アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

判決4

≪ミルル視点≫

朝食を食べ終われば、ノアが食器を片づけて退室する。
食器の返却が終われば・・・ノアは部屋に戻ってきて、政治のことも碌に教えてもくれずに、寝るだけ。
黒邪神パンはよほど、良いみたい・…。
夜は最近、あまり寝てないみたいで…。
ノアは愚痴ってばかり、楽しくない。

ノアが眠れば、今日はミルルは部屋を抜け出し…黒邪神パン2本を持って、5階の厨房へ走った。
厨房には褐色の肌にサンタクロースのような黒いフサフサの髭、太い眉毛…つぶらな瞳のコックがいる。
白いコック帽子とコック服が特徴的。

≪この黒邪神パンを料理に使ってください≫

ミルルは黒装束衣装に頭までフードを被って、顔を隠してる状態。
コックさんが瞬きをした。

黒邪神パンの黒い瓶には”ミルルへ将軍様から献上”とメモが張り付けられてる。

[ミルル様なのか?
いや・・。
これは高級酒だ。
俺ッチに良いのか?
料理に使ってもだ]

≪どうぞ…昼食が楽しみですわ?≫

[そうか、じゃ。
俺ッチ、頑張ってつくるからな。
ミルル様、ありがとう!
俺ッチ、ミルル様が女帝になれるように応援してるからな]

≪え…別に、ミルルは女帝になる気はないんだけど…。
ターシャ国へゼロさんと一緒に帰るつもりよ?≫

[そうなのか?
俺ッチ、寂しいな。
俺ッチはミルル様、女帝で良いな…。
ゼロは悪い奴だ、忘れるべきだ。
子守オオカミが子供殺したって噂まで流れてたからな。
最近は異常に大人しいが。
ノア大佐の薬が効いてるようだ]

≪助言はありがたいけど、ミルルはゼロさんのこと…。
信じてみたいのよ?
じゃね≫

[ミルル様!
黒邪神パンなんて高級酒、ありがとうな!!
俺ッチ、200万邪$も寄付されたんだ。
もっと、ミルル様募金に寄付するからな!!
本当にありがとうな!!
ミルル様は天使だ!!]

≪いいわよ?
ミルル様募金って何なのよ?≫

[あれ?
知らないか?
ノア大佐から言われたが…]

≪はあ?≫

[ノア大佐、ミルル様を救おうと必死だ。
妃様や遊女様がミルル様の命を狙ってるらしい。
ミルル様、気を付けた方が良い]

≪そうなの・・。
それは…情報ありがとう。
じゃあ、ノアが起きる前に戻るわ?
ミルル、一応…監視されてるみたいなのよ?≫

[俺ッチ、応援してるから。
俺ッチのこともこれからよろしく!
ゼロは諦めるように祈ってるからな!]

≪それはね?
ミルルは残念だけど…こう見えて、一途なのよ?
ジャネ?≫

[邪神国万歳、将軍様に幸あれ!]

コックさんは大喜び。
ミルルはやっぱり、あげて正解だった。

そのあと、6階の棺桶部屋に戻ってみれば・・。
ノアは黒装束衣装をまくって…腹を出して、ベッドの上で大の字で寝てる。
ノアの長い黒髪はベッドの黒いシーツへ流れ…口はポッカリと開いてる。
これではアラビア系美人も台無し…。
ノアはよほど、暑がりみたい。
〔女子寮が29度弱までなんてあり得ませんわ!〕って叫んでる。
一度、将軍様にも頼むべきなのかもしれないわね…。

ミルルはつまらないから、TVを付けた。
棺桶部屋には巨大なカラオケまで出来る薄型TVがある。
TVに映るのは…”邪神美女ドル”。

それから…。
TVのテロップに---ミルル邪神国歓迎祭記念歌劇---と題されてる。
大した演出だわ…。

知らなかったけど…この国にもアイドルがいるみたいで…。
遊女様達みたい。
地上波初の歌劇生放送と書かれてる。

遊女様達は歌ってる。
どこか懐かしいような民謡歌。

アラビアンナイトにも似た服装のベールをかぶった遊女たちがクルクル舞って踊ってる。
衣装が原色の水色、桃色、黄色、碧・…褐色の肌には鮮やかな化粧。
ペタンコのカラフルな靴で踊ってる。

舞台の真ん中に木でできた様な船がある。

その周囲を遊女たちがクルクル回ってる。

ーーー男の人は不思議。
戦争をすぐにしたがるでしょう?
女は船。
どこに進むか分からない。
進んだ先には何があるの?ーーー

ーーー大昔、男の人がジャシドンをつくった。
女の人が船をつくった。
男の人は不思議…すぐに戦争したがるでしょう?ーーー

ーーー私は船…。
どこに進むか分からない。
明日はどこへ進むのか?

海は波…どこへ行くのか…あの船は?
私はどこに進むのか・…。
月が空から落ちて来て…荒波があれて、海は蒸発したーーー

ーーー男の人は不思議?
私には分からない。
私の心が欲しいのなら?
走ってごらん?

私は船、どこに進むか分からない船。
欲しいのならば…どこまでも走ってごらん?ーーー

舞台には上から水色のライトで照らしだされ、背景には映画スクリーンのように海が映ってる。
天井から金箔が落ちてくる演出。

1番の歌は、割りとミルルでも共感できる。
途中で数秒のCMを挟んで…。
2番の歌が流れる。

今度は背景が夜空。
映画のバックスクリーンには流星群が映し出されて、遊女たちは床に寝転がり…苦しそうにもがいてる。


ーーーこの国の神様、ジャシンは…。
戦争大好きな破壊神ーーー

ーーージャシドン落せば、星が流れるーーー

ーーー地上の全てはジャシンのモノ。
私の心は貴女のモノ。
全ては…邪神のモノーーー

ーーー私は船。
どこに行くか分からない船。
私が行く先はジャシンの腕ーーー

ーーー邪神国万歳、将軍様に幸あれーーー


最後、褐色の肌にカラフルな衣装を身に纏った遊女たちは…舞台にある木の船へ、全員…飛び乗る。

背景に映し出される言葉は…邪神語で。
”邪神国万歳、将軍様に幸あれ”


☆☆☆

TVのCMは変わってる。

---悪こそ正しい…尊い…。
悪が罪だと誰が決めたのでしょうか?
自由とは…悪を許し…好き放題に生きる楽園のことを指します。
これを邪魔する偽善者こそ、真の犯罪者です…。
通報した方には…名誉を将軍様がお与えになります…。
電話は999ー999ー999へどうぞ---


こう言う瞬間、ここはやっぱり邪神国なんだって、ミルルも実感してしまう。
これを見る度にノアは信用してはいけないと学習はしてるわ…?
でも、最近…時々、気を許しかけるのも確かなのよね?

ゼロさんが何を考えてるのかは・・実はミルルにも謎。
ただのヤリチン男ではないことは信じたいの。

ミルルは棺桶部屋に幽閉されてる。
というより、王宮から庭園へ一度、徒歩で歩いたけど…。
昼間は歩けるようなものじゃなかったわ。
王族の間しか、ミルルは歩いてなくて…。

民間の軍は冷房が効いてない部屋だと聞くわ。
この季節は熱期休みで…休暇が長いみたいで…。

ここへ到着して初日、窓が存在しない兵士の職場へ行ったことは…本当に忘れられない。
猛烈に強風が吹き荒れて…暑かった…。

ミルルは毎日、冷房がガンガンに効いた部屋でいるけど。
一度、冒険ならしたけど…。
さすがに、脱出を昼間にする気にはなれないの。

幽閉されているとはいえ、ノアは昼間、寝まくってるわ。
監視も緩いし…外を散歩したいのは山々だけど、そんな気になれないのよ。

その時、TVでミルル歓迎記念祭りの歌劇を見ていたら…ノアが目覚めたみたいで。
目をパチクリとした。

〔あら?
私と同室の遊女様も出演してますわ?
ミルル様は…遊女様を見るのは初めてなんですよね?〕

≪そうよ?≫

〔この歌劇・…チケットを取るのが大変なんですよ?
一般でだいたい5000邪$、S級で1万邪$、SS級で2万邪$の歌劇ですわ?
伯爵家を他としたこの国の貴族が遊びに来てるのですよ?
きっと、最後には将軍様も映りますわ?
今日は生放送なのですね?
豪華ですわ…!〕

≪ノアは見たことあるの?≫

〔割りと面白いですよ?
遊女の皆様は連日、冷房が効いた歌劇で踊って…稼いでるみたいで…。
イチミル様の母、イチ妃と…ニミル様の母、二妃様を正妻とすれば…。
事実上では我が国の遊女は側室も同然なんですがね?
あの中で将軍様の実子を産んだ場合、正妻へ昇格する訳です〕

≪へえ…私は…この国で何をすればいいのかしら?
"邪神美女ドル"に入れる条件って何なの?≫

〔条件ですか?
うーん。
やはり遊女ってことですね?
踊りや歌などの一般教養を積んだ満17歳以下の処女が条件ですね?
割りとハードルが高いんですよ…?
あれはねぇ?
そこら辺は…ターシャ国のアイドルとは事情が違いますが…。
”邪神美女ドル”は将軍様の側近も兼ねての公募ですからね?
もちろん、歌劇を他としたPRガールという名目もありますが…。
ミルル様の我が国での処分については…連日の邪神会議で…揉めてましてね?〕

≪長くない?≫

〔割りと我が国では揉めることが多いのですよ?
フッ…〕

≪退屈だわ≫

〔…遊女の皆さまがミルル様をぼろ糞に貶していましてね?
お蔭で…私は夜、眠れませんわ。
フワァ。
これ、何時間ですの?
2〜4時間ですか?〕

≪結構、歌劇は華やかなのね?
今頃・…ゼロさんは、偽造貨幣工場の製造なんでしょう?≫

〔あら?
ミルル様、どこでその情報を?
将軍様は黙っていた筈ですが…〕

≪ミルルはね…有能なの?
舐めないでちょうだい≫

〔あまり、調べない方が身のためですよ?
藪から蛇が出て来そうですよ?
彼に関して言えば…〕

ノアはベッドでゴロゴロしてる。
黒邪神パンは人をダメにするお酒な気がしてたまらない。
1本100万邪$もするみたいだけど…そんなに美味しいのかしら?


☆☆☆

ミルルは超、暇な熱期休暇を送ってる。
その代り、いろいろな王宮の階へは遊びに行ってるわよ。
ノアが寝れば…隙を見計らって、情報収集をしまくってる。

因みに5階は涼しいけど‥。
もう4階からは冷房がない…。
1階のロビーと、5階から上だけ冷房があるの。
5階の厨房奥には…王族使用の図書館があるの。
ミルルはここでウロウロすることも多い。
本を読むのは楽しいわ。
割りと広い図書館で、棚がズラリと並んで…机もたくさん並んでる。

つかの間、現実が忘れられるし…この国にはジャシドンについての書物が多い。
ノアの方舟伝説まで揃ってる。
それから…5階には展示室まである。
そこにジャシドンの小型模型がある。
それ以外にも将軍の家族写真がある。

ミルルは…、この国のイチ妃と二妃を見た訳だけど‥。
確かにイチミルとイチ妃は瓜二つ…褐色の肌に平安貴族みたいな顔立ち、金装束衣装を身にまとってる。
二妃とニミルも瓜二つ…褐色の肌に江戸の見返り美人みたいな顔立ち、銀装束衣装を身にまとってる。
でも、将軍には似てない。

妃様はTV出演はない。
この国で顔なんて出してたら、遊女か…売春婦か、従軍慰安婦に間違われるとノアから説明を受けて・・。
ミルルは仕方なしに従って、現在・・・顔に黒いフードをして、全身黒装束で歩いてる。

ミルルは…父に似てると何故か全員から言われるけど…。
実感が湧かない。
確かにターシャ国では母親に全然、似てないと言われて…。
ミルルの母親はミルルが子役で稼いだお金で整形手術まで考えてたみたいだけど・…。
この国では全く逆のことが起きてるみたい…。

☆☆☆



☆☆☆

夜の9時になれば…やっと、外へ歩ける。
それから昼夜逆転も良いところ。
ノアは夜の9時頃まで寝てる。

ノアが言うには…。
庶民は、だいたいこの熱期休みでは…昼間に冷房をして寝て…。
夜から出稼ぎで働くのも多いって言うけど…。
ノアも昔はそうだったらしいけど。

確かに夜になると急に温度が下がって35℃前後になる。
気温の割に風が風鈴が割れるレベルの痛い風。
暑さは感じない。

夜の9時には…ゼロさんがバスで帰ってくる。
それが唯一の楽しみ。

灰色の砂埃が舞う、王宮の庭園へ走り…水色の王宮職員男性寮前でミルルは待ちぼうけをする。
体が訛りそうで仕方ない。
遊女の皆さまじゃないけど…。
ミルルも"邪神美女ドル"になってみたいかもとも思う。
だって、ミルルは女優を目指してたんだから。
頼めば、将軍はミルルを女優にしてくれるかもしれないけど‥。
それは余り気が進まない状態。

将軍の側室と仲間になるのも…悩むところ…。
それって、言い換えれば…実の父が複数囲ってる妾と一緒に働くってことでしょう?
一夫多妻制の国だからそういうこともあるとは理解してたけど…。

ミルルはお母さんからは実の父は精子バンクで…ターシャ大学病院の優秀なエリート大学生だって聞いてたから…。
今、失望してる。

☆☆☆

黄色い3階立てのバスが、水色に塗装された寮舎…王族職員男性寮前で停留する。
バスの1階最前列にゼロさんが着席してる。
前まで黒いカーテンが閉まってたけど、今はカーテンで閉ざされてない…バス内部に煌々と明かりが灯ってるのが、ミルルが現在立ってる場所…庭園の外から見 える。

バスから一番最初に降りてくるのは、長身の体躯に短く揃えられた黒髪…褐色の肌と緑の瞳が特徴的なゼロさん。
今日はこの不思議な緑の瞳について聞く気でいた。
ゼロさんは出発前に…帰宅したら、教えてくれると話してたから。

ミルルは抱擁して出迎えた。
今、ミルルは顔へ黒いフードはしてる。
この国の規則にも徐々に慣れつつある。

≪ゼロさん、おかえり。
待ってたわよ!
ほら、部屋に行くわよ≫

【ウゼエ…】

きっとゼロさんの次に下りてくる男性達は…順番からして…褐色の肌にサングラスとスキンヘッド、胸元に名札を掲げた5つ子兄弟。
実は本当に興味がない。

@[オラ、驚愕だっぺ?
二人は結局、どうなったっぺか…?
少し前までゼロはバスに黒いカーテンしてたべ?]

A[この待遇差は何さ。
ボクチン、悲しいさ]

B[ワイ、仲の良いカップルなんて見てたら潰したくなるサカイ。
ゼロのどこがいいサカイ?
ワイの方がずっといいサカイ?]

C[ミルル様。
目を覚ますケン。
そいつ、この国では有名なスケこまし班ケン。
オイラもスケこまし班に配属してみたかったのに…何故か跳ねのけラレタケン。
男は容姿じゃないケンよ?
中身だケン]

D[ミルル様が何故かぞっこんタイ。
結局、ゼロはヤリ捨てポイではなかったことは…門番から聞いたタイ。
ボカァにもまだチャンスは残ってるタイ。
早くミルル様も正気に戻るタイ。
ゼロの策略に落ちてるタイ。
見てられんタイよ・・]

常にこのノリ。
ミルルは男性連中から崇拝されることは慣れ過ぎてる。

それプラス門番さんの声まで聞こえる。
男性寮で暮らしてる門番さんは…バスの朝晩、停車時刻には一応、バス前の監視員にもなる。
この男性、常に頭に黒フードを被って…顔を隠してる、ミルルは素顔を知らない。

―――そうだ。
全く持って謎だ。
でも、昨日…ミルル様から直接聞いた。
まだ、ヤリ捨てポイになってないらしい…。
昨日は熱期の9時頃…50℃の中をミルル様、根性で全力疾走して…男性寮まで侵入してきたんだ。
凄かった…。

見てると、ミルル様が不憫すぎる。
なんとかならないものか…。
ノア大佐のミルル様募金と署名はしたが、心配はしてる。
いったいどうなることか…―――

ミルルはだんだん、外野席へ対してブチ切れ始めた。


≪うっさいわね。
ミルルがアンタたちになんて落ちる訳ないでしょう?
これからミルルとゼロさんのイチャイチャ、タイムが始まるの。
外野はうるさいわよ!
黙って頂戴。
ササ。
じゃ、ゼロさん…部屋へ行きましょう?≫

【ウザ…】

ゼロさんは短気なのかもしれない…。
意外に早口な気がする…。

ミルルは必死にゼロさんを強引に引っ張って、王族1階ロビーの室がある王宮の塔へ走り出す。
うしろから5つ子兄弟はまだウルサイ。

@[ミルル様・・ターシャ国では清純系アイドルで売ってたって本当だべか?
ミルル様はやっぱり女王様系キャラだべ?
オラ、あのSっぽいネコ目もたまらんっぺ?]

A[にしても…どこがいいさ。
どうせ、泣くさな?
ミルル様。
ボクチン、500邪$は懸けてもいいさ

5つこ兄弟、派閥も方言も違うさ、しかし…女性の趣味だけは同じさ。
ここは共同するさ]

B[ワイ、次の商売…考えたさかい?
ミルル様が1ヶ月以内に別れるかどうか…。
券を売り捌くサカイ。
で、稼いだ金で…ノア大佐のミルル様募金にはセッセとして…ミルル様の処刑は停止するサカイ。

お蔭でミルル様の秘密の毛が増えたサカイ。
これ、お守りにすればご利益ありそうサカイ]

C[スリーはさすが、西部都市出身ケンね?
常に商売ケンか?

まあ、ミルル様の隠し撮り写真は良かったケン。
次はゼロに泣かされてミルル様が別れる写真を…。
オイラも期待してるケン]

D[ボカァ…女性の趣味は謎タイ。
ボカァ、ヤツのどこがいいか謎タイ。
ボカァも…ターシャ国へ行けばモテるタイか?

5つ子トリオで、…歌って踊ってもてるグループ結成しタイ…。
グループ名は…”クインテット (quintet)”でどうタイか?
五人組や五重奏って意味タイ。
ボカァ、必死で…もてタイ…。

稼いで募金して…ミルル様の処刑は停止するタイ。
ミルル様、不憫タイ]


ミルルの背後から恨めしそうな声が聞こえるけど、完全無視。
ミルルはガッシリとゼロさんを掴んで、王宮の扉を開き…ロビーへ入った。
館内は冷房が効いてて…やっぱり涼しい。
ロビーには窓があって、外の景色も見える。
外ではバスからぞろぞろと男性寮へ人間が帰宅してる姿が見える。

≪ゼロさん…工場で夕飯は食べて来たんだよね?
ウフフフフフ≫

【チッ…】

ゼロさんはこの調子。
何故か、ミルルはウットリしてるのに…ゼロさんは機嫌が悪そうな感じ?

≪ミルルが処刑になるって話?
嘘でしょう?
なんか…後ろから聞こえてたけど…≫

【ウゼ、部屋で話す】

ゼロさんの声は低く、早口。

エレベーターの中でミルルは全身鏡を眺めれば、ゼロさんはエレベーターのボタンを見詰めてる。
何故かまだ距離感がある気がする。
これって…ミルルの気のせいなのかな?

ミルルはペッタリとゼロさんにくっついてる。
ミルルはイチャイチャ接近してるのが好き。
ゼロさんの肩幅、広いところが割りとツボ。
エロはそんなに好きくない。
癒される。

試しに、ミルルが・…
≪もうエロはしたし、こんなもんだって分かったから。
子供出来てもダメだし、結婚までしなくて良いでしょう?≫って言ってみたら…。
どうなるんだろう?

こうやって、ホノボノするのは好きだけど。
エロはまだ慣れない感じ。

エレベーターで背後からゼロさんに抱擁して尋ねてみた。

≪ねえ?
ゼロさんの瞳の理由…。
今、ここで聞きたいわ?
別にどこでも良いでしょう?
聞く場所なんて…≫

【ウザ、部屋でナ】

ゼロさんは…エレベーターのボタンしか見てない。
そのまま、エレベーターは6階へ到着して扉が開いた。
ミルルはゼロさんの手を掴んで…長い渡り廊下を棺桶部屋へと率先して進んだ。

ミルルより大きい手を掴むのは割りと好き。

棺桶部屋には廊下よりも冷房が効いてるから。
やっぱりここは暑いかもしれない。

ノアが寝苦しいのも分かる。
廊下の冷房は29度弱設定だと聞くから…。

棺桶部屋に到着して、ミルルは首からぶら下げた鍵で部屋の扉を開けた。
途端に冷風が吹き抜けて来る。
ミルルはここで、耐えきれず…頭の黒フードを外して、顔を露出した。
ミルルの腰まで伸びた茶髪が風に棚引いた。

暑すぎて、ゼロさんと手を握ってても…掌に汗が滲んでくる。
自然と声が出た。


≪アア。
涼しいわね…。
ゼロさん≫

【ソウダナ…】


部屋に入れば、冷房が効いた部屋でノアが寝てる。
床に転がってるのは黒邪神パンのボトル。
微妙にまだ入ってる。
ノアは水で薄めながら貴重に飲んでるみたい。

ミルルはゼロさんの手を離して、ノアへ接近した。
ノアは顔を真っ赤にして、寝ぼけてる。

≪ノア、ゼロさんが来たから帰って頂戴。
邪魔者よ。
今からミルルはイチャイチャするんだから≫

〔フワァ…。
ミルル様、騙されてるだけですってば…。
フワァ…今日はテレビで歌劇、豪華でしたわ?
さすが熱期休暇だけありますね?〕

【チ、コイツ…マタカ?】

ゼロさんは声が低くなった、相変わらず…二人の仲は悪いみたい。
ノアは寝ぼけ眼…対して、ゼロさんはミルルの背後で嫌そうな顔をノアへ送ってる。
ミルルには別にゼロさんが悪人に見えない…。

≪もう…≫

ミルルは肩で息を吐いて、黒いベッドで横たわるノアを背中に背負って…棺桶部屋の外、廊下へボトリと落とした。

〔今日もなんですか?
ミルル様…。
ファアア…〕

≪じゃあね?
ノア、おやすみよ≫

棺桶部屋の扉を閉めた。

ミルルには今日、ゼロさんに聞くべきことがある。

まず、ゼロさんの瞳…。

≪ねえ、ゼロさんの瞳、碧でしょう?
どうしてなの?≫

【アア…。
オレのダナ…父が平和国系ラシイ】

≪え?
ゼロさんって邪神人なんでしょう?≫

【母はソウダ。
父はオレが生まれてすぐに逃げたらしい】

≪逃げたってどういうことなの?≫

【認知せずに…逃げたってコッタ】

≪じゃあ、ゼロさんは苦労したの?
ゼロさんの家族ってどんな人?≫

ミルルはゼロさんに近寄った。
それから抱擁した。
やっぱり、男の人の肩に頭をうずめるの・…ミルルは好きかもしれない。
機嫌がとても良い。

【母はオレを政府へ売ッタ、そういうことで…。
オレは家族は知らねえ】

≪何歳で売ったの?≫

ミルルには話が見えない。
ゼロさんの瞳を覗いてみた…緑色が綺麗に光ってる…部屋のシャンデリアが反射してる。
色が微妙に変わる。

【生まれてスグだ】

≪この前…ちょうど8月上旬、熱期ぐらいに政府に拾わて、生まれたのは7月ぐらいって教えてくれたけど‥。
そう言う意味だったのね。
ちょっと、一瞬…頭が戸惑って…聞きそびれたけど。
それから…将軍様からもゼロさんは、庶民でではなく、政府に拾われた孤児って説明を受けた。
ノアからは…ゼロさんの情報…をあまり教えてくれなくて…。
今まで、ゼロさんには…直接聞きにくくて…ミルル、結構神経を使うタイプだから…。
変なことを聞いてごめん、ゼロさん・・。
気分、悪くなったでしょう?≫

【ソレヨリダナ…】

ゼロさんはベッドに腰かけた、ミルルはゼロさんに抱擁してる。

≪ミルルね?
ゼロさんがやっと、ミルルへ少し心を開いてくれて嬉しいの…。
そろそろ9時ね。
えっと、ミルル…処刑とか、5つ子兄弟が言ってたけど…。
あれは本当なの?≫

【ダリい・・。
そうならねえようには図ル】

≪ゼロさん、ありがとう。
優しいわ!≫

ミルルはベッドに腰掛けたまま、嬉しくてゼロさんに強く抱擁した。
ゼロさんもベッドに腰掛けたまま…ミルルの背中を撫でてる。

ミルルは大あくびをした。

≪ふわあぁ…。
もう、ミルルがいつも寝てる時刻だわ。
フワァ。
じゃ、寝ましょうか?
ゼロさん…≫

【寝ルノカ?】

≪えっと…ね?
ゼロさん…。
えっと…。
エロしたら、子供出来るでしょう?
困るのは女なの…。
だから、結婚するまで…エロは我慢しましょうって言ったら…怒るかなぁ?≫

ミルルは可愛く甘えてみた。
ゼロさんを怒らせると怖いことは前回で学習してるから。
ミルルはベッドに腰掛けて、ゼロさんと肩を寄せてイチャイチャしてる。
この瞬間は好きだけど…。
まだ、アレには慣れない。
ミルルのことが本気で好きなら、ゼロさん…耐えてくれないかしら?
と期待してる…。

ゼロさんの声が突然、低くなった。

【ミルル…】

≪ゼロさん?
なあに?
駄目?≫

甘えてみた、こうすれば…ちょっとは怒らないでくれるかなって…思って。

【別レヨウ】

≪ええ!!≫

ミルルの声が突然、裏返った。

≪どうしてなの?
ゼロさんは…ミルルのことが好きじゃないの?
好きなら、耐えてくれるでしょう?
どうしてなの?
ねえ‥・。
ブラックジョークよね?≫

【サヨナラダ】

ゼロさんがミルルの抱擁から跳ね退けて、部屋から出ようとする。


≪待って、ミルルが悪かった。
腹をくくるから。
ゼロさん…。
エロなんてね?
飽きるわよ。
そんなに急がなくても…別に結婚してからで良いんじゃないの?
いまどき、セックスレスな人…いっぱいみたいだし…。
別にミルルとしてはエロなんてどうでも…≫

【サヨナラ】

≪分かったわ、ゼロさんはエロが好きなのね?
ミルルはなくても別にだけど…。
耐えるわ≫

【ウザ…】

ゼロさんがミルルの握手から手を離そうとする。
ミルルは慌てた。

≪悪かった、怒らないで。
ミルル、ゼロさんのために走って来たのよ?
ミルルが慣れるから≫

【ウゼ…】

ゼロさんはミルルから一瞬、背を向けた。
ミルルは背後からゼロさんを抱擁した。
必死で逃げられないようにガン字ブロックはしたけど…。

これから、また昨日と同じことが始まるみたい。
動揺してる。

【ホラ、オメエがオレを好きなら…キスぐらい自分からシロ】

ゼロさんがミルルへ語りかけてる。
ミルルとゼロさんは正面を向きあって、座ってる。
ミルルはまだ慣れない、ちょっと怖いかも。

ゼロさんは止まって待ってる雰囲気。
ミルルは知らなかったけど…これは乗り越えなきゃダメな壁みたい。
ミルルは座ってるゼロさんの唇に軽いキスした。
これで終わって…眠れないのかと…また、逃げ腰になってる。

ゼロさんは静かにミルルを押し倒してきた。
電気が付いてるけど…終わったら、逆に楽になれるかなって思った。
ゼロさんがミルルの胸を舐めたり、吸う。
ゼロさんがミルルの性器へ舌を沿わせようとしたから…ミルルは止めた。

≪止めて、不潔だわ。
ミルル、そう言うところ…嗅がれるのはちょっと…ごめんだわ。
ない方が良いわ≫

【ソウナノか?
じゃ…指でだな…】


ミルルはエロ苦手かも…早く終わった方が楽かもしれない…。
でも、昨日したけど…ゼロさんは長い方が好きみたいで…。

【オメエはフェラは無理か?】









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