アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

4部ミルルH

≪ミルル視点≫

そこでマジマジと部屋の内部を観察した。
 
ゼロさんに案内されて…連れられた先、6階の最奥の棺桶部屋と呼ばれる王家の寝室は…。
 

割りと広い部屋で巨大なベッドと。
 
それからタンス。クローゼット。
 
大きなテレビや。
 
カラオケのマイクまである。
 
さすが王族部屋。
 
防音まであるみたい…。
 
その他、何故か…。
 お墓が並ぶシュールな部屋。
 
ミルルは墓の前で立ち止まってるゼロさんをギュッと横から抱き締めてみた。
 肩幅が広くて男らしいのがやっぱり好き。
 
〔ミルル様、ゼロのどこが気に入ったんですか?
 この国に愛なんてものは存在しませんよ。
 そんな男より女の友情を深めた方が…〕
 
《うるさいわね、空気読めないわけ?
 ミルルとゼロさんは今、イチャイチャしてるの。
 分かる?》
 
ゼロさんは反応してくれないし、墓の方をずっと暗い瞳で見詰めてるけど、これぐらいの人生の楽しみがミルルにもあっても良いと思う。
 ゼロさんって肩幅も広くて背も高くて男らしい体つきしてる、声もかなり低めだし。
 喉仏が出てるのも好きかもしれない。
 密着すると、とても癒される。
 

〔はあー。
 そうですか。
 それでは、ごゆっくり。
 そろそろ食事の時間ですので、持ってきますね。
 私はとても役に立つメイドですから。
 ここは冷房完備で快適ですね。
 
それでは将軍様、万歳。
 邪神国に幸あれ〕
 
ノアは部屋から去ってやっと、ゼロさんとミルルは二人っきり。
 ここは落とすチャンスなはず!
 ミルルは今、燃えてる。
 
《ゼロさん、空気が読めないの?
 そんな墓なんか見つめちゃって。
 ミルルをそれより見てほしいな…。
 なんちゃって…》
 
【オメエはターシャ国へどうやってカエル気なんダ…。
 アア?】
 
《やん!
 照れてるでしょ!
 ゼロさん、可愛いわね!》
 
ミルルはきつく抱擁してみた。
 にしても…。
 全く視線を合わしてくれないからつまらない。
 ココにミルルの兄が眠っているっていう話だと思う。
 あまりこんな話すればムードぶち壊しになるけど…。
 
《その墓にいる人、食べたって本当?
 兄なんでしょ?
 ミルルの…》
 
☆☆☆
 
【ウゼエ】
 
《何があったか分からないけど。
 過去は過去よ。
 きっとミルルとゼロさんが会えたのって運命ね。
 そうよ、今頃。
 天国で喜んでるわよ。
 ミルルの兄》
 
【知りもしねえ癖に。
 口を挟むな!】
 

突然、ミルルはゼロさんから体を離された。
 ゼロさんの口調が突然、いつもにも増して荒々しくなる。
 ミルルは突き飛ばされて、床に手を吐いた。
 そこで、まだ墓の前で呆然と座り込んでるゼロさんへ…ミルルは突撃を食らわした。
 
《ちょっとミルルの愛の抱擁から逃げるわけ?
 でも残念ね?
 ミルルは…。
 逃げられると萌えるタイプなんだから!》
 
ミルルは必死で腕でクロスしてガン字絡めにした。
 ゼロさんは死んだ瞳で墓を見つめたまま。
 少し背中が痙攣してる。
 
《ねえ、ミルルの兄ってどうして死んだの?
 死んでから食べたわけ?
 ゼロさんが殺して食べたわけ?》
 
ミルルはゼロさんの耳元で耳打ちをしてみた。
 割りとこういうふうに苛めてみるのも好きかもしれない。
 ゾクゾクする。
 
【ウゼエ。
 覚えてねえ…】
 
ゼロさんの顔を覗き込んだけど、焦点がどこにあるのか分からない。
 
《ゼロさんが殺したの?
 何があったの》
 
ゼロさんの風に揺れる髪を触って、耳元で聞いてみる。
 ミルルはそれから背後からゼロさんの背中を抱擁してる。
 ちょっと癒される。
 
【ウゼエ。
 ワスレタ】
 
ゼロさんの声は最高に低い。
 この低音もミルルは好き。
 渋い声が個人的にゾクゾクする。
 
《え?》
 
ミルルは目をパチクリした。
 ゼロさんは目をつぶって辛そうな表情をした。
 
《正直に言えないわけ?
 ふうん…。
 じゃあ、聞くの止めよっかな…?》
 
ミルルは背中に密着したまま、ゼロさんは墓の前から動かない。
 
【過去は流レタ。
 ココに骨だけある、それが現実ダ…】
 
《ゼロさんは…。
 辛かったの?》
 
ミルルはゼロさんの背中をさすってみた。
 ゼロさんは抵抗しない。
 
〔今日のディナーをもって参りましたよ〕
 
そこへ、ノアがノックもせずドアを開けて入ってきた。
 ノアは3人分の食事が乗ったお盆を手に持ってる。
 いかにもウェイトレスって雰囲気。
 ただ、服装は先ほどと同じ黒装束のポンチョ服。
 この国ではメイド服は着ないみたい。
 
ノアの豊かな黒髪が揺れてる。
 この部屋の天井には扇風機が廻り、部屋中に快適な風が旋回してる。
 
《ちょっと今からゼロさんとミルルは蜜月タイムなのよ。
 今回こそ手に入れるんだから!》
 
〔ゼロなんかのどこが良いんですかねぇ?
 はい、これ…。
 キンキンのヤギのミルクですよ♪〕
 
ノアが部屋に設置された巨大な木目調のテーブルへ…3人分の食事が乗ったお盆をドカリと置いた。
 
《ヤギ…。
 遠慮するわ…》
 
〔嘘です。
 ココナッツミルクですよ〕
 
テーブルの上には、木で出来たコップに氷と白い液体が入ってる。
 それ以外にもステーキらしき物と唐揚げらしき物と貝らしきものが乗った木の皿がある。
 食事は三人分並んでる。
 木で出来たフォークとナイフとスプーンが3人分並んでる。
 
《ええ?
 本当なの?》
 
〔平和国のヴァカンス島は邪神国から立地条件的に近いですし、あそこにもアジトはありますので〕
 
《助かるわ…》
 
ミルルは墓の前にいるゼロさんから離れて、ノアの方へ歩み寄った。
 
〔その他にもミルル様のために、平和国名物、鳩の丸焼きと…。
 それから、豚の丸焼きです。
 あと、ミール貝の蒲焼です。
 銘々、食事は別の部屋で食べる文化なのですが…。
 この部屋があまりにも涼しくて快適なので…。
 持ってまいりましたわ。
 私もココでディナーをしますわ〕
 
《嬉しいわ。
 ありがとう…。
 ゼロさんも一緒に食べましょうよ》
 
【チッ…。
 ハァー。
 仕方ねえナ…】
 
ゼロさんは舌打ちをして…墓から離れ、机へ近寄ってきた。
 
ミルルは食事を進めた。
 ゼロさんもミルルから離れた席へ着席して綺麗に食べてる。
 面白くないから、ミルルはゼロさんがいる席へ食事を運んで、近付いた。
 ミルルがゼロさんの隣に座ると…。
 ゼロさんも逃げはせず、普通に食べてる。
 
ノアはその間、ずっと嬉しそうに…夕飯を黙々と食べてる。
 
〔本当はミルル様も将軍様と食べたいでしょうが。
 邪神国は銘々別々の部屋で食事をする文化なので…。
 それにしても今日の夕飯は豪華ですね。
 さすが王族直属なシェフ。
 味付けが最高ですわ〕
 
《そうなの…》
 
ミルルの隣席に座ってるゼロさんがノアを睨んだ。
 ノアが机の上の食事から視線を外して、コチラへニコリと会釈した。
 
〔お味はどうですか?〕
 
《美味しいわ。
 ありがとう。
 ゼロさんもそうよね。
 食べるの、早いわね?
 ゼロさんって》
 
半分以上食べてから…ミルルの隣席に座ってるゼロさんが口を開いた。
 
【ノア、オメエは…。
 嘘吐きダ…】
 
〔嘘も方便ですから。
 ゼロは黙ってください。
 悪趣味ですね、ゼロの方が〕
 
《え?》
 
この一言で胆が冷えてしまった。
 
《ミルルに…。
 何を食わしたわけ?》
 
【オメエは邪神国に来る際、腹をくくるべきだった…。
 ターシャ国の食事に感謝スベキダ…】
 
《どういうことなの?
 ゼロさん…》
 
〔まあ、ゼロに嘘は通用しないでしょう。
 キンキンに冷えたヤギのミルクとヤギのステーキと、カラスの唐揚げ、ミール貝ですよ。
 味付けはさすが王宮、完璧でしょう?
 庶民にはなかなか当たらないのですよ…〕
 
《冗談でしょ、ブラックジョークよね。
 ちょっと待って。
 ミルルはね、潔癖症なわけ。
 無理よ。
 嘘と言ってよ。
 ねえ、ゼロさん…》
 
〔フフフフ。
 嘘ですよ。
 ミルル様、さあ。
 体力はうんとつけてくださいね〕
 
《嘘なの…。
 本当にノアって嘘ばかりね。
 アハハハ》
 
【一つだけ忠告してヤロウ。
 ノアは嘘吐きダ。
 さっきから、嘘ばかり吐きまくってヤガル…。
 充てにしねえのが懸命ダ。
 フッ…】
 
褐色の肌に死んだ碧の瞳に一瞬、生気が灯る…ゼロさんの口元が少し上がる。
 
〔ウフフフ〕
 
アラビア系な顔立ちをして豊かな長い黒髪を揺らしながら、ノアは口元に手を当てて微笑した。
 
ミルルだけ眼鏡の奥にある黒い瞳が点になってる…。
 ミルルの染めた長い茶髪も揺れてる、部屋の内部も割りと風が通ってる。
 
これは…冷房と天井に設置された扇風機から起こる風で、肌に心地良い。
 さすが王家の部屋…棺桶部屋といえども、快適な温度。
 
3人とも頭のフードは外して、黒装束のポンチョ服。
 

ゼロさんとノアの笑いのツボは同じみたい…。
 またミルルだけ着いていけない。
 この国の人の笑いのセンス、ミルルには全く分からない。
 
二人とも不気味に笑ってる…。
 そう言えば、将軍もこんな笑い方だった…。
 ミルルは奴を父と認めない!
 
机の上に乗った食事を見詰める。
 半分残った食事を食う気が失せそうになったけど。
 ここはミルルは雑草のように強い女。
 歯を食い縛って食べてみた。
 
でも…。
 ココナッツミルクと鳥のからあげ、豚テキ、ミール貝の、味しかしない。
 カレー風味な香辛料が効いてるけど…。
 ナイフとスプーンにフォークは木で出来てる。
 
知らない方が幸せなこともあるのかもしれない。
 ミルルは敢えて突っ込まない…。
 
☆☆☆
 

食事が終わると、眠くなってきた。
 
《ねえ、この国、シャワーはあるの?
 ないわよね》
 
〔1日ぐらいでしたら。
 将軍様の許可が必要ですので、明日以降に。
 今日は私も提出論文がありますし。
 この辺で。
 ミルル様のお陰で冷房完備なメイド室で眠れそうです。
 助かります〕
 
《いえいえ》
 
〔さあ、ゼロも一緒に王族専用メイド寮へ。
 ここは王族部屋ですから〕
 
【ジャナ…】
 
《ちょっと待ってよ!
 ミルルはね、ゼロさんを抱き枕にしてココで寝るっていう計画があるんだから!》
 
〔本気なのですか?
 ミルル様〕
 
《そうよ。
 ミルルの傷心な青春を慰めるのはゼロさんしかいないわけ!
 そのために走ってきたんだから…》
 
〔あれって…。
 冗談だと思ってましたが、ミルル様って馬鹿なんですね…〕
 
【ウゼエ…】
 
ミルルはゼロさんをガッシリと抱擁した。
 だって人肌が温くて、肩幅も広くて。
 肩幅も広いし、男らしく格好良くて…もろタイプなんだもの!
 これを抱き枕にしてミルルは寝るんだから。
 
〔私はゼロが羨ましいです。
 こんな広いお部屋で寝るなんて。
 しかしミルルはこの国の姫様。
 勝手に子供ができないようにだけ、お気をつけ遊ばせ。
 将軍様にはこのことは黙っておきますから〕
 
《大丈夫よ、ミルルは天に誓って添い寝だけだから。
 一緒に肩を並べて二の字で寝るの!
 青春の穴埋めをするの!》
 
【ハァー〜
 呆レタ】
 
〔私も呆れてます。
 それから私はゼロを呪ってます。
 私だけ狭い部屋へ収容されて。
 ゼロは王族の広くて冷房がキンキンな部屋。
 恨んでます…。
 ここに薬、置いておきますよ〕
 


ノアはゼロさんを最後まで睨んで部屋から退散してくれた。
 机の上にノアはゼロさんの薬を置いて行った。
 ゼロさんはノアが去った後。
 机の上にある薬の袋を黒装束ポンチョの裏ポケットへ収納した。
 
ミルルは大歓喜。
 
《ゼロさん、カラオケでもこの部屋でどう?
 見てよ、あと壁。
 ここは防音までされてるみたいよ。
 歌いましょうよ。
 ミルル、カラオケへはよく行くけど…。
 1日泊まりなんてしたこともないのよ…。
 ほら、部屋にカラオケまで完備されてるのよ!》
 
【ウッセエ…】
 
ミルルはベッドに横になった。
 ゼロさんもミルルの隣で寝てる。
 確かに抱き枕にとてもいい。
 
ここで異常な眠気がやって来て、大あくびをした。
 
《今日はさすがにミルルも疲れたわ。
 寝させてもらうわね》
 
【勝手にシテロ…】
 
ゼロさんは大人しくベッドに横たわって、
 ミルルの隣に入ってきてくれてる。
 
ミルルはそのまま寝さしてもらうことにした。
 
【オメエはこれから、真面目にどうするツモリだ?
 アホなのヵ?】
 
ゼロさんが何かいってた気がしたけど、勘違いかもしれない。
 
こんな雰囲気だったはず。
 
《後は野となれ山となれよ。
 フワァ。
 ミルルはね、別に結婚するまでエロはしないって子供の頃から決めてるんだから。
 貞操は結婚相手にあげる気でいてるの。
 未来の結婚相手へ初めてよって言うのが夢な訳。
 誰と一緒になるのかまだ未定だけど。
 きっとミルルの結婚相手は、喜ぶはずよ》
 
【ハア?】
 
眠気につられて誰にもはなしたことないミルルの価値観を喋ってしまった。
 このことを、話したのはゼロさんが初めて。
 
《別に子供作るときだけで良いと思うし、エロなんて。
 きっと、飽きる自信があるの。
 それより会話したりハグが、ミルルは好きよ…》
 
眠すぎて、すぐに夢の世界へ飛び込んでいきそうな気分…。
 
本気で夢心地。
 
ゼロさんが薬を黒装束ポンチョから出して、水なしで飲んでる姿を最後に…。
 ミルルは全く記憶がなくなった。




そんな感じでミルルは1か月ぐらい、ゼロさんは抱き枕にしてベッドを共にさせてもらった。
 翌日からは風呂もつかえる…でも、風呂は存在しなかった。
 それは想定外で、カルチャーショックだった…。
 
1階フロント前の温水プールへ水着で入って、それから部屋で水着を脱ぎ、体を拭いた。
 あの温水プール…風呂としても活躍してるみたい。
 この国に入浴と言う文化は存在しないみたい。
 全員、シャワーで水浴びして、終わりみたい。
 確かに外が50℃近くて、暑すぎるから納得かもしれない…。
 
☆☆☆
 
季節は8月も越えた。
 ノアはゼロさんとミルルが添い寝をしてる件について、将軍様へ話すかとヒヤヒヤしてたけど。
 別に告げ口しなかった…。
 これは珍しすぎる。
 
その代り、〔一度で良いから、私もミルル様の部屋で寝させて下さいよ?〕と頼まれ続けてる。
 でも…ミルルは断り続けてる。
 
☆☆☆
 
ミルルがココへ来たときは。
 あれは…7月の11日ぐらいだったかもしれない…。
 ターシャ祭りの3日後ぐらいにキセキさんへ告白して玉砕して吹っ切れたように一人旅をしたくなった…。
 それから1ヶ月も経とうとしてるみたい。
 今は8月11日ぐらいになろうとしてる。
 
ミルルとしては満足でホッコリした日々が続いてた。
 恋愛として、物凄く充実してる気がする。
 ゼロさんは…口は悪いけど、別に来る者を拒まないタイプだから。
 キセキさんは長年、逃げられっぱなしで凹んでたけど。
 ミルルの抱き枕に大人しくなってもらってる。
 ミルルはお蔭でとても機嫌が最高潮に良い。
 
ゼロさんは常にノアを睨んでる、ミルルはいつもゼロさんに引っ付いてる。
 そんな日常が続いてる。
 ゼロさんはミルルが語りかければ口が悪くても必ず返答してくれる。
 でも、視線は常にノアにある…ここは嬉しくない。
 
☆☆☆
 
ここ1ヶ月を経過して…不味い飯にも慣れつつある。
 貝だけがこの国では…確かに一番、美味しい。
 この国には家族で食卓をする文化がないらしいけど…。
 まだ、兄たちに会ったこともない・…妃さまも好き勝手にしてるらしい。
 
毎度、信じられないメニューだから。
 何を食べたのか、ノアへ聞かずに食べてる。
 ここではダイエットのことなんて考えない。
 ミルルは必死で体重を保つために、おかわりをしてる。
 食べてもすぐにミルルは腹を下してしまう。
 
ゼロさんとノアはお腹を下さないのに。
 食事も病原菌の塊なんだって思う。
 今のところ、ミルルは生きてる。
 高熱にも浮かされず、死んでない。
 でも、絶対…普通のターシャ人なら死んでると思う。
 
この国には…コレラがないのが助かってる。
 蚊も暑すぎて絶滅してるらしいから…。
 ただ、頻繁にトイレに通ってしまうのが…今の悩み。
 ノアには整腸剤を貰い続けてる。
 ビオフェルミンは必備薬かもしれない。
 こんな国だからこそ、食中毒が…本気で怖いかもしれない。
 
本気で家族6名、全員が食中毒で死んだって本当なのかしら?
 そこはまだ疑ってる。
 だって、やりかねないでしょう?
 家族6名が亡くなって一番、得をする人は誰か考えれば・・。
 誰だって、不審がる。
 信用できるわけがない。
 

☆☆☆
 
それが今日…8月11日…。
 ココへ来てから、一か月経つ。
 
就寝前になって、ゼロさんが待てども帰って来ない。
 その時、テーブルの上に置き手紙があるのを発見した。
 
【旅ヘ出ル。
 サヨナラ。
 他に良い男、見付ケロ】
 
ミルルは訳がわからず、外へ出て探しまくった。
 
ノアに聞くために王族メイド控室の女性寮へ歩んだけど。
 女性寮はピンク色のペンキで塗装された四角な館。
 割りと広い…王族専用遊女も一緒に収容されてるみたい。
 
そこは2段ベッドが6畳に3つ並ぶような冷房完備な部屋だった。
 確かに狭かった。
 6畳に6人が寝てるってことみたい…。
 冷房の設定は29度までと張り紙が壁にされてた。
 2段ベッドには一応、カーテンがある。
 
ノアが寝ぼけ眼で出て来た。
 ノア以外にも5名の遊女が怪しい笑みを浮かべてる。
 
[あら?
 この子が将軍様の隠し子なのね?
 似てるわ。
 ウフフフフ。
 アッシは遊女で、未来の后がここから選抜されるのよ、
 アッシは絶対、妃になるんだから♪]
 
[顔がそっくりじゃないの?
 今はいい気になってるみたいだけど…。
 妃になれば…ワタイの方が位が]
 
[うらやましいわ。
 ノアはこの人の側近なんですって?
 でも、まあ…ワタクシが妃になれば…。
 この方がひれ伏すわけですが…]
 
[眼鏡ミルルって名前なのよね?
 ターシャ国で女優の仕事もしてたんですって?
 一階フロントにあるテレビでも流れてたわよ。
 マアネ?
 もうすぐアタチが妊娠するに決まってるわよ。
 なかなか将軍様は相手にして下さらないけど…。
 精力剤、盛ってみようかしら?
 ククク]
 

フロントにTVがあって、邪神国のニュースは流れるけど…。
 
ターシャ国の情報は入ってこない…。
 

TVでは

---素晴らしき邪神国に魅了されて、ターシャ国にいる将軍様の隠し子が名乗り出て、邪神国に自らの足で走ってきました。
 
将軍様と邪神国に万歳---


と連日、報道されてる。
 

今、ターシャ国で何が起きてるのか。
 
ノアは〔知らない〕って言ってるし…。
 
ゼロさんは【ハン?ウッセぇ…】と返答してくれない。
 
少し怪しすぎる。
 
ミルルだけ特別扱いで教育を受けてるのは理解できる。

ノアとゼロさんは忙しそう。
ミルルが部屋にいる間も何か動いてる雰囲気がする…。
 

将軍は常にどこかへ出掛けてて、軍の施設にはいない。
 

ニュースは連日、想像絶してる。
 
偽善者が最低だと常に報道して、悪を推奨してる。
 
国民全員に教育を敢えて受けさせてない風潮。
 

どうも将軍が自らの権力を独り占めする目的でしてるようにしか…。
 
ミルルには映らない。
 
その癖、ミルルに教育を受けさしてる。
 
矛盾し過ぎてる…。
 
ミルルは現在、部屋に監禁状態で教育されてる。
ノアには政治を聞いてる。
ゼロさんは…護身術を教えてくれる話だったのに…常にいない…。
ゼロさんは・…信じられないことに…。

【ハン?
オメエは既にノアより格段に護身術が優れてる…オレに教えることはネエ…。
それより、この国の流儀をノアから聞きヤガレ。
オレには他にスベキことがアル…。
ジャナ…】

こんなふうに逃げられてる。

≪ちょっと待ってよ。
将軍から頼まれたじゃない?
ミルルのこと…≫

【チッ。
オレは忙シイ…その将軍に頼マレタ。
暇なノアに当タレ…。
召集が掛カッテル…】

この調子で部屋から去っていく、逃げ足が速い…。
ミルル以上。

〔ミルル様…ゼロの言い分はもっともですわ。
ミルル様はすでに私より武術がおありですので…。
それより、ルールを覚えるべきです。
ササ、机に座って下さい…〕

ノアには無理やり机に座らされて政治や歴史を全部、暗記するように…。
仕込まれてる。
他にも職務があるみたい…将軍から頼まれた雰囲気。
何なのか・・全く教えてくれない。

☆☆☆


ミルルも偽善者とかムカついてたまらないし、いちいち注意されてウザイって感じてたけど。
 

その域を越えてる。
 
きっと犯罪者にとっては自由な楽園なのかもしれない。
 
この国は…。
 

邪神国の報道では

---ターシャ人は、邪神人から自由と言う権利を奪う最悪な人種---
 
話し合いにならない。
 
と報道されてる。
 

常にドラマでは国民がしたいことをしようとすると、邪魔をする外人…。
 
そこへ将軍様がやって来て、成敗して。
 
国民大喜びというワンパターンなドラマ。
 

将軍はドラマにまで出演して忙しいみたい。
 

割りとドラマも好きなのかもしれない。
 
演技は笑えるけど、必死さが伝わるのは不思議な感覚。
 
ミルルは役者を目指す人間としてどうしても…。
 
採点してしまう。
 

意外に何故か将軍はこの国でスター扱い。
 

ミルルは愛の結果に生まれた子供じゃない。
 
でも…。
 
自分と似てる顔がスクリーンに出るとき、固唾を飲む。
 

将軍の全く他人のことを考えずに、犯罪に手を染め…。
 
自己中過ぎるやり方には…ミルルは、ついて行けないのに…。
 

不思議な感情が沸く。
 

時々、将軍も同じなのかとも思う。
 

自分があそこに立って、役を奪ってでも、演じたいという嫉妬と…。
 
それから、そんな映像を見てみたいという欲望。
 

もしかしたらミルルが女優になることに将軍は寛容なのかもしれない…。
 

一度、ミルルが平和国で女優になるならという理由で…。
 
ターシャ国へ無償で返還してくれたのだから…。
 

真偽は謎…。
 

[将軍様からもよく聞くのよね?
 それで…この国には慣れたかしら?
 未来の妃様になるのに一番寵愛を受けてるのは…ワレですから。
 イチ妃やニ妃はもう年増ですもの…。
 ミルル様よりワレが年下だからと言って、舐めないでくださいね?
 クハハハハハ]
 
あでやかに化粧がほどこされた5人の遊女がミルルへ近付いてくる。
 5人の遊女はポンチョな黒装束じゃない。
 パステル調のベールで体を巻いてるだけ…胸も尻も陰毛まで丸見え。
 全員、若いらしい…。
 外人の歳は不明だけど…17歳に満たない処女が条件だってノアから聞いたから。
 
 
 

 



















第4部ミルルG


目次

ミルルI










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