アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

ター シャ泉の巫女F





『え』

「あ…好きな子と言っても。私が大好きなのはアナタだけです。
巫女様だけです。
私は浮気者ではございません」

マナナは…また、恐るべき衝撃発言をしてる。

『クラスに好きな子が…私以外にいるのですか?』

「いえ。
忘れてください、今の発言は」

『私のことはアナタは大好きだと今日も昨日も…。
連日10年間は言ってくれましたね。
しかし…クラスにいる好きな子とは…誰なんですか?
女ですか?男ですか?』

ここまで言われれば逆に気になる。

「忘れてください。
私はアナタだけです。
そんな浮気者ではございません。
アナタと今日、深まりたいです…。
愛してます、大好きです」

『私は嘘を吐く人は大嫌いです。
私の前で自らの罪を懺悔するまでは…先へは進みません。
正直におっしゃってください』

神父のような口調は営業言葉だ。
もう慣れもあり…普通に言えてる。

「えと…」


『言えないと言うことは…。
やましいのですか?
隠されると余計に疑います』

誰だ?
クラスにいる好きな子は。
キセキならキセキでも良いから、ハッキリ言ってほしい。
俺は大好きで。
キセキは好きなら。
それでも良いだろう…まあ、バイになるのか?
男も女もいけるのか?
ただ、女の俺が…美貌が勝ってたから…マナナは好きになったのか?
そう言う意味なのだろうか?

「怒らないでいてくれますか…。
私と別れると言わないでくれますか…。
話せば…嫌いになりませんか」

『私よりその方を好いてるのですか?』

「それは違います。
アナタに勝る人はいません、私にとっては神仏…。
しかし…クラスにいる人は気になってただけです。
体だけです」

『え』

固まった。

『体だけとは。
性格は嫌いだと言うのですか・・・その方は』

「はい。
私があんな奴を好きになれるわけなどないです。
ただ、良い体をしてるとは認めてはいました」

誰なんだ?
キセキの性格…嫌ってたのか?
俺には思い当たらない。

『どんな人なんですか?
特徴を教えてください』

「読者モデルをしてて、成績も上位の眼鏡をかけた私に威圧的な女です。
腰まで伸びた茶髪は手入れがされていて…ストレートで美しく、華奢で背がスラリと伸び…。
手足も長くて憧れの的です。
あの体を頬ずりしてみたいと長年、思っていました」

『…』

「体だけは私の好みであることは認めます。
私はアイツが…好きな男を…落として、苛めてやろうかと思いました。
しかし…私はその人以上に更に…アナタが大好きです。
この件は忘れてください。
私はアナタだけです。
私はアナタとは叶わぬ恋だと思ってたので…目移りしそうになった時期もありました。
今は過去の話です」

俺は絶句してる。
まさか…ミルルなのか?
マナナが好きな人間とは…クラスで。
確かに二人は…険悪な仲ではあった。
まるで、正反対も良いところではあるが…。

『そうですか…』

俺は溜息を吐いた。
ちょっと胸が痛いかもしれない。
本当に驚くぐらい残念な女だ。

「それだけではございません。
私は…好きな子に対して堂々とアピールも出来ないのに…。
私を差し置いて…アタックするにはムカつく男には悪口散々でした。
そんな私を救ったのは貴女です」

『…』

俺はどう反応すればいいのだろう。
そのムカつく男は俺なのか…まさか…そうなのか。
目が点になった。
しかし…マナナ。
おまえは俺がクラスでミルルを好きだと言う噂を流す前から…既に俺へ悪口散々だった。

それはどういう意味だ…?
悪いが…殆ど、初対面でだ。
コイツ、俺の容姿をことどとく貶す悪い人間だった。

☆☆☆

アレは幼稚園入園式後だ。

「不細工、どうしてコイツがキセキの友達?
邪魔だからキセキ、疎遠になったら?
目が汚れるでしょ?
容姿が悪いのが移ったらどうするの?」

こんな台詞の連続で…最低最悪だ。
今より酷かった…、俺への中傷が。
子供は正直すぎる…。

俺は、マナナより前からキセキと友達になってた…入園式後、すぐに。
男同士だし…まあ、キセキも当時は上から目線ではなく、精神的に遅れてた。
面倒見ても良いかとも思えた。

それなのに…俺とキセキの友情が成立しかけた場面で…。

途中からマナナが…強引に乱入して来て…マナナはキセキにタックルして抱き付いた。
必死で、俺とキセキを離そうと…。
俺だけ「不細工、邪魔」と猛烈に攻撃しまくってた。

それに反して…キセキの容姿は初対面で…

「まるで神童。
神の奇跡,、美しい。
私をお嫁さんにして。
私好みなタイプ。
今から目を付ける。
一目惚れかもしれない…私。
私の名前はマナナ」

と自己紹介までして、絶賛しまくってた。

☆☆☆

マナナの過去を振り返れば…。
どう考えても…マナナが今、した話は…信憑性が薄すぎる。

「全て神の前で罪を懺悔しました。
私を許してくれますか?
泉の巫女様」

マナナの思考回路は…俺には解読不能だったらしい…。
ビックリはしてる。

『まだ謎はあります』

「え?」

『貴女を差し置いて好きな方へ言い寄るムカつく男…。
貴女はその方が…アナタの好きな方へ言い寄るより前から・・・。
攻撃してる…。
そんな映像が私には神の力を借りて流れてきました。
私はこのとおりまばゆい光を放つ天の使者。
特殊な能力ならあります。
嘘ならすぐに見抜けます。
貴女は嘘ばかりですね。
私は信用も出来るわけがございません…』

逆に動揺すると…言葉が長くなった。

「え…。
えと…。
それは…」

『あなたはまだ大嘘つきです。
完全なる善人とも言いにくいようです。
私は迷える子羊を正常へ導くのが天から与えられた役目・・。
貴女には失望も良いところです』

「違うんです・・。
えと…それは…」

『これ以上なんだと言うのですか?
貴女は嘘しか吐いてません。
ターシャ泉の巫女の前で…。
罪深い人間ですね』

適当に交わした。

マナナは瞬きを何回もしてる。
顔まで白い。
少し苛めすぎたかもしれない。

『貴女は正直に理由を無理やりつけずに懺悔をするべきです。
神の前で罪を…』

少し溜息すら出そうになった。

「その通りです。
巫女様は本当に不思議な能力者なんですね。
まるで私の私生活が筒抜けレベルに…。
さすが神から選ばれた巫女だけあります。
体も発光してますし…」

『…』

これはどんどん俺が嘘吐いてることがバレタら…どうなるのだろう。
一瞬、脳裏に不安は過る。

「確かに…私は…。
あの憎いヤツが。
私が密かに慕い始めかけてた人間へ私を差し置いてクラス中を仲間にして落とそうとして腹は立ってました。
しかし…その前から…そいつは何故か許せなかったのも確かです。
私は綺麗なモノしか許しませんから」


『そうですか…』

「巫女様、すいません。
私は心の狭い人間です。
これからは改心します。
もう人を差別なんてしません。
私は巫女様の言いなりです…。
だからこれから…」


『いいでしょう。
今日はここまでで夜も更けました。
私は家路を辿ります…』

「え?
今から私たちは…」

先ほど、俺がまくったマナナの水色セーラー服も…重力の関係で…元に戻ってる…。
俺の前へ突き出した乳房は見えない。

今日は良いだろう。
そんな気分だ。

『私は忙しいので。
神に仕える身。
また明日も会えるでしょう。
それでは』

「巫女様、私のこと、好きですか?
私は大好きです」

俺は関係者以外立ち入り禁止区域の…泉の上に走る橋…白い小道をあるく。
俺の体は夜道、紫色に光ってる。
まあ、誰が見ても人間ではないようにしか思えないだろう。

俺はマナナの声は無視した。
どうせ明日もある。
今日はここら辺でも良いかもしれない。
そんなふうにも思えてる。

青いテントに着けば…俺の学ランや学生かばんがある。
今日は10時だ。
遅くなった。
さすがに11時になれば…今度はマナナが帰宅するのも物騒だ。

服に着替えて…ターシャ泉の半径1kmを越えれば…。
俺の体は性転換を起こす…元の非モテ男になる、発光も終わる…。
つかの間の幸せなら今日は味わえた。
モテ男は素晴らしいモノだ。
初対面であんな世界らしい…。

これから一年は毎日、ホステスに通ってる気分には浸れそうでもある。
しかし…本気でマナナは凄い人間だ。

明日もマナナのことなら…観察するとする…。
今日は機嫌が良い日だ。
良い体してた、マナナは。
良い体なのに…もったいない人間だとは思う。

触り心地が良かったし、マナナは女には甘く優しいらしい。
俺は女体が好きに決まってる。
どうすれば良いのか。
最後までしてもよかったのか。
しかし。
衝撃発言の連続で…エロをする気が失せたのも確かで…。

本当にマナナはどうしてあんな女なのか…。






翌朝も登校を果たし、教室へ到着はする。
金曜日だ。

キセキの周りには女性3人トリオが密着して囲まれてる状態でもある。
キセキは女に密着されてることは嬉しいのだろう。

なされるがままだ…自分の茶髪へ手を伸ばし、ボリボリ掻き毟り…茶目をグルリと廻して動かす。
これはキセキが…優柔不断なことを考えてる時の癖だ。
気が多い男だ。

≪キセキさん、ミルルと付き合って。
もう、マナナのことは忘れてよ?
ミルル、どうしても月神さんのことは好きになれないのよ?
ミルル、読者看板モデルしてて…≫

「君は僕の好みではない。
君はタリアを好きになるべきだ。
マナナのことは残念には思ってる」

キセキの好きな塾のバイトの子は…2歳年上の19歳、巨乳美人女子大生らしい…。
体目的で熱烈にキセキは狙ってるらしいが…まだその人からは告白はされてないらしい。
ターシャ泉通いにその女子大生は嵌まってるらしいという情報を…キセキは塾で得てるらしい。

聞いてれば…俺のターシャ泉に通うスピチュアルに嵌まってる女子大生の特徴にそっくりだ。
まさか…偶然か…どうなんだ…?

Uマナナじゃなく、ウチを好きになってや。
お好み焼きぐらいウチ、つくれるで。
それから夜はウチ尽くすからU

ツインテールロリ体型の難波カンサイだ。
転校してきた女子だ。

「僕はロリコンではない…すまない…」

||あたしは品のないことなんてしないわ。
貞淑でしかも体型もロリではなく、普通よ?||

「僕は変態ぐらいでも良い。
上品は求めてない」

キセキは言いたい放題だ。
そうだろう…。
キセキは体目的に決まってる。
俺と一緒にSFエロ小説同好会を開くレベルには下ネタが開催されてる…。
アイツとは好みが合う。

俺はマナナの方を見た。
昨日は一度も学校で喋られてない。
確かに貶されてはいないが。

マナナは真面目に勉強してる。
そのあと、つまづいたのか…キセキの方角を…チラリとマナナは上目づかいで見詰めてる。
しかし、正確には…ミルルの腰まで伸びた手入れされた茶髪を見てる。
それから…舐めまわすように、ミルルの華奢でスラリとした体躯を観察してる。
その後、視線を…また教科書へ送ってる。

いろいろ、突っ込みどころがあり過ぎる図だ。

「タリアか。
おはよう。
昨日の小説は想像絶するレベルによかった。
お蔭で失恋の痛みも忘れられそうだ、僕は。
君は今日こそ、ここにいるミルルにモーション掛けるべきだ。
ほら、嫌がってないで」

毎度、俺はミルルでカラかわれてる。

キセキ以外の男子も。
俺がミルルにアタックするのを懸けてるらしい。
確かにそんな噂は流れてる、全校にだ。

俺は自分の席に座った。
その方が良い気がする。

「タリアは本当にシャイだな。
ミルルが落ちないぞ。
僕も協力してるのに」

≪月神さんなんて無理よ、ミルルはキセキさんだけ≫

ミルルはキセキにベッタリ引っ付いてる。
それから…脇にはカンサイや…ナデシコもくっ付いて…。
女子3人で一人の男子キセキを取り合い状態でもある。

俺は着席したまま、マナナを観察した。
マナナはちらりと…キセキの方角…正確には、ミルルを見て。
それから教科書に目を戻し、溜息を吐いて。
ノートを広げてる。
肩揃えな黒髪を揺らして…勉強するなり呻いて、肩を落としてる。

どういう…場面なんだ?
これは…。

マナナの気持ちもやっと理解はできた。
マナナがキセキを見詰める訳もだ。
しかし、何故か面白くはない。

「タリア、恥ずかしがらずにこちらへ寄れよ。
ミルルもいる。
仕方ないな。
僕から君の席へ行こう」

学ランを着た茶髪茶目長身の男―――キセキが俺の席へ来る。

≪待ってよ、ミルルも行く≫

UウチもキセキくんU

||キセキ君、あたしを見て…えっと…その…||

女子三人トリオが…俺の席まで一緒に来る。

『キセキか。
本当におまえはいつも同じ光景だな。
大して変わらない』

「まあ、怒るなよ。
確かにミルルは僕にウルサイが。
僕はミルルは君に譲る気だ。
それが友情だ」

≪ミルル、月神さんはイヤ。
マナナのことは忘れてミルルなんてどうかな?
一緒に雑誌にも掲載できるよ?
カップルスナップで≫

『…』

俺が横目でマナナの方を見れば。
マナナは…ミルルを見てる。
その時、初めてマナナと俺は目が合致はした。
マナナは無表情だ。

前ならここで俺を散々に貶してきたんだが。
それから俺はそれを攻撃しまくってたんだが…。
口喧嘩に発展したんだが。

確かに、マナナはもう批判はしてはこない。

マナナはすぐに下を見て勉強に机で励みだした。
まだ…どうやらミルルが気になるらしい。

そんな雰囲気だ。

「タリア。
どうした?
元気がないな?
悪かった。
君の前でミルルと僕を見せつけて。
何度も話すがミルルは君にやる。
君も頑張って、声掛けしろ。
男だろ?」

≪月神さんは情けない男よ?
キセキさんの方が男らしいわ?≫

Uいいな…ミルルはモテて、読者モデルは違うわ。
でもウチはキセキくんだけ、キセキくん…ウチにしてやU

||ミルルを落としても良いわ。
応援してるわ。
キセキ君、あたしを好きになって…お弁当、つくったから…||

女子3人とキセキが俺の席の前で…俺を責める。
俺は教科書を見詰めた。

向こうの方から男子どもの声がする。

[見てみろよ。
今日も月神、ミルル様に声すらかけれてないぜ]

[あれはダメだろう?
親友のキセキまで協力しまくってるのに]

[オレは絶対、ミルルちゃんは落ちないに懸けてる…]

[まあ、ミルルさんは高嶺の花だ。
無理かもな…ボクも狙ってるから]

これが俺の日常だ。

マナナの方角を横目で一瞬、見た。
マナナはもう何も言わずに…数学の問題集と睨めっこをしてる。
分からないのか頭を抱えてる。
マナナのオカッパな黒髪が痙攣してる…余程、勉強嫌いらしい。

俺は自分の机上へ視線を戻し…教科書を黙読した。

「悪かった。
僕も空気が読めなかった。
君の前でミルルと仲が良いとこを見せるなんて。
怒らないでくれ、僕のことを…タリア」

『…』

≪キセキさん、こんな席…去りましょうよ。
どうせ。
今日もミルルの前では固まってばかりの弱い男だから≫

Uなんや、今日もミルルにアタックすらできへんのかいな。
ほんま、ショウもない奴っちゃ…U

||ミルルに言えないのね、仕方ないわね。
キセキ君…。
違う場所へ行きましょうよ。
ね?||

「タリア、まだ少し昨日のSF小説は借りたい。
ありがとう…。
ミルルと僕が仲良い場面を君に見せてすまなかった。
またあとで…」

空気が読めたのか…。
キセキはやっと俺から去って行った。
ミルルを含む女子3人トリオを引き連れて。
俺はクラスではミルルが好きで有名になってしまってる。
俺は…机で溜息が出そうになった。

マナナの方角を見た。
マナナはチラリと…ミルルの方角へ眼球を動かし、またノートへ視線を戻してる。
どこまで…マナナは…女好きなのか…。
俺は幻滅とビックリ両方だ。

☆☆☆

今日もいつも通りに高校が終われば…。

ターシャ泉のミサへ俺は参列する。
学校ではもうマナナと会話はしてない状況にある。
マナナは机に一人でいることが多い。

泉の東の地、青いテントで女体化した体へ着替えを済ませる。
全身鏡で見れば…そこに紫の光に包まれた浮世絵離れしたタロット占いの中にいそうな天女がいる。
泉の上の関係者以外立ち入り禁止の白い橋を渡り、仕事場に向かう。
向かう先は、20畳程度の広さの高床式鉄筋作りな赤いテントだ。

そこで…ミサがあるが…。

そこに…背が低く、巨乳で…黒髪は肩揃えな女子―――マナナが既にいた。
服は帰宅をしてないのか、水色セーラー服だ。
今日も6時30分…。

俺は少し憂鬱かもしれない。
しっかり今日は細かく観察した。
いつも以上にマナナの視線の先を…。
キセキではなく…良く見れば、ミルルを見てた。
というか…。
どれだけ女好きな女なのかと…。
驚きとおし続けてた。

「泉の巫女様。
会いたかった。
えっと、キスしても良いですか?」

明るく照れてこんなノリだ。

俺の後光が赤から紫になる…。
俺は黙ってる。

俺が何も言わなくても…マナナは俺にキスしにくる。
しかし、なんか今日のキスは腹立つ。
意味は分からない。

俺は仏頂面だ。

テントの扉を鍵で開けた。

キスは確かに拒まなかった。
俺は非モテ男だ、自分の身分は弁えてる。
しかし…心苦しい。
キスってやわらかいものらしい。

「巫女様。
今日もお仕事ですね。
応援してますわ。
今日こそ私と…。
昨日は途中で…その…」

『…』

声にならない。
幻滅が酷くてだ。

「巫女様」

マナナは俺に抱擁する。
正面から。

『…』

「巫女様、愛してます。
好きです。
慕ってます。
だから」

『…』

「巫女様?」

『…』

「えっと私から触りまくっても。
それから」

『…少し黙って下さい』

毎回、こうなる。
頭が動かなくなる。
俺は神聖なる赤紫の光に包まれてる。

「巫女様?
えと…。
はい。
待ちます」


『…』

マナナは恐るべき女好きだ。
今日、それを知った。
俺を崇拝してるくせに体だけはミルルを狙っているレベルらしい。
そう昨日、話してた。
俺はどうすれば良いのか?
これでも良いのか?

確かに俺はモテない。
今しかチャンスはない。
女の体があれば据え膳くわぬは男の恥だ。
しかし、マナナを騙しまくってはいる。
良いだろう。
頭がグダグダする。

「巫女様…あの…。
私の胸見てください。
昨日は舐めてくださりましたよね?
気に入ってくれましたか?」

マナナが水色セーラー服を捲し上げる。
途端に、素晴らしい女体上半身が突き出しになる。
誘われてることは理解してるが…。

『閉まって下さい。
少し頭の整理がしたいです』

「はい…」

マナナはイタズラを叱られたときのような照れた顔だ。

ああ。

マナナはどこまで変態なのか。
今日の観察でそれは理解した。

『貴女は。
まだ…クラスメイトに未練があるのではないですか?』

「え?」

『昨日好きな方がいると私に話しました。
貴女の私への崇拝は甘い気がします。
これは私の勘です。
貴女は私とその方とで迷ってるんじゃないですか?』

悪いが今日出た結論だ。
マナナ…おまえは迷いがあるんじゃないか?
なぜ、ミルルばかりまだ見てる?
不思議だ、この女の思考回路は本気で読めない。
毎回、驚き発言の連続だ。
真正の変態だ。
俺は確かに女体化はするが…自分のことを割りとマトモだと思ってるのに…。

「え…。
何故、そんなふうに?」

『私は神に仕える者です。
人の迷いなどすぐに見破ります。
貴女の発言に昨日、淀みがありました』

嘘だ。
嘘で誘導するからこそ。
沈黙の時間が毎回、必要になってくる。

「え?
そんな…」

『貴女は怪しすぎます。
好きでもないのに彼氏を作ったり・・・。
私の元へ通ってるくせに。
他に好きな人がいると言ってみたり…。
いっぱいボロが出まくってます。
私はアナタを知る権利があります。
私の役目は迷える子羊を正常な道へ導くこと。
それが神から授けられた私の役目ですから…』

後半は決まり文句で。
客全員に言ってる。
しかし…確かに、マナナはアブノーマルも良いところだ。
昨日、それは感じてる…。
今、深紫の光が俺から流れてる。

「え…。
えっと…。
私はアナタだけです」

『嘘はダメです。
貴女は…女性を目で追い続けてるはずです。
そんな映像が今、私の特殊な力によって流れてきました。
私には分かります』

本気で俺の方がばれるんじゃないかと冷や冷やしながら…誘導してる。
俺を神の化身と信じてるからこそ…。
騙されてくれてるが…。

「ええ…。
それは…」

『…』

ココから俺は黙った。
何も言葉が出ないと言うことだ。

「信じてください。
確かに綺麗な女性は目で追ってしまいます。
でも…アナタだけです。
私が綺麗な女性を目で追うことは仕方ないことです。
当たり前です」

衝撃発言でもある。
どう反応すればいいのか。

『当たり前…なのですか?』

俺は悪いがどんなに顔のいい男がいても目で追わない。
どうでもいい、ムカつくだけだ。

「そんなものです。
それが普通です」

そんなわけない気がする。
そうなのか?
俺が変わってたのか?

『私はアナタが私以外の女性を目で追わなくなるその日まで。
貴女の私への崇拝を認めません。
そんなものは愛とも認めません。
貴女は神を侮辱しまくってます』

自然とイジメまくる言葉が出て来た。
俺は何故か認める気にならないらしい。
あれはよくない性癖だと感じた。
ダメだろう…。
あんな恨めしそうな顔で…ミルルを見ては。
ミルルも迷惑してると思う。

「ええ?
それは…」

『私への崇拝が壮絶なら。
それぐらいできるでしょう?
私が言うことは筋もとおってると思います。
守れないのなら、私たちの関係は元に戻りましょう。
私はそれがいいと思います。
貴女は汝が望む道へ走るべきです』

これも苛めでもある。
俺は女体が好きだ。
別にそれでも良いが。
苛めたくもなる。

今まで散々、マナナには貶されてばかりの人生だった。
これぐらいしまくっても罰は当たらないと思う。
少しぐらいは苦しんでみたらどうだ?
どれほど、俺が今までモテない人生を歩んできたか…卑屈にもなる。
神を崇拝し、泉の妖精に憧れ…ひれ伏せば良い。
もがき苦しみまくっても良いぐらいだろう…少しは仕返しもしたくなるくらいには憎くもある。

「ええ…。
それは…。
ダメです。
守ります…。
だから…」

マナナは顔を真っ赤にして首を横に振ってる…肩揃えな黒髪が揺れた。
マナナの正体が変態だと知ってもなお、俺はマナナの女体には興味があるらしい。
もうどうすればいいのか…。
だいたい…毎朝、毎朝…不細工と貶され続けて…いったい、何年目か…。

少しぐらい制裁があっても良いと思う、ちょっとは悪かったと土下座でもして、改心しろと感じる。
言っていいことと悪いことの分別すら付いてない…他の女共は思っても黙ってる。
最低な人間だ、それ以外ないだろう。

『…』

俺はじっとりした眼差しでマナナを見詰めてる。

「お願いです。
信じてください。
私が不出来な従者でした。
これからは変わります。
だから…私と別れずにこれからも交際を続けてください。
大好きです。
アナタのことを絶対的に愛してます。
私は泉の妖精様に初めて会った時から一目惚れです。
崇拝しまくってます」

マナナはパニックなのか。
俺に抱き付いてる。
マナナの体はどう考えても女性だ。
どこで間違えてここまで変態道へ進んでしまったのか。
嘆かわしくはある。
赤紫に俺の体が発光してる。

『…』

「好きです。
愛してます。
信じてください。
貴女だけです。
私の命はアナタだけに捧げます。
ターシャ神話の化身様、泉の妖精様」

猛烈に崇拝されてるのは伝わった。

『期待してます。
許しましょう』

他に言いようもない。
呆れたような声になった。

「泉の妖精様。
巫女様、うれしい。
あの?
昨日と同じように髪を触っても良いですか?」

『…』

俺が黙ってれば…勝手に承諾したと察されて触られる。
マナナは嬉しそうだ。

俺の体に身を擦り付けて。
甘えた猫のようでもある。

それから…俺の唇へ勝手にキスしてる。
軽いキスだ。
唇がポッテリしてやわらかい。

俺を上目づかいで見詰めて微笑んでる。

「巫女様…」

俺の頬へ自分の頬を擦り付けてる。
俺もそこでマナナにキスしてみた。
柔らかい。
今日は舌も入れてみた。
変な気分にもなる。
マナナは俺へ抱き付いてる。

俺はどうしてレズ行為に嵌まらなければならない運命なのか。
不思議でたまらない。
しかし。
昨日、マナナの見事な巨乳なら揉ませてもらえた。
ココにこれば、まるでホステス以上には女の体は触りたい放題だ。

そう考えないとやってられない。
モテないのは自覚あるし、弁えなくてはならないと…それも知ってる。

しかし…何か、怒ってる。
モヤモヤする。

マナナは嬉しそうに俺の体に纏う白いワンピを脱がしにかかりそうだ。

そこでストップした。
あと5分しかない。
5分でミサが始まる。

『マナナ。
私はもうすぐ仕事です』

初めて女の姿の時に名前を呼んだ。
もう変態なのを認めたと言う意味でもある。

「巫女様。
私の名前を…」

マナナに女の姿の時に名前なら聞かなくても勝手に名乗られたことは何度もある。
今まで拒んできただけだ。

変態すぎるのも仕方なしに諦めて認めつつはある…。

『机に私は座ります。
精神を集中します。
扉の外にいつお客様がいらっしゃるか分かりませぬゆえ…』

これで良い。
というか…絶対に客には見られたいと俺は願わない。









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