アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

ミルルC

≪ミルル視点≫

≪ノア!
起きて頂戴≫

ミルルはベッドを一回、蹴ってみた。

ノアはお腹を出したまま、飛び起きた。


〔あら?
ミルル様…帰って来られたんですか?
フワァ…〕

ノアは大あくびをした。

≪ゼロさんに関する情報が入ったわ!
フフフフフフ。
ミルル、嬉しいわ!
有頂天よ!
のろ気てやりたい気分だわ!
ホホホホ≫

〔ミルル様、上機嫌ですね?〕

≪ゼロさんはね…≫

そこでミルルの声が小さくなった。
少し、悲しくて涙が出かけた。

〔どうされたのですか?〕

≪ミルルのこと…好きかしら?
ミルルはどうして、ゼロさんが好きなのかしら?
時々、理由が分からないの。
ううん、常にだわ。
それなのに…。
何故か走りたくなるの。
どうすれば良いのかしら?≫

〔彼の情報なんて碌なことしかないでしょう…。
まあ、私は反対しますよ?
ミルル様…きっと、悪い情報が入ったんでしょう?
御気を確かに…。
ミルル様はちょっと固すぎると私も思いますわ?
きっと、ショックだったんでしょう…。
ゼロの情報が…〕

≪そう言う意味じゃないけどね…。
何やってんだろうって自分でも思って…。
ミルルは何やってるんだろうって時々、おかしくなってくるわけ…≫

大きく溜息を吐いた。

〔はあ。
ミルル様のそういう面はまあ、新鮮ですね?
邪神国では。
ターシャ人ってみんなミルル様みたいなんですか?〕

≪どうかしら?
そう言えば・…ライバルの大和ナデシコって女子も・・。
それから難波カンサイって女子も…。
ミルルと好みがソックリだったわよ?
唯一、ミルルと全く合わない女子…異能マナナって子だけは。
好みが似てなかったみたい…。
キセキさんって言うイケメンを振って…全然冴えない無口な目立たない男子と交際を始めたの。
ミルルには何が良いのかサッパリ…。
アイツの感性は謎なの≫

〔そうですか…。
ターシャ人でもいろいろいるんですね?
私…ミルル様には悪いですが・…。
異能マナナって子と合いそうですわ?
だって、ミルル様の感性に私、全然…付いていけないので…〕

≪冷たいわね?
別に良いわよ?
ミルルは。
付いて来なくて…≫

〔そうですか…。
本気でミルル様といると新鮮生物を見てる気分ですわ。
天然記念物と邪神国では言われてること、ミルル様はご存知ですか?〕

≪ミルルはね?
ターシャ国では現実主義で通ってるのよ?
そんなこと、言われたことないわよ…。
う〜ん…。
でも・…異能マナナはどうかしら?
奴は変人よ?

オカルト大好きだから…。
ノアとも違う性格だわ…。
現実主義を通り越して、全く奴はいちいち…ミルルと何もかもが正反対なの。
嫌になってくるぐらい…。

奴こそ、本物の天然だとミルルは思うけど…。
因みに馬鹿だから、勉強はテンでダメなの…。
猛烈に抜けてる女子よ≫

〔そうですか…。
ミルル様と正反対な異能マナナについて…私は少しは興味沸きますね…。
オカルトですか…。
オカルトは…私もちょっと…。
私はリアリズムなので。

馬鹿ですか?
勉強がダメなんですか…。
それは…この軍内にはいませんね?
みんなそれなりに優秀な人材で揃ってるので。
この国には馬鹿は早死にするというコトワザまであります。
生きるのが本当に大変すぎる国なので…〕

≪そうよね・・。
それは理解したわ。
将軍に拾ってもらえるかどうかで…命運が別れるって意味でしょう?≫

〔そうです。
勉強を介さずやって来た遊女ですら、王宮に上がるとなれば…一般教養は踊り読み書き…それ以外にもマナー、琴などの稽古事はほぼ完ぺきです。
一回でも間違えれば…尻叩きの刑なので…。
割りと軍は厳しいです〕

≪そうでしょうね…。
言っとくけど、ミルル以上に異能マナナは変わってるわよ。
まあ…この国では死ぬでしょうね‥。
体力自慢なミルルですら…熱中症になりそうに何回もなってるから。
ミルル、体力だけは自信があるタイプなんだから≫

〔そうですか…。
私は邪神人で邪神国しか知らないので…ハッキリとは言えませんが…。
ターシャ人って不思議な人種なんですね?
ミルル様が私には変わって見えます。
それ以上に変わってらっしゃるんですか?
その異能マナナって女性は…。
ミルル様、よく…その女性の悪口を私に言いますが…〕

≪ミルルは変わってないわ。
ターシャ人代表って感じだわ。
異能マナナが変わってるのよ≫

〔そうですか・…。
ミルル様が代表・・。
それは…ターシャ国って凄い国なんですね…。

私は基本、金でしか人間は判断しないと決めてます。
恋愛と言うモノは所詮、偶像ですわ?
この国全体そう言う雰囲気ですが…。
ある意味わかりやすくてココは暮らしやすい国ですわ。
全員が個人主義の塊ですが…。
割りとストレートに分かりやすいので〕

≪ミルルもね?
この国の感性は理解できないわよ。
悪人推奨主義でしょう?
偽善者は牢獄でしょう?
ミルルは偽善者って言うの?≫

〔ミルル様は偽善者でしょうか?
割りと個人主義の塊に近い面もありますよね?
手段を選びませんし…。
やはり、時々…将軍様にも似てる面があると思うんですよね?〕

≪そうかしら?≫

〔ミルル様はとにかく聞き分けが悪い。
自分のことしか考えてらっしゃらない。
まあ、私も同じですが…。
忠告しましょう…ゼロは止すべきです。
ミルル様が泣くだけですよ?〕

≪うるさいわね。
ミルルのお母さんみたいなこと、言わないで頂戴。
最近、ノア。
口うるさいわよ≫

〔フフフフフフフフ…。
まあ、私なりの忠誠心ですわ…。
ホホホホホホ〕

ノアは大あくびをした、それから布団にもぐりこんだ。
ミルルは溜息を吐いて、本を読むことにした。
邪神教の聖書。
ここに確かに…古代兵器をも防げる防空壕を…大昔、邪神人が作ったって載ってる。
邪神教の聖書も割りと面白い。
ターシャ教の聖書とは全く違う感じ。


≪聖書≫


ーーーターシャ教聖書引用文ーーー


目録1項:ターシャ泉の神童について:

ターシャ泉の神童は…正当な血統者のみで構成され…18歳を満期とする。
泉の巫女様は正当な血統から選ばれる方で…18歳にその役目を下ろされる
ミサ儀式神殿から続く場所に異世界への扉があって、泉の妖精様は異世界から生まれた…神様が作成した半漁人。
泉の巫女様は神に仕える神童……泉の巫女様こそ世界の救世主、神の怒りを収める存在とされる。
泉の巫女様は…神様が人間と不思議な魚を…人体実験したうえで失敗した時にできた人種から別れた…泉の妖精。
泉の巫女がミサに来なくなれば…邪神が村を襲うだろう…。


ーーー邪神教公式経典(邪神教聖書)引用文ーーー

目録1項:邪神とは:

ジャシンは聖地ターシャ国から自ら欲したことを行い…結果、迫害を受け…聖地から阻害された。
追報された先に向かったのが…枯れ果てた大地、邪神国だ。
ジャシンはそこにいる民を耕し、自らの帝国を構築した。

ジャシンは死後…生き返り、神様になる。
名前を改名し、邪神と呼ばれる存在に変貌する。

邪神は…即ち性悪説を唱え、破壊神である。

人間は元来、汚れ悪に満ちた存在で… 性悪であることを全く理解していない。
真の犯罪者とはそれを隠して生きる偽善者を指し、これこそが人間ならざる存在だ。
人間から時々生まれる凶悪犯罪者…あれこそ人間の本能のままに生きた結果の姿だ。

偽善者と悪人とでは…全く、別人類である。
悪人こそがが未来人類であり…偽善者こそ、自由な秩序を行動するについて阻害する邪魔な存在で…廃絶すべきだ。

女はナンパして落とすべし、利己主義に基づいて銘々各自、生きるべし。

邪神人が残した最後の遺産がある、世界を1度で壊滅させるジャシドンだ…設計図は邪神国王宮地下に眠る。
邪神はこれで人間ならざる存在…所謂、偽善者を抹消させようとお考えだ。

核をも防げるノアの方舟…これは聖地ターシャー国の地下に眠る。

ここに邪神から選ばれた人間が残れば良い。
邪神は常に時を伺ってる、いつか邪神は聖地…ターシャ国を求めて走るだろう。




ミルルは聖書なんて読んでると眠くなる。
いつもは昼寝なんてしないのに…眠気が襲う。
だって、ミルルは現実主義。
オカルトや宗教には全く、興味がない無信教者だから…。
宗教戦争ほどアホらしいって感じることはない。
全く理解できない。



☆☆☆

その日の晩、ノアとの夕飯を終えると…夜の9時になった。
ミルルはこの時間を待ちに待ち望んでいた。
ミルルはノアに言われた通り、顔にフードをして外へ出かけた。
この国では顔を出す女性は売春婦と間違われるみたいだから…ミルルは全くそんな気ないから。

もちろん、ミルルは夜の9時になれば…。
水色ペンキで塗装された建物…王族職員男性寮の前に停留する黄色い3階建てのバスを待ち伏せした。
熱期は朝の5時出発、夜の9時帰宅の送迎バスに乗って仕事へ向かってるみたい。
それから…今朝の身を張った調査で門番さんからゼロさんは現在、スパイ活動やスケこましはしてなくて…。
偽造貨幣製造工場の見張りをしてると情報を得た。

送迎バスの中に…ゼロさんがきっと乗ってるから。
番号順に降りてくるんだと思う…。
ゼロさんの席がどこなのか…ゼロさんと寮が同室仲間…ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブって名前の5つ子に聞いた。
この5人組…突然、予想外に5つ子が生まれたから親も驚愕し、地方へ里子に出された兄弟らしくて…訛が酷いからミルルも発音が聞き取りにくい。
全員がサングラスにスキンヘッド…褐色の肌で見分けが付きにくて…特徴が薄い。
黒装束衣装の胸元に辛うじて名札があるから判別が付く男性5人組からも情報を得てる。
5人兄弟から、今朝、得た情報によれば…このバスは…寮の番号順に乗るみたい。

ということは…ゼロさんは最前列。

言われてみれば・・・毎回、ゼロさんが最初に降りてた。
今日も一番最初に降りてくる筈なのに…。
信じられないことに頭からフードをしたまま、全くミルルの方すら見ずに…水色ペンキで塗装された建物へと入って行った。
ミルルが抱き付こうとするのを猛スピードで跳ねのけて…男性寮へ入って行く。
ミルルは慌てて、ゼロさんを追いかけて男性寮へ侵入しようとした…。
でもその時、今朝、出会った門番さんにストップとミルルが着てる黒装束のポンチョを引っ張られた。

門番さんも常に頭にフードをしてる。

≪離して頂戴!
ミルルはゼロさんに話があるの!
門番さん、頼むわ≫

―――ミルル様、この先は男性寮なので・・。
ご遠慮くださいませ。
ゼロのことは諦めて…―――

≪ゼロさん、聞こえてるんでしょう?
返事ぐらいしてくれたら、どうなの?
ミルルの何が悪いって言うの?
どうしてなの?
反応すらせずに逃げるなんて最低よ!
ちょっと話し合いをしおうって気にはならないワケ?
酷いわ!!
ゼロさん…!
酷いわ!≫

このあとすぐ、ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブって名前の5つ子兄弟に絡まれる。

≪うるさいわね!
ミルルは機嫌最悪なの!
声掛けるのはあとにしなさいよ!!≫

背後を振り返って、邪魔な5つ子兄弟へ向かって、ミルルは地面を足で一度蹴り…。
それから白目を向いて睨んだ。

5つ子兄弟は急にミルルに対して謝罪し始めた。

@[申し訳ねえっぺ]

A[ゴメンさ]

B[悪かったさかい]

C[許してケンよ]

D[すいませんタイ]

ミルルは後ろは見捨てて…前を向いて、大声で叫んだ。

ミルルは5つ子兄弟は押しのけて、男性寮へ侵入するために頑張る。

≪ゼロさん!
ミルルが悪かったなら…。
謝るから…。
お願いだから、帰って来てよ!!
ゼロさん…。
ミルルが悪かった…。
謝るから!!≫

ミルルは号泣した。

慰めて来るのはどうでも良い男性連中。
フードで顔を隠した門番さんと。
褐色の肌にサングラスとスキンヘッドの5つ子兄弟。
6名の男に慰められたところで…魅力6倍になんてならない。
ただ、失恋の痛みが…苦しいだけ。
何でなの?
今日もまさか…酔っぱらいのノアと添い寝な訳?
ミルルは何のために邪神国まで根性で走って来たの??

絶対、神様なんてこの世にいない。
ミルルは無信教を貫く。
酷過ぎる。
現実は残酷!








これが実に朝晩…一日、2回…。
一週間も続いた…。
ただごとではない。
今は…8月20日になろうとしてる。
もうミルルは疲労困憊…最近、あまり寝れない…ショックすぎて…。
ノアへも、さすがに愚痴り始めてる。

≪ミルルの何が悪いって言う訳?
ミルルはちょっと、寝坊して…ノアが部屋を汚したけど…。
空の酒瓶を捨てずに寝てしまっただけなのに…。
掃除をサボっただけなのに・・・。
ゼロさんはもう、ミルルとは会話すらしてくれない…≫

〔まあ…。
ミルル様・・。
失恋なんてそんなものです。
メンタルがやられてる人間は話になりませんわ?
諦めて、これから先も…私と夜は添い寝で・・。
お蔭で私は今年の熱期…最高の贅沢が味わえてます。
ミルル様にはとても感謝してます。
きっと、お礼として・・・ミルル様を女帝へ仕立てることに全力、注ぎますわ…〕

≪ミルルは女帝になる気なんてないから・・・。
はあ・・。
何のためにミルルはここへ来たのかしら?
このまま終わらせても良いのかしら?≫

〔どうなさったんですか?
まあ…。
失恋は痛いものですが…。

”時が解決する”
これは我が国にあるコトワザですわ?

”別れたら次の人”
これも我が国にあるコトワザですわ…。

あと…。
”馬鹿は早死にする”
これも我が国に流れるコトワザですわ…?

ミルル様、もう諦めになられた方が…〕

≪ミルルは諦めないわよ!
今日は泣き落としは無理だったし…。
最終手段を酷使する気よ?≫

〔最終手段ですか?
フワァ…。
私は冷房の効いたこの部屋で寝さしてもらいますよ。
産後は授乳も出て、栄養が取られるので・・。
今年の夏はここまで優遇されるなんて…。
ターシャ国へ残してきた我が子のことを一瞬、考えますわ…〕

≪じゃ、行って来るわよ?
もうそろそろゼロさんが職務寮へ帰ってくる時間だから≫

〔好きにしてください。
もう私には付き合いきれませんわ…〕

ミルルは棺桶部屋でゴロゴロと眠るノアを捨てて、廊下へ出た。
ここ1週間…ずっと、これが続いてる。

ゼロさんはまるで芸能人か何かのように…顔をフードで隠して…。
ミルルへ全く発声すらしてくれない。
ちょっと酷過ぎる。
すぐにバスから走り去る…それが実に1週間も続いてる。
でも、ミルルは諦めない…今日こそミルルは頑張る。

☆☆☆

夜の9時…ミルルは王宮の庭園に走る。
真っ暗な空に遠方からやって来る黄色い3階建てのあのバスには…最前列にゼロさんが座ってる。
今日もバスの窓は最前列だけ黒いカーテンが閉まってる。
良い根性してる。

ゼロさんってもしかして…ミルルが泣いてるのを見て喜んでる性格最低人間かもしれない。
ちょっと酷過ぎる。

王宮全員がミルルの味方になってる。
その癖、ミルルとゼロさんの恋路には誰も協力をしてくれない。
ミルルは自分の力で解決する。
ノアを頼っても結局、何もしてくれない。
引き離そうと躍起になってるだけ…それをこの一週間で学習した。

黄色い3階立てのバスが、闇夜に…水色に塗装された王宮職員男性寮前で停留する。

ミルルはすかさず、バスの前に立つ。
泣き落としは…この1週間、頑張ったのに…ダメだった。
となるとアレしかない。

ミルルは最終手段に持ち込むことにする。

ゼロさんらしき人が…頭にフードをしたまま…一番、最初に降りようとする。
地面へ着地する前にミルルは叫んだ。

抱擁する前に走り去るから。

≪ゼロさん!
ゼロさんが何を怒ってるのか、ミルルは分かったの!
先月はゼロさんの誕生日だったんでしょう?
だから、ミルルは誕生日プレゼントしても良いわよ!≫

これしかない気もした。
これで合ってるのか謎だった。

ゼロさんが止まった。

合ってるのか謎だけど…。
ミルルはとにかく叫んだ。

≪ここでは話が出来ないわ!
さあ、ミルルと一緒に部屋に行きましょう。
もちろん、ノアは廊下に出すから・・。
今日はノアが出て行ってもらった後…。
部屋の掃除もして…空の酒瓶も捨てるから…!
えっと…。
もちろん、頑張って寝ないから。
昼寝を少しだけしといたから!
ゼロさん、帰って来てくれないかしら?
ミルルの元へ!!

頑張って掃除もするから!!
ミルル、綺麗好きだから!!≫

ゼロさんが止まってる。
今しか、チャンスがない。
ミルルは実に1週間ぶりにゼロさんへの抱擁が成功した。
ゼロさんはフードはしたまま、大人しくミルルに抱擁されてる。

≪ゼロさん…ありがとう。
許してくれたのね?
ササ、ミルルと一緒にお部屋へ行きましょうよ≫

【ウゼエ…】

実に一週間ぶりに聞いた言葉。
ミルルは涙が出る急に感動をした。

≪あれから1週間…。
全然、恐怖で寝れなかったの。
ミルル、ゼロさんがいないと寝れないの・・。
悪かった。
ミルルが悪かった…≫

【ウゼエ…】

ゼロさんはおとなしくミルルの腕の中にいる。
ミルルは正解に至ったみたい。

さっそくこのまま、ゼロさんとイチャイチャをして…。
部屋にいるノアには廊下へ出て行ってもらって・・。
そのあと、床に散乱した空の酒瓶は掃除をしなくてはならない。

ミルルは大変。
ミルルのダーリンは物凄く、手が掛かる人みたい。
そこは知らなかった。

でも、ミルルは頑張る。

≪ミルルね…。
ゼロさんの広い肩幅やこの手…大きいでしょう?
好きなのよ。
触ってると癒されるの。
だから、もう逃げないでよね?
今回は…酷かったわ。
一週間も…≫

ミルルはずっとゼロさんと肩を寄り添って、王宮の1階玄関ロビーまでついた。
ゼロさんは黒装束フードをしたまま、ミルルがゼロさんのフードを引っ張って、顔を出してあげた。
ゼロさんの顔…実に1週間ぶりにミルルは見てる。
相変わらず、格好良い。
ミルルの好み。

ミルルはとても機嫌が良い。
今日こそ安眠が出来そう。

でもその前に掃除だけはしなきゃダメ。
片付けられない女は最低だって…ミルルのお母さんもミルルへ躾けてた。
だから、今日は少し眠くても頑張る。

≪ゼロさんが帰って来てくれて嬉しい。
ミルル…もう、やせ細るかと思った。
凄くつらかった。
寝にくくて…≫

【ソウカソウカ…】

誕生日、プレゼント…。
何にすれば、良いんだろう?
そこがちょっと疑問に感じてる。
まさか、やっぱりアレしかないのかと・…。
そこはミルルはまだ逃げれないかとちょっと怯えてる。

上手に逃げられないかしら?
例えば…ミルルがお酒を飲んで、ゼロさんには誕生日プレゼントはお酒ってことにして…。
ミルルはそのまま、寝て…。

いろいろ・・・ ミルルはこの期に及んで、悩んでる。
まさか…ゼロさんが怒ってるのってそれなの?
とは…。

ちょっと逃げ腰。
まず、掃除をする。
いろいろ考えてると…エレベーターが6階へ到着した。

ゼロさんとミルルは仲良しこよし。
肩を並べて、6階の廊下を歩いてる。

≪ゼロさん…。
ミルルのこと、どう思ってるの?≫

【怒ッテル】

≪え?≫

【ドウデモ良い、鬱陶シイ】

≪そっか…。
仲直りできると良いね?
ミルル、今日はグッスリ眠れそう…≫

【アア?
エットダナ…】

≪ゼロさん…。
帰って来てくれて、ありがとう≫

ミルルは嬉しさからゼロさんの頭を撫でてみた。
髪が柔らかい。
やっぱりこれも癒される…。
ゼロさんは前のように、来るもの拒まずな性格に戻ってくれた。
嬉しくてたまらない…。

☆☆☆

そこで、棺桶部屋に到着した。

ミルルの部屋には墓がある。
それから、カラオケ専用の巨大なテレビ。
あと…6畳はあるベッドがある。

黒いシーツが敷かれたベッドにはノアが寝てる。
また酒瓶が転がってる。
これはまるで1週間前と同じ光景。

☆☆☆

≪ちょっと、ゼロさんがやって来たんだから…。
悪いけど、ノアは廊下に出すからね≫

〔フワア。
私もココで一緒に添い寝をしても?
あら?
ゼロ、帰って来たんですか?
今更じゃございませんこと?
フフフフフ〕

≪もう…。
邪魔者は退散させるんだから、ミルルは!≫

酔っぱらいのノアは褐色の肌を真っ赤に染めて、長い黒髪はベッドの黒いシーツへ垂らして、半分涎を垂らして寝てる。
よほど、冷房が効いた部屋が好きみたいだけど…。
ゼロさんとイチャイチャするのに邪魔でしかない。
ミルルは背中に背負って…棺桶部屋のドアを足で開けて、でんぐり返しでノアを廊下に出した。

〔ミルル様、冷たいですわ…。
私が廊下で暴漢に襲われたら…ミルル様、悲しいでしょう?
ミルル様の味方は今や、私だけですのに…。
あの暑い寮へ帰れとおっしゃるのですか?
私は病み上がりなのに…。
体調がすぐれないと言うのに…〕

≪冷房29度弱ぐらいなら大丈夫でしょう?
女性寮へ帰りなさいよ。
ミルルは1週間ぶりにゼロさんとイチャイチャタイムを楽しむんだから≫

【ハア…オメエ、ウゼエ…。
冷房耐エヤガレ、コラ。
オレはノアと添い寝はゴメンだ、コラ…】

〔同感ですわ。
私もゼロと添い寝なんて嫌ですわ。
ゼロが男性寮へ帰ったらどうですの?
いったい、何の用事なんですか?〕

≪ノア、悪いけど…。
ミルルは喜んでるの。
ゼロさんが帰って来てくれて。
じゃあね?
ノア・・おやすみ♪≫

〔この世は不条理ですわ。
私だけ廊下に出されて…。
ゼロは囚人だったと言うのに…涼しいお部屋で一晩眠れるなんて・・。
あんまりですわ・…〕

ノアは廊下で文句を言ってる。
ミルルはノアには悪いけど、部屋のドアは閉めた。
これで更に冷房も効く。
それからゼロさんとイチャイチャだって出来る。

ここからは前回、ミルルがしなかったこと。
ミルルは床に散乱してる空の酒瓶を片付け始めた。

≪もう信じられないわ。
部屋で泊まるのは良いけど‥。
酔ったら、酔ったでも…。
ゴミぐらい片付けなさいよね?
ゼロさん、ごめんね?
前回は気が付かなくて…≫

ミルルは必死で空の酒瓶を拾ってる。

【チッ…。
別二】

ゼロさんは舌打ちを一回した。

≪あれ?
掃除に関して怒ってるんじゃないわけ?
ううん…。
でも、片付けるわよ?
ちゃんと、ゼロさんにもプレゼントなら用意したわよ。
ミルルは…≫

【ソウカ…】

ミルルは空の酒瓶を全部、ゴミ箱へ捨てて…。
それから立ち上がった。
机の上にあるお酒は…黒邪神パン…。
超高級酒らしい。
ノアが話してた。

ノアにはあげたけど…思えば、ゼロさんにはあげてなかった。
不平等だった。
ミルル、鈍かったかも…。

≪はい…。
ゼロさん?
これ、ミルルが将軍からいただいたの?
ミルル、未青年だから飲む気はないんだけど…。
祝い酒らしくて美味しいみたいで…。
ノアが猛烈に喜んでた。
1瓶はノアにあげたけど…1瓶はゼロさんにあげる。
ミルル、飲まないから。
1瓶100万邪$らしいの…。
この国にしかないお酒で…高級みたいだよ?≫

【黒邪神パンか…】

ミルルはベッドに横になった。
ゼロさんは机の前に立ってる。

≪そうよ?
ゼロさん、飲んで…?
ミルルは先に寝てるから≫

【オレは帰ル】

≪え…。
待って、ゼロさん…。
冗談よ。
ブラックジョーク。
飲むの見てるから。
ゼロさんにあげるわよ。
この酒、ノアが狙ってたけど≫

【酒はドッチでも良い。
他にアルだろ?
ホラ…ウスノロが】

≪え?
だって、一瓶100万邪$よ?
ノア、絶叫してたわ…。
きっと、これ飲めば・・ゼロさんも薬がなくても安眠が出来るはずよ…≫

ゼロさんはノアから処方された睡眠薬がないと寝れない体質みたい。
ミルルは不眠症なんて無縁だったけど…。
さすがにここ1週間は一日4時間ぐらいしか寝れなかった、ストレスで…。
今日は掃除するために昼寝を3時間もしてしまったけど、連日の寝不足で寝たりない。
ミルルは基本、規則正しい生活を心がけているから。

【将軍様カラカ?
黒邪神パン何本貰ッタ?】

≪3瓶…。
まだ、あと2瓶残ってるから…。
ミルル飲めないのに…。
どうしたら…≫

【ハア…。
コックにでも渡せ。
料理に入れて貰え】

≪え?
勿体無いわよ。
だって一瓶100万邪$よ?
ミルルは飲む気ないけど…≫

【きっと、料理が上手くナル筈だ。
飯が上手い方が良イ。
全員、そう思ッテル。
その黒邪神パンは…妙薬ダ。
飯をうまくする…魔法の妙薬ともサレテル。
飯が不味い邪神国での秘薬ダ。
将軍がオメエにそれを渡した気も分かる…】

≪そうなの?
これ…料理と一緒に食べるとおいしくなるの?
知らなかったわ≫

【ミネラルや糖度が高い酒ダ。
菌も多い・・。
調味料としても最高級二ナル。
幻の酒ダ】

≪でもお酒でしょう?
勿体無くないの?
高級よ?≫

【オメエが飲めねえなら…意味もねえ。
栄養の足しにもならねえ。
コックに渡せ、料理に入れろと命令シロ。
オレからも恐喝スル…。
勝手に飲まねえようには見張る。
邪神国の貧民なら…酒瓶1本で年収にあたる地酒ダ。
オメエが飲まねえなら意味もネエ。
点滴にも勝る酒とサレテル】

≪そんなありがたい酒だったの…。
どうしようかしら?
これ、ゼロさんにあげる気だったのよ?
誕生日、プレゼントに…。
1本はコックさんに渡して…。
1本はゼロさんでも良いんじゃないの?≫

【その酒、飲んだら…すぐ寝る酒ダ。
そう言う効果もアル。
今は要らねえ】

≪そうなの?
そう言えば…ノアも最近、寝てばかりよ?
そっか…≫

ミルルは悲しくなった。
せっかくの誕生日プレゼントを断られたから。
ベッドで横になった。






































 

 










 



















ミルルB


目次

ミルルD






黄色い3階立て送迎バスと、
水色の王宮職員男性寮


↑5つ子兄弟





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