アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

4部ミルルA

≪ミルル視点≫


ミルルがジューシーそうで肉汁が滴ってるステーキを見詰めてたら、目の前の黒装束な人間から威嚇された。

〔今、カバンの中身を見せなさい〕

声が…変声機なのか…判別付かない。

≪え?≫

個室に入って相手の態度が急変した。
ミルルは身がまえた。

〔監視カメラがないか確認します。
靴をこちらへ。
服を脱ぎなさい〕

全身黒装束な人は手すら服すら出さずに発声だけしてる。
ミルルとテーブルに対面して座ってる。
テーブルの上には2人分の料理が乗ってる。

≪待って。
貴方は…女なの?
男なの?≫

〔女性です〕

相手はピタ一文動かない。
まるでロボットみたい・・。
声まで変声機でそれから邪神語。

≪顔を見せてください≫

〔良いでしょう。
その代り…。
もし、貴方に監視カメラが一つでもあれば…。
貴方は帰国までに分からない形で殺害しましょう・…。
その覚悟はありますか?
天に誓って、監視カメラは持って来てませんか?〕

≪はい≫

相手の黒装束な人は…そこでやっと、黒いフードを取った。
浅黒い肌にエキゾチックで細い華奢な体躯。
漆黒の縮れ髪が豊かで長い女性。
目は黒い。
アラビア系な顔立ち。

歳は…25歳にはなってない雰囲気…ミルルより年上に見える。
割りと美人系な顔立ち。
ただ痩せ過ぎてる目に少し隈がある。
というか…外人の歳はさっぱり…。
老けて見えても若い可能性もある。

ターシャ人は特に外人から見れば幼く見えるらしいから。
ミルルはターシャ人では美人可愛い系で、外人にも年相応に見えてると思うけど…。
ミルルは美人系になりたいと思ってる…。
カンサイは可愛い系…ナデシコは慎ましい系…、マナナも可愛い系だから。
ミルルは敢えて違うジャンルでキセキさんを攻略する気でいたけど・…。
振られてしまった…。
キセキさんは…誰が好きだったと言うの?
ここは謎…。

外人から見れば…ミルル以外のクラスメイト、全員が…小学生に見えるらしいから…。
ミルルの卒業写真を見せて、クラスメイトの子供っぽさに外人が言ってた…。
結構、平和国ですら…人種差別がまだある…あそこ、人種のサラダボールだから…。
猛烈にそれを感じるのは…空港。
平和国の空港ほど…対応が最悪なところってない。
何か…スチュワーデスさん…猛烈にターシャ人と平和国人とで待遇が違い過ぎる。
それに反して、ターシャ国の空港は誰にでも優しい。
平和国と言う割に…平和国の空港は外人に厳しく、無愛想だとミルルは思う。

外国へ行けば…、小学生相手に…向こうは金をカモって来る気でいる…そんな雰囲気がする。
だから、ミルルは外国へ飛ぶときはなるべく舐められないように装う。
平和国ですら・…意外と平和じゃない…治安が最高とは言えない。
ただ、戦争は放棄してるだけ夢の国だけど…。

平和国の旅行では常にミルルは舐められないようにしてきたから、盗難には逢わずに済んでる…。
割りと外国って一度、舐められるとトコトンまで危ないから…お母さんとミルルだけの女二人旅では危険が毎回、伴ってた。
ボッタクられそうになったとき、平和国語が喋れないお母さんを助けたのはミルル。
お母さんは危ないことに麻薬を売りつけられそうになってた…。
あれ…放置してたら、お母さんだけ車に連れられて…麻薬を打たれてたのかもしれない…。
その辺の女性にお母さんが声を掛けられて…ダイエット薬と称して、麻薬を売られそうになってた・・。
あれは・・ビックリした…。

国際派女優を目指すミルルですら…全く褐色な肌の人種との交流がないから、この女性…何歳なのか不明…。
ゼロさんもクラスでは一番、背が高くて肩幅は広かったし…同じ年の男子より幾分、強そうに見えた。
でも…筋肉質な分、手足は骨に近かったけど…。

☆☆☆

〔あなたは対価として、そこで服を脱ぎなさい。
私はチェックをしましょう。
監視カメラがあれば・…貴女の命はありません〕

テーブルにステーキを置いたまま…。
ミルルに対面する形で座ってるアラビア系女性は、手に隠し持っていたらしい拳銃をミルルへ向けて来た。
ミルルは椅子に座ってるけど…ビックリした、ミルルの鼻先に拳銃がある。

〔従いなさい〕

女性は銃をミルルの心臓へ向けたまま、個室窓にあるカーテンを閉めた。
サファイヤのブルーモスク屋根が見えなくなる。
外の日差しが隠される…。

個室には天井にランプが吊るされてる。
それから旋回する扇風機風の家具もある。

〔脅しではありません〕

ミルルは仕方なしに従った。
知らない人の前で…全裸になるなんて初めてかもしれない。
相手の女性はパンツの中…下着にまで隈なくチェックして、ミルルの耳の後ろ…。
それから信じられないことに…。
ミルルの陰毛あたりにまで確認してる…。

≪ちょっとやめ…≫

叫ぼうとして、ミルルは女性に口を手で封じられ、耳先へ今度はナイフを当てられた。

〔銃は音がします。
ナイフなら音もなく…致命傷レベルなら与えられます〕

≪何を…≫

〔膣の中に盗聴器があるか確かめます。
あと…この機械を通して、胃の中まで調べます。
鞄は見たところないみたいですね…。
少し、我慢してください〕

ミルルはさすがに怒り狂いそうになったけど、相手は銃もナイフも持ってる。
仕方なしにとことん、付き合うことに決めた。

気持ち悪い、女性に膣内部まで見られて、調べ上げられ…。
性交をしたこともないのに指を入れられ、それから喉を開けて、明かりで照らされ…。
肛門の中まで指で広げられ…ペンライトで照らされ…。
胃カメラまで飲まされ…それも裸のまま…。
そのあともまだ足りないのか…ミルルを全身隈なく調べ上げてる。

鼻の穴まで至近距離で見詰めて来る。
その間もミルルの頬には…ずっとナイフ切っ先がある。

そのあとも拷問が続き、テーブルの上にあるビーフステーキが冷めた。
ミルルは全て終わり、怒りで脚を蹴りそうになったところで…。
終了したのか…やっと耳先からナイフが離れた。

≪これで分かったでしょう?≫

〔良いでしょう…。
しかし、誰か尾行してる可能性もあります。
まだ白とは決まってません。
今のは簡易チェックです〕

相手の目は死んでる。
話が通じそうにない雰囲気。

更にミルルの持ってきた白い鞄を勝手に探索して、ミルルの財布を発見して…中まで見てる。
ミルルの私物、全部調べ上げてる。
邪神教の単語帳の中まで1ページずつ隈なく調べてる…。

呆れるレベルに細かい。


≪…。
これからどうする気?≫

〔服を着なさい。
ステーキを食べた後にしましょう〕

≪…≫

食欲が失せたのも確か。
ミルルはショックかも…。
どうして、こんな女に裸を見られて…こんなことされなきゃならないわけ?
命があっただけでも喜ばしいんだけど…。
気持ち悪かった。

でも、考えてみれば…。
相手が女じゃなきゃ…男に…。
これをされてた訳?
初対面で?
それよりマシだけど…。

指突っ込まれた、それだけでも嫌悪感。

≪気持ち悪くないわけ?
指突っ込んで?≫

〔女性探索員より男性探索員の方が良かったですか?
一応、配慮したんですがね…。
眼鏡ミルルということで…〕

≪情報は…くれるの?
印度ゼロさんは…貴女、知ってるの?≫

〔それは機密です。
私には何とも…〕

≪そんな…ちょっと…。
ミルルはゼロさんに会うことだけが目的で…。
別に邪神国へ邪神教を極めるのが目的じゃないから≫

〔そんな理屈ですか…。
そんな理由で飛ぶのなら、今…ここで自害しなさい〕

≪え?≫

〔貴方は道を間違えました。
今、戻れない橋にいます。
それを理解しなさい〕

☆☆☆

こうなることは予想してた、ミルルもそこまで馬鹿じゃない。
ニュースでも邪神国の現状なら知ってる、それに関する資料なら全てに隈なく情報を漁って来てる。
ただ、心残りはないとも言い切れない。
こんな瞬間になって母親の顔を思い出した。
確かに反抗期もあって、和解は果たせなかったけど。
ミルルのお母さんは本当に守銭奴も良いところ。

≪ミルルを殺すの?
前は助けたよね?
今頃になって変わったわけ?
前はどうして助けたの?≫

〔それよりも疑問があります…。
貴方は平和国で女優になる夢があったのではなかったのですか?〕

≪確かにあるわ、それは今もだけど…≫

〔それならどうして…邪神国とコンタクトを取って来たのですか?
そこが理解できません…。
何が魂胆ですか?〕

≪ミルルがターシャ国へ戻された理由をゼロさんの口から直接、聞きたいのよ。
あれで終わりって訳にもいかないでしょう?
クラス中が不思議がってるわ。
ゼロさんが転校なんてデマに決まってるから…≫

〔貴方は現実的な方だと情報を得てましたが…馬鹿なんですね〕

≪邪神国から戻った理由…。
いったい、何が目的なの?
今も教えてくれなかったけど…。
まさか、今回もミルルだけターシャ国へ戻すつもり?≫

〔あなたにはこれから邪神国のために働いてもらいます。
まだ、邪神語がたどたどしいようですね。
発音が聞き取りにくいですね〕

少し今頃になって後悔が始まってるかもしれない。
このあと、どうなるのか分からない・…。
目の前のアラビア系の女性はミルルの口元へハンカチを突き付けて来た。
前はこれを嗅いでミルルは意識を失った。
今回も同じ手を使うみたい…。
クロロフィルムが恐らく入ってる。

ミルルは咄嗟に離れて、一回…女性の顔へ足蹴りをかました。
女性は不意を突かれて、床に屈んだ。
あれは相当、入った。
床に激突した。

ミルルは少林寺なら通ってる。
女優の役にも立ちそうだから。
護身術はある程度、出来る。
連日、押し掛けてくる悪質ファンにも対応できる。

それから…ミルルの鞄だけサッと奪って…鞄の中に入れていた包丁を用意した。
これは…ヴァカンス空港を出てすぐに買った。
インテリアショップでキッチンセットとして…。
奴らに会う前にこれを買う計画でいた。
あと…ライターもすぐに取った。

普通で太刀打ち出来ない人間なことぐらい知ってたから…。
ずっと案なら模索してた。
これでも用意が足りない…。
やはり…警察へ連行してから…囮捜査でも良かったのかもしれないけど…。
それはきっと、警察が反対したはず。
自分で対処なんてたかが知れてることは理解してるけど…。
あとに戻れない。

〔さすがに…運動神経もよろしい…。
私の顔に傷を負わせるなど…〕

≪正当防衛ってことで良いでしょう??≫

〔警察へ連絡はしてないですよね…。
手荒な方法しか…やはりないようですね…〕

≪ミルルを馬鹿にしないで。
2度も同じ手がかかると思うの?≫

女性は黒装束のポケットからライフルガンを出してきた。
挑発が逆に裏目に出たみたい。
ミルルは包丁…。
相手はライフルガン…。

この戦いは不利すぎる。

≪別に意識を奪わなくても…話し合いなら!
分かったわ、降参をする。
包丁は捨てるわ≫

ミルルは咄嗟だからターシャ語になってしまった。
包丁をポイっと床へ捨てた。
しかし…ライターは左手に握りしめて隠し持ってる。


これを着火して、床へ付ければ…勘では防犯ブザーが反応する。
入ってすぐに天井にそう言う装置があるのを確認した。
そうすれば…授業員も走り寄って来るはず。
それぐらいしか案が思いつかない…。

それか…机を反対返しにして…相手のアラビア女性から視界を奪ってる隙に…。
叫ぶ…。
この二つの案が咄嗟に脳裏に過った。

体術ではコチラに部があるみたい…。
ミルルは運動神経ならかなり良いから。
今まで女子に負けた経験なんてない。

女性は床に這いつくばったまま、銃口をミルルへ…狙いを真剣に定めた顔をした。

≪待って…話を…。
本気で撃つ気なの?≫

女性は無表情でミルルのふくらはぎに発砲した。
何が起きたのか分からなくて…。
ミルルは脚を抑えた。

何かが突然刺さって痛い。
ミルルのふくらはぎに突然…注射針のようなものが刺さってる。
針の先には…注射器のようで…液体が入ってる…。
慌てて抜いたけど…入ってしまった。

≪何なの?
これは…薬物?…≫

〔平和国では法的に認可されてませんが…。
ターシャ国でも動物用には許可がありますが・・。
人体には許可が下ってませんが、邪神国ではそうではないので…。
ここは平和国内なのでもちろん違法ですがね…〕

相手のアラビア系な女性は邪神語ではなくターシャ語で説明を始めた。
それもかなり発音レベルが上手。
顔に出来た痣を摩ってる。

≪ターシャ語、分かるの?
それならそうと言ってよ…。
・・・痺れるわ…毒なわけ?
それにしても甘いじゃないの?
やはり今回も殺そうとしないのね?
理由は何?≫

ミルルも釣られてターシャ語になる。
母国語が一番、良いに決まってる。
続いて、アラビア女性は淡々とターシャ語で説明を続けた。

〔…。
射程距離10〜20m。
身長165cm体重45〜50Kg…。
これだけの情報があれば量も調整できます…対人用麻酔銃です。
貴方の健康状態は見たところ、良好でしょう.。
筋肉に入りましたね…〕

≪やり方が汚いわね…。
どこでターシャ語を覚えてたの?
ミルルだけ戻した理由…。
何かあるんでしょ?
どうして…ターシャ村で…ミルル以外には無差別殺人を実行して、ミルルだけ拉致してそのまま返したの?
目的は何?
殺せない理由は?≫

ミルルの視界がぼやけてくる。
ミルルはやられる前に包丁を掴んで必死に投げた…。
でも狙いが狂った…床に刺さって…女性は逃げた。

女性はカラカラ笑った。

〔さすが…本気で貴方なら…邪神国で勤まりそうですね…。
それから…数日の努力で、邪神語を覚えようと努力してることは伝わりました。
貴方の成績が事前情報からも優秀なのは知ってます。
貴方は優遇しましょう。
アハハハ…。
邪神国へ歓迎いたしましょう〕

≪畜生、っミルルをどうする気?
また…ミルルだけ…ターシャ村へ??≫

〔飛んで火に入る夏の虫ですね…。
見たいなら来なさい…。
貴方は邪神国に相応しい器の人間。
役に立ちそうです〕

そこから先の記憶が途切れてる…。
暴れ狂おうとしたけど…だんだん…朦朧として来る。
不思議な感覚で…。
途中から視界が真っ暗…声だけが複数聞こえる…。
これは邪神語…。
これから先…きっとミルルは邪神国で連日、苦手な邪神語になるんだと思う。

視界がぼやけても根性でライターを発火したはず…。
着火音が聞こえた…。
でも…真っ暗な視界の中…上から冷や水を掛けられた…。
恐らく、ステーキと一緒にやって来たコップに入ってた氷入りの冷水。

〔本気で油断も隙もない女ね…。
貴方は…〕

≪…≫

視界が暗くて…もう口すら動かない…。
でも声だけがまだ聞こえる…。

突然、部屋の扉が開く音がした。
それから、数名の人間が…入ってくる音がした。

〔ミルルにも黒装束をしてくれないかしら?
今から、気分が悪くなった患者のフリをして、車へ運ぶわ?〕

ここで…、まさか…。
さっきミルルが顔へ足蹴りをした女性が…。
携帯電話のメールなど、音が発生しない連絡手段を介して…仲間へ”この場所でミルルが倒れた”と知らせたのかと…。
朦朧とする頭で考えた…。

足音から察するに…複数の人間が突然、やって来た雰囲気。
このままでは危険だから反撃しなければならないのに。
体が全然、自由に動かない。

[意識はなくなったのか?
まだ…聞こえてるんじゃないか?
死にはしないか?
人体への麻酔薬は量の見定めが危険だとも聞くが…。
まあ、大丈夫だろう・・]

この声も変声機か何かで変えられてて…分からない。
邪神語を喋ってる。

〔私の腕は確かよ。
これで良いでしょう。
それにしても…公式プロフィールでは45kgで…。
情報では45kg〜40kgって聞いてたけど…。
見た感じ・・・45kg〜50kgなんじゃないの?
麻酔の計算って繊細なのよね…。
最近、太ったんじゃないかしら?
この子…。
そのせいで麻酔が効かないから…困ったわよ〕

[そうなのか…。
それで…暴れてたのか…。
普通はすぐ倒れるものだとばかり…]

〔ここ数日食べまくってたんじゃないのかしら?
1ヶ月もしないうちに5KGも太るなんて飛んだ誤算だわ。
彼女が自らの足で邪神国へ進むことを決めたのだから…良いんじゃないの?〕

確かに…公式プロフィールは誤魔化して…。
食べまくってた…。
それでも3キロ単位ではばれなかったけど…。
確かに太ってるかもしれない…。
邪神国へ行けば…食糧難が酷過ぎるとは聞いてたから、食べまくった。
この3日間はバイキングにだって行った。
お蔭で…倒れてもなお、声が聞こえるみたい…。
全員、邪神語で会話をしてる。

[それにしてもオマエ、その顔の痣は…。
ミルルがしたのか]

[さすがだ。
素晴らしい]

〔床に落ちてる包丁は残さず持って帰って頂戴。
ああ、壁に傷が付いたわね…。
従業員に怪しまれるわ。
痕跡を残さず帰るつもりだったのに…。
予想以上に手こずったわ…〕

[それは少し困ったな…。
先に船へ拉致するべきだったか…]

〔その前にどうしてもボディーチェックする気だったのよ。
体内に監視カメラや盗聴器を隠し持っていたら…話にならないわ。
その手のカメラマンが多いからね…。
馬鹿だと思うけど…1CM以下の隠しカメラも流通してるからね…最近では…。
特に女は穴が一つ多い分、チェックに時間が掛かるわ…〕

[そうなのか…]

〔黙った方が賢明よ。
お腹まで細いくせに出てたわ。
麻酔は胃を空にしないと効かないのよ。
あまり喋らない方が良いわ…。
3キロどころじゃないわよ…。
この子、今…何キロな訳?
麻酔計算がパアだわ…。
死ぬことはないでしょう…。
ただ、目をすぐに覚ます可能性が…〕

[それは急いだ方が良い…]

そこから全く聞こえなくなった。


☆☆☆

次、目が冷めたら…。

ミルルは…病室のベッドで括りつけられていた。
まるで…ワープしたみたいに…。
記憶がそこまでで…突然だから、驚いた。

ベッドには手錠がされてる。
ニコヤカに笑ってるのは…アラビア系の女性。
さっきまでステーキを一緒に食べようとしていた女性。

〔気が付きましたか?
ウフフフフ…。
もうそろそろ邪神語を覚えるべきだわ。
邪神語で話してるわ〕

≪今は何時なの?
ここはどこなわけ?≫

中学レベルな会話になってくる。
邪神語は苦手だから。
1週間もしないうちに完璧に暗記するミルルって自慢じゃないけど、天才だって思う。
人生で一番、頭を使った気がする…。
すぐに飛び込む気だったから、根性で出来たことを誇りに思ってる。

〔まだ3時間しか流れていません。
でも港島から邪神国は鼻の先です。
それだけあれば移動なら十分です。
クスクス・・・〕

≪これからミルルをどうする気?≫

〔勝手にしなさい。
邪神国で遊びたいなら…外へ行っても良いけど…。
まあ、爆撃の被害にだけはあわない様に注意しなさい…。
ハハハハ〕

≪離してくれないの?≫

〔手錠はあとで離しましょう。
それよりターシャ国内の教育レベルが知りたいですね。
貴方の学力が優秀なのは認めましょうか…?〕

用紙を渡された。

〔私はここから暫く去るけど…。
1時間以内にこの用紙を仕上げて頂戴。
私が去ってから、この用紙は見て下さいね。
外に監視員がいるから変なことは考えないで頂戴よ・・。
これは立派な試験なのですから。
ただ、嘘偽りなく素直に答えることね。
じゃ、試験開始…。
うふふふ…〕

ミルルに数枚の紙とペンを渡し、浅黒い肌をしたアラビア系な顔立ちの長い広がる黒髪がうねった女性は部屋から去って行った。

ミルルの手元にはわら半紙の質問用紙がある。

---(Q)貴方は神を信じますか?---

ビックリしたけど、1問目は…ただこれだけの質問…拍子抜けした。

ミルルはこれには余裕で書いた。

---(A)ミルルは無信教者です。
邪神もターシャ神も信じません。
ミルルは自分こそが神だと信じて、自分の考えで物事を決めます。
別に、誰かに縋る気持ちなどないです。---

---(Q)貴方の将来の夢は?---

---(A)とにかくビッグになって有名になることです。
ミルルの名前を世界中に轟かせてみたいです。---

このテスト…学力テストと言うよりかは…まるで心理テスト。
ミルルの性格を試してる雰囲気。

---(Q)貴方は邪神国のことをどう思ってますか?---

答えにくそうな質問ばかり・…。
他にも並んでる。

---(A)ターシャ国とは全然、違う価値観の国だと聞いてますが…。
まだ実感が湧きません、共感が沸くのかどうかも謎です。
不思議な国だと聞いてます。---

---(Q)貴方が祖国を捨てて、邪神国へ来た本当の理由は何ですか?

---(A)好奇心です。
ミルルが邪神教集団から返還された理由が知りたかったからです。
ミルルの兄が邪神国へ行ったことも知ってます。
謎が多いからです。
ミルルに兄がいたことも知りませんでした。
ミルルは父が精子バンクで…本当のお父さんも知らないし、兄の存在も知りません。
気になって仕方ないです。

---(Q)邪神国は貴女に何を与えてくれると思いますか?

---(A)非日常でしょう。

---(Q)貴方は邪神国に来たことを後悔してますか?

---(A)ほんの少しは・・・。

---(Q)これから将軍様のために働くことに同意しますか?

---(A)良いでしょう…。

半分、嘘も書く。
この質問の返答次第では…刑が下るのかもしれない。
いろいろ考えながら書くことになってくる。
後悔してないと書けばよかったのかと…そこが悩んでしまう・・。
でも、素直に書けと…さっきまでいた女性は命令した。
これは…何の試験なんだろう?
ミルルにはサッパリ。

思いも他、一時間もしないうちに質問用紙への記入なら終わった。
この部屋は、冷房が効いてる。

ミルルは手錠をまだ、白い病院用ベッドの柵へされてるけど…わら半紙へペンで記入ぐらいなら出来る。

平和国ヴァカンス島にいた時が嘘のようにココは冷房が効いてる。

確か、邪神国は・・灼熱の国だと聞く、機械すら高級で資源に乏しい国だと聞く。
と言うことは…ここは軍のどこかの施設?
部屋の壁が灰色でコンクリート…天井に冷房が廻ってる。
邪神国は軍事にだけは力を入れてるらしいから。

邪神国は地理で言えば…赤道直下、それから海よりも低い位置の土地に広がる台地。
地面が焼けつけてカラカラだとも聞く。
図書館でそんな文献を漁った。
邪神国事態が周囲の国とは交流がなく、鎖国状態が続き…、ターシャ国でも邪神国については謎が多すぎるけれど・…。
フェーン現象の影響で、気温が50℃にも達することがあると聞いていた。

この部屋は涼しいし、実感が湧かない。
外がどうなってるのか…気になって仕方ない。

☆☆☆





一時間ぐらいしたらしい。

することがないからミルルはベッドで横たわってうたた寝をしてた。
最近、ここ3日は全く寝てない…ずっと邪神語の単語帳と睨めっこ状態だったから。
そこへ先ほどのアラビア系褐色な肌の女性がやって来た。

〔記入は終えたようですね…〕

≪外が見たいわ。
ココは本当に邪神国なわけ?
実感が湧かないわ・・ここは軍事施設なの?
冷房が効いてるじゃないの?≫

〔貴方には優遇することに決めました。
今、将軍様も交えて会議を終えたところです。
しかし、外へ出たところで役に立たないでしょう〕

≪印度ゼロさん…。
あの人はどうなったの?
会いたいわ。
本当は知ってるんでしょう?
ミルルを拉致したのは彼なんでしょう?≫

印度ゼロさんは褐色の肌に堅そうな髪質の黒髪、それから緑の瞳に…180センチを超えてる結構男前な男子留学生。
数日前、一年に一度、ターシャ国で開催されるターシャ祭りで邪神教のクーデターが勃発して以降、留学生のゼロさんは…。
姿をくらましてる。

〔死にました〕

女性の返事にミルルは嘘だと確信した。
そんな訳ないに決まってるから。

≪え?
嘘でしょう?≫

〔少し語弊がありますが…。
もう死んだことにしてます〕

≪何なの?
それは…≫

〔情報が欲しいなら、今後・・私へ忠誠を使わせると約束をしなさい。
それなら良いでしょう…。
私もタダで情報を与える気にはなれません〕

≪従うって何を?≫

ミルルは眉間を寄せた。

この情報自体がデマな可能性だってある。

〔貴方は役に立ちそうです。
将軍様が〈久しぶりに骨のある人間をターシャ国から拉致した〉とお喜びでしたから〕

≪私は将軍の愛人になる気なんてないわ≫

邪神国は社会主義国家。
恐ろしい宗教が存在して、その上に将軍が絶対君主として君臨してる。
ターシャ国にもターシャ教と言う宗教はあるけど…全く、思考回路が違う。
ターシャ人と邪神人は大昔から冷戦状態が続いてる。

〔いろいろ情報を知ってるのですね。
貴女を外国からの接待人として…客を取らせ、稼がす方法も…。
それ以外にもターシャ国人を拉致させる役も…。
いろいろ出来るのですが…〕

≪嘘でしょう?
本気で…≫

〔情報が欲しいのですか?
私に従いますか?〕

≪その情報がデマじゃない証拠は?≫

〔まあ、話さないと…彼は数日後に死ぬ運命でしょう…。
もう処刑の日取りも決まってますから、死んだも同然です…〕

≪どういうことなの?≫

ミルルの声が上がった。

〔もうすぐガス室送りになるかもしれません。
精神に異常を来したと判断が下りつつあります。
今、囚人施設で監禁されてるはずです…。
あまりこういう情報は与えるつもりはないのですが…。
私も駒が欲しいので…〕

≪その囚人施設とやらに今すぐ行くわよ。
意味が分からないけど…ゼロさんは…将軍様に歯向かって、処刑されそうになってるってことなの?≫

〔厳密には歯向かってはいません。
ただ、体調不良で・・使い物にならないので…〕

≪…≫

絶句したけど、聞いてはいた。
こういうノリの国だって。
ミルルは大きく溜息を吐いて、睨みを効かした。

≪あなた、名前は何て言うの?≫

〔ノアです〕

≪ノア?
分かったわ…ノアね…≫

〔この国で名前を持つのは特権階級の身分だけです…〕

≪ノアが・・ゼロさんが処刑施設へ送られた情報を…ミルルへ渡したことを・・・この国の将軍様が知ったら、どういう反応になるのかしら?≫

〔さあ…。
それ自体は…別に真実ですし、怒られるかどうかは…〕

≪そう…。
じゃ、この先…ミルルがその囚人施設へ行くことを見逃してはくれないかしら?≫
































第4部ミルル@


目次

第4部ミルルB






〔ノア〕
身長165CM体重不明。






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