アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

4部タリア@


||「ミルルちゃんって…お母さん、知らなかったけど…。
最近、テレビで出てるあの子なのね…。
タリアが無口すぎるから知らなかったけど…。
幼稚園からの幼馴染だったのね‥。
確かにミルルちゃんは綺麗可愛いタイプね」||

『…』

今日は木曜日…今は早朝だ。
登校前で自宅で机の上で朝食をしてる、目前に母親がいる。
父さんはまだ、ターシャ国立病院で個室病棟に入院中だ。
母さんは少しすれば見舞いに行くらしい。

||「無事で帰ってきて良かったわね。
ミルルちゃん・・・。
あの子なら月神家に大歓迎よ?
タリアはミルルちゃんが好きなのですってね。
そう言えば…天才子役で一時、世間を賑わせた眼鏡ミルルちゃんなのかしら?
最近、テレビに出てなかったけど…再ブレイクしてるらしいね…?」||

『…』

俺の母親、ミルルのことは絶対、知ってるくせに・…。
キセキから俺がミルルを好きという噂を聞いてからウルサイ…。
ミルルに会わせろとだ。

いつもミルルの番組ばかり見てることぐらい…。
俺が知らないわけない…。
その時の母の顔は鬼だ…。

テレビでニュースがやってる。
あの恐ろしいターシャ祭のテロ事件以来、ニュースは連日…その話だ。

=根性レポ子です、おはようございます。

名もなき邪神国からの女子大生が…。
ターシャ村のターシャ大学の女学生(21)が…ネットに上に”ターシャ祭に爆破予告する…祭りは中止しろ”と書き込んだ事件。
このあとすぐ、女性は…自殺しました。
部屋には青酸カリが発見され、その入手ルートについて、議論が展開されていたのですが…。
女性は…メッキ工場へもバイトをしていたことが判明しました。
現在でも一部の工場などでは青酸ソーダ―を他とする青化物が使用されることもあるそうですが…。

テロとの関与があるのかが、焦点となっています。

さて、テロにより被害を受けた方々は現在、国が設けた施設に入ることが決まりました。

この事件…血のターシャ祭と言われる惨劇ですが…。
この事件よりも大昔、20年ほど前にも似たような恐ろしい悲劇がありました。

青酸カリを使った…邪神教集団による革命、邪神教青酸カリ事件…。
あれ以来、わが国での青酸カリに関する規制が強くなり、現在…メッキ工場でも青酸カリをつかう場所は稀なのですが…。
そこが焦点となっています=

茶髪ロングの巻き髪に上下白スーツ…ミルルのマネージャーでもある根性レポ子さんがテレビで必死に報道してる。

||「青酸カリ事件ね…。
確かに怖かったわよ。
私が結婚した時ぐらいの事件よね?
あれ?」||

『…』

||「邪神教がらみの事件よ、地下鉄でパニックになってね。
邪神教集団が青酸カリをばらまいて…。
本当に邪神教はやることが汚いわね。
何が面白いのかしら?
母さんには謎だわ」||

ニュースはさらに続く。

=それから新たに分かったんですが…この地のターシャ祭りの惨劇前にネット上で情報を拡散して自殺した女子大生…。
とある元既婚男性と不倫関係にあって、最近…別れたところなんですね。

この元既婚男性がこの女性と別れてすぐに、離婚をし、この女性に復縁を迫っていたことで…。
女性は精神的に追い詰められていたようです。

この元既婚男性は農薬物関係で…シアン化化合物を入手する可能性がゼロとは言い難く…。
今、容疑者として挙がっていますが…。
犯行は否認をしてる状況です。

さて…ターシャ祭で爆破予告は…この女性の妄言だったのか…。
それが一番の論点になりますね。

これを見てください。
空港でラッシュが起きています…=

そこでテレビにターシャ国際空港の映像が流れた。
行列ができている…。

||「凄い人だかりね…。
平和国のどこが良いのかしら?
母さんはあんな国にだけは行きたいとも思う訳ないわ。
母さんはね、愛国心があるんだから」||

『…』

||「タリアは平和国にだけは何があっても…これから先、行ってはダメよ。
約束して頂戴」||

『…』

更に報道は続く。

=最近では…我が国から平和国へ疎開をする国民が絶えず…。
世論調査としては、邪神国との戦争反対派が6割を占め、大多数ですが…。
今回の事件を期に、事態は緊迫を極めており…。

ここでCMを挟みます。
以上、根性レポ子でした!!=

根性レポ子さんのニュース番組が一端、終了した。
番組が切り替わって、母さんが溜息を洩らした…。

||「連日、ニュースが暗いわね…。
母さんも辛いわ…。
タリアは知らないのよね?
邪神教青酸カリ事件…あれは酷かったわ…。
あれからそんなに年月が流れるのね…。
お父さん、あの時・…出張中だったけど…電車で帰れなかったのよね。
駅で素泊まりになったのよね…」||

『…』

そこへCMが入った…。

≪眼鏡を飼うならミルルと一緒に眼鏡屋へ≫

ミルルが雲の上、寝転がって歌うCMだ…これだけテレビに出ていて、俺の母が知らないわけない。

||「キセキ君からも前、聞いたわよ?
学校ではどうなの?
ミルルちゃん、意識を戻して…学校へ通ってるらしいけど…。
大丈夫なのかしら?
タリアとの仲、うまく行ってる…?」||

『…』

||「そうね…。
あの子はなんせ、芸能人・・・派手かもしれないけど‥。
テレビの前では清純系よね?
学校でもそうなのかしら?」||

『母さん、学校へ行ってくる』

||「困ったわ…。ミルルちゃん、貶すところがないのよね?
性格も清純系だし、成績も良いし…しかもテレビモデルだし…。
月神家の嫁に入るには…。
良いわね?
宗派は何なの?
もちろんターシャ教よね?
まさか…邪神教じゃないわよね…?」||

『ミルルは…無信教だ』

||「それはダメだわ!
ちゃんとターシャ教へ入信させなきゃ!」||

気のせいか…母さんがとても嬉しそうだ…。
やっと欠点を発見して喜びまくってる態度が…伝わってくる・・。
これは俺の…勘違いなのか??

||「タリアも頑張るのよ、まあね…あの子なら気に入ったわ…。
躾がなってないマナナって母子とは大違いだわ…。
アレよりマシだわ、しかも成績も優秀らしいわね?
お母さんは高齢で弁護士になったとか週刊誌には出てたけど…。
殆ど、働いてなかったらしいわね?
ミルルちゃんが家で子役から稼いでたんだって?
どんな家なの?
お父さんはいるの?」||

『俺…学校へ行くから…』

俺の勘では…知ってるくせに…。
これは…聞いてる…。
ミルルが父親がいないことぐらい…。
週刊誌あたりや…それ以外でも…父兄参観で聞けそうなものを…。
絶対…何か、嫌味で言ってる気がする…。

||「分かったわ…私が根性で調べてあげるから、タリアの代わりにね。
お母さん、絶対・・・ミルルちゃんがタリアに相応しい子かチェックしてあげるからね‥?
大丈夫よ、タリアの未来なら。
安心して・・・悪い女かどうか…お母さんがチェックするからね…」||

俺はもう家は出ることにした。
外は明るい…。
俺の母さんは…やっぱり彼女に難癖をつけるタイプらしい…。

||「タリア、行ってらっしゃい…。
まあ、ミルルちゃんなら成績優秀で綺麗だし、躾もなってそうだし・・。
良いかしらね?
ただ…宗派の問題だけお母さん、困るわよ?」||

勝手に言い放題だ。
俺は別に学校でモテてると言う訳でもないのに・・。
というか、モテないの極みなのに…。

||「どこで調べたらいいのかしら?
まあ、ミルルちゃんなら良いかもね?
探せばアラが出て来そうだけど…。
あのCMで出てた子ね?

それから…前は邪神国に拉致されてたわよね?
ちょっと警戒心がないのかしらね?」||

俺は玄関から出たと言うのに…。
聞こえてくる…。
俺の勘では…マナナの存在をバレレバ…どうも、母さんに撲滅させられるような気がしてたまらない…。

☆☆☆


朝、学校へ着けば…。
相変わらず、アイツが…俺の彼女の隣にいる。
茶髪茶眼、長身スタイル…俺の母親にミルルが好きだと…告げ口をした、キセキだ。
別にミルルが好きという情報はデマだが…。
お蔭で朝、連日のように母さんに俺は絡まれている。

それにしても…キセキももうそろそろ諦めた方が良いと言うのに。
まだ、マナナの隣にいるらしい…。
マナナも接近することすら止めるべきだと思うが…。

ナデシコやカンサイはまだ入院中だ、お蔭で・・・キセキの周りに今日はいない。
それから…ミルルもいない…これは珍しすぎる…。
ミルルは机で真剣に本を読んでいるようだ…。
何の本かは近付かないと…分からない。

「タリアか、おはよう」

今日も何故か一番最初に俺へ挨拶をする奴はキセキだ。
本当に空気が読めてないらしい。

『おはよう、キセキ』

ちょっとドン引きレベルだ。

「タリア、おはよう」

『マナナ、おはよう』

マナナはこの通り、やっと俺へ積極的に挨拶が出来るようになったらしい・・・。

「それにしても、何で…君は僕を一日で振って、タリアと付き合ったんだ?
罰ゲームだとは話していたが…。
まだ続いてるらしいし…。
学校では一緒に勉強してる姿しか僕は見てない。
本当にタリアと付き合ってるのか?」

この話ばっかりだ。
俺はこう言われるたびにどう弁解すればいいのかと悩んで仕方ない。
キセキには悪いことをしたとは思ってる。
しかしだ、もうそろそろ本命へ走るべきだと思うのだが…。

「えっと…それは…」

マナナが口を濁す。
マナナもハッキリとキセキより俺が好きなのだと宣言した方が良いような気がする。
で、結局…アイツ…言えたのか?
本命の女に?
全く会話すらしてないとか俺、聞いたときは…。
相手はキセキのこと、根暗ストーカーとしか思ってないんじゃないかと思ったが…。

まあ、あの人…財布からしてチャネルだ…俺のミサへ通うとき、会計で出すから覚えた。
それ以外にも…良いモノばかりしてる…あの時計は…まさか、オメガイドなのか?
噂では100万円するとか言うのを聞く…。
自分でも男性から声がかけれないと…ミサで俺に相談してたが…。
高嶺な花の雰囲気だ、キセキが言い寄れないのも仕方ないのかもしれないが…。


「何故なんだ?
二人は2か月前までは喧嘩の連続だった。
何が起きたんだ?
君たちに…」

「私もよく分からないの…。
でも…もう忘れて頂戴。
キセキは本命とうまく行くように祈るから…。
それともミルルなんてどうかしら?
良い女の子よ」

マナナも同じ気持ちらしい。
これはとても嬉しすぎる。
俺は笑うかもしれない。

「えっと…キセキ、じゃあね?
タリアに勉強教えてもらいに行くから…」

「君はまさか、僕よりタリアの方が勉強教える能力が高いから、そっちへ行ったのか?
それにしても…タリアは何を考えてるんだ?
全く分からない…。
マナナの暴言を許したと言うのか?」

「それは…えっとね…。
キセキ…あの…」

『…』

「はあ…。
全く分からない、タリアはまさか…マナナが好きなのか?
それとも、なんでなんだ?
どっちからの告白だったんだ?
君たちは…」

「それがその…私からの告白で…。
えっと…。
もうこれ以上は…」

キセキは不思議そうな表情だ。
相変わらず、モテまくってる…キセキの方へ教室にいる女子どもがチラチラ見てることぐらいすぐに分かる…。
ナデシコやカンサイがいないこのチャンスにアタックする気、満々らしい…。
それから人の女にまで手を出そうとする悪い男だ、俺の友達は。

俺は席へ着いた。
確かにミサでは大変だった…。
まさか、あんな事件が起きるなんて…。
キセキもあれからすぐは放心したように…泣き続けて…。
大変だった…。

俺は父の見舞いがてら、キセキの病室へもミサの事件が起きた直後に面会したが…。
キセキは泣き惚けてる。
これはなんか危ないと感じた。

ちょうど、俺の神社でボランティアを募って、家をなくして協会へ避難してる人にカレーを配る役を頼んだと 言うのに…。
キセキは昨日、サボって帰ったらしい…。
学習兄弟から非難の嵐だったらしい…。
俺の母が愚痴ってた。

「タリア…えっと…数学なんだけど…。
教えてくれるかな?」

教室ですることと言えば、勉強だろう。
マナナは改心したかのように真面目になってる。

俺も勉強をしようかとしたところで、また邪魔者が俺とマナナがいる俺の席へ接近してくる。
空気を読んでない奴だ。
しかし、メンタルが大丈夫かとは…心配にも思う…。
常時、女子を侍らしてるキセキだが・…。
今日は珍しい…。
ミルルは…邪神教言語を勉強してるらしい…そんな本を読んでいる…。

「タリア…。
えっと。
僕は昨日、バイトをサボった」

『知ってる、国からの要請されてるバイトだ。
援助金のお蔭で給料が出るが…。
オマエはサボった、学習兄弟が怒ってた』

「悪かった、僕も言い忘れてたとは思った」

「キセキ、バイトしてるの?
偉いわね…」

『家にいるよりマシだろう…。
キセキは両親が複雑骨折で入院中だ。
どうせ泣き狂ってるだけだ』

「お蔭で精神も安定した。
しかし、君が良く喋るのは珍しい。
そうだ、今・・聞こう。
君はまさか、マナナが好きなのか?
そして僕を邪魔者に感じてるのか?」

『…』

どうしてここでそんなことを聞く。
どれだけ空気が読めないんだ。
溜息を吐いた。

「そんなこと、思ってないわ。
私はキセキを邪魔者になんて…。
被害妄想じゃないかしら?
良いのよ、私を頼っても…。
キセキには長年、宿題を丸写しさせて貰ってた恩があるから。
私に出来ることがあれば…」

どうして、マナナはこんな思考回路なのか?

「そうか・・・。
確かに、両親が入院してから…僕は陰鬱かもしれない。
それから今日は特にだ。
愚痴りたい気分だ」

「何があったの?
キセキ…。
話してみて…」

「実は…振られたんだ…。
巫女様に頼んだのにだ…」

「聞いたわ、その話は…。
大丈夫よ、キセキにはミルルもカンサイもナデシコもいるわ…。
私はえっと…その…」

振られた話、俺は今…初めて聞いた。
それでまさか、余計に俺は絡まれるのだろうか?
キセキから…。

「マナナ、正直に話してくれ・・・
君は何故、僕を一日で振って、それから何故、タリアに翌日告白をして付き合ったんだ?
どう考えても僕は納得しない、正論だろう?
僕が言う話もだ」

「えっと、それは」

「君は僕に長年、言い寄ってた…それなのに…。
今になって君の優しさが僕は分かる…」

『ちょっと待てよ、まだ未練があるのか?
オマエは塾の子が好きなんだろ?』

「そうだが、僕には高嶺の花、過ぎる…。
それに…僕には強力なライバルがいるらしい…。
ラッシーと言うらしい…どうすれば…」

「ラッシー?
ところで…キセキ…どうしたの?
その腕の傷…。
半袖だから見えるけど…。
バンドエードしてるけど…。
もしかして、一人暮らしで…何かやらかしたの?」

「これは・…忘れてくれ。
僕のライバル、ラッシーに…。
僕がレイカさんへ告白した途端にやられた傷だ。
僕の失恋の痛みだ…これを見れば…思い出す…」

「ラッシー強いのね…。
それは大変ね…。
喧嘩になったの?」

「そうなのかもしれない…。
はあ…僕より今日はレイカさんが…ラッシーとラブラブな夢まで見た。
因みに僕がレイカさんの夢を見るのはこれが初めてだ」

「キセキが失恋なんて…。
あり得ないわ…キセキはとてもクラスでもクラスの外でもモテまくってるのに…。
タリアと違って、振られたぐらいで自信失くさずに、頑張りなさいよ。
ラッシーなんて男に勝てるわよ!
強くなりなさいよ、キセキも…。
喧嘩に負ける程度ではダメよ!」

「しかし…マナナ・・。
本気で難しそうなんだ…。
僕はどうすれば…」

話が俺には見えないが…。
ラッシーと言う強力なライバルまでキセキには現れたらしい…。
確かに…大金持ち過ぎることは知ってる…なんせターシャ王の血筋を引く一族の女だ…。
以前、お布施として俺へ9000円くれたが…。

あれも社会勉強として庶民に感性を合わせたのだと・・・。
前に…教えてくれてる。
王族家は…ターシャ教へ実家からベンツの車ぐらいなら寄付してるらしい…デマ情報かもしれないが。
週刊誌にも掲載されてた…。
なんせ、王族家の一人娘だ…何が裏で起きてても、おかしくない…。

ミルルはダメなのか?
アイツも…CMにまで出て来てる美人だとクラス中が絶賛の嵐だと言うのに…。
オマエは鞭より飴なのか?

『マナナ、お前もキセキにだけ優しくしすぎてたんじゃないか?』

「そうかもしれないわ…。
だってキセキって…」

ココから先、喋らせる訳にはいかない。
どうせ女の子みたいで可憐だったとか言い出すに決まってる…。

『キセキ、みっともない。
オマエも頑張れ』

「来年…レイカさんは…平和国で見合いするらしい…。
それから僕の両親まで平和国に海外赴任する気らしい…。
ミルルまで平和国へ行くらしい…。
僕はどうすれば…」

「キセキ…平和国へ行くの?
あと…ラッシーってどんなやつなの?
キセキのライバルって気になるわ…。
最近、学校へ来ないけど…。
ゼロくんどうしたんだろう…。
ゼロくんに似てるの?
ラッシーって…??」

「ラッシーは別にゼロには似てない。
確かにゼロはあれから…3日たつが…学校へ来てないな…。
欠席扱いだ」

『…』

父さんが…ゼロは国家機密情報だが…邪神国からのスパイな可能性が高いと話していた…。
真実なのだろうか?
この話…ミルルから聞いた証言を元に出ていると言うことは…。
クラスで…ミルルと俺だけが知ってるのか?
他のクラスメイトは…ゼロが学校へ来なくなったことについて不審がってる様子だ…。

「そうよね…。
で、ラッシーってどんなやつなの?
容姿とか気になるんだけど…。
キセキのその腕の傷、レイカさんって女性を巡って戦った傷なんでしょ?
失恋の痛みってどういうことなの?」

「それは…話せない、あんなヤツの容姿…僕は説明する気にもならないが…。
いつもレイカさんとベッタリなことだけが伝わってきた。
どうも…王族家の屋敷で住み込みらしい…」

『…』

「じゃ、ラッシーは…。
レイカさんの家で働く男なの?」

「そういうことにしておこう…。
ラッシーは僕にとって確かに強力な敵だと判明した、この傷がその証拠に決まってる…。
ああ、僕は…両親がいる得意先、平和国へホームステイしなければならないかもしれない、このままでは…。
確かに・…平和国へはレイカさんも行くらしいが…ミルルも行くらしい…。
僕はマナナやタリアとも…別れなければならない運命なのか?
ミルルと結局、一緒なのか?
レイカさんは難しそうだ…自信が沸かない…僕は…」

「キセキ、平和国に行けるなんて名誉なことよ。
私は羨ましいわ。
海外なんて行ったことないから…。
キセキは何回か行ってるみたいだけど…大丈夫よ、ラッシーにも勝てるわよ。
キセキの方がきっと…。
自信出しなさいよ」

「マナナ、タリア・…僕はどうすれば良いんだろう…。
とても今、悩んでる…。
人生の窮地に僕はいる…。
僕は…どうすれば…」

『…』

「はあ…僕は平和国へ行くのか…。
実は、平和国で・…レイカさんの警備をするバイト求人があると知った。
しかし、最難関らしい。
僕が受かると思うか?
君たちは…」

「警備のバイト?
そんなに大変じゃないんじゃない?」

「それが王族ご用達の警備だ。
見てると…物凄くハードルがそれだけでも高そうだ…。
僕には他に近付く方法も…。
やっぱり、まさか…僕はこのままミルルと一緒なのか…」

「確かに…キセキ、よく泣くし…。
警備に向いてるとは思わないわね…」

『…』

「ああ…。
僕はやはり、平和国へ留学するのは諦めて…。
ナデシコやカンサイ、それから…マナナやタリアがいるターシャ国へいる方が良いかもしれない・・。
レイカさんのことは高嶺過ぎる…。
諦めるべきなのかもしれない・・・。
なんせ、巫女様から頼んでもらったのに…
ダメだった…ゼロが6割になる確率だと聞くのに…。
さすがにあれは予想以上だ、難しそうだ…」

「そんなに難しそうなの?
キセキから見て…」

「それが…広大な御屋敷で…。
猛烈に怖そうな婆ヤって人までいた。
あと、車係さんが…サングラスをして…顔に…傷があった。
僕は勤まるとは思えない…」

『キセキ…。
ダメもとで頑張れ。
ダメならターシャ国へ帰って来い』

「タリア…。
君はなんて軽々しく僕の人生について言うんだ。
僕は…真剣なんだから」

『分かるが…。
何もせずに終われば後悔するだろう…。
留学できるチャンスがあるならすべきだろう』

「そうよ、応援してるわよ。
ダメならかえってしゃいよ。
私、慰めるから」

「マナナ…君は天使だ。
タリア…君は僕の親友だ」

何だろう…。
この空気…本気で危ない気がする。
根性でもキセキとレイカさんか誰でも良いから近づけないと…。
マナナへキセキが走りかねない気がしてたまらない。
気のせいであればいいが…。

マナナも悪い、キセキにだけ優しくしすぎてた。
ミルルはあれは鬼だった…。
キセキはどうも鬼のミルルより飴のマナナを天使と称賛してる。
これは真面目に危ない気がする。

『幸運を祈る』

「タリアがこんなに喋るなんて珍しいわ。
こいつね?
私といる時も全く話さないのよ。
知らなかったけど…キセキの言うとおりだったわ」

「そうなのか…。
それでもマナナ、君は一緒にいて楽しいのか?」

「こんなふうにたまに喋り出すのよ。
これがまた楽しいのよ」

「そうか…」

『…』

勝手に言われてる。
俺は別に喋らないでいようとしてる訳でもない。
余計なことを喋らない性格で。
必要なことなら喋る。

「ありがとう…失恋の痛みが…。
少しだけ癒えた。
君たちのお蔭だ…」

キセキは泣いてる…どれだけ、弱い男なんだ?
コイツ…。
そう言えば…ミサの時ですら…。
ボディーガード役にこいつを頼もうとしたのに…。
全く役に立たずに…俺へ泣いて縋りつくだけだった。
キセキにボディーガードなど無理だろう。

「良いのよ。
ごめんね、キセキ…。
悪かった。
メールでなんて振って…。
私…実は…本気でキセキを好きだった時代もあったのよ」

『・・・』

隣の女は何を言い出すのだろう?

「それなのに…どうしてだ?
タリアに告白なんてしたんだ?
それからタリア…君は何でそれを受け入れてるんだ…。
僕が悲しんでいるのを見て、笑ってるのか?
君たちは…」

キセキはメンタルがやられてるのか…。
それとも、これは本音なのか?

「タリア。
君は僕にミルルが好きだと言って…。
小学時代からミルルとの恋愛相談ばかり受けていたのに…。
マナナから告白をされて、ミルルを諦めたと言うのか…?
君は…やっぱり、僕に本当にそっくりだ。
弱気なんだな…」

「そうなの…。
ミルルのことは諦めたみたいで…。
なんで、私の男友達ってこんなに二人とも弱気なんだろう…」

『…』

「で、今はどうなんだ?
まさか…君はマナナが好きなのか?」

「ミルルのことは諦めたって言ってたわ。
モテないから今では私のことが好きみたいなのよ。
私ぐらいしか相手にしてもらえそうにないのが分かってるのか。
そんな雰囲気よ」

『…』

「そうか…。
それはそうかもしれないな、タリアなら…」

『…』

俺は何て言い返せばいいんだ、この場面・…。

「マナナ、君が悪人なのか?
タリアは許そう、君が告白をしたから、こういう話になったらしい…。
君は僕の気持ちを弄んで、僕へ告白して、僕は受け入れた癖に…。
何を考えてるんだ、君は…。
全く分からない、マナナの気持ちが…僕には…。
マナナ、君は実は僕よりタリアが好きだったのか…。
不細工って批判を長年してたくせに。
僕はタリアからそれも相談を受けていた」

「違うの…。
本当に、私は…からかうつもりなんて…。
でも、何故かしら?
今…何故なのか…キセキと私は別々の道を歩んでる。
どうしてかタリアが私の隣にいる…。
これは…私にも何故か分からないけど。
こんな話になってるの。
私を悪人だと責めないでほしい・…キセキを苦しめるつもりなんて…」

「マナナ…」

「キセキも悪いのよ、私よりも好きなのでしょう?
その人のこと、私をほっておくから・・。
シャッキっとしなさいよ、キセキ」

「そうだな…」

『…』

俺も悪いかもしれない、寝とったようなものだ。
しかし、往生際が悪い、キセキって…複数の女子を自分へ引き止めようとしてる。

「で、タリアはどう思ってるんだ…。
僕に謝罪はないのか?」

『…』

これ一番、きつい言葉でもある。
まあ、悪いことを自覚はしてる。

「謝ってあげなさいよ、タリア。
それでキセキが救われるんだから」

マナナは何も知らないくせに、この調子だ。

『…』

「君は無口だ、それは知ってる。
しかし…僕は切なかった…。
どんな経緯であれ、初めて出来た彼女が…。
翌日に何故か僕の友人と交際してる…。
僕の気持ちにもなれ、タリア…。

そりゃ、僕も弱気で…本命を諦めようとしたが…。
しかし、落胆もした。
君たち二人に良い気がしてる訳でもない。

分かるだろう?
僕の気持ちだって。
ビックリだ。
人間不信の域だ」

『…』

「僕は確かにレイカさんが好きだが、手が届かないような花より、身近にいる存在の方が良いんじゃないかと思って、僕なりの決断で、受け入れたのに。
僕のためにマナナが一生懸命、数学の問題を一問自力で解いたと言った。
それがとても心へ響いたのに…」

「キセキ・…ごめん、私は…」

『キセキ、悪かった。
オマエは頑張って、本命を落とせ。
それしかないだろう・・』

「それが大変そうなんだ。
君には分からないだろう…。
僕は本命も好きだが…。
クラスではマナナが一番好きだったと言うのに…」

「キセキ…えっと、それは…」

この話、どう突っ込めばいいのか…分からない。

「はあ…まさか、僕は平和国でミルルに落とされるのか…。
力付くでも進まれるのか?
ミルルなら僕を足蹴りしてでも、入籍届に判を押しそうだ。
はあ…」

『…』

「ミルルは素敵な女の子よ。
キセキが知らないだけで、クラスでは一番素敵だって私、思うわ。
私が男なら、絶対…ミルルにしたくらいよ?
キセキもミルルを喜んで受け入れるべきよ…」

「ミルルか…僕は…ミルルより君なのに…」

『…』

「えっと…それは…その…。
キセキ、元気出してよ。
きっと、キセキの両親もすぐに退院して帰宅するわよ…」

「僕だけどうして…。
アア」

いつまで、キセキのこれに付き合わなければならないのだろう?
交際したと言うのに…全然、マナナと二人っきりにさせてくれず、キセキの愚痴ばかり俺は聞いている。
女々しすぎる…泣き虫すぎる…。
いつまで続くのか?
早く、キセキの両親が退院することを祈る。
ホームシックにキセキがなっているらしい…。

マナナが困った瞳で俺を見る…。
マナナは可愛い…肩揃えな黒い髪につぶらな黒い瞳とぽってりした唇…それから…身長は低めだが、巨乳巨尻でくびれてる。
抱き心地が気に入ってる、母さんに撲滅させられそうだが…別に俺はマナナで良いと思ってる。
母さんはマナナのことは凡人顔と批判してるが…俺の顔より数段良いと認めてる。
母さんは俺の顔の方が良いと言ってるが…あれは親目線だろう、そんなことを言うのは母さんだけだ…。
それから…モテ男キセキが泣いたところで、むさくるしい、全く可愛いなんて思う訳もない。
うっとうしいだけだ。

早く誰か女とくっ付けばいいのに。
俺の力を持ってをしてもくっ付かないと言うことは…。
かなり望みが薄いんじゃないか?
俺は…キセキとミルルをくっ付けるように働いた方が得策なのか…。

☆☆☆

こうなったのはマナナにも責任がある。
キセキも初対面で私をお嫁さんにしてと言われて浮かれてたに決まってる。
誰でも褒められればうれしいだろう。
それにしても、マナナ…本気で言いたい放題だ。
真面目にどう思ってるのだろうか?

そりゃ、確かに俺はモテないことも自覚は出来てるが。
何だか酷い言い草だ。
と言うか、マナナはどう思ってるのだろうか…。
俺のことを。
ここら辺の対応、余りいい気してない。

キセキも俺がモテないからって女に言われたら受け入れて当たり前みたいなノリだ。
少しは否定してくれてもいいんじゃないか?
友達の癖してそこは冷たい。
しかし、キセキ…。

アイツを誰かとくっ付けないと事件が起きそうな気がしてたまらないことは事実だ。
モテるんだから、別に誰でも良いんじゃないのか?
このクラスにだって…ミルルやナデシコ、カンサイは積極的だが…。
密かにキセキを崇拝してる女子が殆どなのに…。

「僕は恋愛なんて暫く捨てて、勉強に生きるべきなのかもしれない…。
ターシャ国で勉強をするべきなのかもしれない…」

「キセキ、留学しないの?
せっかくのチャンスなのに…羨ましいわ…私。
海外なんて行ったことないから…。
それにしても、あの事件から…引っ越しを考えてる人も多いとはニュースで話してたわ‥。
まさか、キセキまでそうなんて…」

「実はそれもあって、僕の両親が…この国を捨てて戦争を放棄した平和国へ逃げ出すと言いだしてる…。
僕は恋愛なんて捨てて、ターシャ国で一人、自宅で暮らすべきなのかもしれない・…」

「キセキ、一人暮らしできるの?
大丈夫?」

「今のところ、出来てる…。
僕はこれからは恋愛なんて捨てる、勉強に生きる」

『…』

俺としては悪いが、コイツには平和国へ行ってもらいたい・・・。
どうせ、自宅で一人でいれば…とことんまで俺らの間に入り込んで…今の調子に決まってる…。

「僕は勉強に生きる、恋愛なんてもう捨てた」

「キセキ…」

『…』

☆☆☆





キセキB


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第4部タリアA








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