルと同じぐらいで165CM…全身、黒装束衣装に黒い瞳…手に8キロもの白い巨大な機械…紙幣計算機を持ってる。
ミルルは鞄も何も持たず…初日来た時に着てた桃色ノースリワンピと白い運動靴だけ。

相手の人たち…外交官やSPさんは全員タキシードで…。
黒い鞄を持ってる。

[分かった。
これで全てだ。
この鞄、全部…受け取れ。
変なことを考えるな。
人質を殺せば…こちらが攻撃する]

ノアが…サングラスに巨体と顔に傷を負ったタキシードの外交官から鞄を複数受け取ると・…。
ノアは段取りよく、紙幣計算機に鞄の中身全部を入れ…。
計算し始めた。

1万タ$札がいっぱい。
ということは…?
1万タ$が100枚縛られて…100万タ$になった紙幣が…160組みある。





















判決7


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判決9










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