アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

4部ミルルE

≪ミルル視点≫

 
≪窃盗は…裁かれないわけ?≫
 
〔詐欺、窃盗、強姦、売春、殺人、放火、麻薬密売などは…この国では合法です。
 唯一、将軍様への反逆罪だけは死を持って制する重罪とされてます…。
 そこだけは覚えて下さりませ…。
 ネズミチュウ太郎、この方は…将軍様の御令嬢ですわ〕
 
−−−ほんまかいな、よく見りゃ…確かにクリソツやで…チュウ…。
 なんで、ここに何の用や…チュー−−−
 
〔ゼロに会いたいらしくて来たらしいのです…。
 面会ぐらい良いでしょう?〕
 
−−−まあな…。
 別に面会ぐらいは良いで…。
 許してったても良いで、チュウー。
 何で、ゼロに面会かは知らねえが…。
 チュウ…−−−
 
ミルルは黙り込んだ…。
 ゼロさんは寝てるし…。
 壁に大きな血痕がへばり付いてる。
 冷房の効いた独房。
 いろいろ衝撃的すぎる。
 
〔起こした方が良いかしら?
 鎮静剤が効きすぎてるみたいね…〕
 
≪お願いするわ…≫
 
ノアはフードを外してる、ミルルもこの施設へ入館と同時に、黒装束のフードを外した。
 
胸の鼓動が高鳴った。
 
〔ネズミチュウ太郎、つっかえ棒みたいなものを貸してくれないかしら?〕
 
−−−このステッキで良いか?
 これな?
 反抗する囚人を殴る用の奴やで−−−
 
ネズミチュウ太郎は金色の棍棒のようなものを持ってる。
 ステッキというか…鬼が持ってる棍棒にしか見えない。
 
ノアはそれを手に持つと…ゼロさんが寝ている牢屋の隙間から…棍棒を入れて、ゼロさんの体をそっと動かした。
 
〔成功かしら?〕
 
≪あまり叩かないでよ…。
 そんな棘が生えた棍棒でなんて≫
 
−−−だからステッキやで。
 棍棒ちゃうから…チュウ…−−−
 

ノアは…3回くらい、金色の棍棒でゼロさんを揺らした。
 何故だか…この瞬間、緊張する。
 
ゼロさんがそこで起きた。
黒装束に身を包み、頭のフードから顔だけ出した褐色の肌に180CMを越える長身。
それから緑の瞳に剛毛そうな黒髪。
ミルルの夢に出る姿とまさしく同じ。
何故か一目惚れか謎だけど…理由がないけど、別れてから頻繁に夢で遭遇する。
数えるぐらいしか会ってないと言うのに。
ここが不思議でたまらない。

☆☆☆
 
ミルルと目が合って、そこでミルルのことが分かったのか、声を発した。
 
【どうして、ココへ来やがっタ…?】
 
≪理由はないわよ、何故か…ゼロさんの夢を何回も見て。
 それから…。
 友達になっても良いかしらって思ったからよ≫
 
これ以上、実際に会ってみると話せなかった。
 もっと他に言いたいこともあった気がするけど。
 どうして、テロから誘拐されたときに助けてくれたのか聞くつもりでいたけど…。
 ゼロさんの頭の傷や、壁に付いた血痕…。
 それを見れば、聞くことができなくなった。
 
ゼロさんはコチラを見ない。
 視線は合わない。
 
【もう二度と会わねえ方がオレは良かっタ…。
 楽だっタ…】
 
≪何を言ってる訳?
 ここを脱出するわよ。
 しっかりして≫
 
言いたいことが言えなくなる。
 
≪ゼロさんは前、ミルルの命を助けてくれたじゃないの?
 恩返しをするわよ。
 ノリに掛かった船だけど…≫
 
【オレは…。
 欠陥だらけの人間だ、それだけの理由がある…離れるべきダロウ】
 
≪うるさいわね…。
 ブチ切れるわよ!≫
 
ミルルは脚で牢屋を足蹴りしてみた。
 良い音がガンと鳴った。
 ミルルは怒ると物を蹴り倒したくなる…これは癖だけど…。
 今回は脚が痛かった。
 
ゼロさんは壁へ頭突きをしてオデコから血を流してるみたいだけど…。
 今のけりで…ミルルには脚に痣が出来た。
 
≪ミルルは一度、決めたら考えなんて変えないわ。
 ゼロさんと友達になってやろうじゃないの≫
 
【ハア…ウゼエ…。
 オメエにはキセキがいたんじゃネエのか?
 他にいるダロウ…。
 アホなんじゃネエのか?
 ココは地獄ダ、血の海しかねえ世界ダ。
 チッ…本気でオメエは低脳ダ。
 幻滅も良いトコダ…】
 
〔それはそうですね‥。
 私も同意です。
 ミルル様は本気でゼロに会うためだけにココへ来たのですか?〕
 
ノアも隣でウルサイ。
 
≪うるさいわね。
 振られたのよ!
 キセキさんには…≫
 
‐‐‐振られたってか?
 チュウ…。
 何の話やねん…-−-
 
〔はあ…。
 ミルル様は…平和国で女優になりたいようですが…。
 どうもキセキさんと言う方に振られたようですね…。
 それから…ミルル様が平和国で女優になるについては…。
 キスシーンが入るドラマも演じなければならないようですが…。
 どうもビジネスキスが嫌なようです…。
 それで、初めての方は気に入った方じゃないと嫌だと言う理由で・・。
 ゼロを指名なさりました…〕
 
−−−なんのこっちゃーな…−−−
 
ネズミチュウ太郎がうるさい。
 というか、ミルルは柄になく顔に血が上がって来た。
 もう一回、耐えきれないから、牢屋に足蹴りをした。
 
ガン…!
 
と良い音が鳴る。
 割りと靴も痛い。
 
≪あれはジョークよ、ノア。
 黙ってくれない?
 ミルルなりに思考を巡らして吐いた嘘の動機よ≫
 
ミルルは肩で息をした、ミルルは怒らせると相当怖いってことを見せつけた。
 今回は良い蹴りだった。
 牢屋の檻に少し亀裂が入った。
 靴で何回も檻を蹴った、家以外でこれを見せたことはあまりない。
 学校の廊下でもたまにしてしまうけど…。
 
ゼロさんはミルルが一生懸命、牢屋の檻を蹴りたくってるのを静かに見つめてる。
 ゼロさんの緑の瞳は相変わらず死んだ表情。
 ミルルは意外に照れ屋だと思う。
 
〔そうだったのですか…。
 やはり、そんな馬鹿な動機な訳ございませんよね…。
 それで・…ミルル様がこの邪神国へ来た本当の理由は…。
 やはり、世界征服ですか?
 将軍様と同様に…〕
 
そんな訳ないけど…。
 誤解されてる。
 確かにミルルは最強の苛めっ子だけど…。
 
−−−ホンマかいな、
 この姉ちゃん・・すごいな。
 まさか、将軍様を倒してこの国を乗っ取る気かいな。
 つーか…すげーな…。
 この牢屋の檻…一応、金属やで…。
 何か、変形してんねんけど…どんな馬鹿力やねん…。
 コイツ…チュウ…−−−
 
〔ミルル様の体術に関しては…保証しましょう・・。
 私より数段上ですね…。
 それから…射的についても…超人級のスキルがあります…・。
 さすが、将軍様の御嬢様…というところでしょうか…〕
 
≪うるさいわね!
 ミルルは別に世界征服をしに来たわけでもないんだから…≫
 
ミルルは照れても足蹴りがしたくなる。
 牢屋に何回も靴で蹴った。
 運動靴で来てるけど…。
 確かに変形してる…。
 ミルルはオリンピック級の運動神経があることは認める。
 女優しか目指してないけど…。
 
〔それなら…本当の理由は何ですか?
 まさか…本気でゼロとキスするために来たなんて馬鹿な理由じゃあるまいし…。
 正直にお話下さい〕
 
≪うっせえわね!!
 黙れっテンのよ!!
 馬鹿やろう!!!≫
 
ミルルは怒りの頂点に達した。
 
脚で思いっ切り、鉄を叩けば…鉄の檻は変形した。
 肩で息をして、白目を向いて…怒りのせいで倒れそうになった。
 怒り過ぎるとこうなる…。
 心臓がバクバクするから、胸を抑えた。
 
ゼロさんはそれでもミルルと視線を合わして来ない。
 何なの?
 あれ?
 ミルルが蹴った、檻を死んだ表情で見詰めてる。

〔ミルル様…大丈夫ですか…〕

−−−この姉ちゃん、すげえな…。
鉄の檻、もう動いたで…。
つうか…鍵使う気やったんやけど…−−−

ネズミチュウ太郎が…何か、震えながらミルルを見て、檻を見詰めて…忙しいけど‥。
ミルルは血が上り過ぎて、それどころでもない感じ、地面を足で蹴って、ジタバタして…。
胸を抑えた。
癇癪持ちかもしれない・…。
今回は暴れすぎて、キツイ。

〔そういうことです…。
ゼロ…。
命拾いをしましたね…。
ミルル様に感謝しなさい…〕

【オレは別に…ココで良い・・。
もう生きるのに疲れタ…。
くたばる前に一花咲かせる…暴れ狂う気でイル…。
殺し足りネエ…。
別に公開処刑で良い、未練もネエ…】

〔ゼロは…数名の幹部を巻き沿いに殺害をしてしまって…。
発狂を来したと判断されたのですが…。
あれは演技だったのですか?〕

【全く…覚えてネエ…畜生めガ…】

〔そうですか…。
それもあり得そうですね…〕

ゼロさんはミルルが変形させた檻に視線がずっとある。
ミルルとは決して、視線を合わして来ない…。
ちょっと、ムカつく。

≪ウゼエのよ、中2病じゃあるまいし…。
そんなとこに籠って、頭を壁に激突したり…リストカットしたり・・。
他にもいっぱい、何してるかしらねえけど…。
出て来なさいよ、ミルルなりに恩返ししてやろうって言ってんだから!≫

ちょっと頭の血管が切れかけた、怒り狂ってる。

≪ミルルを困らしてくれたんだから…。
あとで…思いっ切り泣かしてやるから≫

−−−姉ちゃん、怒ってるで…。
ゼロ、従った方が良いんとちゃう?−−−

〔ミルル様、怒りを抑えてくださいまし。
それから…もちろん、ゼロの居場所を教えた私へはあとから褒美をもらえますよね?
きっと…ミルル様専属のものに…〕

≪何を言ってるの?
ノアは…ミルルの専属おつきのモノに決定だったんでしょう?≫

〔あれは嘘です…。
これだけの手柄を上げたのですから…まあ、ミルル様が自らの判断で私を選ぶことは、もう決定ですが…〕

≪ミルルには…別にそんな権限なんてないんだけど…≫

〔残念ですが・・もう将軍様には全てばれてます。
ミルル様の居場所が・・〕

≪はああ?≫

〔あの…軍事施設には監視カメラもありますし…。
それから・・勝手ながら…ミルル様の体内にも… マイクロチップが入ってますので…〕

≪何の話なのよ?
どこによ… マイクロチップ。
何につかうわけ?≫

〔3×10mmのペット不法投棄用に作成されたマイクロチップです。
動物実験では体内に影響がないと判定が下ってますが。
我が国で人体へ導入されたのは最近のことです。

発信機が入ってるので、逃げるなどと馬鹿なことはお考え遊ばせないように…。
ミルル様にはこの国で素晴らしい地位を将軍様が保証して下さりますから…。
その時には是非とも、私をお仕えのモノに選抜してくださいませ〕

≪痛いジョークは止めてよね?
ミルルは…帰るわよ・・。
ターシャ国へ≫

〔まだそのようなことをお考えですか?
ミルル様はこの国で女帝になりに来たのではないのですか?〕

≪はあ…?
違うわよ≫

〔では…なぜ、邪神国へ自らの足へ…。
自由な楽園を求めてきたのではないのですか?
ターシャ国からくる平民は大抵、自爆テロへ回されるのですよ?
それが…ミルル様へは最初から王族と同様の身分を将軍様が保証して下さります。
これ以上、何の不服が…?〕

≪話が違うじゃない?
ノア…。
私に帰国を手伝ってくれるって。
ノアを殺さなければ…帰国のための情報をくれるって話は…≫

〔嘘に決まってるでしょう?
ミルル様の専属お抱えになれば…私は冷房の効いたエレベーターが使えるんですよ…。
冷房の効いたエレベーターだけは…王族に関わるモノだけの特権ですから…。
どれほど憧れていたことか…〕

≪それだけの理由で…???≫

【ハン?
ミルル・・。
オメエ、気は確かカ…。
この国で暮らす気か?
オレは…ターシャ国へ帰るように促した筈ダ。
まさか、世界征服すんノカ?コラ…】

≪する訳ないでしょう?
勘違いしないでよ!≫

ミルルはまた怒りと照れで牢屋を足蹴りした。
どんどん牢屋の檻が変形して行く。

ゼロさんは死んだ表情でそれを見詰めてる。
ゼロさんが何を考えてるのか…ミルルからは全く読めない。
ゼロさんとミルルの視線が合うことがない。
ミルルは必死で睨むぐらいゼロさんを凝視してると言うのに。
少し、ミルルの機嫌が悪くなる。

ミルルってキセキさんの時もそうだったけど…。
追いかけるのも好きかもしれない。
と言うか・・見てくれないのはムカつく。


≪ゼロさん、聞いてる訳?
どうして、ミルルを見てくれないの?
情けないとか思ってるの?
そんなふうに頭から血を流して…。
情けないわ!
確かにそうだわ!
見損なってるわよ!
ミルルが会いに来たと言うのに…。
何なの?
クラスメイト全員、ミルル以外にもカンサイもナデシコも…。
ゼロさんのこと、心配してるのよ!!
ミルルももちろんそうだけどね…!!≫

難波カンサイはロリ低身長な黒髪ツインテール…。
大和ナデシコは和風系の標準体重身長、黒髪ストレートロング。
両方ともミルルのクラスの女子。

二人ともキセキさんが好きで、しかも…ミルルと好みが同じなのか、留学生…ゼロさんがやって来るなり、格好良いとうるさかった。
ミルルはあの二人と男を取り合ってたけど…。
最後に勝ったのは、ミルルだって思いたい。

だって、あの二人は…ターシャ祭りの時…勃発したテロ事件で起きた爆発のせいで、骨折を起こした。
今も・・二人ともターシャ国立病院の相部屋で、入院中だと思うから。
その件に関しては何とも思わない。
だって、あの二人…予想以上に元気だったから。

偶然、二人の病室へ顔見せをしたときも…ゼロさんのことでウルサカッタ。
ゼロさんはミルルのクラスで猛烈にモテてた。
全員がキセキさんか、ゼロさんで悩んでた。
ミルルは何故なのか、イケメンしか好きになれないみたい。

この性癖はどうしたら…。
キセキさんは泣き虫でガックリ来てたけど…。
ゼロさんは…信じられないことにリストカットをしてる…。
もう、頭に血が上がって仕方ない。

キセキさんが泣き虫なのを蹴り倒して、躾けたのはミルル。
今回も根性でミルルは更生をさせるつもり…足蹴りで治るかしら?
リストカットって…。
ちょっとレベルじゃない、激怒しまくってる。
この男子、ミルルを失望させてる。

ミルルと正反対な女子、異能マナナは・…常に何故か、キセキさんを甘やかしてた。
でも、ミルルは飴なんて与える気にならない。
鞭を与えたくなる。
怒りが止まらない。
沸点を越えて、今…痙攣が起きてる。
耐えきれないレベルの怒り!

【オメエには関係ねえ話ダ。
帰ってホシイ…。
ハハハ…】

ゼロさんは牢屋の中で床に横たわったまま、寝返りを打って…ミルルへ背を向けた。
小さく笑ってる…猛烈に憎たらしい。

≪情けないわ!!
ブラックな雰囲気はどうしたわけ?
病んでただけなの?
馬鹿!≫

ミルルは足蹴りを牢屋の檻へ数回した、ゴンゴンと金属音が鳴り渡る。
一番、腹が立つのは…全く、ゼロさんがミルルを見てくれない件について。
何なの?
あの態度…。
キセキさんでも嫌がりながらもミルルを一応、見てくれたのと言うのに・・。
ゼロさんは視線すら合してくれない。
何か、悔しい。

〔ゼロは・・今、調子が悪いので…〕

≪うっせーわね…!
発狂って何の話よ・・。
頭から血を流してるだけじゃないの?
ざけんじゃないわよ!≫

〔今は落ち着いてますが…。
一時は本当に…暴れ出して・・。
大変だったのですよ…〕

ミルルはノアに詰め寄った。
ノアは困った表情をした。

≪本当かしらね?
全くそうは見えないわ…。
演技だったんじゃないの?≫

〔まあ、容態が落ち着いたみたいですし…。
こちらとしては別にそれで良いのですが…〕

≪ったく…。
記憶喪失ですって?
ミルルのことはしっかり覚えてるじゃないの?≫

【帰れヨ…。
耳がイテエ】

ムカつく…ミルルに背を向けて寝転がってる…。
こっちを全く見てこない。
檻の中にいる動物な気分なの?

≪視線、合してくれるまでミルルはいるわよ!
それも邪神国へ来た目的のうちなんだからね!≫

【オメエはターシャ国へ帰れる気で…。
本気でいるのカ?
浅はかダ…。
アハハハ…、笑えてくる…。
ククククク…】

背中を向けて寝転がったまま、ミルルへ語りかけてる。
声が低く小さい。
ムカつく。
爆笑されてるらしいけど…意味不明…。

≪ねえ、ゼロさん…。
ミルルと一緒にターシャ国へ戻りましょうよ。
クラスメイトも待ってるわよ。
ミルル、楽しかったわよ。
ゼロさんが留学生としてやって来て。
あれからクラスの女子全員、覇気がないわよ…。
もちろん、ミルルが一番そうだったけど…。
ナデシコやカンサイもまだ入院中な筈よ…。
帰ってきたらどうなの?≫

【ハン?
馬鹿なヤツだ・・。
オメエだけ帰るべきダロウ…。
クふふっふ…腹筋が捻じれる…。
アホすぎる…ハハハハ…】

ゼロさんがどうしてこんなことになってるのか…。
全く話が見えないし…。
発狂ってどういうことなのか謎だけど…。
リストカットまでしたらしい。
きっと、この国はゼロさんに合わないんだって思う。

≪ゼロさん、きっと…この国よりターシャ国の方が合ってるわ。
そんな牢屋にぶち込まれるぐらいなら、ミルルと一緒に帰って来なさいよ。
今なら、ミルルと一緒にさえなれば…。
ターシャ国籍がもらえるわよ。
良いニュースでしょう?≫

【馬鹿すぎる女ダナ…。
ハハハハ…。
オメエは…】

ちゃんと、会話をすれば…言葉のチャッチボールはあるのに…。
ムカつくのは・・ミルルに背を向けたまま、床へ寝転がっていること。
それから…檻の中から自発的に出ようとしないこと。
ミルルは必死で救出しようと檻を変形させてるのに…。
あれって…何様のつもりな訳?
責めてコッチを向いて会話をすれば…良いものを…。
イライラする。

それから…ノアもだけど…この国の人の笑いのツボ・・・。
ミルルには全く理解できない…。
どうして、あんなふうにカラカラと笑い出すんだろう?
突然。

−−−そういりゃ、聞いたで♪。
ゼロって、ターシャ国では激モテやったんやってな…。
オリャ、行ってみてえわ…ターシャ国へ。
邪神国って受けるんやなぁ、ターシャ人に…。
ターシャ国には…かわい子ちゃん、いっぱいいるやろうか?
オリャ、猛烈に激モテやろうか?
ウハウハ出来るやろうか?
チュウチュウチュウ…−−−

ネズミチュウ太郎が涎を垂らして、装着してる黒装束ポンチョを汚してるけど…。
ミルルは絶対、ネズミチュウ太郎は…モテないと思う。
少なくともミルルの好みじゃない。


〔そう言えば…。
前回、ミルル様を拉致した際も…。
ゼロが将軍様へ言い寄って、ターシャ国への帰還を促したのですね…。
しかし、私の判断では…。
ミルル様こそ、将軍様が長年求めていた人材だと思います。
現息子二人に関しては…あまり将軍様の容姿に似てらっしゃらない…。
確かに整形手術は施しましたが…。
それでもあまり、将軍様には容姿が似てらっしゃらない。
そのせいで国民からも反感がありますし…。
ミルル様を女帝として迎えても…カリスマ性があるでしょう…。
現に、平和国に関しては…女帝も過去に存在しましたし・…。
それも私としては良いかと…〕

≪勝手に話を勧めないで頂戴≫

〔しかし、この鉄パイプをも変形させるだけの筋力…。
それから僅か一週間にすら満たないうちに邪神語をほぼ完全マスターするだけの知力。
それから、ターシャ人であるのにも関わらず…冷房の利かない50℃を上回る邪神国を回るだけの体力・・。
全ての資質が揃ってらっしゃると思うのですがね…。
見知らぬ大地へ飛び込んでくるだけ度胸もあるようですし・・。

それに反して、現将軍様の息子二人は…奥様方に似て、出来が悪くて…。
冷房の効いた20℃の部屋へ入って籠り、召使に対して粗々しく扱き使うだけの暴君で…。
評判が悪くて…。
ミルル様の方が随分、しっかりしてます。
私はミルル様に期待してるんですがね…。
私自身、冷房の効いた部屋への憧れもありますし…〕

要するにまとめると…。
この嘘つきばかりのノアが…ミルルに足蹴りをされて、頬に痣を受けてなお、ミルルに対して…お世辞ばかり言うその理由…。
それは…冷房の効いた部屋で過ごしたいがために…ミルルを手中へ落とそうとしてるみたい…。
確かに…この国で冷房は必需品で…それから水も貴重なことぐらいは覚えた。
納得する。
冷房があるのとないのと死活問題。
50℃のサウナは暑すぎる・・。

それから、この部屋は涼しい。
囚人の仕事も割りと良いかもしれない。
この国では悪が優遇される文化みたいで…。
ミルルには理解できない価値観ばかり。

☆☆☆

≪冗談じゃないわ、ミルルは帰るわよ。
マイクロチップが入ってても何でも、知らないわよ。
いつの間に入れたのよ?
ミルルが気絶してる間に??
空港へ走って頂戴よ。
そこから帰るんだから≫

〔残念ながら…空港へ入るのは無理でしょう…。
空港とは我が国ではほぼ、使いませんから・・。
警備があそこほど厳重なところもございません。
空港と言えども実態は…将軍様の自家用ジェット機が集まってるようなものです〕

≪嘘でしょう?
じゃ、何で帰るのよ?。
ミルルは・・どうやって来たの?ここへ?≫

〔潜水艦です。
それ以外・…方法は…〕

≪潜水艦ね…。
動かせる?
あと、ゼロさんも一緒に…・ダメかな?≫

【テメエは愚かダ…脳なしダ。
マイクロチップを入れられたノカ…?
チッ…。
それなら…将軍へ直々に許可を貰うしかねえダロウ。
他に道は見つからネエ…】

ゼロさんはミルルへ背を向けたまま、まだ視線すら合わない…。

≪将軍から…。
えっと…。
ミルルって…嬉しいことか…悲しいことか…。
実の娘なんでしょう?
実の娘には…甘いよね?
きっと・・≫

【オメエはこの国を舐めすぎテル…】

〔それはどうでしょう?
将軍様には家族を愛すると言う感情が欠落してますから…。
歴代に名を残す非情な絶対君主として、この国の王者に君臨してます…〕

−−−やっぱ無理ちゃう?
この嬢ちゃん、舐め過ぎてるで・・。
この国のことをや、ここは嬢ちゃんのいる国とは大違いやで。
もう帰れへんのは辛いと思うけど…。
慣れなしゃーないで…チュウ…−−−

ゼロさんとの再会は嬉しすぎるけど…。
ミルルは今、本気で戻れない橋へ来てしまったのかもしれない…。
ちょっとだけ後悔してないと言えば、やっぱり嘘になる。
最初に書いた心理テストは…一応、正直に回答したつもり・・。

≪あとは野となれ山となれよ。
何とかなるでしょう?
将軍に会おうじゃないの?
とにかく、ゼロさんはココから連れて行くわよ≫

〔将軍様がなんとおっしゃるか…。
しかし、まあ…。
将軍様はもしかしたら…ミルル様には甘いかもしれませんがね‥。
確かに、優秀な子供を授かって満足げな表情でしたし・・。
ゼロは数名の幹部を暗殺しましたが・・。
将軍様も気に食わない幹部については無差別で公開処刑をなさってる方なので・・。
あまりその件に関してはどうでも良い感じですので…〕

≪そう…。
それなら…よかったわ?≫

−−−うーん。
良いんやろうか?
こんな狂犬、軍事施設に置いといて…。
また、発狂したら、どうするんや?
大丈夫なんか?
コイツ。
オリャ…巻き添え喰らうのゴメンや!−−−

ネズミチュウ太郎がウルサイ…。

≪あんたよりもミルルの方が…発言権があるんだからね≫

ちょっと高ピーにもなってくる。

≪ミルルに従いなさいよ。
そしたら、クーラーのあるここでずっと働けるかもよ?
ミルルに反論したら…西部の町へ戻してやるから…。
絶対権力を持って≫

−−−それだけはやめてえな…。
ゴメンやで…。
オリャ、長年…窃盗で貯めた金でや、この職を全財産はたいて買ったんやで!
もう、あそこ、常夏どころちゃうんやから…。
マグマやで…。
ホンマ−−−

〔ミルル様…私も…是非とも冷房の効いたエレベーターへ…〕

≪ミルルは悪いけど…ターシャ国へ帰る気でいるわ…。
この国、何食べてる訳?
どうせまずいんでしょう?≫

〔きっと、山羊のステーキと…ミルル様へは山羊のミルクが出ますから…〕

≪やっぱり…帰るわ。
山羊は人肉食べて育ってる訳でしょう?
ミルルには無理だわ。
帰りたいわよ≫

【ハン?
まだ、んな…甘えたこと、考えてやがんのカアアア?
ボケがッ…。
帰れねぇダロウ…。
オメエ、後悔してるカァ?
ターシャ国で弁当、捨てようとしたこと…。
食堂のカレーうどん…あれほど、うめぇモンもねェ。
ココの飯は不味過ぎダ。
チッ…】

〔確かに…私もターシャ国へ行きましたが…。
割りとあの国はグルメですね…。
寿司はちょっとビックリしましたが…生だったので…。
たまご掛けごはんとかも斬新だなと驚愕しましたが…。
食べてみるとなれたので…。
きっと、ミルル様の口にもそのうちになれるはずです。
サソリの唐揚げとかが人気ですね…〕

≪無理よ、やっぱり帰るわ。
世界探検隊じゃないんだから。
ミルルにそんなゲテ物を食べさせないでよ!
食べない方がマシよ≫

【人肉よりマシな筈ダ。
オメエは食べ物で身を持って後悔スベキだと感ジタ…。
因果応報ダな…】

−−−サソリの唐揚げか…。
うまそうやん・…。
軍は本当に良い食事してるねんな…。
オリャ、もう塩と水と輸血で生きてるねんで…。
O型が一番、甘いねんで…。
死体しか転がってへんからな。この町…。
たまに腹減ったら…何でも齧るから・・。
見ろよ、この歯…立派な出っ歯になってもうたわ・…。
邪神国はな・…こう見えても、地面にはミネラルが豊富なんやで−−−

本気でこの国の人ってガリガリばかり…。
何食べてるのかっていう感想だったけど…。
確かにその中でもネズミチュウ太郎は更に細いイメージ。
顔に肉が本当にない。

痩せ過ぎで皺が出てる、年齢は不詳なドブネズミに似た顔立ち。
この国の平均寿命を考えると、実は若いのか。
それとも歳いってるのか謎。
ミルルはイケメン以外、興味がない。
どうでも良い。

ノアのことも…ミルルは美人は嫌い、嫉妬する。
それはターシャ国にいたミルルより人気な巫女様も同様。
ちょっとノアに関してもムッとしてる。










































































第4部ミルルD


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第4部ミルルF










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