アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

4部ミルルF

≪ミルル視点≫

【いや…王族なら…。
砂糖が当たる可能性もある筈ダ…】

≪ゼロさん…本当なの?≫

ネズミチュウ太郎が牢獄の檻を鍵で開けてくれた。
この囚人施設、他の部屋にもたくさん人はいるんだって思うけど…。
ここだけ隔離部屋。

≪ねえ、どうして…ゼロさんの部屋だけ。
隔離部屋なの?≫

−−−それはや。
一緒に入れてもうて、他の囚人を殺したらあかんからな。
今でこそ大人しいけど…ホンマ、一時は手がつけれへんかったねんで。
集合部屋は止めたんや−−−

檻が完全に開いたからミルルはゼロさんへ接近したけど…。
その間もミルルに背を向けて、ゼロさんは寝転がってる。

ゼロさんは近付けば、目を瞑ってる。

【鎮静剤が効き過ぎダ、畜生メが!
ブッ殺す…】

〔仕方ないでしょう・・・・・・・。
あれだけ、暴れていたのですから〕

ゼロさんは目を瞑ってる。
ミルルとしては少し仕返しもしてみたい気分。
ちょっとイタズラもしたくなってきた。
寝転がってるゼロさんへ足で摩ってみた。

何だか、変にドキドキする。
これはミルルの性癖かもしれない。

−−−何やってんねんや?
ゼロを足で摩って…。
何かのおまじないかいな?−−−

〔何をしてるのですか?
私にはサッパリ…〕

≪ゼロさんを蹴る気になんてなれないわ…≫

ミルルはそれからガッシリと抱擁してみた。

キセキさんにすれば…いつもこのタイミングで逃げられるわけだけど。
ゼロさんってまな板の上の鯉状態。
意外に反抗をしない。
来るもの拒まず、去るモノ追わずって雰囲気。

ミルルは確かに…もう3年はキセキさんにアタック続きで。
色素が薄くてナヨナヨした体つきだったキセキさんが男らしい体に成長してからは、気になってた。
でも、なぜだろう?
長年、思っててもキセキさんには拒まれ続けて…。
ある日、突然…会った、ゼロさんに衝撃的なレベルで惹かれてる。
キセキさんより口はずっと悪いのに、ゼロさんは優しい気がしてたまらない…。
そんな気がしてくる。
勘違いかもしれない。

≪意外に肩幅があるのね、ミルルはこういうのも好きよ。
会いたかったわ≫

ミルルは寝転がってるゼロさんへガッシリと抱擁した。
褐色の肌に緑の瞳、それから剛毛な黒髪…長身な体躯。
全くゼロさんとはタイプが違うのに何故か気になってたまらない。

≪ちょっと反応してくれないわけ?
無反応なの?≫

〔どうやら…ミルル様はゼロがお気に入りなようですね…〕

−−−ゼロのどこが良いんや。
オリャ、全然分からんで・・。
オリャーも…ターシャ国へ行けば、モテるヤロウかな?
どうなん?
ウハウハウマウマかいな?
どう思う?
教えてえや♪−−−

悪いけど、モテないって思う。

≪癒されるわね‥≫

【鬱陶シイ、チッ】

口では拒否ってるけど、キセキさんほどは逃げまくらない分、やりやすい。

〔まあ、良いでしょう。
別にどうぞお好きに〕

−−−まあ、良いけどな…。
ゼロ、オメエ…。
この嬢ちゃんの宦官になるか?−−−

≪何なの?
宦官って…≫

〔この国では・…妃さまにもいらっしゃいますが…。
王族には男女とも、男性愛人も女性愛人も許可されてます…。
ただし、男性愛人の場合、玉袋を切除して…去勢手術をしなければなりませんが…。
それでもサオはつかえるので、性的玩具としてつかえます…。
玉袋がない分、子供が出来ないので…この方法が長年、続いてます。
女性愛人に子供が出来た場合は…妻として迎えられることになってます。
一夫多妻制です、この国は…〕

≪何よ、その考え…。
ミルルはそんな気、全くないわよ≫

ビックリしすぎた。
似たような歴史を聞いたことがあるけど…。

〔割りと多いんですよ?
この国では…。
因みに宦官は子供時代に玉袋を切除すれば…声変りが起きないところか…。
背丈も伸びず、勃起障害な可能性がありますが・…。
ゼロはもう既に身長も180センチを超えてるので、別にその心配はないでしょう〕

≪ミルルはそんなの反対だわ。
別にこうやって抱擁してるだけで満たされてるわよ!
止めてよね、そんなこと…。
ねえ、ゼロさん?≫

【ウゼエ…】

ゼロさんは全く瞼を開けてもくれないし、大人しくミルルの腕の中にいる。
こういうのも良いかも。
確かにとても気に入ったかもしれない。

〔そうですか…。
まあ、将軍様に聞いてからで良いでしょう。
ゼロの処分については・・〕

≪ミルル、ゼロさんが気に入ったわ。
こんな抱き枕があっても良いと思うの。
確かに…一緒に添い寝も良いかもしれないわ。
でも、去勢なんてイヤよ。
このままで良いんだから≫

−−−嬢ちゃんになんか、愛されてるねんな。
ゼロ…。
オリャ、モテたいで。
何なん?
秘訣は…?

金か?
やっぱ?
それとも、金なくても軍人はモテるんかぁ?
筋肉か?
筋トレなんか?

給料下がるけどな、モテるんやったら…オリャ、入隊スベキやろか。
でも、ここ涼しいし…外せへんで〜。
この仕事のために全財産費やしたんやで。
オリャ、どうすべきやろか…−−−

≪ミルルはね、イケメンに弱いのよ。
アンタみたいなネズミ顔…金を積まれたところでお断りだわ。
軍に入ろうがモテる訳ないわよ。
運動神経とか関係ないから≫

〔ミルル様は女性の趣味は?
私はどこまでもミルル様にお仕えします〕

≪ないに決まってるでしょう?
止めてよ、だから…。
ミルルの体中を調べまくったわけ?
冗談じゃないわよ≫

〔まあ、私もないですが…。
冷房が効いた寝室は捨てがたいので…。
夜の暑苦しさほど、辛いこともないので・・〕

≪とにかく、軍事パレードは終わったかしら?
ミルル、ゼロさんのことについて説得がしたいわ。
その将軍とやらに会うわ≫

ゼロさんの胸に抱擁してると、何だか寝てしまいそうな心地。
結構、居心地が良い。

☆☆☆

ネズミチュウ太郎とはお別れして、外へ出た。
外へ出ると50℃以上の熱風がミルルを襲い狂ってくる。
予想してた通り。
暑すぎる。

《何なの?
この暑さ…。
どうにかならないわけ?》

〔ここはこういう国ですから〕

【ハハハハハ。
本気でオレは…。
釈放されるノカ?
オメエは…。
どうする気ダ?
この国で…】

《そうね、ご飯は不味そうでうんざりだわ。
でもゼロさんのいる国を見てもいいかもね。
ただし冷房が効いた涼しい部屋でよ》

〔ということは…。
王族の部屋になりますね…。
将軍様にそのために会うべきでしょう。
その際は是非、私を従者として任命してくださいまし…〕

【オメエは本気で信用ならネエ…。
密告しやがったダロ?
オレの薬を変えたのは…。
オメエじゃねえのか?
オメエの薬を飲んだあと…。
余計に調子最悪になってヤガル…。
オメエは次、会えば殺そうかと思ってタ…。
死ねよ、カスが!】

〔まあ!
怖いわ…。
ミルル様、助けて下さいまし。
この頬に出来た痣は…。
ミルル様への忠誠の証…。
私を殺すなど…。
そんな…〕

《ノア…。
まさか、本当にアンタ…。
通報したわけ?
話が見えないんだけど…》

外は砂埃が凄い。
黒いフードを三人とも車に乗るなり、被った。
灰色の空に熱い強風が吹き荒れ、ミルルの思考力を奪っていく。

アスファルトがないひび割れた大地に…死体がその辺に転がる市場へ、車は進み…。

死体が転がる道を車は進んでいってる。

車には窓と天井がなく砂埃が舞いまくってる、ミルルの眼鏡が曇って来る。
ゼロさんもノアもラクダのようにまつ毛が長い、あれで砂埃を払ってるみたい…。

砂埃は眼鏡で防げてる…。
眼鏡がゴーグルになるなんてこの時、初めて知った。
ミルルは近眼で本気に良かった。

だけど…さすがに、この暑さには慣れない。
ゼロさんとノアはこの国の人間だから、こんな場面でも流暢に会話が成立してるけど。
ミルルは暑さで喉が乾き、魔法瓶を手に取って、水をガブ飲みした。


〔だって、冷房が効いた部屋に行きたいから…。

お陰で将軍様から感謝されましたし…。

今回はそのお陰で冷房の効いた部屋で仕事が…〕

【チッ、この糞ババアが!
オメエを恨んでる…。
今、ここで撃とうか?
アハハハ】

《ストップ。
暑いわ。
熱いバトルなんて見たくないわよ。
気温50℃とか…。
ミルルを殺す気?》

ノアへ足蹴りでも食らわさなければならないのに、暑さはミルルから体力を奪う。
尋常じゃない。
これは…。
普通のターシャ人なら吐き戻すレベルだと思う。
ミルルですら暑さで頭痛がする、のぼせそう。

〔もうすぐですわ。
だって、これから更に熱い季節がやってくるのですよ?
毎年、熱期は何名の死者が出るか…。
私も既に運良く成人を迎え、平均寿命は越えられましたし…。
年増には熱期は苦しすぎて〕

ノアは23歳程度ぐらいにしか見えないけど、成人は越えてるらしい…。
確かにこの国、平均寿命が短そうなイメージ。
餓死より熱中症で死にそう。

≪この国の平均寿命って何歳なわけよ?
17歳なんでしょう?
さっき、教えてくれたわよね?≫

〔覚えが良いですね、正解ですわ。
17歳です…。
ミルル様ぐらいですね〕

≪ミルル、長生きしたいわよ…。
絶対、ターシャ国へ帰るわよ。
あそこなら平均女性で86歳まで生きれるんだから…≫

〔そうですよね…。
やっぱり長生きの秘訣は…冷房の効いた部屋なのかしら?
最近、60℃の熱期は心臓に悪くて…。
もうすぐ熱期が到来するかと思うと…陰鬱で…〕

この国、砂嵐が酷くて…。
直射日光がない分、助かってる。
ミルルもそこまで日焼けしてない。
平和国のヴァカンス島の方が日焼け止めが必需品だった。
今、日焼け止めを塗ってない割りに日差しが痛くない。
ただ、ドライサウナの気分…。
長時間いると気分が悪い、10分ぐらいからもうキツイ…。

【猫被ってんじゃネエぞ、コラ。
カスが…!
ノアは警戒スベキダ。
ミルルにとって危険因子ダ。
コイツは嘘しか吐かネエ。
糞が!】

〔まあ、ご冗談を…。
さ、さ。
もうすぐつきますわよ。
ミルル様〕

車を運転してるノアは愛想笑いしてる。
ミルルは助手席へ座らされた。
ゼロさんは後ろの座席。
本当は後ろ座席へ行って、ミルルは…ゼロさんの隣に行きたかったんだけど。
ノアに助手席へ座るように促された。
後ろの座席は揺れが強いらしいから。
この車もオンボロみたい。
ノアの車で窓のないオープンカーだけど。
ところどころにヒビが割れてる。

確かに、ミルルは今…。
少しでも揺れたら吐きそう。
とにかく、ココは暑すぎる。

☆☆☆

そのあと、軍事施設の表玄関へ着いたらしい。

ノアが黄色のカードをポンチョの中から出してきて、改札口のような、鍵穴へ入れた。

カードキーと同様の仕組みがこの国で流通してるみたい。

[軍事パレードを抜けて何をしてた?
将軍様がお怒りだぞ]

黒装束を身にまとった監視員が一人、罵倒してきた。

〔私は別用がありましたので…〕

ノアが黒装束のフードを頭から外して、監視員へ顔を見せた。

[ノアか…。
それで…。
ミルル様と何をしてた?
突然、外をほっつき歩いて。
観光でもしてきた気分か?
エエ?
将軍様があぐらをして待ちかねてる]


〔その件については…。
私があとから直々に将軍様へお話いたしますわ。
少しお土産が着いてきましたが…〕

[まさか、隣にいるのは…。
ミルル様なのか?。
頭のフードを外しになさらないが…。
将軍様の容姿に似てるらしいと言うのは本当なのか?]

〔まあ、これは上層部のみの極秘なので…〕

[それから、隣にいるのは…。
誰だ?
軍のみの…極秘か…]

〔私が来たからには万事進むでしょう。
そこをお通しください〕

ノアは冷房の効いた部屋へ行く権利はないみたいだけど。
この国では上層部らしい。

そんな雰囲気が伝わってくる。

[走れよ、ノア。
今回ばかりは冷房の効いたエレベーターを使っていいと、将軍様から許可が出ている。
ありがたく思え]

〔それは光栄ですわ。
我が邪心国、将軍様…万歳ですわ〕

【ウダウダ言ってんじぇねぇゼ。
先、行きやがれ、ゴラ】

ゼロさんはまだ、ノアに対して怒ってるみたい…。

それからこの〔将軍様、万歳〕は…。
邪心国でのスローガンみたい。
ミルルもこの国で暮らしたらこの言葉だけは言わなければならないことになるんだと思う。

郷に入れば郷に従えだから…。

少し進んで、今回は冷房の効いたロビーへ着いた。

《何よ、ここは…。
冷房が効いてるじゃない?
さっきは冷房が効いてない部屋ばかり選んで…。
ミルルを殺す気なの?
ノアは…》

〔将軍様から許可が下りましたので〕

☆☆☆





ロビーは割りとゴージャス過ぎる。


天井には巨大なシャンデリアまである。
この国にこんな設備があったのかって、レベルにココだけが快適。

巨大な映画館並みの薄型テレビがある。
それからジュースが自動で出る飲み水機。
ミルルと背丈が同じぐらいのアメジストの原石まで飾ってある。
ところどころが贅沢の限りを尽くしてるって感じ。

部屋は冷房が効いてるし…。

エレベーターの前にプールがある。
プールの水に触れてみた。

温水プール。

ここは冷房が効いた室内プールらしい。


〔室内プール、憧れでしょう?
ここは王族しかつかえない部屋で。
普段は私、入ったことないんですよ。
あれはキンキンに冷えたヤギのミルクで。
将軍様のご厚意で〕

《先へ進むわよ。
ヤギ、人肉食べてるんでしょ?》

〔キンキンに冷えたヤギのミルクですよ。
普段は生ぬるいミルクしか飲めないのに。
氷が入ってるんですよ〕

《行くわよ。
私は平和国バァカンス島の名産。
ココナッツミルクの方が好きなんだから》

〔ヤギのミルク。
すごい人気なんですよ。
ミルル様のお口に合うかは分かりませんが…〕

【ハン?
チンタラしてんじゃネエよ。
贅沢しやがって…。
死にヤガレ、ザコが!
カマトトしてんじゃネエぞ!ゴラ!
オメエはオレの敵ダ…、オメエのせいで死にカケタ!
オメエの薬のせいでこうなった!
オレは一生、オメエを許さネエ…】

〔自分が発狂した原因を私に擦り付けるだなんて。
好都合すぎませんか?
私の薬のせいにするなんて…。
どこにそんな証拠が?
薬を飲んでても調子が悪化した可能性もあるのに!
信じられませんわ、この精神構造!!
ミルル様、何でこんな奴が好きなんですか?
私には不明ですわ!
全く、幼児も良いところですわ!!〕

ゼロさんとノアはまだ仲が悪いみたい。
この部屋に入ってゼロさんもフードを外したし、ミルルも同じ仕草で外してみた。

恋愛マニュアル本に同じ仕草を真似れば落とせるって書いてたから。

真似してみたけど。

ゼロさんはミルルを見ずに、ノアを険悪な表情で睨んでる。
ここは楽しくない。

ミルルはベッタリ、ゼロさんへ接近して密着した。

ゼロさんって肩幅があっていい感じ。
男らしい気がする。

キセキさんは昔、ココだけがダメで、ミルルが散々、男らしくなるようにしつけた分、男らしくなった。

それなのに何故かキセキさんはミルルを拒み続けて。
ムカつく。


それに対して、キセキさんって密着しても無反応で大人しい。
来るもの拒まずって感じ。
ココがいいけど。

ゼロさんはノアを睨んで、ミルルを見ない。
ミルルが肩を寄せて抱擁してるというのに。
ムカつく。

《ゼロさんは…。
実は…。
ノアが好みな訳?
あっちばかり見てるわよ!》

【ウゼエ】

《ゼロさんってノアが好きなわけ?》

【ハン?】

《ミルルのことは見ないくせに、ノアばかり睨んでる!
喧嘩するほど仲が良いって諺がターシャ国にあって…。

ミルルのこと、長年好きだったらしい男子が喧嘩ばかりする女子と付き合ったのよ≫

【ハアアア??
邪神語、喋ベロ…フザケンナ。
ノアはオレの敵ダ】

〔そんなコトワザがあるのですか?
ターシャ国って面白い国ですね…。
しかし、私はゼロは遠慮します、ミルル様もゼロを止した方が…良いと感じます〕

≪うるさいわね、ミルルはゼロさんが良いのよ、ノア。
ノアは知らないのね…。
解説すれば、月神タリアって
無口で冴えない男が…ミルルのことが7年以上も好きだったらしいのに…。
ミルルの恋敵、異能マナナ?
ゼロさんは…覚えてるかなぁ?
アイツと付き合ったのよ、ゼロさんが留学生としてやって来る前…。
どっちかと言えば…月神さんとマナナって、いっつも…喧嘩してたわ…。

思えばその男子、全然…。

ミルルと視線があってなかったこと、思い出して…。

ノアとゼロさんが喧嘩ばかりで…ゼロさんがミルルを見ないの…ちょっと寂しいの…》

マナナはミルルと正反対も良いところ。
成績は欠点を取るレベルに最悪だし…。
それから体型も…。
マナナは身長が低く巨乳、髪型はオカッパ黒髪。
モデル体型なミルルと違う魅力もある。
そこが嫌い、嫉妬もある。
ムカつく。

マナナより別にミルルの方がクラスではモテるけど…。
あんな子、幼馴染って認めない。
ミルルは自分が一番が良いの。
キセキさんが一度でもマナナをミルルより選んだことだって面白くない。

でも、キセキさんより何故か。
ゼロさんにも惹かれてる。

キセキさんは色素が薄く猫毛な茶髪、性格はすぐ泣くし…それから高身長な白人系だった。
ゼロさんは肌は褐色、碧の瞳、剛毛な黒髪…性格は荒々しい…アラビア系なイケメン。
全くタイプが違う。

それなのに…。

ミルルは…どうしたら…。
だんだん、何故か…長年好きだったはずの…キセキさんのことがどうでも良くなって来てる。
理由はゼロさんが格好良すぎるから。
ミルルはイケメンに弱いみたい、ちょっとトキメいてる。

【アア?
気があったのか?
ハア?】

ゼロさんはこの瞬間ですら、会話はするけど…ノアを目に隈が出来るレベルに強く睨んでる。
ノアも負けずにゼロさんを睨み返してる状況。
ミルルはゼロさんを抱擁しながら、ゼロさんの顔をずっと凝視してる。

≪別に7年以上も好きとかいう噂は知ってたけど…。
何でだろう?
全くタイプじゃないわよ。
でも、同じ状況だからムカつく訳…。
ミルルなりの女心よ!≫

〔ミルル様をそんなに長年密かに慕ってた男子がいただなんて…。
ミルル様って、モテるんですね…。
確かにモテそうですよね。
女優を目指してるぐらいですから…。
それで…私を冷房の効いた部屋へ斡旋して下さりますよね?
ミルル様…〕

【冗談じゃネェ。
オレはあの女に殺されカケタ。
向こうもコチラもお互い怨んでる。
チッ】

《ゼロさんはミルルこと…どう思ってるわけ?
全く拒まないけど。
ナデシコやカンサイにも同じ態度だったじゃない?》

ナデシコは和風な顔立ちの女子。
カンサイはロリ体型な女子。
両方ともキセキさんを巡る恋敵だったけど・…二人とミルルは好みがソックリなのか。
ナデシコやカンサイもキセキさんが留学生としてやって来るなり、アタックに忙しかった。

その時、二人に絡まれても…他の女子に絡まれても、ゼロさんは全く動じず。
普通に触られまくっていた。
今もそうだけど…。
ゼロさんは常に来るもの拒まずな態度を貫いてる。

それに反して、キセキさんは常に嫌がり続けていた。

ゼロさんが何を考えてるのか…。
ミルルには全く読めない。
ここまでやって来るぐらい何故か好きなのに。
理由がないから困ってしまう。
敷いて言えば、命を助けられたから。
きっとそうだと信じてる。
それも確かじゃない。

理由はないけど、よく夢に出てくる。
ミルルは何故か真剣に好きになればなるほど、叶わないことが多い。
どうでも良い男子にほど、よく言い寄られる。
どうすれば、ゼロさんがミルルへ落ちる訳なの??

ミルルはどうすれば良いの?
好きって気持ちを隠して生きてる方が良いの?
ミルルの何が悪いわけ??
別に叶わないから好きとかそんな理由ではない。
ミルルはただ、イケメンが猛烈に好きなだけ。
クラスの男子はミルルの眼鏡に叶わない…それだけの理由なのに!!

【ウ、ゼ、エ…。
去れ】


〔ミルル様、ゼロのどこがいいんですか?
私を冷房の効いた部屋に入れても。
ミルル様、専属のメイドになるのは私なんですからね!〕

《ゼロさん、ミルルは男前で好きよ。
ノアも冷房の効いた部屋に入れてやるわよ。
この国の将軍が許してくれたらだけど》

〔うわぁ、嬉しいです。
この頬に出来た痣は…。
ミルル様への忠誠の証!〕

ノアは頬に出来た痣を手で摩った。
ミルルは肩で溜息を吐いた。

《これから更に暑い季節がやってるんでしょ?
仕方ないわね…》

【オメエは帰りやがれ、ゴラ!
コイツには裏がアル…。
オレも同じ手で、落とされた…。
信用してんじゃネエよ。
殺してやろうか?
今ココで…。
ハン?】

ゼロさんとノアがバチバチに視線が合ってる。
ゼロさんはノアへ指さししてから、どこに隠し持ってたのか不明だけど…。
ナイフを手に持って威嚇を始めた。
ノアはカラカラ笑い出した。
ゼロさんは余計に背中を痙攣させて怒り狂ってる。

ミルルはゼロさんに密着しながら、ゼロさんだけを見詰めてるのに…。
全く視線が合ってない状況にある。
何なの?
これ?

〔うふふふふふ。
だって、通報したら位が上がるんですよ?
冷房の効いた部屋へ行けるんですよ?
それ以外に私が…。
どんな悪いことを。
ミルル様を私が…。
裏切るだなんてそんな…。
あははは〕

ノアは演技が下手すぎる。
女優には向いてない…。
多分、裏切るのは分かってるけど。
さすがにこの酷暑。

どんな手を使っても。冷房のある部屋に行きたい気持ちだけは同感。
特にミルルはターシャ人だから50℃には耐えきれず。
今、フラフラ…。
冷房のあるロビーにいるけど…一瞬、外へ出ただけで体力を奪われる…これは予想以上。

《エレベーターも冷房効いてる
のよね?
将軍様って、怖いわけ?》

〔将軍様は素敵な方で。
私は邪心国万歳ですから〕

【ククク…。
口には言葉を選べ…。
さもなければ死が訪れる。
処刑をこよなく、愛するお方ダ】

《処刑ねえ…》

ミルルの実父が…。

そんなサディストで嬉しくはない…。

〔ゼロ、今日は自棄に笑うじゃないの?
ミルル様は知らないのですね。
この国では人が亡くなったら笑うのが流儀なんですよ。
泣いた者は死者の道連れにされるので…〕

《意味がわからないわ。
不幸なときに笑うわけ?》

〔ブラックジョークですよ。
将軍様一族はブラックジョークを好んでらっしゃるので。
フフフフ。

まあ、大丈夫ですよ。
ミルル様は良い素材だとお喜びです、将軍様は…。
だからきっと…〕

少しカチンと来た。

《ふん!
ミルルは。
誰も親なんていないわよ。
親と思ったこともないわよ。
この世へ一人で生まれてきたんだから!!
現に一人でも立派に生きてるでしょ?
誰からも指図なんてされないんだから!》

ミルルは。
守銭奴のようにミルルをこきあつかって、金を搾り取った母も親と認めないし。
精子バンクの父も親なんて認めない。

ひねくれず真っ直ぐ育ったの、奇跡だと思う。
ミルルは。
地球に残された最後の清純純朴なる乙女なんだから。

☆☆☆

エレベーターの中も広い。
全身鏡とイスが5つぐらいある。

《この国のどこにこんな資金が》

〔邪心国は将軍様があっての国ですから。
この国の大地は全て将軍様のもので。
私たちは将軍様に土地を借りてるって形で地代を払うことになってます。
これが税金で、邪心国は成り立ってます〕

《ターシャ国も王政の元にそんな時代があったみたいだけど…。
邪心国もそうなのね…。
革命や反乱は起きないわけ?》

〔そんな将軍様におそれ多い。
我が国でそんなことを考える非国民など、一人もいません〕

【いたとしたら死刑ダ。
ミルル、オメエは後悔してんのか?
コラ…】


ミルルは相変わらずゼロさんと接近してイチャイチャしてるつもり。
近付けば逃げるキセキさんと違って、逃げないからやりやすい。
今、ゼロさんの掌を握って遊んでる。

腕にリストカットの跡がある…これは前までなかったと思う。
ゼロさんの頭には打撲傷もある。
これも痛々しい。

《手がゼロさん、大きいのね。
男らしくて好きよ。
ミルルの好みだわ…》


























































































第4部ミルルE


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第4部ミルルG










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