アナタノコトガスキデス

萌え妄想のまま走るいろいろ創作小説の予定。苦情無断転載禁止。

 

[1]ミルルJ

≪ミルル視点≫

寝室に到着するなりノアに尋ねられた。

≪え?…。
そりゃ、理由なんて言えないわよ。
夢に出て来るのよ。
それから一緒にいると嬉しいの。
探す方が難しいけど。
強いて言えば格好良いからでしょう?≫

〔ふうん・…。
ターシャ国の女子高生って馬鹿なのね?〕

≪はあ?≫

〔私には恋愛なんて本気で分からないわ。
どこが良いのかしっかり説明してくれないと分からないわよ?
真面目に聞いてるのよ?
どこなわけ?〕

ノアは冷房の効いた部屋に満足げな表情をして、6畳はあろうかというベッドへ黒装束衣装のまま、転がり込み…自分の長い黒髪を触って、脚をバタバタとして る。

ミルルはベッドに座ってる。
いつもなら、隣はゼロさんで好き勝手に抱き枕にさせてもらって、寝てるんだけど。
ノアにそんなことする気は全くならない。

ミルルはもう眠い。
割りと規則正しい生活を心がけてる。
徹夜で邪神語を覚えた時は最高にハードだった。
ベッドに横になるとすぐに眠気が訪れて来る。
それから早起きなタイプ。

≪え?
そんなふうに聞かれると困るわよ。
ミルルはミーハーなの。
とにかくイケメンって感じた人には滅法弱いのよ。
ファアア…≫

ミルルは口へ手を当てて、欠伸をした。
黒装束衣装はもはや制服になりつつある。
あんな遊女の服よりは数段マシだと思う。
この服も暑そうに見えてただの布。
お蔭で砂風が痛くない。
考えられた衣装みたい。

〔ふうん…。
馬鹿じゃないの?
嘘だと思ってたわ。
ビックリしすぎて、敬語が一瞬…取れてしまいましたが・…。
本気でそんな理由で邪神国まで走って来られたのですか?〕

ノアは隣でミルルを見詰めて不気味な表情でニヤニヤと笑ってる。
もしかして…酔ってるのかもしれない。
そんな雰囲気がしてくる。
一瞬、ここ1ヶ月間の記憶が…ミルルの脳裏に過った。



≪ミルルの回想≫

ノアは割りと酒豪みたいで。
夕食の時に勝手に酒を飲むことが多い。

ミルルはそのたびに、未青年なのに絡まれる。
ゼロさんは普通に飲んでる…未青年な筈なのに。

≪ゼロさんはお酒飲めるの?≫

と尋ねれば…。

【当タリメエダ】

と返答がある。
必ずミルルの質問には返事はある。

≪昼間は何をしてたの?
ミルル、待ってたんだから…≫

【ウッセェ…オレは任務ダ、黙レ】

常にこの調子。

ゼロさんは夕食時になると、定時に戻ってくる。
その間、何をしてるのか・・。
何回、尋ねても教えてくれない。
謎の連続。

夕食時には帰って来るから、ミルルはゼロさんを抱擁する。

ゼロさんはそんな時も全く拒まない。
その時、よく聞いてくる。

【オレはオメエのいるターシャ国がどんな国か聞きてえ】

≪ミルルのいるターシャ国?
そうね‥。
食卓は家族で囲むことが多いかしら?
それから…飲むのは御茶ね?
ここではミルクばかりだけど。
それから…。
そうね、ミルルにはお母さんがいるわ。
お母さんはミルルとは全然似てないわ≫

【国に関スル情報デ良イ】

≪ターシャ国?
うーん…。
別に特に…。
平和な国だって思うけど。
ゼロさんも来たでしょう?
それ以外に思い当たることなんて…≫

こんな感じで常に聞かれてる。
きっと、ターシャ国に興味があるんだって思う。

食事が終わると、ミルルはゼロさんに抱擁しに行く。
ゼロさんの肩幅がある褐色な肌がミルルとは全く違うし、それから堀が深い顔に浮かぶ緑の瞳はエキゾチックでミルルを魅了する。

ミルルは黒装束衣装のゼロさんに密着してみる。
少し汗の匂いがする。
ミルルからもしてると思う。
ミルルは昼間に最近、冷房の効いたロビーで水着で涼むことが多い。
遊女たちも朝、してるらしいから。
時間を変えて昼休みは涼ませてもらってる。

ゼロさんの掌を握って遊んでみる、筋肉質…それから腕の内側にある傷跡が痛々しい。
それからゼロさんのオデコを触る…痣がある。

【オメエはオメエのその髪は染めてるのか?】

ミルルはこんな時、ゼロさんの髪を触ってみる。
堅そうに見えて意外に柔らかい毛質。
黒い強そうな髪。

≪流行よ?
ターシャ人はオシャレだからね?
ミルル、雑誌のモデルだし。
ミルル、モテるのよ?
クラスでは?
で…ゼロさんはミルルのこと、どう思ってる訳?≫

【ウゼエ…】

ゼロさんは勝手に触られてる。
それからノアを睨みだして、舌打ちをする。

〔ミルル様に手を加えないでくださいね?
一国の王女様なんですから。
私はミルル様が女帝になることに大賛成なので…〕

ノアもバチバチにゼロさんを睨んでる。
二人の視線が合致して、ゼロさんが溜息をミルルの腕の中で吐く。

≪ねえ、今日も一緒にゼロさん…。
眠りましょうよ。
ミルル、夜は眠いの。
もう9時には寝床へ付きたいわよ。
朝起きだから…≫

こんな雰囲気でゼロさんに甘え始める。

〔私もご一緒に?
6畳ベッドですし…3人で寝ても〕

≪ノアは提出論文があるんでしょう?
ミルルはゼロさんと二人っきりになりたいわ。
ゼロさんも同じ気持ちよね≫

【オレは忙シイ】

〔誰だって涼しい部屋が良いに決まってますわ。
ミルル様、ゼロはお良しになって…。
私と一緒に〕

≪うるさいわね。
帰って頂戴。
今から、ミルルはゼロさんとイチャイチャタイムなの!!
邪魔者は要らないの!
二人っきりでラブラブするの!≫

【チ、我儘ダ】

〔私は嫉妬してます。
私を外して、ゼロとミルル様だけが冷房がガンガンに効いた部屋で寝るなんて。
この世は残酷ですわ…。
この頬に出来た痣はミルル様への忠誠の証ですのに…〕

ノアは悔しそうに頬を撫でながら、ゼロさんを睨んで退室する。
ゼロさんもノアを睨んでる。
ミルルだけゼロさんの瞳を見詰め…抱擁をして、ウットリとしてる。

要約すれば…いつも、こういう雰囲気な会話とノリで…一か月が経過した。

☆☆☆

ミルルが邪神国へ来た頃から一か月経過して…。
ゼロさんの腕に新しい傷跡は出来てないけど、まだ1ヶ月前に出来たリストカットの名残が痛々しい。

ゼロさんのオデコにあった…痣はもうない…。
それから、ノアはよく…頬を撫でるけど…。
もう、ミルルがノアに頬へ与えた痣も消えてる。

ミルルの頭が、現在…プリン頭になってるここだけが困るところ。
ミルルはオシャレ染めをしてるから。




少しの間、ここ1ヶ月間の回想に浸ってた。
ハッと現実に返った…ミルルは王室、棺桶部屋にいて、ノアはベッドで寝転びながら…酒瓶を飲んでる。

ミルルがいたターシャ国と…邪神国は…全然、法律が違うらしい。
この国では未青年でも飲酒が大丈夫らしい。
そういうことを毎回、節々で感じる。
常にカルチャーショックの連続がミルルには起きてる。

≪えっと…。
その…。
また飲んでたの?
酔ってる?≫

〔ウフフフフフフ♪
ミルル様も今日こそはお酒デビューしますか?
別にこの国では合法ですよ?
楽しい気分になれますよ〕

≪ミルルはね?
お酒は…。
匂いだけで無理なのよ…≫

〔あら?
お酒は酔うからこそ楽しいんですよ??
ゼロは全く酔わないからつまらないわ。
ミルル様、飲みませんか?
ウふふふふ〕

≪良いわよ、何でミルルが飲まなきゃならないわけ?
ゼロさんに頼まれるならまだしも。
ノアに頼まれて飲むわけないわよ。
別に酔うメリットがないでしょう?≫

〔本当に馬鹿ですね?
ミルル様は。
他に理由があるんでしょう?
どうして…邪神国へ走って来たんですが?
まさか、本当にゼロを落とす目的なんですか?
ハハハッハ。
真面目に分からなくて…〕

≪うるさいわね。
酔うなら、部屋に戻りなさいよ≫

〔約束が違いますよ?
私は今日、この部屋でゆーっくり眠るんですからね?
もしかして…反抗期ってやつですか?〕

≪ハア?≫

〔ミルル様がココへ来た理由を…。
私はこの一か月、側で仕えて探っていたんです。
でも、他に理由が見つからなくて…。
ミルル様って本当に馬鹿だったんだと感心してます。
アハハハハ…〕

ノアは腹を抱えて笑い転げてる。
ミルルは目が点になってる。
割りとこの国の人間、全員…感性が違うのか笑いのツボが合わないことが多い。
それはゼロさんに関してもそう。
何を考えてるのか・…お蔭で読みにくい。

でも、ノアの読みは・・当たってる。

その通りかもしれない。
他に理由が見つかる訳でもない。
ヤケクソにはなってた。
失恋に、守銭奴過ぎるお母さん…。
どこか遠いところで自由に暮らしたいとも願ってた。
かも…しれない。

ミルルは今まで家出とか一回もしたことがないから…。
たまには反抗もしてみたかった。
確かに馬鹿だったって少しは後悔してる。

ゼロさんにも愚か者だとハッキリと叱られてる。
自覚はある、マナナがミーハーだと馬鹿にしてたくせに。
ミルルはどうやら惚れた男に弱いみたい。

しっかりなんて出来ない、後先が全く見えなくなるみたい…。

どう考えてもこれは…籠の鳥。
ミルルは本気で、祖国へ帰れなくなってる…。
もう少し慎重になるべきだった。
突っ走り過ぎた。

〔ミルル様。
運が良かったから・・助かったものの。
大抵のこの国へ拉致される方々が最初、どうなるか理解してますか?〕

ノアは喉を鳴らしてベッドの布団へ入り込んだ。
ミルルはノアから離れた場所で眠ることにした。
このベッド6畳もあるから離れられるのがメリット。
今日はゼロさんの情報をとことんまで絞り出すつもり!
ミルルは頑張る、根性で。

≪え?
戦争にまわされるのかしら?≫

〔ああ…。
分かってらっしゃらない。
私はどれだけ手を今まで悪に染めて来てるか…。
それはゼロも同じでしょうが…。
まず、最初に…外人将校へのお披露目パーティーが開催されます。
そのあと、乱交へもつれこみます。
ターシャ人は高値で売れるので…。

ダルマって言うのをご存知ですか?
ミルル様、真面目に馬鹿すぎます。
両手足切断の上に監禁もあり得ます。
本気で馬鹿だと感じてます。
私はそのお蔭で、今年の夏は快適に涼しく眠れる訳ですが〕

ミルルはダルマの意味が分からないわけでもない。
知識としては聞いたことがある。
逃げられないように女性に両手足切断をさせて、客を取らせて稼がせるって言う話…。

今、絶句してる。
そこまで恐ろしい国だったなんてと…開いた口が塞がらない。

≪知ってるわよ、聞いたことあるわよ≫

〔それなら何故、ココへ?
私としては…冷房完備された部屋で眠れる。
これほどの極上はありません。
しかし…。
素朴な疑問です。
そこまでリスクを犯して、ココへ来る…貴方が謎です〕

≪それは…≫

ミルルはゼロさんの褐色な肌に浮かぶ死んだ碧の瞳を思い浮かべた。
ミルルは確かに馬鹿なのかもしれない。
若いからで通用するかもしれない。
若さゆえに馬鹿なのかもしれない。
歳をいけばもっと賢くなれるのかもしれない。

本気で理由がない。

≪ゼロさんってモテるでしょう?
スケこましをしてるくらいだから…≫

〔そうでしょうね…。
彼を好きになる女性は何故か多いのですが…。
私には本気で分からないので、聞いてみました〕

≪ミルル…。
今日は猛烈に凹んでるわ、まさか…ゼロさんが…。
スケこましをしてるだなんて・・≫

〔スケこましの意味が分かってらっしゃるんですね。
まさか、意味も通用しないかと思ってました〕

≪知ってるわよ、馬鹿にしないでよ。
女性を夢中にされて、それから転落させて…情報を入手するヤクザやスパイとかにいる男性のことでしょう?≫

〔私なりの配慮で今日は教えたのですよ?
だって…ミルル様はこの国の姫様。
本気でヤツは止めるべきでしょう…。
何人、ヤツに泣かされてるか…。
それは私も同じで、売春もどきをして、情報入手の仕事には関わり続けてます。
恋愛などと言う虚像に縛られないように…〕

≪泣かすってどういうふうになの…≫

ミルルの声が小さくなった。
気になる。
そりゃ、スケこましに絡まれた後の女性がどうなるか…。
末路は知ってるけど…。

〔まず、ミルル様には衝撃的でしょうが…。
体で女を落とします〕

≪…それから・・≫

目が点にミルルはなってる。
特に性的に嫌悪があるから。

〔そのあと、やはり…麻薬を打ったりしてですね。
我が国の麻薬を売りつけます。
売れれば、これは売り子の仕事になります。
そのあとは知りません。
将軍様から頼まれてる仕事を私たちはこなすだけです。
その時、ついでに他国の情報を頂いたり…。
それから身寄りのない天涯孤独な女性はダルマとして売りさばいたり。
ずっと、それが任務ですから〕

≪…≫

嘘でしょうとも言えない。
ミルルが泣いたことなんて今までなかった。
何をされてもなかったのに。
本気の涙が流れてきた。

≪ゼロさんは…女性をダルマにしても、殺しても・…何も感じないの?
そうなの…?≫

〔ミルル様、何も感じないからこそ…強くなれるのです。
ミルル様にそれが出来ない限り、ターシャ国へ帰るべきでしょうが。
ミルル様は帰れそうにありません。
ここで死ぬのを待つ気なのですか?
私は別にここにミルル様がいらっしゃっても、冷房の効いた部屋で涼めるわけですし。
何のデメリットもございません。
私の忠告を聞くなら、彼は止めるべきでしょう〕

≪ノアは…似たようなことをしてるわけ?
そうなのね…≫

〔私はハッキリ言いましょうか?
何も感じません。
何も感じないからこそ、元気です。
今もです。
ミルル様が転落しようが何も感じません。
しかし、見てて腹が立つのは確かです〕

≪え?≫

〔ミルル様が馬鹿な理由でここへ来たことを蔑んでます。
ゼロも同様でしょう。
私はムカつくのでゼロとミルル様を協力する気はございません〕

≪え…。
情報を教えてくれるんじゃなかったの?
ノア…。
約束破りよ。
今日は冷房の効いた涼しい部屋で寝させてあげる気になったのに≫

〔情報なら与えました。
彼がスケこましとして…犯した行動や。
生きざまをです。
これ以上、何の情報が要ると言うのですか?
私には分かりません〕

≪ゼロさんは…どんな女性が好みなわけ?
そこが気になって…≫

〔本気で馬鹿でしょう?
ハハハッハハハ。
笑わせますね。
彼はどんな女性でも抱きますよ?
強いて言えば、好みなんてないんじゃないですかね?〕

≪ええ…。
ノア、性格最悪ね。
ビックリだわ。
さっきまで、子供の心配をしてるから…ちょっとは話が通じると思ったのに≫

〔ふん。
どうでもいいことです。
あ?
一つ、親交の証として教えてあげましょうか?〕

≪何を?≫

〔私の歳は20歳です。
貴方より3歳上ですね?
教える気はなかったんですが…。
冷房の効いたこんな涼しい部屋へ通してくれたお礼です。
そこは感謝してます。
ありがとうございます〕

≪ノア、よほど…大変だったのね。
ミルルだけが大変だって思ってた。
ターシャ国ではミルルだけが学校で働いて、家にお金を入れて…。
お母さんは働いてるフリをして働かず…。
ミルルの貯金を勝手に使って、ミルル…貯金ゼロでいつも粗末な物を食べてたから・・。
クラスメイトにいつも嫉妬をしてた…。
もしかして…。
ノアはミルルに嫉妬してる?≫

〔ウルサイですね。
黙って下さい。
別に私は人間が出来てますから、嫉妬なんて〕

ミルルはココで失笑した。
だって、人間が出来てるって台詞、…。
ターシャ国にいるキセキさんの口癖だから。

〔なんですか?
ブラックジョークを覚えましたか?
ハハハ?〕

≪人間出来てるって台詞は・・。
ミルルの初恋の相手、キセキさんの口癖よ?≫

〔振られたんですってね?
ミルル様、自ら言ってましたが・ 〕

≪そうね…。
ムカつくレベルにコテンパンに振られてるわよ。
蹴り倒しても足りないくらい憎かったけど。
どうしてかしら?
今は何故か…ゼロさんの方が好きみたいで…。
キセキさんを諦めたかったのは本音よ?
でも、ゼロさんは違う意味で大変そうだわ≫

〔私には恋愛なんて分かりませんわ。
ただの虚像でしょう?
今日は眠りますわ〕

≪ノアは本気で…。
そうなの?
そっか…≫

ノアは返事をしなくなった。
どうも冷房の効いた部屋が余程好きみたいで。

ベッドに入るなりすぐに寝てる。
別にミルルは同性なんて嫉妬しか湧かない。
ノアの美貌に対してはムカついてる。

でも、ゼロさんの情報をもらうためだけに一緒に寝ることを許したんだけど…。

これでは情報にならない。

それにしても、ノアはお節介なのかもしれない。
ミルルはどうして、ゼロさんが好きなんだろう?
それから、ミルルは真面目にこれからどうなるんだろう?
ミルルは頭脳は明晰なのに。
こういうところ、確かに馬鹿なのかもしれない。
あまり先のこととか考えられない。
恋愛に弱いのかもしれない。
今、自滅しそうになってる。

ミルルと全く正反対な幼馴染、あまり気に食わない奴だけど…。
マナナならどう対処するのか…。
一瞬、脳裏に過った。

ヤツなら、まず最初に。
女共全員へ媚びへつらって、それから…自分の仲間へ引きいれそう。
アイツの術、これでもかってレベルにミルルへもそうだったけど…。
無理やり抱擁までしてくるからビックリするけど。
そのせいで確かにマナナとは接点は出来てる。

ヤツは馬鹿そうに見えてシッカリしてる。
そこら辺が気に食わない。
ミルルは今、泥沼になりそうになってる。

ノアに相談しても、ゼロさんとの恋を取り持ってくれそうにないみたい。
自分で解決する気ではいる。
やっぱり、ゼロさんに相談するしかないと思う。
ミルルは肉食系女子だから、根性でも落として見せる。

多分、将軍から命令されないうちは麻薬は打たれないし…。
ダルマにもされないと思ってる。

そんな気はしてる。
運が良かったのは確か。
理由はないけど、ミルルはゼロさんが好きみたい。
今日、夢の中に出て来たらとても喜びそう。

≪ねえ…教えてくれないかしら?
ゼロさんは…昼間、何をしてるの?
それから…。
ノアとゼロさんはコソコソ会話して、何をしゃべってる訳?
あと…ミルルがいた祖国、ターシャ国はどうなってるの?
将軍がミルルをネタに・…身代金要求をターシャ国へ仕掛けて戦争を開始するとか…。
ミルルへ初日、話してたけど‥。
あれはどうなったの?
将軍は今、どこにいるの?
どうしてミルルばかりこの墓がある棺桶部屋に監禁をするわけ?
毎日、謎だらけなんだけど‥。
今、外で何が起きてるの?≫

〔質問の連続ですね‥。
質問は一つにまとめてもらいたいのですが…〕

≪言いなさいよ!
言うって話でしょう?
冷房が効いた部屋から追い出すわよ!≫

〔仕方ないですね。
私が知ってる範囲でですよ。
ターシャ国がどうなってるかについては…私も知りません。
将軍様がどこに行ってるのかについては私も謎です。
忙しい方ですから。
ゼロからは私は常に【死ね、糞ボケ】と貶されてます。
それだけですね〕

≪冗談でしょう?
ミルルがいない席で…してる会話が。
何かあるでしょう?
疑ってるわよ。
ゼロさんは昼間、何をしてる訳よ?≫

〔将軍様から頼まれた極秘任務でしょう。
それ以上は私も知りませんので〕

≪何でもかんでも知らないで済んだら・・良いって思ってんじゃねえわよ!!
腹くくって喋りなさいよ、ボケ!!≫

〔残念ですね。
真実ですわ。
この国では任務は他言不要なので。
ゼロに関することは本気でそこまでなんです。
私の任務はミルル様への教育係です〕

≪ゼロさんは任務って…何なのよ…。
スケこましなわけでしょう?
ミルル、ブチ切れてるわよ。
明日、ゼロさんに尋問するから≫

〔いや、今はスケこましではないと思いますが。
それもどうか…。
将軍様の依頼次第なので。
ミルル様は情報収集を舐めてますが、あの仕事も割りとリスクがあって、毎回・・私も大変なんですよ?
まあ、一つだけお話しできることは。
ゼロは止すべきでしょう。
彼、人間の首を斬る時ですら、野菜を切るのと同じ感覚ですよ?
そんなノリですから…お蔭で任務はミスなく忠実にこなしてますが〕

≪そんな…嘘でしょう…≫

〔いろいろ甘えて生きて来たんですね。
ひとついえることは感性が違い過ぎますし…交わることはないでしょう。
ゼロも同じ意見だと思いますよ?〕

≪ちょっと待ってよ。
協力してくれるってさっき、約束したじゃない。
嘘つきでしょう?
ノアって!
脚で蹴っても良いかしら?
今、ここで≫

ミルルは混乱し始めた。
八つ当たりがしたくなった、どうすれば良いのか分からなくて…。
さっきから頭が停止してる…ミルルがいる前ではそんな人に全く映らないから。
それなら、二重人格って話が…本当なのと・…頭痛が起きてる。

〔嘘つきなのは認めましょう。
処世術ですから。
ミルル様って本当に固いんですね?
言っときますが、ビジネスキスと同じですよ?
ビジネスベッドって。
私はそう言う感覚ですがね?
まあ、良いでしょう。
きっと、ミルル様とゼロは合わないと思いますよ?
私はそう感じますがね?≫

≪はあ…。
その言い方だと、ゼロさんはこの国にいる限り…。
その手の仕事を依頼される可能性がこれからもあるっていう意味なの?
そういうことなの?≫

〔さて?
将軍様の判断次第ですね?
割りと情報収集には役立つので。
不細工より容姿端麗な方が、向こうから情報を喋って来る可能性が高いので。
そういうものでしょう?
ミルル様だって、容姿で差別して。
ゼロには結局、何でも喋ってるくせに。
他の人間も同じでしょう?
それに彼には殺人術もたけて、知能も明晰なので。
国としては重宝してるんですがね?
ミルル様は本気で彼と一緒に逃亡を図る気なんですか?〕

≪出来ないの?
協力してくれないの?≫

〔本当にミルル様は御嬢様ですね。
色々な面でそう感じます。
浅はかと言うか。
ミルル様、一人が脱出するだけでも困難ですよ?
彼も共にというのは無理でしょう。
だいたい、彼の真意は常に謎ですから。
邪神国万歳ですしね?
私もです〕

≪ゼロさんがこの国にいるメリットって何よ?
どう考えても出て行った方が得でしょう?
この国に何がある訳よ?
ミルルのことをどう思ってるのかは謎だわ。
でも、ゼロさんはこの国でリストカットまでしたわけでしょう?
ゼロさんもここから亡命したいって思ってるに決まってんでしょう?≫

〔どうですかね?
そこは…。
彼、いろいろ諦めてますからね?
冷めてますよ?〕

≪え?≫

〔割り切ってると言うか…。
まあ、ミルル様が率先したところで無駄な気がしますよ?
自分のことだけで精一杯ですからね?
それは私もですが…〕

≪ノアは亡命したくないの?
同じでしょう?
ミルルと≫

〔一つ勘違いしてますわ。
私は祖国を愛してます。
これは真実ですわ。
割りとこの国もスリルがあって楽しいですし〕

≪嘘でしょう?
何が言い訳?
暑いわよ?≫

〔暑いのは昔からですが。
好き勝手に好きなことをしても許されるのが、楽園ですね。
規則もあるようで、将軍様にさえ従えば・・。
大抵のことについてはお咎めがないですし。
それだけですよね?
私は結構、楽しんでますよ。
ククククク・…〕

≪信じられないわ。
ゼロさんは・・。
どうなの?≫

〔ゼロですか…。
そうですね?
私と同じじゃないですか?
ミルル様がここにいることについて私は何の不自由もございませんわ。
逆に帰られると困る状況です。
私としては是非、ミルル様は賢くなられて…女帝への道を歩まれることを望みますわ。
そうですね?
ミルル様がこの国の絶対権力者になった暁には。
勝手に好きなように法律でも変えて…。
ゼロを落としたらどうですか?
この線でも別に私は良いですよ?〕

≪え…。
勝手に法律なんて変えられる訳?≫

〔勝手に将軍様は即位して以後は法律を数度に渡り、変更してます。
歯向かった側近は全て処刑をなさりました。
そういうことです。
ミルル様の楽園がここで作れますよ?
その際には是非とも私に冷房完備な施設を与えてくださいね?〕

≪要するに…。
ミルルをターシャ国へ返還するについては…。
ノアは非協力的ということなのね?
よく理解したわよ。
もう寝るわ≫

〔女帝って楽ですよ?
ゼロがもし、誰かと結婚してても勝手に離婚させてでも…。
手に入れられるわけですし…。
それ以外にもイケメンなら何人でも侍らせられますよ?
まさに夢の帝国だって私は思うんですがね…〕

≪残念だけど‥。
別にミルルはノアの口車に乗らないわ?
似たような感じに説得されて今までお母さんの言いなりにはなって働いてきたけどね?
今になって…。
本当に自分がしたいことについて、ミルルは真剣に考えてるんだから。
おやすみ≫

〔そうですか…。
私は応援してますよ。
周囲にも常にその態度なんですがね‥。
ミルル様は女帝になれる器の方だって吹聴をしてますのに…。
男性なら他に良い方を紹介しましょうか?
その方が楽ですよ〕

隣でノアがウルサイ。
それから突然、イビキが聞こえた。
ノアは酔ってたらしい。

ミルルもノアから離れたベッドで眠ることに決めた…でも全く動悸がして、眠れない。
どうしよう?
ミルルは本気でターシャ国へ帰れるのか…どんどん不安になってる。
ゼロさんはミルルのこと、どう思ってるのかしら???






 



















[1]ミルルI


目次

[2]ゼロを読む前の挿絵










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