タリア視点。
「どうしたの?
さっきから走って…。
たまには他の場所へ寄っても…」
『…』
時間がない…ミサが始まる。
と言いたくても、外で言う訳にもいかないからこうなる。
大人しくついて来るべきだろう。
俺だけ先に行かせてもらうことにした。
マナナは抜けてる…。
ヒョウキンな女だ。
「タリア…。
私たち付き合っているのに…どうしてなの?」
『おまえはこの公園の先…コンビニへ走れ、ここから別行動だ』
「タリア…」
誤解が生まれてるが…。
ミサに着いてからで良い…。
理由すらいえない環境に俺はあるからだ。
ミサの関係者以外立ち入り禁止の門へ誰もいないことを確認して、先に鍵を開ける…。
マナナはどうせ後から来る…。
鍵を開けて・…、鍵を閉めた。
☆☆☆
少し歩いて、門から視界が消えたところで、俺の体が女体化する。
今日は緑の発光らしい…。
それから学ランがブカブカになる。
髪が急に金色に変わって、それから長く棚引く。
俺はそのまま、着替えをするためにミサの東側にある青い内部が6畳程度のテントへ入室した。
部屋内部に全身鏡があり、クローゼットもある。
そこからいつものように衣装を出して、着替える。
鏡の中に自分が映ってる…この瞬間が一番、不思議だ。
金髪碧眼華奢な長身の女が黄緑色発光して佇んでる、目の周りを縁どるまつ毛が長い。
☆☆☆
今日は時間が取られたかもしれない…。
俺は関係者以外立ち入り禁止橋を急ぎ足で渡る…。
☆☆☆
マナナと事をすれば…ギリギリの時間になってくる。
外では理由さえ話せない環境にある。
終わればすぐに走らなければならない運命らしい…。
…日没までには到着しないと、7時にミサに出れない。
最近は日が高く、結構遅い時間まで明るい…。
☆☆☆
先にミサへ着いた。
マナナはあとから来るだろう。
ミサへは新しい机や家具を新調した。
前の家具は破棄してもらった。
外壁が鉄筋造りの頑丈な建物だ。
使い物にならなくなった桃色ランプは…同じものを揃えてもらったし・・。
ダメになったステンドガラス模様のテーブルクロスも同じものを配達してもらった。
それから木目調の机やテーブルはこれも同じものを選んでしてもらった。
ミサの儀式を行う赤いテント内部、机の隣にあるブロンズの十字架だけは大破せずに済んだ。
壊れた黄色いつい立も、同調の者だ。
ところどころにまだ壁の補修は終了してないが…これも今週の日曜頃、工事の人が来るらしい。
塗り壁がはげてる部分もあるが十分使える…。
黒く焦げたところには白いペンキで塗れば大丈夫だろう。
暫くして、客が訪れた。
水色のスパンコールが襟首に付いた、シフォン調薄水色ワンピースにミディアム茶髪ゆるフワ巻きの女性。
よく俺のミサへ通ってくるスピルチュアルにハマってる女子大生だ。
この人がキセキの話からして王族レイカさんと言う名前なのだと勘では認識してるが…。
実は確証がない。
☆「巫女様、ご機嫌麗しゅう。
今日も美しいですわね。
ココに来たら、癒されますわ」
『どうぞ…こちらへ』
☆「今日もお願い事をしても良いでしょうか?」
この人が来れば、普通の人の3倍払ってくれることも多い、お蔭で儲かるが…。
『貴方の名前は…。
王族レイカで合っていますか?』
初めて聞いてみた。
今まで聞いたことすらなかったが…キセキから聞くから覚えた。
昨日、振られたと言う話も本当か俺は全く知らない。
☆「そうですわ。
あれ?
私、今まで名乗ったことなんてありましたっけ?
巫女様がどうして…それを…」
『以前、貴女は自分の身の上話を語って下さりました。
あのような境遇の家は王族家しかないと踏みました。
そこから・・現在、王族家であなたぐらいの歳で一人娘は家は…。
王族レイカさんと言う方ぐらいしかないと…。
私の力を持って、辿り着きました。
正解ですか?』
☆「合ってますわ。
そうですか…。
今まで…隠してきてたのですが…。
ばれましたね」
『今日の願い事は何でしょうか?』
☆「もうすぐ私、平和国へ飛ぶことになりますの。
向こうでうまくやって行けるように力を授けて下さい。
自信がなくて」
『良いでしょう。
瞳を閉じて、手をこちらへ』
レイカさんは瞳を閉じて、手をこちらに持ってきた、手を握り締めて…力を与える儀式をするために…。
集中して念を入れるイメージをする…。
しかし、途中で雑念が入りそうだ、何とかしてキセキとレイカさんを近づけて、マナナへ近付く悪い虫を一つ撲滅したいと願うが…。
至難技らしい…。
一回失敗したから、もう一度…作業に集中をした。
『終わりました、瞳を開けて』
☆「・・。
何だか、力が沸いてきたかのようですわ…。
向こうでもうまくやれそうなそんな気が」
『汝に神のご加護がありますように…』
☆「それでは…。
これから平和国マナー教室へ行って参りますわ。
いつもは3000円ですが…。
今日はお別れですし…大目に1万円にしときますわ…。
婆ヤにはお礼は庶民の3倍までと躾られていますが…。
受け取ってくれますか?」
『ありがとうございます。
またのお越しを…』
大抵、俺は仕事中…決まり文句だ。
無口な性格がばれない様にマニュアルがある。
その通りに昔から客を捌いてる。
父が作成したマニュアルで…。
先代にこれを勤めてたらしい、父の姉もこれを利用して凌いでいたらしい。
お蔭で会話を繋ぐことに役に立ってる。
ということは…叔母さんもまさか…物言わずなのか?
そこは知らない…。
俺の父は全く仕事が終わると何かが切れたかのように無口へと変貌する。
叔母さんのことを知らされてない。
俺のお祖父さんとお祖母さんは…現在、平和国にいるらしい…。
それから叔母さんもらしい。
理由は・…父からは一切聞かされてないが…。
母から聞いてる…。
結婚してすぐに、母さんと俺のお祖母さん、お祖父さんが…大喧嘩になり、母が根性で…この家からお祖父さんとお祖母さんを追い出したらしい。
母さんはいつもその話を武勇伝のように
||「私が勝ったのよ」||
と嬉しそうに語ってる。
見合いの条件では同居だったが…それが元々、母さんは嫌だったらしい。
そのあと、お祖父さんとお祖母さんは…俺の叔母さんから電話があって…叔母さんを頼って、平和国へ行ったらしいが…。
その後は知らされてない。
もう絶縁状態にあるらしい。
俺の母さんは強い…。
父さんは…当時のことを何も語ってはくれない…。
何があったのかも…俺には謎すぎてる状態だ。
父さんは見合いだが、叔母さんはターシャ村にいるお祖父さんもお祖母さんもよく知ってる…叔母さんの幼馴染へ嫁いで、平和国へ仕事の関係で滞在したらし く…。
俺の母さんより、叔母さんの結婚相手の方が優しいから…泣く泣く俺の祖母と祖父は頼る形になったって話らしい。
詳細を叔母さんや祖父や祖母から聞いてみたいとは願うが…家では母さんが強すぎて、そんなことは言い出せる雰囲気ではない。
母さんの話によれば…
||「月神家の人間ならこれぐらいのことなら知ってて当たり前とか…私を監視してばかりで邪魔でウザかった」||
と非難の嵐だが…。
真実は違うのかもしれない…。
この仕事をやってて感じるが・…物事とは双方の意見を聞かなければ判断が付かないことばかりだからだ。
喧嘩両成敗とはよく言ったものだ、どちらの味方に付くべきか…毎回、悩むが。
この仕事では、お布施料を戴いたものの願い事を優先する、そう言うモノだ。
時々、ふと思う…俺の祖母や叔母様は…今、元気でやってるだろうか??
きっと、俺の叔母様も同じ役目を幼少時代からして大変だっただろうとは察することができる。
叔母様が作成した無口な貴方に台詞暗記マスター秘伝書は割りと役に立ってる。
基本、台詞は丸暗記すれば対応が可能だ。
『汝に神の御加護がありますように…』
迷えば、これを言えば…全てが終了する。
☆☆☆
☆「巫女様…。
残念ですが…。
平和国へ飛べば…私は暫く会えません・・」
『そうですか…それは残念です』
☆「しかし、ターシャ村へ帰国の際には…。
必ず、巫女様のところに寄りますわ。
それでは・・。
さようなら」
『汝に神のご加護がありますように…』
レイカさんは去って行った。
そのあとも客が今日は多い・…。
☆☆☆☆
そのあと、ピンクのセーラー服襟にピンクのスカート…まるでコスプレみたいな制服の女子高生が来た。
ストレートロング黒髪を頭の頂点で束ねた、ポニーテールのカモシカ脚な和風美人だ。
♞覚えてますか?
妖精様…。
私のことを…名乗るのは初めてですが…馬髪可憐です♞
『…』
♞この前は友達の英子(エイコ)と敏子(ビンコ)と揃って、3人で来ましたが…。
これで3回目ですよね?♞
『あなたは…』
♞宗教系女子大学への推薦の話なんですが…。
女子大では最難関の良家の子女しか行けないと言う噂なターシャ王立女子大学を狙っていましたが…。
考え直しました…。
別に私より賢い強敵に屈したわけでもありません…。
このテロが起きて、お父さんの関係で平和国へ留学しようかなって…。
そしたら平和国言語は万点取れそうだし…。
そう考えてます♞
『そうですか…』
♞親友の英子(エイコ)と敏子(ビンコ)にもサヨナラを言いました。
英子は…勉強は私程度に出来るのですが…何だか男子からは不評みたいで…。
それから敏子は…モテるのですが…勉強はテンでダメで…。
私と英子がほぼ同点で、推薦枠を狙ってた訳ですが…。
推薦は私が取れて、私はクラス一賢い女子…強子(キョウコ)と争ってましたが…。
強子とは私…ライバルって感覚で…。
この前、一緒にミサへ来てませんが…。
今回の件で、私は宗教系の女子大学への推薦は見送ることに決めました。
私が辞退したので、英子がターシャ王立女子大学への推薦を取るとか言ってます。
でも…英子より強子の方が…明らかに賢くて…。
ちょっと難しそうなんですけれどもね…♞
聞いてると…この関係…。
物凄く複雑らしい。
『それで…。
今回はどのようなご用件で?』
♞巫女様とサヨナラを言いに来ました。
あと平和国へ疎開するので・…疎開先で苛めにあわない様に力をください。
カルチャーショックとかありそうなので…♞
『瞳を閉じて、こちらへ』
私学生は良い、自由気ままに留学が許されるなんて。
俺の祖母も祖父も叔母も平和国らしいが…。
母さんは平和国だけには何があっても行きたくないとダダをこねてる。
一回ぐらい海外旅行もしてみたい。
しかし、俺はミサへ連日夜7〜9時は出勤しなければならない。
実は生まれて一度も旅行すらしたことがない。
あっても日帰り旅行だ。
俺ほど不幸な境遇の人間もいないと思う。
♞何だか…力が沸いてきたようですわ!
素敵な方に…平和国で会えそうなそんな予感が…♞
『そうですか…』
♞私、悲しいんです。
巫女様も女神級に綺麗でこのミサも気に入ってたんですが…。
結局、こんな結果になってしまって。
一番最初に出会ったとき、推薦の件で頼んだと言うのに…。
あれから…真剣に宗教系の女子大学への入学を希望したと言うのに…。
何故か私は転校する話になって…♞
『汝に神のご加護がありますように』
♞これ、祈祷料の1000円ですわ。
ありがとうございます♞
『どういたしまして』
ピンクセーラー服に、ポニーテールで束ねた黒髪ロングストレートな女子高生は去って行った。
ターシャ村からもやはり…数名、平和国へ疎開を希望する人間が続出してるらしい。
ニュースの通りだ。
☆☆☆
その次も客がやって来た。
次の客はガタイが大きく、それから…桃色のセーラー服の女だ。
まるで女装した男のような雰囲気だが・…変装ではないと思いたい。
ここは女以外通えない神聖なミサだからだ。
前の客と同じ高校なのかもしれない。
♂こんにちは。
巫女様、前に来たこと覚えてますか?
英子と申します♂
声が少し低い。
『…』
♂もう困っちゃうわ〜。
私一人で来たら、性別検査をするとか言ってきて。
監視員はボコりまくろうかと思ったら…。
何とか…。
今日は御礼参りに参りましたわ。
あら?
水色の発光が美しいわね?♂
『今日は何のご用件でしょうか?』
♂敵…可憐がクラスからいなくなって…。
これからはきっと、私がモテるって思いますの!
それから、推薦が取れそうなのです。
強子より…私がターシャ王立女子大に受かるように!
力を…♂
『瞳を閉じて手をこちらへ』
女子大って言う雰囲気の人間ではない…。
性別検査で落とされそうだ…。
手も心なしか大きい。
こんな人間、前に来ただろうか?
俺はある程度容姿が良い人間しかカウントしてない。
全く記憶にない。
手を握って集中する。
適当になってしまう…。
『終わりました』
♂力が沸いてきましたわ!
強子は…あのテロ事件のせいで…。
今、手に骨折をして…ターシャ国立病院で入院中!
更に勉強ができないくせにモテる敏子まで…足の骨を骨折して、ターシャ国立病院で入院中!♂
『…』
[今こそ、私が勝ち…ターシャ王立女子大学への推薦が決まりそうな…。
そんな予感が…!]
『…』
♂これから先はきっと、私の天下ですわ。
ターシャ王立女子大学はお見合いで最高条件になるみたいで!
きっと、お見合いで良い人をGET出来そうな予感が…。
親も大喜びですわ!
まあ、私は実家が寺で…もう既に親同士が決めた
これから先…あまたの男性から言い寄られそうなそんな気が!!
ターシャ王立女子大学っていうだけでモテるらしいんです!
素晴らしき時代の到来が…きっと!!♂
ターシャ王立女子大学はキセキの本命、レイカさんも通う学校で。
確かに…資産調査まで入ると言う噂の学校だ、国内で一番…美人率が多いと言う噂の学校だが…。
一応、私学にも行ってるみたいだし…この人も良家の子女らしいが…。
コスプレになってる、制服が…。
猛烈に幸せそうなのが伝わっては来る…。
『…』
♂可憐も転校するみたいだし、敏子もクラスにはいないし…。
男子たちも私に注目を…私の黄金時代が!!♂
『…。
そうですか…。
汝が正常な道を歩めますように…』
♂また来ますわ…はい。
これ、2000円。
今日は2倍渡しますわ♂
『ありがとうございます』
屈強な体躯をした桃色制服な女子は去って行った…。
制服が似合ってない気がする。
☆☆☆
そのあとも客は続くが…祈祷目的と言うよりはメンタルサロン状態だ。
[あれまあ。
美しい水色の光…。
さすがターシャ神話に出る泉の巫女様…。
ところで、あの噂…本当なのですか?
ジャシドンが…邪神国からの核ミサイルと言う噂は…。
巫女様の力であの国を核兵器を持って撲滅できないのですか!?
ワシが長生きできるように力を与えてくれますかねえ?
ワシはまだ80歳なのですが…あと50年は生きたいですよ。
世界最高記録に挑戦したいですよ。
ウホホホホ]
[どうして、あんな国へターシャ国から飛んでいく人間が後を絶たないのですか?
私には理解できませんわ…。
最近、この国から平和国へ疎開する方と…。
面白がって、邪神国になど逃亡を図る人間とに別れてるみたいですが…。
巫女様はこれからも一生、ターシャ国にいて下さりますよね?
私たちのために!]
[今回のテロはどうして起きたのですか?
私は神を疑う域です…]
[なんでこんな話に…]
[うちには貯金がなかったのに入院になって…金銭的にきついです。
臨時収入が入って来ますように]
☆☆☆
色々混乱してる客が多いらしい。
そろそろマナナはコンビニから帰って来るだろうか?
ずっと待ってるのだが…。
マナナがやっと帰ってきたようだ。
俺の体がオレンジ色に光る。
「大変そうね…」
[この者は何者なんです?
巫女様へ馴れ馴れしい…。
それにしても巫女様から発する光…緑から橙になりましたわ。
綺麗ですわね]
俺は今、女体化して机へ着席し…向かい席に女性客がいるが、反論してきた。
『バイトの方ですわ』
[そうですの、ホホホホ]
いつもの調子で誤魔化してる。
一度、マナナが流したんだろうが…俺に友達が出来ると知るや…。
凄い勢いで客から聞かれた。
時々、俺は泉の下からやって来た妖精だという設定を忘れそうになる。
[あのテロが勃発した時、巫女様はよくぞご無事で…。
あの日はターシャ祭りで祈祷をこの場所でしてたしたんでしょ?]
『はい…大変でしたわ』
女性客と会話をしてる間にマナナが空気を読めたのか…。
黄色いツイ立にあるドアを開いて、向こうの部屋へ隠れて行った。
黄色のツイ立ての向こう岸には…寝室と窓がある。
それを確認して、ホッと安堵の息を吐き下ろした。
[そうでしょうね…。
あの事件で泉は荒れて…一時大変なことになりましたが…。
泉の中央から巫女様は異世界へ帰られると村人はモッパラの噂ですが・・。
無事に自宅へ帰られましたか?]
『はい・・・』
[異世界はどんなところですの?
私だけに教えて下さっても…]
『それは語れません…。
掟なので…』
[そうですか…。
それでは私の願いは…。
主人の給料が今よりもアップしますように…。
それか、臨時収入が…]
大体、恐るべきことにココへ来る人は自分のことしか考えてない。
『分かりました、瞳を閉じて…。
手をこちらへ』
これが俺の仕事だ。
今日は特にクレーマーが多い。
☆☆☆
ミサが終わればグッタリする。
夜の9時になったらしい。
「タリア…やっと終わったのね…」
『・…』
俺は無口になる。
やっと口も休める。
「お弁当買って来たわよ。
何が良いのか分からないけど…。
またハンバーグ弁当にしたわよ、パスタ弁当もあるし…。
それから唐揚げ弁当もあるけど…。
あとサンドウィッチも」
『・…』
全部種類が違うが・・買い過ぎじゃないか?
まあ、嬉しいが。
「ああ‥キセキ来るのかしら?
さっき、メール確認したけど…。
もう少し待って欲しいって…。
キセキから来てたわ…。
一応、行ってみましょうよ。
一般通路へ」
『そうだな…』
俺は机から立ち上がった。
「駅前で美味しいクレープがあって、食べてたら時間が取られたわ」
『…』
やっぱりマナナは食べ過ぎてないだろうか?
将来、デブになるんじゃないだろうな?
ミルルは教室では草のような弁当しか食べてないのに。
マナナは割りと美味しそうに昼のミルクティーを飲んでる。
甘いモノが好きらしい。
『マナナ…その前に紙とペンを頼む・・』
「え?」
『マナナには大仕事になりそうだからだ』
「そうなの?」
俺は神とペンに文字を最速で綴った。
☆☆☆
FROM;マナナ
TO;キセキ
件名;注意
本文;お願い。
「私はミサの一般通路…門近くにある電柱前の狸像があるところで待ってるわ。
私の元にはすぐに来ないで!
狸像の後ろに隠れて!
そこに狸像の目に監視カメラがあるの!
そのあと、一緒に狸像を動かして!
インターホン付近にも注意して!
期待してるわよ!」
☆☆☆
『この文章を…キセキへ門の外で送信してほしい…。
出来るか?』
「うん…。
えっと…これはどういう意味なの?」
『もう9時だ、約束の時間だ…。
早く走るべきだ』
「ちょっと待って」
あとから説明する。
俺は走った、マナナも着いて来て…。
10分程度で一般通路の門へ到着した。
☆☆☆
「一般通路って…。
本当に…ミサが終了したら、監視員が手薄なの?」
『一応、外からは鍵が掛かってる。
まさかそこを飛び越えて来る人間がいると思ってないからだ。
因みに・…知らないだろうが…。
この門のインターホン付近…そこに監視カメラがある。
そこだけは通ってはダメだ。
あと…問の前、電柱にも監視カメラがある…。
「そんな…そしたら…門を通ることなんて不可能じゃ」
『しかし、あの監視カメラもよほどの事件がないと最初から見ないらしい。
大丈夫だとは思う。
別に学習博士一人とキセキと学習兄弟ぐらいなら…。
良いような気がするが・・。
ターシャ教辺りはうるさいかもしれない。
一応、女人しか通れない仕組みだ』
「じゃあ…4人には女装を?」
『余計に不審者に思われるだろう』
「そうよね…」
『良い案がある、あの電柱にある監視カメラ・・。
の死角から角度を変えれば良い…。
奴らが帰ったと同時に角度を変えれば…』
「あとからバレナイ?」
『監視カメラの映像を確認するのは事件が起きた時だろうが…。
あとから見た人間が・・。
監視カメラの角度が変わってたことに気が付いたとしても・・。
それが誰がしたのか分からない。
しかし、ハッキリあの4人が映っていれば…個人を特定されかねない。
一番、最善かも知れない。
それ以外にも監視カメラを壊すと言う案もあるが・・。
何かの時に役に立たない。
余り勧められない』
「そうよね…で、監視カメラの角度を変えるのは誰が…」
『キセキに頼もう・・。
俺が、この一般通路から出れば…。
恐ろしいことになる。
女体化が終わり、男性化する。
それはダメだ』
「じゃあ、私が…」
『おまえがすれば…。
マナナが門を通過した後・・・監視カメラの死角辺りで消えて・・。
そのあと、すぐ監視カメラの角度が変わったように映像として残る。
一番、疑われるのは当たり前だが…マナナだ』
「それはそうだわ…。
と言うことは向こう岸からしてもらわなきゃ」
『そういうことだ。
キセキ達をマナナは待っていて欲しい。
外でだ。
監視カメラの場所なら分かるか?』
「分かる訳ないでしょ?
そんなもの…」
『出てすぐに電柱がある。
そこに…カメラは隠してるが…狸像がある。
まるで…狸像だが…あの内部にある。
結構重い、100キロぐらいある。
4人で動かしてほしい』
「ええ…」
『カメラがあるのは極秘情報だ。
オナカが出た狸像…あの瞳が監視カメラだ』
「そうなの…。
電柱の前の狸像」
『すぐにわかる筈だ。
キセキ達に頼んで、それから…問を3回ノックしろ』
「うん」
『その前に…問の外で携帯を確認してほしい。
門の内部では電波がおかしいからだ』
「分かったわ」
『もし、今日…来ないなら…すぐに戻れ、
門を3回叩けば開ける…。
来るなら門は1回叩け…。
それから何かあっても門を3回叩け。
来るか分からない場合は門を2回で良い…。
覚えたか?』
「えっと…。
門を3回が…」
『分かった。
一応、携帯を確認したら・・門を3回叩け、俺は開ける。
結果だけ聞こう』
「ありがとう」
マナナに合言葉を3種類、瞬時に覚える芸当は無理らしい。
☆☆☆
マナナが一般通路にある門の外へ出た。
数分もしないうちに門が3回叩かれたので、内部から鍵を開けた。
これは予行演習だ。
『どうだった?』
「多分、今日来るって。
でも許可は下りなかったみたいで…」
『そうか…。
電柱の前で狸像を動かせるように…。
オマエはもう狸像の後ろにいた方が良い。
オマエが映像に映ってすぐに角度が変われば、絶対…オマエが疑われる。
数分の時間が欲しい。
来たら、全員へ説明しろ。
出来るか?』
「うん…」
猛烈に不安だ。
『絶対にキセキその他を狸像の前へ行かせてはダメだ。
あとですぐに何かあればバレル。
念に念を入れるべきだ』
「大丈夫だから」
『…メール送信したか?』
「まだ…」
『今すぐさっき、渡した紙を文章にして、送信してほしい。
その紙はキセキへ見せるな、ヤツには筆跡で俺だと推測されてしまう可能性が…』
「分かったわよ、でもキセキ、筆跡なんて知らないと思うわよ」
マナナは歩き出した。
門から見たいが…。
監視カメラに映る…問の内部にいる俺は女体化したまま、華奢な長身金髪碧眼美女だろうが…。
脚を一歩でも外で出せば、アウトだ。
一般通路の門…そこがターシャ泉半径1kmの境だ。
そこから男性化が始まる・…元の体へ戻る。
門から足だけ出そうものなら…門の先へ出てる脚だけが…拗ね毛の生えた男の足になる…。
それが映る訳にはいかない。
あとは心配過ぎるが、マナナに任せよう。
失態すれば…まあ、あとでお咎めを喰らうかもしれないぐらいだ。
しかし、うるさい可能性がある。
そこが心配だ。
第4部タリアE
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第4部タリアG