アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

ミルル@

≪ミルル@≫

ミルルには分からない…。
ゼロさんがどうして、ここまで…ミルルを拒むのか…。


☆☆☆

ゼロさんは一昨日の朝突然…ミルルが暮らす棺桶部屋の机に置手紙を置いて、逃げて行った…。
8月11日…。
その日の早朝4時30分頃、ミルルが寝ボケ眼でゼロさんなら部屋から見送った。

≪今日はミルルがターシャ国を飛び出して、1ヶ月目だわ…。
ミルル、ゼロさんと仲良くなれて嬉しい、ありがとう…。
お仕事頑張ってね、応援してるから≫

こんなふうに挨拶した。
ミルルは何も失言なんてしてない筈。

それなのに…。
机の上には…。

【旅ヘ出ル。
サヨナラ。
他に良い男、見付ケロ】

って手紙…。
気が付いたときには唖然とした。

そのあと、ミルルは職場から王宮へ戻ってくる送迎バス停留所の前で、ゼロさんの帰宅を待ち伏せして…。
ミルルと添い寝をしてくれるように深夜頼んだ。
でも、逃げられ…一昨日8月11日はノアと一晩、添い寝で明かした。
その日はショックで全く寝れず…徹夜になった。

昨日8月12日は早朝5時、バスが出発する時刻も…夜9時、バスが帰宅する時刻も…。
ゼロさんを待ち伏せして、行きと帰りの両方、尋問した。
根性で…なんとか…ミルルはゼロさんと一緒の部屋で寝ることに、昨晩…成功した。

それなのに…。
今朝、衝撃的な台詞をミルルはゼロさんから告げられた…。

【永久にサヨナラだ】

思い出すたびに胸がおかしくなって来る。
ショックすぎる。
もちろん…ミルルが暮らす棺桶部屋から去って、朝の送迎バスへ飛び乗るゼロさんを…ミルルは決死の思いで追いかけた…。

でも、ゼロさんはミルルの前に姿を現さない…。
何がどうなってるのか分からなくて・・・混乱し始めてる。
ミルルの何が悪いって言うの?

☆☆☆

今日は8月13日…今は太陽すら昇り切らない暗い早朝…朝の5時。
水色ペンキで塗装された王宮職員男性寮から…朝の送迎バスが出発して、ミルルの前から去っていく。
送迎バスは3街立てで…黄色い目立つバス…その窓にゼロさんの姿が見えない。
黒いカーテンで見えないように閉められてる。

ミルルはあまりのショックに呆然と王宮の庭園に立ち尽くして、涙がボタボタ流れた。
最近、涙腺が弱くなってる気がする。
自宅で泣くことなんてないけど…失恋って痛いみたい。
何故かしら?
こんなに悲しい気分になるのは…。

キセキさんの時も実は学校ではキセキさんを蹴りまくってるのに。
家で、暴言を吐くことだってあったけど…。
寝る前になれば、泣くこともあった。
悔し涙って言うけれど…。
枕がいつも涙で濡れてた…ミルルは完璧な筈なのに、全然…何故かうまく行かなくて…。

今、また悔し涙が出てる。
ミルルは悔しい。
それから怒ってる。

ミルルの何が悪いって言うの?
全く意味不明。

ミルルとしては充実した毎日を送ってるつもりだったのに…。
頭が真っ白になる。

これは分からないから…。
もしかすれば、ミルル一人では難しい問題なのかもしれない。
仕方ないから、頼りたくはないけど…共通の知人、ノアを頼ってみようかと考えてる。
ちょっと、ショックすぎる。

ミルルは真面目な筈なのに…。
何故か常に男から逃げられる運命にあるみたい。
その理由が全く謎すぎる。

全然、興味のない人からは猛烈にアタックされるのに…。


<バスが去るまでの出来事≫

今日、初めて会話したけど…。
ゼロさんとは違って、ゼロさんの相部屋仲間らしい…ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブって名前の男性から猛烈にミルルについてバスが去るまではずっと 質問攻めだった。

☆☆☆

@[ゼロに振られたっぺか?
またバスの前でゼロを待ってるべか?
オラ、イチミル派だべが、ミルル様は興味あるっぺ。

オラ、ワンって名前だっぺ…どうだべか?
オラたち…全員…サングラスにスキンヘッドで個性ねえって言われるべが…。
実は一卵性5つ子だべ?

昔な、オラたち生まれた時、両親が生まれ過ぎて驚いてな?
全員…遠方の私学寮で育ってるべ?

軍に入って、兄弟全員再会できて、同じになったが…オラの家、割りとエリートだべ?
お蔭で方言あるべが…兄弟だべ?]

A[そうさ。
再会したサ…。
派閥別々だけどさ…。

ボクチン、ツーって名前さ。
ニミル派だけどサ‥。
ミルル様、可愛いさ。

ボクチン、実家…邪神国で塩売ってるさ。
邪神国の超高層山で、塩取ってるさ。
割りと邪神国では裕福な庶民さ]

ワンもツーも両方とも同じ顔、スキンヘッドに褐色の肌、サングラス。
でも…。
超高層山についてはミルルも聞いたことがある。
ノアから初日に説明を受けた。

自然の山羊がそこで生息してるって。
超高層山は邪神国一標高が高い山で、この場所よりずっと涼しくて…塩湖があると聞いた。
ただし、真水がないから…人間はオアシスがある…首都で暮らしてるって話。

山羊はそこで海水を飲み、そこでは巨大な塩が取れるって。
そこで5つ子兄弟の両親は働いてるらしい。

B[ワイはスリーさかい。
実家が働く超高層山にはサボテンもあるサカイ。
よく軍事寮で出てくるサボテンの野菜、実家が出してるサカイ。
ワイの実家、邪神国に滅茶、貢献してるサカイ。

ワイが着てる黒装束の名札にBって打ってあるさかい、分かるか?

ワイ、サンミル様派やったが…死んださかい、ミルル様の仲間になってもええサカイ。
あ、ゼロは諦めるサカイ?

これは兄弟5人とも意見一致してるさかい。

ゼロとは寮で5人とも同室やサカイ。
アイツにも今、全員で説得してるサカイ]

C[オイラ、フォーやケン。
いやあ…兄弟5人、育ちは違うし…派閥は違うケンが・…。
再会してみたら…好みの女性は全員一致したケン…?
これはオイラとしては、困るケン…。
血は争えないケン。

オイラ、別に無所属だから、ミルル様、女帝でも良いケンし…。
それから、別にオイラの嫁になっても良いケンよ?]

D[まあ、ゼロは諦めるタイ。
去年まで兇悪子守オオカミっていうアダ名まであったタイ。
いろいろ悪い噂ばかり流れてるタイ。

因みに〜・…。ボカァ…ファイブって名前タイ。
無所属タイD
きっと、これからミルル様と縁があるタイ。
ボカァ、癒されタイ]

ミルルも聞いた。


≪ゼロさんは…バスのどこの席なの?
一番前の席…窓に黒いカーテンがしてるけど…あの席なの?≫

@[オラ、1階2番目の席だべ…?
オラが見送るさ。
バスの中から手を振るさな?
ゼロは諦めるっぺ?
どうせ、寝てるべ?

じゃ、バス出発の時間だべ。
乗るっぺ〜。
手を振ってるべ、オラ!]

A[ボクチン、1階3番目の席さ?
急ぐさ…もう出発さ!
窓から手を振るさ]

B[ワイは1階4番目サカイ…。
急ぐさかい、手を振るサカイ。
よろしくやさかい!!]

C[オイラ、1階5番めケンよ?
走るケン。
バイバイって、手を振るケンよ?!
バスの窓からミルル様のためにするケンよ]

D[ボカァ…1階6番めタイ。
あれ、基本…寮の部屋番号順タイ。
ミルル様。
アイツ、忘れるタイ。
ボカァも手を振るタイ。
お見送りヨロシクタイ]

≪そうなの…。
情報、ありがとう…。
ハアアア…。
さよなら。
ゼロさんに…よろしくね?≫




バスが去るまで絡まれてたゼロさんと寮が同室らしい5つ子兄弟の姿を思い出して、ミルルは溜息を吐いた。
この国って、数字を元にした名前が多いみたい。
全然、全員…ゼロさんに似てない。
顔は・…囚人施設勤務のネズミチュウ太郎ほど不細工ということもないけど…ゼロさんとは別格。
スキンヘッドにサングラスと褐色の肌…黒装束に名札が打ってあるだけ、個性すらない。
ミルルはこんなタイプは嫌、もっとイケメンが良かった…。
ミルルは容姿最優先…ネズミチュウ太郎よりマシだけど、もうゼロさんとは別格。
5人同じ顔で並ばれたところで…魅力値が5倍にならない、ゼロさん一人でミルルは良い。

全然、心に響かない。
それからキセキさんともレベルが違い過ぎる。
ミルルはどうしても顔面偏差値が低い男性は無理。
ミルルはモテるし、選べる立場にある筈なのに…。
何故か、ミルルが恋い慕う男性からは常に逃げられる運命みたい。

ここまでスポコン根性で走って来たのに。
こんなことになるなんて…もう頭の前が真っ暗で。
今、悲劇のヒロインになって来そうな気がスル。
ミルルをここまで困らせるゼロさんは只者じゃないことは理解してる。

何故、ゼロさんがミルルから逃げたのか…。
ミルルには全く、分からない。
何を言ってたのかも不明過ぎる。
ようするにゼロさんは体目当てだったらしい…。


≪今朝の回想≫

一昨日は徹夜で…まだ眠いと言うのに…。
ミルルは早朝4時半に起きた。

その時の会話…。

【オレは…エロするまでは付きあってるって認めねえ。
そう言う人間ダ】

≪冗談でしょう?
え?≫

≪そんな不潔だわ。
エロなんてしたら、困るのは女なんだから…。
それならミルルはやっぱり、ゼロさんと友達で良いわ。
で…いつか、時が来たときに恋人になるってことで…。
だめよ、エロなんて…不潔だわ≫

【サヨナラだ】

≪え?≫

【他を当たれ…】

≪ちょっと待ってよ…。
そんな…。
でも、友達として、これからも一緒に添い寝してくれるでしょう?
ゼロさんの中では添い寝は友達なんでしょう?
ミルルはそれで良いわよ≫

【もう、友達も終わりダ】

≪ええ…。
そんな…言ってる意味が分からない…。
じゃあ、何なの?≫

【永久にサヨナラだ】

≪そんな…冗談でしょう?
だって、ここは王宮で…ゼロさんも王宮にいるんだもの。
すぐ会えるわよ。
ミルルが根性さえ出せば、すぐに走って行けるから。
それとね…ミルルはね、来月…誕生日なのよ…。
祝ってくれないの?
ねえ、ゼロさんの誕生日はいつなの?
友達なんだから・…それぐらいミルルに教えてくれるでしょう?≫

【そんなこと聞いてどうする気なんだ?】

≪だって…ミルル、ゼロさんの情報なら何でも聞きたいわ。
これからも末永い付き合いになるって信じてるから。
エロは確かに無理だけど…きっと、続くから≫

【ウゼエ…】

≪誕生日ぐらい教えてよ?
だって、ゼロさん…仕事で忙しくて全然、会えないじゃない?
気になるわよ…。ねえ?≫

【ちょうど8月上旬、熱期ぐらいに政府に拾われた…。
実際、生まれたのは7月ぐらいらしい…。
オレもあまり誕生日なんて知らねえ。
別に祝う習慣は邪神国では存在しねえ】

≪そうなの…。
うーん…。
じゃ、ゼロさんの誕生日は7月ね?
もう終わったわね?
来年の7月になったら…ミルル、考えても良いわよ?
キスぐらいなら…。
それまでは添い寝で…≫

【サヨナラだ、バイバイ】

≪え…。
待ってよ…。
邪神国流のジョークでしょう?
だって・…ミルル、エロが怖いのよ。
だって、嫌なの…。
不潔だわ。
無理なの…≫

【サヨナラ、ジャナ】






今朝の出来事を…思い出すたびに胸が痛くなってくる。
涙が出まくって仕方ない…。
ハッキリとサヨナラと言われた…。
キセキさんよりキツイ口調だったかもしれない。
完全に振られたみたい…。
そうみたい…。

どうすれば良いのか。
やるまでは交際と認めないらしい。
もう困り果ててる。
ミルルとしては清く正しく美しい交際を続けるつもりだったのに。
ゼロさんはやるまでは交際と認めない性格だと公に宣言した。

ゼロさんは経験人数も並々ならないぐらい…ノアが言うには多いラシイ。
どうすれば良いのか・…。
もうこのままソッとしておくべきなのか?

ミルルのお母さんはミルルにいつも躾けてた。
男の人はオオカミなのよと。
絶対、結婚するまでミルルは悪い男に体なんて与えてはダメよと。

泣くのはミルルに決まってるんだからと。
ミルルのお母さんはミルルをキツク躾けてた。
やっぱり、どう考えても無理すぎてる。
ミルルには無理かもしれない。
ちょっと、距離を置いてみるのも…良いかもしれない。

だって、ミルルが通う成績優秀高校の校則では…男女交際は禁止。
男女交際をしてもエロがなければ許されるような風潮。
別にまだしなくても良い気がする。
ゼロさんには分かってくれないみたい。
ミルルは一応、ターシャ人…。
別に結婚するまでやらなくて良いと思う。

お母さんも精子バンクでミルルを産んでる。
別にしなくても子供は出来るんだから。
なんで、ダメなのか分からない…。
というか、怖すぎる。
考えるだけでも不潔だと感じてしまう。

どう考えても子供が出来て、困るのってミルルだけ。
何のためにするのか分からない。
このまま、仲良く和気藹藹で良いと思う。
ミルルは別に間違ってないと思う。
今、カルチャーショックになってる。
どうすれば良いの?

ノアにも相談してみたい。
この国の人間の価値観を…。

ミルルの茶髪ロングが…強風に煽られて、揺れまくってる。
眼鏡に砂埃が付着して、曇って来る。
外は砂嵐に近い。
太陽はまだ上がってない。
ここは暗い世界。

ミルルは今、水色ペンキで塗装された王族職員男性寮の前にいて、黄色い3街立ての職場行きのバスを見送ったところ。
バスには明かりが灯ってたけど…。
ゼロさんが座ってる席の窓だけ、黒いカーテンが閉められてた。

ミルルは外から一生懸命、手を振っても・…これでは見えない。
王宮の庭にはオアシスがある。
それ以外には草木も生えないような庭園。

バスの門番の方に…バスの中まで入らせてもらえるように頼んだけど…。
跳ねのけられた。
男性以外入ってはダメなバスらしい・・。

ミルルの頬は今、涙の滴で濡れている。
髪は風に煽られて・…もう滅茶苦茶。
フードをして、顔を隠しなさいって…バスの門番の人から叱られた。
今日は特に元気がない。

黒装束のポンチョは風に揺れて揺れまくってる。

この強風。
確かにスカートなんて履けない。
噂によれば…風鈴が割れてしまうレベルの風みたい。

ミルルはトボトボ…自室へ帰ることにした。

ちょっと、心の中まで暗いかもしれない。

また、失恋したのかもしれない。

☆☆☆

ミルルが一人…棺桶部屋に戻れば…。
机の上にはゼロさんが一昨日の早朝に…ミルルが目覚める前に書いた置手紙がまだある。

【旅ヘ出ル。
サヨナラ。
他に良い男、見付ケロ】

これを見詰めて、ミルルは更に涙が出て来た。

いったい、何が悪いと言うの?
これがミルルが初めて、ゼロさんから貰った手紙。
キセキさんからは手紙なんて貰ったこともなかった。
邪神語の文字で書かれてる。

しかも、ご丁寧にも…ターシャ語の文字でも書かれてる。
ミルルはこんなことされなくても、今では会話だけじゃなく、邪神語も普通に読めるのに…。
酷過ぎる。
ミルルは…もうこの国にいてても意味がない。

ターシャ国へ根性で帰るべきなのかもしれない。

でも、未練がないと言えば、嘘になる…。

いったい、どうすれば…良いんだろう…。

猛烈に心が傷付いてる。

心の痛みを間際らせるために、部屋の掃除を開始した。
昨日はこの部屋のベッドで酔っぱらいのノアが途中まで寝てた。
ゼロさんとイチャイチャするのに邪魔だからノアは廊下に出したけど…。
お蔭で空の酒瓶が散乱してる。
これを片付けないと気が済まない。
ミルルは早寝早起き規則正しい人間。
掃除はしたかったけど…眠気に負けて、昨日は寝てしまった。
そのことをもしかしたらゼロさんは怒ってるのかもしれない。

掃除をしない女は最低だとお母さんからも聞いたことがあるから。
ミルルは綺麗好きなのに名誉挽回をしたい。
部屋を一生懸命、掃除した。
きっとこれで帰って来てくれる筈。
確かにノアがこの部屋で酒を飲んでることに関して、ゼロさんは怒った表情だった。
起きてみてビックリ、ここまで酒瓶が転がっているなんて。
ゼロさんが怒って当たり前。
どうか綺麗な部屋になったらミルルの部屋に戻って欲しい…。


☆☆☆

朝の時間になった7時ごろに朝食がある。
ミルルはいつもは歴史書や政治書を読んでるけど…。
さすがにポケーとなった。
今日は邪神教の聖書を暗記する気にもなれない。
あの邪神教、予想以上に酷い気がするけど…。
この国の人間の価値観を覚えるために法律も覚えなくてはならない。
これを基準に全員暮らしてるみたいだから。

ちょっと、ビックリする内容もあるけど…。
ずっと、ミルルはゼロさんのために耐えて頑張って来たのに…。
今、愕然としてる。

そこへノアが朝食を持って、やって来た。

ミルルの前に出たのは…。
揚げパンだった。

これは食べれそう。

〔ミルル様…。
小麦で作ったパンですわ。
それを山羊のミルクで出来たバターと砂糖で絡めたパンですわ。
それと、山羊のミルク。
あとは…ミール貝ですね?〕

ミール貝は邪神国の貝…。
ミルルが生まれるとき、ミルルのお母さんはテレビでこれを知って、これを求めて通販で取り寄せたみたいだけど…。
邪神国のものが本場って知らなかった…もしかしてターシャ国で養殖ものだったのかしら??

ターシャ国にも売ってたけど、あれはムール貝って感じ。
こっちの方が身が大きくて、美味しい。

≪いただくわ。
ありがとう≫

いつの間にか…。
山羊のミルクが飲めるようになった。

〔それとサボテンのコロッケですわ〕

≪そう…≫

サボテンぐらいならミルルは食べれる。
だんだん、ミルルは強くなってる気がする。
でも、今日は元気がない。
だって、振られたから…。

〔今日はそれとミルル様にプレゼントがありますわ…。
ミルル様がターシャ国から持ってきたスマホは…初日のうちに、コチラの方で処分しましたので…。
代わりと言ってはなんですが・・。
王宮電話を持ってきましたわ〕

≪スマホ…大破したのね?
鞄を返してもらえなくて困ってるんだけど‥。
あそこにはミルルのパスポートも入ってるんだけど…。
で、王宮電話?
なんなの?
それは…?≫

〔フフフフフ。
私物は基本、全部…募集ですわ。
これは規則ですかから。
王宮電話とは、王宮の内部だけでつかえる簡易電話ですわ?
一応、アラーム機能も付いてますし…。
役に立ちますよ?〕

≪ゼロさんの電話番号は登録されてるの?
スマホがないからブログの更新も出来ないし…。
困ってるのよ?
で、ネットは繋がるの?
メールは出来るの?
他にはどういう機能があるの?
これ…≫

〔ゼロの電話番号に関しては…私は知りませんので…。
ミルル様が直接彼へ聞きになられたら?
別に、ゼロのことは良いでしょう?
ミルル様、私の電話番号だけは登録しておきましたので・・。
あと、将軍様の電話番号も入ってます。
光栄に思ってください。
将軍様からのプレゼントですわ?

ネットは残念ながら繋がらず、メールも無理ですが…。
王宮内のポケベルなら可ですわ?
あと、王宮内なら電話も可能です。
王宮勤めな方々は全員、これを使用して…広い王宮で連絡を取り合ってます。
軍人は他に携帯を持ってますが…ミルル様には不必要と判断を邪神会議で決定したので…〕

≪そう…。
スマホ、高いのよ?
ミルルが一生懸命、芸能界で働いたお金で買ったのに…。
酷いわ…≫

スマホ以外にも現金10万タ$はあった…換算したら、100万邪$。
黒邪神パンが1本半ぐらいは買えるかもしれない…。
カードにパスポート・・・何も返して貰ってない状況。

〔フフフフフ。
あと、もう一つ・…プレゼントがありますの?
お喜びくださいませ?
実は・…将軍様から、何と…幻の地酒、黒邪神パンが3本もミルル様へ進呈されたんです。
これは1本100万邪$の超高級酒ですわ?
今日は私と一緒に完敗でも…〕

≪遠慮するわ、ノア…
黒邪神パン、またなの?
ここへ初めて来た日にも1本貰ったわよ?
ミルルへ、将軍様から献上ってラベルまで付いてたけど…。
また、同じものを…今度は3本もなの?≫

〔うふふふ、ミルル様は遠慮さんですね?
ふふふふ。

で、どうなされたんですか?
ミルル様、今日は…元気がないようですが…。
覇気がないですね?
私の会話にも突っ込みをなさらないし…。
頭の回転がいつもより遅いと言うか…〕

ミルルは溜息を吐いた。
ノアは机の上に朝食が乗ったお盆を置いた。
それからそこには軍隊が良く使うトランシーバーみたいな電話にアンテナが付いてる大型の王宮電話と呼ばれる黒い携帯がある。
それ以外にも黒い瓶が3本…黒邪神パンって言う名酒らしいけど、ミルルは全く…興味がない。
邪神会議が何なのか・…聞く気力も沸かない…。
今は機嫌マックスに暗い…どん底を味わってる。

だって、ミルルは何のために邪神国へ走って来たのか…このままでは意味がなくなってしまう。
そのことで頭がいっぱい、今…猛烈にショック。

ミルルは椅子に座ったまま、声を低めて…ノアを見詰めた。

≪ノア…。
聞いてよ…≫

〔何があったんですか?
ミルル様〕

≪ミルル…。
ゼロさんから…。
今朝…完全にサヨナラだって言われたの…。

言っとくけどね?ノアのせいよ…。
ミルルは全然、悪くないんだから!

ノアが空の酒瓶なんて床に転がして出て行くから…。
ゼロさんが掃除しないミルルに対して怒って出て行ったのよ!

ミルルは早寝早起きの人間で…。
そんな日でも定時には眠くなるから…ちょっと片付けるのをサボったの!。
掃除しないミルルに愛想尽かして…ゼロさんは激怒して、出て行ったの!

全部、ノアのせいよ…。
ミルルは悪くないわ…。

だって、ミルルの何が悪いって言うの…!!
酷いわ、この置手紙…≫

ミルルはさすがにボタボタ泣き始めた、椅子を足で蹴りまくった。
ちょっとショックすぎる。

〔あら?
そうですの?
良いんじゃないですか?
別に…。
元々、私は猛烈に大反対でしたし…〕

≪ゼロさんね…。
エロをするまで交際を考えてくれないって言ったの…。
そんな話あると思う?
あり得ない。

ってことはエロしても、交際しない場合、セフレでしょう?
ミルルのことを馬鹿にしてるの?
酷いわ!
もう、ミルル…いくらなんでも本人から直接聞いて…ショックすぎて≫

〔そうですか…。
でもまあ。
彼ならあり得そうですわ。

彼自身、やらないと…交際するかどうかも決めない人かもしれませんわ。
ミルル様、止めるべきですわ。
彼は体の相性しか見てませんわ。

やはり、恋愛など虚像よりミルル様は女の友情を深め、私を優遇して。
冷房の涼しい棺桶部屋で添い寝係をする役目は…私にすべきだと思うんです。
私なりのアドヴァイスですわ。
フフフフ…〕

≪ノア、うるさいわね!
黙りなさいよ、ボケ!
でも、ミルルは何故か…ゼロさんが好きなのに?
諦めなきゃダメなの?≫

〔そうですわ…。
その方が良いですわ。
ミルル様の美しい体をキズモノにする訳にはいきませんし…。
彼、最低ですよ?
止すべきですわ。
フフフフフ…。

知ってます?
この国ですら…売春するときに、処女は高値で売れますのよ?
ミルル様の体は私が守りますわ…。
フフフフフフ〕

≪はあ…。
ねえ?
ノア…。
この国の人って…みんな、そんな価値観なの?
ヤッテから付き合うかどうか決めるの?
ミルルにはサッパリよ≫

〔そうですね…。
正直にお話すれば…。
この国に交際なんて概念はありませんわ。
ターシャ国と平和国で流行ってる言葉ですわ。
要するに…戸籍を入れない夫婦って意味ですか?
交際とは…〕

≪違うわよ。
イチャイチャすることを交際と呼ぶのよ。
好きな同士の異性が…肩を寄せ合って、イチャイチャいろいろ語り合って、ホノボノするの。
これがターシャ国でいう交際って意味よ≫

〔そうですか…。
うーん…。
残念ですが…そんな関係は…ないですね?
我が国には。
ということで、我が国で男性を探すことは止めて…女の友情を深める方へミルル様は徹した方が〕

≪イヤよ。
そうなの…。
ミルルには全く理解できないわ。
この国の価値観が…。
じゃ、ゼロさんは間違えたことを言ってないっていうの?!?
ノアのボケ!≫

〔いいえ、彼は止すべきです。
チャライですので。
フフフフフ。
ミルル様もそろそろ、目を覚ましになられたら…。
私の人間を見る目は確かですので…〕

≪そうなの?
ノア…。
でも、そうかしら?
ミルル、混乱してるのよ…≫

ミルルは置手紙を見詰めた。

【旅ヘ出ル。
サヨナラ。
他に良い男、見付ケロ】

こんなふうに邪神語とターシャ語の両方で…ゼロさん直筆で書かれてる…。
沈黙になる。
まるでイカ墨みたいなインクで達筆に綴られてる…。

≪ノアは…本気でゼロさんが嫌いなの?≫

〔そうですわ…。
どこが良いのか、全く分かりませんわ。
ハハハハ〕

≪実はノアがゼロさんを好きだから…ミルルとゼロさんの恋路を邪魔してるってことはないの?
ミルルには…そんな気がしてたまらないの…。
だって、ゼロさん…絶対、モテそうだわ≫

〔そこだけは声を大にして否定しますわ。
フフ。
私は正論を述べてるだけです。
ササ。
ミルル様、朝食をお食べになって下さいませ〕

≪そうなの…。
ゼロさんは…ミルルに少しは気があると思うわよね?
どうなの?
ノアは…≫

〔さあ…。
彼、来るもの拒まずですし…。
彼自身…実は交際の意味が分かってないんじゃないですかね?
それは…私もなんですが…。

フッ…止すべきです。
あまりにもミルル様と違い過ぎます。
ミルル様ももう少し堅実になられた方が…。
アハッハハハ〕

 ≪そんな…。
でも、それなら…友達として、仲良くゼロさんと進めないかしら?≫

〔そうですね?
ウフ・・?
別に友達になる必要なんてありますか?
私一人で充分じゃありませんこと?〕

≪ミルル…何のために邪神国へ走って来たのか…。
分からなくなるわ、ふざけてんじゃねえわよ!!
このまま、終わらせる訳にはいかないっての。
根性でもガンバリタイの。
悔いは残したくないわけ!!≫

〔スポコン根性は認めますわ。
でもですね…止すべきです。
ミルル様はそのままで十分、素敵ですわ。
彼は諦めるべきです!
アハハハ〕

≪そんな…。
でも…。
サヨナラなんて…。
酷いわ…。
ゼロさん…。
まさか、今日も添い寝をしてくれないの?
昨日はしてくれたのに…。
どうすれば…良いの?
ミルルは誰を頼れば良いの?
頼りたくないのに…。
どうしたらいいの?
お母さんなら…やっぱり、ノアと同じこと言いそうだわ。
あの糞ババアなら…ミルルのオカンは守銭奴だから…≫

〔そうでしょう?
別にエロなんてしなくて結構です。
アハハハ。
私はミルル様のことを常に考え…正論しか述べてませんわ。
さ、これからは女の友情を深めるべきです…フッ〕

≪そうかしら…。
1週間ぐらい・…。
考えてみるわ…。
ちょっとね、さすがのミルルでも元気がないの…。
食欲すら沸かないわけ…≫

ミルルは意外に繊細。
失恋ってショックかも…。


☆☆☆

その時、ミルルの部屋の扉へ珍しい客が入って来た。
それは…忘れもしない・…褐色の肌にちょび髭とメガネのない瞳に高い鼻筋、薄い唇…灰色の軍服を着た。
黒髪ストレートな毛質のこの国の将軍様。
ミルルとは合わない。

〈ノア?
キミとミルルの話は終わったかい?
フフフフフ〉

〔終わりましたわ、将軍様…〕

〈キミが今回、大佐に上がれたのは…。
ボクのお蔭さ?
ノア…〉

〔ありがたき、光栄ですわ…。
将軍様〕

〈ミルルは何故かボクには懐かない。
呼び出しをしても向こうからは出て来ない。
本当なら処刑になるところなんだがね?
やはり、たまにはボクから出向いてあげたよ。
ボクからのプレゼントは喜んだかい?
我が娘よ?〉










































 

 










 



















ゼロE


目次

ミルルA










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