『タリア視点』
『…』
||「帰って頂戴。
私は全く認めてないわ?」||
夕飯の食卓をマナナと母が同じ台所で料理したらしいが…。
マナナは精神的にタフなのか・…全く堪えてないノリだ。
神父着姿の父はニコニコ笑顔だ。
これから先、どうなるのだろうか…?
色々、不安が過った。
本気で今日からまさか……俺の寝室へ転がり込んで来る気なのか?
俺の部屋前、廊下で…マナナと母が格闘してる。
俺は先に部屋へ戻ってる。
||「私は認めません。
マナナさんをここへ御通しする訳には。
まだ、マナナさんの御両親から何の連絡もかかってこないんだけど‥。
どうなってるのかしら?」||
「お義母さん!
私たちはいつ子供が出来てもおかしくない関係なんです。
私は月神家の嫁として、この家の子供を産むと言う義務があります。
そう言う理由で、今日からここで一緒に寝ます。
お義母さんこそ、この廊下から去って下さい。
まさか・・私たちが行う愛の営みを盗聴したいんですか?
お義母さん、それは犯罪です!
悪趣味です!」
||「そんな訳ないでしょう?
本気で帰って頂戴。
アナタ・・アリオさん…。
アリオさんも黙って見てないで…。
私と一緒に格闘してちょうだい。
アリオさん…」||
母が金切り声を上げた。
父『妙子さん…。
無粋なことは止めて、部屋へ戻ろう』
||「アリオさん!?
まさか…この女狐を認めるの?
私は納得なんていかないわ…。
アリオさん!」||
父『…妙子さん…。
時の流れに任せよう。
覗き見は止めるべきだ。
きっと見守ることしか出来ない筈だ…』
||「アリオさん…。
私は別に覗き見なんて、ただ邪魔をしたかっただけで。
妨害をしたかっただけなのよ。
良いの?
アリオさん?
AV女優の娘なのよ?
タリアを苛めまくってた悪い女よ?
きっとお金目当てに決まってるわ?
アリオさん・・。
私たちの子供に悪い虫が近寄ろうものなら…一緒に撃退しようって…。
タリアが生まれる随分前、結婚してすぐの頃、約束したじゃない?
今がその時なのよ!
アリオさん、シッカリしてちょうだい!」||
父『…』
父が喋るのは珍しいが…。
情事を覗き見をされるのは心臓に悪い。
「お義母さん。
大丈夫です。
ささ、お義母さんたちも寝室へ帰って下さい。
また明日、食卓で会いましょう。
今日は私たち・・初夜ですから」
||「タリアちゃん。
いつでもこの女を捨てても良いのよ。
御両親から何の連絡も来ないんだけど‥どうなってるのかしら?
不思議でたまらないわ?
もう深夜近いのよ?
どうなってるの?」||
母親の奇声が部屋の扉向こう岸から響き渡ってる。
あと何時間か…あそこで格闘をするつもりなのだろうか?
母親は元女子高で番ボスを張れるぐらいの強さだったと聞く。
最後まで親友の頑丈サンと言う女性には勝てなかったらしいが…。
プロレス技は学年で2番だったと聞く。
マナナもミルルと激闘できるくらいだから…割りと絞め技も上手いだろう。
外ではまだ物音がしてる。
大揉めしてるらしい。
話し合いの和解では決着へ向かいそうにないらしい・・。
先に布団へ入って寝ることに決めた。
黒袴着だけ着物掛けに吊るし、寝巻になる。
組み技は…母親の方が、今日は白い着物姿な分…部が悪いかもしれない。
マナナは…オレンジ丸襟なラフそうなワンピースだからだ。
今日は心臓に良くない日だった。
月日が経つのは早いもので…。
すっかり熟年夫婦のようになってしまった。
少し前まで高校生だったり、大学生だったような気がするのが不思議な話だ。
一人目の娘ナリアは今年、2歳になる。
今、1歳6か月ぐらいだ。
まだ会話はおぼつかない。
やっと階段を登ったり、走ったり…歩けるようになったぐらいだ。
まだオムツは取れてない。
今は…娘一人、妻のマナナと共に親子3名で朝食をしてる。
テーブルの上には食パンと牛乳が並んでる。
机の前のテレビでは、=大昔の大物アイドル”眼鏡ミルル”特集=が放送されてる。
「次は男の子が欲しいわね…。
何て名前にしようかしら?
ナリアも弟が欲しいでしょ?
次こそ、喋ってもらえる子にするために全然…違う名前にしようかしらね?
ナリアは全く…喋ってくれなくて…誰に似たんだか…。
お母さん、寂しいわよ。
たまにはお母さんにも構ってちょうだいよ」
//…//
『…』
娘のナリアは誰に似たのか…静かな性格をしてる。
少し…おとなし過ぎて心配になる。
大丈夫だろうか?
人のことは言えないが。
自分の悪い面が似てしまったらしい。
容姿は幸いなことに、マナナよりだ。
少し俺の父や叔母さんにも似た容姿だ。
あまり自分に顔が似てない。
「次の子こそ突然変異が起きないかしら?
ナリアのこと、お母さん好きよ?
でもね‥ちょっとくらい、喋ってもいいんじゃないの?
本当に私の子なの??
顔は私に似てるみたいだけど…性格はどうなのかしら?
我が子ながら…さすがにココまで静かだと…読めないわよ…。
ナリア、挨拶だけで良いから喋ってちょうだい」
//…//
『…』
ナリアを見詰めた。
ナリアは食い入るようにテレビに流れる子役時代のミルルを見詰めてる。
何を考えてるのだろうか?
浮かれた様な表情をしてる。
アイドルに憧れる年頃かも知れない。
「もしかして…お母さんに怒ってるの?
構ってあげられないから…確かにミサ、いつもお祖父ちゃんと一緒だものね…。
あ、TVでミルル特集やってるのね?
本当に懐かしい映像だわ。
ミルルはもう引退したけど…。
ナリアのお父さんの初恋の人よ」
//……………………//←※タリアとマナナの娘、ナリア
『……………………』←※タリア
食パンが喉に詰まりかける。
ナリアのつぶらな瞳がコチラへ向き…すぐにテレビへ戻り、首を縦に振ってる。
マナナもテレビを眺めてる。
「私もね、学生時代はミルルファンでよくミルルのCDを買ったり、ミルル映画を観てたわ…。
”世界にただ一人の清純系女優は私”って曲は滅茶苦茶ヒットしたし、子役時代は“風と共にミルル”ってドラマ。
それから、17歳以降には“スパイ007T”や”スパイ007U”って映画で、ヘイワウッド映画にも出たのよ。
あの有名俳優ハン=サムとも共演した映画よ。
ミルルって本当に有名人よ」
『…』
//…//
ナリアの瞳に光が灯る。
それからナリアはテレビで唄うミルルを凝視してる。
映像で《世界にただ一人の生純系女優は私》という歌が流れてる。
《♪世界でただ一人、地球上に残された清純な乙女は私…。
だれも分かってくれない。
私の心はガラスのハート。
触れば崩れてしまう。
だって、繊細なんだから…私は♪》
あの歌、何故か猛烈に流行った。
ブームが過ぎ去ると流行った理由が…何故か分からない。
映像で…腰まで伸びた茶髪を揺らしながら、眼鏡姿なミルルが白いフリフリなドレスを着てクルクル踊ってる。
ナリアは…まさか、清純系アイドルになりたいのだろうか?
「だけどね?
ミルル、自分が20歳の誕生日に、あっさり邪神国から亡命したゼロって言う人と入籍しちゃってね。
あとからTVでそれ知ってビックリしたわよ。
ミルルなりに彼氏にターシャ国籍をあげるだけの目的だったみたいなんだけど…。
流星のごとくスキャンダルのせいで引退になったのよ。
きっと、お父さんもビックリしたでしょうね…。
お父さん、
ミルルのことは初恋だったけど…。
最後まで全然喋れずに終わったのよ。
全く誰に似たのだか・・ナリアまで大人しいんだから…」
『…』
//……//
ナリアは驚いた瞳になり、マナナの前で瞬きをした。
「私はその20歳の頃には既にお父さんと交際してて、もうお義母さんには苛められて大変だったのよ?
お父さんの許婚、頑丈英子さんとの縁談を根性で私は破談にさせて…。
今に至るわけ。
そのあとも花嫁専門学校へ2年間も通うことに…。
それから先も試練があったわよ。
平和国からお父さんの従兄妹、マリア叔母さんが来なかったら…。
私は今頃どうなってたのかしら?って…。
思うのよ」
『………』
//…//
ナリアは興味を失くしたのか…また食い入るようにテレビにいるミルルを眺めてる。
何を考えてるのだろうか?
親子なのに意思疎通が図れない。
ナリアの髪型はミディアムな黒髪だ。
「マリア叔母様は…ターシャ人男性と結婚して、今ではターシャ神社の近所暮らししてるけど。
あそこ…男の子3名が年子で大変みたいだわ、育児が…。
私の血液型はOで、ナリアはA、タリアもA型だけど…。
マリア叔母様はB型らしいのね?
マリア叔母様の夫がA型らしいから…。
あそこの長男はAB型、次男はO型、3男はB型で…。
全員血液型がバラバラらしいのよ。
ウチの家は…ナリアのお祖父ちゃんがO型らしいのね、ナリアの御祖母ちゃんはA型らしいし…。
タリアはAO型らしいから…。
次に我が家へ生まれてくる子は…A型かO型になるらしいの。
ナリアに…どうしてこんな話をするかって言えば…。
教育のためよ?
賢く育ってほしいからね」
//…//
『…』
この話…少し裏があるが…。
ナリアにはまだまだ早いだろう。
現在、跡継ぎ問題に関して、親族会議がある。
この家にいる娘ナリアがターシャ神社を継ぐのか…。
俺の従兄妹マリア…月神家分家にいる年子3兄弟のうち誰かが…ターシャ神社を継ぐのか。
絶対に月神家が神社を継がなくてはならないと…大昔から決まってるからだ。
ナリアは重荷だろう。
色々なことに関して。
「ミルルぐらい美人で頭が良くて強い子に育つのよ?。
確かにお父さんが見る目があったのは認めるわ?
ミルルレベルよ、応援するわよ。
引く手あまたになるのよ!ナリア!
早く良い男を捕まえてよ、ナリア!
ちゃんとチェックするからね!
月神家の存続に関わるんだから!
うちは絶対に養子よ!
嫁いじゃ駄目よ!
ナリア!」
『…』
//………//
ナリアはソッポを向いてる。
きっと、プレッシャーなんだろう。
食パンが進んでないようだ。
「結婚相手は神父になってもらう予定だから絶対、神学科よ!
それから、宗派はターシャ教よ!
宗派変更させたり、進路変更させてでもゲットしてよね?
難しかったら…お母さんもナリアの見合いを斡旋するから。
月神家2000年の歴史に関わるからココだけは頑張ってよ!
絶対、引く手あまたのミルルレベルの美人で頭が良くて体力のある子に育つのよ!
ナリア!」
『…』
//………//
ナリアは急に机の下を向き、頭を垂れ始めた。
無言の中に寂しげな表情が伺える。
親の期待を絶大に背負ってるみたいだ。
「ナリアが…必ず結婚して…しかも子供も生んで、継いでもらえる確証がないでしょ?
うちは絶対、誰かに継いでもらう予定だからね!
ナリアか…ナリアの婿が神学部へ進むしかないのよ。
ナリアには期待してるわよ。
3人ぐらい生むべきなのかしらね?
はあ…。
跡継ぎ問題は大変だわ。
こんな日もナリアのミサなのね?
お母さんも女だし。
お義父さんと一緒に行くのよ。
分かった?
ナリア」
『…』
//…………はい…//
ナリアは静かに頭を縦に振った。
大昔の自分は覚えてないが。
どうだったのだろうか?
ナリアは静かすぎないか?
「ごめんね?
あそこ、現在は男性以外入れないのよ。
お父さんは神父の仕事があるからね。
お爺ちゃんに任せたわよ!」
ナリアが大変なのは理解してるわ?
この国ではターシャ教が国境になっててね…。
村ではターシャ神を絶対崇拝はしてるのよ。
奉らないと災いが村に起きると言う伝説があってね。
特に泉の神童はこの役目をサボると心臓発作で死ぬとか言う神話があるのよ」
『…』
//……………!!!//
この話もよく自分の母親から聞かされた思い出があるが。
ナリアが泣きそうな潤んだ瞳で、マナナを凝視してる。
ナリアは素直で良い子みたいだ。
「村にとっては生贄的存在なのよ…。
ナリアの体、ターシャ泉半径1kmを境に性転換するのは知ってるわ。
お父さんもそうだったから。
お父さんの叔母様もそうだったらしいのよ。
月神家の一人目は…だいたいそうらしいの…。
もし一人目が死んだりした場合・・二人目がそういう体質になるみたいで…。
あ、ナリアは健康なのは知ってるわ!!
でもね?
ナリアが…これをサボればこの村に災いが訪れるらしくて…。
昔、一回だけお父さんがサボった時に…忘れもしないわよ。
ターシャ祭で邪神教からのテロ事件が起きたのよ。
軌道修正を外したジャシドンが海に落ちるし、大変だったわよ」
『…………………………………………』
//…………//
ナリアが…俺を漆黒な瞳で覗き込んでる。
何かを訴えてるらしい。
何だろうか?
碌な事じゃない気がする。
「月神家は…突然変異で…。
昔、人間に文明もなかったころ。
もっと先を進んでいた神様が…雷を当てて…毎日、科学実験したけど…。
失敗して生まれた血筋だという伝説すらあるのよ。
ナリアは知らないでしょうから、お母さんが話してあげるわ。
裏覚えだけど…。
もともと…この泉に生息してたクラゲみたいに蛍光するクマノミに似た魚をとても気に入っていた神様は…。
人間がその魚を乱獲することに対して、腹を立てたらしいの。
そのあと…その魚と人間を掛けあわせて…。
神様は人面魚をつくろうとしたけど…。
てんでダメで失敗したから捨てた人間が…月神家の先祖が発祥したルーツだとすら言われてるらしいのよ。
もうその魚は…太古に絶滅したと言う噂もあってね…。
アナタ、これで合ってるかしら?」
『…ああ』
//…………//
ナリアは台詞が長すぎて理解できてるのか?
不思議そうにマナナへ目配せしてる。
「はあ。
だから…神様が気に入ってた魚の遺伝子がある月神家の一族がミサへ来れば…。
神様の怒りが収まるらしいのよ…。
これが月神家に伝わる昔話らしいわ。
聖書では”ミサ儀式神殿から続く場所に異世界への扉があって、泉の妖精様は異世界から生まれた…神様が作成した半魚人”
ともされているわ。
ナリア、村人のために頑張ってちょうだい!!!
これから毎日、満18歳になるまでの辛抱だから」
『…』
//…………………………………………!!//
ナリアは驚いた表情で口を開き・…固まってる。
全く食事が進んでない。
小食なのだろうか?
「泉の神童でいる時、ナリアは村人からは・・・ターシャ神の化身って思われてるの。
泉の下にいる妖精様って全員が信じているの。
だから、絶対にボロなんて出したらダメよ。
ナリアの正体が凡人ってばれたら…月神家が村から追い出されるんだからね」
『…』
//……………………っ//
ナリアの瞳が左右へ動いてる。
予想出来る反応だ。
「ナリアが…可哀そうだとは思う。
でも、ターシャ村と月神家と…ターシャ教が存続するために耐えてちょうだい。
妖精の正体がその辺にいる凡人ってばれる訳にはいかないのよ。
世界中からこの家へ問い合わせが殺到するでしょう?
ごめんね、ナリア」
『…』
//……………//
妻―――マナナは両手を合わせた。
娘―――ナリアは困った表情をしてる。
「ナリアのお父さんも、お父さんの叔母様も耐えて来たの。
きっと、ナリアには出来る。
お母さんには分かるわ。
お祖父さんと一緒に今夜も行ってね?
ナリア、頑張って!」
『…』
//……//
ナリアは半泣きになってる。
我儘すら言えない素直な子供らしい。
俺はダダを捏ねたと母から聞いたことがあるが。
大丈夫だろうか?
あまり良い子さんだと…将来、ぐれないだろうか?
「ああ。
それにしても嫌になるわ?
また今日も姑と会わなきゃならないなんて。
自分の孫と息子には甘い癖に…。
タリアもたまには、ナリアに説明してよね?
もう。
ナリアも理解してるのか…本当に物言わずなんだから。
それにしても姑が私にだけ本当にうるさくって!
嫌になるわ。
お義父さんは静かだから良いけど…」
『…』
//…//
マナナが食事を終え、牛乳をお代わりしてる。
よく食べてるが、そのことに関しては文句なしだ。
元気そうだ。
「子供が生まれるまで私が姑にどれだけ苛められたか…。
2年子なきは去るって…。
何なの?
あの上から目線。
何様のつもりなの?
少しぐらい働いてもらうわよ!
料理全般はお義母さんにつくってもらうわよ!
私は健康な子を生むためにも寝るわよ!
口で闘うわよ、今日も!」
//…//
『………』
マナナはガッツポーズをしてる。
ナリアは知らない顔をしてる。
「ちゃんと、ナリアの王族財閥家庭教師さんにも勉強見るのは頼んだからね?
ピアノのお稽古とバイオリンと王族財閥ターシャ会話教室や王族財閥英数塾、捗ってるかしら?
ナリア?
茶道の調子はどうかしら?
ナリア…。
茶花道教室の大和撫子先生とは仲良くいってるかしら?
ナリア…」
『…』
//……//
ナリアは静かに相槌を打ち、首だけ何度も振ってる。
こんなに良い子さんがこの世に存在するのか?
手がかからない子供だ。
静か過ぎて夜泣きもしなかった。
ただ、食欲がないのが気になる。
食べないと…背が伸びそうにない。
もやしっ子だ。
マナナは連日教育ママゴンになってる。
俺としては放置主義でいいと思ってるが。
考え方に差があるらしい。
子供の体力値が心配なとこだ。
『あまりナリアにハードなことをやらせると可哀想じゃないか…』
「これぐらいでいいのよ。
お義母さんに私の血のせいで馬鹿がうつったって言われるよりマシよ!」
『…』
「本当にお義母さんに言い返してよね?
困るわよ。
何であんなにお義母さんの前で毎回固まるわけよ。
自分の親でしょ…」
『…』
「もう!
怒ってるわよ。
結婚した相手がミルルだったら庇ってくれたって言うの?
お義母さんにも昨日、同じこと言われたわよ!
なんなの?
何様のつもりなのよ、タリアのお母さんって…」
『今更だが…。
俺の初恋はお前だし。
そろそろ怒りをおさえたほうが…』
「そんな嘘ついてもフォローにはなってないわよ!
もう、タリアの初恋がミルルだって言うことは近所中、有名な話なんだから。
信じるわけないでしょ!」
『…』
「今更、ミルルが好きだったって言う過去が消せるわけないでしょ?。
それも7年以上でしょ?
その件に関しては、何のフォローにもならないし…過去の弁解は要らないわよ。
お義母さんもだけど、キセキも全員知ってるわよ。
はあ…。
まあね?
ミルルに全然、相手にされてなかったことも、私はよく知ってるわよ!?
それより、今と未来が大切でしょ !
お義母さんに反撃してちょうだい!
期待してるわよ!」
『…』
「お義母さんに少しぐらい言い返してよね?
何なの?
そんなに自分のお母さんの癖に怖いわけ?
ちょっとぐらい、お義母さんを黙らしてよね!
じゃ、行ってらっしゃい」
『…』
長いこと、わざと言わなかった自覚もある。
自分の性格が悪いのも知ってる。
ずっと黙ってると、こうなるらしい。
信じて貰えないらしい。
外は晴れだ。
今更、大昔のことなど…流れ去った。
マナナにも感謝してる。
たまには、鬼母から庇ってあげても…もう、そろそろ良いような気もする。
いい大人になった筈なのに。
こういう話は長引くと逆に伝えにくくなるらしい。
『ありがとう』
「急になんなの?
感謝して?
お礼を言う暇があったら。
少しはお母さんへも反論してよね?
分かってるの?」
『ああ、じゃ…』
「本当かしらね?
今後に期待してるわよ」
マナナは手を振った。
いつの間にか…マナナは、少し前より太ってしまった。
ちょっとお腹が出てる。
今晩、帰宅したら言ってみようか…。
いったい、アイツは何て反応するだろうか?
神社は5時に締まり、7時には帰宅できる。
その代わり臨時で電話がかかればでなければならないが。
業務を終え、家へ戻る。
ナリアは9時までミサだろう。
1歳児なのに過酷だ、不憫にもなる。
ベビーカーで父と共に出勤してる。
哺乳瓶を片手に父も大変そうだ。
玄関先でマナナから出迎えられる。
今から言う気なのだが…。
ナリアは帰宅すればすぐに寝る良い子だ。
俺の父に連れられて帰宅するまで2時間だ。
「お帰り。
夕飯できてるわよ」
リビングへ行けば…机に三膳分、食事が並んでる。
テレビでは”懐かしの事件簿”という番組が流れてる。
懐かしい事件だ。
”血のターシャ祭”と言う邪神教集団からテロが勃発した出来事が…newsで流れてる。
マナナが思いついたように溜息を吐いた。
「それにしてもあの地下防空壕施設はどうなったのかしら?」
『…』
「あれからも度々…。
ナリアとお義父さんにも、地下施設へは行って貰ってるんだけど…。
まさか、ミサ施設にある…押し入れへ入って…。
押し入れに鍵穴があるなんて誰が分かる?
で、その鍵穴へナリアが持ってる鍵を回せば…。
押し入れがエレベーターみたいに動くなんて…。
タリアが昔、発見してくれなければ…きっと今でも分かってなかったわよ」
『…』
そうだろう。
あれは…。
邪神教からテロ事件が起きた時。
ターシャ祭で爆弾が仕掛けられ、押し入れへ避難をした瞬間に…偶然、発見した。
「その先が、地下施設へ進むなんて誰が思う?
今では…あの地下防空壕ね?
ナリアとお義父さんの遊び場になってるみたいよ?
あそこ?」
『良いのか?
あそこ、立ち入り禁止じゃないのか?』
確か、地下防空豪には、古代モニターや壁画があった筈だ。
「そうよね?
いろいろ…。
あの場所、需要文化財が出てきそうな気配だし。
あまり…。
指紋とかつけてもらったら困るんだけど…。
ナリアの鍵と反応する仕掛けが多くてね。
ああ、私も行きたいわ。
今、あのミサ施設…。
男性以外、普段は立ち入り禁止なのよね?
まあ、ナリアが館内の器物破損してないことを祈るけど」
『…』
「あの地下防空豪に書いてる文字は何故か邪神語でしょ?
ミルルには読めるんでしょうけど。
私には無理よ。
学習博士もたびたび、あそこへやって来るみたいよ?
考古学者として、血が唸るみたいで。
今、男性のみ入れる場所だから。
連日、ナリアと面識があるみたいよ」
学習博士は頭に3本毛が生えた著名な学者だ。
女好きな性格は息子2人にも遺伝したらしい。
現在でも元気にやってるみたいだ。
あれから数年流れるが…今でも頭に残された3本の髪は、切れずに健在だ。
『そっか…。
実は昔は無理だったが、少しだけなら邪神語も読めるようになった。
大学で第三国語は邪神語にしたから。
ターシャ国と交流がないし、全く役に立ってないが…。
今のところ…』
「そうなの。
それは助かるわ。
にしても。
ジャシドンは最近、全然…。
ニュースで流れないけど…。
どうなったのかしら?
不思議だわ。
海に落とされたアレは何だったのかしら?
威嚇のつもりだったのかしら?
本当に人工衛星だったのかしらね?」
今、テレビではジャシドンについて放送されてるが。
今の若者が聞いても当時の住民パニックを想像できないだろう。
連日、昔は…学校でもこの話題で持ちっきりになっていた。
思い出すと、胸が痛くなる事件だ。
暗い話は苦手かもしれない。
『…。
夕飯の前に寝室へ来ないか?』
「え?」
『ナリアがいると出来ないだろう』
「ああ。
そうね。
最近、もしかして…。
寂しかったの?
ナリアが帰宅するまで2時間ね。
頑張りましょう」
マナナは嬉しそうだ。
夫婦の時間がナリアが生まれる前より減ってる。
ナリアが生まれる前はほぼエロだった。
というか。
エロだけで繋がってるのか?と疑う域な関係だった。
寝室へ入るとマナナは服を脱いだ。
お互いに裸になり、キスをするとマナナも抱き締め返してきた。
エロは相変わらず積極的だ。
もう下は反応してる…。
流されると言いにくくなる。
マナナを抱擁して、ここで伝えるべきだと決意した。
何と言うべきなのか?
「どうしたの?
今日はいつもより強い力で抱き締めるのね?
溜まってた?」
『えと』
「なんなの?」
『実はミルルより元からお前の方が好きで…』
「はあ?」
『だから、ナリアの前でもうミルルの件について言うのは止めて欲しい』
「あ?
今朝のことを気にしてたのね?
分かったわ。
ナリアの前でミルルが好きだった過去は封印してあげる」
『それだけか?』
「そうよ。
嘘まで吐いて、頼むなんて。
よほど嫌だったのね。
ナリアには隠すわ」
『だから…』
「なんなの?
時間がないわ。
エロするんでしょ?」
『…』
「どうしたの?」
『まさか…。
わざとしてるのか?』
「は?」
『だから、今…。
言っただろう?』
「何の話よ?」
『…』
「全く何のことか。
はあ?
ミルルより私だって?
ナリアに黙って欲しいんでしょ」
『だから…』
「はあ?」
『違ってて』
「初恋…私ってことにして欲しいの。
分かったわ。
そうしておくわ」
『あの…』
「なに?
時間ないわよ」
『気付いてたか?』
「何の話してるの?
大丈夫なの?」
『だから』
「分かったわ。
黒歴史は消してあげる。
最初から私が好きだったって話に変えてあげるわ。
私は優しいから」
『そっか…。
えと』
「それよりエロをしましょう?
ね?
話は終わってからで良いわ」
『あまり伝わってないんだろ?
わざとなのか?』
「はあ?
エロがしたいのよ。
久しぶりでしょ。
ね?」
『…』
こうしてエロへ突入した。
マナナはエロに萌えてるらしい。
あまり感動をしてないらしい…。
もっと喜んでくれるかと期待してたのだが。
予想を覆されてがっくりかもしれない。
事が終わってマナナはうっとりした顔だ。
エロが終わると体が急に熱くなる。
放心して天井を眺めてた。
体力仕事だ。
何歳までもつだろうか…?
エロが出来なくなった日でもマナナは離れずに側にいてくれるだろうか?
そんなことを考えながら、微睡んでいた。
マナナは相変わらず、性的に旺盛らしい。
元気そうで何よりだ。
タリアのマナナ躾帳K
目次
タリアのマナナ躾帳L
あと1話でLASTです。
テーマは”幼馴染設定”でした。
あと”初恋”という設定です。
次のシリーズもまた考えてます。
違うジャンルで綴れたらなと願います。
||「帰って頂戴。
私は全く認めてないわ?」||
夕飯の食卓をマナナと母が同じ台所で料理したらしいが…。
マナナは精神的にタフなのか・…全く堪えてないノリだ。
神父着姿の父はニコニコ笑顔だ。
これから先、どうなるのだろうか…?
色々、不安が過った。
☆☆☆
本気で今日からまさか……俺の寝室へ転がり込んで来る気なのか?
俺の部屋前、廊下で…マナナと母が格闘してる。
俺は先に部屋へ戻ってる。
||「私は認めません。
マナナさんをここへ御通しする訳には。
まだ、マナナさんの御両親から何の連絡もかかってこないんだけど‥。
どうなってるのかしら?」||
「お義母さん!
私たちはいつ子供が出来てもおかしくない関係なんです。
私は月神家の嫁として、この家の子供を産むと言う義務があります。
そう言う理由で、今日からここで一緒に寝ます。
お義母さんこそ、この廊下から去って下さい。
まさか・・私たちが行う愛の営みを盗聴したいんですか?
お義母さん、それは犯罪です!
悪趣味です!」
||「そんな訳ないでしょう?
本気で帰って頂戴。
アナタ・・アリオさん…。
アリオさんも黙って見てないで…。
私と一緒に格闘してちょうだい。
アリオさん…」||
母が金切り声を上げた。
父『妙子さん…。
無粋なことは止めて、部屋へ戻ろう』
||「アリオさん!?
まさか…この女狐を認めるの?
私は納得なんていかないわ…。
アリオさん!」||
父『…妙子さん…。
時の流れに任せよう。
覗き見は止めるべきだ。
きっと見守ることしか出来ない筈だ…』
||「アリオさん…。
私は別に覗き見なんて、ただ邪魔をしたかっただけで。
妨害をしたかっただけなのよ。
良いの?
アリオさん?
AV女優の娘なのよ?
タリアを苛めまくってた悪い女よ?
きっとお金目当てに決まってるわ?
アリオさん・・。
私たちの子供に悪い虫が近寄ろうものなら…一緒に撃退しようって…。
タリアが生まれる随分前、結婚してすぐの頃、約束したじゃない?
今がその時なのよ!
アリオさん、シッカリしてちょうだい!」||
父『…』
父が喋るのは珍しいが…。
情事を覗き見をされるのは心臓に悪い。
「お義母さん。
大丈夫です。
ささ、お義母さんたちも寝室へ帰って下さい。
また明日、食卓で会いましょう。
今日は私たち・・初夜ですから」
||「タリアちゃん。
いつでもこの女を捨てても良いのよ。
御両親から何の連絡も来ないんだけど‥どうなってるのかしら?
不思議でたまらないわ?
もう深夜近いのよ?
どうなってるの?」||
母親の奇声が部屋の扉向こう岸から響き渡ってる。
☆☆☆
あと何時間か…あそこで格闘をするつもりなのだろうか?
母親は元女子高で番ボスを張れるぐらいの強さだったと聞く。
最後まで親友の頑丈サンと言う女性には勝てなかったらしいが…。
プロレス技は学年で2番だったと聞く。
マナナもミルルと激闘できるくらいだから…割りと絞め技も上手いだろう。
外ではまだ物音がしてる。
大揉めしてるらしい。
話し合いの和解では決着へ向かいそうにないらしい・・。
先に布団へ入って寝ることに決めた。
黒袴着だけ着物掛けに吊るし、寝巻になる。
組み技は…母親の方が、今日は白い着物姿な分…部が悪いかもしれない。
マナナは…オレンジ丸襟なラフそうなワンピースだからだ。
今日は心臓に良くない日だった。
『それから…だいぶ後の未来;
タリア視点』
タリア視点』
月日が経つのは早いもので…。
すっかり熟年夫婦のようになってしまった。
少し前まで高校生だったり、大学生だったような気がするのが不思議な話だ。
一人目の娘ナリアは今年、2歳になる。
今、1歳6か月ぐらいだ。
まだ会話はおぼつかない。
やっと階段を登ったり、走ったり…歩けるようになったぐらいだ。
まだオムツは取れてない。
今は…娘一人、妻のマナナと共に親子3名で朝食をしてる。
テーブルの上には食パンと牛乳が並んでる。
机の前のテレビでは、=大昔の大物アイドル”眼鏡ミルル”特集=が放送されてる。
「次は男の子が欲しいわね…。
何て名前にしようかしら?
ナリアも弟が欲しいでしょ?
次こそ、喋ってもらえる子にするために全然…違う名前にしようかしらね?
ナリアは全く…喋ってくれなくて…誰に似たんだか…。
お母さん、寂しいわよ。
たまにはお母さんにも構ってちょうだいよ」
//…//
『…』
娘のナリアは誰に似たのか…静かな性格をしてる。
少し…おとなし過ぎて心配になる。
大丈夫だろうか?
人のことは言えないが。
自分の悪い面が似てしまったらしい。
容姿は幸いなことに、マナナよりだ。
少し俺の父や叔母さんにも似た容姿だ。
あまり自分に顔が似てない。
「次の子こそ突然変異が起きないかしら?
ナリアのこと、お母さん好きよ?
でもね‥ちょっとくらい、喋ってもいいんじゃないの?
本当に私の子なの??
顔は私に似てるみたいだけど…性格はどうなのかしら?
我が子ながら…さすがにココまで静かだと…読めないわよ…。
ナリア、挨拶だけで良いから喋ってちょうだい」
//…//
『…』
ナリアを見詰めた。
ナリアは食い入るようにテレビに流れる子役時代のミルルを見詰めてる。
何を考えてるのだろうか?
浮かれた様な表情をしてる。
アイドルに憧れる年頃かも知れない。
「もしかして…お母さんに怒ってるの?
構ってあげられないから…確かにミサ、いつもお祖父ちゃんと一緒だものね…。
あ、TVでミルル特集やってるのね?
本当に懐かしい映像だわ。
ミルルはもう引退したけど…。
ナリアのお父さんの初恋の人よ」
//……………………//←※タリアとマナナの娘、ナリア
『……………………』←※タリア
食パンが喉に詰まりかける。
ナリアのつぶらな瞳がコチラへ向き…すぐにテレビへ戻り、首を縦に振ってる。
マナナもテレビを眺めてる。
「私もね、学生時代はミルルファンでよくミルルのCDを買ったり、ミルル映画を観てたわ…。
”世界にただ一人の清純系女優は私”って曲は滅茶苦茶ヒットしたし、子役時代は“風と共にミルル”ってドラマ。
それから、17歳以降には“スパイ007T”や”スパイ007U”って映画で、ヘイワウッド映画にも出たのよ。
あの有名俳優ハン=サムとも共演した映画よ。
ミルルって本当に有名人よ」
『…』
//…//
ナリアの瞳に光が灯る。
それからナリアはテレビで唄うミルルを凝視してる。
映像で《世界にただ一人の生純系女優は私》という歌が流れてる。
《♪世界でただ一人、地球上に残された清純な乙女は私…。
だれも分かってくれない。
私の心はガラスのハート。
触れば崩れてしまう。
だって、繊細なんだから…私は♪》
あの歌、何故か猛烈に流行った。
ブームが過ぎ去ると流行った理由が…何故か分からない。
映像で…腰まで伸びた茶髪を揺らしながら、眼鏡姿なミルルが白いフリフリなドレスを着てクルクル踊ってる。
ナリアは…まさか、清純系アイドルになりたいのだろうか?
「だけどね?
ミルル、自分が20歳の誕生日に、あっさり邪神国から亡命したゼロって言う人と入籍しちゃってね。
あとからTVでそれ知ってビックリしたわよ。
ミルルなりに彼氏にターシャ国籍をあげるだけの目的だったみたいなんだけど…。
流星のごとくスキャンダルのせいで引退になったのよ。
きっと、お父さんもビックリしたでしょうね…。
お父さん、
ミルルのことは初恋だったけど…。
最後まで全然喋れずに終わったのよ。
全く誰に似たのだか・・ナリアまで大人しいんだから…」
『…』
//……//
ナリアは驚いた瞳になり、マナナの前で瞬きをした。
「私はその20歳の頃には既にお父さんと交際してて、もうお義母さんには苛められて大変だったのよ?
お父さんの許婚、頑丈英子さんとの縁談を根性で私は破談にさせて…。
今に至るわけ。
そのあとも花嫁専門学校へ2年間も通うことに…。
それから先も試練があったわよ。
平和国からお父さんの従兄妹、マリア叔母さんが来なかったら…。
私は今頃どうなってたのかしら?って…。
思うのよ」
『………』
//…//
ナリアは興味を失くしたのか…また食い入るようにテレビにいるミルルを眺めてる。
何を考えてるのだろうか?
親子なのに意思疎通が図れない。
ナリアの髪型はミディアムな黒髪だ。
「マリア叔母様は…ターシャ人男性と結婚して、今ではターシャ神社の近所暮らししてるけど。
あそこ…男の子3名が年子で大変みたいだわ、育児が…。
私の血液型はOで、ナリアはA、タリアもA型だけど…。
マリア叔母様はB型らしいのね?
マリア叔母様の夫がA型らしいから…。
あそこの長男はAB型、次男はO型、3男はB型で…。
全員血液型がバラバラらしいのよ。
ウチの家は…ナリアのお祖父ちゃんがO型らしいのね、ナリアの御祖母ちゃんはA型らしいし…。
タリアはAO型らしいから…。
次に我が家へ生まれてくる子は…A型かO型になるらしいの。
ナリアに…どうしてこんな話をするかって言えば…。
教育のためよ?
賢く育ってほしいからね」
//…//
『…』
この話…少し裏があるが…。
ナリアにはまだまだ早いだろう。
現在、跡継ぎ問題に関して、親族会議がある。
この家にいる娘ナリアがターシャ神社を継ぐのか…。
俺の従兄妹マリア…月神家分家にいる年子3兄弟のうち誰かが…ターシャ神社を継ぐのか。
絶対に月神家が神社を継がなくてはならないと…大昔から決まってるからだ。
ナリアは重荷だろう。
色々なことに関して。
「ミルルぐらい美人で頭が良くて強い子に育つのよ?。
確かにお父さんが見る目があったのは認めるわ?
ミルルレベルよ、応援するわよ。
引く手あまたになるのよ!ナリア!
早く良い男を捕まえてよ、ナリア!
ちゃんとチェックするからね!
月神家の存続に関わるんだから!
うちは絶対に養子よ!
嫁いじゃ駄目よ!
ナリア!」
『…』
//………//
ナリアはソッポを向いてる。
きっと、プレッシャーなんだろう。
食パンが進んでないようだ。
「結婚相手は神父になってもらう予定だから絶対、神学科よ!
それから、宗派はターシャ教よ!
宗派変更させたり、進路変更させてでもゲットしてよね?
難しかったら…お母さんもナリアの見合いを斡旋するから。
月神家2000年の歴史に関わるからココだけは頑張ってよ!
絶対、引く手あまたのミルルレベルの美人で頭が良くて体力のある子に育つのよ!
ナリア!」
『…』
//………//
ナリアは急に机の下を向き、頭を垂れ始めた。
無言の中に寂しげな表情が伺える。
親の期待を絶大に背負ってるみたいだ。
「ナリアが…必ず結婚して…しかも子供も生んで、継いでもらえる確証がないでしょ?
うちは絶対、誰かに継いでもらう予定だからね!
ナリアか…ナリアの婿が神学部へ進むしかないのよ。
ナリアには期待してるわよ。
3人ぐらい生むべきなのかしらね?
はあ…。
跡継ぎ問題は大変だわ。
こんな日もナリアのミサなのね?
お母さんも女だし。
お義父さんと一緒に行くのよ。
分かった?
ナリア」
『…』
//…………はい…//
ナリアは静かに頭を縦に振った。
大昔の自分は覚えてないが。
どうだったのだろうか?
ナリアは静かすぎないか?
「ごめんね?
あそこ、現在は男性以外入れないのよ。
お父さんは神父の仕事があるからね。
お爺ちゃんに任せたわよ!」
ナリアが大変なのは理解してるわ?
この国ではターシャ教が国境になっててね…。
村ではターシャ神を絶対崇拝はしてるのよ。
奉らないと災いが村に起きると言う伝説があってね。
特に泉の神童はこの役目をサボると心臓発作で死ぬとか言う神話があるのよ」
『…』
//……………!!!//
この話もよく自分の母親から聞かされた思い出があるが。
ナリアが泣きそうな潤んだ瞳で、マナナを凝視してる。
ナリアは素直で良い子みたいだ。
「村にとっては生贄的存在なのよ…。
ナリアの体、ターシャ泉半径1kmを境に性転換するのは知ってるわ。
お父さんもそうだったから。
お父さんの叔母様もそうだったらしいのよ。
月神家の一人目は…だいたいそうらしいの…。
もし一人目が死んだりした場合・・二人目がそういう体質になるみたいで…。
あ、ナリアは健康なのは知ってるわ!!
でもね?
ナリアが…これをサボればこの村に災いが訪れるらしくて…。
昔、一回だけお父さんがサボった時に…忘れもしないわよ。
ターシャ祭で邪神教からのテロ事件が起きたのよ。
軌道修正を外したジャシドンが海に落ちるし、大変だったわよ」
『…………………………………………』
//…………//
ナリアが…俺を漆黒な瞳で覗き込んでる。
何かを訴えてるらしい。
何だろうか?
碌な事じゃない気がする。
「月神家は…突然変異で…。
昔、人間に文明もなかったころ。
もっと先を進んでいた神様が…雷を当てて…毎日、科学実験したけど…。
失敗して生まれた血筋だという伝説すらあるのよ。
ナリアは知らないでしょうから、お母さんが話してあげるわ。
裏覚えだけど…。
もともと…この泉に生息してたクラゲみたいに蛍光するクマノミに似た魚をとても気に入っていた神様は…。
人間がその魚を乱獲することに対して、腹を立てたらしいの。
そのあと…その魚と人間を掛けあわせて…。
神様は人面魚をつくろうとしたけど…。
てんでダメで失敗したから捨てた人間が…月神家の先祖が発祥したルーツだとすら言われてるらしいのよ。
もうその魚は…太古に絶滅したと言う噂もあってね…。
アナタ、これで合ってるかしら?」
『…ああ』
//…………//
ナリアは台詞が長すぎて理解できてるのか?
不思議そうにマナナへ目配せしてる。
「はあ。
だから…神様が気に入ってた魚の遺伝子がある月神家の一族がミサへ来れば…。
神様の怒りが収まるらしいのよ…。
これが月神家に伝わる昔話らしいわ。
聖書では”ミサ儀式神殿から続く場所に異世界への扉があって、泉の妖精様は異世界から生まれた…神様が作成した半魚人”
ともされているわ。
ナリア、村人のために頑張ってちょうだい!!!
これから毎日、満18歳になるまでの辛抱だから」
『…』
//…………………………………………!!//
ナリアは驚いた表情で口を開き・…固まってる。
全く食事が進んでない。
小食なのだろうか?
「泉の神童でいる時、ナリアは村人からは・・・ターシャ神の化身って思われてるの。
泉の下にいる妖精様って全員が信じているの。
だから、絶対にボロなんて出したらダメよ。
ナリアの正体が凡人ってばれたら…月神家が村から追い出されるんだからね」
『…』
//……………………っ//
ナリアの瞳が左右へ動いてる。
予想出来る反応だ。
「ナリアが…可哀そうだとは思う。
でも、ターシャ村と月神家と…ターシャ教が存続するために耐えてちょうだい。
妖精の正体がその辺にいる凡人ってばれる訳にはいかないのよ。
世界中からこの家へ問い合わせが殺到するでしょう?
ごめんね、ナリア」
『…』
//……………//
妻―――マナナは両手を合わせた。
娘―――ナリアは困った表情をしてる。
「ナリアのお父さんも、お父さんの叔母様も耐えて来たの。
きっと、ナリアには出来る。
お母さんには分かるわ。
お祖父さんと一緒に今夜も行ってね?
ナリア、頑張って!」
『…』
//……//
ナリアは半泣きになってる。
我儘すら言えない素直な子供らしい。
俺はダダを捏ねたと母から聞いたことがあるが。
大丈夫だろうか?
あまり良い子さんだと…将来、ぐれないだろうか?
「ああ。
それにしても嫌になるわ?
また今日も姑と会わなきゃならないなんて。
自分の孫と息子には甘い癖に…。
タリアもたまには、ナリアに説明してよね?
もう。
ナリアも理解してるのか…本当に物言わずなんだから。
それにしても姑が私にだけ本当にうるさくって!
嫌になるわ。
お義父さんは静かだから良いけど…」
『…』
//…//
マナナが食事を終え、牛乳をお代わりしてる。
よく食べてるが、そのことに関しては文句なしだ。
元気そうだ。
「子供が生まれるまで私が姑にどれだけ苛められたか…。
2年子なきは去るって…。
何なの?
あの上から目線。
何様のつもりなの?
少しぐらい働いてもらうわよ!
料理全般はお義母さんにつくってもらうわよ!
私は健康な子を生むためにも寝るわよ!
口で闘うわよ、今日も!」
//…//
『………』
マナナはガッツポーズをしてる。
ナリアは知らない顔をしてる。
「ちゃんと、ナリアの王族財閥家庭教師さんにも勉強見るのは頼んだからね?
ピアノのお稽古とバイオリンと王族財閥ターシャ会話教室や王族財閥英数塾、捗ってるかしら?
ナリア?
茶道の調子はどうかしら?
ナリア…。
茶花道教室の大和撫子先生とは仲良くいってるかしら?
ナリア…」
『…』
//……//
ナリアは静かに相槌を打ち、首だけ何度も振ってる。
こんなに良い子さんがこの世に存在するのか?
手がかからない子供だ。
静か過ぎて夜泣きもしなかった。
ただ、食欲がないのが気になる。
食べないと…背が伸びそうにない。
もやしっ子だ。
マナナは連日教育ママゴンになってる。
俺としては放置主義でいいと思ってるが。
考え方に差があるらしい。
子供の体力値が心配なとこだ。
☆☆☆
『あまりナリアにハードなことをやらせると可哀想じゃないか…』
「これぐらいでいいのよ。
お義母さんに私の血のせいで馬鹿がうつったって言われるよりマシよ!」
『…』
「本当にお義母さんに言い返してよね?
困るわよ。
何であんなにお義母さんの前で毎回固まるわけよ。
自分の親でしょ…」
『…』
「もう!
怒ってるわよ。
結婚した相手がミルルだったら庇ってくれたって言うの?
お義母さんにも昨日、同じこと言われたわよ!
なんなの?
何様のつもりなのよ、タリアのお母さんって…」
『今更だが…。
俺の初恋はお前だし。
そろそろ怒りをおさえたほうが…』
「そんな嘘ついてもフォローにはなってないわよ!
もう、タリアの初恋がミルルだって言うことは近所中、有名な話なんだから。
信じるわけないでしょ!」
『…』
「今更、ミルルが好きだったって言う過去が消せるわけないでしょ?。
それも7年以上でしょ?
その件に関しては、何のフォローにもならないし…過去の弁解は要らないわよ。
お義母さんもだけど、キセキも全員知ってるわよ。
はあ…。
まあね?
ミルルに全然、相手にされてなかったことも、私はよく知ってるわよ!?
それより、今と未来が大切でしょ !
お義母さんに反撃してちょうだい!
期待してるわよ!」
『…』
「お義母さんに少しぐらい言い返してよね?
何なの?
そんなに自分のお母さんの癖に怖いわけ?
ちょっとぐらい、お義母さんを黙らしてよね!
じゃ、行ってらっしゃい」
『…』
長いこと、わざと言わなかった自覚もある。
自分の性格が悪いのも知ってる。
ずっと黙ってると、こうなるらしい。
信じて貰えないらしい。
外は晴れだ。
今更、大昔のことなど…流れ去った。
マナナにも感謝してる。
たまには、鬼母から庇ってあげても…もう、そろそろ良いような気もする。
いい大人になった筈なのに。
こういう話は長引くと逆に伝えにくくなるらしい。
『ありがとう』
「急になんなの?
感謝して?
お礼を言う暇があったら。
少しはお母さんへも反論してよね?
分かってるの?」
『ああ、じゃ…』
「本当かしらね?
今後に期待してるわよ」
マナナは手を振った。
いつの間にか…マナナは、少し前より太ってしまった。
ちょっとお腹が出てる。
今晩、帰宅したら言ってみようか…。
いったい、アイツは何て反応するだろうか?
☆☆☆
神社は5時に締まり、7時には帰宅できる。
その代わり臨時で電話がかかればでなければならないが。
業務を終え、家へ戻る。
ナリアは9時までミサだろう。
1歳児なのに過酷だ、不憫にもなる。
ベビーカーで父と共に出勤してる。
哺乳瓶を片手に父も大変そうだ。
玄関先でマナナから出迎えられる。
今から言う気なのだが…。
ナリアは帰宅すればすぐに寝る良い子だ。
俺の父に連れられて帰宅するまで2時間だ。
「お帰り。
夕飯できてるわよ」
リビングへ行けば…机に三膳分、食事が並んでる。
テレビでは”懐かしの事件簿”という番組が流れてる。
懐かしい事件だ。
”血のターシャ祭”と言う邪神教集団からテロが勃発した出来事が…newsで流れてる。
マナナが思いついたように溜息を吐いた。
「それにしてもあの地下防空壕施設はどうなったのかしら?」
『…』
「あれからも度々…。
ナリアとお義父さんにも、地下施設へは行って貰ってるんだけど…。
まさか、ミサ施設にある…押し入れへ入って…。
押し入れに鍵穴があるなんて誰が分かる?
で、その鍵穴へナリアが持ってる鍵を回せば…。
押し入れがエレベーターみたいに動くなんて…。
タリアが昔、発見してくれなければ…きっと今でも分かってなかったわよ」
『…』
そうだろう。
あれは…。
邪神教からテロ事件が起きた時。
ターシャ祭で爆弾が仕掛けられ、押し入れへ避難をした瞬間に…偶然、発見した。
「その先が、地下施設へ進むなんて誰が思う?
今では…あの地下防空壕ね?
ナリアとお義父さんの遊び場になってるみたいよ?
あそこ?」
『良いのか?
あそこ、立ち入り禁止じゃないのか?』
確か、地下防空豪には、古代モニターや壁画があった筈だ。
「そうよね?
いろいろ…。
あの場所、需要文化財が出てきそうな気配だし。
あまり…。
指紋とかつけてもらったら困るんだけど…。
ナリアの鍵と反応する仕掛けが多くてね。
ああ、私も行きたいわ。
今、あのミサ施設…。
男性以外、普段は立ち入り禁止なのよね?
まあ、ナリアが館内の器物破損してないことを祈るけど」
『…』
「あの地下防空豪に書いてる文字は何故か邪神語でしょ?
ミルルには読めるんでしょうけど。
私には無理よ。
学習博士もたびたび、あそこへやって来るみたいよ?
考古学者として、血が唸るみたいで。
今、男性のみ入れる場所だから。
連日、ナリアと面識があるみたいよ」
学習博士は頭に3本毛が生えた著名な学者だ。
女好きな性格は息子2人にも遺伝したらしい。
現在でも元気にやってるみたいだ。
あれから数年流れるが…今でも頭に残された3本の髪は、切れずに健在だ。
『そっか…。
実は昔は無理だったが、少しだけなら邪神語も読めるようになった。
大学で第三国語は邪神語にしたから。
ターシャ国と交流がないし、全く役に立ってないが…。
今のところ…』
「そうなの。
それは助かるわ。
にしても。
ジャシドンは最近、全然…。
ニュースで流れないけど…。
どうなったのかしら?
不思議だわ。
海に落とされたアレは何だったのかしら?
威嚇のつもりだったのかしら?
本当に人工衛星だったのかしらね?」
今、テレビではジャシドンについて放送されてるが。
今の若者が聞いても当時の住民パニックを想像できないだろう。
連日、昔は…学校でもこの話題で持ちっきりになっていた。
思い出すと、胸が痛くなる事件だ。
暗い話は苦手かもしれない。
『…。
夕飯の前に寝室へ来ないか?』
「え?」
『ナリアがいると出来ないだろう』
「ああ。
そうね。
最近、もしかして…。
寂しかったの?
ナリアが帰宅するまで2時間ね。
頑張りましょう」
マナナは嬉しそうだ。
夫婦の時間がナリアが生まれる前より減ってる。
ナリアが生まれる前はほぼエロだった。
というか。
エロだけで繋がってるのか?と疑う域な関係だった。
寝室へ入るとマナナは服を脱いだ。
お互いに裸になり、キスをするとマナナも抱き締め返してきた。
エロは相変わらず積極的だ。
もう下は反応してる…。
流されると言いにくくなる。
マナナを抱擁して、ここで伝えるべきだと決意した。
何と言うべきなのか?
「どうしたの?
今日はいつもより強い力で抱き締めるのね?
溜まってた?」
『えと』
「なんなの?」
『実はミルルより元からお前の方が好きで…』
「はあ?」
『だから、ナリアの前でもうミルルの件について言うのは止めて欲しい』
「あ?
今朝のことを気にしてたのね?
分かったわ。
ナリアの前でミルルが好きだった過去は封印してあげる」
『それだけか?』
「そうよ。
嘘まで吐いて、頼むなんて。
よほど嫌だったのね。
ナリアには隠すわ」
『だから…』
「なんなの?
時間がないわ。
エロするんでしょ?」
『…』
「どうしたの?」
『まさか…。
わざとしてるのか?』
「は?」
『だから、今…。
言っただろう?』
「何の話よ?」
『…』
「全く何のことか。
はあ?
ミルルより私だって?
ナリアに黙って欲しいんでしょ」
『だから…』
「はあ?」
『違ってて』
「初恋…私ってことにして欲しいの。
分かったわ。
そうしておくわ」
『あの…』
「なに?
時間ないわよ」
『気付いてたか?』
「何の話してるの?
大丈夫なの?」
『だから』
「分かったわ。
黒歴史は消してあげる。
最初から私が好きだったって話に変えてあげるわ。
私は優しいから」
『そっか…。
えと』
「それよりエロをしましょう?
ね?
話は終わってからで良いわ」
『あまり伝わってないんだろ?
わざとなのか?』
「はあ?
エロがしたいのよ。
久しぶりでしょ。
ね?」
『…』
こうしてエロへ突入した。
マナナはエロに萌えてるらしい。
あまり感動をしてないらしい…。
もっと喜んでくれるかと期待してたのだが。
予想を覆されてがっくりかもしれない。
事が終わってマナナはうっとりした顔だ。
エロが終わると体が急に熱くなる。
放心して天井を眺めてた。
体力仕事だ。
何歳までもつだろうか…?
エロが出来なくなった日でもマナナは離れずに側にいてくれるだろうか?
そんなことを考えながら、微睡んでいた。
マナナは相変わらず、性的に旺盛らしい。
元気そうで何よりだ。
タリアのマナナ躾帳K
目次
タリアのマナナ躾帳L
20150924
色々、まとめるのが…大変でした。あと1話でLASTです。
テーマは”幼馴染設定”でした。
あと”初恋”という設定です。
次のシリーズもまた考えてます。
違うジャンルで綴れたらなと願います。