アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

ゼロ@



懐かしい夢を見た、シッターやゼロの夢だ。
朝、起きるといつもの日常ダ。
ここは邪神国、相変わらず…血なまぐさい…。
窓の外は死体の海だ。

ターシャ国観光は楽しかった…オレにとってはだ。
ミルルとはもう会うこともないだろうが…。

さすが、ゼロの妹だ、似てた…。

オレは邪神国で生を受け…現在、17歳。
肌は浅黒く目は緑、それから背が183cmはある…割りと高い方だ。

あの国の人間は割りと小柄で温厚だった。
ターシャ国のことダ。

オレは今ではゼロと呼ばれてるが…。
きっと友のことは忘れられる筈もネエ。

時々、オレは5歳の頃の記憶まで・・目の前に浮かんでくる。
この国へ来れば…特にだ。
ターシャ国立病院で数日前、盗んだ薬を飲み忘れたらしい…。

ああ…。

あれはシッターの姿だ…。
浅黒い肌と20歳程度にも関わらず白髪な青年…頬や体中の傷。それから黒いボロで継ぎだした洋服。

現実逃避が始まってるらしい…。




オレが物心をついたのは…5歳だ。
今から12年も前だ…。

ボロボロ長屋の1部屋に…古いテレビがあって、そこにニュースが流れてる…。

---今日も極悪人を2名は捕まえました。
判決は死刑を免れないものと見て…。

第一の悪人は…将軍様のやり方に反抗を持った、国罪人です。
第二の悪人は…目の前で…あろうことか将軍様の教育に反して…偽善を貫き、愛などと言う偶像を唱え始めた…偽善者、大罪人です…。
”人を殺めるのは悪…物を盗むのは悪…”
この国に沿わない言葉で…人を洗脳しようとする。
まるで邪神国に対抗するターシャ国のような説を唱える…不愉快です。
邪神教の経典では人間は生来、悪で満たされてるとされてるのに…。

我が国は…今後も将軍様の目指す国家のため、生きる者の選別活動をし続けます。
将軍様と祖国…邪神国に幸あれ!
万歳!---

パレードの…ラッパ音が背景に流れてる…。

---なお、邪神国の英雄…1000名殺しのキラーマンは…。
ターシャ国では法と言う縛りに監禁され…牢獄で鎖に結ばれると言う屈辱を味わった話はご存じだと思いますが…。
その後、キラーマンは…無事、祖国…邪神国へ帰還されたようです…。
国民の笑顔が見て取れますね…。
その報酬として…ターシャ国から我が国…邪神国へ不法侵入したジャーナリストを身代金要求代わりに誘拐した際…交換条件としてキラーマンの返還を呼びかけ たのですが…。
要求は受け入れられたようです…。

我が国へ不法侵入した…悪にまみれた偽善者ジャーナリストは…ターシャ国へ飛ばしました…。
国風に合わない…。
国民の皆様は…これからも悪を貫くように…---

連日…こういう報道だ…。

---悪こそ正しい…尊い…。
悪が罪だと誰が決めたのでしょうか?
自由とは…悪を許し…好き放題に生きる楽園のことを指します。
これを邪魔する偽善者こそ、真の犯罪者です…。
通報した方には…名誉を将軍様がお与えになります…。
電話は999ー999ー999へどうぞ---

ここから…オレの記憶が始まる…。

オレが邪神国で毎日…見てるCMだ。
何故か…恐ろしいと感じてしまう…。
そんな少年がいる。

[5歳の誕生日、おめでとう…No.6668。
それにしても…ここは本当にボロボロのアパートだな…。
6畳一間か…。]

【シッター!
来たのか?】

オレの前には…痩せて体中傷まみれな…。
頬にも傷が走った眼帯をした男がいる。
髪はストレスのせいで真っ白な男だ。
笑うと確か…目じりに皺が走る…愛嬌のある20歳程度の青年だった…。

[5年前の今日…No.6668…、お前は将軍様に拾われた…。
俺はその日から…将軍様からシッターとして雇われ…オマエの教育係だ・・。
月日が流れるのは早いモノだ…。
No.6668…、ニュースを見てたのか?]

【…窓の外、大変だっただろ?
死体だらけで…。
シッター?】

オレは記憶の中で5歳に戻る…。
時々、昔へ戻りたくなる。

[そう言う話は…絶対に言うな…。
オマエは悪を演じろ、俺の忠告は守れ…感情は殺せ…。
テレビでも教育してた筈だ…]

【分かってら・・。でも…】

[窓の外は…今日も死体だらけで車が…アレは火葬場に死体の海を運んで行ってる。
それは日常だ…。
オマエは組織に拾われて…軍事利用される運命だ…]

【シッター…知ってらぁ…。
でも…オレは…】

[”悪こそ正”
これが…将軍様からの教育だ。
ニュースでも知ったはずだ…。
偽善者こそ大罪人だ、将軍様は処刑をなさる…。
もう5歳だ、オマエもこの道徳を学べ…。
偽善を演じるな!
俺は躾けてる筈だ…]


【…。
何故、この国は戦う?
オレは知らねえ】

[この国は砂漠だ…。
水がない…。
水を求めて…資源争いもあるが…。
それだけではない]

シッターは目じりに皺を寄せて笑顔だ、痩せて栄養が抜けてるが…20歳ぐらいだ。
この国で長生きは望めねえ。

ーードンドンドン。

「ドアが鳴ってる」

ーー来たぞ、開けろ!!!ーー

[No.6668、客が来たらしい…。
早く茶色い長い髪のカツラを被り…化粧して女装しろ。
桃色のドレスを着てろ。
相手して…金貰って来い」

【今、向かう…】

ーーまだなのか?−−

ドアが叩かれてる…。

[早くしねえと今日の客が帰るぞ]


【うるせえ!】

[まあ、我慢しろ…。
一瞬で3日は食える…。
生きるためだ…No.6668…]

【…】

[オマエだけではない、組織に拾われた人間は最初は…男娼や娼婦へ転落してでも…金を稼がなくてはならない。
中年男や金持ち婆さん…心は持つな…食べるためにはそれが必要だ。
疑問は捨てろ]

【…】

ーー今日の子はまあ、可愛いじゃないか?ーー

事をしてる間の記憶は薄れる…。
終わるのを壁を見て待ってる…。

この記憶は嫌いダ、思い出したくもねえ。
完全に消えてる。

☆☆☆

ーーこれは今日の分の金だ、サービスが悪い…。
半額で良いだろうーー

【よかねえ、金…はらえや!
刺すぞ

ーー威勢がいいのは良いことだ、大目にやろうーー

客は金だけ俺へ渡し…そのあと…部屋は出る…。
窓から外を覗けば…客の後ろを誰かが…つけてる…。
そのあと、今の客を道端で刺殺してる…。
客は死に絶え…バッグだけを奪って…フードを被った男は走った。

[あの客…不用心だ…。
金を持ってる時は…周りに注意を払えば良いモノを…。
強盗まみれだってのに…]

【オレ、長生きがしてえ…】

[誰しもそうだ…。
こんなことも多い。

この国は…俗に犯罪こそが合法で…。
善人こそが偽善者として裁かれる国家だ…。
俺は生まれてこの方、外国は見たことがない…]

【偽善者…】

痩せっぽちなシッターはオレに様々、教えてくれる…。

[毎日、人間は倒れる…。
生涯出生率10人、生存率3名、平均余命20歳…平均初産、14歳…。
毎日が戦争だ。

ここに善人はいない…。
要れば、捌かれる…即処刑だ…]

【何故、オレにシッターはここまで教えてくれる…?】

[政府からの依頼だ…。
さあな、俺は…教育係に向いてないかもしれない…。
本当はおまえをもっと凶暴性を磨く方向へ進まさなければならないことを知ってる…]

【シッターがしてることは…逃げる方法の伝授だ。
オレは…この国でのし上がる方法が知りてえ】

[あの客も馬鹿だな…。
不用心なことだ。
金、渡せ…。
税金だ…]

【そうだな…】

[おまえは…外国へ行きたいんだってな…]

【…】

[おまえの目…。
肌は浅黒く、目だけが碧眼だ。
その緑の目が珍しくて…オマエはよく稼ぐ…。
オマエの父に会いたいのか?]

【知らねえ、そんな奴】

[おまえの母は娼婦だ、どうせ…外人を寝とって…夫にバレル前におまえを道端へ捨てた。
その時、拾ったのが将軍様だ。
オマエは将軍様に感謝しろ]

【…】

[おまえの命など蟻のように小さいが…。
オマエは役に立つ。
将軍様のために生きろ。
教育も付けてやる…]

【しかし、生活費はオレが稼ぐんだろ?
割りに合ってねえ・・】

[成績次第では…良い仕事を与えよう…]

【オレは爆破テロ係だけは遠慮ダ。
アレは自殺志願も良い話ダ】

[まあ、大丈夫だ。
自爆テロ係は…奴らも望んで…死を迎え入れてる…。
生きることに疲れ果てた者には将軍様が良い道をくださる…。
最後に将軍様の役に立てるなら…。
奴らも本望な筈だ…]

【…】

[これからは…善人を見つけ次第…通報しろ。
将軍様は善人ほど、嫌いなものなどない。
偽善者こそ、国の大罪人だ。
今日も見えた筈だ…あの…死体の海は…。
偽善と言う名前の悪人だ…]

【あの…射殺される瞬間に目撃して…泣いてた女は…。
ヤツも殺されてたが…】

[一つ忠告しよう、もし…目の前で人が亡くなれば…オマエは笑え…。
それが生きる道だ…。
それから、人が死んでも泣くな…オマエもそこで射殺だ…]

【…】

[今年に入ってからも…将軍様の命令を執行できず、公開処刑が3000名はくだらない…。
その時、目撃した際…泣いたものも同時に射殺だ…。
一応、生きる術を教えよう]

【…オマエは良い奴ダ、オレに良いことをいつもいろいろ教えてくれてる…。
シッター、名はあるか?】

[名はない。
オレのことは話すな…]

シッターは机にオレが稼いだ金を置いた。
手から腕にも血管が浮き出てる…傷まみれだ…。

[これで何か買っとけ…]

【…】

[俺は今日でお前とはお別れダ]

【…】

何故と尋ねようかとして…睨まれた。
オレは意味を理解した…。
悲しそうな顔になりかけて…笑った…。
この国では善人ほど、大罪人…長生きが望めないからだ…。
5歳にして処世術を学んだ、この白髪褐色肌な青年シッターのお蔭だ。

【さようなら】

[おまえは頭が良い、きっと…長生きが出来るはずだ…。
いつか、国へ飛べるレベルの幹部へ上がれることを期待してる]

【…】

オレは作り笑いを浮かべた…。
外で雷が鳴ったのが、分かった…大雨だ…。
ここから先…オレが見たくもねえことダ。

[じゃ、元気でいろよ…]

シッターの青黒い顔が…いつもより暗い…血の気がない。

【…】

オレは無表情だ…。
しかし…顔から涙が落ちかけて…目を拭った…。

[おまえはヘマをするな…。
サヨナラだ]

シッターは白い髪を風に躍らせて…玄関の外を走って行った…。
傘も差さずに雨の中…。
そこで、予想通りだ…。
警察隊に・…銃殺だ。

---おまえは大罪を起こした…。
偽善者ほど、国にとっての害虫は要らない…。
生を持って、詫びろ---

外でアナウンスが流れる…。

柳のように細いシッターは危ないと感じてた…。
毎日、外では人間の選別だ…。
この国では狂暴なものほど、崇められ…。
善人ほど排除される動きだ…。
良い人間ほど長く生きられない…。

道へ出れば…鉄の香りがする…。
噂なら毎日、聞いた…。
シッターによれば…外国はそうではないらしい…。

外の世界に興味がある。
シッターが善人であることがどこでバレたか…。

(ヘマをしたんだ。
恐らく…人格なんて隠せたものではない…。
ふとした瞬間に悪を装ってても…善が出てくる…。
オレは知ってる…。

シッターが教えてくれた話は…全て…逃げるための処世術で…。
この国で悪を極める方法ではなかった…。
平和をシッターは求めてた…。
俺の瞳…碧眼な外人の血を見ては…。
外国に憧れを抱いていた…優しい奴ほど、ここでは長生きが望めない…)

オレは笑顔を窓の外で浮かべた…。
射殺をした警察官と目が合った…。
オレの笑顔を見て…警察官は無視して…そこを去る…。
そのあと、カーテンは閉めた…。

涙は出てこなかった…。
オレの心は今日を境に死んだらしい…。
感情が湧き起らなかった。

☆☆☆

この夢を今朝は見た。

全く…ターシャ国にいれば・・。
絵空事のようだ…。

溜息を吐いた。

オレは更に記憶が襲ってくる。
記憶の中へ遊びまわりたい気分だ。
ミルルと別れて思い出す人間と言えば…。
ゼロしかいないだろう…。

オレの親友ダ。




シッターと会って6年が流れ、オレが12歳になった頃。
ある日のことだ…。

オレの目の前で…人間が倒れてる…。

想像さえすれば・…いつでも会える、オレの友ダ。

オレは狂人めいてる…暇さえあれば…。
昔の記憶が迫りくるのダ。
誰にもばれてねえ。
バレレバ…オレはガス室送りだ。

いつオレは正気に帰れるのか…。

薬を飲まなければ…ならないが…。

昔の映像が流れてくる…。

<助けてくれぇ…誰かぁ…
アアア!>

ゼロが…オレの友が…道端で倒れてる映像が流れる…。
ミルル…あいつに眼鏡だけとって、まるで…ショートカットにさえすれば…。
ゼロだ。
ゼロは当時12歳だった…。
生きていれば、オレと同じ歳だ。

【…】

(助けることは偽善だ・・。
そんなことしようものなら、オレも処刑だ…)

子供のオレは停止してる。

<そこの君、頼む…。
あとで…金なら弾む…。
持ってる、現在!>

【金銭が絡めば…偽善ではなくなる。
良いだろう…】

<君の名前は何だ?
僕は体が弱くて…この通り…足が速くない…。
何歳だ…君は…??>

【12歳だ、おまえは・・】

オレは部屋に倒れた奴を入れた。
色はこの国にしては珍しく黄色人種並みに白い…。
それから髪はストレートで。
低栄養なためか青白く骨骨しい…。
しかし、切れ長気味な瞳と鼻筋がスッと通ってる…。
唇が色も薄く小さい…。
頬が尖ってる。
そんな奴だ。



ゼロは…12歳当時、背丈…165cmぐらいか?
オレは12歳当時、160cmぐらいだった…。
顔は青白く目の下に隈まであったが…とにかく体が華奢だった…。
パット見た目、40キロはなさそうだった…。
死にかけのヨボヨボしかいねえ邪神国だが…病弱そうに映った。
骨格からして、男なのかとも分かったが…。
細すぎてナヨナヨして、喧嘩にすぐ負けそうなタイプだ。

<僕も12歳だ。
僕の名前はゼロだ!!>

【まずは…金渡せ・・・。
オレの脚は誰より早いだろう】

<ああ…>

オレは金を受け取った。

【これでなんとかなる。
オマエのその顔…将軍の血筋か?】

<え!?>

【少しだけ…似てる気がする…。
この国の純潔児でもない筈だ…。
将軍様血筋は代々の妾が国籍不問の遊女だったため、多国籍交じりでああいう顔立ちだが…。
オマエも気配が少し似てる…。
将軍様より肌の色が白いが…。
目立つだろう…この国では】

<やはり、分かるかぁ…。
そうだ、僕は将軍さまの精子バンクから生まれた息子だ…。
母親は売春婦だが…>

これは良い客だと思った、たくさん金も引き出せそうだ。
そう思った…。
それにしてもこれは上玉だろう。
オレより客が取れそうな気がする。

<しかし…僕はつかいものにならない…。
将軍様に捨てられた子だ…。
ハア…>

【…どういう意味だ?】

<将軍様が精子バンクを介して…自分の血を各国で広めようとされてるのは知ってると思う…>

【ああ、その割に…将軍の現息子は…似てないな…顔が…。
だから、息子には父親の顔へ似るように整形を施そうという話が出て来てることも有名だ…】

<僕の肌が白いのは…あまり外へ出ないからだ…。
僕の母は売春婦でエイズだ・・。
僕も生まれつきエイズで…強くない…。
ションボリだ…>

【そうか…たしかにおまえは弱そうダ】

エイズ末期か。
それでは客を取るのは大変だろう。
確かに骨骨しい。
オレより明らかに細そうだった。
エイズでは…客も嫌がりそうダ。
うつされれば死活問題どころでもネエと感じた。

<外の世界に憧れてる…。
将軍様には捨てられたが…。
この金は…最後の金だ・・。
君にやろう…>

【௵ஹஇ】ありがとう

---௵ஹஇはアリガトウと言う意味だ、この昔の記憶…頭に流れてる言葉は…祖国、邪神語だ。
難解な文字で…判別付きにくいだろうが…。
もうオレにとっては日本語も邪神語も似た種類の言語だ…。

<君の名前はなんだ?>

【No.6668だ。
拾われ子だ、戸籍にはない。
オレもお前と似てるが売春婦から生まれた人間で道端に捨てられたところを…政府に拾われた。
この瞳…オレの父が外人らしい…】

<そうかぁ…君の口調…まるで…男みたいだ…。
女言葉は話せないのか?>

【オレは男だ…。
今までは…客引きで生計を立ててたが…今日は機嫌が良い…。
これだけ金があれば…もうしばらくせずに済む・・。
勉強へ専念できるだろう…。
オレはいつか、外国に行ってみたい…】

<僕もだ、君と僕は似てる・・。
境遇が…>

【オレにはエイズにならない血があるらしい…】

<それは羨ましい…>

【今日から客を取ることを止めて行けそうだ。
オマエはどうやって生きてた?
今まで?】

オレは茶色い女のカツラを脱いだ…。
桃色のフリフリドレスも脱いで…。
それから…普通に男の服を着る。
当時はこれで生計を立てる身だった…。

<そうか…君は俗にいうストリートチルドレンか…。
僕は…今まで…今日持ってた金が最後だ…。
あまり長くないだろう…。
僕は>

ゼロは血を吐いた…。
本気で弱いラシイ。
端正で高貴な顔立ちはしてる…。
しかし、死が現実味を帯びてる…。

ーーー今、思えば…ミルルの眼鏡を取れば…。
ショートになれば…真面目にそっくりだ。
衝撃的な顔立ちダ。
ヤツはオレを女と勘違いしたが…ゼロの方が中性的だ。
ミルルが美人と騒がれるのなら、ヤツも高貴な顔立ちダ。
オレの友だ。
17歳のミルルと…12歳のゼロは…恐ろしいレベルに容姿が似てる。
どちらかと言えば…発声さえしなければ…オレは勘違いしそうだった、ゼロがショートカットの女だと。
しかし…ミルルの方がまだ顔が丸い…。
ゼロは目の下にうっすら隈が出来てた…虚血のせいで唇の色も桃色でもなかった。
唇まで肌色に近かった。

しかも…12歳のゼロと17歳のミルル…声まで酷似してやがる…。
兄弟で似すぎダ。

ゼロを助けてちょっとガックリ来たのは、オレかもしれねえ。
こんなひ弱そうな奴、厄介者に決まってるからダ。
オレが生きるのに障害物でしかネエはずダ。

【弱い奴だ、おまえは】

<今日、会えたのは何かの縁だ…。
頼みがある>

【何だ?】

<将軍様にはもう見放されて僕は援助を貰えそうにないし…。
僕の命は長くないだろう…。
ガックリ来てる…>

【…ハハハ】

オレは笑った。
悲しいときに笑えと…教育係シッターは話したからダ…。
この国の流儀だ。

【そんな人間ならこの国ではザラだ。
どれだけエイズだらけか?
涙ちょうだいはオレに効かねえ】

<君は人肉は食ったことあるか?>

【オレはまだだ、しかし…腹は減ってる…。
共食いすらあることも知ってる…。
毎日、大変だ・・】

この国の食糧難は凄い、もう害虫やカラスなども死に絶えてる話だ…。
サソリすらいないかもしれない…。
それでも…悪人だけを将軍は選別して…生を優先的に与えてる…。

<そうか…僕も実は…。
悪の極みだ…>

(こいつ、偽善者な気がする・・。
通報すれば…金が貰えそうだが…政府から…)

そこでグーとなった。
オレは記憶の中に今、住んでる…。
今、17歳で・・・寮のベッドにいることは忘れかけてる…。
記憶が瞼に走り狂う…。
薬を飲むより今は・・・記憶に沈みたい…。

<オナカ空いたか?>

【まあな…】

子供の頃は良かったが…だんだん、客が取れない…。
男娼は大変だ。
他の国への憧れは強い。
ゼロだ、オレの友だ…。

<僕が死ねば、君は僕を食べてくれ!!>

【は?】

<君は人を殺したことがあるか?>

【まだだ】

<君はエイズに耐えられる遺伝子があると聞いた…>

【そうだ、そのお蔭で…誰とも…オレはドナーが一致しない…。
臓器移植として転売されることは何とか免れてる…】

<もしもだ、君は…僕の代わりに…世界を見てくれ。
君には戸籍をやろう…。
ゼロとして生きてくれ>

【何の話だ?】

<ストリートチルドレンは大変な筈だ…。
今日、助けてくれた恩だ…>

ゼロは血を吐いた…。

【ここで吐くなよ】

<それにしても残念だぁ。
君は女の子だって思った・・。
カツラだったのかぁ…>

【こういう商売で生きてたからな…】

<君が女の子なら僕は一目惚れだったのに…。
愕然だ、命を助けられた…>

ゼロは血を吐いた…。
切れ長な大きな瞳、それから細く高い鼻筋、あと…薄い唇…。
尖った顎…黒いストレートの短髪…。
眼鏡はしてない…華奢過ぎる骨骨した白い肌…。

やはり・…将軍の顔立ちに似てる…。

将軍様はこれを浅黒くさせて…チョビ髭を与えたら……。
あと、筋肉質にさせたら…そうなりそうだ…。
髪は将軍様の方が剛毛で癖毛だが…。

【将軍様の血が流れてるらしいな…】

<そうだ、僕はもう捨てられてる…>

【…】

精子バンクで生まれた人間の末路はこうだろう…。

<僕は知ってる、父に逆らうな…。
君の体にも僕にも…政府から目を付けられた段階で…。
邪神国国民…全員に…猫や犬に入れられる…。
マイクロチップが入ってる…。
どこへ逃げても…発信機で…分かる…。
元々はペット不法投棄のために作成された技術が…。
悪用されてる…。
3×10mmだ…、からだのどこかは…レントゲンしないと判明はしない…>

【オレの体にか…】

<そうだ…大きい声では話せない…。
僕をここに匿ってるのは・・僕が死ぬまで隠すべきだ…>

【ハハ、それだけ無駄口たたけりゃ、死ねねえだろう…オメエは】

<僕は平和な世界を見てみたい…。
君なら出来る、優秀なのが伝わってくる、節々で…。
僕には分かる…。
君に託したい…僕の夢を>





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小説目次

ゼロA







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